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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104614
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240729BHJP
   B32B 37/10 20060101ALI20240729BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240729BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B32B15/08 J
B32B37/10
H05K1/03 610H
H05K1/03 610R
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008930
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴井 一彦
(72)【発明者】
【氏名】宮本 亮
【テーマコード(参考)】
4F100
5E316
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AB17C
4F100AB33C
4F100AK01B
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AK12B
4F100AK23B
4F100AK25B
4F100AK28B
4F100AK29B
4F100AK33B
4F100AK41B
4F100AK45B
4F100AK49B
4F100AK51B
4F100AK53B
4F100AK54B
4F100AL01B
4F100AL05B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100CA23B
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100EJ91
4F100GB41
4F100JA05B
4F100JA06B
4F100JA07B
4F100JB16B
4F100YY00B
5E316AA32
5E316AA38
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC32
5E316CC34
5E316CC35
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC39
5E316CC54
5E316CC55
5E316DD12
5E316DD24
5E316DD32
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5E316DD48
5E316EE13
5E316FF03
5E316GG08
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG18
5E316GG22
5E316GG23
5E316GG28
5E316HH11
5E316HH40
5E316JJ00
(57)【要約】
【課題】樹脂シートの裁断に伴う樹脂欠けの発生を抑制でき、真空ホットプレスを含むプロセスを経たとしても、絶縁層の厚みの変化を抑制し、良好な金属箔密着性およびガラス転移温度を達成できる配線板の製造方法の提供。
【解決手段】(1)支持体と当該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを有する樹脂シートを、基板に対して、樹脂シートの樹脂組成物層が基板と接合するように加熱して積層する工程、(2)支持体を樹脂組成物層から剥離する工程、及び(3)金属箔を樹脂組成物層に真空ホットプレスにより加熱して圧着する工程を含む配線板の製造方法であって、上記工程(3)において、加熱圧着前の樹脂組成物層の最低溶融粘度が、60℃から200℃までの温度範囲で測定した場合、2,000poise~20,000poiseである、配線板の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)支持体と当該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを有する樹脂シートを、基板に対して、樹脂シートの樹脂組成物層が基板と接合するように加熱して積層する工程、
(2)支持体を樹脂組成物層から剥離する工程、及び
(3)金属箔を樹脂組成物層に真空ホットプレスにより加熱して圧着する工程
を含む配線板の製造方法であって、
上記工程(3)において、加熱圧着前の樹脂組成物層の最低溶融粘度が、60℃から200℃までの温度範囲で測定した場合、2,000~20,000poiseである、配線板の製造方法。
【請求項2】
上記工程(1)の後且つ上記工程(2)の前に実施する工程、或いは上記工程(2)の後且つ上記工程(3)の前に実施する工程として、(A)樹脂組成物層を乾燥させる工程をさらに含む、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項3】
上記工程(1)における積層前の樹脂組成物層の最低溶融粘度が、上記工程(3)における加熱圧着前の樹脂組成物の最低溶融粘度より低い値である、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項4】
上記工程(1)における積層時の加熱温度が、80~140℃である、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項5】
上記工程(3)における加熱圧着時の加熱温度が、170~230℃である、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項6】
上記工程(3)における加熱圧着時の加圧条件が、0.5~2.0MPaである、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項7】
上記工程(1)における積層前の樹脂組成物層の厚みが、40μm以下である、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項8】
上記工程(3)における加熱圧着後の樹脂組成物層のガラス転移温度が、140℃以上である、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項9】
上記工程(3)における加熱圧着後の樹脂組成物層の厚みが、10μm超である、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項10】
上記工程(1)における積層前の樹脂組成物層に対する上記工程(3)における加熱圧着後の樹脂組成物層の厚み減少率が、40%以下である、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項11】
上記工程(3)における加熱圧着前の樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、樹脂組成物層中の全成分を100質量%とした場合、0.3~2.5質量%である、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項12】
支持体が、プラスチックフィルムである、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項13】
(4)サブトラクティブ法により金属箔から回路パターンを形成する工程
を含む、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項14】
(4’)モディファイイドセミアディティブ法により金属箔から回路パターンを形成する工程
を含む、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項15】
樹脂組成物層が、熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項16】
熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、及び熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂を含む、請求項15に記載の配線板の製造方法。
【請求項17】
樹脂組成物層が、無機充填材を含む、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項18】
樹脂組成物層中の無機充填材の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、40~75質量%である、請求項17に記載の配線板の製造方法。
【請求項19】
樹脂組成物層が、熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の配線板の製造方法。
【請求項20】
熱可塑性樹脂が、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びコポリマー類から選ばれる熱可塑性樹脂を含む、請求項19に記載の配線板の製造方法。
【請求項21】
コポリマー類が、スチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、アクリレート、及びメタクリレートから選ばれる2種以上のモノマーを重合して得られる共重合体又はその水素添加物である、請求項20に記載の配線板の製造方法。
【請求項22】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量が、5,000~100,000である、請求項19に記載の配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートを用いた配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造技術として、絶縁層と導体層(回路層)を交互に積み重ねるビルドアップ方式による製造方法が知られている。ビルドアップ方式による製造方法において、絶縁層は、一般に、樹脂組成物層を含む接着シート等を用いて樹脂組成物層を内層基板に積層し、樹脂組成物層を硬化させることにより形成され、絶縁層の形成後、絶縁層上に回路が形成される。
【0003】
金属箔上に樹脂組成物層を形成した接着シートを使用する場合、金属箔を利用して、サブトラクティブ法やモディファイイドセミアディティブ法に従って回路を形成することが可能である。例えば、特許文献1には、銅箔と、銅箔上に形成された特定の樹脂組成物からなる樹脂組成物層とを含む接着シートが開示されている。
【0004】
サブトラクティブ法やモディファイイドセミアディティブ法を用いる場合、簡便に配線板の製造を行うことができる反面、従来、金属箔付き樹脂シートを使用せねばならず、また、真空ホットプレスを含むプロセスに対応させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-359444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、金属箔付き樹脂シートをロール状に巻き取ったロール状の金属箔付き樹脂シートを、回路基板上に接着させ、裁断し、裁断した金属箔付き樹脂シートを真空ホットプレス処理する方法が考えられる。しかし、金属箔付き樹脂シートを仮付け機で回路基板上に仮付けし、仮付けした金属箔付き樹脂シートを裁断する際に、金属箔と樹脂シートの硬度の差等に起因して、切断面に樹脂欠けが発生しやすい傾向となることが分かった。また、上記樹脂欠けの問題の抑制等のため、樹脂組成物層の最低溶融粘度を低く設定した場合、真空ホットプレスによる加熱圧着後に樹脂組成物層(絶縁層)の厚みが低下する傾向となる。厚みの変動が大きい場合には絶縁層厚の均一性が低下するため、厚みの低下を抑制することが課題となる。また、最低溶融粘度を低い場合には、絶縁層のガラス転移温度が低下するという課題も生じる。一方、最低溶融粘度が高すぎると、上記樹脂欠けの問題の他に、金属箔の樹脂組成物層への密着性が低下するといった課題が生じる。
【0007】
本発明の課題は、金属箔を利用し、サブトラクティブ法やモディファイイドセミアディティブ法に従って回路の形成する配線板の製造方法において、上記の樹脂欠け、真空ホットプレス後における樹脂組成物層(絶縁層)の厚みの変化、金属箔密着性の低下およびガラス転移温度の低下を抑制し得る、製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、支持体と樹脂組成物層を有する樹脂シートを基板に対して積層し、支持体を剥離して、金属箔を樹脂組成物層に加熱圧着することで、樹脂シートの裁断に伴う樹脂欠けの課題を解決できることを見出し、さらに加熱圧着前の樹脂組成物層の最低溶融粘度を2,000poise~20,000poiseとすることで、絶縁層の厚みの変化を抑制し、良好な金属箔密着性およびガラス転移温度を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (1)支持体と当該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを有する樹脂シートを、基板に対して、樹脂シートの樹脂組成物層が基板と接合するように加熱して積層する工程、
(2)支持体を樹脂組成物層から剥離する工程、及び
(3)金属箔を樹脂組成物層に真空ホットプレスにより加熱して圧着する工程
を含む配線板の製造方法であって、
上記工程(3)において、加熱圧着前の樹脂組成物層の最低溶融粘度が、60℃から200℃までの温度範囲で測定した場合、2,000~20,000poiseである、配線板の製造方法。
[2] 上記工程(1)の後且つ上記工程(2)の前に実施する工程、或いは上記工程(2)の後且つ上記工程(3)の前に実施する工程として、(A)樹脂組成物層を乾燥させる工程をさらに含む、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[3] 上記工程(1)における積層前の樹脂組成物層の最低溶融粘度が、上記工程(3)における加熱圧着前の樹脂組成物の最低溶融粘度より低い値である、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[4] 上記工程(1)における積層時の加熱温度が、80~140℃である、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[5] 上記工程(3)における加熱圧着時の加熱温度が、170~230℃である、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[6] 上記工程(3)における加熱圧着時の加圧条件が、0.5~2.0MPaである、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[7] 上記工程(1)における積層前の樹脂組成物層の厚みが、40μm以下である、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[8] 上記工程(3)における加熱圧着後の樹脂組成物層のガラス転移温度が、140℃以上である、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[9] 上記工程(3)における加熱圧着後の樹脂組成物層の厚みが、10μm超である、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[10] 上記工程(1)における積層前の樹脂組成物層に対する上記工程(3)における加熱圧着後の樹脂組成物層の厚み減少率が、40%以下である、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[11] 上記工程(3)における加熱圧着前の樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、樹脂組成物層中の全成分を100質量%とした場合、0.3~2.5質量%である、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[12] 支持体が、プラスチックフィルムである、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[13] (4)サブトラクティブ法により金属箔から回路パターンを形成する工程
