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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104637
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】一方向継ぎ手
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/08 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
F16D41/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008962
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】阪口 航
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康明
(72)【発明者】
【氏名】廣嶋 将士
(57)【要約】
【課題】 安定的に動力伝達を遮断可能な一方向継ぎ手の一例を開示する。
【解決手段】 圧接カム12Cのうち少なくとも第2フォロア部15Cと接触する部位は、インボリュート曲線状の曲面にて構成されている。これにより、当該一方向継ぎ手10では、圧接カム12Cが変位しても、圧接カム12Cと第2フォロア部15Cとの圧力角が大きく変化することが抑制される。したがって、楔部材15の圧接部15Aが不動リングの内周面に安定的に接触可能となるので、当該一方向継ぎ手10では、安定的に動力伝達を遮断可能となる。つまり、圧接カム12Cの変位量が変化しても圧力角が略一定となるため、安定的に動力伝達を遮断できる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力が入力される入力側回転部、及び当該駆動力を出力する出力側回転部を備え、前記入力側回転部から前記出力側回転部に駆動力を伝達するとともに、前記出力側回転部に入力された駆動力が前記入力側回転部に伝達されることを阻止する一方向継ぎ手において、
前記入力側回転部と一体的に回転する入力側突起部、及び前記出力側回転部と一体的に回転する出力側突起部を有し、前記入力側回転部に駆動力が入力されたときに、前記入力側突起部と前記出力側突起部とが係合することより、前記入力側回転部から前記出力側回転部に駆動力を伝達する伝達部と、
前記入力側回転部と一体的に回転する開放カムと、
前記出力側回転部と一体的に回転する圧接カムと、
回転不可な状態で保持される不動リングと、
前記不動リングの内周面に接触可能な圧接部、前記開放カムと接触可能な第1フォロア部、及び前記圧接カムと接触可能な第2フォロア部を有する楔部材であって、当該圧接部が当該内周面に圧接するロック位置と当該圧接が開放された非ロック位置との間で変位可能な楔部材とを備え、
前記第1フォロア部は、前記入力側回転部に駆動力が入力されたときに前記開放カムから押圧力を受けて前記楔部材を前記非ロック位置に変位させ、
前記第2フォロア部は、前記出力側回転部に駆動力が入力されたときに前記圧接カムから押圧力を受けて前記楔部材を前記ロック位置に変位させ、
さらに、前記圧接カムのうち少なくとも前記第2フォロア部と接触する部位は、インボリュート曲線状の曲面にて構成されている一方向継ぎ手。
【請求項2】
前記出力側回転部の中心軸線と平行な方向において、当該出力側回転部と前記楔部材とを非接触状態又は接触面圧が予め決められた面圧以下とするスペーサを備える請求項1に記載の一方向継ぎ手。
【請求項3】
前記楔部材の姿勢を保持するとともに、前記開放カムが設けられたリテーナを備え、
前記不動リングの円周方向を周方向としたとき、
前記リテーナは、
リング状に構成された前記スペーサ、及び
前記楔部材に対して周方向一方側及び他方側それぞれに配置され、前記スペーサから前記中心軸線と平行な方向に延びる保持部を有しており、
さらに、前記保持部に前記開放カムが設けられている請求項2に記載の一方向継ぎ手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、出力軸に入力された駆動力が入力軸に伝達されることを阻止することが可能な一方向継ぎ手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、一方向継ぎ手として、鋼球を用いたクラッチが記載されている。具体的には、当該クラッチでは、駆動力がウォーム軸に入力されたときに、鋼球を円筒状のクラッチハウジングに圧接させてウォーム軸の回転を止めることにより、ウォーム軸から回転軸への動力の伝達を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-28863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、楔部材をなす鋼球をクラッチハウジングに圧接させて動力の伝達を遮断する構成である。このため、楔部材の圧接が不十分であると、安定的に動力伝達を遮断できない可能性がある。
