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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104643
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】超音波検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20240729BHJP
   G01N 29/06 20060101ALI20240729BHJP
   G01N 29/44 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/06
G01N29/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008969
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶川 敬介
(72)【発明者】
【氏名】井 裕一
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA06
2G047AB01
2G047AB07
2G047BA03
2G047BC03
2G047BC10
2G047CA01
2G047DB02
2G047EA10
2G047GB02
2G047GB15
2G047GB18
2G047GB24
2G047GE01
2G047GE02
2G047GF18
2G047GG34
2G047GH06
(57)【要約】
【課題】超音波難透過材の検査対象物に対してサイジング精度を向上すること。
【解決手段】超音波検査装置1,11は、フルマトリックス捕捉スキャンにより超音波難透過材(検査対象物100)を超音波信号Sでスキャンしたデータを取得し、取得したデータをトータルフォーカシング法による波形合成処理を行い、検査を行う超音波検査装置1であって、1列の圧電素子部3Aが複数並んで配置された圧電素子ユニット3と、圧電素子部3Aから送信される超音波信号Sを集束させる集束手段(R加工3Aa)を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルマトリックス捕捉スキャンにより超音波難透過材を超音波信号でスキャンしたデータを取得し、取得したデータをトータルフォーカシング法による波形合成処理法を用い、検査を行う超音波検査装置であって、
圧電素子部が複数並んで配置された圧電素子ユニットと、
前記圧電素子部から送信される超音波信号を集束させる集束手段と、
を含む、超音波検査装置。
【請求項2】
前記集束手段は、前記圧電素子部が1列に長い1つの圧電素子で構成され、前記超音波難透過材の厚さ方向に向けて凹状のR加工が施される、請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項3】
前記集束手段は、前記圧電素子部が1列に複数の圧電素子を並んで設けられ、前記複数の圧電素子による超音波信号の送信タイミングを制御する、請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項4】
前記圧電素子ユニットと前記超音波難透過材との間に介在される接触媒質をさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、検査対象物を超音波信号によりスキャンして検査する超音波検査装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-158876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査対象部のサイジング精度を向上するには、探傷する検査対象物の内外面の形状把握が重要となる。そのため、複数の探触子を用いたフルマトリックス捕捉(FMC:Full Matrix Capture)スキャンにより検査対象物を超音波信号でスキャンしたデータを取得し、取得したデータをトータルフォーカシング法(TFM:Total Focusing Method)による波形合成処理を行い、アダプティブ処理を行うことで、内外面の形状把握が見込まれる。しかし、検査対象物がステンレスの溶接金属部の場合は超音波難透過材であるため、超音波透過性が悪化し、超音波信号が検査対象物の厚さの内面まで到達しないため、内外面の形状把握が難しい。