IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランドディー.ジー.株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-印刷装置 図1
  • 特開-印刷装置 図2
  • 特開-印刷装置 図3
  • 特開-印刷装置 図4
  • 特開-印刷装置 図5
  • 特開-印刷装置 図6
  • 特開-印刷装置 図7
  • 特開-印刷装置 図8
  • 特開-印刷装置 図9
  • 特開-印刷装置 図10
  • 特開-印刷装置 図11
  • 特開-印刷装置 図12
  • 特開-印刷装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104652
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240729BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/21
B41J2/01 401
B41J2/01 303
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008985
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 慶成
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EC03
2C056EC12
2C056EC34
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA10
2C056HA22
(57)【要約】
【課題】副走査方向における移動方向を切り替えながらヘッドとメディアとを相対移動させて多層の印刷画像を形成する際に、印刷画像の画質が低下することを抑制する。
【解決手段】第1ノズル列(44W)と第2ノズル列(44C)とを備えたヘッド(41)と、ヘッド(41)とメディア(M)とを相対的に主走査方向に移動させると共に、ヘッド(41)から液体を吐出させる主走査動作と、ヘッド(41)とメディア(M)とを相対的に副走査方向に移動させる副走査動作と、を繰り返して印刷を実行する制御部(60)と、を備え、制御部(60)は、副走査方向の一方側に副走査動作を行ってから、主走査動作にて第1ノズル列(44W)から第1の液体を吐出させ、第1の液体を吐出させた後、副走査方向の他方側に副走査動作を行い、更に副走査方向の一方側に副走査動作を行ってから、主走査動作にて第2ノズル列(44C)から第2の液体を吐出させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体をメディアに向かって吐出する第1ノズル列と、第2の液体を前記メディアに向かって吐出する第2ノズル列と、を備えたヘッドと、
前記ヘッドと前記メディアとを相対的に主走査方向に移動させる主走査移動機構と、
前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記主走査方向と交差する副走査方向に移動させる副走査移動機構と、
前記主走査移動機構によって前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記主走査方向に移動させると共に、前記ヘッドから液体を吐出させる主走査動作と、前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記副走査方向に移動させる副走査動作と、を繰り返して印刷を実行する制御部と、
を備えた印刷装置であって、
前記制御部は、
前記副走査方向の一方側に前記副走査動作を行ってから、前記主走査動作にて前記第1ノズル列から前記メディアに向けて前記第1の液体を吐出させ、
前記第1の液体を吐出させた後、前記副走査方向の他方側に前記副走査動作を行い、更に前記副走査方向の前記一方側に前記副走査動作を行ってから、前記主走査動作にて前記第2ノズル列から前記メディアに向けて前記第2の液体を吐出させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出させた後に、前記第2ノズル列が、前記副走査動作において、前記副走査方向の前記他方側に相対移動する距離を第1の距離とし、前記副走査方向の前記一方側に相対移動する距離を第2の距離とした場合、
前記第2の距離は、前記第1の距離よりも短い、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記第1ノズル列から前記第1の液体を吐出させた後に、前記第2ノズル列が、前記副走査動作において、前記副走査方向の前記一方側に相対移動する距離を第2の距離とした場合、
前記第2の距離は、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列の少なくとも一方の前記副走査方向における長さよりも短い、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記副走査方向の一方側に前記副走査動作を行ってから、前記主走査動作にて前記第1ノズル列から前記メディアに向けて前記第1の液体を吐出させる動作を複数回繰り返した後、
前記副走査方向の他方側に前記副走査動作を行い、更に前記副走査方向の前記一方側に前記副走査動作を行ってから、前記主走査動作にて前記第2ノズル列から前記メディアに向けて前記第2の液体を吐出させる、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
第1の液体をメディアに向かって吐出する第1ノズル列と、第2の液体を前記メディアに向かって吐出する第2ノズル列と、を備えたヘッドと、
前記ヘッドと前記メディアとを相対的に主走査方向に移動させる主走査移動機構と、
前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記主走査方向と交差する副走査方向に移動させる副走査移動機構と、
前記主走査移動機構によって前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記主走査方向に移動させると共に、前記ヘッドから液体を吐出させる主走査動作と、前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記副走査方向に移動させる副走査動作と、を繰り返して印刷を実行する制御部と、
を備えた印刷装置であって、
前記制御部は、
前記副走査方向の一方側に前記副走査動作を行ってから、前記主走査動作にて前記第1ノズル列から前記メディアに向けて前記第1の液体を吐出させ、
前記第1の液体を吐出させた後、前記副走査方向の一方側に前記副走査動作を行い、前記主走査動作にて前記第2ノズル列から前記メディアに向けて前記第2の液体を吐出させ、
前記第2の液体を吐出させた後、前記副走査方向の他方側に前記副走査動作を行い、更に前記副走査方向の前記一方側に前記副走査動作を行ってから、前記主走査動作にて前記第2ノズル列から前記メディアに向けて前記第2の液体を吐出させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
第1の液体をメディアに向かって吐出する第1ノズル列と、第2の液体を前記メディアに向かって吐出する第2ノズル列と、第3の液体を前記メディアに向かって吐出する第3ノズル列と、を備えたヘッドと、
前記ヘッドと前記メディアとを相対的に主走査方向に移動させる主走査移動機構と、
前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記主走査方向と交差する副走査方向に移動させる副走査移動機構と、
