(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104622
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】液処理方法、及び液処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20240729BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240729BHJP
【FI】
C02F1/461 101C
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008943
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】599055382
【氏名又は名称】学校法人東邦大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】井関 正博
(72)【発明者】
【氏名】江口 栄拠
【テーマコード(参考)】
4D037
4D061
【Fターム(参考)】
4D037AA02
4D037AA11
4D037AA13
4D037AB11
4D037AB14
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4D037CA04
4D061DA03
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4D061EB19
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4D061EB31
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4D061EB39
4D061FA07
4D061GA18
4D061GC11
4D061GC12
4D061GC15
(57)【要約】
【課題】処理対象液中に含まれる難分解性物質を、エネルギー効率が高く、有害な中間生成物を生じずに処理することができる液処理方法及び液処理装置の提供。
【解決手段】難分解性物質を含む処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第一の電気分解工程と、前記第一の電気分解工程の後に、前記処理対象液に対して紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射工程と、前記紫外線照射工程の後に、前記処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第二の電気分解工程と、を有する液処理方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難分解性物質を含む処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第一の電気分解工程と、
前記第一の電気分解工程の後に、前記処理対象液に対して紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射工程と、
前記紫外線照射工程の後に、前記処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第二の電気分解工程と、
を有することを特徴とする液処理方法。
【請求項2】
前記第一の電気分解工程における、電気分解の時間が15分間以上60分間以下である、請求項1に記載の液処理方法。
【請求項3】
前記紫外線照射工程における、紫外線の照射時間が15分間以上60分間以下である、請求項1から2のいずれかに記載の液処理方法。
【請求項4】
前記第二の電気分解工程における、電気分解の時間が60分間以上である、請求項1から2のいずれかに記載の液処理方法。
【請求項5】
前記難分解性物質が、有機フッ素化合物、環状エーテル、有機ハロゲン化合物、医薬品、及び農薬の少なくともいずれかである、請求項1から2のいずれかに記載の液処理方法。
【請求項6】
難分解性物質を含む処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第一の電気分解手段と、
前記処理対象液に対して紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射手段と、
前記処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第二の電気分解手段と、
を有することを特徴とする液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液処理方法、及び液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS:Perfluorooctanesulfonic acid)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA:Perfluorooctanoic acid)等の有機フッ素化合物は、テフロン(登録商標)製造時の乳化剤等の界面活性体や半導体工場の廃水等に含まれる難分解性物質である。前記有機フッ素化合物は、安定的なC-F結合の構造を有するため、微生物でも分解不可能な難分解性であることや高い生体蓄積性があることが知られており、発がん作用をはじめとした有害性が報告されている。PFOS及びPFOAに関する規制において、現在も議論されているが、現状では環境中の濃度が基準値以下となるよう希薄化されたうえで、工業排水等として河川に排出されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
