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特開2024-104601物体検知装置、物体検知方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104601
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】物体検知装置、物体検知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/87 20060101AFI20240729BHJP
   G01S 13/26 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01S13/87
G01S13/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008906
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山之内 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】中島 良介
(72)【発明者】
【氏名】池田 昇平
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健太郎
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB08
5J070AC02
5J070AC06
5J070AK15
5J070AK22
5J070BD01
(57)【要約】
【課題】複数の対象物が異なる速度で移動する場合でも、インコヒーレンスパラメータ値の推定を可能にし、帯域補間法によるレーダの高分解能化を実現する。
【解決手段】
本発明は、互いに異なる周波数帯で、一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを照射し、物体からの反射波を受信し、ベースバンド信号を生成する第一の送受信部1011及び第二の送受信部1012と、第一の送受信部1011と第二の送受信部1012が合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られるベースバンド信号から、第一の送受信部1012が生成したベースバンド信号と第二の送受信部1012が生成したベースバンド信号の位相ずれを推定し、推定結果に基づき、第一の送受信部1011が照射した電波パルスの周波数帯から第二の送受信部1012が照射した電波パルスの周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する演算部1014と、を備えた物体検知装置1000を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検知する物体検知装置であって、
一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体検知装置に対して相対運動する前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第一の送受信部と、
前記第一の送受信部とは異なる周波数帯で一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第二の送受信部と、
前記第一の送受信部と前記第二の送受信部が合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを推定する位相ずれ推定部と、
前記位相ずれ推定部において推定された前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを補正した上で、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯から前記第二の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する帯域補間部と、を備える事を特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記第一の送受信部と前記第二の送受信部が照射する電波パルスの照射時間を同一に設定し、かつ前記第一の送受信部と前記第二の送受信部から照射する電波パルスの中心周波数と帯域幅の比を同一に設定する制御部と、
を備える事を特徴とする、請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記位相ずれ推定部は、
前記ベースバンド信号に基づいて、前記ベースバンド信号の極を推定する極推定部と、
前記極の推定値に基づいて、電波パルスの周波数に対し線形に変化する位相ずれを表す周波数インコヒーレンスパラメータを推定する周波数インコヒーレンスパラメータ推定部と、
前記ベースバンド信号及び前記極の推定値に基づいて、前記ベースバンド信号の振幅係数を推定する振幅係数推定部と、
前記振幅係数の推定値に基づいて、電波パルスの周波数に依存しない位相ずれを表す位相インコヒーレンスパラメータを推定する位相インコヒーレンスパラメータ推定部と、
を備える事を特徴とする、請求項2に記載の物体検知装置。
【請求項4】
前記極推定部は、前記合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる3つ以上の前記ベースバンド信号各々の極を推定する請求項3に記載の物体検知装置。
【請求項5】
前記周波数インコヒーレンスパラメータ推定部は、3つ以上の前記ベースバンド信号各々の極の推定値に基づいて、前記周波数インコヒーレンスパラメータを推定する請求項4に記載の物体検知装置。
【請求項6】
前記振幅係数推定部は、3つ以上の前記ベースバンド信号と3つ以上の前記ベースバンド信号各々の極の推定値とに基づき、3つ以上の前記ベースバンド信号各々の前記振幅係数を推定する請求項4に記載の物体検知装置。
【請求項7】
前記位相インコヒーレンスパラメータ推定部は、3つ以上の前記ベースバンド信号各々の前記振幅係数の推定値に基づいて、前記位相インコヒーレンスパラメータを推定する請求項6に記載の物体検知装置。
【請求項8】
電波によって物体を検知するための物体検知方法であって、
少なくとも1つのコンピュータが、
一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを物体検知装置に対して相対運動する前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第一の送受信ステップと、
前記第一の送受信ステップとは異なる周波数帯で一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第二の送受信ステップと、
前記第一の送受信ステップと前記第二の送受信ステップにおいて合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを推定する位相ずれ推定ステップと、
前記位相ずれ推定ステップにおいて推定された前記第一の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを補正した上で、前記第一の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信ステップで照射した電波パルスの周波数帯から前記第二の送受信ステップで照射した電波パルスの周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する帯域補間ステップと、を実行する事を特徴とする物体検知方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのコンピュータが、さらに、
前記第一の送受信ステップと前記第二の送受信ステップで照射する電波パルスの照射時間を同一に設定し、かつ前記第一の送受信ステップと前記第二の送受信ステップで照射する電波パルスの中心周波数と帯域幅の比を同一に設定する制御ステップ、
を実行する事を特徴とする、請求項8に記載の物体検知方法。
【請求項10】
前記位相ずれ推定ステップは、