前記主走査移動機構によって前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記主走査方向に移動させると共に、前記ヘッドから液体を吐出させる主走査動作と、前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記副走査方向に移動させる副走査動作と、を繰り返して印刷を実行する制御部と、
を備えた印刷装置であって、
前記制御部は、
前記副走査方向の一方側に前記副走査動作を行ってから、前記主走査動作にて前記第2ノズル列から前記メディアに向けて前記第2の液体を吐出させ、
前記第2の液体を吐出させた後、前記副走査方向の一方側に前記副走査動作を行い、前記主走査動作にて前記第3ノズル列から前記メディアに向けて前記第3の液体を吐出させ、
前記第3の液体を吐出させた後、前記副走査方向の他方側に前記副走査動作を行い、更に前記副走査方向の前記一方側に前記副走査動作を行ってから、前記主走査動作にて前記第1ノズル列から前記メディアに向けて前記第1の液体を吐出させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1画像を形成する第1インク(液体)を吐出する第1ノズル列と、第2画像を形成する第2インク(液体)を吐出する第2ノズル列とを、主走査方向及び副走査方向に移動させながら、第1画像と第2画像とを重ねて多層の画像を形成することが可能な印刷装置が知られている。例えば、特許文献1には、第1インクヘッド及び第2インクヘッドの副走査方向における移動方向を切り替えながら印刷を行う際に、副走査方向における記録媒体(メディア)に対する相対移動距離を適当に調整することによって、多層印刷時の印刷ずれ抑制可能なインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-202785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような多層印刷を行う場合、副走査方向においてインクヘッド(ノズル列)の移動方向を切り替える際に、搬送機構のバックラッシュにより移動誤差が生じるおそれがある。この場合、各ノズル列から吐出される第1インク(液体)と第2インク(液体)とで、副走査方向における移動誤差に起因するインクドットの着弾ズレが生じやすくなり、印刷画像の画質が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、副走査方向における移動方向を切り替えながらヘッドとメディアとを相対移動させて多層の印刷画像を形成する際に、印刷画像の画質が低下することを抑制可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、第1の液体をメディアに向かって吐出する第1ノズル列と、第2の液体を前記メディアに向かって吐出する第2ノズル列と、を備えたヘッドと、前記ヘッドと前記メディアとを相対的に主走査方向に移動させる主走査移動機構と、前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記主走査方向と交差する副走査方向に移動させる副走査移動機構と、前記主走査移動機構によって前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記主走査方向に移動させると共に、前記ヘッドから液体を吐出させる主走査動作と、前記ヘッドと前記メディアとを相対的に前記副走査方向に移動させる副走査動作と、を繰り返して印刷を実行する制御部と、を備えた印刷装置であって、前記制御部は、前記副走査方向の一方側に前記副走査動作を行ってから、前記主走査動作にて前記第1ノズル列から前記メディアに向けて前記第1の液体を吐出させ、前記第1の液体を吐出させた後、前記副走査方向の他方側に前記副走査動作を行い、更に前記副走査方向の前記一方側に前記副走査動作を行ってから、前記主走査動作にて前記第2ノズル列から前記メディアに向けて前記第2の液体を吐出させる、ことを特徴とする印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、副走査方向における移動方向を切り替えながらヘッドとメディアとを相対移動させて多層の印刷画像を形成する際に、印刷画像の画質が低下することを抑制可能な印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A及び図1Bは、印刷装置1の基本構成の説明図である。
図2】ヘッドユニット40の構成の説明図である。
図3】ホワイト画像に重ねてCMYK画像を印刷する動作の概念図である。
図4】従来の印刷方法に基づいて2層の画像を印刷する際の動作について具体的に説明する図である。
図5】副走査移動機構のバックラッシュについて説明する概念図である。
図6】印刷装置1を用いて2層の画像を印刷する際の動作の一例について具体的に説明する図である。
図7】印刷装置1を用いて2層の画像を印刷する際の動作の変形例について説明する図である。
図8】印刷装置1を用いて2層の画像を印刷する際の動作の第2の変形例について説明する図である。
図9】印刷装置1を用いて2層の画像を印刷する際の動作の第3の変形例について説明する図である。
図10】印刷装置1を用いて2層の画像を印刷する際の動作の第4の変形例について説明する図である。
図11】印刷装置1を用いて3層の画像を印刷する際の動作について説明する図である。
図12】印刷装置1のインクヘッド41の変形例について表す図である。
図13図12のインクヘッドから異なる3種類の液体を吐出させることによって、3層の画像を印刷する際の動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
===実施形態===
<基本構成>
本実施形態に係る印刷装置の一例として、インクジェット式の印刷装置1について説明する。図1A及び図1Bは、印刷装置1の基本構成の説明図である。図1Aは、印刷装置1の外観の概略説明図である。図1Bは、印刷装置1のブロック図である。
【0011】
以下の説明では、キャリッジ21の移動方向を「主走査方向」と呼ぶことがある。また、媒体M(印刷用紙、印刷フィルム等の「メディア」に相当)の移動方向を「副走査方向」と呼ぶことがある。印刷装置1において、副走査方向は、媒体Mを搬送する「搬送方向」に相当する。以下では、副走査方向(搬送方向)において媒体Mの供給側を「上流(上流側)」とも呼び、媒体Mの排出側を「下流(下流側)」とも呼ぶ、そして、副走査方向において上流側から下流側へ向かう方向を「順方向」とも呼び、その逆側の方向を「逆方向」とも呼ぶ。
【0012】
印刷装置1は、媒体Mに画像を印刷する装置である。具体的には、印刷装置1は、インクジェットプリンタである。印刷装置1は、キャリッジユニット20と、搬送ユニット30と、ヘッドユニット40と、コントローラー60と、を有する。なお、図1に示される印刷装置1は、媒体Mを副走査方向に移動させることによって印刷を行う構成を有しているが、ヘッドユニット40が副走査方向に移動することによって印刷を行う構成であっても良い。
【0013】
キャリッジユニット20は、キャリッジ21を主走査方向に移動させるユニットである。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジ用モーター22とを有する。キャリッジ21は、主走査方向に往復移動する部材であり、ヘッド(後述するインクヘッド41)を搭載する。キャリッジ用モーター22は、キャリッジ21を主走査方向に移動させるための駆動機構であり、「主走査移動機構」に相当する。
【0014】
