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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104624
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】梯子兼用脚立
(51)【国際特許分類】
   E06C 7/06 20060101AFI20240729BHJP
   E06C 1/22 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
E06C7/06
E06C1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008945
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】393018130
【氏名又は名称】長谷川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】木下 佳彦
【テーマコード(参考)】
2E044
【Fターム(参考)】
2E044BA05
2E044BC04
2E044CB03
2E044CC01
2E044DA01
2E044DB01
2E044ED10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】伸縮脚部材のロック機構やその遠隔操作機構といった動作機構を備えている梯子兼用脚立において、梯子として使用される際に上下反転させられた梯子体の動作機構が不用意に動作するのを阻止するための手段を、動作機構の様々な構成に応じてより広範に適用できるようにして、その安全性をより一層高める。
【解決手段】梯子として使用される際に上下反転させられる一方の梯子体2に、操作力が加えられることにより所定の動作を行ってロック機構7による伸縮脚部材6のロック状態を解除させうる遠隔操作機構8が設けられているとともに、遠隔操作機構8の動作を阻止しない退避位置と遠隔操作機構8の動作を阻止しうる干渉位置との間で自重により降下移動可能なストッパ19が設けられている。脚立として使用される際には、ストッパ19が退避位置に配置され、梯子兼用脚立1が梯子として使用される際には、ストッパ19が干渉位置に配置される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの梯子体の上端部どうしがヒンジ金具により開閉自在に連結されてなり、一方の梯子体を上下反転するように回動させることによって梯子としても使用可能な梯子兼用脚立であって、
前記一方の梯子体に、操作力が加えられることにより所定の動作を行う動作機構が設けられているとともに、動作機構の動作を阻止しない退避位置と動作機構の動作を阻止しうる干渉位置との間で自重により降下移動可能なストッパが設けられており、
脚立として使用される際にはストッパが退避位置に配置されており、梯子として使用される際にはストッパが干渉位置に配置されている、梯子兼用脚立。
【請求項2】
前記一方の梯子体に、ストッパを退避位置および干渉位置のそれぞれに保持するとともに両位置間のストッパの降下移動を案内するストッパホルダが設けられている、請求項1記載の梯子兼用脚立。
【請求項3】
ストッパホルダが、動作機構の所定部分に設けられた第1ホルダ部と、前記一方の梯子体における第1ホルダ部に近接する非可動部分に設けられた第2ホルダ部とによって構成されている、請求項2記載の梯子兼用脚立。
【請求項4】
ストッパが球状体よりなる、請求項1記載の梯子兼用脚立。
【請求項5】
前記一方の梯子体が、2本の支柱と、両支柱間に段状に渡し止められた複数本の踏桟と、各支柱にスライド自在に連結されて前記一方の梯子体の脚を構成している伸縮脚部材と、伸縮脚部材を支柱に対して任意のスライド位置でロックしうるロック機構と、ロック機構から離れた位置で操作力が加えられることによりロック機構による伸縮脚部材のロックを解除しうるように動作する遠隔操作機構とを備えており、
前記動作機構が遠隔操作機構よりなり、前記ストッパにより、梯子として使用される際の遠隔操作機構の動作が阻止される、請求項1記載の梯子兼用脚立。
【請求項6】
ロック機構が、伸縮脚部材にその長さ方向に沿って形成されている被係止部と、前記一方の梯子体の下部に設けられかつ伸縮脚部材の被係止部と係合するロック状態および被係止部との係合が解除されるロック解除状態の間で切り替え可能に動作する係止部材とを有しており、
遠隔操作機構が、支柱に沿って設けられかつ長さ方向に移動可能な伝動部材と、前記一方の梯子体および/または伝動部材におけるロック機構の係止部材よりも上方位置に設けられかつ所定の操作により伝動部材を長さ方向の一方に移動させうるように動作する操作部と、操作部を操作することによる伝動部材の動作をロック機構の係止部材に伝達して係止部材をロック解除状態に切り替えるように動作する下部伝達部とを有しており、
前記ストッパが、梯子として使用される際に伝動部材、操作部、下部伝達部および係止部材のうちいずれか1つの動作と干渉しうる干渉位置に配置されるように設けられている、請求項5記載の梯子兼用脚立。
【請求項7】
前記一方の梯子体が、2本の支柱と、両支柱間に段状に渡し止められた複数本の踏桟と、各支柱にスライド自在に連結されて前記一方の梯子体の脚を構成している伸縮脚部材と、伸縮脚部材を支柱に対して任意のスライド位置でロックしうるロック機構とを備えており、
ロック機構が、伸縮脚部材にその長さ方向に沿って形成されている被係止部と、前記一方の梯子体の下部に設けられかつ伸縮脚部材の被係止部と係合するロック状態および被係止部との係合が解除されるロック解除状態の間で切り替え可能に動作する係止部材とを有しており、
前記動作機構がロック機構よりなり、前記ストッパにより、梯子として使用される際の係止部材のロック解除状態への切り替え動作が阻止される、請求項1記載の梯子兼用脚立。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2つの梯子体の上端部どうしがヒンジ金具により開閉自在に連結されてなり、一方の梯子体を上下反転するように回動させることによって梯子としても使用可能な梯子兼用脚立に関する。
【背景技術】
【0002】
梯子兼用脚立として、例えば下記特許文献1に開示されているように、各梯子体が、2本の支柱および両支柱間に段状に渡し止められた複数本の踏桟に加えて、各支柱にスライド自在に連結されて梯子体の脚を構成している伸縮脚部材と、伸縮脚部材を支柱に対して任意のスライド位置でロックしうるロック機構と、ロック機構から離れた上方位置で操作力が加えられることによりロック機構による伸縮脚部材のロックを解除しうる遠隔操作機構とを備えているものが知られている。
ロック機構は、例えば、伸縮脚部材にその長さ方向に沿って形成されている被係止部と、梯子体の下部に設けられかつ伸縮脚部材の被係止部と係合するロック状態および被係止部との係合が解除されるロック解除状態の間で切り替え可能に動作する係止部材とを有している。
また、遠隔操作機構は、例えば、支柱に沿って設けられかつ長さ方向に移動可能な伝動部材と、梯子体におけるロック機構の係止部材よりも上方位置(例えば下から3段目の踏桟の下部や背部)に設けられかつ所定の操作により伝動部材を長さ方向の一方に移動させうるように動作する操作部と、操作部を操作することによる伝動部材の動作をロック機構の係止部材に伝達して係止部材をロック解除状態に切り替えるように動作する下部伝達部とを有している。
【0003】
ここで、梯子兼用脚立の場合、梯子として使用する際に上下反転させられた梯子体において、遠隔操作機構を操作するための操作部が誤って操作されると、先端上向きの伸縮脚部材のロックが不用意に解除されて伸縮するおそれがあった。
そこで、上記課題を解決する手段として、下記特許文献1に開示されているように、遠隔操作機構に揺動ストッパを設け、この揺動ストッパにより、梯子として使用される際に上下反転させられた梯子体の遠隔操作機構の動作を阻止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-167693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、伸縮脚部材のロック機構やその遠隔操作機構といった動作機構を備えている梯子兼用脚立において、梯子として使用される際に上下反転させられた梯子体の動作機構が不用意に動作するのを阻止するための手段を、動作機構の様々な構成に応じてより広範に適用できるようにして、その安全性をより一層高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の課題を達成するために、以下の態様からなる。
【0007】
1)2つの梯子体の上端部どうしがヒンジ金具により開閉自在に連結されてなり、一方の梯子体を上下反転するように回動させることによって梯子としても使用可能な梯子兼用脚立であって、
