(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104611
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ワーク保持装置、巻線機、巻線処理方法及び巻線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/095 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
H02K15/095
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008925
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000145736
【氏名又は名称】株式会社小田原エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100123881
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100080931
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 敬
(72)【発明者】
【氏名】望月 隆之
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 伸郎
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP08
5H615PP12
5H615PP15
5H615QQ02
5H615QQ18
5H615QQ19
5H615SS10
5H615SS11
(57)【要約】
【課題】巻線終了後の終わり線の位置決めを、簡易な構成で行えるようにする。
【解決手段】ワーク保持装置が、突極8a(コア)を備えるワーク8であってノズルN1、N2、N3から繰り出される線材W1、W2、W3が突極8aに巻き回された状態のワーク8に対し、該ワーク8の径方向に移動してそれぞれ該ワーク8に当接することで該ワーク8を保持する複数のチャック14を備えている。複数のチャック14のうちの第1チャック14C、14D、14Eは、突極8aとノズルN1、N2、N3との間にある線材W1、W2、W3の第1部分を保持するための保持部を備え、該第1部分が保持された状態で線材W1、W2、W3の切断がなされる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを備えるワークであってノズルから繰り出される線材が前記コアに巻き回された状態の前記ワークに対し、該ワークの径方向に移動してそれぞれ該ワークに当接することで該ワークを保持する複数のチャックを備え、
前記複数のチャックのうちの第1チャックが、前記コアと前記ノズルとの間にある前記線材の第1部分を保持するための保持部を備えることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク保持装置であって、
前記保持部は、前記ワークを保持する状態で前記ワークよりも前記ノズル側に位置し前記線材の前記第1部分を収容するための凹部と、該凹部に収容された前記第1部分を前記凹部の内面に押圧して保持するための、可動の第1押圧部材とを備えていることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワーク保持装置であって、
前記第1押圧部材を前記凹部の内面に当接するように付勢する付勢部材を前記第1チャックに備え、
さらに、前記第1押圧部材を前記凹部の内面から離れる方向に駆動する第1駆動部とを備えることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項4】
請求項3に記載のワーク保持装置であって、
前記第1駆動部により前記第1押圧部材が前記凹部の内面から離された状態で、前記ワークの軸心を中心とした前記ワークの前記ノズルに対する相対回転により、前記線材の前記第1部分が前記凹部に収容されることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項5】
請求項2に記載のワーク保持装置であって、
前記ワークの軸心を中心とした前記ワークの前記ノズルに対する相対回転により、前記線材の前記第1部分が前記凹部に収容されることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項6】
請求項5に記載のワーク保持装置であって、
前記第1部分と前記凹部の開口との、前記ワークの径方向の位置が合うように、前記コアと前記ノズルとの間で前記線材を押圧して該線材を前記ワークの径方向に移動させる第2押圧部材を備えることを特徴とするワーク保持装置。
【請求項7】
請求項6に記載のワーク保持装置であって、
前記第2押圧部材が前記ワークの径方向に進退可能に設けられ、前記第2押圧部材の前記線材に当接して押圧する先端部の、前記ワークの周方向の長さが、前記線材のうち前記先端部に当接する部分が前記相対回転に伴って移動する距離よりも大きいことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項8】
請求項7に記載のワーク保持装置であって、
前記第2押圧部材は、前記第1チャックが前記線材の前記第1部分を保持した状態で、前記先端部の、前記線材の押圧時に前記線材に当接していた第1面と反対側の第2面に、前記線材の前記第1部分と前記ノズルとの間の箇所を引っ掛けて、前記ワークの径方向外側に向けて引き出すことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項9】
請求項5に記載のワーク保持装置であって、
前記複数のチャックの前記ワークの径方向への駆動を制御して、前記複数のチャックと前記ワークとを、前記ワークが前記複数のチャックに対して摺動しつつ前記ワークの軸心を中心として回転可能な第1状態と、前記第1状態よりも強い力で前記複数のチャックを前記ワークに当接させる第2状態とから選択される一の状態で前記複数のチャックを前記ワークに当接させる制御部を備え、
前記ワークの前記相対回転を、前記複数のチャックが前記第1状態で前記ワークに当接した状態で行うことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のワーク保持装置であって、
前記ワークは前記コアを複数備えるものであり、
前記複数のチャックは、複数の前記ノズルからそれぞれ繰り出される線材が該各ノズルと対応するコアにそれぞれ巻き回された状態の前記ワークを保持し、
前記複数のチャックには前記各ノズルと対応するように前記第1チャックが複数含まれ、該各第1チャックが、対応するノズルとコアとの間に存在する各線材を保持することを特徴とするワーク保持装置。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のワーク保持装置と、
前記ノズルと、
前記第1部分が前記保持部に保持されている前記線材の、前記第1部分と前記ノズルとの間の箇所を切断するカッターと、
前記複数のチャックを備えた可動アームと、
を備え、