搬送ユニット30は、媒体Mを副走査方向に搬送するユニットである。搬送対象となる媒体Mは、ロール紙のような長尺状の印刷媒体でも良いし、単票用紙でも良い。また、媒体M(メディア)は、紙に限られるものではなく、フィルムや布などでも良い。搬送ユニット30は、例えば搬送ローラー31と搬送用モーター32とを有する。搬送ローラー31は、媒体Mを挟んだ状態で回転することによって媒体Mを副走査方向に搬送する部材である。搬送用モーター32は、搬送ローラー31を回転させるための駆動機構であり、「副走査移動機構」に相当する。なお、搬送ユニット30は、搬送ローラー31を用いた構成に限られるものではない。例えば、搬送ユニット30は、搬送台(フラットベッド)を有し、この搬送台を移動させることによって媒体Mを副走査方向に搬送するように構成されても良い。
【0015】
図2は、ヘッドユニット40の構成の説明図である。ヘッドユニット40は、媒体Mに液体(インク)を吐出するためのユニットである。ヘッドユニット40は、インクヘッド41を有する。
【0016】
インクヘッド41は、インク等の液体を吐出する複数のノズル(インクノズル45)を有するヘッドである。インクは、画像(インク画像)を構成するドット(インクドット,インク液滴)を媒体Mに形成するための液体である。インクヘッド41は、複数のインクノズル列44を有する。複数のインクノズル列44は、所定の間隔を空けて主走査方向に並んで配置されている。本実施形態の印刷装置1において、インクヘッド41は、例えば、ホワイトインクを吐出するホワイトインクノズル列44Wと、シアンインクを吐出するシアンインクノズル列44Cと、マゼンタインクを吐出するマゼンタインクノズル列44Mと、イエローインクを吐出するイエローインクノズル列44Yと、ブラックインクを吐出するブラックインクノズル列44Kとを有している。これらのインクノズル列44W,44C,44M,44Y,44Kは、図2に示されるように主走査方向に並んで配置されている。但し、各インクノズル44の並び順や配置は図2の例には限られない。例えば、ホワイトインクノズル列44Wは、CMYKインクノズル列44C~44Kと副走査方向において、ずれて配置されていてもよい。
【0017】
また、インクヘッド41から吐出されるインクの色は、ホワイト(W)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の5色に限られるものでは無い。例えば、ライトマゼンタやライトシアン等の淡色のインクが吐出されるのであっても良いし、オレンジやレッドやグリーンといったCMYKの2次色に相当するインクが吐出されるのであっても良い。さらに、インクヘッド41は、WCMYKのインク以外に、クリアインクやプライマー、各種処理液等の液体を吐出するノズル列を備えていても良い。
【0018】
各色のインク(液体)を吐出するインクノズル列44は、それぞれ副走査方向に等間隔(2×P)で並ぶ複数のノズル(インクノズル45)を有する。ここでは、各色のインクノズル列44W~44Kは、それぞれ千鳥配置された複数のノズル(インクノズル45W~45K)によって構成されている。つまり、各々のインクノズル列44は、第1ノズル群と第2ノズル群とにより構成されており、第1ノズル群は、副走査方向に所定ピッチ(2×P)で並ぶ複数のノズル(インクノズル45)を有しており、第2ノズル群は、第1ノズル群のノズル(インクノズル45)に対して副走査方向に半ピッチPだけずれた状態で副走査方向に所定ピッチ(2×P)で並ぶ複数のノズル(インクノズル45)を有している。但し、それぞれのインクノズル列44は、副走査方向に1列に並ぶ複数のインクノズル45によって構成されても良いし、3列以上に構成されていても良い。
【0019】
図1Bに示すように、ヘッドユニット40は、ヘッド駆動部42を有する。ヘッド駆動部42は、インクヘッド41の各ノズルからの液体(インク)の吐出/非吐出を行わせる駆動部である。本実施形態において、ヘッド駆動部42は、不図示の圧電素子(ピエゾ素子)等によって構成される。コントローラー60は、ヘッド駆動部42を制御することによって、それぞれのノズルからの液体の吐出/非吐出を制御することになる。
【0020】
また、印刷装置1には、インクヘッド41のクリーニングを行うクリーニングユニットや、インクヘッド41やインクノズル45を保護するキャップに滞留したインクを吸引するための吸引機構などが設けられていても良い(何れも不図示)。
【0021】
コントローラー60は、印刷装置1の制御を司る制御部であり、少なくとも記憶部61を有している。コントローラー60は、外部のコンピューターからの印刷指令に基づいて、印刷装置1の駆動部(キャリッジ用モーター22(主走査移動機構)、搬送用モーター32(副走査移動機構)等)を制御する。
【0022】
<従来の多層画像の形成動作について>
続いて、印刷装置1を用いて、従来の印刷方法に基づいて多層の画像を印刷する場合の動作について説明する。図3は、ホワイト画像に重ねてCMYK画像を印刷する動作の概念図である。同図3では、インクヘッド41のホワイトインクノズル列44Wから媒体M上にホワイトインクを吐出してホワイト画像(第1層の画像)を形成する。そして、形成されたホワイト画像(第1層の画像)の上にインクヘッド41のCMYKインクノズル列44C~44KからCMYKのインクをそれぞれ吐出してCMYK画像(第2層の画像)を形成する。このようにして、2層の画像が積層された画像(多層画像)が印刷される。
【0023】
図3に示されるような2層の画像を形成する場合、コントローラー60は、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを、主走査方向及び副走査方向に相対的に移動させながら、インクヘッド41から所定のインクを吐出させる動作を行う。図4は、従来の印刷方法に基づいて2層(多層)の画像を印刷する際の動作について具体的に説明する図である。なお、印刷装置1を用いて画像を印刷する場合、媒体M(メディア)が副走査方向に移動し、インクヘッド41は副走査方向に移動しないが、図4では、説明の便宜上、副走査方向においてインクヘッド41の位置が移動するような表現としている。
【0024】
2層の画像を印刷する際に、コントローラー60は搬送用モーター32(副走査移動機構)を作動させて、媒体M(メディア)を副走査方向に所定量搬送する。すなわち、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向に移動させる「副走査動作」を行う。次いで、コントローラー60は、キャリッジ用モーター22(主走査移動機構)を作動させて、インクヘッド41を主走査方向に移動させながらインクノズル列44から媒体M(メディア)上にインク(液体)を吐出させる。すなわち、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させると共に、インクヘッド41から所定の液体(ホワイトインクやCMYKインク)を吐出させる「主走査動作」を行う。そして、コントローラー60は、この副走査動作と主走査動作とを繰り返すことにより、媒体M(メディア)上に画像を形成する。
【0025】
図4では、第1パス目の動作において、先ず、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における順方向(図4では副走査方向における一方側)に移動させる副走査動作が行われる。そして、副走査方向の所定位置にて、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、ホワイトインクノズル列44Wからホワイトインクを吐出する主走査動作が行われ、媒体M(メディア)上にホワイト画像が形成される。
【0026】
