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特開2024-104599ハイブリッド建物及びハイブリッド建物の設計方法
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  • 特開-ハイブリッド建物及びハイブリッド建物の設計方法 図1
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  • 特開-ハイブリッド建物及びハイブリッド建物の設計方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104599
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ハイブリッド建物及びハイブリッド建物の設計方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20240729BHJP
   E04B 1/18 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
E04B1/30 Z
E04B1/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008904
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 正明
(57)【要約】
【課題】木質材と非木質材とを組み合わせたハイブリッド建物であって、地震時に変形し難いハイブリッド建物及びハイブリッド建物の設計方法を提供する。
【解決手段】ハイブリッド建物(建物10)は、三角形の構面を構成する構造材で構成された三角形グリッド架構で外殻が形成され、構造材は、鉄骨20又はコンクリートで形成された非木質材と、木質材(集成材30)と、を含んで形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角形の構面を構成する構造材で構成された三角形グリッド架構で外殻が形成され、
前記構造材は、鉄骨又はコンクリートで形成された非木質材と、木質材と、を含んで形成されている、
ハイブリッド建物。
【請求項2】
内部架構の層剛性が高い階は、内部架構の層剛性が低い階と比較して、前記非木質材に対する前記木質材の使用割合が大きい、請求項1に記載のハイブリッド建物。
【請求項3】
建物の外殻の少なくとも一面を、鉄骨またはコンクリートで形成された非木質材で構築した三角形グリッド架構で構成し、それぞれの前記非木質材に発生する内部応力を算出する第一工程と、
算出された内部応力が最も小さい前記非木質材を木質材に置き換えて、前記三角形グリッド架構を形成するそれぞれの前記非木質材及び前記木質材に発生する内部応力を算出する第二工程と、
を有し、
前記非木質材の材長に対する前記木質材の材長の割合が所定値以上となるまで前記第二工程を繰り返して、前記外殻における前記非木質材及び前記木質材の配置を設計する、
ハイブリッド建物の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド建物及びハイブリッド建物の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、木造とRC造の建造物を組み合わせて構築した木造・RC造混構造建築物が記載されている。この木造・RC造混構造建築物では、RC造部分が側面中央部にコアとして配置されている。また、このRC造部分をセンターコアとし周囲を木造部分とする構成、上層を木造とし下層をRC造部分とする構成としてもよい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-100057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示された木造・RC造混構造建築物では、少なくとも木造部分が四角形の柱梁架構で形成されている。このように、木質材と非木質材とを組み合わせたハイブリッド建物は、構面が矩形状の柱梁架構で形成されたものが多い。
【0005】
このようなハイブリッド建物は、木質材より材料強度が強い非木質材に耐震性能を依存し易く、木質材を構造材として用いる事が難しいため、地震時に建物が変形し易い。また、変形を抑制するためにブレースなどを用いると、建物の重量が重くなる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、木質材と非木質材とを組み合わせたハイブリッド建物であって、地震時に変形し難いハイブリッド建物及びハイブリッド建物の設計方法を提供すすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のハイブリッド建物は、三角形の構面を構成する構造材で構成された三角形グリッド架構で外殻が形成され、前記構造材は、鉄骨又はコンクリートで形成された非木質材と、木質材と、を含んで形成されている。
【0008】
請求項1の建物は、外殻が三角形グリッド架構で形成されている。このため、構面が矩形状の柱梁架構で外殻が形成された建物と比較して、外殻を形成する架構の構面が変形し難く、構造材に生じる応力が許容応力度を超えにくい。
【0009】
これにより、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物と、構面が矩形状の柱梁架構で外殻が形成された建物とで、架構を形成する非木質材と木質材とをそれぞれ略等しい重量用いた場合、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物のほうが変形し難い。
【0010】
