(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104583
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/142 20140101AFI20240729BHJP
B23K 26/12 20140101ALI20240729BHJP
【FI】
B23K26/142
B23K26/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008878
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】石野 滉隼
(72)【発明者】
【氏名】荒木 伴哉
(72)【発明者】
【氏名】新原 大生
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD05
4E168AD07
4E168AD11
4E168BA00
4E168FB02
4E168FB03
4E168FB04
4E168FC04
4E168FC07
(57)【要約】
【課題】ガスなどの流体によるエアカーテンを安定して形成することができ、加工対象物の曲りや変形を抑制することができ、レーザ加工に伴い有害物質が発生したとしても当該有害物質の滞留を抑制することができ、レーザ加工時における加工対象物の焼損を招く酸素の混入を抑制することができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】本開示に係るレーザ加工装置10は、加工対象物が収容される収容空間を形成する収容空間形成部11と、前記収容空間内にレーザ光を導入するレーザ光導入部23と、前記収容空間内に流体を流入する第1流体流入部24と、前記収容空間内の流体を前記収容空間外に流出する流体流出部25と、を備え、前記第1流体流入部から前記収容空間内に流入した流体は、前記収容空間内において前記加工対象物が配置される部位以外の部位に向かって流れる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物が収容される収容空間を形成する収容空間形成部(11)と、
前記収容空間内にレーザ光を導入するレーザ光導入部(23)と、
前記収容空間内に流体を流入する第1流体流入部(24)と、
前記収容空間内の流体を前記収容空間外に流出する流体流出部(25)と、
を備え、
前記第1流体流入部から前記収容空間内に流入した流体は、前記収容空間内において前記加工対象物が配置される部位以外の部位に向かって流れるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記第1流体流入部から前記収容空間内に流入した流体は、前記レーザ光導入部に沿って流れる請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記収容空間内に流体を流入する第2流体流入部(34)をさらに備え、
前記第2流体流入部から前記収容空間内に流入した流体は、前記収容空間内において前記加工対象物が配置される部位に向かって流れる請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1流体流入部から前記収容空間内に流入する流体と前記第2流体流入部から前記収容空間内に流入する流体の種類が異なる請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第1流体流入部から前記収容空間内に流入する流体の体積流量は、前記流体流出部から前記収容空間外に流出する流体の体積流量よりも大きい請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザ光導入部から前記収容空間内に導入されたレーザ光を反射する反射部(41)をさらに備える請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記第1流体流入部から前記収容空間内への流体の流入パターンを制御する制御部(15)をさらに備える請求項1に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているような従来の装置は、長尺なチャンバの両端にそれぞれ第1の入口開口および出口開口を備え、第1の入口開口からチャンバ内に流入したガスを出口開口から流出させることにより、チャンバ内にエアカーテンを形成する構成となっている。当該装置は、チャンバの隆起区域にビーム注入窓を備え、このビーム注入窓からチャンバ内の製造平面にレーザ光を照射して加工対象物を加工する構成となっている。当該装置は、チャンバの隆起区域に第2の入口開口を備え、第2の入口開口からチャンバの隆起区域内にガスを充填する構成となっている。第2の入口開口からチャンバの隆起区域内に充填されるガスは、第1の入口開口からチャンバ内に流入するガスよりも軽量のガスである。