【0005】
本開示は、当該点に鑑み、安定的に動力伝達を遮断可能な一方向継ぎ手の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
駆動力が入力される入力側回転部(11)、及び当該駆動力を出力する出力側回転部(12)を備え、入力側回転部(11)から出力側回転部(12)に駆動力を伝達するとともに、出力側回転部(12)に入力された駆動力が入力側回転部(11)に伝達されることを阻止する一方向継ぎ手は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0007】
すなわち、当該構成要件は、入力側回転部(11)と一体的に回転する入力側突起部(11B)、及び出力側回転部(12)と一体的に回転する出力側突起部(12B)を有し、入力側回転部(11)に駆動力が入力されたときに、入力側突起部(11B)と出力側突起部(12B)とが係合することより、入力側回転部(11)から出力側回転部(12)に駆動力を伝達する伝達部()と、入力側回転部(11)と一体的に回転する開放カム(16C)と、出力側回転部(12)と一体的に回転する圧接カム(12C)と、回転不可な状態で保持される不動リング(14)と、不動リング(14)の内周面(14A)に接触可能な圧接部(15A)、開放カム(16C)と接触可能な第1フォロア部(15B)、及び圧接カム(12C)と接触可能な第2フォロア部(15C)を有する楔部材(15)であって、当該圧接部(15A)が当該内周面(14A)に圧接するロック位置と当該圧接が開放された非ロック位置との間で変位可能な楔部材(15)とを備えることである。
【0008】
そして、第1フォロア部(15B)は、入力側回転部(11)に駆動力が入力されたときに開放カム(16C)から押圧力を受けて楔部材(15)を非ロック位置に変位させ、第2フォロア部(15C)は、出力側回転部(12)に駆動力が入力されたときに圧接カム(12C)から押圧力を受けて楔部材をロック位置に変位させる。さらに、圧接カム(12C)のうち少なくとも第2フォロア部(15C)と接触する部位は、インボリュート曲線状の曲面にて構成されている。
【0009】
これにより、当該一方向継ぎ手では、圧接カム(12C)が変位しても、圧接カム(12C)と第2フォロア部(15C)との圧力角が大きく変化することが抑制される。したがって、楔部材(15)の圧接部(15A)が不動リング(14)の内周面(14A)に安定的に接触可能となるので、当該一方向継ぎ手では、安定的に動力伝達を遮断可能となり得る。
【0010】
なお、当該一方向継ぎ手では、例えば、以下の構成であってもよい。
すなわち、出力側回転部(12)の中心軸線(Lo)と平行な方向において、当該出力側回転部(12)と楔部材(15)とを非接触状態又は接触面圧が予め決められた面圧以下とするスペーサ(16A)を備えることが望ましい。
【0011】
これにより、出力側回転部(12)に駆動力が入力され、当該出力側回転部(12)が回転した場合であっても、圧接カム(12C)と第2フォロア部(15C)との圧力角が大きく変化することが抑制される。したがって、楔部材(15)が不動リング(14)に安定的に接触可能となるので、当該一方向継ぎ手では、安定的に動力伝達を遮断可能となり得る。
【0012】
なお、楔部材(15)の姿勢を保持するとともに、開放カム(16C)が設けられたリテーナ(16)を備え、リテーナ(16)は、リング状に構成されたスペーサ(16A)、及び楔部材(15)に対して周方向一方側及び他方側それぞれに配置され、スペーサ(16A)から中心軸線(Lo)と平行な方向に延びる保持部(16B)を有しており、保持部(16B)に開放カム(16C)が設けられていることが望ましい。
【0013】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係るアクチュエータを示す図である。
図2】第1実施形態に係るアクチュエータの分解図である。
図3】第1実施形態に係る一方向継ぎ手の構造を示す図である。
図4】第1実施形態に係る入力側回転部及び出力側回転部等を示す図である。
図5】第1実施形態に係る入力側回転部を示す図である。
図6】第1実施形態に係る出力側回転部を示す図である。
