(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104602
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】面評価方法及び面評価システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240729BHJP
G01N 15/02 20240101ALN20240729BHJP
【FI】
G06Q50/08
G01N15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008908
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】福島 陽
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
(72)【発明者】
【氏名】岡本 遥河
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】メッシュのサイズにかかわらず高精度な計測データを容易に取得することができる面評価方法及び面評価システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る面評価方法は、対象面Xに沿って計測装置を移動させながら計測装置が一定時間ごとに対象面Xを計測して複数の計測データを取得する工程と、各計測データに各計測データが計測された位置である計測点Pを位置測位システムが対応付ける工程と、対象面XにメッシュMを設定する工程と、対象面Xにおける計測点Pの周囲の領域を計測エリアKとして計測エリアKを設定する工程と、計測エリアKが重なるメッシュMに計測データを割り当てる周辺メッシュ割り当て工程と、割り当てられた計測データから対象面XをメッシュMごとに評価する工程と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象の面である対象面を評価する面評価方法であって、
前記対象面に沿って計測装置を移動させながら前記計測装置が一定時間ごとに前記対象面を計測して複数の計測データを取得する工程と、
各前記計測データに、各前記計測データが計測された位置である計測点を位置測位システムが対応付ける工程と、
前記対象面にメッシュを設定する工程と、
前記対象面における前記計測点の周囲の領域を計測エリアとして前記計測エリアを設定する工程と、
前記計測エリアが重なる前記メッシュに前記計測データを割り当てる周辺メッシュ割り当て工程と、
割り当てられた前記計測データから前記対象面を前記メッシュごとに評価する工程と、
を備える、
面評価方法。
【請求項2】
前記計測点を含む前記メッシュに前記計測データを割り当てる単一メッシュ割り当て工程を更に備え、
前記周辺メッシュ割り当て工程及び前記単一メッシュ割り当て工程の双方を実行し、前記周辺メッシュ割り当て工程及び前記単一メッシュ割り当て工程の双方において前記計測データが割り当てられたメッシュから、前記周辺メッシュ割り当て工程において割り当てられた前記計測データ、及び前記単一メッシュ割り当て工程において割り当てられた前記計測データのいずれかを削除する、
請求項1に記載の面評価方法。
【請求項3】
前記周辺メッシュ割り当て工程では、前記メッシュの中心に前記計測エリアが重なる前記メッシュに前記計測データを割り当てる、
請求項1又は2に記載の面評価方法。
【請求項4】
前記計測エリアを設定する工程では、前記計測装置の計測感度に応じて前記計測エリアを設定する、
請求項1又は2に記載の面評価方法。
【請求項5】
前記計測エリアを設定する工程では、前記対象面における前記計測装置の進行方向に応じて前記計測エリアを設定する、
請求項1又は2に記載の面評価方法。
【請求項6】
前記対象面は、締固めが行われた盛立面である、
請求項1又は2に記載の面評価方法。
【請求項7】
前記周辺メッシュ割り当て工程では、前記計測装置が前記計測を行うごとに、前記メッシュに前記計測エリアが重なる領域の面積を算出し、
前記評価する工程では、前記メッシュの面積に対する前記重なる領域の面積の割合と前記計測データとの積の総和を、前記割合の総和で除した値を評価する、
請求項1又は2に記載の面評価方法。
【請求項8】
前記評価する工程では、前記計測エリアの内部の位置に応じた前記計測装置の計測感度を加味して前記対象面を前記メッシュごとに評価する、
請求項1又は2に記載の面評価方法。
【請求項9】
前記計測データを取得する工程では、前記計測装置が盛土の比抵抗を前記計測データとして取得する、
請求項1又は2に記載の面評価方法。
【請求項10】
前記計測データを取得する工程では、複数の前記計測装置の一方が盛土の比抵抗を前記計測データとして取得し、複数の前記計測装置の他方が比誘電率を前記計測データとして取得する、
請求項1又は2に記載の面評価方法。
【請求項11】
計測対象の面である対象面を評価する面評価システムであって、
前記対象面に沿って移動しながら一定時間ごとに前記対象面を計測して複数の計測データを取得する計測装置と、
各前記計測データに、各前記計測データが計測された位置である計測点を対応付ける位置測位システムと、
前記対象面にメッシュを設定するメッシュ設定部と、
前記対象面における前記計測点の周囲の領域を計測エリアとして前記計測エリアを設定する計測エリア設定部と、
前記計測エリアが重なる前記メッシュに前記計測データを割り当てる周辺メッシュ割り当て部と、
割り当てられた前記計測データから前記対象面を前記メッシュごとに評価する評価部と、
を備える、
面評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測対象の面である対象面を評価する面評価方法及び面評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運搬されて締固められる盛立工事の品質管理のための品質管理システムが記載されている。品質管理システムは、締固められ盛立構造物を形成する盛立材料の品質を管理する。品質管理システムは、盛立材料の品質情報を取得するステップと、品質管理の取得後、運搬された盛立材料の盛立位置情報及び締固め情報を取得するステップと、品質情報と盛立位置情報及び締固め情報とを照合するステップとを備える。
【0003】