同様に難分解性物質である医薬品において、医薬品メーカーから出る排水処理では医薬品が除去しきれないことが問題となっている。また、抗生物質等の医薬品は、化粧品や塗り薬等の洗い流し後の排水、抗生物質を服薬している患者の排泄後の排水中に含まれており、環境中の微生物を殺し耐性菌を生むという悪循環を助成しているとの問題がある。
【0004】
前記有機フッ素化合物、前記医薬品などの難分解性物質は、活性汚泥法などの生物的手法が有効ではないため、UV照射、電気分解などの物理化学的手法が研究されており、処理対象液に含まれる難分解性物質の分解において、紫外線の照射と電気分解とを同時に行う方法等が挙げられる(例えば、特許文献1、非特許文献2参照)。
しかしながら、前記物理化学的手法は、エネルギー消費が大きい、有害な中間生成物が生じる可能性があるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】経済産業省:ストックホルム条約第9回締約国会議(COP9),2019年5月14日(https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/files/pops/SCCOP9.pdf)
【非特許文献2】D. Montanaro et al.,UV-assisted electrochemical degradation of coumarin on boron-doped diamond electrodes,Chemical Engineering Journal,323,2017,512-519
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、処理対象液中に含まれる難分解性物質を、エネルギー効率が高く、有害な中間生成物を生じずに処理することができる液処理方法及び液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、難分解性物質を含む処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第一の電気分解工程を行った後に、前記処理対象液に対して紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射工程を行い、前記紫外線照射工程の後に、前記処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第二の電気分解工程を行うことで、前記難分解性物質の分解量が上昇することを知見した。さらに、本発明では、前記難分解性物質を無機化(二酸化炭素と水に分解)することができる。
また、本発明者らは、紫外線照射工程によって、前記難分解性物質を中間生成物に分解することで、前記処理対象液中にイオン(一般的には、カルボン酸イオン)が増加し、その後の物理化学的な分解工程として、例えば、電気分解を行うことで、電解(定電流電解)時の電圧の低下、導電率の上昇が起こるため、電気分解のみを行うよりもエネルギー効率が高くなることを知見した。即ち、紫外線を照射して前記難分解性物質を中間生成物に分解し、その後、ヒドロキシラジカル等のラジカル種を用いた分解を行うことで、より少ないエネルギーで前記難分解性物質を無機化できることを知見した。
また、先行技術では、紫外線の照射と電気分解とを同時に行うため、エネルギー(例えば、電力)を消費し、前記難分解性物質の分解におけるエネルギー効率が低いという問題があった。これに対して、本発明は、紫外線照射工程と物理化学的な分解工程とを同時に行う必要がないため、前記難分解性物質の分解において、高いエネルギー効率を得ることができる。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 難分解性物質を含む処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第一の電気分解工程と、
前記第一の電気分解工程の後に、前記処理対象液に対して紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射工程と、
前記紫外線照射工程の後に、前記処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第二の電気分解工程と、
を有することを特徴とする液処理方法である。
<2> 前記第一の電気分解工程における、電気分解の時間が15分間以上60分間以下である、前記<1>に記載の液処理方法である。
<3> 前記紫外線照射工程における、紫外線の照射時間が15分間以上60分間以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の液処理方法である。
<4> 前記第二の電気分解工程における、電気分解の時間が60分間以上である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の液処理方法である。
<5> 前記難分解性物質が、有機フッ素化合物、環状エーテル、有機ハロゲン化合物、医薬品、及び農薬の少なくともいずれかである、前記<1>から<4>のいずれかに記載の液処理方法である。