図7】第1実施形態に係る不動リングを示す図である。
図8】第1実施形態に係る出力側回転部、楔部材及びリテーナ等を示す図である。
図9】第1実施形態に係る楔部材を示す図である。
図10】第1実施形態に係るリテーナを示す図である。
図11】第1実施形態に係るスペーサ部及び楔部材等を示す図である。
図12】第1実施形態に係る一方向継ぎ手の作動説明図である。
図13】第1実施形態に係る一方向継ぎ手の作動説明図である。
図14】第1実施形態に係る一方向継ぎ手の作動説明図である。
図15】第2実施形態に係る一方向継ぎ手の構造の一部を示す図である。
図16】第2実施形態に係る一方向継ぎ手の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0016】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係る一方向継ぎ手が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0017】
したがって、当該一方向継ぎ手は、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0018】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。本開示に示された一方向継ぎ手は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0019】
(第1実施形態)
<1.一方向継ぎ手の概要>
本実施形態は、乗物用シートに用いられるアクチュエータ1(図1参照)に、本実施形態に係る一方向継ぎ手10(図2参照)を適用した例である。当該アクチュエータ1は、乗物用シートの可動部を変位させる駆動力を発生させる。
【0020】
なお、乗物用シートの可動部とは、例えば、(a)シートクッションを上下動させるリフタアーム、(b)シートクッションの前端側を上下動させるチルトアーム、及び(c)シートバックを変位させるリクライナ等をいう。
【0021】
<1.1 アクチュエータの概略構成>
アクチュエータ1は、図2及び図3に示されるように、電動モータ3及び一方向継ぎ手10等を備える。電動モータ3は駆動力を発生する。なお、当該アクチュエータ1は、一方向継ぎ手10を介して乗物用シートのフレーム(図示せず。)に固定される。
【0022】
<1.2 一方向継ぎ手の詳細>
一方向継ぎ手10は、伝達機能及び遮断機能を発揮可能な継ぎ手である。伝達機能は、電動モータ3の駆動力(以下、単に「駆動力」という。)を乗物用シートの可動部(以下、単に「可動部」という。)に伝達する機能である。遮断機能は、当該可動部から電動モータ3への回転力(以下、逆入力という。)の伝達を遮断する機能である。
【0023】
当該一方向継ぎ手10は、図2に示されるように、入力側回転部11、出力側回転部12、伝達部13、不動リング14、楔部材15、リテーナ16及びブラケット17等を少なくとも備える。なお、本実施形態では、不動リング14が乗物用シートのフレームに固定される。
【0024】
<入力側回転部>
入力側回転部11は、電動モータ3の駆動力が入力される部材である。当該入力側回転部11は、図5に示されるように、ジョイント部11A及び少なくとも1つ(本実施形態では、複数)の入力側突起部11B等を有する駆動リングである。
【0025】
ジョイント部11Aは、電動モータ3のロータシャフト3A(図3参照)に連結され、当該ロータシャフト3Aと一体的に回転する円盤状の部位である。具体的には、当該ジョイント部11Aには、ロータシャフト3Aが挿入される係合穴11Cが設けられている。
【0026】
係合穴11Cの内周面には、ロータシャフト3Aに設けられた係合面(図示せず。)と係合する係合面11Dが設けられている。このため、本実施形態に係る係合穴11Cは、略D字状の穴形状となっている。
【0027】
各入力側突起部11Bは、ロータシャフト3Aを公転中心として公転する突起部である。具体的には、各入力側突起部11Bは、ジョイント部11Aの外周側に設けられ、当該ジョイント部11Aから突出した部位である。
【0028】
つまり、本実施形態に係る各入力側突起部11Bは、ジョイント部11Aからロータシャフト3Aと平行に、出力側突起部12B側に向けて突出し、ジョイント部11Aと一体的に公転する。
【0029】
<出力側回転部>
出力側回転部12は、入力側回転部11に入力された駆動力を可動部に伝達する部材である。当該出力側回転部12は、図6に示されるように、出力軸12A、少なくとも1つ(本実施形態では、複数)の出力側突起部12B、及び圧接カム12C等を有する。