締固め情報を取得するステップでは、締固め機械の移動経路から、複数の矩形状の締固め対象領域のそれぞれに対して締固め機械による転圧回数が算出される。転圧回数の取得では、締固め機械が締固め対象領域の各頂点に1回ずつ到達したときに当該締固め対象領域の転圧回数を1加算する。このように、複数の締固め対象領域のそれぞれに対して転圧回数が取得され、取得された転圧回数はリアルタイムで送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した締固め対象領域等、矩形状のメッシュが対象面に設定され、計測装置が走行しながら対象面を計測し、計測装置の計測点が位置する1つのメッシュに計測データを割り当ててメッシュごとに対象面を評価する方法が知られている。しかしながら、この方法では、実際に計測装置が対象面の広範囲を計測していたとしても、計測点が位置する1つのメッシュにしか計測データが割り当てられないため、狭い範囲での計測データしか得られないという問題が生じうる。特にメッシュのサイズが小さい場合にこの問題が顕著となる。この場合、全てのメッシュを埋め尽くすように計測装置を走行させる必要があるため、計測に多大な労力を要する。
【0006】
一方、メッシュのサイズが大きい場合には、比較的上記の問題は生じにくい。しかしながら、この場合、大きなメッシュの中に多くの計測点の計測データが割り当てられるため、メッシュに割り当てられる計測データの精度が低下するという問題が生じうる。従って、メッシュのサイズにかかわらず高精度な計測データを容易に取得できることが求められる。
【0007】
本開示は、メッシュのサイズにかかわらず高精度な計測データを容易に取得することができる面評価方法及び面評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る面評価方法は、(1)計測対象の面である対象面を評価する面評価方法である。面評価方法は、対象面に沿って計測装置を移動させながら計測装置が一定時間ごとに対象面を計測して複数の計測データを取得する工程と、各計測データに、各計測データが計測された位置である計測点を位置測位システムが対応付ける工程と、対象面にメッシュを設定する工程と、対象面における計測点の周囲の領域を計測エリアとして計測エリアを設定する工程と、計測エリアが重なるメッシュに計測データを割り当てる周辺メッシュ割り当て工程と、割り当てられた計測データから対象面をメッシュごとに評価する工程と、を備える。
【0009】
この面評価方法では、計測装置が対象面上を移動しながら対象面を一定時間ごとに計測することによって複数の計測データが取得され、各計測データには計測された位置である計測点が対応付けられる。これにより、複数の計測点ごとの複数の計測データを得られる。対象面にはメッシュが設定され、対象面における計測点の周囲の領域が計測エリアとして設定される。そして、計測エリアが重なるメッシュに計測データが割り当てられる周辺メッシュ割り当て工程が実行され、割り当てられた計測データから対象面がメッシュごとに評価される。従って、計測点の周囲の複数のメッシュに計測データが割り当てられるため、広い範囲における計測データを得ることができる。よって、計測装置を多く走行させなくても多くのメッシュを埋め尽くすことができるので、対象面の計測を容易に行うことができる。この対象面の計測は、メッシュのサイズが小さい場合であっても容易に行うことができるので、メッシュのサイズにかかわらず高精度な計測データを容易に取得することができる。
【0010】
(2)上記(1)において、面評価方法は、計測点を含むメッシュに計測データを割り当てる単一メッシュ割り当て工程を更に備えてもよい。周辺メッシュ割り当て工程及び単一メッシュ割り当て工程の双方を実行し、周辺メッシュ割り当て工程及び単一メッシュ割り当て工程の双方において計測データが割り当てられたメッシュから、周辺メッシュ割り当て工程において割り当てられた計測データ、及び単一メッシュ割り当て工程において割り当てられた計測データのいずれかを削除してもよい。この場合、単一メッシュ割り当て工程と周辺メッシュ割り当て工程の双方が実行されることにより、メッシュのサイズがどのようなサイズであっても高精度な計測データを容易に取得することができる。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)において、周辺メッシュ割り当て工程では、メッシュの中心に計測エリアが重なるメッシュに計測データを割り当ててもよい。この場合、メッシュの中心に計測エリアが重なるメッシュに計測データを割り当てることができる。
【0012】
(4)上記(1)~(3)のいずれかにおいて、計測エリアを設定する工程では、計測装置の計測感度に応じて計測エリアを設定してもよい。この場合、計測エリアの設定のときに計測装置の計測感度が加味されるので、より高精度な計測データを取得できる。
【0013】
(5)上記(1)~(4)のいずれかにおいて、計測エリアを設定する工程では、対象面における計測装置の進行方向に応じて計測エリアを設定してもよい。この場合、計測エリアの設定のときに計測装置の進行方向が加味されるので、より高精度な計測データを取得できる。
【0014】
(6)上記(1)~(5)のいずれかにおいて、対象面は、締固めが行われた盛立面であってもよい。この場合、盛立面の計測を容易に行うことができると共に、メッシュのサイズにかかわらず盛立面の高精度な計測データを取得することができる。
【0015】
(7)上記(1)~(6)のいずれかにおいて、周辺メッシュ割り当て工程では、計測装置が計測を行うごとに、メッシュに計測エリアが重なる領域の面積を算出してもよい。評価する工程では、メッシュの面積に対する重なる領域の面積の割合と計測データとの積の総和を、当該割合の総和で除した値を評価してもよい。この場合、計測エリアがメッシュに重なる領域の面積を重み付けしてメッシュに計測データを割り当てることができるので、更に高精度な計測データを取得できる。
【0016】
(8)上記(1)~(7)のいずれかにおいて、評価する工程では、計測エリアの内部の位置に応じた計測装置の計測感度を加味して対象面をメッシュごとに評価してもよい。この場合、メッシュに重なる計測エリアの計測感度が加味されて計測データが割り当てられるので、更に高精度な計測データを取得できる。
【0017】