次いで、第2パス目の動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における逆方向(図4では副走査方向における他方側)に移動させる副走査動作が行われる。このとき、インクヘッド41は、副走査方向において、第1パス目のインクヘッド41の位置よりも他方側まで相対移動する(図4参照)。そして、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、CMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出する主走査動作が行われ、媒体M(メディア)上にCMYK画像が形成される。
【0027】
次いで、第3パス目の動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における順方向に移動させる副走査動作が行われる。このとき、インクヘッド41は、副走査方向において、第1パス目のインクヘッド41の位置よりも一方側まで相対移動する(図4参照)。そして、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、ホワイトインクノズル列44Wからホワイトインクを吐出する主走査動作が行われる。
【0028】
このような動作を繰り返すことにより、ホワイト画像に重ねてCMYK画像を形成することができる。例えば、図4において点線で囲まれた領域を画素列Aとした場合、当該画素列Aには第1パス目,第3パス目,第5パス目,第7パス目の動作により、ホワイト画像が形成される。そして、ホワイト画像が形成された後、画素列Aには第8パス目,第10パス目,第12パス目,第14パス目の動作により、CMYK画像が形成される。すなわち、副走査方向の一方側に副走査動作を行ってから、主走査動作にて第1ノズル列(例えばホワイトインクノズル列44W)から或る画素に向けて第1の液体(例えばホワイトインク)を吐出させる。そして、第1の液体を吐出させた後、副走査方向の他方側に副走査動作を行ってから、主走査動作にて第2ノズル列(例えばCMYKインクノズル列44C~44K)から或る画素に向けて第2の液体(例えばCMYKインク)を吐出させる。これにより、媒体M(メディア)上の或る画素に2層(多層)の画像を印刷することができる。
【0029】
<本実施形態における多層画像の形成動作について>
図4で説明した従来の多層画像印刷動作では、副走査動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における相対的な移動方向がパス毎に切り替えられるため、副走査方向におけるインク吐出位置にずれが生じ易くなるおそれがある。例えば、図4において、第1パス目の動作から第2パス目の動作に移る際に、インクヘッド41と媒体M(メディア)とは相対的に副走査方向における順方向から逆方向へと移動方向が切り替えられる。このとき、副走査移動機構(搬送用モーター32)のバックラッシュによる移動誤差が生じ、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における相対移動が正確に行われなくなる場合がある。
【0030】
図5は、副走査移動機構(搬送用モーター32)のバックラッシュについて説明する概念図である。印刷装置1を含む一般な印刷装置では、図5の様なギアを組み合わせた移動機構が用いられる。同図5に示される副走査移動機構では、紙面と垂直な方向に沿った回転軸を中心として回転するギアを噛み合わせることによって、媒体M(若しくはインクヘッド41)を副走査方向に移動させる。このとき、ギアとギアの噛み合わせ部に隙間(バックラッシュ)を設けることで回転時にギア同士が干渉することを抑制し、スムーズな動作を可能としている。しかしながら、ギアの回転方向を逆転させる際には、このバックラッシュ分の移動誤差が生じるため、図4のようにインクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における相対的な移動方向を切り替えながら印刷を行う場合、副走査方向において移動誤差(媒体Mの搬送量の誤差やインクヘッド41の移動量の誤差)が生じやすくなる。
【0031】
特に、多層画像の印刷を行う場合には、或る画素に向けて吐出された第1の液体(例えばホワイトインク)の着弾位置と、当該或る画素に向けて吐出された第2の液体(例えばCMYKインク)の着弾位置とが副走査方向においてずれが生じやすくなり、印刷される多層画像の画質が悪化しやすくなる。
【0032】
これに対して、本実施形態では、多層画像の印刷を行う際に、以下の様な動作を行うことで、形成される画像の画質悪化を抑制することができる。図6は、印刷装置1を用いて2層(多層)の画像を印刷する際の動作の一例について具体的に説明する図である。
【0033】
本実施形態で多層画像を印刷する場合、コントローラー60は、第1パス目の動作において、先ず、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における順方向(図6において一方側)に移動させる副走査動作を行う。そして、副走査方向における所定位置にて、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、ホワイトインクノズル列44Wからホワイトインクを吐出する主走査動作を行い、媒体M(メディア)上にホワイト画像を形成する。
【0034】
次いで、第2パス目の動作において、コントローラー60は、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における逆方向(図6において他方側)に移動させる副走査動作を行い、更にインクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における順方向に移動させる副走査動作を行う。図6においては、第1パス目の動作から第2パス目の動作に移る際に、媒体M(メディア)に対してインクヘッド41を副走査方向における逆方向に距離Md1だけ相対移動させ、更に媒体M(メディア)に対してインクヘッド41を副走査方向における順方向に距離Md2だけ相対移動させている。その後、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、CMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出する主走査動作を行い、媒体M(メディア)上にCMYK画像を形成する。
【0035】
そして、第1~第2パス目の動作を繰り返すことで(第3パス目以降)、2層(多層)の画像が印刷される。図6では、第1パス目,第3パス目,第5パス目,第7パス目の動作により、画素列Aにホワイト画像が形成され、第8パス目,第10パス目,第12パス目,第14パス目の動作により、画素列AにCMYK画像が形成される。すなわち、本実施形態では、副走査方向の一方側に副走査動作を行ってから、主走査動作にて第1ノズル列(例えばホワイトインクノズル列44W)から或る画素に向けて第1の液体(例えばホワイトインク)を吐出させる。そして、第1の液体を吐出させた後、副走査方向の他方側に副走査動作(図6の距離Md1)を行い、更に副走査方向の一方側に副走査動作(図6の距離Md2)を行ってから、主走査動作にて第2ノズル列(例えばCMYKインクノズル列44C~44K)から或る画素に向けて第2の液体(例えばCMYKインク)を吐出させる。
【0036】
このような動作を行うことで、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における相対移動方向を切り替える際に、図5で説明したバックラッシュによって移動誤差が生じることを抑制することができる。つまり、副走査動作において、バックラッシュの影響を考慮して、媒体M(メディア)に対してインクヘッド41を副走査方向における逆方向に予め余分に長い距離(Md1)を移動させてから、副走査方向における順方向に余分な距離(Md2)だけ戻すことにより、副走査動作において相対移動する方向を切り替える際に生じる移動誤差を相殺することができる。そして、第1ノズル列と第2ノズル列とで、副走査動作が完了する直前における移動方向を統一(図6では副走査方向における順方向に統一)することで、副走査移動機構のバックラッシュによって生じる移動誤差を軽減することができる。したがって、各ノズル列から媒体M(メディア)に向けて吐出される第1の液体のドット着弾位置と、当該媒体M(メディア)に向けて吐出される第2の液体のドット着弾位置との位置関係が副走査方向にずれ難くなり、印刷される画像の画質低下が抑制される。
