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特開2024-104609ガス発生器及びエアバッグモジュール組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104609
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ガス発生器及びエアバッグモジュール組立体
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20240729BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008921
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 俊志
(72)【発明者】
【氏名】勝田 信行
【テーマコード(参考)】
3D054
4G068
【Fターム(参考)】
3D054DD11
3D054DD17
3D054DD19
3D054DD28
3D054FF01
4G068DA08
4G068DB08
4G068DD12
(57)【要約】
【課題】ガス発生器作動後のハウジングの昇温をより効率的に抑制可能な技術を提供する。
【解決手段】ガス発生器は、ハウジングの外表面の少なくとも一部を覆うように該外表面に接触して設けられた温度上昇抑制部材を備え、温度上昇抑制部材は、ガス発生剤の燃焼に起因してハウジングの温度が上昇すると該ハウジングの熱により化学変化または状態変化を起こすことで前記ハウジングの熱を吸熱する吸熱剤と、温度上昇抑制部材が柔軟性を有するように吸熱剤と併存するバインダ剤と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼によりガスを発生させるガス発生剤と、
前記ガス発生剤を内部に収容し、前記ガス発生剤の燃焼により発生した前記ガスを外部に排出するガス排出孔が形成された、金属製のハウジングと、
作動することで前記ガス発生剤を着火させる点火装置と、
前記ハウジングの外表面の少なくとも一部を覆うように該外表面に接触して設けられた温度上昇抑制部材と、
を備え、
前記温度上昇抑制部材は、前記ガス発生剤の燃焼に起因して前記ハウジングの温度が上昇すると該ハウジングの熱により化学変化または状態変化を起こすことで前記ハウジングの熱を吸熱する吸熱剤と、前記温度上昇抑制部材が柔軟性を有するように前記吸熱剤と併存するバインダ剤と、を含む、
ガス発生器。
【請求項2】
前記バインダ剤が前記吸熱剤に混合されている、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記吸熱剤は、脂肪酸ポリカーボネート、炭酸マグネシウム、フマル酸、及びテレフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種を含む、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記バインダ剤は、ヒドロキシル基またはカルボニル基を有する化合物を含む、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記温度上昇抑制部材における前記吸熱剤の含有比率は、70%以上95%以下であり、
前記温度上昇抑制部材における前記バインダ剤の含有比率は5%以上30%以下である、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記ガス排出孔が形成された筒状の周壁部と、前記周壁部の一端部を閉塞する第1閉塞部と、前記周壁部の他端部を閉塞する第2閉塞部と、を有し、
前記ガス排出孔は、前記ハウジングの軸方向において前記ガス排出孔と前記第1閉塞部との距離が前記ガス排出孔と前記第2閉塞部との距離よりも短くなるような位置に形成されており、
前記温度上昇抑制部材は、前記第1閉塞部の外表面に設けられている、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記ガス排出孔が形成された筒状の周壁部を有し、
前記温度上昇抑制部材は、前記周壁部の外表面に設けられている、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記ハウジングの外表面のうち、前記温度上昇抑制部材との接触部位は、凹凸状に形成されている、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項9】
所定の情報を表示するラベルシートを更に備え、
前記ラベルシートは、当該ラベルシートと前記ハウジングとの間に前記温度上昇抑制部材が介装されるように、前記温度上昇抑制部材に取り付けられている、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項10】
請求項6に記載のガス発生器と、
折り畳まれた状態で配置され、前記ガス排出孔から排出される前記ガスによって膨張展開するエアバッグと、
を備える、エアバッグモジュール組立体であって、
前記ガス発生器は、前記第1閉塞部と折り畳まれた状態の前記エアバッグとが対向するように、配置されている、
エアバッグモジュール組立体。
【請求項11】
請求項7に記載のガス発生器と、
折り畳まれた状態で配置され、前記ガス排出孔から排出される前記ガスによって膨張展開するエアバッグと、
を備える、エアバッグモジュール組立体であって、
前記ガス発生器は、前記周壁部と折り畳まれた状態の前記エアバッグとが対向するように、配置されており、
前記温度上昇抑制部材は、前記周壁部のうち前記エアバッグと対向する部位の外表面に設けられている、
エアバッグモジュール組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生器及びエアバッグモジュール組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングにガス発生剤を収容し、点火器の作動によりガス発生剤を燃焼させることでガスを生成し、当該ガスをハウジングの外部へ放出するガス発生器が広く知られている。この種のガス発生器は、例えば、自動車のエアバッグやシートベルトリトラクタへのガスの供給に用いられる。
【0003】
ガス発生器が作動すると、ガス発生剤の燃焼熱の伝導によって、ハウジングの表面が高温になる。例えば、ガス発生器を作動させてエアバッグを膨張展開させる際に、高温のハウジングにエアバッグが接触すると、エアバッグ溶融等、ハウジングの周囲に配置された部品への熱的影響が懸念される。これに関連して、ハウジングの表面に断熱部材を設けることで、ハウジングの表面温度の温度上昇を抑制するガス発生器が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-326553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス発生器作動後のハウジングの昇温をより効率的に抑制するためには、温度上昇を抑制するための部材を密着性良くハウジングに設けることが重要である。
【0006】
本開示の技術は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス発生器作動後のハウジングの昇温をより効率的に抑制可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(態様1)