(9)上記(1)~(8)のいずれかにおいて、計測データを取得する工程では、計測装置が盛土の比抵抗を計測データとして取得してもよい。この場合、盛土の比抵抗が取得されるので、締め固められた後の盛土の評価を容易に且つ高精度に行うことができる。
【0018】
(10)上記(1)~(8)のいずれかにおいて、計測データを取得する工程では、複数の計測装置の一方が盛土の比抵抗を計測データとして取得し、複数の計測装置の他方が比誘電率を計測データとして取得してもよい。この場合、盛土の比抵抗及び比誘電率から盛土の乾燥密度及び含水比を算出できる。従って、盛土の評価を更に高精度に行うことができる。
【0019】
本開示に係る面評価システムは、(11)計測対象の面である対象面を評価する面評価システムである。面評価システムは、対象面に沿って移動しながら一定時間ごとに対象面を計測して複数の計測データを取得する計測装置と、各計測データに、各計測データが計測された位置である計測点を対応付ける位置測位システムと、対象面にメッシュを設定するメッシュ設定部と、対象面における計測点の周囲の領域を計測エリアとして計測エリアを設定する計測エリア設定部と、計測エリアが重なるメッシュに計測データを割り当てる周辺メッシュ割り当て部と、割り当てられた計測データから対象面をメッシュごとに評価する評価部と、を備える。
【0020】
この面評価システムでは、計測装置が対象面上を移動しながら対象面を一定時間ごとに計測して複数の計測データを取得し、位置測位システムが各計測データに計測された位置である計測点を対応付けるので、複数の計測点ごとの複数の計測データを得られる。メッシュ設定部は対象面にメッシュを設定し、計測エリア設定部は対象面における計測点の周囲の領域を計測エリアとして設定する。周辺メッシュ割り当て部は計測エリアが重なるメッシュに計測データを割り当てて、評価部は割り当てられた計測データから対象面をメッシュごとに評価する。従って、計測点の周囲の複数のメッシュに計測データが割り当てられるため、広い計測データを得ることができるので、計測装置を多く走行させなくても多くのメッシュを埋め尽くすことができる。よって、対象面の計測を容易に行うことができる。更に、対象面の計測は、メッシュのサイズが小さい場合であっても容易に行うことができるので、メッシュのサイズにかかわらず高精度な計測データを容易に取得することができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、メッシュのサイズにかかわらず高精度な計測データを容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る面評価システムを示す図である。
【
図2】
図1の面評価システムの計測装置を示す図である。
【
図3】
図2の計測装置の計測原理を説明するための図である。
【
図4】実施形態に係る面評価方法のメッシュの割り当てについて説明するための図である。
【
図5】実施形態に係る面評価方法の単一メッシュ割り当て工程について説明するための図である。
【
図6】実施形態に係る面評価方法の周辺メッシュ割り当て工程について説明するための図である。
【
図7】実施形態に係る面評価方法の周辺メッシュ割り当て工程について説明するための図である。
【
図8】(a)及び(b)は、単一メッシュ割り当て工程、及び周辺メッシュ割り当て工程の双方を行う例を示す図である。
【
図9】第1変形例に係る周辺メッシュ割り当て工程を説明するための図である。
【
図10】第2変形例に係る周辺メッシュ割り当て工程を説明するための図である。
【
図11】第3変形例に係る計測装置を模式的に示す図である。
【
図12】第4変形例に係る計測装置による計測点を示す図である。
【
図13】第5変形例に係る面評価システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る面評価方法及び面評価システムの実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0024】
本実施形態に係る面評価システム1及び面評価方法は、例えば、ダムが構築される現場Aにおいて用いられる。現場Aでは、一例として、ダンプトラックによって土砂が搬送され、ブルドーザーによって搬送された土砂が敷き均され、敷き均された土砂が振動ローラによって締め固められる。振動ローラは、現場Aにおいて複数回往復しながら土砂の締固めを行い、現場Aにおける盛土Bの転圧を行う。
【0025】
例えば、面評価システム1は、振動ローラ等の締固め機械によって締め固められた後の転圧面である盛立面Sを進行しながら現場Aの盛土B(土)の評価を行う盛土評価システムである。本実施形態において、盛立面Sは、面評価システム1の計測対象の面に相当する。盛立面Sは、締固めによって形成された施工面である。面評価システム1は、例えば、盛土Bの乾燥密度、及び盛土Bの含水比の少なくともいずれかを盛土Bの評価項目として算出する。
【0026】
例えば、面評価システム1は、盛土Bの乾燥密度、及び盛土Bの含水比を計測することによって盛土Bを評価し、例えば、締固め機械による締固めの効果を計測する。盛土Bは、例えば、CSG、RCD又は放射性処分事業の覆土によって構成されたものであってもよい。
【0027】
面評価システム1は、盛土Bの比抵抗を計測する比抵抗計測装置10(計測装置)を有する。例えば、面評価システム1は、盛土Bの比抵抗の計測データを収集するデータ収集部31を有していてもよい。一例として、データ収集部31は、パーソナルコンピュータ等の情報端末である。例えば、面評価システム1は、比抵抗計測装置10から延び出す線状体3を備える。一例として、線状体3は紐状体である。
【0028】
例えば、面評価システム1は、比抵抗計測装置10を牽引するための牽引部30を備える。牽引部30は、例えば、複数の車輪30bと、複数の車輪30bの上部同士を連結する台部30cと、台部30cから上方に延びる取手部30dとを有する。台部30cは線状体3を介して比抵抗計測装置10に連結されており、複数の車輪30bが盛立面Sに載せられた状態で取手部30dを手で持って盛立面Sで複数の車輪30bを転動させることにより、牽引部30及び比抵抗計測装置10を盛立面S上で進行させることができる。一例として、データ収集部31は、台部30cに設けられる。しかしながら、データ収集部31の場所は特に限定されない。
【0029】