【0037】
なお、上述の実施形態では、第1画像としてホワイトインクによるホワイト画像を印刷し、第2画像としてCMYKインクによるCMYK画像を印刷する例について説明したが、2層の画像を形成する各層の構成はこれには限られない。例えば、第1画像としてプライマーによる下地層を形成してから第2画像としてCMYK画像を形成しても良いし、第1画像としてCMYK画像を形成してから第2画像としてクリアインク等によるオーバーコート層やホワイトインクによるホワイト画像を形成しても良い。また、第1画像と第2画像とで同じ種類の液体が吐出されるのであっても良い。例えば、CMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出して第1画像を形成し、当該第1画像に重ねてCMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出して第2画像が形成されるのであっても良い。
【0038】
また、図6において、インクヘッド41からホワイトインク(第1の液体)を吐出させた後、副走査動作においてインクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向における逆方向(他方側)に相対移動させる距離Md1を第1の距離、副走査方向における順方向(一方側)に相対移動させる距離Md2を第2の距離とした場合、第2の距離(Md2)は、第1の距離(Md1)よりも短いことが好ましい。第2の距離Md2は、副走査移動機構(搬送用モーター32)のバックラッシュによる副走査方向における移動誤差を軽減するために設定される距離である。言い換えると、第2の距離Md2は、第1の距離Md1において副走査方向の他方側に余計に相対移動した分を相殺し、且つ、第1ノズル列と第2ノズル列とで、副走査動作が完了する直前における移動方向を統一するために設定される。ここで、第2の距離Md2を第1の距離Md1よりも短くすることで、副走査動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における相対的な移動方向を切り替えながら、多層の画像を印刷することができる。
【0039】
また、副走査方向において、第1の距離(Md1)から第2の距離(Md2)を減じた距離(図6におけるMd3)を第3の距離としたときに、第2の距離Md2は第1の距離Md1よりも短く、かつ、第2の距離Md2は第3の距離Md3よりも短いことが望ましい。第2の距離Md2を第1の距離Md1よりも短くし、かつ、第2の距離Md2を第3の距離Md3よりも短くすることで、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における全体の相対移動距離をなるべく短くすることができる。インクヘッド41を相対移動させる距離を短くすることにより、印刷のスループットを向上させることができる。
【0040】
さらに、第2の距離Md2は、インクヘッド41に設けられたインクノズル列44W~44Kの副走査方向における各々の長さよりも短いことがより好ましい。インクノズル列44の副走査方向における長さは、例えば3~5センチ程度であり、第2の距離Md2は、例えば、0.1センチ程度である。上述したように、第2の距離Md2は、第1の距離Md1において副走査方向の他方側に余計に相対移動した分を相殺して、第1ノズル列と第2ノズル列とで、副走査動作が完了する直前における移動方向を統一するために設定される。そのため、第2の距離Md2はなるべく短いことが好ましい。したがって、第2距離Md2が、第1ノズル列(ホワイトインクノズル列44W)及び第2ノズル列(CMYKインクノズル列44C~44K)の少なくとも一方よりも短ければ、逆の場合と比較して、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における全体の相対移動距離をより短くすることができる。これにより、印刷のスループットをより向上させることができる。
【0041】
ここで、副走査方向におけるインクノズル列44W~44Kの長さとは、各インクノズル列44において副走査方向に沿って断続的に並んだ複数のインクノズル45,45…のうち(図2参照)、副走査方向の最も一方側に配置されているインクノズル45の中心位置と、副走査方向の最も他方側に配置されているインクノズル45の中心位置との、副走査方向における距離(中心間距離)のことである。
【0042】
また、図6では説明を容易にするために第2の距離Md2は比較的大きく図示されているが、第2の距離Md2は、図6における画素列Aの副走査方向における幅WAよりも短いことが好ましい。図6の例では、画素列Aには4回の主走査動作によって画像が形成され、画素列Aの副走査方向における幅WAは、インクノズル列44の副走査方向における長さの4分の1の長さである。すなわち、第2の距離Md2は、インクノズル列44の副走査方向における長さを、所定の領域の印刷を完了させるのに必要な主走査動作の回数(パス数)で割った長さよりも短いことが好ましい。第2の距離Md2をインクノズル列44の副走査方向における長さを所定の領域の印刷を完了させるのに必要な主走査動作の回数(パス数)で割った長さよりも短くすることで、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における全体の相対移動距離をより短くすることができる。これにより、印刷のスループットを向上させることができる。
【0043】
図7は、印刷装置1を用いて2層の画像を印刷する際の動作の変形例について説明する図である。図7の変形例では、図6とは異なるタイミング(パス)で、第1ノズル列と第2ノズル列との副走査動作が完了する直前における移動方向の統一を行っている。例えば、図7では、第2パス目の副走査動作においてインクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向における逆方向(図7において一方側)に移動させてから、主走査動作にてCMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出させている。そして、第3パス目の副走査動作においてインクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向における順方向(図7において他方側)に余分に移動させてから(距離Md1)、副走査方向における逆方向に余分な距離だけ戻して(距離Md2)、主走査動作にてホワイトインクノズル列44Wからホワイトインクを吐出させている。これにより、図6で説明したのと同様に、副走査動作において移動方向を切り替える際に生じる移動誤差が相殺され、第1ノズル列と第2ノズル列とで、副走査動作が完了する直前における移動方向を統一(図7では副走査方向における逆方向に統一)することで、副走査移動機構のバックラッシュによって生じる移動誤差を軽減することができる。
【0044】