前記一方の梯子体に、操作力が加えられることにより所定の動作を行う動作機構が設けられているとともに、動作機構の動作を阻止しない退避位置と動作機構の動作を阻止しうる干渉位置との間で自重により降下移動可能なストッパが設けられており、
脚立として使用される際にはストッパが退避位置に配置されており、梯子として使用される際にはストッパが干渉位置に配置されている、梯子兼用脚立。
【0008】
2)前記一方の梯子体に、ストッパを退避位置および干渉位置のそれぞれに保持するとともに両位置間のストッパの降下移動を案内するストッパホルダが設けられている、前記1)の梯子兼用脚立。
【0009】
3)ストッパホルダが、動作機構の所定部分に設けられた第1ホルダ部と、前記一方の梯子体における第1ホルダ部に近接する非可動部分に設けられた第2ホルダ部とによって構成されている、前記1)または2)の梯子兼用脚立。
【0010】
4)ストッパが球状体よりなる、前記1)~3)のいずれか1つの梯子兼用脚立。
【0011】
5)前記一方の梯子体が、2本の支柱と、両支柱間に段状に渡し止められた複数本の踏桟と、各支柱にスライド自在に連結されて前記一方の梯子体の脚を構成している伸縮脚部材と、伸縮脚部材を支柱に対して任意のスライド位置でロックしうるロック機構と、ロック機構から離れた位置で操作力が加えられることによりロック機構による伸縮脚部材のロックを解除しうるように動作する遠隔操作機構とを備えており、
前記動作機構が遠隔操作機構よりなり、前記ストッパにより、梯子として使用される際の遠隔操作機構の動作が阻止される、前記1)~4)のいずれか1つの梯子兼用脚立。
【0012】
6)ロック機構が、伸縮脚部材にその長さ方向に沿って形成されている被係止部と、前記一方の梯子体の下部に設けられかつ伸縮脚部材の被係止部と係合するロック状態および被係止部との係合が解除されるロック解除状態の間で切り替え可能に動作する係止部材とを有しており、
遠隔操作機構が、支柱に沿って設けられかつ長さ方向に移動可能な伝動部材と、前記一方の梯子体および/または伝動部材におけるロック機構の係止部材よりも上方位置に設けられかつ所定の操作により伝動部材を長さ方向の一方に移動させうるように動作する操作部と、操作部を操作することによる伝動部材の動作をロック機構の係止部材に伝達して係止部材をロック解除状態に切り替えるように動作する下部伝達部とを有しており、
前記ストッパが、梯子として使用される際に伝動部材、操作部、下部伝達部および係止部材のうちいずれか1つの動作と干渉しうる干渉位置に配置されるように設けられている、前記5)の梯子兼用脚立。
【0013】
7)前記一方の梯子体が、2本の支柱と、両支柱間に段状に渡し止められた複数本の踏桟と、各支柱にスライド自在に連結されて前記一方の梯子体の脚を構成している伸縮脚部材と、伸縮脚部材を支柱に対して任意のスライド位置でロックしうるロック機構とを備えており、
ロック機構が、伸縮脚部材にその長さ方向に沿って形成されている被係止部と、前記一方の梯子体の下部に設けられかつ伸縮脚部材の被係止部と係合するロック状態および被係止部との係合が解除されるロック解除状態の間で切り替え可能に動作する係止部材とを有しており、
前記動作機構がロック機構よりなり、前記ストッパにより、梯子として使用される際の係止部材のロック解除状態への切り替え動作が阻止される、前記1)~4)のいずれか1つの梯子兼用脚立。
【発明の効果】
【0014】
この発明の梯子兼用脚立によれば、梯子として使用される際に上下反転させられた梯子体において、同梯子体に備えられた動作機構(特に伸縮脚部材のロック機構やその遠隔操作機構)が不用意に動作するのをストッパによって阻止できるので、使用時の安全性を高めることができる。
また、ストッパは、梯子体の上下の向きに応じて自重により降下移動することで退避位置または干渉位置に自動的に配置されるので、特別な操作を要することなく確実に機能しうる上、動作機構の構成等に応じてサイズや設置箇所を比較的容易に変更できるため、動作機構付き梯子兼用脚立に対してより広範に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明による第1の実施形態の梯子兼用脚立において、伸縮脚部材がロックされた状態の一方の梯子体を示すものであって、(a)は部分正面図であり、(b)は同垂直断面図である。
図2】伸縮脚部材がロック解除された状態の同梯子体を示すものであって、(a)は部分正面図であり、(b)は垂直断面図である。
図3】同梯子体における遠隔操作機構の下部およびロック機構を示す斜視図である。
図4】同梯子体における遠隔操作機構の上部およびロック機構を分解して示す斜視図である。
図5】同梯子体における遠隔操作機構の下部およびロック機構の垂直断面図であって、伸縮脚部材がロックされた状態を示している。
図6】同梯子体における遠隔操作機構の下部およびロック機構の垂直断面図であって、伸縮脚部材がロック解除された状態を示している。
図7】同梯子体における遠隔操作機構の下部を分解して示す斜視図である。
図8】同梯子体におけるロック機構および遠隔操作機構の下部を示す垂直断面図であって、(a)は遠隔操作機構によるロック機構のロック解除操作が行われていない状態を示し、(b)は遠隔操作機構によるロック機構のロック解除操作が行われた状態を示し、(c)は同梯子体が上下反転させられるとともに、遠隔操作機構の操作部に対して操作力が加えられた時の状態を示している。
図9図8(C)のIX-IX線に沿う拡大断面図である。
図10】同梯子体が上下反転させられて干渉位置にある時のストッパの状態を示す部分拡大斜視図である(支柱、伝動部材、伸縮脚部材は図示を省略した)。同図中、二点鎖線Aで囲まれた部分は、二点鎖線aで囲まれた部分を更に拡大して示したものである。
図11】この発明による第2の実施形態の梯子兼用脚立において、伸縮脚部材がロックされた状態の一方の梯子体のロック機構および遠隔操作機構の下部を示す垂直断面図である。
図12】伸縮脚部材がロック解除された状態の同梯子体のロック機構および遠隔操作機構の下部を示す垂直断面図である。
図13】同梯子体における遠隔操作機構の下部を分解して示す斜視図である。
図14】同梯子体におけるロック機構および遠隔操作機構の下部を示す垂直断面図であって、(a)は遠隔操作機構によるロック機構のロック解除操作が行われていない状態を示し、(b)は遠隔操作機構によるロック機構のロック解除操作が行われた状態を示し、(c)は同梯子体が上下反転させられるとともに、遠隔操作機構の操作部に対して操作力が加えられた時の状態を示している。
図15】この発明による第3の実施形態の梯子兼用脚立において、一方の梯子体の遠隔操作機構の上部を分解して示す斜視図である。
図16】同梯子体における遠隔操作機構の上部を示す垂直断面図であって、(a)は脚立として使用される場合において遠隔操作機構の操作部が操作されていない非動作時の状態を示し、(b)は脚立として使用される場合において遠隔操作機構の操作部が操作された動作時の状態を示し、(c)は梯子(上下反転状態)として使用される場合において遠隔操作機構の動作部が操作されていない非動作時の状態を示し、(d)は梯子として使用される場合において遠隔操作機構の操作部に操作力を加えた時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
図1図10は、この発明の第1の実施形態に係る梯子兼用脚立を示したものである。
なお、この実施形態に関する以下の説明において、図1(b)、図2(b)の各左側を「前」、同各右側を「後」と言い、また、「左右」は前から見た場合の左右(例えば図1(a)、図2(a)、図5図6の各左右)を言うものとする。
図1図4に構成の一部を示したように、梯子兼用脚立(1)は、前後2つの梯子体(2)の上端部どうしがヒンジ金具(図示略)により開閉自在に連結されてなる。この梯子兼用脚立(1)は、一方の梯子体(2)を上下反転するように回動させることによって、梯子としても使用可能である。
なお、2つの梯子体(2)は、前後対向状に配置されている点を除いて実質的に同形同大のものであるので、以下では、一方の梯子体(2)のみについて、図面に基づいて説明を行うこととする。また、梯子体(2)は、その左右幅中心線を通る面を対称面として左右対称形であるので、各図は梯子体(2)の左部のみを表しており、梯子体(2)の右部については図示を省略している。
【0017】
梯子体(2)は、左右2本の支柱(3)と、両支柱(3)間に上下方向に間隔をおいて段状に渡し止められた複数本(例えば5本)の踏桟(4A)(4B)(4C)とを備えている。
最上段の踏桟(図示略)は、梯子兼用脚立(1)を脚立として使用する際、その天板を構成する。
また、2つの梯子体(2)における左側の支柱(3)の上部どうしの間および右側の支柱(3)の上部どうしの間には、それぞれ開き止め金具(図示略)が渡し止められている。
【0018】