図2は、比抵抗計測装置10の概略を示す図である。
図3は、比抵抗計測装置10の電極20の構成を模式的に示す図である。例えば、比抵抗計測装置10は、持ち運びが可能な装置である。比抵抗計測装置10は、締固め機械によって締め固められた後の盛立面Sを進行しながら現場Aの盛土Bの比抵抗を計測する。
【0030】
比抵抗計測装置10はキャパシタ電極である4つの電極20を備える。例えば、比抵抗計測装置10における電極20の配置は、ダイポール・ダイポール法に準拠している。4つの電極20は、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22である。比抵抗計測装置10は、4電極法を用いて盛土Bの比抵抗を計測する。電位電極21及び電流電極22のそれぞれは、盛立面Sに近接するように配置される。
【0031】
一対の電位電極21、及び一対の電流電極22は、比抵抗計測装置10の進行方向D1に沿って並ぶように配置されている。本実施形態では、複数の電極20が並ぶ方向は比抵抗計測装置10の進行方向D1と一致する。このように、複数の電極20が並ぶ方向と進行方向D1との関係は予め紐付けられている。一例として、比抵抗計測装置10の進行方向の後側に一対の電位電極21が配置されると共に当該進行方向の前側に一対の電流電極22が配置される。例えば、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22は、ダイポール・ダイポール配置とされている。しかしながら、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22の配置は、ダイポール・ダイポール配置以外の配置とされていてもよく、特に限定されない。
【0032】
比抵抗計測装置10は、電極20と、電極20を保持する保持体41と、保持体41を盛立面Sから離隔させた状態で保持体41を走行可能に支持する複数のキャスタ42とを有する。比抵抗計測装置10は、例えば、2台の保持体41と、2台の保持体41の間で進行方向D1に沿って延びる線状体48とを有する。
【0033】
線状体48は、例えば、保持体41に対して着脱可能とされている。この線状体48を備える場合、2台の保持体41の一方(例えば電流電極22を保持する保持体41)を進行方向D1に牽引するときに、2台の保持体41の一方及び他方を進行方向D1に沿って移動させることができる。また、互いに長さが異なる複数種類の線状体48を用意しておき、複数種類の線状体48から選択した線状体48を取り付けることにより、電位電極21と電流電極22との距離を変更することができる。
【0034】
例えば、保持体41は、一対の電位電極21、及び一対の電流電極22のそれぞれを盛土Bに向けた状態で保持する複数の電極保持部43を備える。電極保持部43は、電極20を進行方向D1に交差する方向D2に沿って移動可能に保持する。方向D2は、例えば、鉛直方向である。
【0035】
電極保持部43は、電極20を盛土B側(下方)に付勢する複数のバネ機構46を有する。保持体41が走行して盛立面Sに不陸があった場合には、電極保持部43及び電極20が当該不陸に接触すると共に、電極20が方向D2に移動する。このとき、バネ機構46が電極20を盛土Bに向けて付勢するので、盛立面Sに不陸があっても電極20を当該不陸に追従させることが可能となる。
【0036】
電位電極21及び電流電極22は、例えば、盛立面Sの上に引き摺られる。電位電極21及び電流電極22のそれぞれは、盛立面Sに対向する誘電体23と、誘電体23に電気的に接続された導電体24とを有する。誘電体23は、例えば、合成樹脂によって構成された板状部材である。
【0037】
誘電体23は、盛立面Sに接触しつつ盛立面Sの上で引き摺られるため、盛立面Sへの当接に耐えられる素材で構成されることが好ましい。誘電体23は、例えば、高密度ポリエチレン、硬質ポリウレタン、及びABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂の少なくともいずれかを含む。
【0038】
導電体24は、導電性を有する金属を含む平板である。比抵抗計測装置10は、更に、交流電源25及び電位計26を有する。交流電源25は、各電流電極22の導電体24に電気的に接続されている。電位計26は、各電位電極21の導電体24に電気的に接続されている。
【0039】
交流電源25は、一対の電流電極22の間に交流電圧を印加する。これにより、盛土Bに交流電流が流れる。例えば、盛立面Sに接触していない一対の電流電極22の導電体24に電圧が印加されると、導電体24と盛土Bとの間に電荷が溜まり電流電極22はキャパシタとなる。キャパシタとなった電流電極22が充電又は放電しきる前に、交流電源25が電圧の極性を切り替えれば、抵抗値を有する盛土Bに連続的に交流電流が流れる。電位計26は、電流電極22と同様にキャパシタとなった一対の電位電極21の間の電位を計測する。
【0040】
比抵抗計測装置10は、進行しながら(牽引部30を走行させながら)一定のサンプリング周期で盛土Bの比抵抗を計測する。一例として、比抵抗計測装置10は進行しながら1回/秒で盛土Bの比抵抗を計測する。比抵抗の計測に対して感度分析(例えばFEM解析)が行われると、1回の計測において一定範囲Eの比抵抗、及びその平均値が計測される。平面視において、一定範囲Eは、複数の電極20が並ぶ方向に沿って延びる長軸を有する長円形状を呈する。例えば、一定範囲Eの長手方向は比抵抗計測装置10の進行方向D1と一致している。このように、一定範囲Eの長手方向と比抵抗計測装置10の進行方向D1とは予め紐付けられている。上記のように比抵抗計測装置10の計測範囲は点ではなく一定範囲Eに及ぶ。しかしながら、計測された比抵抗のデータは、1つの計測点Pにおける計測結果としてデータ収集部31に記憶される。
【0041】
図1及び
図2に示されるように、面評価システム1は、計測対象の対象面Xである盛立面Sに沿って進行しながら盛立面Sを計測して複数の比抵抗の計測データを取得する比抵抗計測装置10と、各計測データに各計測データが計測された位置である計測点P(位置情報)を対応付ける位置測位システム15とを有する。位置測位システム15は、例えば、面評価システム1に設けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナである。この場合、GNSSアンテナによって計測された盛土Bの計測点Pごとに比抵抗の計測データがデータ収集部31に記憶される。