図8は、印刷装置1を用いて2層の画像を印刷する際の動作の第2の変形例について説明する図である。図6及び図7では、画素列Aにおいて第1画像及び第2画像がそれぞれ4パス分の動作によって形成されていたが、図8の例では、媒体M(メディア)上の画素列Bに対して、1パスの動作で第1画像及び第2画像がそれぞれ形成される。例えば、図8では、第1パス目の副走査動作においてインクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向における順方向(図8において一方側)に移動させてから、主走査動作にてホワイトインクノズル列44Wからホワイトインクを吐出させ、画素列Bにホワイト画像を印刷している。そして、第2パス目の副走査動作においてインクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向における逆方向(図8において他方側)に余分に移動させてから(距離Md1)、副走査方向における順方向に余分な距離だけ戻して(距離Md2)、主走査動作にてCMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出させている。すなわち、図8では、第1パス目の動作により、画素列Bにホワイト画像が形成され、第4パス目の動作により、画素列BにCMYK画像が形成される。
【0045】
図9は、印刷装置1を用いて2層の画像を印刷する際の動作の第3の変形例について説明する図である。上述の実施形態では、或るパスから次のパスに移る毎に、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における相対移動の方向が切り替えられていたが、図9では、副走査方向における相対移動の方向の切り替え回数が少なくなっている。例えば、図9では、副走査動作においてインクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向における順方向(図9において一方側)に移動させてから、主走査動作にてホワイトインクノズル列44Wからホワイトインクを吐出させる動作を、第1パス目から第4パス目まで繰り返して行っている。その後、第5パス目の副走査動作においてインクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向における逆方向(図9において他方側)に余分に移動させてから(距離Md1)、副走査方向における順方向に余分な距離だけ戻して(距離Md2)、主走査動作にてCMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出させる。次いで、副走査動作においてインクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向における順方向(図9において一方側)に移動させてから、主走査動作にてCMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出させる動作を、第6~第8パス目まで繰り返す。
【0046】
そして、同様の動作を繰り返すことで(第9パス目以降の動作)、2層(多層)の画像が印刷される。図9では、第1~第4パス目の動作により、画素列Cにホワイト画像が形成され、第8パス目,第13~第15パス目の動作により、画素列CにCMYK画像が形成される。すなわち、副走査方向の一方側に副走査動作を行ってから、主走査動作にて第1ノズル列(ホワイトインクノズル列44W)から或る画素に向けて第1の液体(ホワイトインク)を吐出させる動作を複数回繰り返す。その後、副走査方向の他方側に副走査動作(図9の距離Md1)を行い、更に副走査方向の一方側に副走査動作(図9の距離Md2)を行ってから、主走査動作にて第2ノズル列(CMYKインクノズル列44C~44K)から或る画素に向けて第2の液体(CMYKインク)を吐出させる。
【0047】
したがって、図9(第3の変形例)では、図6図8の例と比較して、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における相対移動方向の切り替え回数を少なくすることができる。これにより、第1の液体によって形成される第1画像と、第2の液体によって形成される第2画像との副走査方向における位置ずれが生じ難くなり、印刷画像の画質が低下することを抑制しやすくなる。
【0048】
また、図9の印刷動作は、以下のように変形しても良い。図10は、印刷装置1を用いて2層の画像を印刷する際の動作の第4の変形例について説明する図である。図10の印刷動作では、副走査動作においてインクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向における順方向(図10において一方側)に余分に移動させた後(距離Md1)、副走査方向における逆方向(図10において他方側)に余分な距離だけ戻してから(距離Md2)主走査動作にてホワイトインクを吐出させる。そして、この動作を第1パス目から第4パス目まで繰り返して行っている。次いで、第5パス目に、副走査動作においてインクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向における逆方向(図10において他方側)に移動させ、主走査動作にてCMYKインクを吐出させ、第6~第8パス目で、ホワイトインクの吐出動作と同様の動作を繰り返す。
【0049】
図10では、第1~第4パス目の動作により、画素列Cにホワイト画像が形成され、第8パス目,第13~第15パス目の動作により、画素列CにCMYK画像が形成される。すなわち、副走査方向の一方側に副走査動作を行い、更に副走査方向の他方側に副走査動作を行ってから、主走査動作にて第1ノズル列(ホワイトインクノズル列44W)から或る画素に向けて第1の液体(ホワイトインク)を吐出させる動作を複数回繰り返す。その後、副走査方向の他方側に副走査動作を行い、主走査動作にて第2ノズル列(CMYKインクノズル列44C~44K)から或る画素に向けて第2の液体(CMYKインク)を吐出させる。
【0050】
このような印刷動作によると、第1ノズル列と第2ノズル列とで、副走査動作が完了する直前における移動方向が統一(図10では副走査方向における逆方向に統一)されるため、副走査移動機構のバックラッシュによって生じる移動誤差を軽減することができる。したがって、各ノズル列からメディアに向けて吐出される第1の液体のドット着弾位置と、当該メディアに向けて吐出される第2の液体のドット着弾位置との位置関係が副走査方向にずれ難くなり、印刷される画像の画質低下が抑制される。
【0051】
<3層以上の画像の形成動作について>
印刷装置1を用いて多層画像を印刷する際に、第1画像と第2画像からなる2層の画像を形成する動作について説明したが、3層以上の画像を形成することも可能である。図11は、印刷装置1を用いて3層の画像を印刷する際の動作について説明する図である。同図11では、第1画像としてCMYKインクからなるCMYK画像、第2画像としてホワイトインクからなるホワイト画像、第3画像としてCMYKインクからなるCMYK画像を形成する場合の例について表している。すなわち、第2の液体(CMYKインク)によって形成される画像の間に、第1の液体(ホワイトインク)によって形成される画像が挟まれた3層(多層)の画像を形成することができる。なお、第1画像としてのCMYK画像と第3画像としてのCMYK画像は、同じ画像であってもよいし、異なっていてもよい。
【0052】
図11において、コントローラー60は、先ず、第1パス目の動作において、所定の副走査動作及び主走査動作を行い、インクヘッド41のCMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出して、媒体M(メディア)上にCMYK画像を形成する。
【0053】
次いで、第2パス目の動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における逆方向(図11において一方側)に移動させる副走査動作を行う。そして、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、ホワイトインクノズル列44Wからホワイトインクを吐出する主走査動作を行い、媒体M(メディア)上にホワイト画像を形成する。