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るガス発生器は、以下の構成を採用した。即ち、本開示に係るガス発生器は、燃焼によりガスを発生させるガス発生剤と、前記ガス発生剤を内部に収容し、前記ガス発生剤の燃焼により発生した前記ガスを外部に排出するガス排出孔が形成された、金属製のハウジングと、作動することで前記ガス発生剤を着火させる点火装置と、前記ハウジングの外表面の少なくとも一部を覆うように該外表面に接触して設けられた温度上昇抑制部材と、を備え、前記温度上昇抑制部材は、前記ガス発生剤の燃焼に起因して前記ハウジングの温度が上昇すると該ハウジングの熱により化学変化または状態変化を起こすことで前記ハウジングの熱を吸熱する吸熱剤と、前記温度上昇抑制部材が柔軟性を有するように前記吸熱剤と併存するバインダ剤と、を含む、ガス発生器である。
【0008】
(態様2)
上記の態様1において、前記バインダ剤が前記吸熱剤に混合されていてもよい。
【0009】
(態様3)
上記の態様1又は2において、前記吸熱剤は、脂肪酸ポリカーボネート、炭酸マグネシウム、フマル酸、及びテレフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種を含んでも
よい。
【0010】
(態様4)
上記の態様1から3の何れかにおいて、前記バインダ剤は、ヒドロキシル基またはカルボニル基を有する化合物を含んでもよい。
【0011】
(態様5)
上記の態様1から4の何れかにおいて、前記温度上昇抑制部材における前記吸熱剤の含有比率は、70%以上95%以下であり、前記温度上昇抑制部材における前記バインダ剤の含有比率は5%以上30%以下であってもよい。
【0012】
(態様6)
上記の態様1から5の何れかにおいて、前記ハウジングは、前記ガス排出孔が形成された筒状の周壁部と、前記周壁部の一端部を閉塞する第1閉塞部と、前記周壁部の他端部を閉塞する第2閉塞部と、を有し、前記ガス排出孔は、前記ハウジングの軸方向において前記ガス排出孔と前記第1閉塞部との距離が前記ガス排出孔と前記第2閉塞部との距離よりも短くなるような位置に形成されており、前記温度上昇抑制部材は、前記第1閉塞部の外表面に設けられてもよい。
【0013】
(態様7)
上記の態様1から6の何れかにおいて、前記ハウジングは、前記ガス排出孔が形成された筒状の周壁部を有し、前記温度上昇抑制部材は、前記周壁部の外表面に設けられてもよい。
【0014】
(態様8)
上記の態様1から7の何れかにおいて、前記ハウジングの外表面のうち、前記温度上昇抑制部材との接触部位は、凹凸状に形成されてもよい。
【0015】
(態様9)
上記の態様1から8の何れかにおいて、所定の情報を表示するラベルシートを更に備え、前記ラベルシートは、当該ラベルシートと前記ハウジングとの間に前記温度上昇抑制部材が介装されるように、前記温度上昇抑制部材に取り付けられてもよい。
【0016】
(態様10)
また、本開示に係る技術は、ガス発生器を備えるエアバッグモジュール組立体としても特定することができる。即ち、本開示の一態様は、上記の態様6のガス発生器と、折り畳まれた状態で配置され、前記ガス排出孔から排出される前記ガスによって膨張展開するエアバッグと、を備える、エアバッグモジュール組立体であって、前記ガス発生器は、前記第1閉塞部と折り畳まれた状態の前記エアバッグとが対向するように、配置されてもよい。
【0017】
(態様11)
また、本開示の一態様に係るエアバッグモジュール組立体は、上記の態様7のガス発生器と、折り畳まれた状態で配置され、前記ガス排出孔から排出される前記ガスによって膨張展開するエアバッグと、を備え、前記ガス発生器は、前記周壁部と折り畳まれた状態の前記エアバッグとが対向するように、配置されており、前記温度上昇抑制部材は、前記周壁部のうち前記エアバッグと対向する部位の外表面に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、ガス発生器作動後のハウジングの昇温をより効率的に抑制可能となる
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態1に係るガス発生器を備えるエアバッグモジュール組立体の作動前の状態を示す断面図である
図2図2は、実施形態1に係るガス発生器の作動前の状態を示す断面図である。
図3図3は、実施形態1の変形例1に係るガス発生器の部分拡大図である。
図4図4は、実施形態1の変形例2に係るガス発生器を備えるエアバッグモジュール組立体の作動前の状態を示す断面図である。
図5図5は、実施形態1の変形例2に係るガス発生器の作動前の状態を示す断面図である。
図6図6は、実施形態2に係るガス発生器を備えるエアバッグモジュール組立体の作動前の状態を示す断面図である。
図7図7は、実施形態2に係るガス発生器の作動前の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本開示に係る技術をエアバッグ用のガス発生器(インフレータ)に適用した態様について説明する。但し、本開示に係る技術の用途はこれに限定されず、例えばシートベルトリトラクタ用のガス発生器に適用してもよい。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0021】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るエアバッグ用ガス発生器(以下、単にガス発生器)100を備えるエアバッグモジュール組立体1000の作動前の状態を示す断面図である。図2は、実施形態1に係るガス発生器100の作動前の状態を示す断面図である。図1及び図2では、符号1で示すハウジングの中心軸A1に沿う断面が示されている。ここで、ハウジング1の中心軸A1に沿う方向(軸方向)をガス発生器100の上下方向と定義し、図2の符号2で示す上部シェル側(即ち、図2における上側)をガス発生器100の上側とし、図2の符号3で示す下部シェル側(即ち、図2における下側)をガス発生器100の下側とする。なお、本明細書では、ガス発生器が備える点火装置に含まれる点火器が作動することを、便宜上、「点火装置が作動する」、「ガス発生器が作動する」、又は「エアバッグモジュール組立体が作動する」と表現する場合がある。
【0022】
[全体構成]
図1に示すように、エアバッグモジュール組立体1000は、ガス発生器100と、エアバッグ200と、これらを収容するモジュールケース300と、を備える。エアバッグモジュール組立体1000は、例えば、車両に搭載され、車両の正面衝突時にエアバッグ200を膨張展開させることで乗員を衝撃から保護する、正面衝突保護用のエアバッグ装置(所謂フロントエアバッグ装置)である。但し、本開示に係るエアバッグモジュール組立体は、フロントエアバッグ装置に限定されない。エアバッグモジュール組立体は、例えば、車両の側面衝突時にエアバッグを膨張展開させることで乗員を衝撃から保護する、側面衝突保護用のエアバッグ装置(所謂サイドエアバッグ装置)であってもよい。また、本実施形態に係るエアバッグモジュール組立体1000は、一例として車両の運転席(詳細には、ステアリングホイール)に設置されるものであるが、本開示に係るエアバッグモジュール組立体は、例えば助手席のダッシュボードやその他の箇所に設置されるものであってもよい。
【0023】
ガス発生器100は、エアバッグ200が膨張するためのガスの供給源である。ガス発生器100は、例えば、車両のセンサ(図示せず)が衝撃を感知すると作動し、外部にガスを放出するように構成されている。ガス発生器100の詳細については後述する。
【0024】
エアバッグ200は、ガス発生器100からのガスの供給により膨張する袋体である。エアバッグ200は、例えばポリアミド製であり、図1に示すように、ガス発生器100の作動前では、折り畳まれた状態でモジュールケース300に収容されている。