また、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物と、構面が矩形状の柱梁架構で外殻が形成された建物とで、建物の変形量を等しくする場合、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物のほうが、木質材の使用割合を増やすことができる。このため、建物を軽量化できる。
【0011】
請求項2のハイブリッド建物は、請求項1に記載のハイブリッド建物において、内部架構の層剛性が高い階は、内部架構の層剛性が低い階と比較して、前記非木質材に対する前記木質材の使用割合が大きい。
【0012】
請求項2のハイブリッド建物では、内部架構の層剛性が高い階は、内部架構の層剛性が低い階と比較して、非木質材に対する木質材の使用割合が大きい。すなわち、内部架構と外殻とで、層剛性を相互補完できる。
【0013】
これにより、内部架構の層剛性を調整することで外殻における非木質材と木質材との使用割合を自由に設定し易い。このため、非木質材及び木質材の配置による建物の外殻の意匠を自由に形成し易い。あるいは、建物内部の吹き抜けや積載荷重の偏りに応じて、外郭の木質材と非木質材との使用割合を調整することもできる。
【0014】
請求項3のハイブリッド建物の設計方法は、建物の外殻の少なくとも一面を、鉄骨またはコンクリートで形成された非木質材で構築した三角形グリッド架構で構成し、それぞれの前記非木質材に発生する内部応力を算出する第一工程と、算出された内部応力が最も小さい前記非木質材を木質材に置き換えて、前記三角形グリッド架構を形成するそれぞれの前記非木質材及び前記木質材に発生する内部応力を算出する第二工程と、を有し、前記非木質材の材長に対する前記木質材の材長の割合が所定値以上となるまで前記第二工程を繰り返して、前記外殻における前記非木質材及び前記木質材の配置を設計する。
【0015】
請求項3のハイブリッド建物の設計方法では、非木質材で構築した三角形グリッド架構において、非木質材の材長に対する木質材の材長の割合が所定値以上となるまで、内部応力が最も小さい非木質材を順次木質材に置き換える。
【0016】
このため、非木質材に対して木質材を所定割合確保したうえで、内部応力が許容応力を超える非木質材及び木質材の数量が最小化されたハイブリッド建物を形成できる。
【0017】
これにより、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物と、構面が矩形状の柱梁架構で外殻が形成された建物とで、架構を形成する非木質材と木質材とをそれぞれ略等しい重量用いた場合、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物のほうが変形し難い。
【0018】
また、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物と、構面が矩形状の柱梁架構で外殻が形成された建物とで、建物の変形量を等しくする場合、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物のほうが、木質材の使用割合を増やすことができる。このため、建物を軽量化できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、地震時に変形し難いハイブリッド建物及びハイブリッド建物の設計方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る建物を示した立面図である。
図2】(A)は本発明の実施形態に係るハイブリッド建物の設計方法において三角形グリッドを鉄骨で形成した状態を示す立面図であり、(B)は内部応力が小さい鉄骨を集成材に置き換えた状態を示す立面図であり、(C)は鉄骨の材長に対する集成材の材長の割合が所定値以上となるまで内部応力が小さい鉄骨を集成材に置き換えた状態を示す立面図である。
図3】(A)は本発明の実施形態に係るハイブリッド建物における各部材の検定比を示す立面図であり、(B)は鉄骨と集成材とをそれぞれ集約して配置した変形例における各部材の検定比を示す立面図であり、(C)は比較例における各部材の検定比を示す立面図である。
図4】(A)は本発明の実施形態に係るハイブリッド建物の変形状態を示す立面図であり、(B)は鉄骨と集成材とをそれぞれ集約して配置した変形例の変形状態を示す立面図であり、(C)は比較例における各部材の変形状態を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るハイブリッド建物及びハイブリッド建物の設計方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0022】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0023】
<ハイブリッド建物>
図1に示す建物10は、本発明におけるハイブリッド建物の一例である。建物10は、非木質材である鉄骨20と木質材である集成材30とを構造材として用いた、混構造の建築物である。
【0024】
建物10の外殻は、鉄骨20及び集成材30で三角形の構面を形成した三角形グリッド架構を含んで構成されている。「外殻」とは、建物10の外周面に配置された構造体である。三角形グリッド架構は、平面視で矩形状である建物10の4つの外周面の全てに配置されている。
【0025】
三角形グリッド架構を形成するそれぞれの鉄骨20及び集成材30は、略同一長さの長尺材である。6本の鉄骨20及び集成材30の端部が剛接合されて、三角形グリッドの格子点が形成されている。
【0026】