を含む、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[14] (4’)モディファイイドセミアディティブ法により金属箔から回路パターンを形成する工程
を含む、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[15] 樹脂組成物層が、熱硬化性樹脂を含む、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[16] 熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、及び熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂を含む、上記[15]に記載の配線板の製造方法。
[17] 樹脂組成物層が、無機充填材を含む、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[18] 樹脂組成物層中の無機充填材の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、40~75質量%である、上記[17]に記載の配線板の製造方法。
[19] 樹脂組成物層が、熱可塑性樹脂を含む、上記[1]に記載の配線板の製造方法。
[20] 熱可塑性樹脂が、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びコポリマー類から選ばれる熱可塑性樹脂を含む、上記[19]に記載の配線板の製造方法。
[21] コポリマー類が、スチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、アクリレート、及びメタクリレートから選ばれる2種以上のモノマーを重合して得られる共重合体又はその水素添加物である、上記[20]に記載の配線板の製造方法。
[22] 熱可塑性樹脂の重量平均分子量が、5,000~100,000である、上記[19]に記載の配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配線板の製造方法によれば、樹脂シートの裁断に伴う樹脂欠けの発生を抑制でき、真空ホットプレスを含むプロセスを経たとしても、絶縁層の厚みの変化を抑制し、良好な金属箔密着性およびガラス転移温度を達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0012】
<配線板の製造方法>
本発明は、(1)支持体と当該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを有する樹脂シートを、基板に対して、樹脂シートの樹脂組成物層が基板と接合するように加熱して積層する工程、(2)支持体を樹脂組成物層から剥離する工程、及び(3)金属箔を樹脂組成物層に真空ホットプレスにより加熱して圧着する工程を含む配線板の製造方法であって、工程(3)において、加熱圧着前の樹脂組成物層の最低溶融粘度が、60℃から200℃までの温度範囲で測定した場合、2,000~20,000poiseである、配線板の製造方法を提供する。
【0013】
工程(1)は、支持体と当該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを有する樹脂シートを、基板に対して、樹脂シートの樹脂組成物層が基板と接合するように加熱して積層する工程である。
【0014】
樹脂シートにおける支持体は、例えば、プラスチックフィルムであり得る。
【0015】
プラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0016】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0017】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0018】
工程(1)における積層前の樹脂組成物層の厚みは、例えば、100μm以下であり、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下であり、十分な絶縁性を確保する観点から、好ましくは5μm以上、好ましくは10μm以上、好ましくは13μm以上、好ましくは15μm以上である。
【0019】
工程(1)において、積層前の樹脂組成物層の最低溶融粘度は、積層時に適切な膜厚とする観点から、好ましくは300Poise以上、より好ましくは500poise以上、さらに好ましくは700Poise以上、特に好ましくは1000poise以上であり、内層回路を十分に埋め込む観点から、好ましくは10000poise以下、よりこのましくは8000poise以下、さらに好ましくは7000poise以下である。特に、工程(1)における積層前の樹脂組成物層の最低溶融粘度は、工程(1)の積層時の内層回路の埋め込み性と下記で説明する工程(3)における適切な最低溶融粘度を両立する観点から、2000poise未満であるのがなお一層好ましく、300poise以上2000poise未満であるのが特に好ましい。ここで、最低溶融粘度とは、60℃から200℃までの温度範囲で動的粘弾性率を測定した場合の最低溶融粘度を意味する。
【0020】
工程(1)で使用する積層前の樹脂シートの樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量は、樹脂組成物層中の全成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上であり、内層回路の埋め込み性の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.2質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上であり、樹脂シートのタック性に起因するボイド発生の抑制の観点から、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.8質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下である。
【0021】
工程(1)で用いる基板は、配線板の基板となる部材であり、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された基板は「内層回路基板」ということがある。また配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も基板に含まれる。配線板は部品を内蔵した部品内蔵回路板であってもよい。
【0022】
工程(1)における積層は、例えば、樹脂シートの支持体側から樹脂シートを基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0023】
工程(1)における積層は、真空ラミネート法により実施してもよい。真空ラミネート法による積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。また、工程(1)における積層は、プレス装置を用いて実施してもよい。プレス装置は、市販のものを用いることができる。
【0024】
工程(1)における積層時の加熱温度は、十分な樹脂フロー性を得る観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上であり、積層中の樹脂の増粘を抑える観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは130℃以下である。工程(1)における積層時の加圧条件は、十分な樹脂フロー性を得る観点から、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上であり、積層時の膜厚均一性を得る観点から、好ましくは30MPa以下、より好ましくは25MPa以下である。上記範囲の加熱温度及び加圧条件を維持する積層時の加熱加圧時間は、十分な樹脂フロー性を得る観点から、好ましくは10秒間以上、より好ましくは20秒間以上、特に好ましくは30秒間以上であり積層中の樹脂の増粘を抑える観点から、好ましくは40分間以下、より好ましくは35分間以下、特に好ましくは30分間以下である。
【0025】
工程(1)を、真空ラミネート法により実施する場合、積層のための加圧前、樹脂シートと基板を重ね合わせた後の段階にて、真空吸引を実施することが好ましい。工程(1)における積層の方法は、当該好適な実施形態において、樹脂シートと基板を重ね合わせ、真空吸引温度まで昇温し、真空吸引を実施した後、樹脂組成物層及び支持体を常温に冷却することなく、真空下にて、加圧することにより、真空吸引及び加圧を連続的に実施される。加圧前の真空吸引温度は、積層時の加熱温度と同様の温度或いはそれに近い温度で実施することができ、積層時の加熱温度の±10℃であることが好ましく、±5℃であることがより好ましい。上記真空吸引温度の範囲を維持する加圧前の真空吸引時間は、好ましくは0.5分間以上、より好ましくは1分間以上、特に好ましくは2分間以上であり、好ましくは40分間以下、より好ましくは35分間以下、特に好ましくは30分間以下である。
【0026】
工程(1)における積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0027】
工程(1)における積層後の樹脂組成物層の厚みは、例えば、100μm以下であり、配線板の薄型化の観点から、好ましくは70μm以下、より好ましくは60μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下であり、十分な絶縁性を確保する観点から、好ましくは5μm以上、好ましくは10μm以上、好ましくは13μm以上、好ましくは15μm以上である。
【0028】
工程(2)は、支持体を樹脂組成物層から剥離する工程である。工程(2)は、工程(1)の後に実施する。
【0029】
工程(2)における支持体の剥離は、手動で剥離してもよく、自動剥離装置により機械的に剥離してもよい。工程(2)における支持体の剥離方法としては、例えば、支持体を固定した状態で樹脂組成物層及び基板を搬送して、支持体を剥がす方法、樹脂組成物層及び基板を固定した状態で支持体を引っ張って、支持体を剥がす方法、支持体を引っ張りながら樹脂組成物層及び基板を搬送して、支持体を剥がす方法等が挙げられるが、樹脂組成物層に損傷を与えずに、樹脂組成物層から支持体を剥がすことができる限りにおいて、これらに限定されない。
【0030】
工程(2)における支持体の剥離を行う温度条件は、特に制限されないが、常温(好ましくは10℃~40℃)での実施が好ましい。支持体の剥離は、好ましくは、工程(1)の後で基板、樹脂組成物層及び支持体を常温に冷却してから、実施される。
【0031】
工程(2)における支持体の剥離時の樹脂組成物層の表面に対して支持体の剥離方向がなす角度は、特に限定されないが、好ましくは70°以下、より好ましくは50°以下、さらに好ましくは30°以下である。工程(2)における支持体の剥離速度は、好ましくは1m/分~20m/分、より好ましくは3m/分~10m/分である。
【0032】
工程(3)は、金属箔を樹脂組成物層に真空ホットプレスにより加熱して圧着する工程である。工程(3)は、工程(2)の後に実施する。
【0033】
工程(3)において、加熱圧着前(特に金属箔を樹脂組成物層に重ね合わせる直前)の樹脂組成物層の最低溶融粘度は、2,000~20,000poiseである。ここで、最低溶融粘度とは、60℃から200℃までの温度範囲で動的粘弾性率を測定した場合の最低溶融粘度を意味する。加熱圧着前の樹脂組成物層の最低溶融粘度は、好ましくは3,000poise以上、より好ましくは4,000poise以上、さらに好ましくは4,500poise以上、特に好ましくは5,000poise以上であり、上限は、好ましくは17,000poise以下、より好ましくは15,000poise以下、さらに好ましくは13,000poise以下、特に好ましくは12,000poise以下、11,000poise以下、10,000poise以下、又は9,000poise以下である。加熱圧着前の樹脂組成物層の最低溶融粘度を調整する場合は、下記で説明する任意の工程(A)(乾燥工程)の乾燥温度、乾燥時間、乾燥方法、工程(1)の真空吸引時間、真空吸引温度、加熱温度、加圧条件、加熱加圧時間、又は樹脂組成物層に含有させる成分の選択等により行うことができる。好ましくは工程(A)(乾燥工程)よって行うことができる。
【0034】
工程(1)の積層時の内層回路の埋め込み性と工程(3)における適切な最低溶融粘度を両立する観点から、工程(1)における積層前の樹脂組成物層の最低溶融粘度(V1)(poise)は、工程(3)における加熱圧着前の樹脂組成物層の最低溶融粘度(V3)(poise)より低い値(V1<V3)であることが好ましく、V1の値(poise)とV3の値(poise)の関係は、V1+100<V3であるのがより好ましく、V1+500<V3であるのがさらに好ましく、V1+1000<V3であるのが特に好ましい。
【0035】
工程(3)において、加熱圧着前(特に金属箔を樹脂組成物層に重ね合わせる直前)の樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量は、樹脂組成物層中の全成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上であり、樹脂組成物層の硬化を良好に行う観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.4質量%以上であり、樹脂組成物層のボイドの発生を抑制する観点から、好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、好ましくは1.7質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。
【0036】
工程(3)において圧着する金属箔に使用される金属は、特に限定されるものではないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロム、マンガン、モリブデン、及びこれらの金属から選択される少なくとも1種を合計で90%以上含む合金が挙げられる。特に、熱膨張率、導電性及び経済性の点から、銅が好ましい。
【0037】
