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特開2024-104633滴定装置及びこれを含む濃度管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104633
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】滴定装置及びこれを含む濃度管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/16 20060101AFI20240729BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01N31/16 A
G01N1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008957
(22)【出願日】2023-01-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)公開日:令和4年9月26日、公開した者:京石産業株式会社、公開した場所:京セラ株式会社(本社住所:京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地)鹿児島川内工場(鹿児島県薩摩川内市高城町1810) (2)公開日:令和4年9月28日、公開した者:京石産業株式会社、公開した場所:イビデン株式会社(本社住所:岐阜県大垣市神田町2-1)大垣中央事業場(岐阜県大垣市笠縫町100-1)
(71)【出願人】
【識別番号】597029228
【氏名又は名称】京石産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145953
【弁理士】
【氏名又は名称】真柴 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】西村 一誠
(72)【発明者】
【氏名】神凉 知昭
【テーマコード(参考)】
2G042
2G052
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA04
2G042BA06
2G042BD13
2G042CB03
2G042DA02
2G042DA03
2G042FA01
2G042HA02
2G052AC28
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052FB02
2G052FB07
2G052FC06
2G052FC11
2G052FD01
2G052GA28
2G052HA03
2G052HC33
(57)【要約】
【課題】液体に含まれる有効成分の濃度をより正確に測定できる滴定装置及びこれを用いた濃度管理システムを得ること。
【解決手段】本発明は、上側に開口を有する容器部2と、前記容器部の開口を介してその内部に配置された排液チューブ3と、を含み、前記排液チューブ3が上下動可能に保持されている滴定装置1に関する。本発明の滴定装置1は、前記排液チューブを上下動可能に保持する保持部4を有する場合がある。前記保持部4は、昇降装置41、シャフト42及び保持アーム43を含み、前記保持アーム43が前記排液チューブ3を保持する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側に開口を有する容器部と、
前記容器部の開口を介してその内部に配置された排液チューブと、を含み
前記排液チューブが上下動可能に保持されている、滴定装置。
【請求項2】
前記排液チューブが、前記容器部の上方に配置した上下動可能な保持部により保持されている、請求項1に記載の滴定装置。
【請求項3】
前記容器部の底部が傾斜を有する、請求項1に記載の滴定装置。
【請求項4】
さらに、撹拌手段及び測定センサーを含み、前記撹拌手段及び測定センサーの先端が、前記底部における傾斜の始点又は始点よりも上方に固定されている、請求項3に記載の滴定装置。
【請求項5】
さらに、撹拌手段及び測定センサーを含み、前記撹拌手段及び測定センサーが上下動可能に保持されている、請求項1に記載の滴定装置。
【請求項6】
さらに、撹拌手段及び測定センサーを含み、前記撹拌手段及び測定センサーが前記容器部の上方に配置した上下動可能な保持部により保持されている、請求項1に記載の滴定装置。