【0030】
出力軸12Aは、可動部と係合して当該可動部に駆動力を供給する。各出力側突起部12Bは、出力軸12Aを公転中心として公転する突起部であって、当該出力軸12Aの軸線方向と平行に入力側突起部11B側に向けて突出している(図4参照)。
【0031】
圧接カム12Cは、楔部材15を押圧するための押圧部を構成する部位である。そして、出力軸12A、各出力側突起部12B及び圧接カム12Cは一体化されている。このため、各出力側突起部12Bが公転すると、出力軸12Aが回転する。逆に、出力軸12Aが回転すると、圧接カム12Cが出力軸12Aを中心に回転する。
【0032】
なお、ロータシャフト3A、入力側回転部11及び出力側回転部12は、それぞれの回転中心軸線Loが一致するように、同軸上に配置されている(図2参照)。因みに、出力側回転部12には、ロータシャフト3Aが挿入される挿入穴12D(図3参照)が設けられている。
【0033】
挿入穴12Dには、ロータシャフト3Aと係合面と係合する係合面が設けられていない。このため、ロータシャフト3Aと出力側回転部12との間で駆動力が直接的に伝達されることはない。
【0034】
<伝達部>
伝達部13は、図4に示されるように、入力側突起部11B及び出力側突起部12B等を有して構成される。そして、入力側回転部11に駆動力が入力されたときに、入力側突起部11Bと出力側突起部12Bとが接触して係合する(図12参照)。このため、入力側回転部11に入力された動力は、入力側回転部11から出力側回転部12伝達される。
【0035】
なお、本実施形態では、入力側突起部11B及び出力側突起部12Bそれぞれの接触面は、入力側突起部11Bと出力側突起部12Bとの接触部における仮想の接線L1(図12参照)がロータシャフト3Aの回転中心軸線Loを通るように設定されている。
【0036】
<不動リング>
不動リング14は、回転不可な状態で保持された部材であって、図7に示されるように、環状の内周面14Aが設けられた部材である。当該不動リング14は、図3に示されるように、筒部14Bフランジ部14C等を有している。
【0037】
筒部14Bは、内周面14Aが設けられた筒状の部位である。そして、当該筒部14B内には、入力側突起部11B、出力側突起部12B、楔部材15及びリテーナ16、つまり「図4に示されたもののうち出力軸12A以外の部分」が収納されている。
【0038】
フランジ部14Cは、図2に示されるように、円盤状の部位であって、不動リング14をブラケット17に固定するためのである。ブラケット17は電動モータ3が固定される部位である。
【0039】
フランジ部14Cとブラケット17とは、ネジ17Aにより固定される。ブラケット17と電動モータ3とは、は、ネジ17Bにより固定される。なお、ブラケット17は金属製である。入力側突起部11B、出力側突起部12B、楔部材15及びリテーナ16は樹脂製である。
【0040】
<楔部材及びリテーナ等>
本実施形態に係る一方向継ぎ手10は、図8に示されるように、複数の楔部材15を備える。各楔部材15は合同な形状である。そして、第1の楔部材15と第2の楔部材15とは、回転中心軸線Loについて回転対称の位置に配置されている。
【0041】
各楔部材15は、図9に示されるように、圧接部15A、第1フォロア部15B及び第2フォロア部15C等を少なくとも有する非転動体である。つまり、各楔部材15は、非球体又は非円柱体の部材で構成されている。
【0042】
各圧接部15Aは、遮断機能の実行時に、不動リング14の内周面14Aに圧接する曲面である。そして、各楔部材15は、圧接部15Aが内周面14Aに圧接するロック位置(図13参照)と当該圧接が開放された非ロック位置(図12参照)との間で変位する。
【0043】
なお、「圧接が開放された」とは、例えば、圧接部15Aと内周面14Aとが非接触となる状態、圧接部15Aと内周面14Aとの接触面圧が0とみなすことが可能な程度で圧接部15Aと内周面14Aとが接触している状態、又は接触面圧が所定面圧以下となる状態をいう。
【0044】
なお、本実施形態では、圧接部15A、第1フォロア部15B及び第2フォロア部15Cは、円弧状の曲面に構成されている。圧接部15Aの曲率半径と第2フォロア部15Cの曲率半径は同じである。圧接部15Aの曲率半径は、第1フォロア部15Bの曲率半径より大きい。
【0045】
リテーナ16は、図8に示されるように、各楔部材15の姿勢を保持するための部材である。当該リテーナ16は、図10に示されるように、スペーサ部16A、保持部16B及び開放カム16C等を有して構成されている。
【0046】