前記ベースバンド信号に基づいて、前記ベースバンド信号の極を推定する極推定ステップと、
前記極の推定値に基づいて、前記電波パルスの周波数に対し線形に変化する位相ずれを表す周波数インコヒーレンスパラメータを推定する周波数インコヒーレンスパラメータ推定ステップと、
前記ベースバンド信号及び前記極の推定値に基づいて、前記ベースバンド信号の振幅係数を推定する振幅係数推定ステップと、
前記振幅係数の推定値に基づいて、前記電波パルスの周波数に依存しない位相ずれを表す位相インコヒーレンスパラメータを推定する位相インコヒーレンスパラメータ推定ステップと、
を備える事を特徴とする、請求項9に記載の物体検知方法。
【請求項11】
一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体検知装置に対して相対運動する物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第一の送受信部と、
前記第一の送受信部とは異なる周波数帯で一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第二の送受信部と、
プロセッサと、を備え、物体を検知する物体検知装置において、
前記第一の送受信部と前記第二の送受信部が合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを推定する位相ずれ推定ステップと、
前記位相ずれ推定ステップにおいて推定された前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを補正した上で、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯から前記第二の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する帯域補間ステップと、を実行させる事を特徴とするプログラム。
【請求項12】
前記物体検知装置において、
前記第一の送受信部と前記第二の送受信部が照射する電波パルスの照射時間を同一に設定し、かつ前記第一の送受信部と前記第二の送受信部から照射する電波パルスの中心周波数と帯域幅の比を同一に設定する制御ステップを、実行させる事を特徴とする、請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記位相ずれ推定ステップは、
前記ベースバンド信号に基づいて、前記ベースバンド信号の極を推定する極推定ステップと、
前記極の推定値に基づいて、電波パルスの周波数に対し線形に変化する位相ずれを表す周波数インコヒーレンスパラメータを推定する周波数インコヒーレンスパラメータ推定ステップと、
前記ベースバンド信号及び前記極の推定値に基づいて、前記ベースバンド信号の振幅係数を推定する振幅係数推定ステップと、
前記振幅係数の推定値に基づいて、電波パルスの周波数に依存しない位相ずれを表す位相インコヒーレンスパラメータを推定する位相インコヒーレンスパラメータ推定ステップと、
を備える事を特徴とする、請求項12に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を検知対象物に照射し、対象物から反射された電波により検知対象物の存在を認識及び識別するための物体検知装置、物体検知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダの高分解能化の手法として、帯域補間法が非特許文献1及び非特許文献2において開示されている。
【0003】
帯域補間法を実施する際のレーダ装置の構成図を図5に示す。帯域補間法の実施にあたり、図5で示すように、バンド1で動作するレーダ11はバンド1の電波13を対象物10に照射し、対象物10から反射された電波を受信する。レーダ11は受信した電波からベースバンド信号を生成し、そのベースバンド信号を用いて対象物10の検知を行う。また、バンド2で動作するレーダ12はバンド2の電波14を対象物10に照射し、対象物10から反射された電波を受信する。レーダ12は受信した電波からベースバンド信号を生成し、そのベースバンド信号を用いて対象物10の検知を行う。
【0004】
図6に、バンド1の電波13を用いたレーダ11による測定で得たベースバンド信号1と、バンド2の電波14を用いたレーダ12による測定で得たベースバンド信号2を示す。帯域補間法では、バンド1のベースバンド信号1とバンド2のベースバンド信号2のそれぞれをモデル化する。次いで、図7で示すようにバンド1のベースバンド信号1とバンド2のベースバンド信号2をそれぞれ外挿する。そして、図7で示すようにベースバンド信号1とベースバンド信号2が補間帯域を通じて接続されるように帯域補間ベースバンド信号3を生成し、帯域補間を行う。図6の帯域補間前では帯域幅はバンド1単独もしくはバンド2単独の値になる。これに対し、図7の帯域補間後では帯域幅がバンド1と補間帯域とバンド2の合計値に拡張されるため、レーダの高分解能化が実現される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kevin M. Cuomo, Jean E. Piou, and Joseph T. Mayhan, "Ultrawide -Band Coherent Processing", IEEE TRANSACTIONS ON ANTENNAS AND PROPAGATION, VOL. 47, NO. 6, JUNE 1999
【非特許文献2】Yong Qiang Zou, Xun Zhang Gao, Xiang Li & Yong Xiang Liu, "A Matrix Pencil Algorithm Based Multiband Iterative Fusion Imaging Method", Scientific Reports | 6:19440 | DOI: 10.1038/srep19440
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5で示した帯域補間法を実施する際のレーダ装置の構成において、バンド1のレーダ11で得たベースバンド信号1とバンド2のレーダ12で得たベースバンド信号2の間に位相ずれ(インコヒーレンス)が発生する。バンド1のベースバンド信号1とバンド2のベースバンド信号2を用いて帯域補間を実施する際、位相ずれを表すインコヒーレンスパラメータの値を正しく推定した上で、そのインコヒーレンスパラメータを補正する必要がある。
【0007】
非特許文献1及び非特許文献2では、対象物10が移動していない(すなわちレーダ11及びレーダ12と対象物10の相対速度が0である)前提で、インコヒーレンスパラメータを推定する方法が開示されている。一方で、対象物10が移動している(すなわちレーダ11及びレーダ12と対象物10の相対速度が0でない)場合のインコヒーレンスパラメータの推定方法は開示されていない。
【0008】
一般に、検知する対象物が複数あり、かつそれらの移動速度が対象物毎に異なる場合、対象物毎にインコヒーレンスパラメータが異なる値を持つようになる。したがって対象物が移動する場合に帯域補間を行うためには、各対象物のインコヒーレンスパラメータ値を個別に推定する事が要求される。しかしながら、帯域補間の実施前で分解能が改善していない状況では、各対象物を分離して検知する事が困難なため、各対象物のインコヒーレンスパラメータ値を個別に推定する事は困難である。
【0009】
本発明が解決しようとする課題の一例は、上述した問題を鑑み、複数の対象物が異なる速度で移動する場合でも、インコヒーレンスパラメータ値の推定を可能にし、帯域補間法によるレーダの高分解能化を実現する事である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、
物体を検知する物体検知装置であって、
一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体検知装置に対して相対運動する前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第一の送受信部と、
