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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104659
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】リニア駆動装置及び部品実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20240729BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H05K13/04 A
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008995
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄一
【テーマコード(参考)】
5E353
5H641
【Fターム(参考)】
5E353GG01
5E353GG22
5E353JJ22
5E353JJ26
5E353JJ33
5E353JJ44
5E353JJ48
5E353QQ07
5E353QQ12
5H641BB06
5H641GG03
5H641HH02
5H641JA09
5H641JB04
(57)【要約】
【課題】リニアモータの可動子(電機子)の発熱に起因する各部の熱変形を抑制する。
【解決手段】部品実装装置1はリニア駆動装置を有する。リニア駆動装置は、固定レール20及びスライダ22を備えるY方向案内部材11と、スライダ22に固定された第1ビーム12A(移動体)と、スライダ22に備えられた、電機子からなる可動子32、及び永久磁石からなる固定子34を含む第1Y軸リニアモータ30Aと、可動子32で発生する熱を排熱する排熱部材40とを備える。排熱部材40は、可動子32を覆いかつ内部にエア(冷媒)が流通する冷媒通路42cを有した冷媒流通部42と、この冷媒流通部42と第1ビーム12Aとの間に配置されて、可動子32側から第1ビーム12A側への熱移動を抑制する真空空間44aを内部に有する真空断熱部44とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール及び当該レールに移動自在に装着されたスライダを備える案内部材と、
前記スライダに固定された移動体と、
前記スライダ又は前記移動体に備えられた、電機子からなる可動子、及び界磁からなる固定子を含み、前記レールに沿って前記移動体を移動させる駆動力を生成するリニアモータと、を備えたリニア駆動装置であって、
前記可動子で発生する熱を排熱する排熱部材を備え、
前記排熱部材は、前記可動子を覆いかつ冷媒が内部を通過するように形成された冷媒流通部と、前記冷媒流通部と前記移動体との間に配置されて、内部に真空空間を有する真空断熱部とを備える、ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリニア駆動装置において、
前記可動子は、前記スライダに備えられ、前記固定子は、前記レールに備えられている、ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のリニア駆動装置において、
前記可動子は、前記電機子を構成する複数の電磁コイルを備え、
前記冷媒流通部は、前記電磁コイルが配列される面に沿って蛇行するように形成された冷媒通路を備える、ことを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のリニア駆動装置と、
前記リニア駆動装置の前記移動体に取付けられ、部品の保持及びリリースが可能な実装ヘッドと、
前記リニア駆動装置及び前記実装ヘッドを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記実装ヘッドにより部品供給部から部品を保持して基板上に搬送し、当該部品を基板上の所定位置に搭載する部品実装処理を実行する、ことを特徴とする部品実装装置。
【請求項5】
請求項4に記載の部品実装装置において、
前記冷媒はエアである、ことを特徴とする部品実装装置。
【請求項6】
請求項5に記載の部品実装装置において、
負圧を生成する負圧生成部と、
正圧を生成する正圧生成部と、を備え、