【0054】
次いで、第3パス目の動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における逆方向(図11において一方側)に移動させる副走査動作を行う。そして、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、CMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出する主走査動作を行う。
【0055】
次いで、第4パス目の動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における順方向(図11において他方側)に余分に移動させる副走査動作を行い(距離Md1)、更にインクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における逆方向(図11において一方側)に余分な距離だけ戻すように移動させる副走査動作を行う(距離Md2)。そして、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、CMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出する主走査動作を行う。
【0056】
これらの動作(第2パス目~第4パス目の動作)を繰り返すことにより、媒体M(メディア)上に3層の画像を形成することができる。例えば、図11では、第1パス目,第4パス目,第7パス目,第10パス目の動作により、画素列DにCMYK画像(第1画像)が形成され、第11パス目,第14パス目,第17パス目,第20パス目の動作により、画素列Dにホワイト画像(第2画像)が形成される。そして、第21パス目,第24パス目,第27パス目,第30パス目の動作により、画素列DにCMYK画像(第3画像)が形成される。
【0057】
すなわち、図11の例では、副走査方向の一方側に副走査動作を行ってから、主走査動作にて第1ノズル列(例えばホワイトインクノズル列44W)から或る画素に向けて第1の液体(例えばホワイトインク)を吐出させる(図11の第2パス目)。そして、第1の液体を吐出させた後、副走査方向の一方側に副走査動作を行い、主走査動作にて第2ノズル列(CMYKインクノズル列44C~44K)から或る画素に向けて第2の液体(CMYKインク)を吐出させる(図11の第3パス目)。そして、第2の液体を吐出させた後、副走査方向の他方側に副走査動作(図11の距離Md1)を行い、更に副走査方向の一方側に副走査動作(図11の距離Md2)を行ってから、主走査動作にて第2ノズル列(CMYKインクノズル列44C~44K)から或る画素に向けて第2の液体(CMYKインク)を吐出させる(図11の第4パス目)。
【0058】
これにより、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における相対移動方向を切り替える際に、バックラッシュによって移動誤差が生じることを抑制しつつ、3層の画像が積層された多層画像を印刷することができる。つまり、媒体M(メディア)に対してインクヘッド41を副走査方向における順方向に予め余分に長い距離(Md1)を移動させてから、副走査方向における逆方向に余分な距離(Md2)だけ戻すことにより、副走査動作において相対移動方向を切り替える際に生じる移動誤差を相殺できる。そして、第1ノズル列と第2ノズル列とで、副走査動作が完了する直前における移動方向を統一(図11では副走査方向における逆方向に統一)することで、副走査移動機構のバックラッシュによって生じる移動誤差を軽減することができる。したがって、各ノズル列からメディアに向けて吐出される第1の液体のドット着弾位置と、当該メディアに向けて吐出される第2の液体のドット着弾位置との位置関係が副走査方向にずれ難くなり、3層の画像を形成する場合であっても画質低下を抑制することができる。同様の方法により、4層以上の画像を形成することも可能である。
【0059】
図11では、同じ液体(CMYKインク)によって形成される画像(第1画像及び第3画像)の間に、異なる液体(ホワイトインク)によって形成される画像(第2画像)が挟まれた3層(多層)の画像を形成する例について説明したが、3層の画像のそれぞれが異なる液体によって形成されるのであっても良い。図12は、印刷装置1のインクヘッド41の変形例について表す図である。図13は、図12のインクヘッドから異なる3種類の液体を吐出させることによって3層の画像を印刷する際の動作について説明する図である。
【0060】
図12に示されるインクヘッド41には、図2で説明したインクヘッド41の各インクノズル列44(ホワイトインクノズル列44W及びCMYKインクノズル列44C~44K)に加えて、クリアインクを吐出するクリアインクノズル列44CLが設けられている。クリアインクノズル列44CLの構成は他のインクノズル列44と略同様であるものとする。但し、クリアインクノズル列44CLは、主走査方向において図12とは異なる位置に配置されていても良い。また、インクヘッド41に、クリアインク以外の他の液体(例えばプライマー等)を吐出するノズル列が設けられるのであっても良い。これらのインクノズル列44CL,44W,44C,44M,44Y,44Kは、図12に示されるように主走査方向に並んで配置されている。但し、各インクノズル44の並び順や配置は図12の例には限られない。例えば、ホワイトインクノズル列44Wやクリアインクノズル列44CLは、CMYKインクノズル列44C~44Kと副走査方向において、ずれて配置されていてもよい。
【0061】
図13では、図12に示されるインクヘッド41を用いることによって、第1画像としてホワイトインクからなるホワイト画像、第2画像としてCMYKインクからなるCMYK画像、第3画像としてクリアインクからなるクリア画像を有する3層の画像を形成する場合の例について表している。コントローラー60は、第1パス目の動作において、所定の副走査動作及び主走査動作を行い、、媒体M(メディア)上にホワイト画像を形成する。
【0062】
次いで、第2パス目の動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における逆方向(図13において一方側)に移動させる副走査動作を行う。そして、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、CMYKインクノズル列44C~44KからCMYKインクを吐出する主走査動作を行い、CMYK画像を形成する。
【0063】
次いで、第3パス目の動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における逆方向(図13において一方側)に移動させる副走査動作を行う。そして、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、クリアインクノズル列44CLからクリアインクを吐出する主走査動作を行い、クリア画像を形成する。
【0064】
次いで、第4パス目の動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における順方向(図13において他方側)に余分に移動させる副走査動作を行い(距離Md1)、更にインクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向における逆方向に余分な距離だけ戻すように移動させる副走査動作を行う(距離Md2)。そして、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に主走査方向に移動させつつ、ホワイトインクノズル列44Wからホワイトインクを吐出する主走査動作を行う。