格子点における各部材の通し方は特に限定されるものではない。図1に示した例では、横方向に架設された鉄骨20または集成材30を通し材として、斜め方向に架設された鉄骨20または集成材30を、横方向に架設された鉄骨20または集成材30に接合している。なお、「通し材」とは、材軸方向に直交する端面同士が接合されている2つの部材を指す。
【0027】
なお、鉄骨20及び集成材30の双方が接合される格子点においては、鉄骨20同士を通し材として接合し、その鉄骨20に集成材30を接合してもよい。また、各格子点は、剛接合のほか、半剛接合、ピン接合など、自由な剛性で接合できる。
【0028】
建物10においては、鉄骨20及び集成材30の配置が非均一である。具体的には、建物10では、低層部10Aと比較して高層部10Bにおける集成材30の使用割合(鉄骨20の重量に対する集成材30の重量)が大きい。また、建物10の最上階においては、集成材30のみで三角形グリッド架構が形成されている。
【0029】
なお、低層部10Aは、建物10の上下方向における中央部から下方の部分(下半分)であり、高層部10Bは、建物10の上下方向における中央部から上方の部分(上半分)である。
【0030】
また、建物10においては、梁である水平材として全て集成材30が配置された階や、水平材として鉄骨20と集成材30とが交互に配置された階を含む。また、建物10においては、水平材と交わる斜材として鉄骨20のみが配置された階、斜材として集成材30のみが配置された階、斜材として鉄骨20及び集成材30の双方が配置された階を含む。
【0031】
さらに、建物10においては、三角形グリッド架構が形成された面においては、鉄骨20及び集成材30が左右対称に配置されている。つまり、建物10の中心線を境界として鉄骨20及び集成材30が線対称の配置となっている。
【0032】
なお、このような鉄骨20及び集成材30の配置は特に限定されるものではなく、後述するBESO法を用いた建物10の設計方法の結果に応じて、適宜変更してもよい。
【0033】
<ハイブリッド建物の設計方法>
建物10は、BESO法を用いて設計することができる。BESO法を用いた建物10の設計方法では、まず、図2(A)に示すように、建物10の外殻の一面を、鉄骨20で構築した三角形グリッド架構で構成し、それぞれの鉄骨20に発生する内部応力を算出する(第一工程)。内部応力は、長期荷重及び地震時における短期荷重の双方を考慮した最大応力である。
【0034】
次に、図2(B)に示すように、算出された内部応力が最も小さい鉄骨20を集成材30に置き換える。そして、三角形グリッド架構を形成するそれぞれの鉄骨20及び集成材30に発生する内部応力を、再度算出する(第二工程)。
【0035】
そして、鉄骨20の材長に対する集成材30の材長の割合が所定値以上となるまで第二工程を繰り返す。この結果、図2(C)に示すように、低層部10Aと比較して高層部10Bにおける集成材30の使用割合が大きい三角形グリッド(建物10の外殻)が形成される。
【0036】
なお、「鉄骨20の材長」とは、内部応力を算出する鉄骨20の長さの和(総材長)であり、「集成材30の材長」とは、内部応力を算出する集成材30の長さの和である。また、「所定値」とは、設計者が任意に設定できる値である。この例では、鉄骨20の材長を「6」とした場合の集成材30の材長を「4」としている。
【0037】
なお、各部材の検定比や建物の変形量を算出するために用いた諸元は以下の通りである。これらの諸元は、設計条件によって自由に変更することができる。
【0038】
鉄骨20・・・ヤング係数E=205,000N/mm2、基準強度F=325N/mm2、比重7.87
許容応力度(引張・圧縮・曲げ共通):長期F/1.5、短期F
【0039】
集成材30・・ヤング係数E=10,500N/mm2、基準強度F=17N/mm2、比重0.50
許容応力度(引張・圧縮・曲げ共通):長期F/2、短期F
【0040】
建物10・・・鉄骨20:長さ800mm、1辺の大きさ350mm、厚み19mmの角型鋼管
総重量146t
集成材30:長さ800mm、1辺の大きさ350mmの角材
総重量89t
【0041】
建物12・・・鉄骨20:長さ800mm、1辺の大きさ350mm、厚み19mmの角型鋼管
総重量は143t
集成材30:長さ800mm、1辺の大きさ350mmの角材
総重量は90t
【0042】
建物140・・・鉄骨:柱が長さ800mm、1辺の大きさ800mm、厚み32mmの角型鋼管
梁が長さ800mm、梁せい300mm、梁幅300mm、
ウェブの厚み16mm、フランジの厚み32mmのH形鋼
総重量136t
木部材:柱が長さ800mm、1辺の大きさ800mmの角材
梁が長さ800mm、1辺の大きさ300mmの角材
総重量88t
【0043】
その他・・・長期荷重及び地震時における短期荷重の双方を考慮する。なお、地震力の算定においては全階水平震度0.2とする。解析モデルは1構面からなる2次元の骨組モデルとし、奥行方向の荷重負担幅は10mとする。また、荷重載荷点は部材交点とし、各点に2層分の荷重をまとめて作用させる。
【0044】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る建物10は、外殻が三角形グリッド架構で形成されている。このため、構面が矩形状の柱梁架構で外殻が形成された建物と比較して、外殻を形成する架構の構面が変形し難く、構造材に生じる応力が許容応力度を超えにくい。
【0045】
例えば図3(A)には、建物10、及び、三角形グリッドを形成する鉄骨20及び集成材30における検定比(部材に生じる応力度の許容応力度に対する割合)が示されている。この例では、上述した鉄骨ように、20の材長を「6」とした場合の集成材30の材長を「4」としている。また、この検定比は、長期荷重及び地震時における短期荷重の双方を考慮した最大検定比である。
【0046】