前記実装ヘッドは、前記負圧生成部からの負圧の供給を受けて部品を吸着保持し、前記負圧に代えて前記正圧生成部からの正圧の供給を受けて部品をリリースするように構成され、
前記冷媒流通部は、前記負圧生成部からの負圧の供給及び前記正圧生成部からの正圧の供給のうち、少なくとも一方の供給を受けることにより前記冷媒通路に沿ってエアが通過するように構成されている、ことを特徴とする部品実装装置。
【請求項7】
請求項6に記載の部品実装装置において、
前記制御部は、前記部品実装処理の実行中を除く期間に、前記冷媒流通部をエアが通過するように前記負圧の供給及び前記正圧の供給のうち、少なくとも一方の供給を制御する、ことを特徴とする部品実装装置。
【請求項8】
請求項6に記載の部品実装装置において、
前記冷媒流通部を通過した空気を、そのまま当該部品実装装置の機外に排出するエア排出部を備えている、ことを特徴とする部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータを駆動源として移動体をレールに沿って移動させるリニア駆動装置、及びこのリニア駆動装置を備えた部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、次のような構成を備えた部品実装装置が開示されている。すなわち、部品実装装置は、一対のレールと、各レールに移動自在に装着されたスライダと、一対のレールと直交する方向に延在し、前記スライダを介して前記一対のレールに移動可能に支持されたビームと、当該ビームに備えられた実装ヘッドと、前記一対のレールに沿ってビームを移動させるリニアモータと、を備える。この部品実装装置では、リニアモータの駆動力によりビーム部材と共に実装ヘッドが前記一対のレールに沿って移動し、当該ヘッドにより基板に対して部品の実装処理が実行される。
【0003】
リニアモータは、電機子を備えた可動子と、永久磁石(界磁)からなる固定子とを備える。可動子は、ビームにおけるスライダの近傍位置に固定され、固定子は、可動子に対向するようにレールに沿って配置されている。このように、可動子がスライダの近傍に配置された構成では、通電による可動子(電機子)の発熱により、ビームやスライダやレールに熱変形が生じ、部品の実装精度に影響を及ぼすことが考えられる。そこで、特許文献1の部品実装装置では、ビームの末端部分に放熱フィンが設けられ、当該放熱フィンの放熱効果により、ビーム等の温度上昇を抑制するように工夫されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-258248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ビームの末端部分に放熱フィンを設ける従来の構成では、可動子の発熱量に対して十分な放熱効果を得ることが難しい場合もある。従って、リニアモータの可動子(電機子)の発熱に起因する各部の熱変形をより効果的に抑制し得る工夫が望まれる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、リニアモータの可動子(電機子)の発熱に起因する各部の熱変形をより効果的に抑制し得るリニア駆動装置、及びこのリニア駆動装置を備えた部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一局面に係るリニア駆動装置は、レール及び当該レールに移動自在に装着されたスライダを備える案内部材と、前記スライダに固定された移動体と、前記スライダ又は前記移動体に備えられた、電機子からなる可動子、及び界磁からなる固定子を含み、前記レールに沿って前記移動体を移動させる駆動力を生成するリニアモータと、を備えたリニア駆動装置であって、前記可動子で発生する熱を排熱する排熱部材を備え、前記排熱部材は、前記可動子を覆いかつ冷媒が内部を通過するように形成された冷媒流通部と、前記冷媒流通部と前記移動体との間に配置されて内部に真空空間を有する真空断熱部とを備える、ことを特徴とする。
【0008】
このリニア駆動装置によれば、上記排熱部材により移動体への熱移動が効果的に抑制される。すなわち、可動子(電機子)で発生した熱は、排熱部材の真空断熱部によって移動体側への移動が抑制(遮断)されながら、冷媒流通部を通過する冷媒によって積極的に可動子及びその周辺から排熱される。そのため、移動体への熱移動が効果的に抑制され、可動子の発熱に起因する各部(スライダ、移動体及びレール等)の熱変形が効果的に抑制される。