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、超音波難透過材の検査対象物に対してサイジング精度を向上することのできる超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る超音波検査装置は、フルマトリックス捕捉スキャンにより超音波難透過材を超音波信号でスキャンしたデータを取得し、取得したデータをトータルフォーカシング法による波形合成処理を行い、検査を行う超音波検査装置であって、圧電素子部が複数並んで配置された圧電素子ユニットと、前記圧電素子部から送信される超音波信号を集束させる集束手段と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、超音波難透過材の検査対象物に対してサイジング精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の超音波検査装置の概略構成図である。
図2図2は、実施形態の超音波検査装置の圧電素子ユニットの斜視図である。
図3図3は、実施形態の超音波検査装置の概略構成図である。
図4図4は、実施形態の超音波検査装置の動作の説明図である。
図5図5は、実施形態の超音波検査装置の検査結果の比較図である。
図6図6は、実施形態の超音波検査装置のR加工の説明図である。
図7図7は、実施形態の超音波検査装置のR加工の説明図である。
図8図8は、実施形態の超音波検査装置のR加工の説明図である。
図9図9は、実施形態の超音波検査装置の他の例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
図1は、実施形態の超音波検査装置の概略構成図である。図2は、実施形態の超音波検査装置の圧電素子ユニットの斜視図である。図3は、実施形態の超音波検査装置の概略構成図である。
【0011】
実施形態の超音波検査装置1は、超音波信号Sによる探傷検査を行うものである。検査の対象となる検査対象物100は、超音波難透過材であって、例えば、ステンレス鋼がある。検査対象位部は、超音波難透過材の溶接金属部101であり、検査対象物100の外面100aから内面100bまでの厚さTに亘って設けられる。検査対象物100は、溶接金属部101の施工に伴い、外面100aおよび内面100bが変形してうねりを生じる。実施形態の超音波検査装置1は、このような検査対象物100の溶接金属部101の部分、もしくはその近傍の部分(図1参照)に生じたき裂102のサイジングを行う。
【0012】
なお、以下の説明では、互いに交差する第一方向、第二方向および第三方向において、第一方向を溶接金属部101が連続する方向に交差する幅方向Xといい、第二方向を溶接金属部101が連続する奥行方向Yといい、第三方向を検査対象物100および溶接金属部101の厚さ方向Zという。幅方向Xと奥行方向Yと厚さ方向Zとは、相互に直交する。
【0013】
この超音波検査装置1は、探触子2に設けられた圧電素子ユニット3と、接触媒質4と、制御部5と、を含む。
【0014】
圧電素子ユニット3は、図2および図3に示すように奥行方向Yに沿って延びる1列の圧電素子部3Aが、図1および図2に示すように幅方向Xに沿って複数平行に並んで構成される。各圧電素子部3Aは、検査対象物100および溶接金属部101の厚さ方向Zに超音波信号Sを送信する。また、各圧電素子部3Aは、検査対象物100および溶接金属部101の厚さ方向Zで反射した超音波信号Sを受信する。
【0015】
各圧電素子部3Aは、送信する超音波信号Sを集束させる集束手段を有する。具体的に、集束手段は、各圧電素子部3Aが奥行方向Yに長い1つの圧電素子で構成され、検査対象物100および溶接金属部101の厚さ方向Zに向けて凹状のR加工3Aaが施される。即ち、それぞれの圧電素子部3Aは、長い1つの圧電素子がR加工3Aaによって曲率を有して湾曲して形成される。これにより、集束手段は、それぞれの圧電素子部3Aから送信される超音波信号Sを、検査対象物100の外面100aから内面100bに向けて集束させる。幅方向Xに並ぶ複数の圧電素子部3Aは、それぞれ同じR加工3Aaが施される。
【0016】