工程(3)において圧着する金属箔の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5μm以下、より好ましくは1~5μm、さらに好ましくは1.5~4μmである。
【0038】
一実施形態において、工程(3)において圧着する金属箔として、キャリア付き金属箔を使用してもよい。キャリア付き金属箔は、キャリア金属箔と、必要に応じて別のフィルムを介して、剥離可能な状態でキャリア金属箔上に積層された、キャリア金属箔よりも薄い金属箔(薄金属箔)とを備える層状金属材料である。キャリア付き金属箔を金属箔として使用する場合は、キャリア付き金属箔を薄金属箔側が樹脂組成物層に接するように重ね合わせて加熱圧着し得る。
【0039】
キャリア付き金属箔においてキャリア金属箔に使用される金属は、特に限定されるものではないが、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロム、マンガン、モリブデン、及びこれらの金属から選択される少なくとも1種を合計で90%以上含む合金が挙げられる。特に、熱膨張率、導電性及び経済性の点から、銅が好ましい。キャリア付き金属箔において薄金属箔に使用される金属としては、キャリア金属箔と同一のものが挙げられる。キャリア付き金属箔においてキャリア金属箔に使用される金属と薄金属箔に使用される金属とは、同一の金属であってもよい。
【0040】
キャリア付き金属箔におけるキャリア金属箔の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは5~60μm、より好ましくは10~30μmである。キャリア付き金属箔における薄金属箔の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは5μm以下、より好ましくは1~5μm、さらに好ましくは1.5~4μmである。
【0041】
キャリア付き金属箔の市販品としては、例えば、三井金属鉱業社製の「MT18Ex」(キャリア銅箔厚み18μm、薄銅箔厚み2μm)、「MT18FL」(キャリア銅箔厚み18μm、薄銅箔厚み3μm)等が挙げられる。
【0042】
工程(3)における加熱圧着時の加熱温度は、樹脂を十分に熱硬化させる観点から、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上、特に好ましくは190℃以上であり、金属箔の剥離性の観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下、特に好ましくは220℃以下である。工程(3)における加熱圧着時の加圧条件は、十分な金属箔との密着を得る観点から、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上、さらに好ましくは0.4MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上であり、加熱圧着後樹脂膜厚均一性の観点から、好ましくは30MPa以下、より好ましくは20MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下、なお一層より好ましくは5.0MPa以下、特に好ましくは2.0MPa以下である。上記範囲の加熱温度及び加圧条件を維持する加熱圧着時の加熱加圧時間は、樹脂を十分に熱硬化させる観点から、好ましくは30分間以上、より好ましくは40分間以上、特に好ましくは50分間以上であり、生産性の観点から、好ましくは200分間以下、より好ましくは180分間以下、特に好ましくは150分間以下である。
【0043】
工程(3)における加熱圧着後の樹脂組成物層のガラス転移温度は、耐熱信頼性の観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上、さらに好ましくは140℃以上、さらにより好ましくは145℃以上、特に好ましくは150℃以上である。
【0044】
工程(3)における加熱圧着後の樹脂組成物層の厚みは、十分な絶縁性を確保する観点から、好ましくは10μm超、より好ましくは11μm超、さらに好ましくは12μm超、さらにより好ましくは13μm超、なお一層より好ましくは14μm超、特に好ましくは15μm超である。
【0045】
工程(1)における積層前の樹脂組成物層に対する工程(3)における加熱圧着後の樹脂組成物層の厚み減少率は、好ましくは58%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下、さらにより好ましくは45%以下、特に好ましくは40%以下である。厚み減少率は、工程(1)における積層前の樹脂組成物層の厚みに対して、工程(3)における加熱圧着後の樹脂組成物層の厚みの減少した割合(%)として算出できる。
【0046】
本発明の配線板の製造方法は、好適な実施形態において、工程(3)の後に実施する工程として、(4)サブトラクティブ法により金属箔から回路パターンを形成する工程を含む。
【0047】
工程(4)により、工程(3)で樹脂組成物層に圧着した金属箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去し、回路パターンを形成する。
【0048】
工程(4)は、好適な実施形態において、(4a)金属箔上にエッチングレジストを設ける工程、(4b)エッチングレジストが設けられていない金属箔部分をエッチング処理して不要部分を除去し、金属箔から回路パターンを形成する工程、及び(4c)エッチングレジストを除去する工程を含む。工程(4a)では、金属箔上にレジスト樹脂層を配置し、さらにマスクフィルムをレジスト樹脂層上に配置した後、マスクフィルムを通して露光し現像する方法によりエッチングレジストを設けてもよい。
【0049】
本発明の配線板の製造方法は、別の好適な実施形態において、工程(3)の後に実施する工程として、(4’)モディファイイドセミアディティブ法により金属箔から回路パターンを形成する工程を含む。
【0050】
工程(4’)により、工程(3)で樹脂組成物層に圧着した金属箔上の一部(回路形成部)に、電解めっきにて金属を厚付けし、エッチングなどによって、金属箔の不要部分を除去して、回路パターンを形成する。
【0051】
工程(4’)は、好適な実施形態において、(4a’)金属箔上の一部にめっきレジストを設ける工程、(4b’)めっきレジストが設けられていない金属箔部分に電解めっきにより金属を厚付けする工程、(4c’)めっきレジストを除去する工程、及び(4d’)エッチング処理により金属の厚付けがなされていない金属箔の部分を除去して、回路パターンを形成する工程を含む。工程(4a’)では、金属箔上にレジスト樹脂層を配置し、さらにマスクフィルムをレジスト樹脂層上に配置した後、マスクフィルムを通して露光し現像する方法によりめっきレジストを設けてもよい。
【0052】
本発明の配線板の製造方法は、好適な実施形態において、工程(1)の後且つ工程(2)の前に実施する工程、或いは工程(2)の後且つ工程(3)の前に実施する任意の工程として、(A)樹脂組成物層を乾燥させる工程をさらに含む場合がある。乾燥は、加熱乾燥、熱風吹きつけ、真空乾燥等の公知の方法により実施してよい。
【0053】
工程(A)を、工程(1)の後且つ工程(2)の前に実施する場合は、工程(A)では、支持体を除去せず、支持体を介して樹脂組成物層の乾燥を実施する。工程(A)は、樹脂組成物層への異物付着を抑制する観点から、工程(1)の後かつ工程(2)の前に実施するのが好ましい。工程(1)の後且つ工程(2)の前に実施する場合、工程(A)は、工程(1)から、樹脂組成物層及び支持体を常温に冷却することなく、連続的に行ってもよいし、工程(1)後、一旦、樹脂組成物層及び支持体を常温に冷却し、再加熱することにより行ってもよい。工程(2)の後且つ工程(3)の前に実施する場合、工程(A)は、工程(2)から、樹脂組成物層を冷却することなく、連続的に行ってもよいし、工程(2)後、一旦、樹脂組成物層を常温に冷却し、再加熱することにより行ってもよい。
【0054】
工程(A)における乾燥温度は、工程(1)における積層時の加熱温度と同様の温度或いはそれに近い温度で実施することができ、工程(1)における積層時の加熱温度の±30℃であることが好ましく、±20℃であることがより好ましい。
【0055】
工程(A)における乾燥温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは130℃以下である。上記範囲の乾燥温度を維持する乾燥時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上、特に好ましくは3分間以上であり、好ましくは10分間以下、より好ましくは8分間以下、特に好ましくは6分間以下である。
【0056】
工程(1)における内層回路の回路埋め込み性と、工程(3)におけるボイド抑制、絶縁層の厚みの変化の抑制、金属箔密着性および良好なガラス転移温度とを同時に達成する観点から、工程(A)を実施することが好ましい。工程(A)を実施することにより、工程(1)における樹脂組成物層の最低溶融粘度を、回路埋め込み性を考慮して相対的に高く設定することができ、工程(A)において残留溶剤量を低下させて、工程(3)における加熱圧着前の樹脂組成物層の最低溶融粘度を容易に適切な範囲に調節することが可能である。
【0057】
本発明の配線板の製造方法は、好適な実施形態において、工程(3)の後、工程(4)の前に実施する任意の工程として、(B)樹脂組成物層にホール(例えばビアホール等)を形成する工程を含む。
【0058】
工程(B)は、樹脂組成物層の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用する公知の手順で実施してよい。ホール(例えばビアホール等)の寸法や形状は、配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0059】
本発明の配線板の製造方法は、好適な実施形態において、工程(B)の後、工程(4)の前に実施する任意の工程として、(C)樹脂組成物層に形成されたホールにデスミア処理を行う工程を含む。
【0060】
工程(C)は、デスミア処理の手順、条件は特に限定されず、配線板の樹脂組成物層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。デスミア処理は、例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理を行う方法により実施される。
【0061】
膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0062】
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0063】
また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0064】
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0065】
本発明の配線板の製造方法によって製造された配線板は、半導体装置に使用することができる。半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0066】
<樹脂組成物層>
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層を形成する樹脂組成物に含まれる成分について説明する。
【0067】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、好適な実施形態において、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂組成物層は、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、マレイミド樹脂、及び熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、及び熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂を含むことがより好ましい。熱硬化性樹脂には、付加反応、縮合反応などの架橋反応により、熱硬化性樹脂を硬化させる機能を有するエポキシ樹脂硬化剤、ラジカル重合架橋剤等も包含される。熱硬化性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、一実施形態において、熱硬化樹脂としてエポキシ樹脂を含有することが好ましい。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有するエポキシ当量5,000g/eq.以下の硬化性樹脂である。
【0069】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0070】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0071】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。
【0072】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との両方を含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との両方を含んでいることが特に好ましい。
【0073】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0074】
液状エポキシ樹脂としては、グリシロール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、環状脂肪族グリシジルエーテル、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0075】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス社製の「EX-992L」、三菱ケミカル社製の「YX7400」、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製の「EX-991L」(アルキレンオキシ骨格及びブタジエン骨格含有エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「EG-280」(フルオレン構造含有エポキシ樹脂);ナガセケムテックス社製「EX-201」(環状脂肪族グリシジルエーテル)等が挙げられる。
【0076】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0077】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0078】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」、「HP6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」、「ESN4100V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは10:1~1:50、より好ましくは2:1~1:30、さらに好ましくは1:1~1:20、特に好ましくは1:2~1:15である。
【0080】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~2,000g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~1,000g/eq.、さらにより好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0081】
エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0082】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層中のエポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1~50質量%以下、より好ましくは5~40質量%以下、さらに好ましくは8~35質量%、特に好ましくは10~30質量%である。
【0083】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、一実施形態において、熱硬化樹脂としてエポキシ樹脂を含有する場合、任意成分としてさらにエポキシ樹脂硬化剤を含有していてもよい。エポキシ樹脂硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂硬化剤は、熱硬化樹脂としてエポキシ樹脂が含まれる場合に、エポキシ樹脂と反応して硬化させる機能を有し得る。
【0084】
エポキシ樹脂硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びチオール系硬化剤等が挙げられる。エポキシ樹脂硬化剤は、一実施形態において、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、及びシアネートエステル系硬化剤から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂硬化剤を含むことが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤は、一実施形態において、誘電正接をより低く抑える観点から、活性エステル系硬化剤を含むことが特に好ましい。また、エポキシ樹脂硬化剤は、一実施形態において、硬化性をより向上させる観点から、フェノール系硬化剤を含むことが特に好ましい。
【0085】
活性エステル系硬化剤としては、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル化合物は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル化合物がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0086】
活性エステル系硬化剤としては、具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含むジシクロペンタジエン型活性エステル化合物、ナフタレン構造を含むナフタレン型活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもジシクロペンタジエン型活性エステル化合物、及びナフタレン型活性エステル化合物から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0087】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000L-65TM」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H」、「HPC-8000H-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「HP-B-8151-62T」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-9416-70BK」、「HPC-8150-62T」、「EXB-8」(DIC社製);りん含有活性エステル化合物として、「EXB9401」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱ケミカル社製)、スチリル基及びナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「PC1300-02-65MA」(エア・ウォーター社製)等が挙げられる。
【0088】
フェノール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。また、被着体に対する密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC社製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「LA-1356」、「TD2090」、「KA-1160」等が挙げられる。
【0089】
カルボジイミド系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のカルボジイミド構造を有する硬化剤が挙げられ、例えば、テトラメチレン-ビス(t-ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサンビス(メチレン-t-ブチルカルボジイミド)等の脂肪族ビスカルボジイミド;フェニレン-ビス(キシリルカルボジイミド)等の芳香族ビスカルボジイミド等のビスカルボジイミド;ポリヘキサメチレンカルボジイミド、ポリトリメチルヘキサメチレンカルボジイミド、ポリシクロヘキシレンカルボジイミド、ポリ(メチレンビスシクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(イソホロンカルボジイミド)等の脂肪族ポリカルボジイミド;ポリ(フェニレンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(トリレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(キシリレンカルボジイミド)、ポリ(テトラメチルキシリレンカルボジイミド)、ポリ(メチレンジフェニレンカルボジイミド)、ポリ[メチレンビス(メチルフェニレン)カルボジイミド]等の芳香族ポリカルボジイミド等のポリカルボジイミドが挙げられる。
【0090】
カルボジイミド系硬化剤の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製の「カルボジライトV-02B」、「カルボジライトV-03」、「カルボジライトV-04K」、「カルボジライトV-07」及び「カルボジライトV-09」;ラインケミー社製の「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0091】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられ、1分子内中に2個以上の酸無水物基を有する硬化剤が好ましい。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA-100」、「MH-700」、「MTA-15」、「DDSA」、「OSA」、三菱ケミカル社製の「YH-306」、「YH-307」、日立化成社製の「HN-2200」、「HN-5500」、クレイバレイ社製「EF-30」、「EF-40」「EF-60」、「EF-80」等が挙げられる。
【0092】
アミン系硬化剤としては、1分子内中に1個以上、好ましくは2個以上のアミノ基を有する硬化剤が挙げられ、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられ、中でも、本発明の所望の効果を奏する観点から、芳香族アミン類が好ましい。アミン系硬化剤は、第1級アミン又は第2級アミンが好ましく、第1級アミンがより好ましい。アミン系硬化剤の具体例としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。アミン系硬化剤は市販品を用いてもよく、例えば、セイカ社製「SEIKACURE-S」、日本化薬社製の「KAYABOND C-200S」、「KAYABOND C-100」、「カヤハードA-A」、「カヤハードA-B」、「カヤハードA-S」、三菱ケミカル社製の「エピキュアW」等が挙げられる。
【0093】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100D」、「ODA-BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」;四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」などが挙げられる。
【0094】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0095】
チオール系硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0096】
エポキシ樹脂硬化剤のエポキシ反応基当量は、好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、より好ましくは100g/eq.~1000g/eq.、さらに好ましくは100g/eq.~500g/eq.、特に好ましくは100g/eq.~300g/eq.である。エポキシ反応基当量は、エポキシ反応基1当量あたりのエポキシ樹脂硬化剤の質量である。
【0097】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層中のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは1~25質量%、さらに好ましくは3~20質量%、特に好ましくは5~15質量%である。
【0098】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、一実施形態において、熱硬化樹脂として熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含有することが好ましい。熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ラジカル反応性基を2個以上有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含むことが好ましい。熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
ラジカル反応性基とは、ラジカル反応性のエチレン性不飽和結合を有する基であり、例としては、特に限定されるものではないが、(1)アクリロイル基、(2)メタクリロイル基、(3)アリル基、(4)メタリル基、(5)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいフェニル基(例えば、ビニルフェニル基(すなわち4-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、2-ビニルフェニル基)、イソプロペニルフェニル基(すなわち4-イソプロペニルフェニル基、3-イソプロペニルフェニル基、2-イソプロペニルフェニル基)など)、(6)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいベンジル基(例えば、ビニルベンジル基(すなわち4-ビニルベンジル基、3-ビニルベンジル基、2-ビニルベンジル基)、イソプロペニルベンジル基(すなわち4-イソプロペニルベンジル基、3-イソプロペニルベンジル基、2-イソプロペニルベンジル基)など)等が挙げられる。
【0100】
アルキル(基)とは、直鎖、分枝鎖及び/又は環状の1価の脂肪族飽和炭化水素基を意味する。アルキル(基)は、特に指定がない限り、炭素数1~14のアルキル(基)が好ましく、炭素数1~6のアルキル(基)がより好ましく、炭素数1~3のアルキル(基)がさらに好ましい。アルキル(基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
【0101】
熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、特に好ましくは、一実施形態において、式(1):
【0102】
【化1】
【0103】
[式中、
11及びR12は、それぞれ独立して、アルキル基を示し;
13、R14、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;
及びRは、それぞれ独立して、(1)アクリロイル基、(2)メタクリロイル基、(3)アリル基、(4)メタリル基、(5)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は(6)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいベンジル基を示し;
は、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、又は-SO-を示し;
は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;
sは、0又は1を示し;
t及びuは、それぞれ独立して、1以上の整数を示す。]
で表される樹脂を含む。t単位及びu単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0104】
11及びR12は、それぞれ独立して、アルキル基を示し、一実施形態において、好ましくは、メチル基である。R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、一実施形態において、好ましくは、水素原子である。R21及びR22は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、一実施形態において、好ましくは、水素原子、又はメチル基であり、より好ましくは、メチル基である。R23及びR24は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、一実施形態において、好ましくは、水素原子、又はメチル基である。
【0105】
及びRは、それぞれ独立して、(1)アクリロイル基、(2)メタクリロイル基、(3)アリル基、(4)メタリル基、(5)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は(6)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいベンジル基を示す。
【0106】
及びRは、一実施形態において、それぞれ独立して、好ましくは、(1)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は(2)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいベンジル基であり;より好ましくは、4-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、2-ビニルフェニル基、4-イソプロペニルフェニル基、3-イソプロペニルフェニル基、2-イソプロペニルフェニル基、4-ビニルベンジル基、3-ビニルベンジル基、2-ビニルベンジル基、4-イソプロペニルベンジル基、3-イソプロペニルベンジル基、又は2-イソプロペニルベンジル基であり;特に好ましくは、4-ビニルベンジル基、3-ビニルベンジル基、又は2-ビニルベンジル基である。
【0107】