前記第一の送受信部とは異なる周波数帯で一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第二の送受信部と、
前記第一の送受信部と前記第二の送受信部が合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを推定する位相ずれ推定部と、
前記位相ずれ推定部において推定された前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを補正した上で、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯から前記第二の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する帯域補間部と、を備える事を特徴とする物体検知装置が提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、
電波によって物体を検知するための物体検知方法であって、
少なくとも1つのコンピュータが、
一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを物体検知装置に対して相対運動する前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第一の送受信ステップと、
前記第一の送受信ステップとは異なる周波数帯で一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第二の送受信ステップと、
前記第一の送受信ステップと前記第二の送受信ステップにおいて合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを推定する位相ずれ推定ステップと、
前記位相ずれ推定ステップにおいて推定された前記第一の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを補正した上で、前記第一の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信ステップで照射した電波パルスの周波数帯から前記第二の送受信ステップで照射した電波パルスの周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する帯域補間ステップと、を実行する事を特徴とする物体検知方法が提供される。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、
一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体検知装置に対して相対運動する物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第一の送受信部と、
前記第一の送受信部とは異なる周波数帯で一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第二の送受信部と、
プロセッサと、を備え、物体を検知する物体検知装置において、
前記第一の送受信部と前記第二の送受信部が合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを推定する位相ずれ推定ステップと、
前記位相ずれ推定ステップにおいて推定された前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを補正した上で、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯から前記第二の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する帯域補間ステップと、を実行させる事を特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、複数の対象物が異なる速度で移動する場合でも、インコヒーレンスパラメータ値の推定を可能にし、帯域補間法によるレーダの高分解能化を実現する物体検知装置、物体検知方法及びプログラムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
上述した目的及びその他の目的、特徴及び利点は、以下に述べる公的な実施の形態、及びそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0015】
図1図1は、本発明による実施の形態における物体検知装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明による実施の形態における物体検知装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、本発明による実施の形態における物体検知装置の動作の一例を示した時間チャート図である。
図4図4は、本発明の実施の形態における物体検知装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
図5図5は、従来の物体検知装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、帯域補間前のベースバンド信号のスペクトルを表す図である。
図7図7は、帯域補間後のベースバンド信号のスペクトルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による物体検知装置、物体検知方法及びプログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以降に示す各図面において、同一又は相当部分の部位については、同一符号を付して示すこととし、その説明は繰り返さないことにする。
【0017】
以下、本発明の実施の形態における、物体検知装置、物体検知方法及びプログラムについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態では、複数の対象物が異なる速度で移動する場合でも、インコヒーレンスパラメータ値の推定を可能にし、帯域補間法によるレーダの高分解能化を実現する、物体検知装置、物体検知方法及びプログラムが開示される。
【0018】
(第一の実施の形態)
図1は、第一の実施の形態に係る物体検知装置1000の概要を示す機能ブロック図である。物体検知装置1000は、物体を検知する装置である。物体検知装置1000は、第一の送受信部1011と、第二の送受信部1012と、制御部1013と、演算部1014とを有する。
【0019】
第一の送受信部1011は、一定時間内に周波数を変化させた電波パルス(電波1001)を、物体検知装置1000に対して相対運動する対象物1005(物体)に照射し、対象物1005からの反射波(電波1002)を受信する。そして、第一の送受信部1011は、照射した電波1001と受信した反射波(電波1002)からベースバンド信号を生成する。
【0020】
第二の送受信部1012は、第一の送受信部1011とは異なる周波数帯で一定時間内に周波数を変化させた電波パルス(電波1003)を、対象物1005に照射し、対象物1005からの反射波(電波1004)を受信する。そして、第二の送受信部1012は、照射した電波1003と受信した反射波(電波1004)からベースバンド信号を生成する。
【0021】
制御部1013は、第一の送受信部1011及び第二の送受信部1012を制御する。
【0022】
演算部1014は、第一の送受信装置1011が生成したベースバンド信号と第二の送受信装置1012が生成したベースバンド信号の位相ずれを推定する。演算部1014は、第一の送受信装置1011と第二の送受信装置1012が合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られるベースバンド信号から上記位相ずれを推定する。
【0023】
また、演算部1014は、推定された位相ずれを補正した上で、第一の送受信部1011及び第二の送受信部1012のベースバンド信号から、第一の送受信部1011の周波数帯から第二の送受信部1012の周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する。「第一の送受信部1011の周波数帯」は、第一の送受信部1011が照射した電波パルスの周波数帯である。「第二の送受信部1012の周波数帯」は、第二の送受信部1012が照射した電波パルスの周波数帯である。