接触媒質4は、探触子2の圧電素子ユニット3と検査対象物100の外面100aとの間に介在されこの間を満たす。接触媒質4は、超音波信号Sを伝播可能なものであれば、いかなるものであってもよい。接触媒質4は、例えば、超音波透過ゲル、水などを用いることができる。接触媒質4に超音波透過ゲルを用いた場合、検査対象物100の外面100aに当該超音波透過ゲルを適切な力で押しつけて当接させることで、検査対象物100の外面100aがうねった複雑な凹凸形状であったとしても、当該形状に応じて超音波透過ゲルが変形する。これにより、接触媒質4は、検査対象物100の外面100aの形状を補正し、圧電素子ユニット3と検査対象物100の外面100aとの間を隙間なく満たすことができる。その結果、接触媒質4は、圧電素子ユニット3と検査対象物100との間に超音波信号Sを伝搬させる。このような、圧電素子ユニット3と検査対象物100の外面100aとの間に接触媒質4を介在させ、上記集束手段によって超音波信号Sを集束させる圧電素子部3Aの振動タイミングを計算する処理をアダプティブ処理という。
【0017】
制御部5は、圧電素子ユニット3を制御する。制御部5は、図4に示すように、1つの圧電素子部3Aから超音波信号Sを送信し、反射源で反射した超音波信号Sを他の圧電素子部3Aで受信する。制御部5は、各圧電素子部3Aで受信した超音波信号Sの全波形を抽出する。この処理をフルマトリックス捕捉(FMC)スキャンという。その後、制御部5は、抽出して全波形の超音波信号Sについて、時間遅延を考慮して合成する。制御部5は、この合成した信号において、送信から受信の路程に相当する振幅をプロットし、任意の座標にエコーを重ね合わせ画像化する。この処理をトータルフォーカシング法(TFM)という。また、ここまでの処理をFMC/TFMという。
【0018】
図5において、(a)から(c)は、図1に示す検査対象物100のき裂102のサイジングを行うため、それぞれFMC/TFMにより画像化した結果である。図5(c)は、本実施形態の超音波検査装置1による画像である。図5(b)は、本実施形態の超音波検査装置1に対し、R加工を施されておらず奥行方向Yに沿って直線状に延びた1列の圧電素子部が幅方向Xに沿って複数並んで配置された圧電素子ユニットを用いた場合の画像である。図5(a)は、図5(b)に対し、アダプティブ処理を用いない場合の画像である。
【0019】
図5(a)では、各圧電素子部が直線状であり、かつ、アダプティブ処理を用いないため、検査対象物100の外面100aに生じたうねりの影響によって、内面100bの検出レベルが低く、き裂102の検出も困難である。また、図5(b)では、図5(a)に対してアダプティブ処理を適用することで、検査対象物100の外面100aおよび内面100bの性状がより実物に近い状況であることが確認でき、き裂102の検出も可能であるが、き裂102のサイジング精度が低い。一方、本実施形態の超音波検査装置1による図5(c)では、各圧電素子部3AにR加工3Aaが施されているため、それぞれの圧電素子部3Aから送信される超音波信号Sが検査対象物100の外面100aから内面100bに向けて集束され、内面100bで反射される信号レベルが高く検出され、き裂102のサイジング精度が高い。
【0020】
ここで、図6から図8は、R加工3Aaの設定に係る説明図である。R加工3Aaは、シミュレーション結果から検査対象物100の外面100aから内面100bまでの厚さTに応じて求められる。
【0021】
まず、図6に示すように、超音波探傷検査のシミュレーションにて音場解析を実施した。図6では、呼び径(呼称口径)が4Bの配管において、圧電素子部3AにR加工3Aa無し(Flat)からR加工3Aa有り(R30、R50、R70[mm])を設けた場合に、それぞれの音場解析、および4Bの配管板厚(厚さT=13.5[mm])に相当する内面のFMC/TFM画像化結果を示している。そして、圧電素子部3AにR加工3Aaを設けていない場合と比較し、圧電素子部3AにR加工3Aaを設けた場合は、2倍から3倍程度、信号強度[pts]が増加することが確認できた。
【0022】
次に、図7および図8に示すように、上記シミュレーションによる画像化の信号強度比較をグラフ化した。画像化の観点から周波数は、5MHz以上を使うことが望ましいが、検査対象物100となる配管は、4Bから14Bまでサイズがあり、厚肉の配管では超音波が内面100bまで到達しない懸念がある。このため、5MHzで4Bから8B(図7では6B)、2MHzで10Bから14B(図8では12B)をカバーするようにR加工半径を設計した。そして、図7および図8において、信号強度が最大値(図中赤丸)となるR加工半径で圧電素子部3AにR加工3Aaを加工する。なお、図8の2MHzでは、一般的な圧電素子部3Aの奥行方向Yの寸法(10[mm])では十分な集束効果が得られなかったため、圧電素子部3Aの奥行方向Yの寸法を広く(15[mm])して集束効果を大きくした。また、水距離は、圧電素子部3Aから検査対象物100の外面100aまでの距離であり接触媒質4が介在する寸法である。また、図3に示すように、集束された超音波信号Sは、その集束点Saが検査対象物100の内面100bを超えた位置とする。