【0009】
特に、案内部材にリニアモータが組み込まれた構成、すなわち、可動子がスライダに備えられ、固定子がレールに備えられる構成では、スライダ、レール及び移動体が隣接しているため、これらの熱変形が懸念される。
【0010】
そのため、上記のようなリニア駆動装置の構成は、案内部材にリニアモータが組み込まれるタイプのリニア駆動装置に特に有用である。すなわち、当該リニア駆動装置の構成によれば、可動子で発生した熱がエアの移動によって積極的に排熱されることで、移動体への熱移動が抑制されることに加え、スライダの温度上昇やレールへの熱移動も抑制される。そのため、スライダ、レール及び移動体の熱変形の抑制に寄与する。なお、「固定子がレールに備えられる」とは、レールに固定子が組み込まれる(埋め込まれる)ことに加えて、レール自体が固定子(永久磁石)により構成されている場合も含む。
【0011】
なお、上記のリニア駆動装置において、前記可動子は、前記電機子を構成する複数の電磁コイルを備え、前記冷媒流通部は、前記電磁コイルが配列される面に沿って蛇行するように形成された冷媒通路を備える。
【0012】
この構成によれば、冷媒が電磁コイルに沿って蛇行しながら流通することにより、可動子から冷媒への熱移動が促進される。そのため、発生した熱を可動子及びその周辺から効果的に排熱することが可能となる。
【0013】
一方、本発明の一局面に係る部品実装装置は、上述したリニア駆動装置と、当該リニア駆動装置の前記移動体に取付けられ、部品の保持及びリリースが可能な実装ヘッドと、前記リニア駆動装置及び前記実装ヘッドを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記実装ヘッドにより部品供給部から部品を保持して基板上に搬送し、当該部品を基板上の所定位置に搭載する部品実装処理を実行する、ことを特徴とする。
【0014】
この部品実装装置では、実装ヘッドが部品供給エリアと基板との間を移動することにより、当該基板に対して部品実装処理が実行される。この際、実装ヘッドの移動は上述したリニア駆動装置によって行われるため、リニアモータにおける可動子の発熱に起因する各部(スライダ、移動体及びレール等)の熱変形が効果的に抑制される。このような熱変形の抑制は、部品実装装置による部品の実装精度の向上に寄与する。
【0015】
なお、冷媒は液体であってもよいが、液漏れ等のリスク回避の観点からはエアであるのが好適である。特に、部品実装装置では、部品実装処理の実行に際してエアが用いられる場合があるため、冷媒としてエアを用いる構成によれば、可動子で発生した熱を既存の設備を用いて排熱することが可能な、合理的な構成が達成される。
【0016】
具体的には、上記部品実装装置は、負圧を生成する負圧生成部と、正圧を生成する正圧生成部と、を備え、前記実装ヘッドは、前記負圧生成部からの負圧の供給を受けて部品を吸着保持し、前記負圧に代えて前記正圧生成部からの正圧の供給を受けて部品をリリースするように構成され、前記冷媒流通部は、前記負圧生成部からの負圧の供給及び前記正圧生成部からの正圧の供給のうち、少なくとも一方の供給を受けることにより前記冷媒通路に沿ってエアが通過するように構成されている。
【0017】
この構成によれば、可動子で発生する熱を、部品実装装置で用いられるエアを利用して排熱することが可能となる。
【0018】
この場合、前記制御部は、前記部品実装処理の実行中を除く期間に、前記冷媒流通部をエアが通過するように前記負圧の供給及び前記正圧の供給のうち、少なくとも一方の供給を制御するように構成される。
【0019】
この構成によれば、可動子で発生する熱を、部品実装処理に影響を与えること無く排熱することが可能となる。すなわち、部品実装処理中の負圧や正圧の圧力変動により部品の吸着不良や装着不良などのトラブルを招くおそれが無くなる。
【0020】
また、上記部品実装装置においては、前記冷媒流通部を通過した空気を、そのまま当該部品実装装置の機外に排出するエア排出部を備えているのが好適である。
【0021】