【0024】
演算部1014は、「位相ずれ推定部」及び「帯域補間部」として機能する。
【0025】
このような物体検知装置1000によれば、複数の対象物が異なる速度で移動する場合でも、インコヒーレンスパラメータ値の推定を可能にし、帯域補間法によるレーダの高分解能化を実現する事ができる。
【0026】
(第二の実施の形態)
[装置構成]
最初に図1を用いて第二の実施の形態における物体検知装置1000の構成について説明する。第二の実施の形態における物体検知装置1000は、第一の実施の形態における物体検知装置1000を具体化したものである。
【0027】
図1に示す第二の実施の形態における物体検知装置1000は、電波によって物体(以下、「対象物1005」と表記する)を検知するための装置である。図1に示すように、物体検知装置1000は、第一の送受信部1011と、第二の送受信部1012と、制御部1013と、演算部1014とを備えている。
【0028】
第一の送受信部1011は、中心周波数fc1を持つバンド1の電波の送受信を行う。第二の送受信部1012は、中心周波数fc2を持つバンド2の電波の送受信を行う。制御部1013は、第一の送受信部1011と第二の送受信部1012の制御を行う。演算部1014は、第一の送受信部1011と第二の送受信部1012から出力されるベースバンド信号に基づいて対象物1005の検知を行う。
【0029】
第一の送受信部1011は、バンド1の電波1001を対象物1005に照射する第一の送信部1101と、対象物1005から反射されたバンド1の電波1002を受信する第一の受信部1102を備えている。また、第二の送受信部1012は、バンド2の電波1003を対象物1005に照射する第二の送信部1103と、対象物1005から反射されたバンド2の電波1004を受信する第二の受信部1104を備えている。
【0030】
次に、図2に第二の実施の形態における演算部1014の内部構成を示す。第二の実施の形態における演算部1014は、図2で示すように、位相ずれ推定部1300と、帯域補間部1305と、物体検知部1306を備えている。位相ずれ推定部1300は、極推定部1301と、周波数インコヒーレンスパラメータ推定部1302と、振幅係数推定部1303と、位相インコヒーレンスパラメータ推定部1304を備えている。
【0031】
[装置動作]
第一の実施の形態では、物体検知装置1000を動作させることによって、物体検知方法が実施される。以下では、物体検知装置1000の動作説明を通じて、第一の実施の形態における物体検知方法を説明する。
【0032】
第一の実施の形態における物体検知方法の説明において、図1乃至図3を参照する。図1は、物体検知装置1000の構成を示す。図2は、演算部1014の構成を示す。図3は、第一の送信部1101から照射するバンド1の電波1001と第二の送信部1103から照射するバンド2の電波1003の周波数と照射タイミングを示す。
【0033】
図3で示すように、バンド1の第一の電波パルス1201と、バンド2の第二の電波パルス1202と、バンド1の第三の電波パルス1203の3つの電波パルスを用いる事が、第二の実施の形態の特徴である。なお、図3はあくまで一例であり、その他の構成を採用する事もできる。例えば、図3に示すように、バンド1の第一の電波パルス1201、及びバンド2の第二の電波パルス1202をこの順に照射した後、バンド2の第三の電波パルスを照射してもよい。
【0034】
非特許文献1及び非特許文献2に記載の従来例(図5及び図6参照)では、バンド1とバンド2の二つの信号から未知情報である対象物10の位置変数を消去して、インコヒーレンスパラメータ値を推定する。ただし、対象物10がレーダ11及びレーダ12に対し0でない相対速度で移動する場合、消去すべき未知情報が対象物10の位置変数と速度変数の二つとなる。このような場合、バンド1とバンド2の二つの信号では得られる方程式の数が不足するため、対象物10の位置変数と速度変数を消去して、インコヒーレンスパラメータ値を推定する事ができない。
【0035】
上記の従来例における問題点を解決するため、第二の実施の形態では、バンド1の第一の電波パルス1201と、バンド2の第二の電波パルス1202と、バンド1の第三の電波パルス1203の3つの電波パルスを用いる。このため、対象物1005が物体検知装置1000に対し0でない相対速度で移動し、消去すべき未知情報が対象物1005の位置変数と速度変数の二つである場合でも、それら未知情報の消去に必要な数の方程式を確保できる。結果、インコヒーレンスパラメータ値の推定が可能となる。
【0036】
図1に示した装置構成において、第一の送信部1101は、検知対象となる対象物1005に向けて、中心周波数fc1を持つバンド1の電波1001を、図3内の第一の電波パルス1201として示した照射タイミングと周波数の設定に基づいて照射する。具体的には、第一の電波パルス1201は、電波パルス幅PWの時間内に、中心周波数fc1とバンド幅BWの周波数スイープを行う。第一の受信部1102は、対象物1005から反射されたバンド1の電波1002を受信する。さらに第一の受信部1102は、第一の送信部1101から照射した電波1001と受信した電波1002を用いてベースバンド信号を生成し、同ベースバンド信号を演算部1014に出力する。
【0037】
ここで、対象物1005がM個存在したとする。そして、その中のm番目(m=1、2、・・・、M)の対象物1005が、物体検知装置1000から距離rの位置に存在し、物体検知装置1000に対し相対速度vで移動しているものとする。
【0038】
この時、バンド1の第一の電波パルス1201を送受信して得られるベースバンド信号s(k)は、以下の式(1)で示す全極モデルにより与えられる。
【0039】
【数1】
【0040】
ここで、kはベースバンド信号s(k)のサンプリング番号であり、ベースバンド信号s(k)のサンプリング点数をNとしてk=0、1、・・・、N-1の値を取る。
【0041】
式(1)におけるpは、m番目の対象物1005から反射された電波1002から生成されるベースバンド信号s(k)の極であり、以下の式(2)で定義される。
【0042】
【数2】
【0043】
ここでΔfはベースバンド信号s(k)のステップ周波数であり、Δf=BW/(N-1)で与えられる。cは光速である。また式(2)内のrm1"は以下の式(3)で定義される距離の次元を持つ変数である。
【0044】
【数3】
【0045】
ここでαはバンド1におけるチャープ率でありα1=πBW/PWで与えられる。
【0046】
式(1)におけるbは、m番目の対象物1005から反射された電波1002から生成されるベースバンド信号の振幅係数であり、以下の式(4)で定義される。
【0047】
【数4】
【0048】
はm番目の対象物1005から反射された電波1002の強度を表す実数値の変数である。また式(4)内のrm1'は以下の式(5)で定義される距離の次元を持つ変数である。
【0049】
【数5】
【0050】
また式(4)内のfmin1はベースバンド信号s(k)の最小周波数であり、以下の式(6)で与えられる。
【0051】
【数6】
【0052】
次に、第二の送信部1103は、対象物1005に向けて、中心周波数fc2を持つバンド2の電波1003を、図3内の第二の電波パルス1202として示した照射タイミングと周波数の設定に基づいて照射する。具体的には、第二の電波パルス1202は、第一の電波パルス1201の照射開始時間からパルス繰り返し間隔PRIが経過した時点で照射を開始する。また第二の電波パルス1202は、パルス幅PWの時間内に、中心周波数fc2とバンド幅BWの周波数スイープを行う。第二の受信部1104は、対象物1005から反射されたバンド2の電波1004を受信する。さらに第二の受信部1104は、第二の送信部1103から照射した電波1003と受信した電波1004を用いてベースバンド信号を生成し、同ベースバンド信号を演算部1014に出力する。
【0053】