また、図3(B)には、鉄骨20と集成材30との割合(材長及び重量)が建物10と等しい建物であって、鉄骨20を下方に集約して配置した建物12が示されている。建物10と建物12とを比較すると、建物10のほうが、検定比が1を超える部材数が少ない。
【0047】
すなわち、鉄骨20及び集成材30を、建物10の上下方向に亘って分散して配置した建物10のほうが、鉄骨20及び集成材30を集約して配置した建物12よりも、各部材に生じる応力が許容応力度を超えにくい。
【0048】
また、例えば図3(C)には、鉄骨20と集成材30との割合(重量)が建物10と等しい建物であって、鉄骨20及び集成材30を用いて四角形の柱梁架構を形成し、かつ、鉄骨20を下方に集約して配置した建物140(比較例)が示されている。
【0049】
建物12と建物140とを比較すると、建物12のほうが、検定比が1を超える部材の割合が少ない。すなわち、鉄骨20及び集成材30で三角形グリッドを形成した建物12のほうが、鉄骨20及び集成材30で四角形の柱梁架構を形成した建物140よりも、各部材に生じる応力が許容応力度を超えにくい。
【0050】
このため、図4(A)~(C)に誇張して示すように、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物10及び12と、構面が矩形状の柱梁架構で外殻が形成された建物140とで、架構を形成する鉄骨20と集成材30とをそれぞれ略等しい重量用いた場合、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物のほうが地震時の水平力に対して変形し難い。
【0051】
また、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物10及び12と、構面が矩形状の柱梁架構で外殻が形成された建物140とで、建物の変形量を等しくする場合、外殻が三角形グリッド架構で形成された建物10及び12のほうが、木質材の使用割合を増やすことができる。このため、建物を軽量化できる。
【0052】
また、本発明の実施形態に係るハイブリッド建物の設計方法では、図2(A)~(C)に示すように、鉄骨20で構築した三角形グリッド架構において、鉄骨20の材長に対する集成材30の材長の割合が所定値以上となるまで、内部応力が最も小さい鉄骨20を順次集成材30に置き換える。具体的には、鉄骨20の材長を「6」とした場合の集成材30の材長が「4」以上となるまで、内部応力が最も小さい鉄骨20を順次集成材30に置き換える。
【0053】
このため、鉄骨20に対して集成材30を所定割合確保したうえで、内部応力が許容応力を超える鉄骨20及び集成材30の数量が最小化されたハイブリッド建物を形成できる。
【0054】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、建物10の内部架構は各階において略均一な柱梁架構となっている。しかし、本発明の実施形態はこれに限らず、建物10の内部架構は各階において非均一としてもよい。
【0055】
例えば内部架構を形成する柱の細長比を非均一として、内部架構の層剛性を非均一としてもよい。この場合、内部架構の層剛性が高い階は、内部架構の層剛性が低い階と比較して、建物10の外殻において鉄骨20に対する集成材30の使用割合を大きく形成することができる。
【0056】
このように、本発明においては、内部架構と外殻とで、層剛性を相互補完してもよい。内部架構の層剛性を調整すれば、外殻における鉄骨20と集成材30との使用割合を自由に設定し易い。
【0057】
このため、鉄骨20及び集成材30の配置による建物10の外殻の意匠を自由に形成し易い。あるいは、建物10の内部の吹き抜けや積載荷重の偏りに応じて、外郭の集成材30と鉄骨20との使用割合を調整することもできる。
【0058】
また、上記実施形態では、建物10の外殻を形成する「一面」における鉄骨20及び集成材30の配置方法について説明した。この場合、他の三面についても、同様の方法で鉄骨20及び集成材30を配置できる。
【0059】
しかし、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば建物10の外殻を形成する四面全てを、鉄骨20で構築した三角形グリッド架構で構成し、これらの面全てに、上記の第一工程及び第二工程を一度に適用してもよい。
【0060】
また、本発明の構造及び設計方法は、建物10の平面形状が矩形状以外の場合にも適用できる。例えば平面形状が矩形状以外の多角形状である場合や、建物10が多面体である場合にも適用できる。このような場合においても、上記の設計方法は、各面毎に適用してもよいし、複数の面に対して一度に適用してもよい。
【0061】
あるいは、建物10の外殻を形成する面の数や形状に関わらず、本発明の構造及び設計方法は、そのうちの一面だけに適用してもよいし、複数の面に適用してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、非木質材として鉄骨20を用い、木質材として集成材30を用いているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば非木質材としては鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートを用いてもよい。また、木質材としては無垢木材、CLT(Cross Laminated Timber)やLVL(Laminated Veneer Lumber)などを用いてもよい。このように、本発明は様々な態様で実施できる。
【符号の説明】
【0063】
10 建物(ハイブリッド建物)
12 建物(ハイブリッド建物)
20 鉄骨(非木質材、構造材)
30 集成材(木質材、構造材)
図1
図2
図3
図4