梯子体(2)の左右各支柱(3)は、通常、金属形材(好適には、アルミニウム合金形材)よりなる。また、図示の支柱(3)は、左右方向内方に開口した略コ字形の横断面を有する中空状のものとなされている。
各踏桟(4A)(4B)(4C)も、通常、金属形材(好適には、アルミニウム合金形材)よりなる。また、図示の踏桟のうち最下段の踏桟(4A)および下から2段目の踏桟(4B)は、それぞれ略四角形の横断面を有する中空状のものとなされている。また、下から3段目の踏桟(以下、「上部踏桟」という場合がある。)(4C)は、下方に開口した略コ字形の横断面を有する中空状のものとなされている。図示は省略したが、各踏桟(4A)(4B)(4C)の上面(脚立時の両梯子体(2)の踏面となる面、梯子時の下側の梯子体(2)の踏面となる面)および下面(梯子時の上側の梯子体(2)の踏面となる面)には、左右長さ方向に沿ってのびる複数の滑り止め用凸条部および/または凹溝部が前後幅方向に並んで形成されている。
最下段の踏桟(4A)および下から2段目の踏桟(4B)の左右各端部は、それぞれブラケット(41)(42)を介して、左右各支柱(3)に取り付けられている。下から3段目の踏桟(上部踏桟)(4C)の左右各端部は、左右各支柱(3)の内部に差し込まれて、例えばリベットにより、支柱(3)の前後側壁に直接取り付けられている。
なお、梯子体(2)を構成する支柱(3)および踏桟(4A)(4B)(4C)の形状や取付構造等は、上記態様に限定されず、適宜変更可能である。
【0019】
また、各梯子体(2)には、上記構成に加えて、伸縮脚装置(5)が設けられている。伸縮脚装置(5)は、左右各支柱(3)にスライド自在に連結されて梯子体(2)の脚を構成している左右2本の伸縮脚部材(6)と、各伸縮脚部材(6)を各支柱(3)に対して任意のスライド位置でロックしうる左右2つのロック機構(7)と、左右のロック機構(7)を遠隔操作するための遠隔操作機構(8)とよりなる。
この発明の梯子兼用脚立(1)において、各梯子体(2)には、さらに、遠隔操作機構(8)の動作を阻止しない退避位置と、遠隔操作機構(8)の動作を阻止しうる干渉位置との間で、自重により降下移動可能なストッパ(19)が設けられている。梯子兼用脚立(1)が脚立として使用される際、各梯子体(2)のストッパ(19)は、退避位置に配置されている。一方、梯子兼用脚立(1)が梯子として使用される際、上下反転させられた上側の梯子体(2)のストッパ(19)は、干渉位置に配置されている。
なお、梯子として使用される際に上下反転させられる梯子体(上側となる梯子体)が一方の梯子体に限定される態様の梯子兼用脚立の場合、同一方の梯子体のみにストッパを設けるようにしてもよい。
【0020】
伸縮脚部材(6)は、支柱(3)内にその下端からスライド自在に挿入されている。伸縮脚部材(6)の下端部には、使用時の安定性を高めるための接地部(61)が設けられている。伸縮脚部材(6)は、通常、金属形材(好適には、アルミニウム合金形材)により構成されている。
なお、伸縮脚部材は、図示のように中空状の支柱にスライド自在に挿入される構成とする他、支柱の外側(例えば左右方向外側)にスライド自在に連結されるものであってもよい。
【0021】
ロック機構(7)は、図3および図5図7に詳しく示すように、各伸縮脚部材(6)にその長さ方向に沿って形成されている被係止部(71)と、梯子体(2)の下部に設けられかつ各伸縮脚部材(6)の被係止部(71)と係合するロック状態および被係止部(71)との係合が解除されるロック解除状態の間で切り替え可能に動作する係止部材(72)とを有している。
被係止部(71)は、例えば、図示のように各伸縮脚部材(6)の左右方向内側面に設けられかつ伸縮脚部材(6)の長さ方向に並んだ多数の歯(711)を有するラック(71)によって構成することができる。
係止部材(72)は、梯子体(2)における各支柱(3)の下端部付近、例えば図示のように最下段の踏桟(4A)の左右各端部を支柱(3)に取り付けるためのブラケット(41)に、前後方向にのびる揺動軸(720)を中心として揺動自在に取り付けられる。
より詳細には、下側ブラケット(41)は、支柱(3)の前側壁および最下段の踏桟(4A)の前側壁の端部にまたがって取り付けられている前ブラケット部(41a)と、支柱(3)の後側壁および最下段の踏桟(4A)の後側壁の端部にまたがって取り付けられている後ブラケット部(41b)と、最下段の踏桟(4A)の上方において前ブラケット部(41a)および後ブラケット部(41b)を連結するようにこれらと一体的に設けられかつ支柱(3)に向かって開口した略コ字形の水平断面を有する保持枠部(41c)とを有している。そして、係止部材(72)の揺動軸(720)が、下側ブラケット(41)の保持枠部(41c)の前後側壁にまたがって取り付けられている。
なお、保持枠部は、図示のようにブラケットと一体的に設ける他、ブラケットとは別体の保持枠部材によって構成し、同部材を支柱(2)および/または最下段の踏桟(4A)に連結固定する態様としてもよい。
係止部(721)は、揺動軸(720)が挿通されている水平筒状の中心部(723)から左右方向外方(支柱側)に向かって斜め下向きにのびており、その先端部分に、ラック(71)の歯(711)と噛み合わせられる複数の歯(721a)が形成されている。
この係止部材(72)は、揺動軸(720)を中心として所定のロック方向(図5図6の時計回り方向)に揺動させられることによって、係止部(721)の歯(721a)がラック(71)の歯(711)と係合するロック状態となされ、ロック方向とは逆のロック解除方向(図5図6の反時計回り方向)に揺動させられることによって、係止部(721)の歯(721a)とラック(71)の歯(711)との係合が外れるロック解除状態となされるものであり、両者の間で切り替え可能である。
また、係止部材(72)は、後述する遠隔操作機構(8)の下部伝達部(11)の一部を構成する第1係合部(724)を有している。第1係合部(724)は、係止部材(72)の中心部(723)から左右方向内方(支柱(3)と反対方向)に向かって突出した上係合凸部(725)と、上係合凸部(725)の下方に所定の間隔をおいて設けられた下係合凸部(726)とを有している。下係合凸部(726)は、上係合凸部(725)の下面よりなる第1係合面(725a)と向かい合う第2係合面(726a)を有しているとともに、第2係合面(726a)と所定の鈍角をなす第3係合面(726b)を有している。
なお、図示は省略したが、係止部材(72)には、揺動軸(720)の前後端部のうち少なくともいずれか一方に連結固定されて保持枠部(41c)の前後側壁の外側に配置される操作ハンドル(例えば操作レバー)が備えられていてもよい。操作ハンドルに対して所定の操作力を加えることにより、係止部材(72)を、係止部(721)の歯(721a)がラック(71)の歯(711)から外れる方向(図3等の反時計回り方向)に揺動させて、ロック解除状態に切り替えることができる。
ロック機構は、図示の態様には限定されず、適宜変更可能である。例えば、係止部材は、図示のように最下段の踏桟(4A)の上方に設ける他、同踏桟(4A)の内部に組み込むか、あるいは同踏桟(4A)の下方に設けてもよい。
【0022】
遠隔操作機構(8)は、各支柱(3)に沿って設けられかつ長さ方向に移動可能な左右2つの伝動部材(昇降部材)(9)と、梯子体(2)における左右のロック機構(7)の係止部材(72)よりも上方位置に設けられかつ所定の操作により伝動部材(9)を長さ方向の一方に移動させうるように動作する操作部(10)と、操作部(10)を操作することによる伝動部材(9)の動作を各ロック機構(7)の係止部材(72)に伝達して係止部材(72)をロック解除状態に切り替えるように動作する下部伝達部(11)とを有している。
操作部(10)は、左右2つの伝動部材(9)に対応して少なくとも1つ設けられていれば足りるが、複数の高さ位置(例えば、伝動部材(9)の上部および長さ中間部に対応する2つの高さ位置)に操作部(10)が設けられていてもよい。
この実施形態の操作部(10)は、梯子体(2)における左右のロック機構(7)の係止部材(72)よりも上方位置に設けられかつ操作力が加えられることにより所定方向に動作可能な操作部材(10)よりなる。これに伴い、遠隔操作機構(8)には、さらに、操作部材(10)の動作を伝動部材(9)に伝達して伝動部材(9)を長さ方向の一方に移動させる上部伝達部(12)が設けられている。また、この実施形態では、1つの操作部材(10)によって左右の伝動部材(9)を動作させうるようになっている。但し、左右の伝動部材(9)を、それぞれに対応した左右2つの操作部材によって動作させる構成としても良い。
なお、操作部は、各伝動部材(9)の上部および/または長さ中間部に、同部分と一体的に設けられていてもよく、その場合、上部伝達部は省略可能である。