前記カッターにより前記線材を切断した後、前記線材の前記第1部分が前記保持部に保持されている状態で、前記複数のチャックにより保持されたワークを、前記線材の巻き回しの次の工程を実行する装置又はステージへ前記可動アームにより搬送することを特徴とする巻線機。
【請求項12】
ノズルから繰り出される線材を、ワークが備えるコアに巻き回す第1工程と、
複数のチャックを、前記コアに前記線材が巻き回されている前記ワークの径方向に移動させてそれぞれ該ワークに当接させることで該ワークを保持する第2工程と、
前記ワークを保持している前記複数のチャックのうちの第1チャックに、前記コアと前記ノズルとの間にある前記線材の第1部分を保持させる第3工程と、
前記第1部分が前記第1チャックに保持されている前記線材の、前記第1部分と前記ノズルの間の箇所を切断する第4工程とを備えることを特徴とする巻線処理方法。
【請求項13】
請求項12に記載の巻線処理方法であって、
前記第1チャックは、前記ワークを保持する状態で前記ワークよりも前記ノズル側に位置し前記線材の前記第1部分を収容するための凹部と、該凹部に収容された前記第1部分を前記凹部の内面に押圧して保持するための、可動の第1押圧部材とを備え、
前記第3工程において、前記ワークの軸心を中心として前記ワークを前記ノズルに対して相対回転させることで、前記線材の前記第1部分を前記凹部に収容することを特徴とする巻線処理方法。
【請求項14】
請求項13に記載の巻線処理方法であって、
前記第1チャックは、前記第1押圧部材を前記凹部の内面に当接するように付勢する付勢部材を備え、
前記第3工程において、前記付勢部材の付勢に抗して前記第1押圧部材を前記凹部の内面から離れた位置に保持した状態で、前記第1部分を前記凹部に収容し、その後、前記第1押圧部材の保持を解除することで前記第1部分を前記凹部の内面に押圧して保持することを特徴とする巻線処理方法。
【請求項15】
請求項13に記載の巻線処理方法であって、
前記第3工程が、前記第1部分と前記凹部の開口との、前記ワークの径方向の位置が合うように、前記コアと前記ノズルとの間で第2押圧部材により前記線材を押圧して該線材を前記ワークの径方向に移動させる第5工程を含むことを特徴とする巻線処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の巻線処理方法であって、
前記第3工程の後、前記線材の前記第1部分と前記ノズルとの間の箇所に前記第2押圧部材を引っ掛けて前記ワークの径方向外側に向けて引き出す第6工程を含むことを特徴とする巻線処理方法。
【請求項17】
請求項13に記載の巻線処理方法であって、
前記第2工程は、前記複数のチャックを、前記ワークが前記複数のチャックに対して摺動しつつ前記ワークの軸心を中心として回転可能な第1状態で、前記ワークに当接させて前記ワークを保持する工程であり、
前記第3工程は、前記複数のチャックが前記第1状態で前記ワークに当接している状態で行い、
前記第3工程より後に、前記複数のチャックを、前記第1状態よりも強い力で前記ワークに当接させる工程を備えることを特徴とする巻線処理方法。
【請求項18】
請求項12乃至17のいずれか一項に記載の巻線処理方法であって、
前記第1工程は、複数の前記ノズルから繰り出される線材を、前記ワークが備える複数のコアのうち前記各ノズルと対応するコアにそれぞれ巻き回す工程であり、
前記複数のチャックには前記各ノズルと対応するように前記第1チャックが複数含まれ、
前記第3工程は、該各第1チャックに、対応するノズルとコアとの間に存在する各線材の第1部分を保持させる工程であり、
前記第4工程は、前記第1部分が前記第1チャックに保持されている前記各線材の、前記第1部分と前記ノズルとの間の箇所を切断する工程であることを特徴とする巻線処理方法。
【請求項19】
請求項12乃至17のいずれか一項に記載の巻線処理方法の各工程と、
前記第4工程で前記線材を切断した後、前記線材の前記第1部分が前記第1チャックに保持されている状態で、前記複数のチャックにより保持されたワークを、該複数のチャックを備える可動アームにより、前記線材の巻き回しの次の工程を実行する装置又はステージへ搬送する第7工程とを含むことを特徴とする巻線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから繰り出される線材が巻き回された状態のワークを保持するワーク保持装置、該ワーク保持装置を備えた巻線機、ノズルから繰り出されワークに巻き回された線材を処理する巻線処理方法及び、該巻線処理方法を含む巻線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを構成するステータやロータは、巻線が終了した後、端子取付及び端子台やコネクタへの接続工程など、複数の処理工程を経てモータハウジングに組み込まれる。
巻線の手法は様々知られているが、例えば、ステータコア(ワーク)にノズルから繰り出される線材を巻き回すタイプの巻線を行う場合、巻線工程が終了すると、巻線されたコアとノズルとの間の線材をカッターにより切断し、ステータコアを次の工程に運ぶことが行われる。このとき、切断後にコア側に残る線材は端末線やリード線、または終わり線などと呼ばれ、次の工程でこの線材を端子へ取り付けることが考えられる。本明細書では、この線材を「終わり線」と呼ぶが、後述の特許文献1に言及する際には「リード線」と呼ぶ。
【0003】
ここで、終わり線は線材の切断時にランダムに曲がったり互いに交差したりするため、終わり線が複数ある場合に、その各末端部の順序や位置が一定しないことになる。このため、巻線が終了したステータコアを、終わり線が切断時の状態のままで次の工程に搬送すると、次の工程で終わり線を自動的に認識して正確にピックアップすることが難しいという問題がある。ピックアップが正確に行えないと、終わり線の巻き込みや線材自体の損傷といった不具合の原因になることが考えられる。このため、次の工程での線材のピックアップを自動化するために、終わり線を手作業によってピン等の固定部材に巻き付けて位置決めすることもしばしばであり、この点で、モータ製造工程全体の自動化の障害となっていた。
【0004】
これに対し、特許文献1には、終わり線(リード線)の処理を自動化するための技術について提案がなされている。
特許文献1には、既に線材が巻き回されたコイルをステータコアに挿入する方式についてであるが、パレットに取付けられたステータコアにコイルを挿入した後、コイルのリード線をチャックにより把持して引き出して外周方向に引き出し、山形突起を有する上下の環状部材で挟んで保持することにより位置決めし、その状態でパレットを次の工程にフリーフローコンベアで搬送することが記載されている。
【0005】
また、巻線が終了したワークを次の工程に搬送する構成としては、特許文献1に記載のようなパレットを用いる方式の他に、例えば特許文献2に開示されているように、ステータの内部にチャック機能を有する保持部材を挿入して保持し、該保持部材を移動させる方式が知られている。なお、特許文献2ではワークの端末線処理についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-98474号公報