【0023】
図9は、実施形態の超音波検査装置の他の例の概略構成図である。
【0024】
図9に示す超音波検査装置11は、上述した超音波検査装置1に対して集束手段が異なる。この超音波検査装置11は、探触子21に設けられた圧電素子ユニット31と、接触媒質41と、制御部51と、を含む。
【0025】
圧電素子ユニット31は、奥行方向Yに沿う1列の圧電素子部31Aが、複数(図9では5個)の圧電素子31Aaで構成され、この圧電素子部31Aが幅方向Xに沿って複数が平行に並んで構成される。各圧電素子部31Aは、検査対象物100および溶接金属部101の厚さ方向Zに超音波信号Sを送信する。また、各圧電素子部31Aは、検査対象物100および溶接金属部101の厚さ方向Zで反射した超音波信号Sを受信する。
【0026】
接触媒質41および制御部51は、上述した超音波検査装置1の接触媒質4および制御部51と同様であり、説明を省略する。
【0027】
超音波検査装置11は、各圧電素子部31Aから送信する超音波信号Sを集束させる集束手段を有する。具体的に、集束手段は、各列の圧電素子部31Aが幅方向Xに沿って並ぶ複数(図9では5個)の圧電素子31Aaで構成される。また、集束手段は、制御部51において、複数の圧電素子31Aaによる超音波信号Sの送信タイミングを左右から中心に向かって時間をずらして制御することで、それぞれの圧電素子部31Aから送信される超音波信号Sを検査対象物100の外面100aから内面100bに向けて集束させる。そして、当該超音波信号Sの送信タイミングは、超音波検査装置1のR加工3Aaと同様に、シミュレーション結果の信号強度が最大値となるように、検査対象物100の外面100aから内面100bまでの厚さTに応じて求められる。また、図9に示すように、集束された超音波信号Sは、その集束点Saが検査対象物100の内面100bを超えた位置とする。幅方向Xに並ぶ複数の圧電素子部31Aは、それぞれ同じ数の圧電素子31Aaが同じ間隔で配置され、超音波信号Sの送信タイミングを同じく制御する。
【0028】
このように、実施形態の超音波検査装置1,11は、フルマトリックス捕捉スキャンにより超音波難透過材(検査対象物100)を超音波信号Sでスキャンしたデータを取得し、取得したデータをトータルフォーカシング法による波形合成処理を行い、検査を行う超音波検査装置1,11であって、1列の圧電素子部3A,31Aが複数並んで配置された圧電素子ユニット3,31と、圧電素子部3A,31Aから送信される超音波信号Sを集束させる集束手段を有する。
【0029】
この超音波検査装置1,11によれば、超音波信号Sを集束させることで、超音波信号Sの信号強度が増加するため、検査対象物100の内面100bで反射される信号レベルが高く検出され、超音波難透過材の検査対象物100であっても、き裂102のサイジング精度を向上できる。
【0030】
また、実施形態の超音波検査装置1では、集束手段は、圧電素子部3Aが1列に長い1つの圧電素子で構成され、超音波難透過材の検査対象物100の厚さ方向Zに向けて凹状のR加工3Aaが施される。
【0031】
この超音波検査装置1によれば、圧電素子部3AにR加工3Aaを施すことで、超音波信号Sを集束させ、超音波信号Sの信号強度を増加できる。
【0032】
また、実施形態の超音波検査装置11では、集束手段は、圧電素子部31Aが1列に複数の圧電素子31Aaを並んで設けられ、複数の圧電素子31Aaによる超音波信号Sの送信タイミングを制御する。
【0033】
この超音波検査装置11によれば、圧電素子部31Aの複数の圧電素子31Aaによる超音波信号Sの送信タイミングを制御することで、超音波信号Sを集束させ、超音波信号Sの信号強度を増加できる。
【0034】
また、実施形態の超音波検査装置1,11では、圧電素子ユニット3,31と超音波難透過材の検査対象物100との間に介在される接触媒質4,41をさらに含む。
【0035】
この超音波検査装置1,11によれば、接触媒質4,41によって、アダプティブ処理を適用することで、超音波難透過材の検査対象物100の外面100aおよび内面100bの性状がより実物に近い状況であることが確認でき、き裂102の検出精度をより向上できる。
【符号の説明】
【0036】
1,11 超音波検査装置
3,31 圧電素子ユニット
3A,31A 圧電素子部
3Aa R加工
31Aa 圧電素子
4,41 接触媒質
100 検査対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9