このようにチャンバの隆起区域内に充填された軽量のガスは、ビーム注入窓を汚損から保護する保護層として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置においては、第1の入口開口から流入するガスと第2の入口開口から流入するガスとの重量差あるいは密度差を活用して、ビーム注入窓を汚損から保護する保護層を形成する構成である。そのため、第1の入口開口からのガスを例えば音速以上の高速で供給すると、ガスの重量差あるいは密度差のバランスが崩れてしまい、安定したエアカーテンや保護層を形成することが難しいという問題がある。エアカーテンを形成する従来の装置、即ち、加工材に対し直接ガスを噴射するエアカーテン構造においては、エアカーテンを形成するガスの速度が速すぎると、例えば薄い加工対象物や低強度の加工対象物が曲がったり変形したりするという問題がある。これらの問題は、加工時に高濃度のガス雰囲気を形成することが難しいことを意味する。また、ガスとともに酸素が装置内に混入した場合においては、例えば易燃性の加工対象物がレーザ加工時に焼損してしまうという問題がある。さらに、従来の装置においては、レーザ加工に伴い加工対象物から有害物質が発生したり、発生した有害物質が装置内に滞留したりするすることで加工材の汚損やレーザ加工能率の低下、加工チャンバ自体の汚損等の問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、ガスなどの流体によるエアカーテンを安定して形成することができ、加工対象物の曲りや変形を抑制することができ、レーザ加工に伴い有害物質が発生したとしても当該有害物質の滞留を抑制することができ、レーザ加工時における加工対象物の焼損を招く酸素の混入を抑制することができるレーザ加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るレーザ加工装置10は、加工対象物が収容される収容空間を形成する収容空間形成部11と、前記収容空間内にレーザ光を導入するレーザ光導入部23と、前記収容空間内に流体を流入する第1流体流入部24と、前記収容空間内の流体を前記収容空間外に流出する流体流出部25と、を備え、前記第1流体流入部から前記収容空間内に流入した流体は、前記収容空間内において前記加工対象物が配置される部位以外の部位に向かって流れる。
【0007】
本開示に係るレーザ加工装置10によれば、ガスなどの流体によるエアカーテンを安定して形成することができ、なおかつ、加工材に直接ガスを噴射することがないため、加工対象物の曲りや変形を抑制することができ、レーザ加工に伴い有害物質が発生したとしても流体流出部25から有害物質を排出することで当該有害物質の滞留を抑制することができ、レーザ加工時における加工対象物の焼損を招く酸素の混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るレーザ加工装置の構成例を概略的に示すブロック図
【
図2】本開示の第1実施形態に係る装置本体部の構成例を概略的に示す側面図
【
図3】本開示の第2実施形態に係る装置本体部の構成例を概略的に示す側面図(その1)
【
図4】本開示の第2実施形態に係る装置本体部の構成例を概略的に示す側面図(その2)
【
図5】本開示の第3実施形態に係る装置本体部の構成例を概略的に示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のレーザ加工装置に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1に例示するレーザ加工装置10は、図示しない加工対象物に例えばレーザ除去加工、レーザ接合加工、レーザ切断加工、レーザ穴開け加工などといった各種のレーザ加工を施すための装置であり、この場合、装置本体部11、レーザ照射部12、ガス噴出部13、ガス吸引部14、制御部15を備えている。なお、レーザ除去加工は、レーザ光を照射することによりバリなどの不要な部分を加工対象物から除去する加工である。レーザ接合加工は、レーザ光を照射することにより複数の加工対象物を接合する加工である。レーザ切断加工は、レーザ光を照射することにより加工対象物を複数に切断する加工である。レーザ穴開け加工は、レーザ光を照射することにより加工対象物に穴を開ける加工である。その他、レーザ加工装置10は、レーザ光を照射することにより加工対象物に所定の加工を施す種々のレーザ加工に適用することができる。
【0011】
レーザ照射部12は、レーザ光Lを発生する光源などを備えており、図示しない加工対象物を加工するためのレーザ光Lを装置本体部11内に照射可能に構成されている。ガス噴出部13は、流体を圧送する圧送ポンプなどを備えており、この場合、流体の一例であるガスを噴出可能に構成されている。ガス吸引部14は、流体を吸引する吸引ポンプなどを備えており、この場合、流体の一例であるガスを吸引可能に構成されている。制御部15は、例えばマイクロコンピュータなどを主体として構成されており、レーザ照射部12、ガス噴出部13、ガス吸引部14の動作を制御可能に構成されている。