【請求項7】
滴定液がポンプによって滴定液供給チューブから供給され、前記ポンプが一定容積の滴定液を連続的に供給可能なポンプである、請求項1に記載の滴定装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の滴定装置を含む、濃度管理システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滴定装置及び前記滴定装置を含む濃度管理システムの発明に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中に含まれる特定成分の濃度管理が厳密に求められる技術分野が存在する。例えば、半導体用基板の製造工程で使用されるレジスト剥離液は、半導体用基板に施されたレジスト膜を剥離するために使用されるが、レジスト剥離液によりレジスト膜の剥離が進むにつれて剥離液中の有効成分、例えば有機アミン化合物の濃度が徐々に低下していく。前記のような有効成分の濃度が低下することにより、レジスト膜を剥離する効率が徐々に低下していくため、レジスト剥離液中の有効成分の濃度をモニタリングし、適宜その濃度調整を行う事が必要となる。
【0003】
このような剥離液中の有効成分濃度を分析するに際には、前記のようなレジスト剥離液の有効成分を中和滴定、酸化還元滴定又は前記レジスト剥離液の吸光度変化等を測定することで、レジスト剥離液中における有効成分の濃度変化を測定することが一般的である。また、レジスト剥離の工程を連続的に行うためには、前記のようなモニタリング及び濃度調整も連続的に行われる必要がある。以下の特許文献1は、溶液が供給される反応槽と、前記反応槽に指示薬を滴下する指示薬ビュレットと、前記反応槽に酸性の試薬を滴下する試薬ビュレットと、前記溶液に浸される吸光光度検出器と、前記指示薬ビュレット、前記試薬ビュレットおよび前記吸光光度検出器を制御するとともに、前記吸光光度検出器が検出した前記溶液の透過率を解析して、前記溶液のアルカリ度を計測する計測装置と、アルカリ性の処理液を貯留する処理槽から前記処理液のサンプルを採取して、前記溶液として前記反応槽へ供給する第1システムと、前記反応槽から前記溶液を排出する排出システムと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1システムの動作を制御し、前記溶液の前記反応槽への供給が完了すると、完了信号を前記計測装置へ出力し、前記計測装置によるアルカリ度の計測が完了すると、前記排出システムを制御して、前記反応槽から前記溶液を排出する、監視システムの発明を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-60242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の監視システムを使用することにより、液体中に含まれる有効成分濃度のモニタリング及び濃度管理を連続的に実施する事が可能であるが、特許文献1におけるモニタリング及び濃度管理の精度をより向上させる事への要望が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、特定の構成により上記課題が解決出来ることを見いだし本発明に至った。
すなわち本発明は、
[1]上側に開口を有する容器部と、
前記容器部の開口を介してその内部に配置された排液チューブと、を含み
前記排液チューブが上下動可能に保持されている、滴定装置、
[2]前記排液チューブが、前記容器部の上方に配置した上下動可能な保持部により保持されている、[1]に記載の滴定装置、
[3]前記容器部の底部が傾斜を有する、[1]に記載の滴定装置、
[4]さらに、撹拌手段及び測定センサーを含み、前記撹拌手段及び測定センサーの先端が、前記底部における傾斜の始点又は始点よりも上方に固定されている、[3]に記載の滴定装置、
[5]さらに、撹拌手段及び測定センサーを含み、前記撹拌手段及び測定センサーが上下動可能に保持されている、[1]に記載の滴定装置、
[6]さらに、撹拌手段及び測定センサーを含み、前記撹拌手段及び測定センサーが前記容器部の上方に配置した上下動可能な保持部により保持されている、[1]に記載の滴定装置、
[7]滴定液がポンプによって滴定液供給チューブから供給され、前記ポンプが一定容積の滴定液を連続的に供給可能なポンプである、[1]に記載の滴定装置、並びに