このように、冷媒流通部を通過したエアをそのまま部品実装装置の機外に排出する構成によれば、冷媒として使用さしたエアを再生(冷却)するための設備を設けることなく、継続的に排熱効果を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した本発明によれば、リニアモータの可動子(電機子)の発熱に起因する各部の熱変形をより効果的に抑制し得るリニア駆動装置、及びこのリニア駆動装置を備えた部品実装装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る部品実装装置の平面図である。
図2】前記部品実装装置の正面図である。
図3】前記部品実装装置の要部斜視図である。
図4】前記部品実装装置の要部断面図である。
図5】排熱部材の斜視図である。
図6】前記部品実装装置のエア回路図である。
図7】生産中のバルブ切替制御の一例を示すタイミングチャートである。
図8】生産停止中のバルブ切替制御の一例を示すタイミングチャートである。
図9】排熱効果を説明する排熱部材の断面図である。
図10】冷媒流通部の模式的な斜視図である。
図11】変形例に係る部品実装装置のY方向視の要部模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
[部品実装装置の全体構成]
図1は、本発明に係る部品実装装置1(本発明に係るリニア駆動装置を備える部品実装装置)の平面図であり、図2は、部品実装装置1の正面図である。
【0026】
部品実装装置1は、プリント配線板等の基板Pに電子部品等が実装された部品実装基板を生産する設備である。図1中にはXY座標軸を示している。X方向は水平面と平行な方向であり、Y方向は水平面上でX方向と直交する方向である。X方向及びY方向にそれぞれ直交する方向が上下方向である。
【0027】
部品実装装置1は、装置フレームである基台2と、基台2上で基板Pを搬送する基板搬送部3と、部品供給部5と、基台2の上方空間を移動する2つのヘッドユニット6A、6Bと、部品認識カメラ8とを備える。
【0028】
基板搬送部3は、基板PをX方向に搬送する一対のコンベア4を備える。コンベア4はベルトコンベアである。基板搬送部3は、図1の右側(X1側)から基板Pを受け入れて作業位置(同図に示す基板Pの位置)に搬送し、実装作業終了後、基板Pを作業位置から同図の左側(X2側)に搬出する。図示を省略するが、作業位置には、基板Pを位置決めした状態で保持する基板保持機構が備えられている。
【0029】
部品供給部5は、基板搬送部3のY方向両側に各々設けられている。部品供給部5には、部品供給用のフィーダが配置されている。当例では、複数のテープフィーダ5Fがコンベア4に沿って並列に配置されている。テープフィーダ5Fは、リボン状のテープをキャリアとして、小片状の部品(電子部品)を供給する。部品供給部5には、テープフィーダ5F以外のフィーダ、例えば、筒型スティックの内部を通じて部品を供給するスティックフィーダや、トレイ上に部品を載置した状態で供給するトレイフィーダ等も配置され得る。
【0030】
2つのヘッドユニット6A、6B(第1ヘッドユニット6A及び第2ヘッドユニット6Bという)は各々、部品供給部5から部品を取り出して基板Pに実装(搭載)するユニット部材である。Y2側が第1ヘッドユニット6Aで、Y1側が第2ヘッドユニット6Bである。各ヘッドユニット6A、6Bは、ヘッドユニット駆動機構9の作動により、水平方向(X方向及びY方向)に移動する。
【0031】
ヘッドユニット駆動機構9は、主にリニア駆動装置により構成されている。すなわち、ヘッドユニット駆動機構9は、基台2上に設けられたY方向に延在する一対の高架フレーム10上に各々設置されたY方向案内部材11と、X方向に互いに平行に延在し、かつY方向案内部材11に各々支持された、2つのビーム12A、12B(第1ビーム12A、第2ビーム12Bという)と、第1ビーム12AをY方向に移動させるための駆動力を生成する一対の第1Y軸リニアモータ30A(図4に示す)と、第2ビーム12BをY方向に移動させるための駆動力を生成する一対の第2Y軸リニアモータ30B(図4に示す)とを含む。
【0032】