【0012】
次に、レーザ加工装置10の主体部分となる装置本体部11の構成例について詳細に説明する。
図2に例示するように、レーザ加工装置10の主体部分を構成する装置本体部11は、この場合、その外形が長尺な概ね円柱状に形成されている。装置本体部11は、例えば金属材料などといったガス等の密閉が可能な高強度の材料により構成されており、長手方向における一端側、この場合、図面において下側の端部が閉塞され、他端側、この場合、図面において上側の端部が開放した形状となっている。
【0013】
装置本体部11内には、この場合、長尺な概ね円柱状の収容空間21が形成されている。この収容空間21内には、図示しない加工対象物が収容される。この場合、図示しない加工対象物が配置される部位つまり加工点Pは、収容空間21の底面上の概ね中央部に設定されている。このように構成される装置本体部11は、図示しない加工対象物が収容される収容空間21を形成する収容空間形成部の一例として定義することができる。なお、収容空間21内における加工点Pの位置は、適宜変更して設定することができる。
【0014】
装置本体部11の上端側には、この場合、概ね円形状に開放する開放口22が設けられている。この開放口22には、光学ガラス23が備えられている。光学ガラス23は、その全体がレーザ光Lを透過可能なガラス材料により構成されており、上述したレーザ照射部12から発生するレーザ光Lを収容空間21内に導入可能に構成されている。このように構成される光学ガラス23は、収容空間21内にレーザ光Lを導入するレーザ光導入部の一例として定義することができる。なお、光学ガラス23の直径は、例えば開放口22の直径に応じて、当該開放口22の全体を閉塞可能な大きさに設定するとよい。本実施形態では、光学ガラス23の直径は、例えば50mm(ミリメートル)程度であるが、その直径寸法は、適宜変更して実施することができる。
【0015】
装置本体部11の側面には、ガス噴出口24が設けられている。ガス噴出口24は、装置本体部11の側面を貫通しているとともに、装置本体部11の径方向に沿って直線状に延伸している。この場合、ガス噴出口24は、円形状に開口しているが、その開口形状は適宜変更して実施することができる。ガス噴出口24には、上述したガス噴出部13のガス噴出管13aが接続される。これにより、
図2において破線矢印G1で例示するように、ガス噴出部13から発生するガスは、ガス噴出管13aおよびガス噴出口24を通過して収容空間21内に流入する。このように構成されるガス噴出口24は、収容空間21内に流体を流入する第1流体流入部の一例として定義することができる。
【0016】
装置本体部11の側面には、ガス吸引口25が設けられている。ガス吸引口25は、装置本体部11の側面を貫通しているとともに、装置本体部11の径方向に沿って直線状に延伸している。この場合、ガス吸引口25は、円形状に開口しているが、その開口形状は適宜変更して実施することができる。ガス吸引口25には、上述したガス吸引部14のガス吸引管14aが接続される。これにより、
図2において破線矢印G2で例示するように、収容空間21内のガスは、ガス吸引口25およびガス吸引管14aを通過して収容空間21外のガス吸引部14に流出する。このように構成されるガス吸引口25は、収容空間21内の流体を収容空間21外に流出する流体流出部の一例として定義することができる。この場合、ガス吸引口25の直径は、ガス噴出口24の直径よりも長くなっている。但し、ガス吸引口25の直径は、ガス噴出口24の直径と同じ長さであってもよいし、ガス噴出口24の直径よりも短くてもよい。
【0017】
装置本体部11の側面において、ガス噴出口24およびガス吸引口25は、当該装置本体部11の径方向に沿って相互に対向する位置に設けられている。ガス噴出口24およびガス吸引口25は、少なくとも、装置本体部11の長手方向における中央部よりも上側つまり光学ガラス23側に設けられている。ガス噴出口24およびガス吸引口25は、装置本体部11の側面のうち光学ガラス23の直下領域の高さ位置に設けられている。
【0018】
より詳細に説明すると、光学ガラス23の下面とガス噴出口24の上端との間の距離D1は、ガス噴出口24の下端と収容空間21の底面との間の距離D2よりも大幅に短くなっている。光学ガラス23の下面とガス吸引口25の上端との間の距離D3は、ガス吸引口25の下端と収容空間21の底面との間の距離D4よりも大幅に短くなっている。この場合、ガス噴出口24の上端とガス吸引口25の上端は、概ね或いは完全に同じ高さとなっている。よって、距離D1と距離D3は、概ね或いは完全に同じ長さである。距離D1は、少なくともガス噴出口24の直径よりも短く、距離D2は、少なくともガス噴出口24の直径よりも長い。距離D3は、少なくともガス吸引口25の直径よりも短く、距離D4は、少なくともガス吸引口25の直径よりも長い。
【0019】