ここで、上記と同様に、対象物1005がM個存在したとする。そして、その中のm番目(m=1、2、・・・、M)の対象物1005が、物体検知装置1000から距離rの位置に存在し、物体検知装置1000に対し相対速度vで移動しているものとする。
【0054】
この時、バンド2の第二の電波パルス1202を送受信して得られるベースバンド信号s(k´)は、以下の式(7)で示す全極モデルにより与えられる。
【0055】
【数7】
【0056】
ここで、k´はベースバンド信号s(k´)のサンプリング番号であり、ベースバンド信号s(k´)のサンプリング点数をNとしてk´=0、1、・・・、N-1の値を取る。
【0057】
式(7)におけるqは、m番目の対象物1005から反射された電波1004から生成されるベースバンド信号s(k´)の極であり、以下の式(8)で定義される。
【0058】
【数8】
【0059】
ここでΔfはベースバンド信号s(k´)のステップ周波数であり、Δf=BW2/(N2-1)で与えられる。式(8)内のθは、バンド1の送受信部1011とバンド2の送受信部1012が同期していない事もしくは同期ずれにより生じる位相ずれを表す周波数インコヒーレンスパラメータである。式(8)内のrm2"は以下の式(9)で定義される距離の次元を持つ変数である。
【0060】
【数9】
【0061】
ここでα2はバンド2におけるチャープ率でありα2=πBW2/PW2で与えられる。
【0062】
式(7)におけるdは、m番目の対象物1005から反射された電波1004から生成されるベースバンド信号の振幅係数であり、以下の式(10)で定義される。
【0063】
【数10】
【0064】
はm番目の対象物1005から反射された電波1004の強度を表す実数値の変数である。式(10)内のηは、バンド1の送受信部1011とバンド2の送受信部1012が同期していない事もしくは同期ずれにより生じる位相ずれを表す位相インコヒーレンスパラメータである。また式(10)内のrm2'は以下の式(11)で定義される距離の次元を持つ変数である。
【0065】
【数11】
【0066】
また式(10)内のfmin2はベースバンド信号s(k´)の最小周波数であり以下の式(12)で与えられる。
【0067】
【数12】
【0068】
次に、第一の送信部1101は、検知対象となる対象物1005に向けて、中心周波数fc1を持つバンド1の電波1001を、図3内の第三の電波パルス1203として示した照射タイミングと周波数の設定に基づいて照射する。具体的には、第三の電波パルス1203は、第二の電波パルス1202の照射開始時間からパルス繰り返し間隔PRIが経過した時点で照射を開始する。また第三の電波パルス1203は、パルス幅PWの時間内に、中心周波数fc1とバンド幅BWの周波数スイープを行う。第一の受信部1102は、対象物1005から反射されたバンド1の電波1002を受信する。さらに第一の受信部1102は、第一の送信部1101から照射した電波1001と受信した電波1002を用いてベースバンド信号を生成し、同ベースバンド信号を演算部1014に出力する。
【0069】
ここで、上記と同様に、対象物1005がM個存在したとする。そして、その中のm番目(m=1、2、・・・、M)の対象物1005が、物体検知装置1000から距離rの位置に存在し、物体検知装置1000に対し相対速度vで移動しているものとする。
【0070】
この時、バンド1の第三の電波パルス1203を送受信して得られるベースバンド信号s(k)は、以下の式(13)で示す全極モデルにより与えられる。
【0071】
【数13】
【0072】
ここで、kはベースバンド信号s(k)のサンプリング番号であり、第一の電波パルス1201で得られるベースバンド信号s(k)と同じくk=0、1、・・・、N-1の値を取る。
【0073】
式(13)におけるuは、m番目の対象物1005から反射された電波1002から生成されるベースバンド信号s(k)の極であり、以下の式(14)で定義される。
【0074】
【数14】
【0075】
Δfはベースバンド信号s(k)のステップ周波数であり、Δf=BW/(N-1)で与えられる。式(14)内のrm3"は以下の式(15)で定義される距離の次元を持つ変数である。
【0076】
【数15】
【0077】
式(13)におけるgは、m番目の対象物1005から反射された電波1002から生成されるベースバンド信号の振幅係数であり、以下の式(16)で定義される。
【0078】
【数16】
【0079】
式(16)内のfmin1はベースバンド信号s(k)の最小周波数であり、上記式(6)で与えられる。式(16)内のrm3'は以下の式(17)で定義される距離の次元を持つ変数である。
【0080】
【数17】
【0081】
第一の電波パルス1201で得られるベースバンド信号s(k)と、第二の電波パルス1202で得られるベースバンド信号s(k´)と、第三の電波パルス1203で得られるベースバンド信号s(k)は、それぞれ図2で示した演算部1013内の極推定部1301に入力される。
【0082】
次に、極推定部1301(図2参照)の動作について説明する。極推定部1301は、入力された第一の電波パルス1201で得られるベースバンド信号s(k)から、ベースバンド信号s(k)の極pを推定する。極の推定方法としては、非特許文献2に記載されているmatrix pencil法を用いてよい。matrix pencil法による極の推定方法は以下のとおりである。
【0083】
まず、MDL(minimum description length)やAIC(Akaike information criterion)により対象物1005の個数Mを推定し、その推定値をMとする。
【0084】
次に、以下の式(18)と(19)で示す(N-M)行×M列の行列XとXをそれぞれベースバンド信号s(k)から生成する。
【0085】
【数18】
【0086】
【数19】
【0087】
式(18)と(19)内のMはpencil parameterと呼ばれる変数であり、M≦M≦(N-M)を満たす自然数の値に設定する。次に、行列XとXをそれぞれ式(20)と(21)で示すように特異値分解する。
【0088】
【数20】
【0089】
【数21】
【0090】
式(20)と式(21)内のΔM~とΣM~は次数Mの対角行列であり、ΔM0-M~とΣM0-M~は次数M-Mの対角行列である。またU、V、U、Vは(N-M)行×M列の行列であり、U0´、V0´、U1´、V1´は(N-M)行×(M-M)列の行列である。
【0091】
次に、特異値分解で得た行列から、式(22)で示す行列X0sと、式(23)で示す行列X1sを生成する。
【0092】
【数22】
【0093】
【数23】
【0094】
以下の式(24)で与えられる一般化固有値問題を解いて得られる固有値λが、極の推定値p (m=1、2、・・・M~)となる。
【0095】
【数24】
【0096】
極推定部1301は、同様の手順を第二の電波パルス1202で得られるベースバンド信号s(k´)にも適用し、ベースバンド信号s(k´)の極q (m=1、2、・・・M)を推定する。また、極推定部1301は、同様の手順を第三の電波パルス1203で得られるベースバンド信号s(k)にも適用し、ベースバンド信号s(k)の極u (m=1、2、・・・M)を推定する。
【0097】
極推定部1301で生成された極の推定値p とq とu (m=1、2、・・・M)は、周波数インコヒーレンスパラメータ推定部1302に入力される。
【0098】
次に、周波数インコヒーレンスパラメータ推定部1302(図2参照)の動作について説明する。周波数インコヒーレンスパラメータ推定部1302は、極の推定値p とq とu (m=1、2、・・・M)に基づいて、電波パルスの周波数に対し線形に変化する位相ずれを表す周波数インコヒーレンスパラメータを推定する。周波数インコヒーレンスパラメータ推定部1302に入力された極の推定値p とq とu (m=1、2、・・・M)を用いて、周波数インコヒーレンスパラメータの推定値θは以下の式(25)のように表現される。
【0099】
【数25】
【0100】
式(25)内のθ(m=1、2、・・・M)は対象物1005の物体検知装置1000に対する相対速度vが0でない場合に発生する周波数インコヒーレンスパラメータであり、以下の式(26)で与えられる。
【0101】
【数26】
【0102】