また、遠隔操作機構は、上記態様には限定されず、適宜変更可能である。例えば、遠隔操作機構の別態様として、図示は省略したが、各支柱(3)に沿って設けられかつ周方向に回転可能な左右2つの伝動部材(回転部材)と、梯子体(2)における左右のロック機構(7)の係止部材(72)よりも上方位置に設けられかつ所定の操作により伝動部材を回転させうる操作部と、各伝動部材の回転動作を各ロック機構(7)の係止部材(72)に伝達して係止部材(72)をロック解除状態に切り替える下部伝達部とを有しているものが挙げられる。
さらに、この実施形態の梯子兼用脚立(1)においては、遠隔操作機構(8)に、下部伝達部(11)を介して、ロック機構(7)の係止部材(72)をロック状態となる方向に付勢する付勢手段(13)が備えられている。なお、付勢手段については、これをロック機構(7)自体に設けて、係止部材(72)をロック状態となる方向に付勢する構成としても構わない。
【0023】
伝動部材(9)は、支柱(2)の長さ方向に沿ってのびる長尺材、例えば図示のような略縦長板状体よりなるものであって、所定の保持手段により、各支柱(3)の左右方向内側部に沿って上下移動自在に保持されている。伝動部材(9)の前後側縁部は、左右方向外方に折り曲げられるとともに先端どうしが互いに向かい合うように折り返されている(図3参照)。
伝動部材(9)の保持手段としては、例えば、支柱(3)に取り付けられた複数(図では上下2つ)のサポート部材(14A)(14B)を用いることができる。各サポート部材(14A)(14B)は、平面より見て左右方向外方(支柱側)に開口した略コ字形の折曲板片よりなり、その前後側壁の先端部が支柱(3)の前後側壁にリベット等によって固定されている。そして、支柱(3)の左右方向内側部とサポート部材(14A)(14B)との間に形成された空隙部に、伝動部材(9)が上下移動自在に挿通されている。上側のサポート部材(14B)は、支柱(3)における上部踏桟(4C)と下から2段目の踏桟(4B)との間の高さ位置に取り付けられている。下側のサポート部材(14A)は、支柱(3)における最下段の踏桟(4A)と下から2段目の踏桟(4B)との間の高さ位置、より詳細には、下側ブラケット(41)の保持枠部(41c)の上方位置に取り付けられている。
また、各支柱(3)の左右方向内側部と下から2段目の踏桟(4B)の端部との間に、伝動部材(9)を挿通させるための空隙部が形成されている(図1図2参照)。
【0024】
図4に詳しく示すように、操作部を構成する操作部材(10)は、左右方向にのびる長尺材によって形成されており、上部踏桟(4C)の下方に開口した凹所内に上下移動自在に配置されている。より詳細には、図示の操作部材(10)は、横断面方形の筒状体よりなる。
操作部材(10)は、左右2つの伝動部材(9)を動作させるための動作部として機能しうるように、その両端部が左右の伝動部材(9)の上端部近傍に配置されるような長さを有している。
なお、操作部材は、その長さの中間位置で左右2つに分割されて、分割された左右2つの操作部材により、左右の伝動部材を個別に動作させる構成としても良い。その場合、例えば、上部踏桟の長さ中間部付近に、左右2つの操作部材の左右方向内端部を保持するためのブラケットを設けるようにすればよい。
【0025】
上部伝達部(12)は、操作部材(10)と伝動部材(9)とを連動可能に連結する上部伝達部材(12)によって構成されている。
図4に詳しく示すように、上部伝達部材(12)は、正面より見て略倒立L形のものであって、その水平部(121)が操作部材(10)の端部内に挿入されているとともに、その垂下部(122)が伝動部材(9)の上端部にビス等によって連結固定されている。
上部踏桟(4C)の下方開口を通じて操作部材(10)に上向きの操作力を加える(手指等で操作部材(10)の下壁を上向きに押圧する)と、操作部材(10)が上方に移動させられるので、これに連動して、上部伝達部材(12)および伝動部材(9)が上方に移動させられる。この実施形態では、左右のロック機構(7)の係止部材(72)を個別にロック解除したい場合には、操作部材(10)の左右両側部分のうちロック解除したいロック機構(7)と同じ側の部分のみに操作力を加えればよく、また、左右のロック機構(7)の係止部材(72)を同時にロック解除したい場合には、操作部材(10)の左右両側部分または長さ中間部に操作力を加えればよい。
なお、操作部材の構成は、上記態様には限定されず、適宜変更可能である。例えば、上部踏桟(4C)の略左半部および略右半部それぞれの背面に左右方向にのびる軸を中心として揺動自在にかつ互いに近接して並ぶように取り付けられた左右2つの操作部材によって、操作部材を構成してもよい。この場合、操作部材の揺動動作を伝動部材が上下移動しうるように伝達する上部伝達部(例えばカム機構)を、各操作部材の左右方向外端部および伝動部材の上端部に設ければ良い。
【0026】
下部伝達部(11)は、係止部材(72)の第1係合部(724)と、伝動部材(9)の下端部に連結される連結部(111)を有しているとともに第1係合部(724)と係合して係止部材(72)をロック状態とロック解除状態との間で切替可能に動作させうる第2係合部(112)を有している下部伝達部材(110)とによって構成されている。
図示の下部伝達部材(110)は、互いに連結されて一体化された第1下部伝達部材(110A)および第2下部伝達部材(110B)よりなる。
【0027】
第1下部伝達部材(110A)は、伝動部材(9)の下端部に連結される連結部(111)と、連結部(111)の下側に連結部(111)と一体的に設けられたストッパ収容部(113)とを備えている。
連結部(111)は、正面より見て左右方向外方(支柱側)に開口した略コ字形のものであって、その上下各壁(111a)(111b)の先端縁には、横断面クランク状の係止爪(111c)が形成されている。これらの係止爪(111c)が、伝動部材(9)の下端部に形成された上下2つの係止孔(91)の縁に係り止められることにより、第1下部伝達部材(110A)が伝動部材(9)の下端部に連結固定されている。
ここで、図3および図5図7に示すように、伝動部材(9)の下部を保持するための下側サポート部材(14A)には、その前後側壁を連結する中央壁(140)の前後幅中央部から左右方向内方に突出した内方突出部(141)が設けられている。内方突出部(141)は、頂壁(141a)と、頂壁(141a)の前後側縁から下方にのびる前後2つの垂下壁(141b)とを有している。前後各垂下壁(141b)は、平面より見て、その先端縁が頂壁(141a)の先端縁よりも左右方向内方にやや突出させられている。前後各垂下壁(141b)は、その下部の先端縁側部分が方形状に切り欠かれている。前後各垂下壁(141b)の下端縁(142)は、前後方向外方に向かって折り曲げられている。中央壁(140)における前後垂下壁(141b)どうしの間の部分は、その略下半部が方形状に切り欠かれている。
下側サポート部材(14A)の内方突出部(141)の頂壁(141a)は、第1下部伝達部材(110A)の上下壁(111a)(111b)間に配置されるようになっている。そして、内方突出部(141)の頂壁(141a)と、第1下部伝達部材(110A)の下壁(111b)との間に、付勢手段(13)を構成する圧縮コイルばね(13)が介在されている。この圧縮コイルばね(13)のばね弾性力が第1下部伝達部材(110A)の下壁(111b)に対して下向きに作用することにより、係止部材(72)がロック状態となる揺動方向に付勢される。
第1下部伝達部材(110A)のストッパ収容部(113)は、その前後両側部分が連結部(111)よりも前後方向外側に張り出すように設けられているとともに、前後両張出し部分にストッパ収容凹所(114)が形成されている。ストッパ収容凹所(114)は、垂直な底面(114a)の周囲に、下側壁(114b)と、下側壁(114b)の左右方向内端縁から上方にのびる内側壁(114c)と、内側壁(114c)の上端縁から左右方向外方に向かって斜め上方にのびる第1傾斜壁(114d)と、下側壁(114b)の左右方向長さ中間位置から左右方向外方に向かって斜め上方にのびる第2傾斜壁(114e)と、第2傾斜壁(114e)の上端縁から左右方向外方に向かってのびる中間段差壁(114f)と、下側壁(114b)の左右方向外端縁から上方にのびる外側壁(114g)とを有している。
第2傾斜壁(114e)の高さは、内側壁(114c)の高さの半分程度となされている。従って、中間段差壁(114f)も、内側壁(114c)の高さの中程付近の高さに配置されている。
ストッパ収容凹所(114)の底面(114a)は、連結部(111)の下壁(111b)の前後各側縁よりも、前後方向内方に入り込んでいる。つまり、連結部(111)の下壁(111b)の前後各側縁部によって、ストッパ収容凹所(114)の上側壁が構成されている。