<6> 難分解性物質を含む処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第一の電気分解手段と、
前記処理対象液に対して紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射手段と、
前記処理対象液を電気分解して、前記難分解性物質を分解する第二の電気分解手段と、
を有することを特徴とする液処理装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、処理対象液中に含まれる難分解性物質を、エネルギー効率が高く、有害な中間生成物を生じずに処理することができる液処理方法及び液処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の液処理方法を用いたときの難分解性物質を分解するまでの反応経路の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の液処理装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施例1及び2、比較例1から3における、TOC濃度が反応開始時点のTOC濃度に対して45%となるまでの間の、0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、210分間、及び240分間における処理対象液中のTOCの濃度比率(%)を示す概略図である。
【
図4】
図4は、実施例1及び2、比較例1から3におけるTOC濃度が反応開始時点のTOC濃度に対して45%となるまでのエネルギー効率を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(液処理方法、及び液処理装置)
本発明の液処理方法は、難分解性物質を含む処理対象液の前記難分解性物質を分解する液処理方法であって、第一の電気分解工程と、紫外線照射工程と、第二の電気分解工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
本発明の液処理装置は、第一の電気分解手段と、紫外線照射手段と、第二の電気分解手段とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の手段を含む。
【0013】
<難分解性物質>
前記難分解性物質とは、前記処理対象液中に含まれる物質であって、前記処理対象液が排水である場合は、従来から行われている活性汚泥法などの微生物を用いた手法では分解することができない物質のことである。
前記難分解性物質としては、例えば、有機フッ素化合物、環状エーテル、有機ハロゲン化合物、医薬品、農薬などが挙げられる。
【0014】
前記有機フッ素化合物とは、炭素(C)-フッ素(F)結合を有する有機化合物のことであり、例えば、ペルフルオロオクタンスルホン酸、ペルフルオロオクタン酸などが挙げられる。
【0015】
前記環状エーテルとは、エーテル結合を含む環状の有機化合物であり、例えば、1,4-ジオキサン、イソベンゾフラン、エポキシド、クラウンエーテル、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ピラン、フランなどが挙げられる。
【0016】
前記医薬品及び前記農薬としては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づき、承認を受けたものである。
【0017】
前記医薬品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジクロフェナク、メトプロロール、クラリスロマイシンなどが挙げられる。
【0018】
前記農薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ネオニコチノイド系農薬などが挙げられる。
【0019】
<処理対象液>
前記処理対象液としては、前記難分解性物質を含有する液体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飲料水、下水処理水、工業排水、医薬品メーカーから排出される排水などが挙げられる。
前記処理対象液中の前記難分解性物質の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mg/L以上が好ましい。濃度が低い場合は、前段に濃縮する手段を設けることができる。
【0020】
<第一の電気分解工程、及び第一の電気分解手段>
前記第一の電気分解工程としては、難分解性物質を含む処理対象液を電気分解(以下、「第一の電気分解」と称することがある)して、前記難分解性物質を分解する工程である。前記第一の電気分解工程としては、前記第一の電気分解手段によって行うことができる。
【0021】
前記第一の電気分解における陽極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、BDD電極(Boron Doped Diamond電極)、白金電極、酸化鉛電極、酸化スズ電極、酸化タンタル電極、DSA電極(白金族金属酸化物型電極)などが挙げられる。これらの中でも、通常の電極では行うことができない酸化還元反応を行うことができる点から、BDD電極が好ましい。
前記BDD電極は、絶縁体のダイヤモンドが含まれており、ホウ素をドーピングすることで電気伝導性が付与されている。前記BDD電極は、電位窓が広いことから、通常の電極では行うことができない酸化還元反応を行うことができる。
【0022】