【0025】
モジュールケース300は、ガス発生器100とエアバッグ200とを収容する箱体である。モジュールケース300は、エアバッグカバー400とバックプレート500とを含む。エアバッグカバー400は、モジュールケース300の側面を形成する筒状の筒壁部401と、筒壁部401の一端部を閉塞しモジュールケース300の正面を形成する正面部402と、を含む。エアバッグカバー400は、例えば車両のステアリングホイールと組み合わせ可能なように形成されている。バックプレート500は、エアバッグカバー400の筒壁部401に固定されることで筒壁部401と共にモジュールケース300の側面を形成する筒状の筒壁部501と、筒壁部501の一端部を閉塞しモジュールケース300の背面を形成する背面部502と、を含む。背面部502には、ガス発生器100を取り付けるための取付孔502aが形成されている。エアバッグ200は、ガス発生器100と連結されており、ガス発生器100とモジュールケース300の正面部402との間に、折り畳まれた状態で配置される。
【0026】
エアバッグモジュール組立体1000は、エアバッグ200の保護対象である乗員(本例では運転者)に対してエアバッグカバー400の正面部402が対向するように車両に設置される。ガス発生器100の作動時には、エアバッグ200の膨張による圧力を受けて正面部402が開裂することで、エアバッグ200がモジュールケース300の外部へ飛び出して乗員の正面で展開する。これにより、乗員が衝撃から保護される。
【0027】
[ガス発生器]
図2に示すように、実施形態1に係るガス発生器100は、短尺筒状(ディスク状)に形成されており、点火装置4と、内筒部材5と、フィルタ6と、第1ガス発生剤110と、第2ガス発生剤120と、これらを収容する金属製のハウジング1と、ハウジング1の外表面に設けられた温度上昇抑制部材7と、を備えている。ガス発生器100は、点火装置を1つのみ備えた、所謂シングルタイプのガス発生器として構成されている。また、ガス発生器100は、ガス源としてガス発生剤のみを用いた所謂パイロタイプのガス発生器として構成されている。但し、本開示に係るガス発生器は、上記に限定されない。本開示に係るガス発生器は、複数の点火装置を備えてもよいし、ガス源としてガス発生剤と加圧ガスとを用いた所謂ハイブリットタイプのガス発生器として構成されてもよい。
【0028】
ガス発生器100は、点火装置4に含まれる点火器41を作動させることで、第1ガス発生剤110及び第2ガス発生剤120を燃焼させ、その燃焼生成物である燃焼ガスをハウジング1に形成されたガス排出孔11から放出するように構成されている。以下、ガス発生器100の各構成について説明する。
【0029】
[ハウジング]
ハウジング1は、それぞれが有底略円筒状に形成された金属製の上部シェル2及び下部シェル3が互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されることによって、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状に形成されている。ハウジング1は、金属製である。ハウジング1を形成する金属材料は特に限定されないが、例えばステンレス鋼が挙げられる。ハウジング1の内部空間は、燃焼室10を形成しており、燃焼室10には、点火装置4、内筒部材5、フィルタ6、第1ガス発生剤110、及び第2ガス発生剤120が配置される。
【0030】
上部シェル2は、筒状の上側周壁部21と該上側周壁部21の上端を閉塞する天板部22とを有し、これらにより内部空間を形成する。上側周壁部21の下端部によって上部シェル2の開口部が形成されている。上側周壁部21の下端部には、径方向外側へ延びるフランジ状の接合部23が繋がっている。下部シェル3は、筒状の下側周壁部31と該下側周壁部31の下端を閉塞すると共に点火装置4が固定される底板部32とを有し、これらにより内部空間を形成する。底板部32には、点火装置4を取り付けるための取付孔32aが形成されている。下側周壁部31の上端部には、径方向外側へ延びるフランジ状の接合部33が繋がっている。
【0031】
上部シェル2及び下部シェル3は、例えばステンレス鋼をプレス加工することで成形することができる。上部シェル2の接合部23と下部シェル3の接合部33とが重ね合わされてレーザ溶接等によって接合されることで、軸方向の両端が閉塞された短尺円筒状のハウジング1が形成されている。これら上部シェル2の上側周壁部21と下部シェル3の下側周壁部31とによって、天板部22と底板部32とを接続する筒状の周壁部12が形成されている。つまり、ハウジング1は、筒状の周壁部12と、周壁部12の一端部を閉塞する天板部22と、周壁部12の他端側を閉塞し、点火装置4が取り付けられた底板部32と、を含んで構成されている。天板部22と底板部32と周壁部12とによって、燃焼室10が画定されている。なお、周壁部12の中心軸によって、ハウジング1の中心軸A1が構成されている。天板部22は、本開示に係る「第1閉塞部」の一例である。また、底板部32は、本開示に係る「第2閉塞部」の一例である。
【0032】
また、図2に示すように、周壁部12(詳細には、上部シェル2の上側周壁部21)には、燃焼室10とハウジング1の外部空間とを連通するガス排出孔11が、周方向に沿って複数並んで形成されている。ガス排出孔11は、点火装置4が作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されている。
【0033】
また、図2に示すように、ハウジング1の外表面、詳細には、ハウジング1の内部空間(燃焼室10)を画定する面とは反対側の面を、符号S1で示す。外表面S1は、ガス発生器100の外側に面する面である。また、外表面S1のうち、周壁部12の面を外表面S12とし、天板部22の面を外表面S22とし、底板部32の面を外表面S32とする。
【0034】
図1に示すように、ガス発生器100は、ハウジング1のガス排出孔11及び天板部22がモジュールケース300の取付孔502aからモジュールケース300の内部に挿入された状態でハウジング1のフランジ部(接合部23,33)が背面部502に固定されることで、バックプレート500に取り付けられる。エアバッグモジュール組立体1000において、ハウジング1のガス排出孔11及び天板部22がモジュールケース300の内部に位置し、底板部32がモジュールケース300の外部に位置する。ガス発生器100は、ハウジング1の天板部22がエアバッグ200に対向するように配置される。
【0035】
ここで、図2に示すように、ハウジング1の軸方向(本例では上下方向)におけるガス排出孔11と天板部22との距離をd1とし、ハウジング1の軸方向におけるガス排出孔11と底板部32との距離をd2とする。ここで、ガス排出孔11は、ハウジング1の軸方向において、d1の方がd2よりも短くなるような位置に形成されている。即ち、本実施形態に係るガス発生器100は、d1<d2となるように構成されている。従って、ガス排出孔11は、底板部32よりも天板部22に近い位置に形成されている。ガス発生器100では、エアバッグ200にガスを供給し易いように、天板部22と底板部32とのうちエアバッグ200が配置される側である天板部22寄りの位置にガス排出孔11が形成されている。
【0036】
[点火装置]