ストッパ収容凹所(114)の外側壁(114g)、および、下側壁(114b)における第2傾斜壁(114e)と外側壁(114g)との間の部分は、平面より見てこれらの前後各側縁が連結部(111)の下壁(111b)の前後各側縁とほぼ一致するような前後幅を有している。一方、ストッパ収容凹所(114)の下側壁(114b)における第2傾斜壁(114e)と内側壁(114c)との間の部分、内側壁(114c)、第1傾斜壁(114d)、第2傾斜壁(114e)および中間段差壁(114f)は、連結部(111)の下壁(111b)の前後各側縁よりも前後方向に大きく張り出すような前後幅を有している。
ストッパ収容凹所(114)の底面(114a)には、下側壁(114b)における内側壁(114c)と第2傾斜壁(114e)との間の中間位置から、外側壁(114g)における中間段差壁(114f)と連結部(111)の下壁(111b)との間の中間位置に向かって略く字形に屈曲してのびる凸条部(114h)が形成されている。凸条部(114h)は、平坦な頂面(垂直面)を有する横断面略方形状のものとなされている。凸条部(114h)の高さは、外側壁(114g)の底面(114a)からの突出高さよりも小さいもの(図では半分程度)となされている。
外側壁(114g)の上下高さ中間部は、略方形状に切り欠かれており、同切欠部の垂直面は、凸条部(114g)の頂面とほぼ面一となされている。
外側壁(114g)の下部(切欠部よりも下側部分)には、連結部(111)の下側の係止爪(111c)と上下に向かい合うように左右方向外方に突出した外方凸部(114i)が形成されている。
なお、ストッパ収容凹所(114)は、ストッパ収容部(113)の前後両側部分のうち少なくともいずれか一方に設けられていれば良いが、左右の遠隔操作機構(8)の部品の共通化を図るためには、第1下部伝達部材(110A)が対称形となるように、ストッパ収容部(113)の前後両側部分にストッパ収容凹所(114)を設けるのが好ましい。
また、第1下部伝達部材(110A)におけるストッパ収容部(113)の第1傾斜壁(114d)の上部には、第2下部伝達部材(110B)と連結するためのボルトが挿通される筒状部(115)が一体的に形成されている。
【0028】
第2下部伝達部材(110B)は、第1下部伝達部材(110A)のストッパ収容部(113)に連結されてストッパ収容凹所(114)の前後開口を覆うカバー部(116)と、カバー部(116)の下側にカバー部(116)と一体的に設けられた伝達部(117)とを備えている。
カバー部(116)は、側面より見て略U形のものであって、その前後側壁(116a)の上端縁における左右方向内端部に、ボルト挿通孔を有する上方凸部(116b)がそれぞれ設けられている。そして、第2下部伝達部材(110B)の前後2つの上方凸部(116b)および第1下部伝達部材(110A)の筒状部(115)にまたがって挿通されたボルトおよび同ボルト先端に取り付けられたナットにより、第1下部伝達部材(110A)および第2下部伝達部材(110B)が連結一体化されて、下部伝達部材(110)が構成されている。なお、2つの下部伝達部材の連結手段は、上記態様には限定されず、適宜変更可能である。
第2下部伝達部材(110B)の伝達部(117)は、カバー部(116)の底壁(116c)下面から下方にのびる前後2つの垂下壁(118)と、両垂下壁(118)にまたがって取り付けられた前後に長い係合軸(112)とを備えている。両垂下壁(118)は、下側ブラケット(41)の保持枠部(41c)内にその上方開口から挿入されている。両垂下壁(118)の左右方向外側部は、これらの上端縁部分を除いて略方形状に切り欠かれている。これにより、両垂下壁(118)の下側部分は、上側部分と比べて幅狭となされている。
係合軸(112)は、第2係合部(112)を構成するものであって、係止部材(72)の第1係合部(724)を構成する上係合凸部(725)および下係合凸部(726)間に配置される。
【0029】
図5に示すように、係止部材(72)がロック状態にある時には、第1係合部(724)の第3係合面(726b)と、第2係合部(係合軸)(112)とが、左右に並んで近接または当接するように配置されている。また、この際、下側ブラケット(41)の保持枠部(41c)の上端縁に、第2下部伝達部材(110B)におけるカバー部(116)の底壁(116c)下面の縁が近接(または当接)させられているとともに、圧縮コイルばね(13)のばね弾性力により、第2下部伝達部材(110B)が下向きに付勢されている。以上の構成によれば、係止部材(72)のロック状態が確実に保持される。
一方、操作部材(10)に対して上向きの操作力が加えられると、操作部材(10)、上部伝達部材(12)、伝動部材(9)および下部伝達部材(110)が連動して上方に移動させられ、下部伝達部材(110)の第2係合部(112)が係止部材(72)の第1係合面(725a)を下方から押圧する。これにより、係止部材(72)が、ロック解除方向(図5図6の反時計回り方向)に揺動して、図6に示すように、被係止部(71)との係合が解除されるロック解除状態となされる。
その後、操作部材(10)に対して操作力を加えるのを中止すると、圧縮コイルばね(13)のばね弾性力が下向きに作用して、下部伝達部材(110)、伝動部材(9)、上部伝達部材(12)および操作部材(10)が連動して下方に移動させられる。これに伴い、下部伝達部材(110)の第2係合部(112)が下方に移動して、係止部材(72)の第2係合面(726a)を上方から押圧すると、係止部材(72)がロック方向(図5図6等の時計回り方向)に揺動する。更に下方に移動した第2係合部(112)は、次いで係止部材(72)の第3係合面(726b)を下向きに押圧し、それによって係止部材(72)が被係止部(71)と係合する位置まで揺動させられ、係止部材(72)が図5に示すロック状態に戻される。
なお、第1係合部および第2係合部の構成は、上記態様には限定されず、適宜変更可能である。
【0030】
ストッパ(19)の形状は、梯子体(2)の姿勢(上下の向き)の変化に応じて、後述するストッパホルダ(15)内で自重により降下移動可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、球状体、円柱状体、円筒状体等が挙げられる。好適には、ストッパ(19)は、図示のような球状体によって構成される。また、ストッパ(19)の材質も、特に限定されないが、比重が大きくかつ強度に優れた鋼等の金属製とすれば、サイズを小さくしても確実に動作(降下移動)する上、破損等のおそれもない点で好ましい。
ストッパ(19)は、梯子兼用脚立(1)が脚立として使用される際には、遠隔操作機構(8)の動作を阻止しない退避位置にあり(図5図6図8(a)(b)参照)、一方、梯子兼用脚立(1)が脚立として使用される際には、遠隔操作機構(8)の動作を阻止しうる干渉位置にある(図8(c)、図9図10参照)。
この実施形態の梯子兼用脚立(1)において、ストッパ(19)は、1つの遠隔操作機構(8)に対して1つ設けられている。すなわち、ストッパ(19)は、第1下部伝達部材(110A)の前後2つのストッパ収容凹所(114)のうち一方(図では前側)のストッパ収容凹所(114)のみに動作可能に収容されている。なお、1つの遠隔操作機構に対して複数のストッパを設けることも可能であるが、動作のタイミングを同期させる必要性やコスト等を考慮すると、ストッパは1つであるのが好ましい。
【0031】
梯子体(2)には、ストッパ(19)を退避位置および干渉位置のそれぞれに保持するとともに両位置間のストッパ(19)の降下移動を案内するストッパホルダ(15)が設けられている。ストッパホルダ(15)は、遠隔操作機構(8)の所定部分に設けられた第1ホルダ部(151)と、梯子体(2)における第1ホルダ部(151)に近接する非可動部分に設けられた第2ホルダ部(152)とによって構成されている。
この実施形態において、ストッパホルダ(15)は、第1下部伝達部材(110A)のストッパ収容部(113)、第2下部伝達部材(110B)のカバー部(116)、および、下側サポート部材(14A)の内方突出部(141)によって構成されている。より詳細には、第1下部伝達部材(110A)におけるストッパ収容部(113)のストッパ収容凹所(114)および第2下部伝達部材(110B)のカバー部(116)の前後側壁(116a)によって、第1ホルダ部(151)が構成されているとともに、下側サポート部材(14A)の内方突出部(141)における前後垂下壁(141b)の下端縁(142)によって第2ホルダ部(152)が構成されている。なお、カバー部(116)の前後側壁(116a)は、ストッパ(19)の動作状態を外部から目視で確認できるように、透明または半透明の材料によって形成されていてもよい。
【0032】
次に、図8等を参照して、ストッパ(19)による遠隔操作機構(8)のロック解除動作の阻止機構を説明する。