[8][1]~[7]のいずれか1項に記載の滴定装置を含む、濃度管理システム、に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の滴定装置を用いることにより、連続的にサンプル、とりわけ液体サンプル中の有効成分の濃度をモニタリング及び管理する必要がある場合、例えば、レジスト剥離やエッチングの工程において使用されるレジスト剥離液やエッチング液中の有効成分の濃度をより正確にかつ連続的に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の滴定装置の一形態を示す図面である。
図2】容器部の種々の形態例を示す図面である。
図3】(A)ローラーにより排液チューブを保持する一形態を示す模式図、(B)(A)のローラーを用いて排液チューブを下降させる状況を示す模式図及び(C)(A)のローラーを用いて排液チューブを上昇させる状況を示す模式図である。
図4】(A)排液チューブを上下動させる保持部の正面図、(B)(A)の保持部におけるシャフトを上に上げた状態及び(C)(A)の保持部の平面図である。
図5】(A)下に下げられた排液チューブにより測定済サンプルを排出する状況を説明する模式図、(B)排液チューブが上に上げられた状態の滴定装置の模式図及び(C)排液チューブを上に上げた状態で測定サンプルを供給する状況を説明する模式図である。
図6】排液チューブ、撹拌手段及び測定センサーが同じ保持部に保持されている滴定装置の一形態を示す図面である。
図7】濃度管理システムの一例を示すシステム構成図である。
図8】濃度管理システムによる濃度管理のフローの一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態及び態様に限定されず、本発明の技術的範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでもない。また、文中における「上下」、「前後」及び「左右」は、各図面に記載の方向を意味する。
【0010】
本発明の滴定装置1は、図1に示すように、上側に開口を有する容器部2と、前記容器部の開口を介してその内部に配置されかつ上下動可能に保持された排液チューブ3と、を含む滴定装置である。また、本発明の滴定装置1は、上記構成の他に、攪拌手段5、測定センサー6、滴定液供給チューブ7、サンプリングチューブ8及びロードセルユニット9を含む。以下に、構成要素毎に詳細に説明する。
【0011】
1.容器部2
本発明の容器部2は、その上側に開口を有する容器である。本発明の容器部2としては、滴定装置に従来から使用されているいかなる容器も使用可能である。容器の素材は、例えば、ポリカーボネート及びアクリル等の樹脂素材、並びにガラス等の素材から、測定サンプル及び滴定液により過度に損傷しない事を条件として、特に制限無く選択可能である。容器部2の容量は、測定サンプル及び滴定液の種類及び量等に基づいて適宜調整可能である。容器部2の具体的な容量として、例えば50~200mlが挙げられる。
【0012】
好ましくは、容器部2の底部は傾斜を有する。容器部2の底部が傾斜を有することにより、測定終了後のサンプルが傾斜に沿って底に向けて流れ込む。後述する排液チューブ3を前記傾斜の底に伸ばすことにより、測定終了後のサンプルを排液チューブ3によってより効率よく吸い出すことができる。また、容器部2の底部が傾斜を有する事により、後述するように撹拌手段5及び測定センサー6の先端が傾斜の始点又は始点よりも上に位置するように固定されている場合において、撹拌手段5及び測定センサー6が浸漬しない程度の量の測定サンプルを供給してその測定を正確に行った上で、希釈液を供給して撹拌手段5及び測定センサー6を浸漬させる際に、過剰な量の希釈液を供給する必要がなくなる。傾斜の形状及び角度は前記のような効果を奏することができる事を条件として適宜調整可能である。例えば、図2(A)に示すように容器部2の一方の壁から反対側の壁に向けて一方向に傾斜する形状でも良いし、(B)に示すように容器部2の底部中央に向けて傾斜が設けられても良い。また、容器部2の底部中央に向けて傾斜が設けられている場合、傾斜の頂点は(B)のように角を有しても良いし、(C)のように傾斜が交差してできた頂点をカットした平面を有するようにしてもよい。後述するように、滴定装置1がロードセルユニット9を含む場合には、ロードセルユニット9による質量測定がより正確に行えるため、(C)のように傾斜が容器部2の底部中央に向けて設けられており、かつ傾斜の頂点がカットされている形状がより好ましい。また、傾斜の角度は適宜調整可能であるが、例えば、傾斜の角度(図2(C)におけるθ)を、30±5°程度とすることにより、排液チューブ3による測定済みサンプルの吸い出しをより効率よく行えると共に、容器部2の大きさを過度に大きくすることが無いため好ましい。