【0042】
図1及び
図4に示されるように、面評価システム1は、例えば、情報端末Tにインストールされた面評価アプリケーション50を有する。情報端末Tは、例えば、パソコンであってもよい。情報端末Tは、一例として、オペレーティングシステム及びソフトウェア(アプリケーション)等を実行するプロセッサ(例えばCPU)と、ROM及びRAMによって構成される主記憶部と、フラッシュメモリ等によって構成される補助記憶部と、無線通信モジュール等によって構成される通信制御部と、入力装置と、ディスプレイ等の出力装置とを備える。但し、情報端末Tの構成は、上記に限定されず適宜変更可能である。
【0043】
情報端末Tの各機能要素は、情報端末Tのプロセッサ又は記憶部(例えば前述した主記憶部又は補助記憶部)に面評価アプリケーション50のソフトウェアを読み込ませて当該ソフトウェアを実行することによって実現される。プロセッサは、当該ソフトウェアに従って、前述した通信制御部、入力装置又は出力装置を動作させ、記憶部におけるデータの読み出し及び書き出しを行う。情報端末Tの処理に用いられるデータ又はデータベースは記憶部に格納される。
【0044】
面評価アプリケーション50は、データ収集部31に記憶された計測データ(計測点Pが紐付けられた計測データ)を評価する。面評価アプリケーション50は、機能要素として、対象面X(例えば盛立面S)にメッシュMを設定するメッシュ設定部51と、計測点Pを含むメッシュMに比抵抗等の計測データを割り当てる単一メッシュ割り当て部52と、割り当てられた計測データから対象面Xを評価する評価部53とを有する。
【0045】
メッシュ設定部51は、例えば、情報端末TのディスプレイT1に対象面Xと共にメッシュMを表示する。メッシュMは、長方形状(一例として正方形状)を呈する。メッシュMの一辺の長さ(対象面XのうちメッシュMによって囲まれた部分の一辺の長さ、メッシュMのサイズ)は、例えば、0.5m以上且つ2m以下である。メッシュMのサイズは、予め決定された値とされている。
【0046】
単一メッシュ割り当て部52は、計測データに紐付けられた計測点Pを用いて当該計測点Pを含むメッシュMに計測データを割り当てる。ところで、比抵抗計測装置10を真っ直ぐに進行させたつもりでも、比抵抗計測装置10が進行した軌跡のブレ、速度のバラツキ、又はGNSSのバラツキ等の影響により、比抵抗計測装置10が進行した経路はある程度ジグザグした経路になる。
【0047】
評価部53は、メッシュMごとに割り当てられた計測データを評価する。評価部53は、メッシュMごとに割り当てられた複数の計測データに統計処理を施してメッシュMごとに計測データの代表値を算出する。例えば、評価部53は、メッシュMに割り当てられた体積含水率及び比抵抗から当該メッシュMにおける盛土Bの密度と含水比を算出する。
【0048】
前述したように単一メッシュ割り当て部52が計測点Pを含むメッシュに計測データを割り当てる場合、比抵抗計測装置10は一定範囲Eを計測しているにもかかわらず、計測点Pを含むメッシュMのみに計測データが割り当てられる。よって、比抵抗の計測の特徴とは相反し、比抵抗計測装置10の実計測に即した対象面Xの評価ができていないという現状があった。
【0049】
例えば、
図4及び
図5に示されるようにメッシュMのサイズ(メッシュサイズ)が小さい場合、比抵抗計測装置10は周囲のメッシュMを含んだ平均的な比抵抗を計測しているにもかかわらず、評価部53がメッシュMの代表値を算出すると、限られた狭い範囲しか計測していないような結果となる。すなわち、実際の比抵抗計測装置10による計測範囲Yに対し、計測点Pを含むメッシュMにしか計測データが割り当てられないため、評価部53が評価する計測データの範囲(
図5では色彩が付与されたメッシュMの面積の合計)は非常に狭くなってしまうということが起こりうる。従って、全てのメッシュMを評価するためには、全てのメッシュMを埋め尽くすように比抵抗計測装置10を何回も進行させなければならないため、計測に多大な労力と時間を要する。
【0050】
上記の問題を解決するため、本実施形態に係る面評価システム1(面評価アプリケーション50)は、
図1及び
図6に示されるように、対象面Xにおける計測点Pの周囲の領域を計測エリアKとして計測エリアKを設定する計測エリア設定部54と、計測エリアKが重なるメッシュMに計測データを割り当てる周辺メッシュ割り当て部55とを有する。
【0051】
計測エリア設定部54は、例えば、比抵抗計測装置10の感度分析を基に計測点Pの比抵抗計測に基づいて計測エリアKを設定する。例えば、計測エリア設定部54は、比抵抗計測装置10の進行方向D1に応じて計測エリアKを設定する。具体例として、計測エリア設定部54は、進行方向D1に延びる一対の長辺K1と、平面視において進行方向D1に直交する直交方向D3に延びる一対の短辺K2とを有する長方形状の計測エリアKを設定する。一例として、長辺K1の長さは3mであり、短辺K2の長さは2mである。
【0052】
上記のように計測エリア設定部54が長方形状の計測エリアKを設定する場合、メッシュMに割り当てられた計測データの演算及び評価を簡易に行うことができるという利点がある。しかしながら、計測エリア設定部54が設定する計測エリアの形状は、楕円形状、長円形状、円形状又は多角形状であってもよく特に限定されない。
【0053】
周辺メッシュ割り当て部55は、計測エリアKが重なるメッシュMに計測データを割り当てる。例えば、周辺メッシュ割り当て部55はメッシュMの中心Nに計測エリアKが重なる全てのメッシュMに計測データを割り当てる。「メッシュの中心」は、例えば、メッシュの重心である。すなわち、長方形状等、多角形状を呈するメッシュ等の図形において中心は重心と一致する。
図6の例では、メッシュM1,M2,M3,M4,M5,M6に計測データを割り当てる。これにより、1つの計測データが計測点Pの周囲の複数のメッシュMに割り当てられる。
【0054】
周辺メッシュ割り当て部55が1つの計測データを計測点Pの周囲の複数のメッシュMに割り当てることにより、より比抵抗計測装置10の実計測に即した対象面Xの評価が可能となる。従って、比抵抗計測装置10による周囲のメッシュMを含んだ比抵抗の計測に応じた対象面Xの評価が可能となるため、評価部53が評価する計測データの範囲をメッシュサイズにかかわらず広くすることができる。