なお式(25)と(26)は、式(2)、(3)、(8)、(9)、(14)及び(15)を用いて得られる周波数インコヒーレンスパラメータθと極pとqとuの関係式において、パラメータ(θ,p,q,u)をそれらの推定値(θ,p ,q ,u )に置換して得られるものである。
【0103】
ここで、図1内の制御部1013は、相対速度vの効果で発生する周波数インコヒーレンスパラメータθの内、式(26)内の右辺第1項の成分を消去するための制御を行う。具体的には、制御部1013は、第一の送受信部1011のパルス幅PWと第二の送受信部1012のパルス幅PWが等しくなるように、パルス幅PWとPWを設定する。さらに、制御部1013は、相対速度vの効果で発生する周波数インコヒーレンスパラメータθの内、式(26)内の右辺第2項の成分を消去するための制御を行う。具体的には、制御部1013は、fc2/α=fc1/αを満たすように、第一の送受信部1011の中心周波数fc1とチャープ率α1と第二の送受信部1012の中心周波数fc2とチャープ率αをそれぞれ設定する。なお、パルス幅がPW=PWの条件を満たす場合、fc2/α=fc1/αの条件は中心周波数と帯域幅の条件fc2/BW=fc1/BWと等価である。上記パルス幅と中心周波数とチャープ率もしくはバンド幅の制御により、対象物1005の物体検知装置1000に対する相対速度vの値によらず常に相対速度vの効果で発生する周波数インコヒーレンスパラメータθ(m=1、2、・・・M)を0にできる。
【0104】
第二の実施の形態では、制御部1013は、第一の送受信部1011と第二の送受信部1012のパルス幅と中心周波数とチャープ率もしくはバンド幅を上記のように設定(制御)する。そして、当該前提のもと、周波数インコヒーレンスパラメータ推定部1302は、入力された極の推定値p とq とu (m=1、2、・・・M)を用い、以下の式(27)で周波数インコヒーレンスパラメータの推定値θを算出する。式(27)は、式(25)内の右辺第2項の成分を消去したものである。
【0105】
【数27】
【0106】
このように、第二の実施の形態では、第一の送受信部1011と第二の送受信部1012のパルス幅と中心周波数とチャープ率もしくはバンド幅の条件設定により、相対速度vの効果で発生するインコヒーレンスパラメータを消去する。当該手法は、非特許文献1及び非特許文献2に記載の従来例には無い第二の実施の形態の特徴である。
【0107】
次に、振幅係数推定部1303(図2参照)の動作について説明する。振幅係数推定部1303は、ベースバンド信号s(k)と、ベースバンド信号s(k)の極の推定値p (m=1、2、・・・M)を用いて、以下の式(28)によりベースバンド信号s(k)の振幅係数bの推定値b を生成する。ベースバンド信号s(k)は、バンド1の第一の電波パルス1201を送受信して得られる信号であり、第一の送受信部1011により生成される。ベースバンド信号s(k)の極の推定値p (m=1、2、・・・M)は、極推定部1301で生成された値である。
【0108】
【数28】
【0109】
式(28)においてTはベクトルの転置、Hは行列のエルミート共役を表す。また式(28)内における行列Pは極の推定値p (m=1、2、・・・M)で構成されるVandermonde行列であり、式(29)で与えられる。
【0110】
【数29】
【0111】
上記と同様の手順により、振幅係数推定部1303は、ベースバンド信号s(k´)と、ベースバンド信号s(k´)の極の推定値q (m=1、2、・・・M)を用いて、ベースバンド信号s(k´)の振幅係数dの推定値d を生成する。ベースバンド信号s(k´)は、バンド2の第二の電波パルス1202を送受信して得られる信号であり、第二の送受信部1012により生成される。ベースバンド信号s(k´)の極の推定値q (m=1、2、・・・M)は、極推定部1301で生成された値である。
【0112】
さらに振幅係数推定部1303は、ベースバンド信号s(k)と、ベースバンド信号s(k)の極の推定値u (m=1、2、・・・M)を用いて、ベースバンド信号s(k)の振幅係数gの推定値g を生成する。ベースバンド信号s(k)は、バンド1の第一の電波パルス1201を送受信して得られる信号であり、第一の送受信部1011により生成される。ベースバンド信号s(k)の極の推定値u (m=1、2、・・・M)は、極推定部1301で生成された値である。
【0113】
振幅係数推定部1303で生成された振幅係数の推定値b とd とg (m=1、2、・・・M)は、位相インコヒーレンスパラメータ推定部1304に入力される。
【0114】
次に、位相インコヒーレンスパラメータ推定部1304(図2参照)の動作について説明する。位相インコヒーレンスパラメータ推定部1304は、振幅係数の推定値b とd とg (m=1、2、・・・M)に基づいて、電波パルスの周波数に依存しない位相ずれを表す位相インコヒーレンスパラメータを推定する。位相インコヒーレンスパラメータ推定部1304に入力された振幅係数の推定値b とd とg (m=1、2、・・・M)を用いて、位相インコヒーレンスパラメータの推定値ηは以下の式(30)のように表現される。
【0115】
【数30】
【0116】
式(30)内のη(m=1、2、・・・M)は対象物1005の物体検知装置1000に対する相対速度vが0でない場合に発生する位相インコヒーレンスパラメータである。
【0117】
第二の実施の形態では、相対速度vによらず周波数インコヒーレンスパラメータθを消去するためのパルス幅の条件(PW=PW)と、中心周波数とチャープ率の条件(fc2/α=fc1/α)を適用する事は既に述べた。それらの条件を適用する場合において、相対速度vの効果で発生する位相インコヒーレンスパラメータη(m=1、2、・・・M)は以下の式(31)で与えられる。
【0118】
【数31】
【0119】
なお式(30)と(31)は、式(3)~(5)と(9)~(11)と(15)~(17)を用いて得られる位相インコヒーレンスパラメータηと振幅係数bとdとgの関係式において、パラメータ(η,b,d,g)をそれらの推定値(η,b ,d ,g )に置換して得られるものである。
【0120】
通常、c>>v、fc1>>|fmin1|=BW1/2、fc2>>|fmin2|=BW/2が成り立つ。このため、式(31)における相対速度vの効果で発生する位相インコヒーレンスパラメータη(m=1、2、・・・M)は無視できる程0に近い値となる。したがって、位相インコヒーレンスパラメータ推定部1304は、入力された振幅係数の推定値b とd とg (m=1、2、・・・M)を用い、以下の式(32)で位相インコヒーレンスパラメータの推定値ηを算出する。
【0121】
【数32】
【0122】
次に、帯域補間部1305(図2参照)の動作について説明する。帯域補間部1305には、ベースバンド信号s(k)と、ベースバンド信号s(k´)と、周波数インコヒーレンスパラメータの推定値θと、位相インコヒーレンスパラメータの推定値ηが入力される。ベースバンド信号s(k)は、バンド1の第一の電波パルス1201を送受信して得られる信号(測定値)であり、第一の送受信部1011により生成される。ベースバンド信号s(k´)は、バンド2の第二の電波パルス1202を送受信して得られる信号(測定値)であり、第二の送受信部1012により生成される。周波数インコヒーレンスパラメータの推定値θは、周波数インコヒーレンスパラメータ推定部1302で生成された値である。位相インコヒーレンスパラメータの推定値ηは、位相インコヒーレンスパラメータ推定部1304で生成された値である。
【0123】
帯域補間部1305は、以下の式(33)で示すように、ベースバンド信号s(k´)に対し周波数インコヒーレンスパラメータと位相インコヒーレンスパラメータの補正を行う。帯域補間部1305は、以下の式(33)で示すように、周波数インコヒーレンスパラメータの推定値θと位相インコヒーレンスパラメータの推定値ηを用いて、当該補正を行う。
【0124】
【数33】
【0125】
式(33)において、s2´(k´)が周波数インコヒーレンスパラメータと位相インコヒーレンスパラメータを補正した後のバンド2におけるベースバンド信号となる。
【0126】
次に、バンド1とバンド2、及びバンド1とバンド2の間の補間帯域の全てが定義域となる帯域補間後のベースバンド信号のモデルとして式(34)の全極モデルを用いる。