図2に示すように、点火装置4は、点火器41とカラー42と樹脂部43とを含み、下部シェル3の底板部32に取り付けられている。点火器41は、点火薬が収容された金属製のカップ体411と、外部から電流の供給を受けるための一対の通電ピン412,412と、を有する。点火器41は、一対の通電ピン412,412に供給される着火電流により作動することで該点火薬を燃焼させ、その燃焼生成物をカップ体411の外部に放出させる。カラー42は、点火器41を支持する金属製部材である。カラー42は、筒状に形成されており、底板部32に形成された取付孔32aに圧入された状態で、溶接等によって固定されている。樹脂部43は、点火器41とカラー42との間に介装されることで、カラー42に対して点火器41を固定する樹脂製の部材である。樹脂部43は、点火器41の下部を覆うと共にカラー42と係合することで、カップ体411の少なくとも一部が樹脂部43から露出した状態となるように、カラー42に対して点火器41を固定する。但し、樹脂部43によってカップ体411の全体がオーバーモールドされていてもよい。即ち、カップ体411の全体が樹脂に覆われた状態であってもよい。また、樹脂部43は、カラー42の内側に、一対の通電ピン412,412に外部電源からの電力を供給するコネクタ(図示せず)を挿入可能なコネクタ挿入空間を形成している。樹脂部43は、一対の通電ピン412,412の下端がコネクタ挿入空間に露出するように、一対の通電ピン412,412の一部を覆い、保持している。樹脂部43によって、一対の通電ピン412,412同士の絶縁性が保たれている。なお、点火器41とカラー42の固定や、カラー42と底板部32の関係は図2に限られることなく、公知の技術を使用できる。
【0037】
[内筒部材]
内筒部材5は、点火装置4を取り囲むようにして底板部32から天板部22に向かって延びる筒状の金属製部材である。内筒部材5は、両端が開放した筒状に形成されている。燃焼室10のうち、内筒部材5と点火装置4との間には、第1ガス発生剤110が収容される空間である伝火室51が形成されている。第1ガス発生剤110は、点火器41の作動により燃焼し、燃焼ガス等を発生させる。また、内筒部材5には、その内部空間(即ち、伝火室51)と外部空間とを連通する連通孔52が複数形成されている。連通孔52は、点火装置4が作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されている。
【0038】
[フィルタ]
フィルタ6は、金属材料により形成され、上下方向に延在する筒状の部材であって、複数の孔を有している。図2に示すように、フィルタ6は、第2ガス発生剤120を取り囲み、且つ、その径方向においてガス排出孔11がその外側に位置するように、燃焼室10に配置されている。つまり、フィルタ6は、第2ガス発生剤120を取り囲むように第2ガス発生剤120とガス排出孔11との間に配置されている。フィルタ6は、軸方向の両端面のうち、一端面(符号61で示す上端面)が上部シェル2の天板部22に当接して支持され、他端面(符号62で示す下端面)が下部シェル3の底板部32に当接して支持されている。
【0039】
このフィルタ6には複数の孔が形成されていることから、燃焼室10に配置された第2ガス発生剤120の燃焼ガスがフィルタ6を通過可能となっている。フィルタ6は、クーラントとしての機能を有しており、燃焼ガスがフィルタ6を通過する際に、燃焼ガスの熱を奪い取ることで当該燃焼ガスを冷却する。また、フィルタ6は、上述の燃焼ガスの冷却機能に加え、燃焼ガスに含まれる燃焼残渣を捕集することで当該燃焼ガスを濾過する機能も有する。
【0040】
[ガス発生剤]
第1ガス発生剤110は、点火装置4の作動により燃焼することで第2ガス発生剤を着火させる、所謂伝火薬である。第1ガス発生剤110としては、公知の黒色火薬の他、着火性が良く、第2ガス発生剤120よりも燃焼温度の高いガス発生剤を使用することができる。第1ガス発生剤110の燃焼温度は、1700~3000℃の範囲に設定することができる。このような第1ガス発生剤110としては、例えば、ニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)を含む、公知のものを用いることができる。また、第1ガス発生剤110には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0041】
第2ガス発生剤120には、比較的燃焼温度の低いガス発生剤を使用することができる。第2ガス発生剤120の燃焼温度は、1000~1700℃の範囲に設定することができる。このような第2ガス発生剤120としては、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物を含む、公知のものを用いることができる。また、第2ガス発生剤120には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0042】
[温度上昇抑制部材]
温度上昇抑制部材7は、ガス発生剤の燃焼に起因してハウジング1が昇温するとハウジング1の熱を吸熱することで、ハウジング1の更なる昇温を抑制する部材である。図2に示すように、温度上昇抑制部材7は、ハウジング1の外表面S1の一部を覆うように設けられている。本実施形態では、温度上昇抑制部材7は、外表面S1のうち、エアバッグモジュール組立体1000においてエアバッグ200に対向する天板部22の外表面S22のみに接触して設けられている。天板部22の外表面S22は、膜状の温度上昇抑制部材7によって被覆されている。本実施形態に係る温度上昇抑制部材7は、ハウジング1の熱が温度上昇抑制部材7に伝熱し易いように、ハウジング1の外表面S1(本例では外表面S22)に接触している。ハウジング1において温度上昇抑制部材7が配置される部位である天板部22の全領域において、温度上昇抑制部材7が外表面S22に密着している。ガス発生剤の燃焼に起因してハウジング1が昇温すると、熱伝導によってハウジング1の熱が温度上昇抑制部材7へ伝わる。なお、本開示に係る技術は、ハウジングにおいて温度上昇抑制部材が設けられる部位を限定しない。温度上昇抑制部材は、ハウジングの外表面の少なくとも一部を覆うように該外表面に接触して設けられていればよい。例えば、ハウジングの外表面の全領域に接触するように温度上昇抑制部材が設けられてもよい。
【0043】
温度上昇抑制部材7は、吸熱作用を示す吸熱剤と、温度上昇抑制部材7に柔軟性を付与するように吸熱剤と併存するバインダ剤と、を含み、好ましくはこれらが混合されることで形成されている。
【0044】
吸熱剤は、ガス発生剤の燃焼に起因してハウジング1が所定温度まで昇温すると、ハウジング1の熱を用いて化学変化または状態変化を起こすことで、ハウジング1の熱を吸熱する。ここで、所定温度は、ガス発生器100が作動する前のハウジング1の温度よりも高く、温度上昇抑制部材7がハウジング1に設けられていない場合にガス発生剤が燃焼したときに想定されるハウジング1の最大温度よりも低い温度に設定される。所定温度は特に限定されないが、例えば、温度上昇抑制部材7が設けられていない状態でガス発生剤の燃焼によりハウジング1が昇温するときの最大温度が300℃である場合には、所定温度は300℃未満に設定される。つまり、吸熱剤は、温度上昇抑制部材7がハウジング1に設けられていない場合にガス発生剤が燃焼したときに想定されるハウジング1の最大温度よりも低い温度で、吸熱作用を伴う化学変化または状態変化を起こすことで、ハウジング1の温度が上記最大温度にまで昇温することを抑制する。また、ここでいうハウジング1の熱により吸熱剤が起こす化学変化とは、異なる化合物へ変化することをいう。また、ハウジング1の熱により吸熱剤が起こす状態変化とは、形態が物理的に変化することをいう