【特許文献2】特開平8-298755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のリード線処理装置ではリード線1本あたり1組必要なチャック機構がそれぞれ3つものエアシリンダを備えており、構成の大型化、複雑化、高コスト化を避けられない。また、チャック機構に加えて外周部で各リード線を個別に保持するための上下の環状部材が必要であり、これが構成の大型化、複雑化、高コスト化を一層助長している。
このような問題は、ステータコアだけでなく、ロータコアなど他のワークに巻線を行う場合にも同様に発生するものである。
【0008】
本発明は、このような現状に鑑みて創案されたもので、巻線終了後の終わり線の位置決めを、簡易な構成で行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ワークとノズル間における切断前の線材は整然と位置決めされて張った状態にあり、この切断前の状態で線材を把持すれば、特許文献1に記載されているような切断後のランダムに曲がった端末線を処理する構成も不要となる。また、ワークを保持して搬送するための部材を利用して終わり線の位置決めを行えば、位置決めのための部材を別途設ける必要がなく、構成の簡易化が期待できる。本発明はこのような考えに基づいて創案されたものである。
【0010】
具体的には、上記目的を達成するために、本発明に係るワーク保持装置は、コアを備えるワークであってノズルから繰り出される線材が上記コアに巻き回された状態の上記ワークに対し、該ワークの径方向に移動してそれぞれ該ワークに当接することで該ワークを保持する複数のチャックを備え、上記複数のチャックのうちの第1チャックが、上記コアと上記ノズルとの間にある上記線材の第1部分を保持するための保持部を備えるものである。
【0011】
上記のワーク保持装置において、上記保持部は、上記ワークを保持する状態で上記ワークよりも上記ノズル側に位置し上記線材の上記第1部分を収容するための凹部と、該凹部に収容された上記第1部分を上記凹部の内面に押圧して保持するための、可動の第1押圧部材とを備えていることが好ましい。
【0012】
また、上記のワーク保持装置において、上記第1押圧部材を上記凹部の内面に当接するように付勢する付勢部材を上記第1チャックに備え、さらに、上記第1押圧部材を上記凹部の内面から離れる方向に駆動する第1駆動部とを備えることがより好ましい。
【0013】
また、上記のワーク保持装置において、上記第1駆動部により上記第1押圧部材が上記凹部の内面から離された状態で、上記ワークの軸心を中心とした上記ワークの上記ノズルに対する相対回転により、上記線材の上記第1部分が上記凹部に収容されることが好ましい。
【0014】
また、上記のワーク保持装置において、上記ワークの軸心を中心とした上記ワークの上記ノズルに対する相対回転により、上記線材の上記第1部分が上記凹部に収容されることも好ましい。
【0015】
また、上記のワーク保持装置において、上記第1部分と上記凹部の開口との、上記ワークの径方向の位置が合うように、上記コアと上記ノズルとの間で上記線材を押圧して該線材を上記ワークの径方向に移動させる第2押圧部材を備えることがなお好ましい。
【0016】
また、上記のワーク保持装置において、上記第2押圧部材が上記ワークの径方向に進退可能に設けられ、上記第2押圧部材の上記線材に当接して押圧する先端部の、上記ワークの周方向の長さが、上記線材のうち上記先端部に当接する部分が上記相対回転に伴って移動する距離よりも大きいことがさらに好ましい。
【0017】
また、上記のワーク保持装置において、上記第2押圧部材が、上記第1チャックが上記線材の上記第1部分を保持した状態で、上記先端部の、上記線材の押圧時に上記線材に当接していた第1面と反対側の第2面に、上記線材の上記第1部分と上記ノズルとの間の箇所を引っ掛けて、上記ワークの径方向外側に向けて引き出すことも好ましい。
【0018】
また、上記のワーク保持装置において、上記複数のチャックの上記ワークの径方向への駆動を制御して、上記複数のチャックと上記ワークとを、上記ワークが上記複数のチャックに対して摺動しつつ上記ワークの軸心を中心として回転可能な第1状態と、上記第1状態よりも強い力で上記複数のチャックを上記ワークに当接させる第2状態とから選択される一の状態で上記複数のチャックを上記ワークに当接させる制御部を設け、上記ワークの上記相対回転を、上記複数のチャックが上記第1状態で上記ワークに当接した状態で行うことも好ましい。
【0019】
また、上記のワーク保持装置において、上記ワークは上記コアを複数備えるものであり、上記複数のチャックは、複数の上記ノズルからそれぞれ繰り出される線材が該各ノズルと対応するコアにそれぞれ巻き回された状態の上記ワークを保持し、上記複数のチャックには上記各ノズルと対応するように上記第1チャックが複数含まれ、該各第1チャックが、対応するノズルとコアとの間に存在する各線材を保持することも好ましい。
【0020】
また、本発明に係る巻線機は、上記のいずれかのワーク保持装置と、上記ノズルと、上記第1部分が上記保持部に保持されている上記線材の、上記第1部分と上記ノズルとの間の箇所を切断するカッターと、上記複数のチャックを備えた可動アームと、を備え、上記カッターにより上記線材を切断した後、上記線材の上記第1部分が上記保持部に保持されている状態で、上記複数のチャックにより保持されたワークを、上記線材の巻き回しの次の工程を実行する装置又はステージへ上記可動アームにより搬送するものである。
【0021】
本発明に係る巻線処理方法は、ノズルから繰り出される線材を、ワークが備えるコアに巻き回す第1工程と、複数のチャックを、上記コアに上記線材が巻き回されている上記ワークの径方向に移動させてそれぞれ該ワークに当接させることで該ワークを保持する第2工程と、上記ワークを保持している上記複数のチャックのうちの第1チャックに、上記コアと上記ノズルとの間にある上記線材の第1部分を保持させる第3工程と、上記第1部分が上記第1チャックに保持されている上記線材の、上記第1部分と上記ノズルの間の箇所を切断する第4工程とを備えるものである。
【0022】
また、上記の巻線処理方法において、上記第1チャックは、上記ワークを保持する状態で上記ワークよりも上記ノズル側に位置し上記線材の上記第1部分を収容するための凹部と、該凹部に収容された上記第1部分を上記凹部の内面に押圧して保持するための、可動の第1押圧部材とを備え、上記第3工程において、上記ワークの軸心を中心として上記ワークを上記ノズルに対して相対回転させることで、上記線材の上記第1部分を上記凹部に収容することが好ましい。
【0023】
また、上記の巻線処理方法において、上記第1チャックは、上記第1押圧部材を上記凹部の内面に当接するように付勢する付勢部材を備え、上記第3工程において、上記付勢部材の付勢に抗して上記第1押圧部材を上記凹部の内面から離れた位置に保持した状態で、上記第1部分を上記凹部に収容し、その後、上記第1押圧部材の保持を解除することで上記第1部分を上記凹部の内面に押圧して保持することがより好ましい。
【0024】
また、上記の巻線処理方法において、上記第3工程が、上記第1部分と上記凹部の開口との、上記ワークの径方向の位置が合うように、上記コアと上記ノズルとの間で第2押圧部材により上記線材を押圧して該線材を上記ワークの径方向に移動させる第5工程を含むことがさらに好ましい。