【0055】
以下では、単一メッシュ割り当て部52による計測データの割り当てを単一メッシュ割り当て法、周辺メッシュ割り当て部55による計測データの割り当てを周辺メッシュ配分法、と称することがある。表1は、単一メッシュ割り当て法によるメッシュサイズごとの要約統計量を示している。表2は、周辺メッシュ配分法によるメッシュサイズごとの要約統計量を示している。各要約統計量の算出において、生データのデータ数は2298、最大値は2.38、最小値は1.68、平均値は2.05、標準偏差は0.161、変動係数は0.079であった。
【表1】
【表2】
【0056】
表1及び表2に示されるように、単一メッシュ割り当て法(表1)では、メッシュサイズが小さいほど計測データが割り当てられるメッシュの数の割合が少なくなるため、メッシュサイズによる標準偏差の変化が大きい。単一メッシュ割り当て法では、メッシュサイズが小さいとき(1mであるとき)、標準偏差が0.096となっている。一方、周辺メッシュ配分法(表2)では、メッシュサイズによる標準偏差の変化が緩和されている。周辺メッシュ配分法では、メッシュサイズが小さくでも、計測データが複数のメッシュに割り当てられるため、メッシュサイズによる影響が緩和される。
【0057】
なお、
図7に示されるように、周辺メッシュ配分法の場合、メッシュサイズに対して計測エリアKが著しく大きい場合、中心Nに計測エリアKが重なるメッシュMがないことにより、どのメッシュMにも計測データが割り当てられないということが生じうる。
【0058】
本実施形態に係る面評価方法では、上記のことを回避するために、
図8(a)及び
図8(b)に示されるように、単一メッシュ割り当て法による計測データの割り当て、及び周辺メッシュ配分法による計測データの割り当て、の双方が行われる。以下では、本実施形態に係る面評価方法の工程の例について説明する。
【0059】
まず、
図4に示されるように、盛立面Sに沿って比抵抗計測装置10を移動させながら比抵抗計測装置10が一定時間ごとに盛立面Sを計測して複数の比抵抗の計測データを取得する(計測データを取得する工程)。このとき、各計測データに、各計測データが計測された位置である計測点Pを位置測位システム15が対応付ける(対応付ける工程)。計測点Pが紐付けられた複数の計測データが取得された後には、メッシュ設定部51が対象面XにメッシュMを設定する(メッシュを設定する工程)。
【0060】
次に、
図8(a)に示されるように、計測点Pを含むメッシュMに計測データを割り当てる単一メッシュ割り当て工程を実行する。このとき、単一メッシュ割り当て部52が単一メッシュ割り当て法によって計測点Pを含むメッシュM(メッシュM1)に計測データを割り当てる。
【0061】
その後、
図8(b)に示されるように、周辺メッシュ配分法を実行する。より具体的には、計測エリア設定部54が対象面Xにおける計測点Pの周囲の領域を計測エリアKとして設定する(計測エリアを設定する工程)。例えば、計測エリア設定部54は、比抵抗計測装置10の計測感度に応じて計測エリアKを設定する。
【0062】
一例として、計測エリア設定部54は、比抵抗計測装置10の計測範囲にである一定範囲Eに応じた(例えば平面視における一定範囲Eと類似した形状の)計測エリアKを設定してもよい。また、計測エリア設定部54は、比抵抗計測装置10の進行方向D1に応じて計測エリアKを設定してもよい。一例として、計測エリア設定部54は、進行方向D1に沿って延びる長辺K1を有する長方形状の計測エリアKを設定してもよい。
【0063】
計測エリアKが設定された後には、計測エリアKが重なるメッシュMに周辺メッシュ割り当て部55が計測データを割り当てる(周辺メッシュ割り当て工程)。このとき、メッシュMの中心に計測エリアKが重なるメッシュMに計測データを割り当てる。一例として、周辺メッシュ割り当て部55はメッシュM1~M6に計測データを割り当てる。このように、単一メッシュ割り当て法及び周辺メッシュ配分法の双方を実行した後には、評価部53によるメッシュMごとの評価が実行される。
【0064】
評価部53は、周辺メッシュ配分法及び単一メッシュ割り当て法の双方において計測データが割り当てられたメッシュMから、周辺メッシュ配分法において割り当てられた計測データ、及び単一メッシュ割り当て法において割り当てられた計測データのいずれかを削除する。すなわち、同じメッシュMに二度割り当てられた計測データのうちの一方を評価部53が削除する。
図8(a)及び
図8(b)の例では、評価部53はメッシュM1に割り当てられた計測データの一方を削除する。その後、メッシュMに割り当てられた計測データから評価部53が対象面Xの評価(評価する工程)をメッシュMごとに行って、一連の工程が完了する。
【0065】
次に、本実施形態に係る面評価システム1及び面評価方法から得られる作用効果について詳細に説明する。本実施形態に係る面評価システム1及び面評価方法では、比抵抗計測装置10が対象面X上を移動しながら対象面Xを一定時間ごとに計測することによって複数の計測データが取得され、各計測データには計測された位置である計測点Pが対応付けられる。これにより、複数の計測点Pごとの複数の計測データを得られる。
【0066】
対象面XにはメッシュMが設定され、対象面Xにおける計測点Pの周囲の領域が計測エリアKとして設定される。そして、計測エリアKが重なるメッシュMに計測データが割り当てられる周辺メッシュ割り当て工程が実行され、割り当てられた計測データから対象面XがメッシュMごとに評価される。従って、計測点Pの周囲の複数のメッシュMに計測データが割り当てられるため、広い範囲における計測データを得ることができる。よって、比抵抗計測装置10を長距離走行させなくても多くのメッシュMを埋め尽くすことができるので、対象面Xの計測を容易に行うことができる。この対象面Xの計測は、メッシュMのサイズが小さい場合であっても容易に行うことができるので、メッシュMのサイズにかかわらず高精度な計測データを容易に取得することができる。
【0067】