また、ヘッドユニット駆動機構9は、第1ビーム12Aに各々設置されて第1ヘッドユニット6Aを支持する第1X方向案内部材13Aと、第1ヘッドユニット6AをX方向に移動させるための駆動力を生成する第1X軸リニアモータ(図外)とを含む。さらに、ヘッドユニット駆動機構9は、第2ビーム12Bに設置されて第2ヘッドユニット6Bを支持する第2X方向案内部材13Bと、第2ヘッドユニット6BをX方向に移動させる駆動力を生成する第2X軸リニアモータ(図外)とを含む。
【0033】
図3は、第1ビーム12AのX2側の端部近傍を示す部品実装装置1の要部斜視図であり、図4は、第1ビーム12AのX2軸の端部近傍における部品実装装置1の要部断面図である。
【0034】
図1図4に示すように、Y方向案内部材11は、所謂リニアガイド(登録商標)である。Y方向案内部材11は、高架フレーム10の上面10aに固定されてY方向に延在する固定レール20と、この固定レール20に移動自在に装着されたスライダ22とを含む。スライダ22には、ガイド溝に沿って循環移動する図外のボールが保持されており、これらボールの転動及び循環移動によりスライダ22が固定レール20に沿って滑からに移動する。
【0035】
図3及び図4に示すように、第1ビーム12Aの長手方向(X方向)両端は、各々、後述する排熱部材40を介してスライダ22に固定されている。詳しくは、第1ビーム12Aの末端壁121の下端にY方向に延在するフランジ部122が設けられている。そして、スライダ22上に排熱部材40と前記末端壁121のフランジ部122とがこの順番で重ねられ、複数のビス(ボルト)B1により、フランジ部122と排熱部材40とが一体にスライダ22に締結されている。この構成により、第1ビーム12Aが、固定レール20に沿ってY方向に移動自在に設けられている。
【0036】
詳細図を省略するが、第2ビーム12Bの長手方向(X方向)両端も第1ビーム12Aと同様に、各々、排熱部材40を介してスライダ22に固定されている。この構成により、第2ビーム12Bも第1ビーム12Aと同様に、固定レール20に沿ってY方向に移動自在に設けられている。
【0037】
第1Y軸リニアモータ30Aは、Y方向案内部材11に組み込まれている。すなわち、第1Y軸リニアモータ30Aは、スライダ22に内蔵された可動子32と、固定レール20に内蔵された固定子34とを備える。可動子32は、各々コアに巻回された複数の電磁コイルを具備する電機子であり、固定子34は、表面側(可動子側)の磁極が交互に異なる複数の永久磁石34aがY方向に一列に配列された界磁である。
【0038】
スライダ22のうち固定レール20に対向する面には、上向き(反固定レール20側)に凹みY方向に延在する断面矩形の溝部22cが形成され、また、固定レール20の幅方向(X方向)中央部には、下向き(反スライダ22側)に凹みY方向に延在する断面矩形の溝部20aが形成されている。そして、スライダ22の溝部22c内に可動子32が、固定レール20の溝部20a内に固定子34が各々配置されることにより、可動子32と固定子34とが上下方向に対向し得るように配置されている。
【0039】
この構成により、可動子32(電機子)に所定の駆動電流が与えられると、具体的には、各電磁コイルに位相の異なる三相電流が与えられると、各コイルに磁界が生成されて固定子34(界磁)と可動子32との間に当該可動子32をY方向に移動させる推進力(駆動力)が発生する。この推進力により可動子32と共にスライダ22が移動し、その結果、第1ビーム12Aが固定レール20に沿ってY方向に移動する。
【0040】
詳細図を省略するが、第2Y軸リニアモータ30Bも、第1Y軸リニアモータ30Aと同様に、電機子からなる可動子32と界磁からなる固定子34とを有し、これら可動子32及び固定子34がY方向案内部材11に組み込まれた構成を有している。但し、第2Y軸リニアモータの固定子34は、第1Y軸リニアモータ30Aの固定子34と共通化されている。つまり、固定レール20に内蔵された永久磁石34a(界磁)が、第1Y軸リニアモータ30A及び第2Y軸リニアモータ30Bの双方の固定子34として共用されている。
【0041】
第1ビーム12Aに設置された第1X方向案内部材13A、及び第1ヘッドユニット6AをX方向に移動させる第1X軸リニアモータ(図外)は、既述のY方向案内部材11、及び第1Y軸リニアモータ30Aと略同等の構成を有している。すなわち、図1及び図2に示すように、第1X方向案内部材13Aは、第1ビーム12Aに固定されてX方向に延在する固定レール24と、この固定レール24に移動自在に装着されたスライダ26とを含む。また、第1X軸リニアモータは、スライダ26に内蔵された可動子と、固定レール24に内蔵された固定子とを備える。可動子は、複数の電磁コイルを具備する電機子であり、固定子は、複数の永久磁石がX方向に一列に配列された界磁である。