【0025】
また、上記の巻線処理方法において、上記第3工程の後、上記線材の上記第1部分と上記ノズルとの間の箇所に上記第2押圧部材を引っ掛けて上記ワークの径方向外側に向けて引き出す第6工程を含むことも好ましい。
【0026】
また、上記の巻線処理方法において、上記第2工程が、上記複数のチャックを、上記ワークが上記複数のチャックに対して摺動しつつ上記ワークの軸心を中心として回転可能な第1状態で、上記ワークに当接させて上記ワークを保持する工程であり、上記第3工程は、上記複数のチャックが上記第1状態で上記ワークに当接している状態で行い、上記第3工程より後に、上記複数のチャックを、上記第1状態よりも強い力で上記ワークに当接させる工程を備えるとよい。
【0027】
また、上記の巻線処理方法において、上記第1工程は、複数の上記ノズルから繰り出される線材を、上記ワークが備える複数のコアのうち上記各ノズルと対応するコアにそれぞれ巻き回す工程であり、上記複数のチャックには上記各ノズルと対応するように上記第1チャックが複数含まれ、上記第3工程は、該各第1チャックに、対応するノズルとコアとの間に存在する各線材の第1部分を保持させる工程であり、上記第4工程は、上記第1部分が上記第1チャックに保持されている上記各線材の、上記第1部分と上記ノズルとの間の箇所を切断する工程であることも好ましい。
【0028】
本発明に係る巻線の製造方法は、上記のいずれかの巻線処理方法の各工程と、上記第4工程で線材を切断した後、上記線材の上記第1部分が上記第1チャックに保持されている状態で、上記複数のチャックにより保持されたワークを、該複数のチャックを備える可動アームにより、上記線材の巻き回しの次の工程を実行する装置又はステージへ搬送する第7工程と含むものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、巻線終了後の終わり線の位置決めを、簡易な構成で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワーク保持装置を備えた巻線機の要部を示す斜視図である。
【
図2】
図1で示した巻線機において巻線が終了した状態のワークとノズルとの関係を示す斜視図である。
【
図3】
図1で示した巻線機においてワーク保持装置がワーク保持位置に進入する状態を示す斜視図で、
図3Aは進入前の状態を示す図、
図3Bは進入後の状態を示す図である。
【
図4】
図1で示した巻線機においてワーク保持装置がワーク保持位置に進入した後の状態を示す図で、
図4Aは複数のチャックが開動作を始める前の状態を
図1の斜め下側から見た斜視図、
図4Bはワーク及びチャックを
図1の下側から見た平面図である。
【
図5】
図1で示した巻線機におけるワーク保持装置がワークを保持した状態を示す図で、
図5Aは拡大斜視図、
図5Bは線材の保持・保持解除のためのストローク量を示す、
図5Aの枠線X付近の拡大図である。
【
図6】
図1で示したワーク保持装置における保持チャックの保持部の動作を説明するための概要断面図で、
図6Aは線材を保持する前の状態を示す図、
図6Bは線材を保持した状態を示す図である。
【
図7】
図1で示した巻線機の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図1で示した巻線機において巻線終了後にワーク8の内側に複数のチャック14を進入させた状態の、ワーク8、チャック14、ノズルN1~N3及び線材W1~W3の位置関係を示す図で、
図8Aはこれらの側面ややノズルユニット6側から見た斜視図、
図8Bはよりノズルユニット6側に寄った位置から見た斜視図である。
【
図10】
図9A及び
図9Bで示した状態から、複数のチャック14が弱保持状態に移行した状態を、
図9Bよりもややワーク8及びチャック14に寄った状態で示す斜視図である。
【
図11】
図10の状態における保持チャック14Eの凹部30と線材W2との位置関係を示す拡大側面図で、
図11AはノズルN2が巻線動作時の位置にある状態を、
図11BはノズルN2をノズルユニット6内に収容した状態を示す図である。
【
図12】
図12Aは、
図10の状態からノズルN2を部分的にノズルユニット6内に収容すると共に押圧ロッドPR2により線材W2を押圧した状態を示す側面図である。
図12Bは、その押圧による線材W2の移動を、線材の軸線方向の
図12Aで上側から見た各部の配置と共に模式的に示す平面図である。
【
図13】
図12Aの状態からワークを矢印R2方向に回転させて線材を凹部に収容した状態を示す斜視図で、
図13Aは線材をちょうど凹部に収容できる程度に回転させた状態を示す図、
図13Bは
図13Aの状態からさらにワークをインデックス回転の原位置まで回転させた状態を示す図である。
【
図14】
図10の状態の各チャック14とワーク8の各部との位置関係を、ワーク8の軸方向の、ノズルユニット6側から見た状態で示す図である。
【
図15】
図12に示した押圧ロッドの概略構成を示す平面図で、
図15Aは
図12Aに示した線材の押圧時の線材との位置関係と合わせて示す図、
図15Bは
図15Aの状態から90°回転させて移動するときの先端部46Aa及び柄部46Aと線材との位置関係を
図15Aと同じ方向から示す図、
図15Cは
図16Aのように線材を引き出すときの先端部46Aa及び柄部46Aと線材との位置関係を
図15Aと同じ方向から示す図である。
【
図16】
図13Aに示した状態から押圧ロッドで線材を引き出した状態を示す斜視図で、
図16Aは引き出し初期の状態を示す図、
図16Bはカッターで線材を切断する位置まで引き出した状態を示す図である。(
【
図17】線材の切断後にワーク8がワーク保持装置16により保持され搬送される状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について図を参照して説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る巻線機2の要部を示し、
図2は巻線機2の巻線部4においてワーク8に線材W1~W3を巻き回した状態を示している。巻線機2は、
図2に示すように3つのノズルN1~N3を備えたノズルユニット6を駆動源により上下方向(矢印A方向)に駆動し、これに同期させてワーク8を所定のタイミングで所定の角度ずつ水平回転(インデックス回転)させることで、3つのノズルN1~N3からそれぞれ繰り出される線材W1~W3を、ワーク8の突極(コア)8aのうち3つずつに同時に巻き回すことができる。各線材W1~W3を、それぞれ複数の突極8aに対して続けて巻き回し、複数の突極8aと対応する巻線が直列に接続された巻線を形成することもできる。
【0033】
本実施形態では、ワーク8の一例として、積層鉄心8bの内周側に複数の突極8aを備えた3相モータのステータを示している。各突極8aに巻き回された線材W1~W3は、それぞれU相、V相、W相のコイルを形成する(順不同)。
図2において、符号R1及びR2はそれぞれワーク8の軸心を中心としたワーク8の回転の方向を示している。
線材W1~W3を巻き回す工程において、ワーク8は円筒状のワーク保持台10に保持されている。ワーク保持台10はサーボモータ12(