は、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、又は-SO-を示し、一実施形態において、好ましくは、単結合、-C(R-、又は-O-である。Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、一実施形態において、好ましくは、水素原子、又はメチル基である。
【0108】
sは、0又は1を示し、一実施形態において、好ましくは1である。t及びuは、それぞれ独立して、1以上の整数を示し、一実施形態において、好ましくは、1~200の整数であり、より好ましくは、1~100の整数である。
【0109】
熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂のラジカル反応性基当量は、好ましくは300g/eq.~2500g/eq.、より好ましくは400g/eq.~2000g/eq.である。ラジカル反応性基当量は、ラジカル反応性基1当量当たりの樹脂(化合物)の質量を表す。
【0110】
熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂の数平均分子量は、好ましくは800~10000、より好ましくは900~5000、さらに好ましくは1000~2500である。樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0111】
熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂の市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の「OPE-2St 1200」、「OPE-2St 2200」(ビニルベンジル変性ポリフェニレンエーテル樹脂);SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」、「SA9000-111」(メタクリル変性ポリフェニレンエーテル樹脂)等が挙げられる。
【0112】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層中の熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1~40質量%以下、より好ましくは1~20質量%以下、さらに好ましくは3~15質量%、特に好ましくは5~10質量%である。
【0113】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、一実施形態において、熱硬化樹脂としてマレイミド樹脂を含有することが好ましい。マレイミド樹脂とは、1分子中に少なくとも1個のマレイミド基(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル基)を含有する硬化性樹脂を意味する。マレイミド樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
マレイミド樹脂は、第一の実施形態において、好ましくは、式(2’):
【0115】
【化2】
【0116】
[式中、
環Bは、置換基を有していてもよいモノシクロアルカン環、又は置換基を有していてもよいモノシクロアルケン環を示し;
i及びjは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し、且つiとjの合計が6以上であり;
*は、結合部位を示す。]
で表される部分構造を有するマレイミド化合物を含む。第一の実施形態におけるマレイミド化合物1分子中におけるマレイミド基の数は、2以上であることが好ましく、2であることが特に好ましい。第一の実施形態におけるマレイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0117】
式(2’)の環Bにおける「置換基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。
【0118】
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
【0119】
アルケニル(基)とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖及び/又は環状の1価の脂肪族不飽和炭化水素基を意味する。アルケニル(基)は、特に指定がない限り、炭素数2~14のアルケニル基が好ましく、炭素数2~6のアルケニル(基)がより好ましく、炭素数2又は3のアルケニル(基)がさらに好ましい。アルケニル(基)としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基)、ブテニル基(1-ブテニル基、クロチル基、メタリル基、イソクロチル基等)、ペンテニル基(1-ペンテニル基等)、ヘキセニル基(1-ヘキセニル基等)、ヘプテニル基(1-ヘプテニル基等)、オクテニル基(1-オクテニル基等)、シクロペンテニル基(2-シクロペンテニル基等)、シクロヘキセニル基(3-シクロヘキセニル基)等が挙げられる。
【0120】
アリール(基)とは、芳香族炭素環の1個の水素原子を除いてなる1価の芳香族炭化水素基を意味する。アリール(基)は、特に指定がない限り、炭素数6~14のアリール(基)が好ましく、炭素数6~10のアリール(基)がさらに好ましい。アリール(基)としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0121】
アラルキル(基)とは、1個又は2個以上(好ましくは1個)のアリール基で置換されたアルキル基を意味する。アラルキル(基)は、特に指定がない限り、炭素数7~15のアラルキル(基)が好ましく、炭素数7~11のアラルキル(基)がさらに好ましい。アラルキル(基)としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロシンナミル基、α-メチルベンジル基、α-クミル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0122】
モノシクロアルカン環とは、単環式の脂肪族飽和炭化水素環を意味する。モノシクロアルカン環は、炭素数4~14のモノシクロアルカン環が好ましく、炭素数4~10のモノシクロアルカン環がより好ましく、炭素数5又は6のモノシクロアルカン環が特に好ましい。モノシクロアルカン環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等が挙げられる。モノシクロアルケン環とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する単環式の脂肪族不飽和炭化水素環を意味する。モノシクロアルケン環は、炭素数4~14のモノシクロアルケン環が好ましく、炭素数4~10のモノシクロアルケン環がより好ましく、炭素数5又は6のモノシクロアルケン環が特に好ましい。モノシクロアルケン環としては、例えば、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキサジエン環等が挙げられる。
【0123】
環Bは、置換基を有していてもよいモノシクロアルカン環、又は置換基を有していてもよいモノシクロアルケン環を示す。環Bは、好ましくは、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基で置換されていてもよいモノシクロアルカン環;又はアルキル基及びアルケニル基から選ばれる基で置換されていてもよいモノシクロアルケン環である。環Bは、より好ましくは、炭素数1~14のアルキル基及び炭素数2~14のアルケニル基から選ばれる基で置換されていてもよいモノシクロアルカン環;又は炭素数1~14のアルキル基及び炭素数2~14のアルケニル基から選ばれる基で置換されていてもよいモノシクロアルケン環である。
【0124】
i及びjは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し、且つiとjの合計が6以上(好ましくは8以上、より好ましくは10以上)である。i及びjは、好ましくは、それぞれ独立して、0~20の整数であり、且つiとjの合計が6以上(好ましくは8以上、より好ましくは10以上)である。i及びjは、より好ましくは、それぞれ独立して、1~20の整数であり、且つiとjの合計が6以上(好ましくは8以上、より好ましくは10以上)である。i及びjは、さらに好ましくは、それぞれ独立して、5~10の整数である。i及びjは、特に好ましくは、8である。
【0125】
マレイミド樹脂は、第一の実施形態において、特に好ましくは、式(2):
【0126】
【化3】
【0127】
[式中、
10は、それぞれ独立して、置換基を示し;
環Cは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;
及びDは、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し;
は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;
cは、それぞれ独立して、0又は1を示し;
dは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し;
eは、それぞれ独立して、0、1又は2を示し;
nは、0又は1以上の整数を示し;
その他の記号は上記と同様である。]
で表されるマレイミド化合物を含む。d単位、e単位及びn単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0128】
式(2)のR10における「置換基」、及び環Cにおける「置換基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。
【0129】
芳香環とは、環上のπ電子系に含まれる電子数が4p+2個(pは自然数)であるヒュッケル則に従う環を意味する。芳香環は、炭素原子のみを環構成原子とする芳香族炭素環、又は環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する芳香族複素環であり得るが、一実施形態において、芳香族炭素環であることが好ましい。芳香環は、一実施形態において、5~14員の芳香環が好ましく、6~14員の芳香環がより好ましく、6~10員の芳香環がさらに好ましい。芳香環の好適な具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環又はナフタレン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
【0130】
環Cは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し、好ましくは、アルキル基から選ばれる基で置換されていてもよいベンゼン環である。
【0131】
及びDは、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、又は-OCO-を示し、好ましくは、単結合、-C(R-、又は-O-である。Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、好ましくは、水素原子、又はメチル基である。
【0132】
cは、それぞれ独立して、0又は1を示し、好ましくは0である。dは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し、好ましくは0、1、2又は3であり、より好ましくは0、1又は2である。eは、それぞれ独立して、0、1又は2を示し、好ましくは0である。nは、0又は1以上の整数を示し、好ましくは、0である。
【0133】
式(2)中に含まれる式(D):
【0134】
【化4】
【0135】
[式中、*は結合部位を示し;その他の記号は上記と同様である。]
で表される部分構造としては、特に限定されるものではないが、例えば、式(D-1)~(D-3):
【0136】
【化5】
【0137】
[式中、*は上記と同様である。]
で表される部分構造が挙げられる。
【0138】
第一の実施形態におけるマレイミド樹脂のマレイミド基当量は、好ましくは200g/eq.~2500g/eq.、より好ましくは250g/eq.~2000g/eq.、さらに好ましくは300g/eq.~1500g/eq.である。マレイミド樹脂のマレイミド基当量は、マレイミド基当量1当量当たりの樹脂の質量を表す。
【0139】
第一の実施形態におけるマレイミド樹脂の重量平均分子量は、好ましくは400~10000、より好ましくは500~7000、特に好ましくは600~5000である。
【0140】
第一の実施形態におけるマレイミド樹脂の市販品としては、例えば、デザイナーモレキュールズ社製の「BMI-689」、「BMI-1500」、「BMI-1700」、「BMI-3000J」、信越化学工業社製「SLK-6895-T90」等が挙げられる。
【0141】
マレイミド樹脂は、第二の実施形態において、好ましくは、式(3):
【0142】
【化6】
【0143】
[式中、
20は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;
環E、環F及び環Gは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、又は-NHCO-を示し;
は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し;
fは、1以上の整数を示し;
gは、それぞれ独立して、0又は1を示し;
hは、それぞれ独立して、0、1、2又は3を示す。]
で表されるマレイミド化合物を含む。f単位及びh単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。第二の実施形態におけるマレイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0144】
式(3)の環E、環F及び環Gにおける「置換基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。
【0145】
20は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、好ましくは、水素原子、又はメチル基であり、より好ましくは、水素原子である。
【0146】
環E、環F及び環Gは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し、好ましくは、置換基を有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくは、アルキル基及びアリール基から選ばれる基で置換されていてもよいベンゼン環であり、特に好ましくは、(無置換の)ベンゼン環である。
【0147】
は、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、又は-NHCO-を示し、好ましくは、単結合である。Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を示し、好ましくは、水素原子、又はメチル基である。
【0148】
fは、1以上の整数を示し、好ましくは、1~10の整数である。gは、それぞれ独立して、0又は1を示し、好ましくは、1である。hは、それぞれ独立して、0、1、2又は3を示し、好ましくは、0、1又は2であり、より好ましくは、0又は1であり、特に好ましくは1である。
【0149】