スペーサ部16Aは、図3に示されるように、出力側回転部12の中心軸線Loと平行な方向において、出力側回転部12と楔部材15とを非接触状態又は出力側回転部12と楔部材15との接触面圧が予め決められた面圧以下とするための部材である。
【0047】
なお、本実施形態では、図11に示されるように、スペーサ部16Aの厚み寸法H2は、出力側回転部12に設けられたフランジ部12Eの厚み寸法H1と略同じである。このため、本実施形態では、楔部材15との接触面圧は予め決められた面圧以下となる。
【0048】
そして、スペーサ部16Aは、不動リング14と楔部材15との間に配置され、かつ、不動リング14及び楔部材15に対して滑り可能に接触している。つまり、スペーサ部16Aは、不動リング14に対して楔部材15を変位可能とするワッシャとして機能する。
【0049】
フランジ部12Eは、出力側回転部12が不動リング14から抜け出ることを規制する鍔状の突出部である。つまり、フランジ部12Eは、筒部14Bに滑り接触するスラスト軸受け機能を発揮する部位である。
【0050】
本実施形態では、スペーサ部16Aは、出力側回転部12を囲むようにリング状に構成されているとともに、図10に示されるように、複数の保持部16Bが設けられている。各保持部16Bは、スペーサ部16Aから中心軸線Loと平行な方向に延びている。
【0051】
複数の保持部16Bは、図8に示されるように、楔部材15に対して周方向一方側及び他方側それぞれに配置されている。なお、周方向とは、不動リング14の円周方向をいう。開放カム16Cは、各保持部16Bのうち第1フォロア部15Bと対応する面に設けられている(図10参照)。
【0052】
つまり、開放カム16Cは、第1フォロア部15Bと同数設けられている。換言すれば、各開放カム16Cは、図8に示されるように、周方向から第1フォロア部15Bを挟み込む2つの傾斜面にて構成されている。
【0053】
リテーナ16は、入力側回転部11及び出力側回転部12に対して回転中心軸線Loを中心に所定角度範囲内で回転可能である。このため、入力側回転部11に駆動力が作用すると、リテーナ16は、入力側突起部11Bから駆動力を受けて当該駆動力の向きに回転する(図14参照)。
【0054】
そして、開放カム16C、つまり保持部16Bが入力側突起部11Bと一体的に回転して、当該開放カム16Cが第1フォロア部15Bに接触すると、当該第1フォロア部15Bは、開放カム16Cから押圧力F1(図12参照)を受けて楔部材15を非ロック位置、つまり内周面14Aから離間させる向きに変位させる。
【0055】
つまり、第1フォロア部15Bは、開放カム16Cから押圧力F1を受けたときに、圧接部15Aを非ロック位置に変位させる力を発生させる力を発生させるように円周方向に傾いた面に構成されている。
【0056】
第2フォロア部15Cは、図13に示されるように、逆入力が出力側回転部12に入力されたときに圧接カム12Cから押圧力F2を受けて当該楔部材15をロック位置、つまり各楔部材15を不動リング14の内周面14Aに圧接させる。
【0057】
そして、各楔部材15と内周面14Aとの圧接箇所で発生する摩擦力が入力側回転部11の回転を規制する制動力となる。このため、本実施形態では、圧接カム12Cのうち少なくとも第2フォロア部15Cと接触する部位θ(図6参照)は、インボリュート曲線状の曲面にて構成されている。
【0058】
<2.一方向継ぎ手の作動及びその特徴>
例えば、図12に示されるような紙面右回りの駆動力が入力側回転部11に入力されると、各入力側突起部11Bと各出力側突起部12Bとが係合するとともに、各第1フォロア部15Bが各開放カム16Cから押圧力F1を受けて各楔部材15を非ロック位置に変位させる。これにより、入力側回転部11から出力側回転部12に駆動力を伝達される。
【0059】
また、例えば、図13に示されるような紙面左回りの逆入力が出力側回転部12に入力されると、各第2フォロア部15Cは、各圧接カム12Cから押圧力F2を受けて各楔部材15をロック位置に変位させる。これにより、内周面14Aと各圧接部15Aとの摩擦力、及び各位圧接部15Aが内周面14Aに食い込むことにより、逆入力が入力側回転部11に伝達されることが阻止される。
【0060】
そして、本実施形態では、圧接カム12Cのうち少なくとも第2フォロア部15Cと接触する部位θは、インボリュート曲線状の曲面にて構成されている。これにより、当該一方向継ぎ手10では、圧接カム12Cが変位しても、圧接カム12Cと第2フォロア部15Cとの圧力角が大きく変化することが抑制される。
【0061】
したがって、楔部材15の圧接部15Aが不動リング14の内周面14Aに安定的に接触可能となるので、当該一方向継ぎ手10では、安定的に動力伝達を遮断可能となる。つまり、圧接カム12Cの変位量が変化しても圧力角が略一定となるため、安定的に動力伝達を遮断できる。