図7参照)によりインデックス回転されるようになっており、これによりワーク8の所定角度ずつの回転がなされる。
【0034】
図2は、ノズルN1~N3から繰り出される線材W1~W3が対応する各突極8aに巻き回された状態、すなわち、各突極8aへの巻線8cの形成が完了した状態を示している。突極8aとノズルN1~N3との間にある線材W1~W3の符号W1a~W3aで示す部分は、ワーク8を巻線部4から取り外す際にカッター18(
図7参照)で切断されてワーク8側に残る部分であり、端末線やリード線、または終わり線などと呼ばれている部分である。本実施形態ではこの第1部分を「終わり線」と呼ぶ。
本実施形態は、この終わり線を形成する、巻線終端側の線材の取り扱いに一つの特徴を有する。このため、終わり線を見やすくするため、各図において、線材の巻線始端側の図示は省略している。
【0035】
図1に示すように、巻線機2は、複数のチャック14を備えたワーク保持装置16と、先端部にワーク保持装置16を回転可能に備えた可動アーム20とを備えている。可動アーム20は多関節のロボットアームである。
また、巻線機2はさらに、上述のカッター18も備える。カッター18は、突極8aへの線材W1~W3の巻き回しが完了した後線材W1~W3の一部が複数のチャック14のうちの第1チャックである保持チャックの保持部(後述)に保持された状態で、線材W1~W3の、当該保持部に保持された部分(第1部分)とノズルN1~N3との間の箇所を切断する。
【0036】
巻線機2は、カッター18により線材W1~W3を切断した後、切断により形成された各終わり線W1a~W3aが上記保持チャックの保持部に保持されている状態で、複数のチャック14により保持されたワーク8を、線材W1~W3の巻き回しの次の工程を実行する装置又はステージへ可動アーム20により搬送する。次の工程としては、例えば終わり線W1a~W3aの所定の端子への接続等が考えられる。
ワーク保持装置16は、外観が概ね円柱状であり、図で下側に複数のチャック14を備えているとともに、上側に未巻線の供給用ワーク22を保持している。
【0037】
巻線機2は、ワーク8への巻線が終了すると、
図3Aに示すように、巻線部4のワーク押え24を矢印B方向に後退させ、ワーク8の上面側を開放する。ワーク押え24の後退に伴い、制御部100(
図7参照)が可動アーム20の駆動を制御し、
図3B及び
図4Aに示すように、可動アーム20がワーク保持装置16をワーク8の中心部に挿入する。後述のように複数のチャック14によるワーク8の保持及びカッター18による線材W1~W3の切断が完了すると、制御部100の制御により可動アーム20がワーク保持装置16を上昇させ、供給用ワーク22が
図3Aで下側を向くようにワーク保持装置16を180°回転させる。
【0038】
可動アーム20はこの状態でワーク保持装置16を巻線部4内に再び進入させ、ワーク保持台10に供給用ワーク22を載置する。可動アーム20はその後、ワーク8を保持した状態のワーク保持装置16を再び上昇させ、巻線済みのワーク8を、次の工程を実行する装置又はステージへ搬送する。ワーク保持装置16は、当該装置又はステージへワーク8を渡した後、新たな供給用ワーク22を受け取り、可動アーム20により
図1に示す巻線待機位置に戻される。以上が、巻線機2におけるワーク8への巻線から次工程への搬送までの一連の動作であり、複数のワーク8への巻線を行う場合、巻線機2は以上の動作を繰り返す。
【0039】
次に、上述した保持チャックによる線材W1~W3の保持に係る構成及び動作について説明する。
図4A及び
図4Bに示すように、複数のチャック14は、複数のノズルN1~N3からそれぞれ繰り出された線材W1~W3が各ノズルN1~N3と対応する突極8aにそれぞれ巻き回された状態のワーク8に対し、該ワーク8の径方向外側に移動してそれぞれ該ワーク8に当接することで該ワーク8を保持する。複数のチャック14はワーク8の径方向外側に放射状に同時に移動してそれぞれ該ワーク8の突極8aに当接することで該ワーク8を保持する。すなわち、複数のチャック14は拡開保持方式の電動チャックである。各突極8aの径方向内側端部には、巻線8cの端部の位置を規制すると共にチャック14の当接を受けるためのフランジ部8dが形成されている。
図4Bはワーク8を
図4Aの下側から見た図である。
【0040】
図4Bに示すように、複数のチャック14には、単にワーク8に当接するだけの通常タイプの2つのチャック14A、14Bと、それぞれ線材W1、W2、W3を保持する機能を備える3つの保持チャック14C、14D、14Eとが含まれる。すなわち、複数のチャック14には、各ノズルN1、N2、N3と対応するように複数の保持チャック14C、14D、14Eが含まれ、該各保持チャック14C、14D、14Eが、対応するノズルN1、N2、N3と突極8aとの間に存在する各線材W1、W2、W3を保持する。
【0041】
複数のチャック14は、
図4B及び
図5Aに示すように、ワーク8の保持時にワーク8に当接するチャック本体25、26と、該チャック本体25、26をワーク8の径方向にガイドするガイド部材と、チャック本体25、26を開閉駆動する共通のチャック開閉駆動源28とを有している。チャック本体25は通常タイプのチャックの本体で、チャック本体26は上述の保持チャックの本体である。チャック開閉駆動源28の駆動により複数(ここでは5つ)のチャック14が同時にワーク8の径方向に移動して開閉動作する。チャック開閉駆動源28としては、例えば、エアシリンダ、モータ、ソレノイド等を備える公知の機構を適宜に採用することができる。
【0042】
以下、保持チャックの構成及び動作について説明するが、保持チャック14Dを代表として説明する。保持チャック14C、14Eも保持チャック14Dと同じ構成及び動作である。
保持チャック14Dのチャック本体26は、チャック開閉駆動源28により駆動される基部から、ワーク8に挿入されフランジ部8dに当接する先端部まで、一体として形成
されている。また、チャック本体26は、
図6Aに示すように、ワーク8への挿入方向の端部に、線材W2を保持するための保持部27を備えている。保持部27は、ワーク8を保持する状態でワーク8よりもノズルN2に近い側に位置し、線材W2を収容するためのフック状の凹部30と、該凹部30に収容された線材W2を凹部30の内面30aに押圧して保持するための、可動の第1押圧部材32とを備えている。
【0043】
第1押圧部材32は、チャック本体26に回動軸34で上端側を支持されて回動自在に設けられ、
図6Aで下端側に、ワーク8の径方向に向けて突出する下側凸部32bを備えている。この下側凸部32bにより線材W2に対する押圧がなされる。
チャック本体26は、バネ35及び第1駆動部36を備える。バネ35は、第1押圧部材32を、その下側凸部32bがワーク8の周方向に延びる凹部30の内面30aに当接するように付勢する付勢部材である。第1駆動部36は、第1押圧部材32をその下側凸部32bが凹部30の内面30aから離れる方向に、バネ35による付勢力に逆らって駆動する。
また、第1押圧部材32は、
図6Aで上端側にも、ワーク8の径方向に突出するように下側凸部32bと概ね同じ長さの上側凸部32aを備えている。
【0044】
第1駆動部36は、スライド部材38と、可動部材40と、保持チャック押圧駆動源42(