【0042】
第2ビーム12Bに設置された第2X方向案内部材13B、及び第2ヘッドユニット6BをX方向に移動させる第2X軸リニアモータ(図外)は、第1X方向案内部材13A、及び第2X軸リニアモータと同等の構成を有している。
【0043】
第1ヘッドユニット6Aは、図外のフレーム部材を備えている。このフレーム部材が第1X方向案内部材13Aのスライダ26に固定されることにより、第1ヘッドユニット6Aが第1X方向案内部材13Aに支持されている。同様に、第2ヘッドユニット6Bは、図外のフレーム部材を備えており、このフレーム部材が第2X方向案内部材13Bのスライダ26に固定されることにより、第2ヘッドユニット6Bが第2X方向案内部材13Bに支持されている。この構成により、第1X軸リニアモータの可動子(電機子)に所定の駆動電流が与えられると、第1ビーム12Aにおいて、第1ヘッドユニット6Aが固定レール24に沿ってX方向に移動する。同様に、第2X軸リニアモータの可動子(電機子)に所定の駆動電流が与えられると、第2ビーム12Bにおいて、第2ヘッドユニット6Bが固定レール24に沿ってX方向に移動する。
【0044】
ヘッドユニット駆動機構9は、以上の構成により、第1ビーム12A及び第2ビーム12Bを各々Y方向に移動させる。また、ヘッドユニット駆動機構9は、第1ビーム12Aにおいて第1ヘッドユニット6AをX軸方向に移動させるとともに、第2ビーム12Bにおいて第2ヘッドユニット6BをX方向に移動させる。その結果、基台2の上方の一定範囲内で、第1ヘッドユニット6A及び第2ヘッドユニット6BがX方向及びY方向の任意の位置に移動する。
【0045】
なお、当例では、Y方向案内部材11、排熱部材40及び第1ビーム12A(移動体)と、Y方向案内部材11、排熱部材40及び第2ビーム12B(移動体)とが各々本発明のリニア駆動装置に相当する。
【0046】
第1ヘッドユニット6A及び第2ヘッドユニット6Bには、各々、上下方向に延びる複数の軸状のヘッド7(実装ヘッド)と、これらヘッド7を駆動するヘッド駆動機構とが備えられている。
【0047】
ヘッド駆動機構は、各ヘッド7を個別に昇降させるとともに、各ヘッド7を中心軸回り(R方向)に回転させる。各ヘッド7の先端には、部品吸着用のノズル7aが備えられている。各ノズル7aは、後述するエア回路60に接続されている。バルブの切替操作により、ノズル7aに対して負圧及び正圧が選択的に供給されることにより、ヘッド7による部品の吸着保持及び基板P上への部品のリリース(実装)が行われる。
【0048】
部品認識カメラ8は、第1ヘッドユニット6A及び第2ヘッドユニット6Bのヘッド7に吸着保持された部品を下方から撮像する照明一体型のカメラである。部品認識カメラ8は、基板搬送部3と各部品供給部5との間に各々配置されている。
【0049】
既述の部品実装装置1では、基板Pがコンベア4に沿って作業位置に搬入されると、部品供給部5と作業位置に配置された基板Pとの間を各ヘッドユニット6A、6Bが干渉を避けつつ交互に往復し、テープフィーダ5Fから部品を取り出して基板P上の所定位置に搭載(実装)する。この際、各実装ヘッド251に吸着された部品の吸着状態が部品認識カメラ8により撮像され、その認識結果に基づき各ヘッドユニット6A、6Bの移動量が補正される。当該基板Pに対して全ての部品の実装が終了すると、作業位置から基板Pが搬出され、次の基板Pが作業位置に搬入される。このような各部の動作の繰り返しにより部品実装基板が生産される。
【0050】
なお、部品実装装置1は、その動作を制御する制御部50(図2参照)を備えている。制御部50は、CPU、ROM、RAM及び周辺回路等を備えて構成されており、上記のような部品実装装置1の各部の動作は、この制御部50により統括的に制御される。
【0051】