【0062】
出力側回転部12と楔部材15との接触面圧が予め決められた面圧以下とするスペーサ部16Aを備える。これにより、出力側回転部12に逆入力が入力され、当該出力側回転部12が回転した場合であっても、楔部材15に大きな力が作用することが抑制される。
【0063】
したがって、楔部材15が大きく変位し、圧接カム12Cと第2フォロア部15Cとの圧力角が大きく変化することが抑制される。延いては、圧接部15Aが不動リング14の内周面14Aに安定的に接触可能となるので、当該一方向継ぎ手10では、安定的に動力伝達を遮断可能となる。
【0064】
当該一方向継ぎ手10では、楔部材15の姿勢が保持部16Bにより保持される。これにより、逆入力が大きくなっても各楔部材15が自転してしまうことが抑制される。したがって、内周面14Aと各圧接部15Aとの摩擦力を確実に確保することができるとともに、各圧接部15Aを内周面14Aに確実に食い込ませることが可能となり得る。
【0065】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係るスペーサ部16Aは、リテーナ16と一体化されたリング状の部材であった。これに対して、本実施形態に係るスペーサ部18は、図15に示されるように、リング状ではない。
【0066】
以下の説明は、上述の実施形態に係る一方向継ぎ手10との相違点に関する説明である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0067】
すなわち、スペーサ部18は、リングが2分割されたような形状(例えば、三日月状)であって、リテーナ16と別部材として構成されている。そして、スペーサ部18は、第1実施形態に係るスペーサ部16Aと同様に、出力側回転部12と楔部材15との接触面圧が予め決められた面圧以下とする(図16参照)
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係るスペーサ部16A、18は、出力側回転部12と楔部材15との接触面圧が予め決められた面圧以下とする構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、出力側回転部12と楔部材15とを非接触状態とするスペーサ部16A、18であってもよい。
【0068】
第1実施形態に係るリテーナ16は、スペーサ部16A、保持部16B及び開放カム16C等が一体化された一体品であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、スペーサ部16A、保持部16B及び開放カム16C等が別体であってもよい。
【0069】
上述の実施形態に係る出力側回転部12には、ロータシャフト3Aが挿入される挿入穴12Dが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ロータシャフト3Aが短い場合には、挿入穴12Dは不要である。
【0070】
上述の実施形態では、インボリュート曲線状の曲面であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、サイクロイド曲線等、その他の曲線状の曲面であってもよい。
【0071】
上述の実施形態では、圧接カム12Cと出力側突起12Bとが一体化された構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、圧接カム12Cと出力側突起12Bとが別部材であってもよい。
【0072】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0073】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1… アクチュエータ 3…電動モータ 3A… ロータシャフト
10… 一方向継ぎ手手 11…入力側回転部 11A… ジョイント部
11C… 係合穴 11D…係合面 11B… 入力側突起部
12… 出力側回転部 12A…出力軸 12B… 出力側突起部
12C… 圧接カム 12D…挿入穴 12E… フランジ部
13… 伝達部 14…不動リング 14A… 内周面
14B… 筒部 14C…フランジ部 15… 楔部材
15A… 圧接部 15B…第1フォロア部 15C… 第2フォロア部
16… リテーナ 16A…スペーサ部 16B… 保持部
16C… 開放カム 17…ブラケット
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