図5参照)とを備えている。
スライド部材38は、チャック本体26に対して
図6Aの上下方向にスライド自在に設けられており、第1押圧部材32の上側凸部32aの上面に当接する。可動部材40は、チャック本体26に上下動可能に設けられ、スライド部材38の上端に当接する押圧片40aを有する。保持チャック押圧駆動源42は、可動部材40を駆動する。保持チャック押圧駆動源42は複数の保持チャック14C、14D、14Eに共通の駆動源である。保持チャック押圧駆動源42としては、例えば、エアシリンダ、モータ、ソレノイド等を採用することができる。
【0045】
チャック本体26の凹部30に線材W2が収容される前は、
図6Aに示すように、保持チャック押圧駆動源42が動作して可動部材40を下方(矢印C方向)に移動させ、これに連れて上側凸部32aに当接するスライド部材38も下方に押圧される。このため、第1押圧部材32は時計回り方向に駆動され、その下側凸部32bは凹部30の内面30aから離れている。
【0046】
この状態から保持チャック押圧駆動源42が動作して可動部材40を矢印Dで示すように上昇させると、
図6Bに示すように、バネ35の付勢力で第1押圧部材32が反時計回り方向(矢印E方向)に回動し、下側凸部32bが線材W2を各凹部30の内面30aに押圧する。これにより、線材W2の一部が凹部30内に保持される。
図6Aにおいて、符号30bは凹部30の開口(線材収容口)を示している。線材保持時にはバネ35の付勢力で線材W2を押圧するので、安定的に適度な力で線材W2を保持することができ、押圧力が強すぎて線材W2の被覆層に傷をつけてしまうようなことを防止できる。
【0047】
線材W2を保持するための保持チャック押圧駆動源42の駆動量、すなわち可動部材40の矢印Vで示す上方への移動量tは、例えば、
図5Bに示すようにワーク8の径に比してわずかでよい。
図6Aに示すように、回動軸34から下側凸部32bまでの距離に比べて、回動軸34から上側凸部32aに対するスライド部材38の作用点までの距離が短いために、上下方向の僅かなストローク量で終わり線W2aに対する押圧及び押圧解除が可能となっている。
【0048】
なお、
図5Aに示すように、ワーク8とノズルユニット6との間には、線材W1~W3と、各保持チャック14C~14Eの凹部30の開口30bとの、ワーク8の径方向の位置が合うように、突極8aとノズルN1~N3との間の位置で線材W1~W3を押圧して該線材W1~W3をワーク8の径方向に移動させる第2押圧部材である押圧ロッドPR1~PR3がワーク8の径方向に進退可能に設けられている。押圧ロッドPR1~PR3は線材W1~W3にそれぞれ対応して設けられ、押圧ロッドPR1~PR3もワーク保持装置16の構成要素であると考えることができる。
図7に示すように、各押圧ロッドPR1~PR3は、それぞれに対応したロッド駆動源44A~44Cにより進退駆動されるとともに回転駆動される。この点については後述する。
【0049】
図7には、巻線機2の構成をブロック図として示す。制御部100は、CPUと、CPUにバスラインで接続されたROM、RAM、I/Oインターフェース部等を含むマイクロコンピュータであり、必要に応じてオペレータの操作や各部のセンサからの信号を検出し、それらを参照しつつ、予め記憶された動作パラメータに基づき各駆動源の動作を制御する。
【0050】
次に、巻線機2を用いた巻線処理方法及び、この巻線処理方法の各工程を含む巻線の製造方法について説明する。
【0051】
本実施形態に係る巻線処理方法は、以下の第1~第4工程を備える。これらの各工程は、
図7に示した制御部100が巻線機2の各駆動源の動作を制御して実行することができる。
(a)巻線部4でノズルN1~N3から繰り出される線材W1~W3を、ワーク8が備える突極8aに巻き回す第1工程。
(b)複数のチャック14を、突極8aに線材W1~W3が巻き回されているワーク8の径方向に移動させてそれぞれ該ワーク8に当接させることで該ワーク8を保持(弱保持:第1状態)する第2工程。
(c)ワーク8を保持している複数のチャック14のうちの保持チャック14C~14Eに、突極8aとノズルN1~N3との間にある線材W1~W3の一部分を保持させる第3工程。
(d)第3工程で保持チャック14C~14Eにそれぞれ保持されている線材W1~W3の、当該保持箇所とノズルN1~N3との間の箇所を切断する第4工程。
【0052】
図8Bは、巻線部4において線材W1~W3の巻線(第1工程)が終了した後で内部に複数のチャック14を挿入した状態の
図8Aのワーク8を、
図8Aの下側から見た図である。ノズルユニット6の駆動機構など、ノズルユニット6よりも図で手前側にある構成は図示を省略している。
図8A及び
図8Bでは、ワーク8がインデックス回転の原位置(巻線終了時の位置)にある状態を示している。
図8Bから明らかなように、この状態では線材W1~W3は保持チャック14C~14Eの各凹部30に対してワーク8の周方向にずれた位置にある。また、保持チャック14C~14Eを含む複数のチャック14はまだワーク8(の突極8aのフランジ部8d)に当接していない。
【0053】
この状態では、ワーク8は自由に回転できるので、その軸心を中心としてインデックス回転させ、保持チャック14C~14Eの各凹部30と、線材W1~W3との、ワーク8の周方向の位置を概ね合わせる。ワーク8の回転は、後の図で説明するものも含め、第1工程でのワーク8の回転駆動に用いた、ワーク保持台10及びサーボモータ12により行うことができる。
【0054】
ここで説明する例では、回転方向は
図9A及び
図9Bの矢印R1方向であるとし、
図9A及び
図9Bに示すように、線材W1~W3が、矢印R1方向で見て保持チャック14C~14Eの各凹部30をやや通り過ぎた位置で止める。このことで、線材W1~W3を、対応する凹部30の開口30b側に配置する。具体的な回転角度は、巻線終了時の線材W1~W3と凹部30との平均的な位置関係を予め計測してそれに基づき定めればよい。例えばここで説明する9極のワークを用いる場合、1周の1/9のさらに半分の20度程度とすることが考えられる。
【0055】
図9A及び
図9Bに示す状態では、保持チャック14C~14Eの各凹部30と、線材W1~W3との位置は、ワーク8の径方向で見た場合には大きくずれている。この状態から、制御部100は、チャック開閉駆動源28を動作させて複数のチャック14をワーク8の径方向外側に向けて移動させ、ワーク8(の突極8aのフランジ部8d)に当接させる。これが第2工程に該当する。
【0056】
図10には複数のチャック14が矢印Fで示す径方向外側に移動した当接状態を示している。
図14に、この状態の各チャック14とワーク8の各部との位置関係を、ワーク8の軸方向の、
図10で下側(ノズルユニット6側)から見た状態で示す。ワーク8の径方向で見れば、この位置が、保持チャック14C~14Eの各凹部30に線材W1~W3を収容する位置である。また、この当接の時点で、保持チャック14C~14Eの各凹部30と線材W1~W3との、ワーク8の径方向で見た位置が合っていれば、ワーク8を矢印R1と逆方向に回転させることにより、保持チャック14C~14Eの各凹部30の内部に線材W1~W3を収容することができる(第3工程)。
【0057】