前記第一の電気分解における陰極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Pt電極(白金電極)、グラッシーカーボン電極等の炭素系電極などが挙げられる。これらの中でも、酸素を還元して過酸化水素を生成する能力に優れるグラッシーカーボン電極等の炭素系電極が好ましい。
【0023】
前記第一の電気分解における電流密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mA/cm2以上100mA/cm2以下が好ましい。
【0024】
前記第一の電気分解における電力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、処理対象液1Lに対して、1.0W以上10.0W以下が好ましく、3.0W以上5.0W以下がより好ましい。
【0025】
前記第一の電気分解の反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15分間以上60分間以下が好ましい。前記反応時間が15分間以上であると、前記難分解性物質を分解することができ、前記反応時間が60分間以下であると、高いエネルギー効率が得られる。
【0026】
図1は、本発明の液処理方法の電気分解における難分解性物質を分解するまでの反応経路の一例を示す概略図である。
図1に示すとおり、陰極では、陽極から発生した酸素を含む気体(例えば、酸素O
2)の下記式(1)の反応によって、過酸化水素(H
2O
2)が発生する。
[式(1)]
O
2+2H
++2e
-→H
2O
2・・・式(1)
陽極では、水(H
2O)の下記式(2)の反応によって、オゾン(O
3)が発生する。
[式(2)]
3H
2O→O
3+6H
++6e
-・・・式(2)
【0027】
前記陰極で発生した過酸化水素(H2O2)と、前記陽極で発生したオゾン(O3)との下記式(3)の反応によって、ヒドロキシラジカル(・OH)が発生する。前記ヒドロキシラジカルは、活性酸素の一種であり、オゾン(O3)よりも強力な酸化力を有する。
[式(3)]
H2O2+2O3→2・OH+3O2・・・式(3)
前記ヒドロキシラジカルは、微生物では分解することができない、難分解性物質及びその分解における中間生成物を分解して、無機物を生成することができる。また、反応速度が速いため、反応時間を短縮することができることから、高いエネルギー効率を得ることができる。
【0028】
前記陽極では、下記式(4)の反応によって、直接酸化による難分解性物質(R)の分解も起こる。
[式(4)]
R→ROH→ROOH→H2O+CO2・・・式(4)
【0029】
<紫外線照射工程、及び紫外線照射手段>
前記紫外線照射工程としては、前記第一の電気分解工程の後に、前記処理対象液に対して紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する工程である。前記紫外線照射工程としては、前記紫外線照射手段によって行うことができる。
【0030】
前記紫外線の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm以上400nm以下が好ましい。
【0031】
前記紫外線の照射時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5時間以上1時間以下が好ましい。前記照射時間が0.5時間以上であると、前記難分解性物質を分解することができ、前記照射時間が1時間以下であると、高いエネルギー効率が得られる。
【0032】
前記紫外線を照射する装置としては、前記波長の紫外線を照射することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UV-C(三共電気株式会社製)などが挙げられる。
【0033】
<第二の電気分解工程、及び第二の電気分解手段>
前記第二の電気分解工程としては、前記紫外線照射工程の後に、前記処理対象液を電気分解(以下、「第二の電気分解」と称することがある)して、前記難分解性物質を分解する工程である。前記第二の電気分解工程としては、前記第二の電気分解手段によって行うことができる。
【0034】
前記第二の電気分解における陽極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第一の電気分解で用いた陽極と同様のものなどが挙げられる。
【0035】
前記第二の電気分解における陰極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第一の電気分解で用いた陰極と同様のものなどが挙げられる。
【0036】
前記第二の電気分解における電流密度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5mA/cm2以上100mA/cm2以下が好ましい。
【0037】
前記第二の電気分解における電力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、処理対象液1Lに対して、1.0W以上10.0W以下が好ましく、3.0W以上5.0W以下がより好ましい。
【0038】
前記第二の電気分解の反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30分間以上が好ましく、100分間以上がより好ましい。前記照射時間が30分間以上であると、前記難分解性物質を分解することができる。