【0013】
2.排液チューブ3
排液チューブ3は、前記容器部の開口を介して内部に配置され、上下動可能に保持されたチューブである。排液チューブ3は、従来から滴定装置で使用されているチューブ、例えば、シリコンチューブ等を特に制限無く使用できる。排液チューブ3は、ポンプ等に接続され、前記ポンプを駆動させることにより、その先端から液体を吸引して容器部2外に排出できる。なお、排液チューブ3の先端にビュレットを備えても良い。排液チューブ3を上下動可能に保持する方法としては、例えば、図3(A)に示すように、滴定装置1の筐体等に回転可能に固定された2本のローラー31、31により排液チューブ3を挟持して保持をしても良い。ローラー31、31をモーターに接続し、モーターの回転を図3(B)のように制御することで排液チューブ3を上方向に移動させ、図(C)のように制御することで排液チューブ3を下方向に移動させることができる。
【0014】
また、排液チューブ3を、前記容器部2の上方に配置された上下動可能な保持部4により保持しても良い。保持部4の具体的な形状の一例が図4に示されている。保持部4は、昇降装置41、昇降装置41を駆動させることにより上下方向に移動するシャフト42及び前記シャフト42に支持された保持アーム43を含む。昇降装置41は、シャフト42を上下できる機構、例えば、エアシリンダ、ロボシリンダ及び油圧シリンダ等の機構を特に制限無く使用できる。シャフト42は金属又は樹脂製の棒状部材であり、前記のように昇降装置41により上下方向に移動する。保持アーム43は、金属又は樹脂製の部材であり、上下方向に貫通した孔44を有する。保持アーム43は、シャフト42の上方にて支持されており、シャフト42の軸方向に対して略垂直方向に備えられている部材である。保持アーム43の形状は、排液チューブ3を保持できる形状である事を条件として、特に制限は無い(図4において保持アーム43は棒状の直方体である)。なお、シャフト42のみで排液チューブ3を上下させることができる場合には、保持アーム43は特に必要はない。保持アーム43は、シャフト42の上下動に伴って図4(A)(B)に記載するように上下動する。排液チューブ3は、前記保持アーム43に空けられた孔44を通すことにより保持部4に保持され、その先端が容器部2の内部に配置される。
【0015】
滴定装置1による滴定が終了した後、終了後のサンプルを吸い出すために、排液チューブ3の先端を容器部2の底部に配置させる(図5(A)参照)。排液チューブ3に接続されたポンプを駆動させて容器部2内部の測定済みサンプル(図5(A)におけるS)を除去する。測定済みサンプルを除去した後、排液チューブ3を容器部2の底部から上に持ち上げる(図5(B)参照)。排液チューブ3を底部から上に持ち上げた状態で、後述するサンプリングチューブ8から、測定対象となるサンプル(図5(C)におけるS’)が供給される(図5(C)参照)。ここで、サンプルが容器部2内部に供給される際に、排液チューブ3が供給されたサンプルの内部に浸漬されていると、排液チューブ3の質量により供給された測定サンプルの質量を正確に測定することが著しく困難となる。本発明の測定装置においては、容器部2内部に測定サンプルを供給する際に排液チューブ3を容器部2の底部から持ち上げて、排液チューブ3が供給されたサンプルに浸漬しないようにすることにより、供給されたサンプルの初期質量をより正確に測定することができ、測定サンプルに含まれる有効成分の濃度を滴定によってより正確に測定できる。
【0016】
4.攪拌手段5
攪拌手段5は、容器部2内部に供給された測定サンプル及び滴定液を攪拌するために備えられる。攪拌手段5は、例えば、容器部2内に配置させ、滴定装置1の筐体内部の壁等に固定しても良い。攪拌手段5としては、従来から滴定の際に用いられている攪拌手段を特に制限無く使用可能である。このような攪拌手段として、例えば、モーターにより回転するプロペラ(ディスパー)及びマグネチックスターラー等が挙げられる。回転子の質量による影響を受けることがなく、測定サンプルの初期質量がより正確に測定できるようにするため、ディスパーを用いることがより好ましい。