図10の状態(第1状態)では、このワーク8の回転を可能とするため、ワーク8が複数のチャック14に対して摺動しつつ回転できるように、複数のチャック14をワーク8に対して比較的弱い力で当接させる。この当接は、ワーク8の保持というよりは保持チャック14C~14Eの位置決めのために行うものである。
【0058】
ところで、巻線機2の構成によっては、ノズルN1~N3をノズルユニット6に対してその径方向に進退させて突出量を変化させることで、または、変化させなくても、
図10の状態で、保持チャック14C~14Eの各凹部30と線材W1~W3との、ワーク8の径方向で見た位置を合わせることができる場合もある。しかし、ノズルN1~N3の移動だけで位置合わせができるとは限らない。
【0059】
例えば、線材W2の巻き回し時には
図11Aに示す程度にノズルユニット6から突出しているノズルN2を、矢印Gで示すように
図11Bに示す位置までノズルユニット6に収容することで、巻き回し後の線材W2の位置を、ワーク8の中心側に移動させることができる。
しかし、
図11Bに示すように、この移動によっても線材W2の、ワーク8の径方向の位置を保持チャック14Eの凹部30と合わせられないことも考えられる。この状態のままワーク8を矢印R1と逆方向に回転させても、凹部30の内部に線材W2を収容することができない。他の保持チャック14C、14Eと線材W1、W3の関係についても同様である。
【0060】
そこで、
図10(又は
図11B)に示した状態で、
図12A及び
図12Bに矢印Hで示すように、押圧ロッドPR2で線材W2をワーク8の径方向内側へ押圧し、線材W2を、ワーク8の径方向で見て凹部30の開口30bと同じ位置まで押し出して位置合わせをする。押圧ロッドPR2による押圧とノズルN2の進退とを組み合わせて線材W2の径方向位置を調整してもよい。他の線材W1、W3も、これらと対応する押圧ロッドPR1、PR3により同様に位置合わせする。この工程が、第5工程である。なお、
図12Aでは線材W2と押圧ロッドPR2を代表して示しており、他の線材及び押圧ロッドの図示は省略している。
【0061】
この状態で、ワーク8を矢印R2方向(矢印R1と逆方向)に回転させることにより、
図13Aに示すように、保持チャック14C~14Eの各凹部30の内部に線材W1~W3を収容することができる。
いずれにせよ、このように線材W1~W3が収容された状態で、可動部材40を上昇させて第1押圧部材32への押圧を解除することで、第1押圧部材32の下側凸部32bがバネ35の付勢力により線材W1~W3の一部を各凹部30の内面30aに押圧して保持する。以上で第3工程が完了する。
【0062】
なおこのとき、
図13Aに示すような、ちょうど線材W1~W3が保持チャック14C~14Eの凹部30に収容される位置を超えて、ワーク8を、
図13Bに示すインデックス回転の原位置まで戻してもよい。これは、1サイクル終了時に各部を回転の原位置に戻すことで、複数サイクルの連続した動作を可能とするためである。また、ワーク8を原位置に戻すことで、巻線終了時と同じ周方向位置で各線材W1~W3を保持できる点もメリットである。
【0063】
なお、押圧ロッドPR1~PR3は、押圧ロッドPR1を代表として説明すると、
図15Aに示すように、線材W1に当接して押圧する先端部46Aaが柄部46Aに対して略直角に屈曲したL字状をなし、柄部46Aの根元にはロッド駆動源44A(
図7参照)に接続するための接続部46Bを備える。
図15Aの矢印Hは、
図12A及び
図12Bに示した押圧方向の矢印Hと対応する。
【0064】
先端部46Aaは、
図10の状態から
図13A(又は
図13B)の状態までのワーク8の回転に伴って線材W1が移動しても、押圧ロッドPR1を移動させずに線材W1への押圧を継続できるよう、ワーク8の周方向の長さhを、当該回転に伴う線材W1の移動距離よりも長くすることが好ましい。しかし、ワーク8の回転に伴って押圧ロッドPR1をワーク8の周方向へ移動させることで線材W1への押圧を継続する構成も可能である。
押圧ロッドはPR2、PR3も、押圧ロッドPR1と同様な構成である。また、これらの押圧ロットPR1~PR3は、ロッド駆動源44A~44Cにより個別にワーク8の径方向に進退可能である。
【0065】
以上のように、線材W1~W3を凹部30内に保持した後、チャック開閉駆動源28が複数のチャック14を弱保持の第1状態からさらにワーク8の径方向外側へ駆動し複数のチャック14が第1状態よりも強い力でワーク8を強固に保持する通常の保持状態(強保持状態:第2状態)へ移行する。
【0066】
この状態で、第4工程として、線材W1~W3のうち、凹部30内に保持されている部分(第1部分)と、ノズルN1~N3との間の箇所をそれぞれカッター18により切断することで、各終わり線W1a~W3aが保持チャック14C~14Eに保持された状態で巻線後のワーク8を次の工程へ搬送可能とすることができる。保持チャック14C~14Eに保持された各終わり線W1a~W3aは、その端部の位置や配置順が固定されるので、次の工程の装置が自動で容易に各終わり線W1a~W3aを掴んで、端子への接続等の当該工程の処理を行うことができる。
【0067】
このとき、凹部30内に保持されている箇所になるべく近い位置で切断することが、終わり線W1a~W3aのうち自由に動ける長さを短くできる点で好ましい。また、カッター18にクランプを備え、当該クランプにより切断位置のノズルN1~N3側を保持することが好ましい、このことで、次のワーク8への巻線を行うための、巻線開始位置への線材W1~W3の供給を容易に行うことが出来る。
巻線開始位置においては、線材を所定の端子に接続したり、スリットに差し込んだり、ピンに巻き付けたりして、次工程において線材の端部の位置を容易に把握できるようにすることが好まししい。
【0068】
ところで、
図13A又は
図13Bの状態では、ワーク8や押圧ロッドPR1~PR3等が障害となって、線材W1~W3の切断位置へのカッター18の進入経路が限られ、このため複雑な駆動機構が必要となったり、切断動作に時間がかかったりしてしまう場合もある。
この実施形態では、この点に対応するため、上記第3工程の後、線材W1~W3の、凹部30により保持されている部分と、ノズルN1~N3との間の箇所に、押圧ロッドPR1~PR3をそれぞれ引っ掛けて線材W1~W3をワーク8の径方向外側に向けて引き出す第6工程を実行する。このようにすれば、線材W1~W3の切断位置を、他の部材と干渉しにくい位置へ移動させられるので、切断位置へのカッター18のアクセスが容易となり、比較的単純な駆動機構を用いて迅速な切断が可能となる。
【0069】
より具体的には、押圧ロッドPR1を代表として説明すると、保持チャック14Cの凹部30が線材W1を保持した状態で、先端部46Aaの、
図12Aで説明した線材W1の押圧時に線材W1に当接していた第1面46Aa-1(押圧面)と反対側の第2面46Aa-2(引き出し面)に、線材W1の保持箇所とノズルN1との間の箇所を引っ掛けて、ワーク8の径方向外側に向けて引き出す。
【0070】
線材W1が凹部30に保持されると、押圧ロッドPR1による線材W1の押圧は必要なくなるので、その後、押圧を解除して上記の引き出し動作に移る。
例えば、押圧ロッドPR1を一旦退動させた状態で、