第二の実施形態におけるマレイミド樹脂のマレイミド基当量は、好ましくは150g/eq.~1000g/eq.、より好ましくは200g/eq.~500g/eq.である。
【0150】
第二の実施形態におけるマレイミド樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~10000、より好ましくは150~5000、特に好ましくは200~3000である。
【0151】
第二の実施形態におけるマレイミド樹脂の市販品としては、例えば、日本化薬社製の「MIR-3000-70MT」、「MIR-5000-60T」等が挙げられる。
【0152】
マレイミド樹脂は、第三の実施形態において、好ましくは、式(4):
【0153】
【化7】
【0154】
[式中、
30は、それぞれ独立して、アルキル基を示し;
環H及び環Iは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;
mは、1以上の整数を示す。]
で表されるマレイミド化合物を含む。m単位は、それぞれ、単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。第三の実施形態におけるマレイミド化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0155】
式(4)の環H及び環Iにおける「置換基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。
【0156】
30は、それぞれ独立して、アルキル基を示し、一実施形態において、好ましくは、メチル基である。環Hは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し、一実施形態において、好ましくは、置換基を有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくは、アルキル基から選ばれる基で置換されていてもよいベンゼン環であり、さらに好ましくは、アルキル基から選ばれる基で置換されたベンゼン環である。
【0157】
環Iは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し、一実施形態において、好ましくは、置換基を有していてもよいベンゼン環であり、より好ましくは、アルキル基から選ばれる基で置換されていてもよいベンゼン環であり、さらに好ましくは、(無置換の)ベンゼン環である。mは、1以上の整数を示し、好ましくは、1~20の整数である。
【0158】
第三の実施形態におけるマレイミド樹脂は、例えば、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載の方法又はそれに準ずる方法を用いて製造することができる。
【0159】
マレイミド樹脂は、第一の実施形態における好適な化合物、第二の実施形態における好適な化合物、又は第三の実施形態における好適な化合物を、いずれか単独で含んでいてもよいが、これらのうち2種以上を任意の比率で組み合わせて含んでいてもよい。
【0160】
マレイミド樹脂のマレイミド基当量は、好ましくは30g/eq.~2500g/eq.、特に好ましくは75g/eq.~2000g/eq.である。
【0161】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層中のマレイミド樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは15~35質量%、特に好ましくは20~30質量%である。
【0162】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、一実施形態において、熱硬化樹脂としてラジカル重合性架橋剤を含んでいてもよい。
【0163】
ラジカル重合性架橋剤は、ラジカル反応性基を2個以上有する低分子量(例えば分子量800未満)の化合物であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、多官能(メタ)アクリロイル基含有化合物、多官能ビニルフェニル基含有化合物、多官能(メタ)アリル基含有化合物等が挙げられる。
【0164】
多官能(メタ)アクリロイル基含有化合物は、2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物である。多官能(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,3-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のエーテル含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリス(3-ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌレート含有(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。多官能(メタ)アクリロイル基含有化合物の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製の「A-DOG」(ジオキサングリコールジアクリレート)、共栄社化学社製の「DCP-A」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「DCP」(トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート)、日本化薬株式会社の「KAYARAD R-684」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、「KAYARAD R-604」(ジオキサングリコールジアクリレート)等が挙げられる。
【0165】
多官能ビニルフェニル基含有化合物は、2個以上のビニルフェニル基を有する化合物である。分子量800未満の多官能ビニルフェニル基含有化合物としては、例えば、4,4’-ジビニルビフェニル、1,2-ビス(4-ビニルフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ビニルフェニル)プロパン、ビス(4-ビニルフェニル)エーテル等が挙げられる。
【0166】
多官能(メタ)アリル基含有化合物は、2個以上のアリル基又はメタリル基を有する化合物である。多官能(メタ)アリル基含有化合物としては、例えば、ジフェン酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジアリル、2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸アリルエステル化合物;1,3,5-トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌル酸アリルエステル化合物;2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン等のエポキシ含有芳香族アリル化合物;ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H‐1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン等のベンゾオキサジン含有芳香族アリル化合物;1,3,5-トリアリルエーテルベンゼン等のエーテル含有芳香族アリル化合物;ジアリルジフェニルシラン等のアリルシラン化合物等が挙げられる。分子量800未満の多官能(メタ)アリル基含有化合物の市販品としては、日本化成社製の「TAIC」(1,3,5-トリアリルイソシアヌレート)、日触テクノファインケミカル社製の「DAD」(ジフェン酸ジアリル)、和光純薬工業社製の「TRIAM-705」(トリメリット酸トリアリル)、日本蒸留工業社製の商品名「DAND」(2,3-ナフタレンカルボン酸ジアリル)、四国化成工業社製「ALP-d」(ビス[3-アリル-4-(3,4-ジヒドロ-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3-イル)フェニル]メタン)、日本化薬社製の「RE-810NM」(2,2-ビス[3-アリル-4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)、四国化成社製の「DA-MGIC」(1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート)等が挙げられる。
【0167】
ラジカル重合性架橋剤は、一実施形態において、特に好ましくは、式(5):
【0168】
【化8】
【0169】
[式中、
及びRは、それぞれ独立して、(1)アクリロイル基、(2)メタクリロイル基、(3)アリル基、(4)メタリル基、(5)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は(6)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいベンジル基を示し;
及びXは、単結合、又はアルキレン基を示し;
環Aは、置換基を有していてもよい非芳香族炭素環、又は置換基を有していてもよい非芳香族複素環を示す。]
で表される低分子量の化合物(例えば分子量800未満)を含む。
【0170】
式(5)の記号の定義に含まれる「置換基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルキル-オキシ基、アルケニル-オキシ基、アリール-オキシ基、アラルキル-オキシ基等が挙げられる。
【0171】
及びRは、それぞれ独立して、(1)アクリロイル基、(2)メタクリロイル基、(3)アリル基、(4)メタリル基、(5)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、又は(6)ビニル基及びイソプロペニル基から選ばれる基で置換され且つさらにアルキル基で置換されていてもよいベンジル基を示す。R及びRは、一実施形態において、それぞれ独立して、好ましくは、アクリロイル基、又はメタクリロイル基である。
【0172】
及びXは、単結合、又はアルキレン基を示す。アルキレン基とは、直鎖、及び/又は分枝鎖の2価の脂肪族飽和炭化水素基を意味する。アルキレン基は、炭素数1~6のアルキレン基が好ましい。アルキレン基としては、例えば、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-CH-CH-CH-、-CH-CH(CH)-、-CH(CH)-CH-、-C(CH-、-CH-CH-CH-CH-、-CH-CH-CH(CH)-、-CH-CH(CH)-CH-、-CH(CH)-CH-CH-、-C(CH-CH-、-CH-C(CH-等が挙げられる。X及びXは、一実施形態において、それぞれ独立して、好ましくは、アルキレン基である。
【0173】
環Aは、置換基を有していてもよい非芳香族炭素環、又は置換基を有していてもよい非芳香族複素環を示す。
【0174】
非芳香族炭素環とは、環全体に芳香族性を有さない炭素原子のみを環構成原子とする環を意味する。非芳香族炭素環は、単環式の非芳香族炭素環であっても、多環式の非芳香族炭素環であってもよい。非芳香族炭素環は、単結合のみからなる飽和炭素環であっても、単結合に加えて二重結合を有する不飽和炭素環であってもよい。非芳香族炭素環は、3~21員の非芳香族炭素環が好ましく、4~18員の非芳香族炭素環がより好ましく、5~14員の非芳香族炭素環がさらに好ましい。非芳香族炭素環の好適な具体例としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロウンデカン環、シクロドデカン環等の単環系の飽和炭素環;ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環(ノルボルナン環)、ビシクロ[4.4.0]デカン環(デカリン環)、ビシクロ[5.3.0]デカン環、ビシクロ[4.3.0]ノナン環(ヒドリンダン環)、ビシクロ[3.2.1]オクタン環、ビシクロ[5.4.0]ウンデカン環、ビシクロ[3.3.0]オクタン環、ビシクロ[3.3.1]ノナン環等の二環系の飽和炭素環;トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環(テトラヒドロジシクロペンタジエン環)、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン環(アダマンタン環)、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン環等の三環系の飽和炭素環等が挙げられる。
【0175】
非芳香族複素環とは、環全体に芳香族性を有さず、環構成原子として、炭素原子に加え、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する環を意味する。非芳香族複素環は、単環式の非芳香族複素環であっても、多環式の非芳香族複素環であってもよい。非芳香族複素環は、単結合のみからなる飽和複素環であっても、単結合に加えて二重結合を有する不飽和複素環であってもよい。非芳香族複素環は、3~21員の非芳香族複素環が好ましく、4~18員の非芳香族複素環がより好ましく、5~14員の非芳香族複素環がさらに好ましい。非芳香族複素環の好適な具体例としては、1,3-ジオキサン環、1,3-ジオキソラン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロフラン環等が挙げられる。
【0176】
環Aは、一実施形態において、好ましくは、アルキル基で置換されていてもよい非芳香族炭素環、又はアルキル基で置換されていてもよい非芳香族複素環であり;より好ましくは、アルキル基で置換されていてもよいテトラヒドロジシクロペンタジエン環、又はアルキル基で置換されていてもよい1,3-ジオキサン環である。
【0177】
ラジカル重合性架橋剤のラジカル反応性基当量は、好ましくは30g/eq.~400g/eq.、より好ましくは50g/eq.~300g/eq.、さらに好ましくは75g/eq.~200g/eq.である。
【0178】
ラジカル重合性架橋剤の分子量は、好ましくは100~700、より好ましくは200~400、さらに好ましくは250~500である。
【0179】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層中のラジカル重合性架橋剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1~40質量%以下、より好ましくは1~20質量%以下、さらに好ましくは3~15質量%、特に好ましくは5~10質量%である。
【0180】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層中の熱硬化性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1~60質量%以下、より好ましくは10~50質量%以下、さらに好ましくは15~45質量%、特に好ましくは20~40質量%である。
【0181】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、好適な実施形態において、無機充填材を含んでいてもよい。無機充填材は、樹脂組成物層中で粒子の形態で存在する。
【0182】