以上のように構成される装置本体部11によれば、収容空間21は、その開口側が光学ガラス23によって閉塞されており、概ね密閉された密閉空間として形成されている。即ち、収容空間21は、ガス噴出口24およびガス吸引口25を除き、殆ど或いは完全に密閉された空間となっている。
【0020】
装置本体部11によれば、ガス噴出口24およびガス吸引口25は、加工点Pから極力離れた位置において、加工点Pに指向しない方向、この場合、装置本体部11の径方向に沿って相互に対向している。そのため、ガス噴出口24から収容空間21内に流入したガスは、当該収容空間21内において加工点P以外の部位、この場合、ガス吸引口25に向かって流れる。また、ガス噴出口24から収容空間21内に流入したガスは、光学ガラス23の直下領域において当該光学ガラス23の下面に沿うようにして流れる。これにより、収容空間21内には、加工点Pから極力離れた領域、この場合、光学ガラス23の直下領域に、ガスによるエアカーテンACが形成される。エアカーテンACを形成するガスは、流体が近傍の面や壁に沿って流れる効果、いわゆる「コアンダ効果」により、光学ガラス23の下面に沿って流れる。このとき、エアカーテンACを形成するガスの流速は、例えば亜音速あるいは音速以上の高速度で流れることが可能であり、その高速度が維持された状態のままガス吸引口25に吸引される。なお、エアカーテンACを形成するガスの風圧は、例えば、0.1~1.0Mpa(メガパスカル)程度となるように設定するとよい。
【0021】
なお、エアカーテンACを形成するガスの流速や風圧は、ガス噴出部13によるガスの圧送力およびガス吸引部14によるガスの吸引力のうち少なくとも何れか一方を適宜制御することにより調整することが可能である。また、エアカーテンACを形成するガスの流速や風圧は、ガス噴出口24およびガス吸引口25のうち少なくとも何れか一方の大きさ、形状、長さなどを適宜変更することによっても調整することが可能である。また、エアカーテンACを形成するガスの流速や風圧は、ガス噴出口24とガス吸引口25との位置関係を適宜変更することによっても調整することが可能である。
【0022】
以上に例示したレーザ加工装置10の構成例によれば、ガス噴出口24から収容空間21内に流入したガスは、当該収容空間21内においてガス吸引口25に向かって流れ、加工点Pつまり図示しない加工対象物が配置される部位には直接的に向かわない。そのため、収容空間21内におけるガスの速度を高速にしたとしても、加工点Pに配置されている加工対象物の曲りや変形を抑制することができる。
【0023】
また、レーザ加工装置10によれば、このように加工対象物の曲りや変形の懸念が解消されることから、収容空間21内におけるガスの速度を高速にしやすくできる。これにより、ガスによるエアカーテンACを加工点Pから離れた領域において安定して形成することができる。
【0024】
また、レーザ加工装置10によれば、レーザ加工に伴い有害物質が発生したとしても、当該有害物質をガスとともにガス吸引口25から収容空間21外に排出することができる。これにより、レーザ加工に伴い有害物質が発生したとしても、当該有害物質が収容空間21内に滞留してしまうことを抑制することができる。
【0025】
また、レーザ加工装置10によれば、収容空間21を密閉空間として形成し、ガスの流入口をガス噴出口24に限定し、且つ、ガスの流出口をガス吸引口25に限定している。この構成例によれば、レーザ加工時における加工対象物の焼損を招く酸素が収容空間21内に混入してしまうことを抑制することができる。
【0026】
また、レーザ加工装置10によれば、収容空間21内のガスをガス吸引口25から収容空間21外に排出可能な構成としている。この構成例によれば、レーザ加工に伴い加工対象物から例えば溶融状態の金属粒子などといった粘着性を有する加工副産物が発生したとしても、当該加工副産物をガスとともに収容空間21外に排出することができる。よって、当該加工副産物が、加工対象物、収容空間21の内面、光学ガラス23の内面などに付着してしまうことを抑制することができ、加工対象物の加工品質の向上を図ることができる。
【0027】
また、レーザ加工装置10によれば、収容空間21を密閉空間として形成しているので、例えば還元性ガスや臭気を有するガスなどといった一般的には使用されないガスも使用することが可能である。
【0028】
(第2実施形態)
図3に例示するレーザ加工装置10は、上述した第1実施形態の構成に加えて、さらにパージガス噴出口34を備えている。パージガス噴出口34は、装置本体部11の側面を貫通しているとともに、装置本体部11の径方向外側から径方向内側に向かって直線状に下降傾斜するように延伸している。パージガス噴出口34には、図示しないパージガス噴出部のパージガス噴出管が接続される。図示しないパージガス噴出部は、ガス噴出部13と同様に、圧送ポンプなどによる圧送力によりガスを噴出可能な構成となっている。
【0029】
この構成例によれば、