図15Bに示すように、押圧ロッドPR1が線材W1に干渉せずに通過できる角度(ここでは先端部46Aaが紙面に対して垂直方向を向くように90°)回転し、その状態で先端部46Aaが線材W1よりもワーク8の径方向内側に来るように押圧ロッドPR1を径方向内側(矢印I方向)へ移動させる。その後押圧ロッドPR1を
図15Cに示すように元の向きに戻し、その状態で押圧ロッドPR1を径方向外側(矢印J方向)へ移動させると、第2面46Aa-2で線材W1をワーク8の径方向外側に向けて引き出すことができる。
【0071】
押圧ロッドPR2、PR3も同様な動作を行い、押圧ロッドPR1~PR3の進退及び回転は、制御部100によるロッド駆動源44A~44Cの駆動制御によってなされる。押圧ロッドPR1~PR3を回転させることに代えて、
図15Aの状態から図で右側へ平行移動させることで、線材W1を避けて先端部46Aaを径方向内側へ移動させられるようにしてもよい。
【0072】
図16Aは、各押圧ロッドPR1~PR3の先端部46Aaの第2面46Aa-2を線材W1~W3に接触させてやや引き出した状態を示し、
図16Bは、そこからさらに線材W1~W3を引き出した状態を示す。
図16Bのような状態で、線材W1、W2、W3毎に個別配置されたカッター18、あるいは共通の単一のカッター18を移動させて、各線材W1~W3の切断箇所CPを切断するとよい。この状態であれば、カッター18は広範な移動経路で線材W1~W3にアクセスすることができ、設計の自由度が高い。
【0073】
カッター18による線材W1~W3の切断がなされると、
図17に示すように、各保持チャック14C~14Eに終わり線W1a、W2a、W3aが整然と保持された状態となる。この状態で巻線機2内からワーク保持装置16が上昇するように可動アーム20が駆動され、巻線8Eが形成されたワーク8を次の工程を実行する装置又はステージへ搬送することができる(第7工程)。
【0074】
当該次の工程や、さらにそれに続く工程を適宜に実施することで、モータ等の回転電機を構成する巻線を製造することができる。以上説明してきた終わり線の保持や次工程への搬送に加え、巻線の完成までの各工程を含む方法が、この発明の巻線の製造方法の実施形態である。また、当該次の工程や、さらにそれに続く工程を実行する装置や、巻線機2が担当する工程より前の工程を担当する装置も含め、一の巻線機又は巻線処理システムとして構成することもできる。
【0075】
上記の通り、本実施形態では、ワーク8とノズルN1~N3との間の線材W1~W3を切断する前、すなわち線材W1~W3が整然と位置決めされて張っている状態で終わり線W1a~W3aとなる部分をワーク保持装置16で保持し、その後に線材W1~W3を切断するようにした。
【0076】
このため、線材W1~W3の切断後に終わり線W1a~W3aをどこかに固定して位置決めする場合に比べ、終わり線W1a~W3aの位置決めを容易に行うことができる。しかも、終わり線W1a~W3aの保持のための機構を、ワーク8を保持して搬送するためのチャック機構に付加しているので、終わり線W1a~W3aの保持のための機構の複雑化や部品点数の増加を抑えることができる。
【0077】
巻線に用いるワーク保持台10やサーボモータ12を用いて、終わり線W1a~W3aの保持動作中のワーク8の回転を行うことでも、機構の複雑化や部品点数の増加を抑えることができる。
また、次工程への搬送に必要なワーク8の保持の機構を用いて終わり線W1a~W3aの保持を行うので、終わり線W1a~W3aの保持動作のために追加的に要する時間も抑えることができる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述した実施形態ではワーク8として3相モータのステータを用いる例について説明したが、ワーク8がロータであってもよい。
【0079】
図18A乃至
図18Cに、ワーク8がロータである場合の、保持チャックがワーク8を保持しつつその保持部27が線材を保持する動作を、保持チャック14Dが線材W2を保持する個所を代表して示している。これらの図は、保持チャック14Dとワーク8との位置関係を見やすく示すため、保持チャック14Dの、ワーク8の周方向で見た中心位置を通り、かつ複数のチャック14の中心軸を含む面における断面を、周辺の部材と共に模式的に表したものである。ワーク8については、当該断面における端面のみを記載している。これらの図において、上述した実施形態と共通の又は対応する構成には、共通の符号を用いている。
【0080】
この例で用いているワーク8は、中空円筒状の積層鉄心8bの外周側に放射状に複数の突極8aを備えている。各突極8aに巻き回された線材W1~W3は、それぞれU相、V相、W相のコイル8cを形成する(順不同)。
ワーク8がロータである場合でも、線材W1~W3の巻き回しは、ステータの場合と同様に行うことができる。そして、
図18A及び
図18Bに示すように、複数のチャック14を積層鉄心8bの中空部を貫通するように挿入し、各チャックのチャック本体25,26をワーク8の径方向に放射状に移動させて、ワーク9の内周面8fに当接させることで、ステータの場合と同様に保持することができる。
図18Bでは、左側のチャック本体25は積層鉄心8bの内周面8fに当接していないが、図示した切断面と異なる位置では当接している。
【0081】
図18Aは、
図4A及び
図4Bと状態と対応し、
図18Bは、
図10の状態と対応する。すなわち、これらの間には、上述の実施形態の場合と同様な、ワーク8の回転動作も含まれ得る。
図18Cは、
図13Aの状態と対応し、線材W2を凹部30に収容した後で第1押圧部材32の下側凸部32bと凹部30の内面30aとの間に挟んで保持した状態である。ここに示す例においても、上述した実施形態の場合と同様な手順により、
図18Cのように保持チャック14Dの保持部27により線材W2を保持することができる。この後も、上述した実施形態の場合と同様な手順により、各保持部に保持された各線材切断し、ワーク8を次の工程に搬送することができる。押圧ロッドPR1~PR3を用いた線材W1~W3の押圧による位置合わせが必須でないことも、上述の実施形態の場合と同様である。
【0082】
また、以上の他、上記実施形態では3本の終わり線W1a、W2a、W3aを処理する構成を例示したが、2本以下または4本以上の終わり線の処理においても同様に実施することができる。
さらに、上述した本発明の実施形態及び変形例の構成は、一部のみ取り出して実施することもできるし、以上の説明の中で述べた変形は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて適用可能である。本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0083】
2:巻線機、6:ノズルユニット、8a:突極(コア)、8:ワーク、14:チャック、14C,14D,14E:保持チャック、16:ワーク保持装置、18:カッター、20:可動アーム、27:保持部、30:凹部、30a:内面、32:第1押圧部材、35:バネ(付勢部材)、36:第1駆動部、46Aa:先端部、46Aa-1:第1面、46Aa-2:第2面、N1~N3:ノズル、PR1~PR3:押圧ロッド(第2押圧部材)、W1~W3:線材、W1a~W3a:終わり線