無機充填材の材料としては、無機化合物を用いる。無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ又はアルミノシリケートが好適であり、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0183】
無機充填材の市販品としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「UFP-30」、「DAW-03」、「FB-105FD」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;太平洋セメント社製の「セルフィアーズ」、「MGH-005」;日揮触媒化成社製の「エスフェリーク」、「BA-1」などが挙げられる。
【0184】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、さらにより好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.8μm以下である。無機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.2μm以上である。無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0185】
無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、さらに好ましくは1m/g以上、特に好ましくは3m/g以上である。無機充填材の比表面積の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは100m/g以下、より好ましくは50m/g以下、さらに好ましくは30m/g以下、特に好ましくは10m/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0186】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。また、表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0187】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0188】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることがより好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることがさらに好ましい。
【0189】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下がさらに好ましい。
【0190】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0191】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層中の無機充填材の含有量は、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、さらにより好ましくは55質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。樹脂組成物層中の無機充填材の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下であり得る。
【0192】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、好適な実施形態において、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、コポリマー類、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂組成物層は、熱可塑性樹脂として、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びコポリマー類から選ばれる熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、フェノキシ樹脂、及びコポリマー類から選ばれる熱可塑性樹脂を含むことがより好ましい。熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0193】
熱可塑性ポリイミド樹脂の具体例としては、信越化学工業社製「SLK-6100」、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」等が挙げられる。
【0194】
ポリカーボネート樹脂としては、ヒドロキシ基含有カーボネート樹脂、フェノール性水酸基含有カーボネート樹脂、カルボキシ基含有カーボネート樹脂、酸無水物基含有カーボネート樹脂、イソシアネート基含有カーボネート樹脂、ウレタン基含有カーボネート樹脂等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の具体例としては、三菱瓦斯化学社製の「FPC0220」、旭化成ケミカルズ社製の「T6002」、「T6001」(ポリカーボネートジオール)、クラレ社製の「C-1090」、「C-2090」、「C-3090」(ポリカーボネートジオール)等が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」等が挙げられる。
【0195】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0196】
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YX7200B35」、「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0197】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0198】
コポリマー類は、スチレン、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、アクリレート、及びメタクリレートから選ばれる2種以上のモノマーを重合して得られる共重合体又はその水素添加物である。
【0199】
コポリマー類の例としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系重合体等が挙げられる。
【0200】
コポリマー類の別の例としては、ポリブタジエン樹脂が挙げられる。ポリブタジエン樹脂としては、例えば、水素化ポリブタジエン骨格含有樹脂、ヒドロキシ基含有ポリブタジエン樹脂、フェノール性水酸基含有ポリブタジエン樹脂、カルボキシ基含有ポリブタジエン樹脂、酸無水物基含有ポリブタジエン樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、イソシアネート基含有ポリブタジエン樹脂、ウレタン基含有ポリブタジエン樹脂、ポリフェニレンエーテル-ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
【0201】
コポリマー類の別の例としては、ポリスチレン樹脂が挙げられる。ポリスチレン樹脂は、スチレン単位に組み合わせて、前記のスチレン単位とは異なる任意の繰り返し単位を含む共重合体であってもよく、水添ポリスチレン樹脂であってもよい。ポリスチレン樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。ポリスチレン樹脂の具体例としては、水添スチレン系熱可塑性エラストマー「H1041」、「タフテックH1043」、「タフテックP2000」、「タフテックMP10」(旭化成社製);エポキシ化スチレン-ブタジエン熱可塑性エラストマー「エポフレンドAT501」、「CT310」(ダイセル社製);ヒドロキシル基を有する変成スチレン系エラストマー「セプトンHG252」(クラレ社製);カルボキシル基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN503M」、アミノ基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックN501」、酸無水物基を有する変性スチレン系エラストマー「タフテックM1913」(旭化成ケミカルズ社製);未変性スチレン系エラストマー「セプトンS8104」(クラレ社製);スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体「FG1924」(Kraton社製)、「EF-40」(CRAY VALLEY社製)が挙げられる。
【0202】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0203】
ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」等が挙げられる。
【0204】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0205】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0206】
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、ビクトレックス社製PEEK-150PF、450PF等が挙げられる。
【0207】
熱可塑性ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、SABIC製「NORYL SA90」等が挙げられる。
【0208】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、フィルム製膜性をより向上させる観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
【0209】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層中の熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05~15質量%、さらに好ましくは0.1~10質量%、さらにより好ましくは0.3~5質量%、特に好ましくは0.5~2質量%であり得る。
【0210】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層は、好適な実施形態において、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0211】
硬化促進剤は、熱硬化性樹脂の硬化を促進させる硬化触媒としての機能を有する。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、アミン系硬化促進剤又はイミダゾール系硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0212】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0213】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。
【0214】
ラジカル重合開始剤としては、熱エネルギーを付与することによりラジカルを発生できる熱ラジカル重合開始剤が好ましい。熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物系重合開始剤、アゾ化合物系重合開始剤が挙げられる。
【0215】
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-へキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等のジアルキルパーオキサイド化合物;ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルトルイルパーオキサイド、トルイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物;過酢酸t-ブチル、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸エステル化合物;ケトンパーオキサイド化合物;パーオキシカーボネート化合物;1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール化合物;などが挙げられる。
【0216】
アゾ化合物系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾニトリル化合物;2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}等のアゾアミド化合物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾアミジン化合物;2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾアルカン化合物;2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミドオキシム)等のオキシム骨格を有するアゾ化合物;2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル;などが挙げられる。
【0217】
工程(1)で使用する樹脂シートの樹脂組成物層中の添加剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.001~5質量%以下、より好ましくは0.001~1質量%以下、さらに好ましくは0.01~0.5質量%、特に好ましくは0.02~0.2質量%である。
【0218】
本発明の樹脂組成物は、上述した不揮発成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有する場合がある。有機溶剤としては、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0219】
樹脂シートは、例えば、ワニス状の樹脂組成物を、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。樹脂シートの製造のための乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。例えば、50℃~150℃、好ましくは80℃~120℃で、1分間~60分間、好ましくは3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。支持体上に塗布するためのワニス状の樹脂組成物中の有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合、例えば、好ましく40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましく20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【実施例0220】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件は、室温(23℃)下であり、特に圧力の指定が無い場合の圧力条件は、大気圧(1atm)下である。
【0221】
<製造例1:樹脂シート1の作製>
テトラメチルビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000H」エポキシ当量194g/eq.)8部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約271g/eq.)10部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP6000L」、エポキシ当量約213g/eq.)2部、2官能エポキシ樹脂(日鉄ケミカル社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約133g/eq.)2部、トリアジン骨格及びクレゾールノボラック構造を有するフェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、フェノール当量約151、固形分50質量%の2-メトキシプロパノール溶液)4部、活性エステル樹脂(DIC社製「HP-C-8151-62T」、フェノール当量約238、固形分62質量%のトルエン溶液)6部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7800BH40」、固形分40質量%のMEKならびにシクロヘキサン溶液)2部、及びアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理されたシリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、表面処理量:シリカ100質量%に対しアミノ系シランカップリング剤0.6質量%)50部、硬化促進剤(「DMAP-5M」、1,4-ジメチルアミノピリジンの固形分5質量%のMEK溶液)1部を添加して、ワニス状の樹脂組成物を調製した。続いて、ワニス状の樹脂組成物を、PETフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)上に、乾燥後の厚さが25μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、100℃で5分間乾燥させて樹脂シート1を作製した。
【0222】
<製造例1’:樹脂シート1’の作製>
ワニス状の樹脂組成物を、PETフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)上に塗布する代わりに、三井金属鉱業社製キャリア付き銅箔「MT18FL(薄銅箔厚み3μm)」上に塗布した以外、製造例1の樹脂シート1と同様に樹脂シート1’を作製した。
【0223】
<製造例2:樹脂シート2の作製>
表面処理されたシリカの添加量を50部から40部に変更したこと以外、製造例1の樹脂シート1と同様に樹脂シート2を作製した。
【0224】
<製造例3:樹脂シート3の作製>
表面処理されたシリカの添加量を50部から100部に変更したこと以外、製造例1の樹脂シート1と同様に樹脂シート3を作製した。
【0225】
<製造例4:樹脂シート4の作製>
表面処理されたシリカの添加量を50部から120部に変更したこと以外、製造例1の樹脂シート1と同様に樹脂シート4を作製した。
【0226】
<製造例5:樹脂シート5の作製>
トリアジン骨格及びクレゾールノボラック構造を有するフェノール系硬化剤および活性エステルの両方を添加しない代わりに、シアネートエステル(ロンザ社製「BA230S」、シアネートエステル当量139g/eq.、固形分75質量%のMEK溶液)を20部添加し、さらに、表面処理されたシリカの添加量を50部から80部に変更したこと以外、製造例1の樹脂シート1と同様に樹脂シート5を作製した。
【0227】
<製造例6:樹脂シート6の作製>
ポリフェニレンエーテル樹脂(三菱瓦斯化学社製「OPE-2S」、ビニル当量590g/eq.固形分65質量%のトルエン溶液)5部、マレイミド樹脂(デザイナーモレキュールズ社製「BMI-689」、マレイミド当量345g/eq.)5部、ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製「MIR-3000-70MT」、マレイミド当量393g/eq.固形分70質量%のMEKならびにトルエン溶液)10部、液状アクリレート樹脂(新中村化学工業社製「A-DOG」、ビニル基当量約163g/eq.)5部、共重合体エラストマー(旭化成社製「P2000」)2部の30wt%トルエン溶液、及びアミノ系シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM573」、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理されたシリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、表面処理量:シリカ100質量%に対しアミノ系シランカップリング剤0.6質量%)40部、過酸化物系重合開始剤(日油化学社製「パーヘキシン25B」の固形分10質量%のトルエン溶液)1部を添加して、ワニス状の樹脂組成物を調製した。続いて、ワニス状の樹脂組成物を、PETフィルム(リンテック社製「AL5」、厚さ38μm)上に、乾燥後の厚さが25μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、100℃で5分間乾燥させて樹脂シート6を作製した。
【0228】
<実施例1>
(積層工程)
製造例1で得られた樹脂シート1を、樹脂組成物層面にポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトンH」、厚さ50μm)が接するように重ね合わせ、真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-700」)を用い、120℃にて30秒間真空吸引後、真空下、120℃、圧力0.7MPaの条件で、支持体(PETフィルム)上から、耐熱ゴムを介して30秒間圧着することにより積層した。
【0229】
(乾燥工程)
積層後、支持体を剥離せずに、120℃で10分間樹脂組成物層を乾燥させた。
【0230】
(剥離工程)
乾燥後の樹脂シートから支持体を剥離した。
【0231】
(加熱圧着工程)
支持体剥離後、樹脂組成物層の面に対して、三井金属鉱業社製キャリア付き銅箔「MT18FL(薄銅箔厚み3μm)」を薄銅箔側が樹脂組成物層に接するように重ね合わせ、北川精機社製のテストプレス装置「KVHC」を用い、真空化、1.0MPaとし、25℃から5℃毎分で昇温したのち、温度200℃で120分加熱圧着することで平坦化並びに硬化して、キャリア付き銅箔を樹脂組成物層に積層し、評価サンプルを得た。
【0232】
<実施例2>
樹脂組成物層の乾燥工程における乾燥条件を120℃で10分間から120℃で30分間に変更した以外、実施例1と同様にして、評価サンプルを得た。
【0233】
<実施例3>
(積層工程)
実施例1で得られた樹脂シート1を、樹脂組成物層面にポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトンH」、厚さ50μm)が接するように重ね合わせ、真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-700」)を用い、120℃にて30秒間真空吸引後、真空下、120℃、圧力0.7MPaの条件で、支持体(PETフィルム)上から、耐熱ゴムを介して30秒間圧着することにより積層した。
【0234】
(剥離工程)
積層後の樹脂シートから支持体を剥離した。
【0235】
(乾燥工程)
支持体の剥離後、昇温して、120℃で10分間樹脂組成物層を乾燥させた。
【0236】
(加熱圧着工程)
乾燥後、樹脂組成物層の面に対して、三井金属鉱業社製キャリア付き銅箔「MT18FL(薄銅箔厚み3μm)」を薄銅箔側が樹脂組成物層に接するように重ね合わせ、北川精機社製のテストプレス装置「KVHC」を用い、真空下、1.0MPaとし、25℃から5℃毎分で昇温したのち、温度200℃で120分加熱圧着することで平坦化並びに硬化して、キャリア付き銅箔を樹脂組成物層に積層し、評価サンプルを得た。
【0237】
<実施例4>
製造例1で得られた樹脂シート1の代わりに製造例2で得られた樹脂組成物2を用いたこと以外、実施例1と同様にして、評価サンプルを得た。
【0238】
<実施例5>
製造例1で得られた樹脂シート1の代わりに製造例3で得られた樹脂組成物3を用いたこと以外、実施例1と同様にして、評価サンプルを得た。
【0239】
<実施例6>
製造例1で得られた樹脂シート1の代わりに製造例4で得られた樹脂組成物4を用いたこと以外、実施例1と同様にして、評価サンプルを得た。
【0240】
<実施例7>
製造例1で得られた樹脂シート1の代わりに製造例5で得られた樹脂組成物5を用いたこと以外、実施例1と同様にして、評価サンプルを得た。
【0241】
<実施例8>
製造例1で得られた樹脂シート1の代わりに製造例6で得られた樹脂組成物6を用いたこと以外、実施例1と同様にして、評価サンプルを得た。
【0242】
<比較例1>
(積層工程)
製造例1’で得られた樹脂シート1’を、樹脂組成物層面にポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトンH」、厚さ50μm)が接するように重ね合わせ、真空加圧ラミネーター(名機製作所社製「MVLP-700」)を用い、120℃にて30秒間真空吸引後、真空下、120℃、圧力0.7MPaの条件で、支持体(キャリア付き銅箔)上から、耐熱ゴムを介して30秒間圧着することにより積層した。
【0243】
(乾燥工程)
積層後、支持体を剥離せずに、120℃で10分間樹脂組成物層の乾燥を試みた。
【0244】
(加熱圧着工程)
乾燥後、ポリイミドフィルムに積層された銅箔付き樹脂シートを、北川精機社製のテストプレス装置「KVHC」を用いて、真空化、1.0MPaとし、室温から毎度5℃で昇温し、温度200℃で120分加熱圧着することで平坦化並びに硬化し、評価サンプルを得た。
【0245】
<比較例2>
製造例1’で得られた樹脂シート1’を、樹脂組成物層面にポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製「カプトンH」、厚さ50μm)が接するように重ね合わせ、北川精機社製のテストプレス装置「KVHC」を用い、真空化、1.0MPaとし、室温から毎度5℃で昇温し、温度120℃で30分加熱圧着することにより積層し、評価サンプルを得た。
【0246】
<比較例3>
製造例1で得られた樹脂シート1の代わりに製造例2で得られた樹脂組成物2を用い、樹脂組成物層の乾燥工程を実施せずに、積層後そのまま、支持体の剥離工程を実施した以外、実施例1と同様にして、評価サンプルを得た。
【0247】
<比較例4>
樹脂組成物層の乾燥工程における乾燥条件を120℃で30分間としたこと以外、実施例1と同様にして、評価サンプルを得た。
【0248】
<試験例1:溶融粘度の測定>
実施例及び比較例で作製した積層工程前ならびに加熱圧着前段階の評価サンプルからキャリア付き銅箔ならびにポリイミドフィルムを剥離し、1.2gの樹脂サンプルを得た。得られた樹脂サンプルの最低溶融粘度を動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム社製「Rheosol-G3000」)にて行った。具体的には開始温度60℃から200℃までの温度範囲で昇温して動的粘弾性率を測定し、積層工程前ならびに加熱圧着前段階の最低溶融粘度(poise)をそれぞれ算出した。加熱圧着前の最低溶融粘度については、下記の評価基準で評価した。測定条件は、昇温速度5℃/分、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ1degとした。
【0249】
評価基準:
〇:最低溶融粘度が3500poise以上、10000poise以下
△:最低溶融粘度が2000poise以上、3500poise未満、あるいは10000poiseより大きい、20000poise以下
×:最低溶融粘度が2000poise未満、あるいは20000poiseより大きい
【0250】
<試験例2:積層後の樹脂膜厚の測定>
実施例及び比較例で作製した加熱圧着後の評価サンプルからポリイミドフィルムならびにキャリア銅箔を剥離し、ミツトヨ社製の高精度デジマチックマイクロメーター(MDH-25MB)を用いて樹脂並びに薄銅の厚みを測定し、薄銅の厚み3μmを差し引くことで樹脂厚を算出し、下記評価基準に基づき評価した。
【0251】
評価基準:
〇:樹脂膜厚が12μmより大きい(目視による外観検査にてボイド無し)
△:樹脂膜厚が10μmより大きい、12μm以下(目視による外観検査にてボイド無し)
×:樹脂膜厚が10μm以下(目視による外観検査にてボイド無し)
××:目視による外観検査にてボイド発生
【0252】
<試験例3:ガラス転移温度の測定>
実施例及び比較例で作製した加熱圧着後の評価サンプルからポリイミドフィルムならびにキャリア銅箔を剥離し、得られた硬化物を、熱機械分析装置(DMA)としてセイコーインスツルメンツ社製の型式DMS-6100を用い、「引っ張りモード」にて測定した。測定は、5℃/分の昇温にて、25℃~240℃の範囲で行った。そして下記評価基準に基づき、ガラス転移温度(Tg)を評価した。
【0253】
評価基準:
〇:Tgが150℃以上
△:Tgが140℃以上150℃未満
×:Tgが140℃未満
【0254】
<試験例4:加熱圧着前の有機溶剤含有量の測定>
製造例で得られた樹脂シートの積層工程前ならびに加熱圧着前段階の残留溶剤量を、それぞれ、樹脂シートを130℃で15分間乾燥させ、乾燥前後の重量を測定することで算出した。
【0255】
<試験例5:銅箔との密着強度の測定>
実施例及び比較例で作製した加熱圧着後の評価サンプルからキャリア銅箔を剥離し、アトテックジャパン社製の薬液を使用して、25μmの銅厚さとなる用電解銅めっき工程を行った。めっき導体層(第2導体層)に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具で掴み、室温(25°C)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重[kgf/cm(N/cm)]を測定した。測定には、引っ張り試験機((株)TSE製「AC-50C-SL」)を使用した。
【0256】
評価基準:
ボイド:ボイドが発生した場合
〇:銅箔との密着強度が0.6kgf/cm以上(ボイド発生無し)
×:銅箔との密着強度が0.6kgf/cm未満(ボイド発生無し)
【0257】
<試験例6:裁断時の樹脂欠けの評価>
実施例1、4~8および比較例1の樹脂シートをDAHLE社製ローラーカッター(558N型)で裁断し、裁断辺端部の割れ、欠けを目視で確認した。実施例1、4~8の樹脂シートは樹脂欠けが見られなかったが、比較例1、2の樹脂シートは樹脂欠けが観察された。
【0258】
実施例1~8及び比較例1~4の樹脂組成物の不揮発成分とその使用量、支持体、製造条件、試験例1~5の測定結果、及び評価結果を下記表1にまとめる。
【0259】
【表1】
【0260】
上記表1に示される結果から、樹脂組成物層を有する樹脂シートを基板に対して積層し、支持体を剥離して、金属箔を樹脂組成物層に加熱圧着する工程を含む配線板の製造方法において、加熱圧着前の樹脂組成物層の最低溶融粘度が、2,000poise~20,000poiseである場合、真空ホットプレスを含むプロセスを経たとしても、絶縁層の厚みの変化を抑制し、良好な金属箔密着性およびガラス転移温度を達成できることがわかる。また、試験例6の結果から、樹脂シートの裁断に伴う樹脂欠けの発生を抑制できることもわかる。