【0065】
これらの動作(第2パス目~第4パス目の動作)を繰り返すことにより、媒体M(メディア)上に3層の画像を形成することができる。例えば、図13では、第1パス目,第4パス目,第7パス目,第10パス目の動作により、画素列Eにホワイト画像(第1画像)が形成され、第11パス目,第14パス目,第17パス目,第20パス目の動作により、画素列EにCMYK画像(第2画像)が形成される。そして、第21パス目,第24パス目,第27パス目,第30パス目の動作により、画素列Eにクリア画像(第3画像)が形成される。
【0066】
すなわち、図13の例では、副走査方向の一方側に副走査動作を行ってから、主走査動作にて第2ノズル列(例えばCMYKインクノズル列44C~44K)から或る画素に向けて第2の液体(例えばCMYKインク)を吐出させる(図13の第2パス目)。そして、第2の液体を吐出させた後、副走査方向の一方側に副走査動作を行い、主走査動作にて第3ノズル列(例えばクリアノズル列44CL)から或る画素に向けて第3の液体(例えばクリアインク)を吐出させる(図13の第3パス目)。そして、第3の液体を吐出させた後、副走査方向の他方側に副走査動作(図13の距離Md1)を行い、更に副走査方向の一方側に副走査動作(図13の距離Md2)を行ってから、主走査動作にて第1ノズル列(ホワイトインクノズル列44W)から或る画素に向けて第1の液体(ホワイトインク)を吐出させる(図13の第4パス目)。
【0067】
これにより、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における相対移動方向を切り替える際に、バックラッシュによって移動誤差が生じることを抑制しつつ、夫々異なる3種類の液体からなる3層の画像が積層された多層画像を印刷することができる。つまり、媒体M(メディア)に対してインクヘッド41を副走査方向における順方向に予め余分に長い距離(Md1)だけ移動させてから、副走査方向における逆方向に余分な距離(Md2)だけ戻すことにより、副走査動作において相対移動する方向を切り替える際に生じる移動誤差を相殺できる。そして、第1ノズル列~第3ノズル列のそれぞれで、副走査動作が完了する直前における移動方向を統一(図13では副走査方向における逆方向に統一)することで、副走査移動機構のバックラッシュによって生じる移動誤差を軽減することができる。したがって、各ノズル列からメディアに向けて吐出される第1~第3の液体のドット着弾位置が副走査方向にずれ難くなり、3層の画像を形成する際の画質低下を抑制することができる。同様の方法により、4層以上の画像を形成することも可能である。
【0068】
なお、図11及び図13で、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向に余分に移動させる距離Md1を第1の距離、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを相対的に副走査方向に余分な距離だけ戻すように移動させる距離Md2を第2の距離とした場合、図6で説明したのと同様に、第2の距離Md2は、第1の距離Md1よりも短いことが好ましい。第2の距離Md2を第1の距離Md1よりも短くすることで、副走査動作において、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における相対的な移動方向を切り替えながら、多層の画像を印刷することができる。
【0069】
また、副走査方向において、第1の距離(Md1)から第2の距離(Md2)を減じた距離を第3の距離(図11及び図13におけるMd3)としたときに、第2の距離Md2は第1の距離Md1よりも短く、かつ、第2の距離Md2は第3の距離Md3よりも短いことが望ましい。第2の距離Md2を第1の距離Md1よりも短くし、かつ、第2の距離Md2を第3の距離Md3よりも短くすることで、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における全体の相対移動距離をなるべく短くすることができ、印刷のスループットを向上させることができる。
【0070】
また、第2の距離Md2は、インクヘッド41に設けられたインクノズル列44CL,44W,44C~44Kのうち少なくとも何れかの、副走査方向における長さよりも短いことがより好ましい。これにより、印刷のスループットを向上させることができる。
【0071】
また、第2の距離Md2は、図11における画素列D,図13における画素列Eの副走査方向における幅WD,WEよりも短いことが好ましい。図11及び図13の例では、画素列D,画素列Eの副走査方向における幅WD,WEは、夫々インクノズル列44の副走査方向における長さの4分の1の長さである。すなわち、第2の距離Md2は、インクノズル列44の副走査方向における長さを、所定の領域の印刷を完了させるのに必要な主走査動作の回数(パス数)で割った長さよりも短いことが好ましい。第2の距離Md2をインクノズル列44の副走査方向における長さを所定の領域の印刷を完了させるのに必要な主走査動作の回数(パス数)で割った長さよりも短くすることで、インクヘッド41と媒体M(メディア)との副走査方向における全体の相対移動距離をより短くすることができる。これにより、印刷のスループットを向上させることができる。
【0072】
===その他の実施形態===
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0073】
上述の実施形態では、副走査移動機構(搬送用モーター32)によって媒体Mを副走査方向に沿って搬送することによって、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向に相対移動(副走査動作)させる構成の印刷装置1が説明されていたが、他の構成を有する印刷装置にも本願発明を適用することが可能である。
【0074】
例えば、フラットベッドタイプの載置台を備え、媒体M(メディア)を載置した状態で載置台を副走査方向に移動させることによって、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向に相対移動(副走査動作)させる構成の印刷装置であっても良い。また、インクヘッド41が主走査方向及び副走査方向に自在に移動することが可能な、所謂ガントリータイプのヘッドユニット40を備えることにより、インクヘッド41と媒体M(メディア)とを副走査方向に相対移動(副走査動作)させる構成の印刷装置であっても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 印刷装置、
20 キャリッジユニット、
21 キャリッジ、22 キャリッジ用モーター(主走査移動機構)、
30 搬送ユニット、
31 搬送ローラー、32 搬送用モーター(副走査移動機構)、
40 ヘッドユニット、
41 インクヘッド、42 ヘッド駆動部、
44 インクノズル列、
44C シアンインクノズル列(第2ノズル列)、44M マゼンタインクノズル列、
44Y イエローインクノズル列、44K ブラックインクノズル列、
44W ホワイトインクノズル列(第1ノズル列)、
44CL クリアインクノズル列(第3ノズル列)、
45 インクノズル、
44C シアンインクノズル、44M マゼンタインクノズル、
44Y イエローインクノズル、44K ブラックインクノズル、
44W ホワイトインクノズル、44CL クリアインクノズル、
60 コントローラー(制御部)、
61 記憶部、
M 媒体(メディア)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13