図4において破線矢印G3で例示するように、図示しないパージガス噴出部から発生するガスは、パージガス噴出管およびパージガス噴出口34を通過して収容空間21内に流入する。このように構成されるパージガス噴出口34は、収容空間21内に流体を流入する第2流体流入部の一例として定義することができる。
【0030】
パージガス噴出口34から収容空間21内に流入したガスは、当該収容空間21内において加工点Pつまり図示しない加工対象物が配置される部位に向かって流れる。そして、パージガス噴出口34から収容空間21内に流入したガスは、
図4において破線矢印G4,G5で例示するように、収容空間21の底面や内面に沿って流れ、つまり、加工点Pの近傍部分を通過して収容空間21内の上方領域に向かう。これにより、レーザ加工に伴い加工対象物から発生する加工副産物をガスにより巻き上げてガス吸引口25から効率良く収容空間21外に排出することができる。
【0031】
第2実施形態のレーザ加工装置10においては、ガス噴出口24から収容空間21内に流入するガスとパージガス噴出口34から収容空間21内に流入するガスの種類を異ならせるようにしてもよい。より具体的に説明すると、パージガス噴出口34から収容空間21内に流入するガスは、例えばアルゴンなどといった比較的重たいガスとし、ガス噴出口24から収容空間21内に流入するガスは、例えばアルゴンよりも軽いガスとするとよい。これにより、パージガス噴出口34から収容空間21内に流入する重いガスは、収容空間21内の底部側に到達しやすくなり、加工副産物の巻き上げを一層効率良く行うことができる。一方、ガス噴出口24から収容空間21内に流入する軽いガスは、収容空間21内の上部側つまり光学ガラス23側に維持されやすくなり、光学ガラス23の下面に沿って流れるエアカーテンACを一層安定して形成することができる。
【0032】
装置本体部11においてパージガス噴出口34を設ける位置は、適宜変更して実施することができ、例えば、ガス噴出口24の近傍に設けてもよいし、ガス噴出口24から離れた位置に設けてもよい。
【0033】
(第3実施形態)
図5に例示するレーザ加工装置10は、上述した第1実施形態の構成に加えて、さらに反射部41を備えている。反射部41は、例えばミラーなどにより構成されており、光学ガラス23から収容空間21内に導入されたレーザ光Lを反射可能である。この構成例によれば、反射部41の傾斜角度を適宜調整することにより、収容空間21内に導入されたレーザ光Lを、加工対象物の上部だけでなく側部や下部などにも導くことができ、レーザ光Lによる加工可能範囲を拡大することができる。反射部41は、装置本体部11の軸方向あるいは径方向に対し、少なくとも、例えば0~45度の鋭角となる範囲内で傾斜角度を調整可能に構成するとよい。
【0034】
なお、詳細な図示は省略するが、反射部41は、第2実施形態のレーザ加工装置10に備えてもよい。この場合、パージガス噴出口34から収容空間21内に流入するガスが反射部41に向かうように配置することで、当該反射部41に加工副産物が付着することをガスにより抑制したり、当該反射部41に付着してしまった加工副産物をガスにより吹き飛ばして除去したりすることができ、反射部41の汚損を防止することができる。
【0035】
(その他の実施形態)
なお、本開示は、上述した複数の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜、変形や拡張を行うことができる。例えば、レーザ加工装置10は、上述した複数の実施形態を適宜組み合わせた構成とすることができる。
【0036】
第1実施形態のレーザ加工装置10においては、ガス噴出口24から収容空間21内に流入するガスの体積流量が、ガス吸引口25から収容空間21外に流出するガスの体積流量よりも大きくなる構成としてもよい。この構成により、レーザ加工装置10のチャンバ内部をガスによりパージすることが可能となり、易燃性のある薄い加工対象物や低強度の加工対象物についても折れ曲がりや焼損を抑制した状態で高精度の加工が可能となる。体積流量は、所定の単位時間あたりに所定の面を通過する流体の体積を示すものである。よって、ガス噴出口24から収容空間21内に流入するガスの体積流量が、ガス吸引口25から収容空間21外に流出するガスの体積流量よりも大きいという状態は、つまり、収容空間21外から収容空間21内に流入するガスの量が、収容空間21内から収容空間21外に流出するガスの量よりも多い状態であると定義することができる。
【0037】
この構成例によれば、収容空間21外から収容空間21内にガスが流入しやすく、且つ、収容空間21内から収容空間21外にガスが流出しにくい構成が実現されることから、収容空間21内においてガスが滞留しやすくなり且つ滞留するガスの流れに乱流や対流が発生するようになり、加工点P付近に存在する加工副産物を巻き上げる効果を得ることができる。そのため、第2実施形態に示したようなパージガス噴出口34を設けなくとも、加工副産物を巻き上げてガス吸引口25から効率良く収容空間21外に排出することが可能となる。また、パージガス噴出口34を設けることに伴う収容空間21の密閉度の低下を回避することができ、従って、より密閉度の高い収容空間21を実現することができる。