。熱により吸熱剤が起こす化学変化や状態変化の種類は特に限定されないが、化学変化としては、例えば化合物の熱分解が例示され、状態変化としては、例えば固体から気体への昇華が例示される。つまり、吸熱剤は、ハウジング1の熱により熱分解することで、ハウジング1の熱を吸熱してもよいし、ハウジング1の熱により固体から気体へと昇華することで、ハウジング1の熱を吸熱してもよい。吸熱剤は、これら状態変化または化学変化に必要な熱エネルギーをハウジング1から奪うことで、ハウジング1を冷却する。
【0045】
吸熱剤は、非燃焼性のものを用いることができる。吸熱剤は、例えば300℃よりも低い温度で熱分解する化合物として、脂肪酸ポリカーボネート及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含んで構成されてもよい。また、吸熱剤は、例えば昇華により吸熱性を示す物質として、p-ジクロロベンゼン、DL-カンフル、ナフタレン、フマル酸、及びテレフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種を含んで構成されてもよい。吸熱剤は、上記の化合物の組合せを含んでもよい。但し、本開示に係る吸熱剤の材料は上述したものに限定されない。
【0046】
バインダ剤は、吸熱剤と併用され、温度上昇抑制部材7に柔軟性を与える。バインダ剤は、温度上昇抑制部材7において吸熱剤と併存していればよく、バインダ剤の配置については特に問わないが、吸熱剤に混合されることが好ましい。バインダ剤によって温度上昇抑制部材7に柔軟性が付与されることで、温度上昇抑制部材7のハウジング1に対する密着性が向上し、温度上昇抑制部材7がハウジング1から剥がれ難くなる。この意味では、温度上昇抑制部材7において吸熱剤とバインダ剤とが混ざり合っていなくともよい。例えば、バインダ剤を吸熱剤とは混合させずに別配置とし、ハウジングと吸熱剤との間に層状に介在させてもよい。但し、温度上昇抑制部材7の柔軟性向上の観点では、バインダ剤が吸熱剤に混合されてこれらが一体化していることがより好ましい。また、温度上昇抑制部材7に柔軟性が付与されることで、ハウジング1に付着した温度上昇抑制部材7がハウジング1の変形や外部からの衝撃により破損する(亀裂が生じる等)ことが抑制される。
【0047】
バインダ剤は、ガス発生器100の作動時に熱によって分解しても不要なガス(一酸化炭素や酸化窒素等)が発生しないものを使用することが好ましい。この点において、バインダ剤は、例えば分子中に官能基としてヒドロキシル基またはカルボニル基を有する化合物を含んで構成されることが好ましく、吸熱剤に混合されて使用されることがより好ましい。また、これらの官能基を含む組成の化合物をバインダ剤に用いることで、温度上昇抑制部材7の柔軟性が好適に向上する。更に、例えばハウジング1からの伝熱により加熱されたバインダ剤からガスが発生する場合であっても、当該ガスを無害化することができる。
【0048】
バインダ剤は、例えば、ブタジエンゴム、シリコンゴム、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、アルキルアセタール化ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸共重合体からなる群から選択される少なくとも一種を含んで構成されてもよい。バインダ剤は、上記の化合物の組合せを含んでもよい。例えば、アルキルアセタール化ポリビニルアルコールやポリカルボン酸共重合体をバインダ剤として吸熱剤と混合した状態で用いることで、ハウジング1へ塗布した温度上昇抑制部材7を折り曲げてもひび割れが生じ難く、また、温度上昇抑制部材7がハウジング1から剥がれ難くなる。但し、本開示に係るバインダ剤の材料は、上述したものに限定されない。
【0049】
ここで、温度上昇抑制部材7に対する吸熱剤の含有比率を70%以上95%以下とし、バインダ剤の含有比率を5%以上30%以下とすることが好ましい。これにより、吸熱剤の吸熱作用によるハウジング1の昇温抑制を達成しつつも、温度上昇抑制部材7に対して好適に柔軟性を付与することができる。例えば、温度上昇抑制部材7が吸熱剤とバインダ
剤のみからなる混合剤である場合には、吸熱剤とバインダ剤との比は、7:3から95:5までの範囲内から選択することができる。但し、本開示に係る温度上昇抑制部材における吸熱剤の含有比率やバインダ剤の含有比率は、上記の範囲に限定されない。また、温度上昇抑制部材は、上述した吸熱剤やバインダ剤以外の材料を含んで構成されてもよい。
【0050】
温度上昇抑制部材7は、例えば、溶剤に溶かした状態でハウジング1の外表面S1に塗布し、乾燥させることでハウジング1の外表面S1に塗装膜として設けることができる。
【0051】
[動作]
以下、実施形態1に係るガス発生器100及びエアバッグモジュール組立体1000の動作について、図1及び図2を参照しながら説明する。車両のセンサ(図示せず)が衝撃を感知すると、一対の通電ピン412,412に着火電流が供給され、点火器41が作動する。すると、点火器41のカップ体411に収容された点火薬が燃焼し、その燃焼生成物である火炎や高温のガス等がカップ体411の外部に放出される。これにより、伝火室51に収容された第1ガス発生剤110が燃焼し、燃焼ガスが発生する。第1ガス発生剤110の燃焼ガスは、連通孔52を閉塞していたシールテープを破って連通孔52から伝火室51の外部へ放出される。すると、第1ガス発生剤110の燃焼ガスが第2ガス発生剤120と接触し、第2ガス発生剤120が着火される。第2ガス発生剤120が燃焼することで、燃焼室10に高温・高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスがフィルタ6を通過することで、燃焼ガスが冷却され、燃焼残渣が捕集される。フィルタ6によって冷却及び濾過された第2ガス発生剤120の燃焼ガスは、間隙13を通り、ガス排出孔11を閉塞していたシールテープを破ってガス排出孔11からガス発生器100の外部へと放出される。第2ガス発生剤120の燃焼ガスは、ガス発生器100の外部へ放出された後に、モジュールケース300内のエアバッグ200内に流入する。ガスの供給によりエアバッグ200が膨張すると、その膨張圧力によりモジュールケース300の正面部402が開裂することで、エアバッグ200がモジュールケース300の外部へ飛び出して乗員の正面で展開する。これにより、乗員と堅い構造物の間にクッションが形成され、乗員が衝撃から保護される。
【0052】
[ハウジングの昇温抑制]
ガス発生器100が作動すると、ガス発生剤の燃焼による熱は、ハウジング1に伝熱し、ハウジング1に接触している温度上昇抑制部材7へと熱伝導により伝熱する。そのため、ハウジング1の昇温に伴って、温度上昇抑制部材7も昇温する。温度上昇抑制部材7が所定温度まで昇温すると、温度上昇抑制部材7に含まれる吸熱剤が状態変化または化学変化を開始する。このとき、吸熱剤は、ハウジング1から熱エネルギーを奪い、その熱エネルギーを化学変化または状態変化に使用する。その結果、吸熱剤の吸熱作用によってハウジング1が冷却され、ハウジング1の昇温が抑制される。ハウジング1は、温度上昇抑制部材7との接触部位から吸熱されるため、温度上昇抑制部材7と接触している天板部22において昇温が抑制される。
【0053】
ここで、図1に示すように、エアバッグモジュール組立体1000では、天板部22と折り畳まれた状態のエアバッグ200とが対向するように、ガス発生器100が配置されている。そのため、展開後に収縮したエアバッグ200がハウジング1の天板部22に接触し易い状態にある。仮に、ガス発生器100の作動後にハウジング1の天板部22が過度に高温となると、展開後に収縮したエアバッグ200がハウジング1の天板部22に接触することで、エアバッグ200が溶融し、好ましくないガスや臭気が発生する虞がある。また、図2に示すように、本実施形態に係るガス発生器100では、高温の燃焼残渣が付着する金属製のフィルタ6の上端面61がハウジング1の天板部22に当接している。更に、本実施形態に係るガス発生器100では、第1ガス発生剤110が充填されている金属製の内筒部材5の上端部がハウジング1の天板部22に当接している。そのため、多