図8(a)に示すように、梯子兼用脚立(1)が脚立として使用されている際、ストッパ(19)は、ストッパ収容凹所(114)の下側壁(退避位置決め用当接部)(114b)に当接する位置、すなわち、退避位置に配置されている。退避位置において、ストッパ(19)は、ストッパ収容凹所(114)の底面(114a)、内側壁(114c)および第2傾斜壁(114e)ならびにカバー部(116)の前側壁(または後側壁)(116a)によって四方を囲まれているので、同位置に確実に保持される。また、図8(b)に示すように、梯子兼用脚立(1)が脚立として使用されている際に、遠隔操作機構(8)を動作させてロック機構(7)により伸縮脚部材(6)のロックを解除した場合にも、ストッパ(19)は、退避位置に留まっており、遠隔操作機構(8)の動作に干渉しない。
一方、梯子兼用脚立(1)を梯子として使用するために、一方の梯子体(2)を上下反転するように回動させると、同梯子体(2)に設けられたストッパ(19)は、自重により、ストッパ収容凹所(114)の内側壁(114c)、第1傾斜壁(114d)、中間段差壁(114f)および凸条部(114h)ならびにカバー部(116)の前側壁(または後側壁)(116a)によって案内されながら降下移動(転動または摺動)して、図8(c)、図9および図10に示すように、上下反転した下側サポート部材(14A)の内方突出部(141)における前後垂下壁(141b)の下端縁(142)(干渉位置決め用第1当接部)およびストッパ収容凹所(114)の外側壁(114g)における切欠部の下側部分(外方凸部(114i)を有する側の部分)の左右方向内側コーナー部(114j)(干渉位置決め用第2当接部)に当接する位置、すなわち、干渉位置に配置される。ストッパ(19)が干渉位置にある状態において、例えば操作部材(10)に対して不用意に操作力が加えられたとしても、ストッパ収容凹所(114)の中間段差壁(動作阻止用当接部)(114f)にストッパ(19)が当接して下部伝達部材(110)の下方への移動、すなわち、遠隔操作機構(8)によるロック解除動作が阻止される。ここで、操作部材(10)に対して操作力が加えられていない状態において、ストッパ収容凹所(114)の中間段差壁(114f)(動作阻止用当接部)と前後垂下壁(141b)の下端縁(142)(干渉位置決め用第1当接部)との間の距離(間隔)からストッパ(19)の直径を引いた値(クリアランス)(d1)は、ロック解除操作を行うのに必要な下部伝達部材(110)の移動距離(変位量)よりも小さいものとなされ、より好ましくは、操作部材(10)対して操作力を加える前の位置から係止部材(72)をロック解除方向に揺動させる直前の位置までの下部伝達部材(110)の移動距離(変位量)(d2)よりも小さくなされる。具体的には、(d1)=約2~5mmとなされる。
また、梯子として使用した梯子兼用脚立(1)を再び脚立として使用するために、上側の梯子体(2)を上下反転するように回動させると、同梯子体(2)に設けられたストッパ(19)は、自重により、ストッパ収容凹所(114)の中間段差壁(114f)、第2傾斜壁(114e)、第1傾斜壁(114c)、内側壁(114b)および凸条部(114h)ならびにカバー部(116)の前側壁(または後側壁)(116a)によって案内されながら降下移動(転動または摺動)して、図8(a)に示す退避位置まで戻される。
【0033】
上記の通り、第1の実施形態の梯子兼用脚立(1)によれば、梯子として使用される際に上下反転させられた梯子体(2)において、同梯子体(2)に備えられた伸縮脚部材(6)のロック機構(7)を遠隔操作するための遠隔操作機構(8)が不用意に動作すること、すなわち、ロック機構(7)による伸縮脚部材(6)のロック状態が不用意に解除されることを、ストッパ(19)によって確実に阻止できるので、使用時の安全性が更に高められる。
また、ストッパ(19)は、梯子体(2)の姿勢(上下の向き)の変化に応じて自重により降下移動することで、退避位置または干渉位置に自動的に配置されるので、特別な操作を要することなく確実に機能しうるものであり、利便性に優れている。
さらに、ストッパ(19)として金属製の球状体を用いることにより、ストッパ(19)の自重による退避位置および干渉位置間での降下移動がより一層確実に行われて、動作の信頼性が向上する。しかも、金属製球状体よりなるストッパ(19)を用いた場合、動作性を損なうことなく、そのサイズを小さくできる上、ストッパ(19)を保持案内するためのストッパホルダ(15)もコンパクトに構成でき、ひいては、梯子兼用脚立(1)の全体重量も抑えられる。
また、ストッパホルダ(15)が、遠隔操作機構(8)の一部(下部伝達部材(110))よりなる第1ホルダ部(151)、および、梯子体(2)の所定の非可動部(下側サポート部材(14A))よりなる第2ホルダ部(152)によって構成されているので、ストッパ(19)の設置に伴う部品点数の増加が抑えられ、コストも抑えられる。
【0034】
[第2の実施形態]
図11図14は、この発明の第2の実施形態に係る梯子兼用脚立(1X)を示したものである。
この実施形態に関する以下の説明において、図11図12の紙面に向かって手前側を「前」、同奥側を「後」と言い、また、「左右」は前から見た場合の左右(図11図12の各左右)を言うものとする。
第2の実施形態の梯子兼用脚立(1X)は、以下の点を除いて、図1図10に示す第1の実施形態の梯子兼用脚立(1)と実質的に同一である。
すなわち、この実施形態の梯子兼用脚立(1X)では、ストッパ(19)が、ロック機構(7)による伸縮脚部材(6)をロック解除するための係止部材(72X)の動作を阻止しない退避位置と、係止部材(72X)の前記動作を阻止しうる干渉位置との間で自重により降下移動可能に設けられている。梯子兼用脚立(1X)が脚立として使用される際には、各梯子体(2)のストッパ(19)が退避位置に配置される。一方、梯子兼用脚立(1X)が梯子として使用される際には、上下反転させられた上側の梯子体(2)のストッパ(19)が干渉位置に配置される。
【0035】
図11に示すように、遠隔操作機構(8)の第1下部伝達部材(110A)には、連結部(111)の下にストッパ収容部が設けられておらず、連結部(111)の左右方向内側壁の下部に連なるようにボルト挿通用の筒状部(115)が形成されている。また、第2下部伝達部材(110B)についても、カバー部の前後側壁が省略されており、カバー部の底壁に相当する壁(116c)の前後側縁部に、ボルト挿通孔を有する上方凸部(116b)がそれぞれ設けられている。
【0036】
ストッパ(19)は、係止部材(72X)が取り付けられている下側ブラケット(41)の保持枠部(41c)内に収容されている。
より詳細には、保持枠部(41c)内に位置する最下段の踏桟(4A)の端部上面に、側面より見て略U形のストッパ収容部材(16)が配置されている。ストッパ収容部材(16)の前後側壁(161)の互いに向かい合う面には、これらの左右長さ方向の中間位置に、下端縁から上方に向かって直線状にのびる凸条部(162)が対向状に形成されている。そして、ストッパ収容部材(16)の底壁(163)、前後側壁(161)および前後2つの凸条部(162)、ならびに保持枠部(41c)の左右方向内側壁(411)によって、ストッパホルダ(15X)の第2ホルダ部(152X)が構成されている。なお、ストッパ収容部材については、例えば保持枠部(41c)の前後側壁(412)に凸条部を形成することにより省略可能である。
係止部材(72X)には、下係合凸部(726)の下側部分から下向きにのびた垂下アーム部(727)が形成されている。また、係止部材(72X)における下係合凸部(726)と垂下アーム部(727)との間の部分には、下向きの段差部(728)が形成されている。そして、係止部材(72X)の垂下アーム部(727)および段差部(728)によって、ストッパホルダ(15X)の第1ホルダ部(151X)が構成されている。
【0037】
次に、図14等を参照して、ストッパ(19)による遠隔操作機構(8)のロック解除動作の阻止機構を説明する。
図11および図14(a)に示すように、梯子兼用脚立(1X)が脚立として使用されている際、ストッパ(19)は、ストッパ収容部材(16)の底壁(163)における凸条部(162)よりも左右方向内側部分(退避位置決め用当接部)に当接する位置、すなわち、退避位置に配置されている。退避位置において、ストッパ(19)は、ストッパ収容部材(16)の前後側壁(161)および前後2つの凸条部(162)ならびに保持枠部(41c)の左右方向内側壁(411)によって四方を囲まれているので、同位置に確実に保持される。また、図12および図14(b)に示すように、梯子兼用脚立(1X)が脚立として使用されている際に、遠隔操作機構(8)を介してロック機構(7)の係止部材(72X)をロック解除方向(同図の反時計回り方向)に揺動するように動作させた場合にも、ストッパ(19)は退避位置に留まっており、係止部材(72X)の上記動作に干渉しない。