【0039】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程及びその他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機化確認工程、物理化学的な分解工程、第一の電気分解工程の前に行う紫外線照射工程、などが挙げられる。
【0040】
前記無機化確認工程としては、前記物理化学的な分解工程後の前記処理対象液中における前記難分解性物質が無機化されていることを確認する工程であり、例えば、全有機体炭素計を用いて前記難分解性物質が無機化されていることを測定することができる。
【0041】
前記全有機体炭素計は、前記処理対象液中に存在する有機物の総量を、有機物に含まれる炭素量で示したものであり、「水の汚れ」を示す指標の一つとして用いられる。
前記全有機体炭素計としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができ、例えば、TOC-L(島津製作所製)などを用いることができる。
【0042】
前記物理化学的な分解工程としては、前記難分解性物質を物理化学的手法によって分解する工程である。前記物理化学的な分解工程としては、前記物理化学的な分解手段によって行うことができる。
【0043】
前記物理化学的手法とは、ヒドロキシラジカルを発生させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電気分解、促進酸化、紫外線照射と電気分解とを同時に行う処理(以下、「併用処理」と称することがある)などが挙げられる。なお、電気分解の場合は、電極上での直接酸化の効果も期待できる。
【0044】
図2は、本発明の液処理装置における電気分解の一例を示す概略図である。
本発明の液処理装置10としては、例えば、
図2に記載のとおり処理対象液11に含まれる難分解性物質を分解するために、陽極12及び陰極13と、前記陽極12及び陰極13が接続されている電源14と、紫外線照射装置15と、を有する。
前記紫外線照射装置15から、紫外線を照射することで、前記処理対象液中の前記難分解性物質を分解することができる。
【実施例0045】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
<難分解性物質を含む処理対象液の調製例1>
難分解性物質としてのジクロフェナクナトリウム(和光純薬工業株式会社製、濃度:>98.0%)1gを電子天秤で量り、1000mLメスフラスコを用いて超純水で1000mLに定容した(以下、1g/Lジクロフェナクナトリウム水溶液と称する)。次に、電解質としての過塩素酸ナトリウム一水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)14.046gを電子天秤で量り、1000mLメスフラスコを用いて超純水で1000mLに定容した(以下、0.1MのNaClO4水溶液と称する)。
得られた1g/Lジクロフェナクナトリウム水溶液と、0.1MのNaClO4水溶液をそれぞれ100mLメスフラスコで量り、1000mLメスフラスコを用いて超純水で1000mLに定容し、ジクロフェナクナトリウムを含む処理対象液(100mg/Lジクロフェナクナトリウム+0.01MNaClO4水溶液)を調製した。
【0047】
(実施例1)
1Lビーカー中に50mmの撹拌子(スターラー)と、調製例1の難分解性物質を含む処理対象液を入れ、電極及び紫外線ランプ(波長:254nm、UV-Cランプ、三共電気株式会社製)を前記処理対象液中に浸し、ビーカーの周りをアルミホイルで覆った。電極としては、陽極にBDD電極(5cm×4cm、基体:Nb、端子棒:Nb、デノラ・ペルメレック株式会社製)、陰極にPt電極(5cm×4cm、基体:Ti、端子棒:Ti、デノラ・ペルメレック株式会社製)をそれぞれ用いて、前記陽極と前記陰極との電極間距離は5mmとした。
図1は、実施例1に用いた装置の模式図の一例を示す概略図である。
次に、撹拌子の回転数300rpmで前記処理対象液を攪拌しながら、下記第一の電気分解条件で第一の電気分解工程を30分間行った。その後、下記紫外線照射条件で紫外線照射工程を30分間行った。その後、前記処理対象液中のTOCの濃度が45%となるまで、下記第二の電気分解条件で第二の電気分解工程を行った。これを計3回行いった。計3回の実験データを表1に示す。なお、上記各実験データにおいて、「電圧の平均値:電圧
EL2(V)」、「電力
EL2(W)」、及び「時間
EL2(h)」については、表2に示す。
[第一の電気分解条件]
・電流(電流
EL1) :0.400A
・電圧の平均値(電圧
EL1) :10.40V~11.45V
・電力(電力
EL1) :4.16W~4.58W
・時間(時間
EL1) :0.50h
・消費電力量(Ec
EL1) :2.08Wh~2.29Wh
・電極間距離 :5mm
・陽極 :BDD電極
・陰極 :Pt電極
・時間 :30分間
・スターラーの回転数 :300rpm
[紫外線照射条件]
・紫外線ランプ :UV-Cランプ(波長:254nm)
・ランプの定格消費電力(電力
UV) :10.0W
・紫外線照射時間(時間
UV) :0.50h
・消費電力量(Ec
UV) :5.00Wh
・スターラーの回転数 :300rpm
[第二の電気分解条件]
・電流(電流
EL2) :0.400A
・電圧の平均値(電圧
EL2) :10.40V~11.45V
・電力(電力
EL2) :4.16W~4.58W
・時間(時間
EL2) :1.67h~2.00h
・消費電力量(Ec
EL2) :7.60Wh~8.32Wh
・電極間距離 :5mm