量の熱がフィルタ6や内筒部材5を介して天板部22に伝導する。特に、熱量の大部分は第1ガス発生剤110および第2ガス発生剤120から生じる燃焼残渣であり、それがハウジング1の内面やフィルタ6に付着して、ハウジング1の昇温を招く。つまり、ハウジング1は、ガス発生器100の作動後に徐々に温度が上昇するので、エアバッグ200がその機能を発揮した後(エアバッグ200が収縮した後)にハウジング1の温度が最大まで上昇する。従って、仮に、温度上昇抑制部材7を備えていないガス発生器100が作動すると、天板部22が高温となり易く、その状態で展開後のバッグが接触すると、バッグの溶融によって、臭気や好ましくないガスの発生につながる。
【0054】
これに対して、本実施形態に係るガス発生器100では、温度上昇抑制部材7がハウジング1の天板部22の外表面S22に接触して設けられている。そのため、上述のように、ハウジング1は、温度上昇抑制部材7との接触部位である天板部22において昇温が抑制される。これにより、エアバッグモジュール組立体1000においてエアバッグ200と対向する天板部22が過度に高温となることが抑制される。その結果、展開後に収縮したエアバッグ200がハウジング1の天板部22に接触することでエアバッグ200が溶融することが抑制される。これにより、臭気や好ましくないガスが発生することが抑制される。また、ガス発生器100作動後のエアバッグ200の溶融が抑制されることでエアバッグ200がガス発生器100のハウジング1に付着するすることが抑制される。その結果、作動後のガス発生器100の廃棄が容易となる。更に、ガス発生器100によれば、ハウジング1の昇温が抑制されるため、乗員がハウジング1に接触したときに火傷することが防止される。
【0055】
例えば、ポリアミド製のエアバッグ200を使用した場合、エアバッグ200は350℃程度で溶融するが、ガス発生器100は、温度上昇抑制部材7によりガス発生器100作動後のハウジング1の温度を例えば250℃以下に抑えることで、エアバッグ200の溶融を防止することができる。
【0056】
また、バインダ剤によって温度上昇抑制部材7に柔軟性が付与されることで、温度上昇抑制部材7のハウジング1に対する密着性が向上しているため、温度上昇抑制部材7がハウジング1から剥がれ難くなっている。そのため、車両の走行時やガス発生器100の運搬時に受ける振動によって温度上昇抑制部材7が剥がれることや、ガス発生器100の作動前後のハウジング1の温度差によって温度上昇抑制部材7が剥がれることが抑制されている。また、燃焼ガスの圧力によりハウジング1が変形した場合であっても、温度上昇抑制部材7がその柔軟性によりハウジング1の変形に追従して変形するため、温度上昇抑制部材7が破損することが抑制される。また、温度上昇抑制部材7に柔軟性が付与されることで、外部からの衝撃により温度上昇抑制部材7が破損することも抑制される。その結果、ガス発生器100の作動後のハウジング1の昇温を効率的に抑制できる。また、温度上昇抑制部材7のハウジング1への密着性能を高めることで、温度上昇抑制部材7を少量化することができる。その結果、ガス発生器100の省スペース化を実現できる。この点では、温度上昇抑制部材7はバインダ剤と吸熱剤とを層状に分けて形成し、バインダ剤側をハウジング1に接触させるような配置や、更にその上から(吸熱剤の上に)バインダ剤の層を形成するような配置が可能であるが、温度上昇抑制部材7の全体にわたって均一な柔軟性を付与する意味では、吸熱剤とバインダ剤とを混合した状態でハウジング1における天板部22の外表面S22に配置することが好ましい。
【0057】
[作用・効果]
以上のように、実施形態1に係るガス発生器100は、燃焼によりガスを発生させるガス発生剤110,120と、ガス発生剤を内部に収容する金属製のハウジング1と、作動することでガス発生剤を着火させる点火装置4と、を備える。ハウジング1には、ガス発生剤の燃焼により発生したガスを外部に排出するガス排出孔11が形成されている。そし
て、ガス発生器100は、ハウジング1の外表面S1の少なくとも一部(本例では外表面S22)を覆うように外表面S1に接触して設けられた温度上昇抑制部材7を更に備える。この温度上昇抑制部材7は、吸熱剤とバインダ剤とを含んで構成されている。吸熱剤は、ガス発生剤の燃焼に起因してハウジング1の温度が上昇するとハウジング1の熱により化学変化または状態変化を起こすことでハウジング1の熱を吸熱する。バインダ剤は、温度上昇抑制部材7が柔軟性を有するように吸熱剤と併存しており、好ましくは吸熱剤と混合されることで吸熱剤と一体化した状態で使用される。
【0058】
このようなガス発生器100によると、ガス発生剤の燃焼によりハウジング1が上昇す
ると、温度上昇抑制部材7に含まれる吸熱剤が状態変化または化学変化のためにハウジング1から熱エネルギーを積極的に奪うことで、ガス発生器100作動後のハウジング1の昇温を好適に抑制することができる。更に、バインダ剤によって温度上昇抑制部材7に柔軟性が付与されることで、温度上昇抑制部材7を密着性良くハウジング1に設けることができる。その結果、温度上昇抑制部材7がハウジング1から剥がれることが長期にわたって抑制され、ハウジング1の昇温をより効率的に抑制することができる。このようなガス発生器100によると、ガス発生器100の作動後において、ハウジング1の周囲に配置された部品(本例ではエアバッグ200)への熱的影響を低減することができる。このことは、ハウジング1の周囲に熱の影響を受けやすい部品(樹脂製部品)が配置されている場合に好適である。
【0059】
更に、本実施形態に係るガス発生器100では、ハウジング1は、ガス排出孔11が形成された筒状の周壁部12と、周壁部12の一端部を閉塞する天板部22と、周壁部12の他端部を閉塞する底板部32と、を有し、ガス排出孔11は、ハウジング1の軸方向においてガス排出孔11と天板部22との距離d1がガス排出孔11と底板部32との距離よりも短くなるような位置に形成されている。そして、ガス発生器100では、温度上昇抑制部材7は、ハウジング1のうち、底板部32よりもガス排出孔11に近い天板部22の外表面S22に設けられている。これによると、天板部22に対して温度上昇抑制部材7による吸熱を作用させることで、ハウジング1の天板部22における昇温を効率的に抑制することができる。その結果、ハウジング1の天板部22に対向配置される部品(本例ではエアバッグ200)への熱的影響をより低減することができる。この点、本実施形態に係るエアバッグモジュール組立体1000は、ガス発生器100と、折り畳まれた状態で配置され、ガス排出孔11から排出されるガスによって膨張展開するエアバッグ200と、を含み、ガス発生器100は、ハウジング1の天板部22と折り畳まれた状態のエアバッグ200とが対向するように、配置されている。従って、本実施形態に係るガス発生器100によると、ハウジング1の天板部22に対向配置される部品であるエアバッグ200への熱的影響を低減することができる。
【0060】
なお、本開示に係る技術は、ハウジングにおいて温度上昇抑制部材が設けられる部位を限定しないが、ガス発生剤の燃焼に起因する熱が伝熱し易い部位、あるいはその熱的影響を避けるべき部品が周囲に配置されている場合に、その部品に近い部位に温度上昇抑制部材を設けることが好ましい。例えば、ハウジングのうち、高温の燃焼残渣が付着するフィルタに当接する部位(第1閉塞部と第2閉塞部とのうち少なくとも一方)の外表面や、ガス発生剤が燃焼する燃焼室に隣接する部位(即ち、燃焼室を画定する部位)の外表面に接触して温度上昇抑制部材を設けることが好ましい。