本実施形態に係る面評価方法は、計測点Pを含むメッシュMに計測データを割り当てる単一メッシュ割り当て工程を更に備える。周辺メッシュ割り当て工程及び単一メッシュ割り当て工程の双方を実行し、周辺メッシュ割り当て工程及び単一メッシュ割り当て工程の双方において計測データが割り当てられたメッシュM(メッシュM1)から、周辺メッシュ割り当て工程において割り当てられた計測データ、及び単一メッシュ割り当て工程において割り当てられた計測データのいずれかを削除する。このように、単一メッシュ割り当て工程と周辺メッシュ割り当て工程の双方が実行されることにより、メッシュMがどのようなサイズであっても高精度な計測データを容易に取得することができる。
図7のようにメッシュMのサイズが著しく大きい場合であっても、単一メッシュ割り当て法によって少なくとも1つのメッシュMに計測データを割り当てることができる。
【0068】
本実施形態において、計測エリアを設定する工程では、比抵抗計測装置10の計測感度に応じて計測エリアKを設定してもよい。この場合、計測エリアKの設定のときに比抵抗計測装置10の計測感度(例えば、比抵抗計測装置10の計測が及ぶ領域を示す一定範囲E)が加味されるので、より高精度な計測データを取得できる。
【0069】
本実施形態において、周辺メッシュ割り当て工程では、メッシュMの中心に計測エリアKが重なるメッシュMに計測データを割り当てる。この場合、メッシュMの中心に計測エリアKが重なるメッシュMに計測データを割り当てることができる。
【0070】
本実施形態において、計測エリアを設定する工程では、対象面Xにおける比抵抗計測装置10の進行方向D1に応じて計測エリアKを設定してもよい。この場合、計測エリアKの設定のときに比抵抗計測装置10の進行方向D1が加味されるので、より高精度な計測データを取得できる。
【0071】
本実施形態において、対象面Xは、締固めが行われた盛立面Sである。従って、盛立面Sの計測を容易に行うことができると共に、メッシュMのサイズにかかわらず盛立面Sの高精度な計測データを取得することができる。
【0072】
本実施形態において、計測データを取得する工程では、比抵抗計測装置10が盛土Bの比抵抗を計測データとして取得する。従って、盛土Bの比抵抗が取得されるので、締め固められた後の盛土Bの評価を容易に且つ高精度に行うことができる。
【0073】
次に、本開示に係る面評価方法及び面評価システムの種々の変形例について説明する。変形例に係る面評価方法の一部の工程は、前述した実施形態に係る面評価方法の一部の工程と同一である。変形例に係る面評価システムの一部の構成は、前述した面評価システム1の一部の構成と同一である。従って、既出の説明と同一の説明については同一の符号を付して適宜省略する。
【0074】
(第1変形例)
図9に示されるように、例えば、評価部53は、周辺メッシュ割り当て工程において、比抵抗計測装置10が計測を行うごとに、メッシュMに計測エリアKが重なる領域Fの面積を算出する。評価部53は、メッシュMの面積に対する重なる領域Fの面積の割合と計測データとの積の総和を、当該割合の総和で除した値を評価する。具体例として、第1の計測において、計測データの値がC1、メッシュMの面積に対する重なる領域Fの面積の割合がw1であり、第2の計測において、計測データの値がC2、メッシュMの面積に対する重なる領域Fの面積の割合がw2であるときに、式(1)によって評価値を算出する。
評価値=((C1×w1)+(C2×w2))/w1+w2
評価部53は、この評価値をメッシュMに割り当てられた計測データとして前述した評価を行う。
【0075】
以上、第1変形例に係る面評価方法において、周辺メッシュ割り当て工程では、比抵抗計測装置10が計測を行うごとに、メッシュMに計測エリアが重なる領域Fの面積を算出する。評価する工程では、メッシュMの面積に対する重なる領域Fの面積の割合と計測データとの積の総和を、当該割合の総和で除した値を評価する。よって、計測エリアKがメッシュMに重なる領域Fの面積を重み付けしてメッシュMに計測データを割り当てることができるので、更に高精度な計測データを取得できる。
【0076】
(第2変形例)
図10に示されるように、例えば、評価部53は、評価する工程において、計測エリアKの内部の位置に応じた比抵抗計測装置10の計測感度Gを加味して対象面XをメッシュMごとに評価する。例えば、計測感度Gは、平面視における比抵抗計測装置10の中央から離隔するに従って低下する。第2変形例では、周辺メッシュ割り当て部55は、比抵抗計測装置10の中央に近いメッシュMに大きな影響度を持つように計測データを割り当てて、比抵抗計測装置10の中央から離隔したメッシュMに小さな影響度を持つように計測データを割り当てる。
【0077】
例えば、評価部53は、感度分布を計測エリアKがメッシュMに重なる領域F(
図9参照)の面積で面積分し、その値を重みとして重み付け平均してもよい。このように、第2変形例では、評価する工程において、計測エリアKの内部の位置に応じた計測感度Gを加味して対象面XをメッシュMごとに評価する。よって、メッシュMに重なる計測エリアKの計測感度Gが加味されて計測データが割り当てられるので、更に高精度な計測データを取得できる。
【0078】
(第3変形例)
図11に示されるように、第3変形例に係る面評価方法では、比抵抗計測装置60の位置測位システム65の構成が前述した位置測位システム15とは異なっている。位置測位システム65は、2個のGNSSアンテナ66を備える。位置測位システム65は、2個のGNSSアンテナ66の相対位置から進行方向D1を算出する。このように、第3変形例に係る位置測位システム65では、進行方向D1を算出できるので、計測エリア設定部54による進行方向D1を加味した計測エリアKの設定をより適切に行うことができる。なお、第3変形例に係る位置測位システム65は、2個のGNSSアンテナ66に代えてGPSコンパスを備えていてもよい。この場合も上記と同様の効果が得られる。
【0079】
(第4変形例)
第4変形例に係る面評価方法では、
図12に示されるように、位置測位システムが1つの計測点P1の前後の計測点P2,P3の位置座標を算出し、算出した位置座標の変化率から進行方向D1を算出する。この場合も位置測位システムによって進行方向D1を算出できるので、計測エリア設定部54による進行方向D1を加味した計測エリアKの設定をより適切に行うことができる。
【0080】
(第5変形例)
図13は、第5変形例に係る面評価システム71を示す斜視図である。面評価システム71は複数の計測装置を備え、複数の計測装置は比抵抗計測装置10と比誘電率計測装置75とによって構成される。更に、面評価システム71は、盛土Bの乾燥密度、及び盛土Bの含水比を算出する盛土評価項目算出部82を備える。