【0127】
【数34】
【0128】
帯域補間後のベースバンド信号を生成するには、式(34)の全極モデル内における振幅係数hと極w(m=1、2、・・・、M)の値を決定する必要がある。式(34)の全極モデル内における振幅係数hと極wの決定方法として、以下の式(35)で示す条件に基づき、式(34)の全極モデル内における振幅係数hと極wを決定する方法が挙げられる。式(35)は、バンド1におけるベースバンド信号のモデル値s(k)と測定値s(k)の二乗誤差と、バンド2におけるベースバンド信号のモデル値s(k´)とインコヒーレンスパラメータ補正後の測定値s2´(k´)の二乗誤差の和Eを最小化する条件である。
【0129】
【数35】
【0130】
上記で得られた帯域補間後のベースバンド信号のモデル値s(k)は物体検知部1306に入力される。
【0131】
最後に、物体検知部1306は、帯域補間部1305で生成された帯域補間後のベースバンド信号のモデル値s(k)に基づいて、対象物1005の位置及び速度の検知を行う。帯域補間後のベースバンド信号のモデル値s(k)に基づく対象物1005の位置及び速度の検知は、周知の技術を用いて実現される。
【0132】
[プログラム]
ここで、第二の実施の形態におけるプログラムを実行することによって物体検知装置1000を実現するコンピュータ(演算装置)について図4を用いて説明する。図4は第二の実施の形態における物体検知装置1000を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0133】
図4に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0134】
CPU111は、記憶装置113に格納された、第二の実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、第二の実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、第二の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0135】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。
【0136】
ディスプレイ装置119は、演算部1014において検出ないし計算された結果の少なくとも一部を表示してもよい。演算部1014において検出ないし計算された結果は、以下を含む。
・極推定部1301で計算された極の推定値
・周波数インコヒーレンスパラメータ推定部1302で計算された周波数インコヒーレンスパラメータの推定値
・振幅係数推定部1303で計算された振幅係数の推定値
・位相インコヒーレンスパラメータ推定部1304で計算された位相インコヒーレンスパラメータの推定値
・帯域補間部1305で計算された帯域補間後のベースバンド信号
・物体検知部1306で検知した対象物1005の位置及び速度
【0137】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0138】
記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイスが挙げられる。その他、記録媒体120の具体例としては、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体や、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0139】
なお、第二の実施の形態における物体検知装置1000は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、物体検知装置1000は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0140】
[効果]
以下において、第二の実施の形態の効果を要約する。
【0141】
対象物1005が物体検知装置1000に対し0でない相対速度で移動する場合、インコヒーレンスパラメータ値の推定において消去すべき未知情報が対象物1005の位置変数と速度変数の二つとなる。そこで、第二の実施の形態の物体検知装置1000及び物体検知方法では、バンド1の第一の電波パルス1201と、バンド2の第二の電波パルス1202と、バンド1の第三の電波パルス1203の3つの電波パルスを用いる。このため、対象物1005の位置変数と速度変数の消去に必要な数の方程式を確保し、インコヒーレンスパラメータ値の推定が可能となる。
【0142】
また、第二の実施の形態の物体検知装置1000及び物体検知方法によれば、第一の送受信部1011と第二の送受信部1012のパルス幅と中心周波数とチャープ率もしくはバンド幅の条件、適切に制御する事ができる。これにより、対象物1005と物体検知装置1000の相対速度vの効果で発生するインコヒーレンスパラメータの消去を可能にする効果がある。
【0143】
上記により、対象物1005が物体検知装置1000が0でない相対速度で移動している場合においても、インコヒーレンスパラメータ値の推定を可能にし、帯域補間法によるレーダの高分解能化を実現できる効果がある。
【0144】
ここで、変形例を説明する。上記実施形態では、図3で示すように、バンド1の第一の電波パルス1201と、バンド2の第二の電波パルス1202と、バンド1の第三の電波パルス1203の3つの電波パルスを用いた。変形例として、4つ以上の電波パルスを用いてもよい。この場合の処理は、4つ以上の電波パルスの中から、3つの電波パルスを選択してインコヒーレンスパラメータの推定を行う。4つ以上の電波パルスの中から3つの電波パルスを選択する手法は特段制限されず、あらゆる手法を採用できる。また、3つの電波パルスを一組として、複数の様々な電波パルスの組に対してそれぞれインコヒーレンスパラメータを推定してもよい。そして、推定した複数の組のインコヒーレンスパラメータの統計値を算出する事で、熱雑音などのランダムノイズの影響を低減し、インコヒーレンスパラメータの推定精度を向上する方法を用いても良い。統計値は、平均値、中央値、最頻値等であるが、これらに限定されない。
【0145】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、前述の各特許文献等に開示されている内容は、本発明に引用をもって繰り込むことも可能とする。本発明の全開示(特許請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施の形態の変更・調整が可能である。また、本発明の特許請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせあるいは選択も可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって、当業者であればなし得ることが可能な各種変形、修正を含むことは勿論である。
【0146】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
1. 物体を検知する物体検知装置であって、
一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体検知装置に対して相対運動する前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第一の送受信部と、
前記第一の送受信部とは異なる周波数帯で一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第二の送受信部と、
前記第一の送受信部と前記第二の送受信部が合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを推定する位相ずれ推定部と、
前記位相ずれ推定部において推定された前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを補正した上で、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯から前記第二の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する帯域補間部と、を備える事を特徴とする物体検知装置。