【0017】
5.測定センサー6
測定センサー6は、滴定中の測定サンプルに含まれる有効成分の濃度を測定する際に使用されるセンサーである。測定センサー6は、例えば、容器部2内に配置させ、滴定装置1の筐体内部の壁等に固定しても良い。測定センサー6としては、従来から滴定の際に用いられているセンサーを特に制限無く使用可能である。このようなセンサーとして、例えば、pHセンサー及び吸光度センサー等が挙げられる。
【0018】
なお、前記のような攪拌手段5及び測定センサー6を設ける際には、前記撹拌手段5及び測定センサー6の先端が、前記容器部2の下部における傾斜の始点又は始点よりも上方に固定されていることがより好ましい。ここで、「容器部2の下部における傾斜の始点又は始点よりも上方」とは、図1におけるαの位置又はαの位置よりも上方である事を意味する。攪拌手段5及び測定センサー6を上記のような位置に固定することにより、容器部2内部に測定サンプルを供給する際の量を調整して、攪拌手段5及び測定センサー6が測定サンプルに浸漬することを容易に防止できるため、容器部2内部に供給された測定サンプルの質量測定をより正確に行うことができる。
【0019】
また、前記のような攪拌手段5及び測定センサー6を設ける際には、前記撹拌手段5及び測定センサー6を上下動可能に保持しても良い。撹拌手段5及び測定センサー6を上下動可能に保持することにより、容器部2内部に測定サンプルを供給する際に撹拌手段5及び測定センサー6が測定サンプルに浸漬しない位置まで上昇させることができ、測定サンプルの質量測定をより正確に行うことができる。前記撹拌手段5及び測定センサー6を保持する際には、前記排液チューブ3を上下動可能に保持する際に使用する機構を特に制限無く使用できる。具体的には、例えば、撹拌手段5及び測定センサー6を、容器部2の上方に配置された上下動可能な保持部により保持しても良い。撹拌手段5及び測定センサー6のための前記保持具は、前記排液チューブ3を保持するための保持具4と同様のものが使用できる。また、図6に示すように、排液チューブ3と、撹拌手段5及び測定センサー6とを同じ保持具4で保持しても良い。
【0020】
6.滴定液供給チューブ7
滴定液供給チューブ7は、測定サンプルを滴定する際に使用される滴定液を供給するためのチューブである。滴定液供給チューブ7は、例えば、容器部2内にてその先端が測定サンプルに浸漬しない位置に配置させ、滴定装置1の筐体内部の壁等に固定しても良い。滴定液供給チューブ7はポンプ等に接続されており、当該ポンプを駆動させることにより滴定液を貯蔵するタンク等の容器から滴定液が滴定液供給チューブ7を介して容器部2内部に供給される。滴定液供給チューブ7としては、従来から滴定装置で使用されているチューブ、例えば、シリコンチューブ等を特に制限無く使用できる。滴定液供給チューブ7の先端にビュレットを備えても良い。
【0021】
なお、前記滴定チューブに接続するポンプとして、一定容積の滴定液を連続的に供給可能なポンプを使用することがより好ましい。このようなポンプを使用することにより、滴定液の滴下を連続的に、かつより高い精度で行う事ができる。このようなポンプの具体例として、例えば、精密定量ポンプ、具体的にはマイクロセラムポンプ(例えば、株式会社山善製マイクロセラムポンプMSPシリーズ)が挙げられる。
【0022】
9.サンプリングチューブ8
サンプリングチューブ8は、測定対象となるサンプル、例えば、レジスト剥離液を、レジスト剥離装置のレジスト剥離液タンクから容器部2内に供給するためのチューブである。サンプリングチューブ8は、例えば、容器部2内にてその先端が測定サンプルに浸漬しない位置に配置させ、滴定装置1の筐体内部の壁等に固定しても良い。サンプリングチューブ8はポンプ等に接続されており、当該ポンプを駆動させることにより測定サンプルがタンク等の容器からサンプリングチューブ8を介して容器部2内部に供給される。サンプリングチューブ8としては、従来から滴定装置で使用されているチューブ、例えば、シリコンチューブ等を特に制限無く使用できる。サンプリングチューブ8の先端にビュレットを備えても良い。
【0023】
10.ロードセルユニット9