一方、梯子兼用脚立(1X)を梯子として使用するために、一方の梯子体(2)を上下反転するように回動させると、同梯子体(2)に設けられたストッパ(19)は、自重により、ストッパ収容部材(16)の前後側壁(161)および2つの凸条部(162)ならびに保持枠部(41c)の左右方向内側壁(411)によって案内されながら降下移動(転動または摺動)して、図14(c)に示すように、上下反転した係止部材(72X)の段差部(干渉位置決め用第1当接部)(728)およびこれと左右に向かい合う保持枠部(41c)の左右方向内側壁部分(干渉位置決め用第2当接部)(411a)に当接する位置、すなわち、干渉位置に配置される。ストッパ(19)が干渉位置にある状態において、例えば操作部材(10)に対して不用意に操作力が加えられたとしても、係止部材(72X)の垂下アーム部(727)の左右方向内側面(動作阻止用当接部)(727a)にストッパ(19)が当接して係止部材(72X)のロック解除方向への揺動動作が阻止される。
また、梯子として使用した梯子兼用脚立(1X)を再び脚立として使用するために、上側の梯子体(2)を上下反転するように回動させると、同梯子体(2)に設けられたストッパ(19)は、自重により、ストッパ収容部材(16)の前後側壁(161)および2つの凸条部(162)ならびに保持枠部(41c)の左右方向内側壁(411)によって案内されながら降下移動(転動または摺動)して、図11および図14(a)に示す退避位置まで戻される。
【0038】
上記の通り、第2の実施形態の梯子兼用脚立(1X)によれば、第1の実施形態の梯子兼用脚立(1)とほぼ同様の効果が奏される。
また、第2の実施形態の梯子兼用脚立(1X)によれば、ストッパホルダ(15X)の構成を、第1の実施形態よりも更に簡素化できるので、製造が容易となる。
なお、第2の実施形態は、ロック機構の遠隔操作機構を備えていない梯子兼用脚立に対しても適用可能である。すなわち、梯子として使用される際に上下反転させられた梯子体(2)において、同梯子体(2)に備えられた伸縮脚部材(6)のロック機構(7)を解除するための操作ハンドルが不用意に動作してロック状態が解除されることを、ストッパ(19)によって確実に阻止できる。
【0039】
第1の実施形態では、ストッパ(19)を、梯子兼用脚立(1)が梯子として使用される際に、遠隔操作機構(8)の下部伝達部(11)の動作と干渉しうる位置に設けた態様を示しており、また、第2の実施形態では、ストッパ(19)をロック機構(7)の係止部材(72X)の動作と干渉しうる位置に設けた態様を示している。
但し、ストッパを設ける位置は、これらの態様には限定されず、伝動部材(昇降部材または回転部材)、操作部、下部伝達部および係止部材のうちいずれか1つの動作と干渉しうる位置であればよい。例えば、ストッパを、伝動部材の動作と干渉しうるように伝動部材の上部に設けたり、操作部の動作と干渉しうるように操作部と上部踏桟との間に設けたりしてもよい。
すなわち、この発明によれば、動作機構の構成等に応じて、ストッパのサイズや設置箇所を比較的容易に変更できるため、動作機構を備えた梯子兼用脚立に対してより広範に適用できる。
【0040】
この発明のその他の態様に係る梯子兼用脚立として、以下のものが挙げられる。
すなわち、別態様の梯子兼用脚立は、2つの梯子体の上端部どうしがヒンジ金具により開閉自在に連結されてなり、一方の梯子体を上下反転するように回動させることによって梯子としても使用可能なものである。前記一方の梯子体には、操作力が加えられることにより所定の動作を行う動作機構が設けられている。動作機構は、第1動作部材と、第2動作部材と、第1動作部材および第2動作部材と係合することにより両動作部材を連動可能に連結する連結部材とを有している。連結部材は、梯子兼用脚立が脚立として使用される際には、第1動作部材および第2動作部材との係合が可能な連結位置に配置される一方、梯子兼用脚立が梯子として使用される際には、自重により連結位置から移動して第1動作部材および第2動作部材のうち少なくとも一方との係合が解除される連結解除位置に配置される。
上記の梯子兼用脚立の好ましい態様では、第1動作部材に第1係合部が設けられ、第2動作部材に第2係合部が設けられ、連結部材の一端部に第1係合部と係合可能な第3係合部が設けられ、連結部材の他端部に第2係合部と係合可能な第4係合部が設けられている。梯子兼用脚立が脚立として使用される際には、第3係合部が第1係合部に上方から係合させられるとともに、第4係合部が第2係合部に下方から係合させられる。一方、梯子兼用脚立が梯子として使用される際には、連結部材の前記一端部が、第1動作部材における第1係合部と上下に向かい合う部分に設けられた第1支持部によって下方から支持されるとともに、第4係合部が第2係合部と係合可能な位置から外れるように連結部材が第1支持部を支点として自重により所定方向に傾動させられる。
上記の梯子兼用脚立の好ましい態様として、前記一方の梯子体に、梯子として使用される際に第1動作部材の第1支持部を上向きに付勢する付勢部材が設けられている場合がある。
また、上記の梯子兼用脚立の好ましい態様として、前記一方の梯子体に、梯子として使用される際に所定方向に傾動させられた連結部材を側方から支持する第2支持部が設けられている場合がある。
【0041】
上記別態様の梯子兼用脚立の一形態として、前記一方の梯子体が、2本の支柱と、両支柱間に段状に渡し止められた複数本の踏桟と、各支柱にスライド自在に連結されて前記一方の梯子体の脚を構成している伸縮脚部材と、伸縮脚部材を支柱に対して任意のスライド位置でロックしうるロック機構と、ロック機構から離れた位置で操作力が加えられることによりロック機構による伸縮脚部材のロックを解除しうるように動作する遠隔操作機構とを備えているものが挙げられる。
遠隔操作機構は、支柱に沿って設けられかつ長さ方向に移動可能な伝動部材と、前記一方の梯子体におけるロック機構の係止部材よりも上方位置に設けられかつ所定の操作により伝動部材を長さ方向の一方に移動させうるように動作する操作部材と、操作部材を操作することによる伝動部材の動作をロック機構の係止部材に伝達して係止部材をロック解除状態に切り替えるように動作する下部伝達部とを有している。
そして、前記動作機構が遠隔操作機構よりなり、前記第1動作部材が操作部材よりなり、前記第2動作部材が伝動部材よりなるとともに、遠隔操作機構が、前記連結部材として、操作部材および伝動部材と係合することにより両部材を連動可能に連結する第1連結部材を有している。
【0042】
[第3の実施形態]
図15および図16は、この発明の第3の実施形態として、上述した別態様に係る梯子兼用脚立の一例を示したものである。
この実施形態に関する以下の説明において、図16(a)(b)の紙面に向かって手前側を「前」、同奥側を「後」と言いい、また、「左右」は前から見た場合の左右(図16(a)(b)の各左右)を言うものとする。
第3の実施形態の梯子兼用脚立(1Y)は、以下の点を除いて、図11図14に示す第2の実施形態に係る梯子兼用脚立(1X)と実質的に同一である。
すなわち、図示は省略したが、この実施形態の梯子兼用脚立(1Y)では、ストッパが設けられていない。これに伴い、下側ブラケット(41)の保持枠部(41c)内には、ストッパホルダを構成するストッパ収容部材が設けられていない。係止部材(72)も、第1の実施形態と同様に、垂下アーム部および段差部が設けられていないもの(図5等参照)となされている。
【0043】
一方、この実施形態の梯子兼用脚立(1Y)では、上部伝達部として、操作部材(第1動作部材)(10)および伝動部材(第2動作部材)(9)と係合することにより両部材(10)(9)を連動可能に連結する上部伝達部材(第1連結部材)(12Y)が用いられている。
上部伝達部材(12Y)は、上下にのびる略板片状のものであって、その上端部に左右方向外方(支柱側)に折れ曲がった上係合爪部(第3係合部)(123)が形成されているとともに、その下端部に左右方向外方に折れ曲がった下係合爪部(第4係合部)(124)が形成されている。上係合爪部(123)の先端部分は、下向きに突出させられている。
伝動部材(9)の上端部には、上部伝達部材(12Y)の下係合爪部(124)と係合可能な係合孔(第2係合部)(92)が形成されている。
操作部材(10)の左右各端部には、インサート部材(17)が嵌め込まれている。インサート部材(17)は、左右に長い略スティック状のものであって、その長さの一部が操作部材(10)の端部に嵌め込まれるインサート部(17a)となされ、残りの部分が嵌め込み時および取り外し時の摘み部(17b)となされている。インサート部(17a)には、上下に貫通した第1貫通孔(171)および第2貫通孔(172)が左右に並んで形成されている。インサート部(17a)の挿入方向先端側の第1貫通孔(171)に対応する操作部材(10)の上壁部分には、連通孔(101)が形成されている。
操作部材(10)の左右各端部は、付勢手段(18)によって、ロック解除操作時の動作方向と逆方向(上部踏桟(4C)の開口側)に付勢されている。付勢手段(18)としては、図示のように、圧縮コイルばね(18)を用いることができる。圧縮コイルばね(18)は、インサート部(17a)の第1貫通孔(171)および操作部材(10)の連通孔(101)に挿通されて、操作部材(10)の下壁と上部踏桟(4C)の上壁との間に伸縮可能に介在されている。