【0038】
収容空間21外から収容空間21内にガスが流入しやすく、且つ、収容空間21内から収容空間21外にガスが流出しにくい構成は、例えば、ガス噴出口24の直径をガス吸引口25の直径よりも大きくすることにより実現することができる。また、ガス噴出部13によるガスの圧送力をガス吸引部14によるガスの吸引力よりも強くすることによっても実現することができる。
【0039】
制御部15は、ガス噴出口24から収容空間21内へのガスの流入パターンを制御可能に構成してもよい。流入パターンは、例えば、パルス制御によりガス噴出口24から収容空間21内へのガスの流入を間欠的に行うパターンや、ガス噴出口24から収容空間21内へ流入するガスの速度や風圧を連続的あるいは段階的に上げたり下げたりするパターンなどである。このような制御例によれば、ガスにより形成されるエアカーテンACに例えば振動やうねりなどといった動きを発生させることができ、光学ガラス23への汚れや異物の付着を一層効率良く防止することができることに加えて、仮に光学ガラス23に異物が付着した場合においても容易に払い落とすことが可能となる。
【0040】
制御部15は、ガス吸引口25から収容空間21外へのガスの流出パターンを制御可能に構成してもよい。流出パターンは、例えば、パルス制御によりガス吸引口25から収容空間21外へのガスの流出を間欠的に行うパターンや、ガス吸引口25から収容空間21外へ流出するガスの速度や風圧を連続的あるいは段階的に上げたり下げたりするパターンなどである。このような制御例によっても、ガスにより形成されるエアカーテンACに例えば振動やうねりなどといった動きを発生させることができ、光学ガラス23への汚れや異物の付着を一層効率良く防止することができることに加えて、仮に光学ガラス23に異物が付着した場合においても容易に払い落とすことが可能となる。
【0041】
レーザ加工装置10は、ガス噴出口24を複数備える構成としてもよい。レーザ加工装置10は、ガス吸引口25を複数備える構成としてもよい。レーザ加工装置10は、パージガス噴出口34を複数備える構成としてもよい。レーザ加工装置10に設けるガス噴出口24、ガス吸引口25、パージガス噴出口34の数は、同じ数であってもよいし、それぞれ異なる数であってもよい。レーザ加工装置10に設けるガス噴出口24、ガス吸引口25、パージガス噴出口34の形状は、同じ形状であってもよいし、それぞれ異なる形状であってもよい。レーザ加工装置10に設けるガス噴出口24、ガス吸引口25、パージガス噴出口34の大きさは、同じ大きさであってもよいし、それぞれ異なる大きさであってもよい。
【0042】
流体は、ガスなどといった気体状のものに限られるものではなく、例えば、粉末状の固体、液体、ゲル体などといった流動性を有するものであれば適用可能である。
【0043】
レーザ加工装置10の主体部分は、基本的には装置本体部11と光学ガラス23の組み合わせにより構成されている。そのため、レーザ加工装置10は、その大きさや形状などについての変更の自由度が高い。従って、装置全体や各部の大きさや形状などを適宜設計することにより、大型の物体や複雑な形状の物体なども加工対象物とすることができる。即ち、本開示によれば、汎用性の高いレーザ加工装置を提供することができる。
【0044】
また、上述の実施形態では、ガス吸引口25から加工副産物を排出する例、つまり、不要な副産物を排出する例を示した。しかし、加工対象物にレーザ光Lを照射して例えば粉末材料などといった有用な加工副産物を生成する場合には、本開示に係るレーザ加工装置10は、その有用な加工副産物をガス吸引口25から吸引して回収する装置、つまり、有用な加工副産物を製造する装置としても活用することができる。
【0045】
ガス噴出口24やパージガス噴出口34は、例えば、その全体が扁平な扁平ノズル形状としてもよいし、両端部よりも中間部が狭くなった管状、いわゆる「ラバルノズル形状」としてもよいし、その他の形状としてもよい。このようにガス噴出口24やパージガス噴出口34の形状を適宜変更して実施することにより、エアカーテンACの強度や安定度、収容空間21内において加工副産物を巻き上げるガスの流れの強度や安定度を適宜調整することができる。
【0046】
なお、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0047】
また、本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記憶媒体に記憶されていても良い。
【符号の説明】
【0048】
図面において、10はレーザ加工装置、11は装置本体部(収容空間形成部)、15は制御部、23は光学ガラス(レーザ光導入部)、24はガス噴出口(第1流体流入部)、25はガス吸引口(流体流出部)、34はパージガス噴出口(第2流体流入部)、41は反射部を示す。