2. 前記第一の送受信部と前記第二の送受信部が照射する電波パルスの照射時間を同一に設定し、かつ前記第一の送受信部と前記第二の送受信部から照射する電波パルスの中心周波数と帯域幅の比を同一に設定する制御部と、
を備える事を特徴とする、1に記載の物体検知装置。
3. 前記位相ずれ推定部は、
前記ベースバンド信号に基づいて、前記ベースバンド信号の極を推定する極推定部と、
前記極の推定値に基づいて、電波パルスの周波数に対し線形に変化する位相ずれを表す周波数インコヒーレンスパラメータを推定する周波数インコヒーレンスパラメータ推定部と、
前記ベースバンド信号及び前記極の推定値に基づいて、前記ベースバンド信号の振幅係数を推定する振幅係数推定部と、
前記振幅係数の推定値に基づいて、電波パルスの周波数に依存しない位相ずれを表す位相インコヒーレンスパラメータを推定する位相インコヒーレンスパラメータ推定部と、
を備える事を特徴とする、2に記載の物体検知装置。
4. 前記極推定部は、前記合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる3つ以上の前記ベースバンド信号各々の極を推定する3に記載の物体検知装置。
5. 前記周波数インコヒーレンスパラメータ推定部は、3つ以上の前記ベースバンド信号各々の極の推定値に基づいて、前記周波数インコヒーレンスパラメータを推定する4に記載の物体検知装置。
6. 前記振幅係数推定部は、3つ以上の前記ベースバンド信号と3つ以上の前記ベースバンド信号各々の極の推定値とに基づき、3つ以上の前記ベースバンド信号各々の前記振幅係数を推定する4又は5に記載の物体検知装置。
7. 前記位相インコヒーレンスパラメータ推定部は、3つ以上の前記ベースバンド信号各々の前記振幅係数の推定値に基づいて、前記位相インコヒーレンスパラメータを推定する6に記載の物体検知装置。
8. 電波によって物体を検知するための物体検知方法であって、
少なくとも1つのコンピュータが、
一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを物体検知装置に対して相対運動する前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第一の送受信ステップと、
前記第一の送受信ステップとは異なる周波数帯で一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第二の送受信ステップと、
前記第一の送受信ステップと前記第二の送受信ステップにおいて合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを推定する位相ずれ推定ステップと、
前記位相ずれ推定ステップにおいて推定された前記第一の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを補正した上で、前記第一の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信ステップで生成した前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信ステップで照射した電波パルスの周波数帯から前記第二の送受信ステップで照射した電波パルスの周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する帯域補間ステップと、を実行する事を特徴とする物体検知方法。
9. 前記少なくとも1つのコンピュータが、さらに、
前記第一の送受信ステップと前記第二の送受信ステップで照射する電波パルスの照射時間を同一に設定し、かつ前記第一の送受信ステップと前記第二の送受信ステップで照射する電波パルスの中心周波数と帯域幅の比を同一に設定する制御ステップ、
を実行する事を特徴とする、8に記載の物体検知方法。
10. 前記位相ずれ推定ステップは、
前記ベースバンド信号に基づいて、前記ベースバンド信号の極を推定する極推定ステップと、
前記極の推定値に基づいて、前記電波パルスの周波数に対し線形に変化する位相ずれを表す周波数インコヒーレンスパラメータを推定する周波数インコヒーレンスパラメータ推定ステップと、
前記ベースバンド信号及び前記極の推定値に基づいて、前記ベースバンド信号の振幅係数を推定する振幅係数推定ステップと、
前記振幅係数の推定値に基づいて、前記電波パルスの周波数に依存しない位相ずれを表す位相インコヒーレンスパラメータを推定する位相インコヒーレンスパラメータ推定ステップと、
を備える事を特徴とする、9に記載の物体検知方法。
11. 一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体検知装置に対して相対運動する物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第一の送受信部と、
前記第一の送受信部とは異なる周波数帯で一定時間内に周波数を変化させた電波パルスを前記物体に照射し、前記物体からの反射波を受信し、照射した電波と受信した反射波からベースバンド信号を生成する第二の送受信部と、
プロセッサと、を備え、物体を検知する物体検知装置において、
前記第一の送受信部と前記第二の送受信部が合計で3つ以上の電波パルスを照射した時に得られる前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを推定する位相ずれ推定ステップと、
前記位相ずれ推定ステップにおいて推定された前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号の位相ずれを補正した上で、前記第一の送受信部が生成した前記ベースバンド信号と前記第二の送受信部が生成した前記ベースバンド信号から、前記第一の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯から前記第二の送受信部が照射した電波パルスの周波数帯までを補間した帯域補間信号を生成する帯域補間ステップと、を実行させる事を特徴とするプログラム。
12. 前記物体検知装置において、
前記第一の送受信部と前記第二の送受信部が照射する電波パルスの照射時間を同一に設定し、かつ前記第一の送受信部と前記第二の送受信部から照射する電波パルスの中心周波数と帯域幅の比を同一に設定する制御ステップを、実行させる事を特徴とする、11に記載のプログラム。
13. 前記位相ずれ推定ステップは、
前記ベースバンド信号に基づいて、前記ベースバンド信号の極を推定する極推定ステップと、
前記極の推定値に基づいて、電波パルスの周波数に対し線形に変化する位相ずれを表す周波数インコヒーレンスパラメータを推定する周波数インコヒーレンスパラメータ推定ステップと、
前記ベースバンド信号及び前記極の推定値に基づいて、前記ベースバンド信号の振幅係数を推定する振幅係数推定ステップと、
前記振幅係数の推定値に基づいて、電波パルスの周波数に依存しない位相ずれを表す位相インコヒーレンスパラメータを推定する位相インコヒーレンスパラメータ推定ステップと、
を備える事を特徴とする、12に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0147】
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス
1000 物体検知装置
1001、1003 電波(送信信号)
1002、1004 電波(受信信号)
1005 対象物(検知対象となる物体)
1011 第一の送受信部(バンド1)
1011 第二の送受信部(バンド2)
1013 制御部
1014 演算部
1101 第一の送信部
1102 第一の受信部
1103 第二の送信部
1104 第二の受信部
1300 位相ずれ推定部
1301 極推定部
1302 周波数インコヒーレンスパラメータ推定部
1303 振幅係数推定部
1304 位相インコヒーレンスパラメータ推定部
1305 帯域補間部
1306 物体検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7