ロードセルユニット9は、容器部2の下に設置される。ロードセルユニット9により、サンプリングチューブ8を介して容器部2内に供給されたサンプルの質量を測定できる。このようなロードセルユニット9の具体例として、電子上皿天秤が挙げられる。
【0024】
11.濃度管理システム
本発明の濃度管理システムは、前記滴定装置1を含むシステムである。図7は、本発明の濃度管理システム、特にレジスト剥離装置における濃度調整をするための濃度管理システムの一例(以下、「濃度管理システムA」とする)であって、図1の滴定装置1を含むシステム構成図である。滴定装置1の排液チューブ3は、ポンプ及び電磁弁を介して測定済のサンプルを外部に排出するための排液ラインに接続されている。ガラス製である容器部2の下部は、底部中央に向けた傾斜が設けられており、傾斜が交差してできた頂点がカットされた平面が設けられている。撹拌手段5及び測定センサー6は、その先端が前記傾斜の始点よりも上になるように固定されている。測定センサー6としてpHセンサーが使用されており、前記pHセンサーは、pHセンサーからの信号を増幅するためのpHアンプBに接続されている。滴定装置1の滴定液供給チューブ7は、滴定液、例えば希塩酸を貯蔵したタンクCにポンプ及び電磁弁を介して接続されている。なお、図7において滴定液供給チューブ7及び滴定液タンクCはそれぞれ1つだけ記載されているが、必要に応じてこれらを2以上備えても良い。サンプリングチューブ8は、外部装置であるレジスト剥離装置のレジスト剥離液タンクにポンプ及び電磁弁を介して接続されている。ロードセルユニット9として、電子上皿天秤が使用されている。
【0025】
さらに、滴定装置1には、サンプリングチューブ8から供給されるサンプルを希釈するための希釈液供給チューブDが備えられており、前記希釈液供給チューブDは希釈液、例えばエタノールが貯蔵されたタンクEにポンプ及び電磁弁を介して接続されている。なお、図7において希釈液供給チューブD及び希釈液タンクEはそれぞれ1つだけ記載されているが、必要に応じてこれらを2以上備えても良い。加えて、滴定装置1には、純水供給チューブFが備えられおり、前記純水供給チューブFはポンプ及び電磁弁を介して純水ラインに接続されている。
【0026】
前記各ポンプ、電磁弁、ロードセルユニット9、pHアンプB及び撹拌手段5におけるモーター、保持部4の昇降装置41は、プログラマブル・ロジック・コントローラG(以下、単にPLCとする)に接続されており、データの入出力及び各機器のオンオフがPLCにより制御されている。前記PLCには、濃度管理システムAを操作する際に使用するタッチパネルHが備えられている。
【0027】
図8は、図7に示される濃度管理システムAを用いた濃度管理フローを示している。なお、初期段階において、排液チューブ3は上に上げた状態で保持されている。まず工程1はサンプル注入工程である。工程1において、サンプリングチューブ8に接続されたポンプ及び電磁弁を駆動させ、外部装置であるレジスト剥離液タンクから一定量のサンプルが容器部2内部に供給される。供給される量の目安としては、供給されたサンプルによって、撹拌手段5、測定センサー6及び上に上げられた排液チューブ3が浸漬しない程度の量である。次に、工程2はサンプル計量工程である。工程2において、容器部2内部に供給されたサンプルの質量がロードセルユニット9により測定される。測定された質量のデータはPLCに記録される。次に、工程3は希釈液注入工程である。工程3において、希釈液供給チューブDに接続されたポンプ及び電磁弁を駆動させ、希釈液タンクEから一定量の希釈液が容器部2内部に供給され、撹拌手段5及び測定センサー6が希釈されたサンプルに浸漬する。次いで、撹拌手段5のモーターを駆動させ、希釈されたサンプルが撹拌手段5により撹拌される。
【0028】
次に、工程4は滴定工程である。工程4において、滴定液供給チューブ7に接続されたポンプ及び電磁弁を駆動させ、滴定液タンクCから所定量の滴定液の滴定が開始される。前記滴定工程は、測定サンプルが中和されるまで継続される。同時に、撹拌手段5を駆動させ、滴定液を滴下しながら希釈されたサンプルを撹拌する。測定サンプルを中和するために使用された滴定液の量は、PLCに記録される。次に、工程5は算出工程である。工程5において、滴定結果からレジスト剥離液タンクに供給されるべき有効成分の量が算出される。算出データはPLCから外部装置であるレジスト剥離装置に出力される。前記算出データを受信したレジスト剥離装置は、算出結果に基づいて所定量の有効成分をレジスト剥離液タンクに供給する。