操作部材(10)の下壁の左右各端部には、インサート部(17a)の挿入方向後端側の第2貫通孔(172)を露出させうるように切欠き(102)または孔が形成されている。第2貫通孔(172)には、上記切欠き(102)または孔を通じて、上部伝達部材(12Y)の上係合爪部(123)が挿入配置されている。また、第2貫通孔(172)の下部には、その孔縁部から左右方向内向きに突出した内方突出部(173)が配置されている。この内方突出部(173)の上面の先端部分に、上部伝達部材(12Y)の上係合爪部(第3係合部)(123)と係合可能な係合凹部(第1係合部)(174)が形成されている。操作部材(10)の上壁下面の端部(第1支持部)(103)は、上部伝達部材の上係合爪部(123)を間に挟んで、係合凹部(174)と上下に向かい合っている。図16(a)(b)に示すように、梯子兼用脚立(1Y)が脚立として使用されている状態において、上部伝達部材(12Y)の上係合爪部(123)は、その上面の先端部が操作部材(10)の第1支持部(103)に当接または近接させられているとともに、同上面が基端部に向かうにつれて次第に操作部材(10)の第1支持部(103)から離れるように傾斜させられている。
支柱(3)に取り付けられて伝動部材(9)の上部を保持している上側サポート部材(14B)には、その前後側壁を連結する中央壁の前後幅中央部から左右方向内方に突出した前後2つの内方突出壁(143)と、前後2つの内方突出壁(143)の先端縁どうしを連結する連結壁(第2支持部)(144)とが設けられている。ここで、連結壁(第2支持部)(144)と伝動部材(9)との間の左右方向の距離(間隔)(d3)は、上部伝達部材(12Y)の左右方向内側面(支柱(3)と反対側の面)から下係合爪部(124)の先端までの距離(d4)よりも大きくなされている(図16(d)参照)。
【0044】
次に、図16を参照して、上部伝達部材(第1連結部材)(12Y)による遠隔操作機構(8)のロック解除動作の阻止機構を説明する。
図16(a)に示すように、梯子兼用脚立(1Y)が脚立として使用されている際、上部伝達部材(12Y)は、操作部材(第1動作部材)(10)および伝動部材(第2動作部材)(9)との係合が可能な連結位置に配置される。具体的には、上部伝達部材(12Y)の上係合爪部(第3係合部)(123)が、操作部材(10)の端部に嵌め込まれたインサート部材(17)の係合凹部(第1係合部)(174)に上方から係合させられているとともに、上部伝達部材(12Y)の下係合爪部(第4係合部)(124)が、伝動部材(9)の上端部の係合孔(第2係合部)(92)に下方から係合させられている。
上記の状態で、操作部材(10)に上向きの操作力を加えると、図16(b)に示すように、操作部材(10)が上方に移動し、これに連動して、上部伝達部材(12Y)、伝動部材(9)および下部伝達部材(110)が上方に移動することにより、係止部材(72X)がロック解除方向に揺動させられて、ロック解除状態となる。
一方、梯子兼用脚立(1Y)を梯子として使用するために、一方の梯子体(2)を上下反転するように回動させると、図16(c)に示すように、上部伝達部材(12Y)は、自重により連結位置から移動して、伝動部材(9)との係合が解除される連結解除位置に配置される。具体的には、上部伝達部材(12Y)が上下反転することにより、その上係合爪部(第3係合部)(123)上面の先端部分(傾動時当接部)が、操作部材(10)の上壁下面の端部(第1支持部)(103)に当接して、同部分(103)により下方から支持される。この状態において、上部伝達部材(12Y)の重心は、上係合爪部(123)上面の先端部分よりも左右方向内方(伝動部材(9)と反対側)に偏って位置している。そのため、上部伝達部材(12Y)は、上係合爪部(123)上面の先端部分が当接させられている操作部材(10)の上壁下面部分(103)を支点として、自重により、伝動部材(9)から離れる方向(図16(c)の反時計回り方向)に傾動させられる。これに伴い、上部伝達部材(12Y)の下係合爪部(124)が、伝動部材(9)の係合孔(92)から抜け出して、係合孔(92)との係合が可能な位置から外れ、連結解除位置に配置される。この際、操作部材(10)も自重で降下してしまうと、上部伝達部材(12Y)の下係合爪部(124)と伝動部材(9)の係合孔(92)との係合状態が維持されて上部伝達部材(12Y)が傾動しないおそれがあるが、この実施形態では、操作部材(10)が圧縮コイルばね(18)のばね弾性力によって上向きに付勢されているため、操作部材(10)の自重による降下が防止され、上部伝達部材(12Y)の傾動が確実に行われる。
下係合爪部(124)が係合孔(92)から外れる連結解除位置まで傾動した上部伝達部材(12Y)は、上側サポート部材(14B)の連結壁(第2支持部)(144)により側方から支持されて、同位置に保持される。
上部伝達部材(12Y)が連結解除位置にある状態において、操作部材(10)に対して不用意に操作力が加えられた場合、図16(d)に示すように、操作部材(10)に連動して上部伝達部材(12Y)が下方に移動させられるが、その動作は伝動部材(9)には伝達されず、係止部材(72X)がロック解除状態になることはない。
また、梯子として使用した梯子兼用脚立(1Y)を再び脚立として使用するために、上側の梯子体(2)を上下反転するように回動させると、同梯子体(2)に設けられた上部伝達部材(12Y)は、その上係合爪部(123)の先端部分が、操作部材(10)内の係合凹部(174)に係合して下方から支持されるとともに、係合凹部(174)を支点として伝動部材(9)に近づく方向に傾動させられ、図16(a)に示すように、上部伝達部材(12Y)の下係合爪部(124)が伝動部材(9)の係合孔(92)と係合可能な連結位置まで戻される。
【0045】
第3の実施形態の梯子兼用脚立(1Y)によれば、梯子として使用される際に上下反転させられた梯子体(2)において、同梯子体(2)に備えられた遠隔操作機構(8)が不用意に動作するのを、上部伝達部材(12Y)による操作部材(10)と伝動部材(9)との連結状態が解除されることによって阻止できるので、使用時の安全性を高めることができる。
また、上部伝達部材(12Y)は、梯子体(2)の姿勢(上下の向き)の変化に応じて、自重により傾動して連結位置または連結解除位置に自動的に配置されるので、特別な操作を要することなく確実に機能しうる。
さらに、上部伝達部材(12Y)は、連結解除位置において、伝動部材(9)とは干渉しないものであるので、例えば、操作部材(10)に対して大きな操作力が加えられたとしても、破損するおそれがない。
【0046】
上記の各実施形態に示した通り、この発明は、伸縮脚部材のロック機構やその遠隔操作機構等の動作機構を備えた梯子兼用脚立において好適に使用されるものであるが、その他、通常時とは異なる姿勢(上下の向きや水平面に対する傾斜角度の変更)で使用・保管・運搬等される場合があり、かつ、所定の動作機構を備えている各種物品についても、当該姿勢における動作機構の不用意な動作を阻止する目的で、広く適用可能である。具体的には、例えば、動作機構として伸縮脚、転倒・滑り防止具、開き止め具、手がかり棒等のロック機構を備えた専用脚立、梯子、可搬式作業台等においても、この発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明は、伸縮脚部材のロック機構やその遠隔操作機構等の動作機構を備えている梯子兼用脚立において、梯子として使用される際に動作機構が不用意に動作するのを阻止するために好適に用いられる。
【符号の説明】
【0048】
(1)(1X)(1Y):梯子兼用脚立
(2):梯子体
(3):支柱
(4A):最下段の踏桟
(4B):下から2段目の踏桟
(4C):下から3段目の踏桟(上部踏桟)
(5):伸縮脚装置
(6):伸縮脚部材
(7):ロック機構
(71):被係止部
(72)(72X):係止部材
(8):遠隔操作機構
(9):伝動部材(第2動作部材)
(10):操作部材(操作部・第1動作部材)
(11):下部伝達部
(110):下部伝達部材
(110A):第1下部伝達部材
(110B):第2下部伝達部材
(12):上部伝達部材(上部伝達部)
(12Y):上部伝達部材(第1連結部材)
(123):上係合凸部(第3係合部)
(124):下係合凸部(第4係合部)
(13):圧縮コイルばね(付勢手段)
(14A):下側サポート部材
(14B):上側サポート部材
(15)(15X):ストッパホルダ
(151)(151X):第1ホルダ部
(152)(152X):第2ホルダ部
(16):ストッパ収容部材
(17):インサート部材
(18):圧縮コイルばね(付勢手段)
(19):ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16