【0081】
面評価システム71は、比抵抗計測装置10及び比誘電率計測装置75を互いに接続する線状体72を有する。比誘電率計測装置75は、比誘電率計測部86と、走行体87と、走行体87の下面に取り付けられた状態で比誘電率計測部86を保持する保持部88とを有する。走行体87は、複数の車輪87bと、複数の車輪87bの上部に設けられた台部87cとを有する。
【0082】
保持部88は、内部に比誘電率計測部86を保持した状態で台部87cの下面に取り付けられている。保持部88は、例えば、金属製である。保持部88は、比誘電率計測部86が収容される凹部を有し、当該凹部の下面部が盛立面Sに接触する。比誘電率計測部86は当該下面部を介して盛立面Sに接触した状態で盛土Bの比誘電率を計測する。
【0083】
比誘電率計測部86は、盛土Bに対向した状態で盛土Bの比誘電率を計測する。比誘電率計測部86は、比抵抗計測装置10の移動と同時に、又は比抵抗計測装置10の移動後に続けて盛立面S上で移動して比誘電率を計測する。比誘電率計測部86は、例えば、地中レーダーである。この場合、比誘電率計測部86は盛土Bに対して下方に電磁波を送信する送信部と、電磁波を受信する受信部とを有する。比誘電率計測部86は、電磁波を照射してから、電磁波が比誘電率計測部86に返ってくるまでの時間を計測する。
【0084】
盛土Bの施工層の厚さを予め計測し、比誘電率計測部86は上記の時間と当該厚さから電磁波の速度を算出する。当該厚さは、比誘電率計測部86に手入力されてもよいし、GNSSによって計測された層厚データが比誘電率計測部86に自動入力されてもよい。
【0085】
上記の電磁波の速度と比誘電率は1対1の関係である。よって、当該関係を用いて比誘電率計測部86は電磁波の速度から比誘電率を算出する。例えば、予め室内試験で比誘電率と盛土Bの体積含水率との関係を取得しておくことにより、当該関係を用いて面評価システム71は比誘電率から盛土Bの体積含水率を算出する。例えば、面評価システム71は、盛土Bの体積含水率及び比抵抗から盛土Bの密度と含水比を推定する。
【0086】
以上、面評価システム71では、計測データを取得する工程において、比抵抗計測装置10が盛土Bの比抵抗を計測データとして取得し、比誘電率計測装置75が比誘電率を計測データとして取得する。よって、盛土Bの比抵抗及び比誘電率から盛土Bの乾燥密度及び含水比を算出できる。従って、盛土Bの評価を更に高精度に行うことができる。
【0087】
なお、比誘電率計測装置75に代えて体積含水率計測装置が設けられていてもよく、比誘電率計測部86に代えて散乱型RI水分計が設けられていてもよい。この場合、散乱型RI水分計は、盛立面Sから下方に速中性子線を照射し、盛土Bの水素原子に速中性子線が衝突して返ってきた熱中性子線を検出することによって盛土Bの体積含水率を計測できる。この場合、散乱型RI水分計を盛立面Sに載せて盛土Bの体積含水率を計測できるので、盛土Bにおける水分の計測を容易に且つ高精度に行うことができる。
【0088】
以上、本開示に係る面評価方法及び面評価システムの実施形態及び種々の変形例について説明した。しかしながら、本開示に係る面評価方法及び面評価システムは、前述した実施形態又は変形例に限られず、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更可能である。すなわち、面評価方法の工程の内容及び順序、並びに、面評価システムの各部の構成、形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、前述した実施形態又は変形例に限られず適宜変更可能である。
【0089】
例えば、前述した実施形態では、メッシュMの中心Nに計測エリアKが重なる全てのメッシュMに計測データを割り当てる周辺メッシュ割り当て部55について説明した。しかしながら、メッシュMの中心Nとは異なる位置が計測エリアKに重なるメッシュMに計測データが割り当てられてもよく、計測データが割り当てられるメッシュMの条件は適宜変更可能である。
【0090】
前述の実施形態では、計測データとして比抵抗の平均値が計測される例について説明した。しかしながら、計測データは、平均値に限られず、エラー値の一律棄却又は1σ棄却がなされた計測データ、機械学習により計測データ群から代表値を抽出するモデルによって得られた計測データであってもよい。更に、計測データは、比抵抗以外の計測データであってもよく、前述したように、比誘電率又は体積含水率の計測データにも前述した面評価方法及び面評価システム1を適用可能である。
【0091】
前述した実施形態では、単一メッシュ割り当て法及び周辺メッシュ配分法の双方を実行する例について説明した。しかしながら、状況によっては、単一メッシュ割り当て法を省略してもよい。この場合、単一メッシュ割り当て部52を省略することも可能である。更に、前述の実施形態では、対象面Xが盛立面Sである例について説明した。しかしながら、対象面は、例えば、コンクリートの表面であってもよく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…面評価システム、3…線状体、10…比抵抗計測装置(計測装置)、15…位置測位システム、20…電極、21…電位電極、22…電流電極、23…誘電体、24…導電体、25…交流電源、26…電位計、30…牽引部、30b…車輪、30c…台部、30d…取手部、31…データ収集部、41…保持体、42…キャスタ、43…電極保持部、46…バネ機構、48…線状体、50…面評価アプリケーション、51…メッシュ設定部、52…単一メッシュ割り当て部、53…評価部、54…計測エリア設定部、55…周辺メッシュ割り当て部、60…比抵抗計測装置、65…位置測位システム、66…GNSSアンテナ、71…面評価システム、72…線状体、75…比誘電率計測装置、82…盛土評価項目算出部、86…比誘電率計測部、87…走行体、87b…車輪、87c…台部、88…保持部、A…現場、B…盛土、D1…進行方向、D2…方向、D3…直交方向、E…一定範囲、F…領域、G…計測感度、K…計測エリア、K1…長辺、K2…短辺、M,M1,M2,M3,M4,M5,M6…メッシュ、N…中心、P,P1,P2,P3…計測点、S…盛立面、T…情報端末、T1…ディスプレイ、X…対象面、Y…計測範囲。