・陽極 :BDD電極
・陰極 :Pt電極
・スターラーの回転数 :300rpm
【0048】
(実施例2)
実施例1において、第一の電気分解工程の前に更に下記紫外線照射条件で紫外線照射工程を行った以外は、実施例1と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
【0049】
(比較例1)
実施例1において、前記第一の電気分解条件と同じ条件の電気分解工程のみを、前記処理対象液中のTOCの濃度が45%となるまで行った以外は、実施例1と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
【0050】
(比較例2)
実施例1において、前記紫外線照射条件と同じ条件の紫外線照射工程を30分間行った後に、前記第一の電気分解条件と同じ条件の電気分解工程を、前記処理対象液中のTOCの濃度が45%となるまで行った以外は、実施例1と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
【0051】
(比較例3)
実施例1において、前記第一の電気分解条件と同じ条件の電気分解工程と、前記紫外線照射条件と同じ条件の紫外線照射工程とを、前記処理対象液中のTOCの濃度が45%となるまで同時に行った以外は、実施例1と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
【0052】
実施例1及び2、比較例1から3について、以下のようにして、TOC濃度が反応開始時点のTOC濃度に対して45%となるまでの間の、分解開始から0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、240分間及び300分間毎の「TOCの濃度」、「TOC濃度が45%となるまでの総消費電力量Ec」、「TOC濃度が45%となるまでのエネルギー効率」を測定した。
【0053】
<TOCの濃度>
実施例1及び2、比較例1から3において、TOC濃度が反応開始時点のTOC濃度に対して45%となるまでの間に、分解開始から0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、240分間及び300分間毎に、処理対象液2mLを採取し、10倍希釈を行った後、全有機体炭素計TOC-L(島津製作所製)を用いて、各時間経過後の処理対象液中におけるTOC(全有機炭素)の濃度を測定した。
次に測定した処理対象液中のTOC(全有機炭素)の濃度に基づき、各時間におけるTOC濃度のグラフを作成した。作成したグラフを、反応開始からTOC濃度が45%となるまでの区間で区切り、TOC濃度が45%となる時間(T
45%)を算出した。反応開始からTOC濃度が45%となるまでの区間で区切ったグラフを
図3に示す。
また、実施例1及び2、比較例1から3におけるTOC濃度が45%となる時間(T
45%)を表1に示す。
【0054】
【0055】
<TOC濃度が45%となるまでの総消費電力量Ec(Wh)>
以下の方法によって、TOC濃度が45%となるまでの総消費電力量Ec(Wh)を算出した。
【0056】
まず、下記式(5)に基づき、第一の電気分解工程における消費電力量EcEL1(Wh)を算出した。結果を表2及び表3に示す。
EcEL1(Wh)=電流EL1(A)×電圧EL1(V)×時間EL1(h)・・・式(5)
前記式(5)において、電流EL1は第一の電気分解における電流を表し、電圧EL1は第一の電気分解における電圧を表し、時間EL1は第一の電気分解を行った時間を表す。
【0057】
次に、下記式(6)に基づき、紫外線照射工程における消費電力量EcUV(Wh)を算出した。結果を表2及び表3に示す。
EcUV(Wh)=電力UV(W)×時間UV(h)・・・式(6)
前記式(6)において、電力UVは紫外線の照射における電力を表し、時間UVは紫外線を照射した時間を表す。
【0058】
次に、下記式(7)に基づき、第二の電気分解工程における消費電力量EcEL2(Wh)を算出した。結果を表2及び表3に示す。
EcEL2(Wh)=電流EL2(A)×電圧EL2(V)×時間EL2(h)・・・式(7)
前記式(7)において、電流EL2は第二の電気分解における電流を表し、電圧EL2は第二の電気分解における電圧を表し、時間EL2はTOC濃度が反応開始時点のTOC濃度に対して45%となるまで第二の電気分解を行った時間を表す。
【0059】
算出した第一の電気分解工程における消費電力量EcEL1(Wh)、紫外線照射工程における消費電力量EcUV(Wh)、第二の電気分解工程における消費電力量EcEL2(Wh)から、下記式(8)に基づき、TOC濃度が45%となるまでの総消費電力量Ec(Wh)を算出した。結果を表2及び表3に示す。
EC(Wh)=EcEL1(Wh)+EcUV(Wh)+EcEL2(Wh)・・・式(8)
【0060】
【0061】
【0062】
<TOC濃度が45%となるまでのエネルギー効率>
算出したTOC濃度が45%となるまでの総消費電力量Ec(Wh)から、下記式(9)に基づき、TOC濃度が45%となるまでのエネルギー効率を算出した。結果を表4に示す。
エネルギー効率(mg/Wh)=(TOC0-TOC45%)×Vs/EC・・・式(9)
上記式(9)において、TOC0は反応開始から0分後のTOCの濃度(mg/L)を表し、TOC45%は反応開始時点のTOC濃度に対して45%となったTOC濃度を表し、VSは溶液量(L)を表し、ECはTOC濃度が45%となるまでの総消費電力量(Wh)を表す。
【0063】