【0061】
[変形例]
以下、実施形態1の変形例に係るガス発生器及びエアバッグモジュール組立体について説明する。変形例の説明では、図1及び図2で説明したガス発生器100との相違点を中心に説明し、ガス発生器100と同様の点については詳細な説明は割愛する。
【0062】
[変形例1]
図3は、実施形態1の変形例1に係るガス発生器100Aの部分拡大図である。図3では、変形例1に係るハウジング1Aのうち温度上昇抑制部材7が設けられている部位である天板部22付近が図示されている。図3に示すように、変形例1に係るガス発生器100Aは、ハウジング1Aの外表面S1のうち、温度上昇抑制部材7との接触部位である外表面S22が凹凸状に形成されている点で、上述のガス発生器100と相違する。この凹凸状は、例えば、ハウジング1の表面を粗面化処理することで形成される。ハウジング1Aの外表面S1は、外表面S22の全体が凹凸状であってもよいし、外表面S22の一部が凹凸状であってもよい。
【0063】
変形例1に係るガス発生器100Aによると、ハウジング1Aの外表面S1のうち、温度上昇抑制部材7との接触部位である外表面S22を凹凸状に形成することで、外表面S22が平坦面である場合と比較して、温度上昇抑制部材7と外表面S22との接触面積を増加させることができる。これにより、ハウジング1から温度上昇抑制部材7への伝熱効率が向上する。その結果、温度上昇抑制部材7による吸熱が促進され、ハウジング1の昇温をより効率的に抑制することが可能となる。
【0064】
[変形例2]
図4は、実施形態1の変形例2に係るガス発生器100Bを備えるエアバッグモジュール組立体1000Bの作動前の状態を示す断面図である。図5は、実施形態1の変形例2に係るガス発生器100Bの作動前の状態を示す断面図である。図4及び図5では、ハウジング1の中心軸A1に沿う断面が示されている。
【0065】
図5に示すように、変形例2に係る内筒部材5Bは、一端(上端)が閉塞され他端(下端)が開放した有底筒状に形成されており、その下端に点火装置4のカラー42が溶接されることで、底板部32に取り付けられている。
【0066】
変形例2では、ハウジング1の底板部32側の温度上昇を抑制する構造を例示している。具体的には、変形例2に係るガス発生器100Bでは、温度上昇抑制部材7がハウジング1の底板部32の外表面S32のみに接触して設けられている。底板部32の外表面S32は、取付孔32aを除く全領域が、膜状の温度上昇抑制部材7によって被覆されている。より詳細には、ハウジング1において温度上昇抑制部材7が配置される部位である底板部32の全領域において、温度上昇抑制部材7が外表面S32に密着している。
【0067】
また、変形例2に係るガス発生器100Bは、ラベルシート8を備える。ラベルシート8は、所定の情報が表示されたシート状の部材であり、ラベルシート8とハウジング1との間に温度上昇抑制部材7が介装されるように、温度上昇抑制部材7に取り付けられている。ラベルシート8は、その両面のうち一方の面(取付面8a)が温度上昇抑制部材7に対向接触した状態で温度上昇抑制部材7に取り付けられる。ラベルシート8の他方の面(表示面8b)には、所定の情報が表示される。
【0068】
ラベルシート8の表示面8bには、所定の情報として、例えば、ガス発生器100Bに関する情報が表示される。ガス発生器100Bに関する情報としては、例えば、取り扱いについての注意事項、製造メーカ情報、型式番号、管理用のバーコード等が挙げられる。但し、本開示に係るラベルシートに表示される情報は、上記のものに限定されない。
【0069】
ラベルシート8の材料は特に限定されないが、例えばポリエステルフィルム等の耐熱性樹脂材料を使用することができる。ラベルシート8は、例えば温度上昇抑制部材7の粘着性を利用して底板部32に貼付することができる。つまり、温度上昇抑制部材7を接着剤(接着層)としてハウジング1とラベルシート8との間に介装することができる。なお、
取付面8aに接着剤を別途塗布し、ラベルシート8を温度上昇抑制部材7に貼付してもよい。また、ラベルシート8の表示面8bに所定の情報を表示する方法は特に限定されないが、例えば印刷や刻印によって表示面8bに所定の情報を記載することができる。
【0070】
図4に示すように、エアバッグモジュール組立体1000Bにおいて、ハウジング1の底板部32は、モジュールケース300の外部に露出している。変形例2に係るガス発生器100Bでは、ラベルシート8は、エアバッグモジュール組立体1000Bに組み込んだ際にモジュールの外部から視認できるように、ハウジング1の底板部32の外表面S32に、温度上昇抑制部材7を介して取り付けられている。但し、ラベルシート8が取り付けられる位置は、底板部32に限定されない。
【0071】
変形例2に係るガス発生器100Bによると、ラベルシート8とハウジング1の底板部32との間に温度上昇抑制部材7を介装することで、ガス発生器100B作動後の底板部32の昇温を抑制することができる。これによると、温度上昇抑制部材7を介してラベルシート8が取り付けられている底板部32の昇温が抑制されることで、ガス発生器100B作動後のラベルシート8の昇温も抑制することができる。これにより、例えばガス発生器100B作動後に高温によりラベルシート8が変色、変性、燃焼する等してラベルシート8の表示内容の視認性が低下することを防止できる。つまり、ガス発生器100Bの作動後において、ラベルシート8への熱的影響を低減することができる。
【0072】
<実施形態2>
以下、実施形態2に係るガス発生器及びエアバッグモジュール組立体について説明する。実施形態2の説明では、図1及び図2で説明した実施形態1に係るガス発生器100との相違点を中心に説明し、ガス発生器100と同様の点については詳細な説明は割愛する。
【0073】
図6は、実施形態1に係るガス発生器100Cを備えるエアバッグモジュール組立体1000Cの作動前の状態を示す断面図である。図6では、ハウジング1Cの中心軸A1に直交する断面が示されている。なお、図6では、ガス発生器100Cの内筒部材5C、フィルタ6、ガス発生剤等の図示を省略している。図7は、実施形態1に係るエアバッグ用ガス発生器100Cの作動前の状態を示す断面図である。図7では、ハウジング1Cの中心軸A1に沿う断面が示されている。
【0074】
図6に示すように、エアバッグモジュール組立体1000Cは、ガス発生器100Cと、エアバッグ200と、これらを収容するモジュールケース600と、を備える。エアバッグモジュール組立体1000Cは、一例として車両の助手席(詳細には、助手席のダッシュボード)に設置されるフロントエアバッグ装置である。但し、エアバッグモジュール組立体1000Cは、運転席用のフロントエアバッグ装置に適用してもよいし、サイドエアバッグ装置に適用してもよい。
【0075】
モジュールケース600は、ガス発生器100Cとエアバッグ200とを収容する箱体である。モジュールケース600は、エアバッグカバー700とリテーナ800とを含む。エアバッグカバー700は、モジュールケース600の側面を形成する四角形の枠体状の側壁部701と、側壁部701の一端部を閉塞しモジュールケース600の正面を形成する正面部702と、を含む。エアバッグカバー700は、正面部702が例えば車両のダッシュボードの一部を構成するように設置される。リテーナ800は、車両の構造物(不図示)に固定されており、エアバッグカバー700の側壁部701に係止されることでエアバッグカバー700と共にガス発生器100C及びエアバッグ200の収容空間を形成する。ガス発生器100Cは、ハウジング1Cの周壁部12が正面部702側に面するように、モジュールケース600内に配置されている。また、ガス発生器100の周壁部