【0029】
次に、工程6は排出チューブ下降工程である。工程6において、昇降装置41を駆動させ、排液チューブ3を容器部2の底部、具体的には底部の前記平面付近に届くまで下降させる。次に、工程7は測定液排出工程である。工程7において、排液チューブ3に接続されたポンプ及び電磁弁を駆動させ、容器部2内部の測定済サンプルを吸引して外部に排出させる。次に工程8は排出チューブ上昇行程である。工程8において、昇降装置41を駆動させ、排液チューブ3を所定の位置まで上昇させる。次に工程9は、洗浄工程である。工程9において、純水供給チューブFに接続されたポンプ及び電磁弁を駆動させ、容器部2内部、撹拌手段5及び測定センサー6が浸漬するまで純水を容器部2内部に供給し、容器部2内部、撹拌手段5及び測定センサー6を洗浄する。この際に、必要に応じて撹拌手段5を駆動させ純水を撹拌させてもよい。次に、工程10は排出チューブ下降工程である。工程10において、昇降装置41を駆動させ、排液チューブ3を容器部2の底部、具体的には底部の前記平面付近に届くまで下降させる。次に、工程11は洗浄液排出工程である。工程11において、排液チューブ3に接続されたポンプ及び電磁弁を駆動させ、容器部2内部にある洗浄後の液体を吸引して外部に排出させる。次に工程12は排出チューブ上昇行程である。工程12において、昇降装置41を駆動させ、排液チューブ3を所定の位置まで上昇させる。
【0030】
前記のような工程1~12を繰り返すことにより、測定を継続的に連続して行う事ができる。また、測定を終了する場合には、前記工程11又は12まで実施した時点で濃度管理システムAをストップさせれば良い。前記のような濃度管理システムAを使用することにより、本発明の滴下装置1によってより正確な濃度測定を連続的に行う事ができ、剥離液タンク内の有効成分の濃度制御を連続的に且つより正確に実施できる。
【0031】
本発明の滴定装置は、例えば、レジスト剥離装置、エッチング装置及びメッキ装置等に使用される液体の濃度管理システムにおいて使用できる。既存の濃度管理システムにおける滴定装置を、本発明の滴定装置に置き換えることも可能である。
【0032】
以下に、本発明のさらなる態様を記載する。
[1]上側に開口を有する容器部と、
前記容器部の開口を介してその内部に配置された排液チューブと、を含み
前記排液チューブが上下動可能に保持されている、滴定装置、
[2]前記排液チューブが、前記容器部の上方に配置した上下動可能な保持部により保持されている、[1]に記載の滴定装置、
[3]前記容器部の底部が傾斜を有する、[1]又は[2]に記載の滴定装置、
[4]さらに、撹拌手段及び測定センサーを含み、前記撹拌手段及び測定センサーの先端が、前記底部における傾斜の始点又は始点よりも上方に固定されている、[3]に記載の滴定装置、
[5]さらに、撹拌手段及び測定センサーを含み、前記撹拌手段及び測定センサーが上下動可能に保持されている、[1]~[3]のいずれかに記載の滴定装置、
[6]さらに、撹拌手段及び測定センサーを含み、前記撹拌手段及び測定センサーが前記容器部の上方に配置した上下動可能な保持部により保持されている、[1]~[3]のいずれかに記載の滴定装置、
[7]滴定液がポンプによって滴定液供給チューブから供給され、前記ポンプが一定容積の滴定液を連続的に供給可能なポンプである、[1]~[6]のいずれかに記載の滴定装置、並びに
[8][1]~[7]のいずれかに記載の滴定装置を含む、濃度管理システム。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の滴定装置及び濃度管理システムにより、測定サンプル、特に液体サンプルに含まれる有効成分の濃度を、より正確に連続的に測定する事ができるため、例えば、レジスト剥離やエッチング等の工程をより効率よく連続的に行う事ができる。
【符号の説明】
【0034】
1:滴定装置
2:容器部
3:排液チューブ
4:保持部、41:昇降装置、42:シャフト、43:保持アーム、44:孔
5:攪拌手段
6:測定センサー
7:滴定液供給チューブ
8:サンプリングチューブ
9:ロードセルユニット
A:濃度管理システム、B:pHアンプ、C:滴定液タンク、D:希釈液供給チューブ、E:希釈液タンク、F:純水供給チューブ、G:PLC、H:タッチパネル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8