12とモジュールケース600の正面部702との間には、折り畳まれた状態のエアバッグ200が配置されている。
【0076】
エアバッグモジュール組立体1000Cは、エアバッグ200の保護対象である乗員(本例では助手席の乗員)に対してエアバッグカバー700の正面部702が対向するように車両に設置される。ガス発生器100Cの作動時には、エアバッグ200の膨張による圧力を受けて正面部702が開裂することで、エアバッグ200がモジュールケース600の外部へ飛び出して乗員の正面で展開する。これにより、乗員が衝撃から保護される。
【0077】
図7に示すように、実施形態2に係るガス発生器100Cは、長尺筒状(シリンダ状)に形成されており、点火装置4と、内筒部材5Cと、フィルタ6と、第1ガス発生剤110と、第2ガス発生剤120と、これらを収容する金属製のハウジング1Cと、ハウジング1Cの外表面S1に設けられた温度上昇抑制部材7と、隔壁部材9と、を備えている。本実施形態に係るガス発生器100Cは、ガス源としてガス発生剤のみを用いたパイロタイプのガス発生器として構成されているが、ガス源としてガス発生剤と加圧ガスとを用いたハイブリットタイプのガス発生器として構成されてもよい。
【0078】
図7に示すように、実施形態2に係るハウジング1Cは、一端部(上端部)が閉塞され他端部(下端部)が開放された有底筒状に形成されている。ハウジング1Cは、筒状の周壁部12と、周壁部12の一端部(上端部)を閉塞する天板部14と、周壁部12の他端部(下端部)から径方向内側へ延在する固定部15と、を有する。実施形態2に係るガス発生器100Cでは、周壁部12の下端部に点火装置4を嵌入した状態で固定部15をかしめることで、点火装置4が周壁部12の下端部に固定されている。内筒部材5Cは、両端部が開放した筒状に形成されており、上端部がハウジング1Cの天板部14に当接した状態で下端部に点火装置4のカラー42が嵌入(圧入)されることで、ハウジング1Cに取り付けられている。内筒部材5Cは、その上端部を含む第1外径部53と、その下端部を含む第2外径部54と、を有する。第1外径部53の方が第2外径部54よりも外径が小さくなっており、第1外径部53と第2外径部54とは、径方向に延在する段差部55によって接続されている。また、連通孔52は、第1外径部53に形成されている。フィルタ6は、上端面61が天板部14に当接して支持され、下端面62が段差部55に当接して支持されている。隔壁部材9は、内筒部材5Cの内部空間を軸方向に区画する部材である。隔壁部材9によって、内筒部材5Cの内部空間は、第2外径部54によって囲まれた第1燃焼室56と、第1外径部53によって囲まれた第2燃焼室57と、に区画される。隔壁部材9には、複数の貫通孔91が形成されており、第1燃焼室56と第2燃焼室57とが連通可能となっている。第1燃焼室56には第1ガス発生剤110が配置され、第2燃焼室57には第2ガス発生剤120が配置される。
【0079】
図6に示すように、エアバッグモジュール組立体1000Cにおいて、ガス発生器100Cは、ハウジング1Cの周壁部12が折り畳まれた状態のエアバッグ200に対向するように配置される。より詳細には、周壁部12の周方向における半周分の部位がエアバッグ200に対向している。ここで、周壁部12のうち、エアバッグモジュール組立体1000Cにおいてエアバッグ200と対向する部位を、対向部121とする。実施形態2に係るガス発生器100Cでは、周壁部12のうち対向部121のみにガス排出孔11が形成されている。但し、本開示はこれに限定されない。例えばエアバッグモジュール組立体1000Cをサイドエアバッグ装置に適用する場合等には、周壁部12の全周にガス排出孔11が形成されてもよい。
【0080】
また、図6に示すように、実施形態2に係るガス発生器100Cでは、温度上昇抑制部材7は、ハウジング1Cのうちエアバッグ200に対向する部位である対向部121の外表面S12のみに接触して設けられている。温度上昇抑制部材7は、ガス排出孔11を除
いて対向部121の全領域を覆うように設けられている。より詳細には、ハウジング1Cにおいて温度上昇抑制部材7が配置される部位である対向部121の全領域において、温度上昇抑制部材7が外表面S12に密着している。
【0081】
実施形態2では、点火器41が作動すると、点火薬の燃焼生成物が第1燃焼室56に放出され、第1燃焼室56に収容された第1ガス発生剤110が燃焼し、燃焼ガスが発生する。第1ガス発生剤110の燃焼ガスは、隔壁部材9の貫通孔91を通って第2燃焼室57へ放出される。すると、第1ガス発生剤110の燃焼ガスが第2ガス発生剤120と接触し、第2ガス発生剤120が着火される。第2ガス発生剤120が燃焼することで、第2燃焼室57に高温・高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスは、連通孔52及びフィルタ6を通過して冷却及び濾過された後、間隙13を通り、ガス排出孔11からガス発生器100Cの外部へと放出される。第2ガス発生剤120の燃焼ガスは、ガス発生器100Cの外部へ放出された後に、モジュールケース600内のエアバッグ200内に流入する。ガスの供給によりエアバッグ200が膨張すると、その膨張圧力によりエアバッグカバー700の正面部702が開裂することで、エアバッグ200がモジュールケース600の外部へ飛び出して乗員の正面で展開する。これにより、乗員と堅い構造物の間にクッションが形成され、乗員が衝撃から保護される。
【0082】
実施形態2に係るエアバッグモジュール組立体1000Cでは、周壁部12の対向部121と折り畳まれた状態のエアバッグ200とが対向するように、ガス発生器100Cが配置されている。そのため、展開後に収縮したエアバッグ200がハウジング1Cの対向部121に接触し易い状態にある。これに対して、本実施形態に係るガス発生器100Cでは、温度上昇抑制部材7がハウジング1Cの対向部121の外表面S12に接触して設けられている。そのため、ハウジング1Cは、温度上昇抑制部材7との接触部位である対向部121において昇温が抑制される。これにより、エアバッグモジュール組立体1000Cにおいてエアバッグ200と対向する対向部121が過度に高温となることが抑制される。その結果、本実施形態では、ハウジング1Cの対向部121に対向配置される部品であるエアバッグ200への熱的影響を低減することができる。
【0083】
以上のように、実施形態2に係るガス発生器100Cは、温度上昇抑制部材7を周壁部12の外表面S12に設けることで、ハウジング1Cの周壁部12の周囲に配置される部品への熱的影響を低減することができる。なお、温度上昇抑制部材7は、周壁部12の全体に接触するように設けられてもよい。
【0084】
<その他>
以上、本開示に係る技術の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0085】
1・・・・・・ハウジング
4・・・・・・点火装置
7・・・・・・温度上昇抑制部材
8・・・・・・ラベルシート
11・・・・・ガス排出孔
12・・・・・周壁部
22・・・・・天板部(第1閉塞部の一例)
32・・・・・底板部(第2閉塞部の一例)
100・・・・ガス発生器
110・・・・第1ガス発生剤(ガス発生剤の一例)
120・・・・第2ガス発生剤(ガス発生剤の一例)
200・・・・エアバッグ
1000・・・エアバッグモジュール組立体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7