各ビーム(12A、12B)がリニアモータ(30A、30B)で駆動される既述の部品実装装置1では、継続的な通電により可動子32(電機子)が発熱し、この発熱によりビーム12A、12BやY方向案内部材11に熱変形が生じることが考えられる。係る熱変形を抑制するために、各ビーム12A、12BとY方向案内部材11との接合部分には排熱部材40が備えられている。排熱部材40は、可動子32で発生する熱を排熱するための部材である。
【0052】
図5は、排熱部材40の斜視図である。図3図5に示すように、排熱部材40は、スライダ22を覆うチャンネル形状(溝型形状)を有している。具体的には、排熱部材40は、スライダ22の上面22aに当接してY方向に延在するウェブ部401と、ウェブ部401の両端から各々垂下してスライダ22の側面22b(X方向両側の側面)に当接するフランジ部402とを備える。これにより、排熱部材40は、スライダ22の上面22a及び側面22bに面接触する状態で、当該スライダ22を上方及び側方から覆っている。
【0053】
排熱部材40は、スライダ22に接触して可動子32を覆うチャンネル形状(溝型形状)の冷媒流通部42と、この冷媒流通部42を外側(反スライダ22側)から覆う、同じくチャンネル形状(溝型形状)の真空断熱部44とを含む。これら冷媒流通部42と真空断熱部44は、各々一定の厚みを有し、かつ一体的かつ層状に設けられている。冷媒流通部42は、真空断熱部44よりも熱伝導率の高い材料により構成されている。例えば、冷媒流通部42は、銅又はアルミニウムにより構成され、真空断熱部44は、銅又はアルミニウムによりも熱伝導率が低いステンレス等の金属材料により構成されている。
【0054】
冷媒流通部42の内部には、図4及び図5に示すように、冷媒を流通(通過)させる冷媒通路42cが備えられている。また、冷媒流通部42の一方側のフランジ部402のY方向端面には冷媒の導入ポート部42aが備えられ、他方側のフランジ部402のY方向端面には冷媒の導出ポート部42bが備えられている。図5に示すように、冷媒通路42cは、スライダ22の上面22a及び側面22b(すなわち、電磁コイルが配列される基準となる面)に沿ってY方向に蛇行するように形成されている。なお、冷媒通路42cは、スライダ22の上面22a及び側面22bに沿ってX方向に蛇行するように形成されていてもい。冷媒流通部42は、後記エア回路60に接続されており、当例では、冷媒として圧縮エアが冷媒通路42cに沿って流通するようになっている。
【0055】
真空断熱部44の内部には、密閉された真空の空間(真空空間44a)が設けられている。真空空間44aは、真空断熱部44のうち、排熱部材40のウェブ部401及びフランジ部402に対応する領域の略全体に設けられている。
【0056】
排熱部材40は、スライダ22と第1ビーム12Aのフランジ部122との間に介在する状態でスライダ22に重ねられ、既述の通り、複数のビスB1により、フランジ部122と共にスライダ22に締結されている。なお、図3及び図4は、主に第1ビーム12AとY方向案内部材11(スライダ22)との接合部分に配置された排熱部材40を示しているが、第2ビーム12BとY方向案内部材11(スライダ22)との接合部分に配置される排熱部材40も同様の構成である。
【0057】
上記排熱部材40が設けられていることにより、可動子32で発生する熱が効率良く排熱され、各ビーム12A、12BやY方向案内部材11の熱変形が抑制ないし防止される。すなわち、図9に模式的に示すように、可動子32(電磁コイル)で発生する熱は、真空断熱部44によって第1ビーム12Aへの移動が抑制(遮断)されながら、冷媒流通部42を流通する圧縮エア(冷媒)によって積極的に排熱される。そのため、可動子32から各ビーム12A、12Bへの熱移動が抑制される。また、可動子32で発生した熱が圧縮エアの流動により積極的に排熱されることで、スライダ22自体の温度上昇や固定レール24への熱移動も抑制される。そのため、可動子32の発熱に起因する各ビーム12A、12BやY方向案内部材11の熱変形が抑制される。
【0058】
図6は、部品実装装置1のエア回路図である。図6に示すエア回路60は、主に、ヘッドユニット6A、6Bの各ヘッド7(ノズル7a)に対して部品実装用の負圧及び正圧を供給するための回路である。排熱部材40の冷媒流通部42(冷媒通路42c)もこのエア回路60に接続されている。
【0059】
エア回路60は、コンプレッサ等の正圧生成部70、真空ポンプからなる負圧生成部80、正圧生成部70で生成された正圧(圧縮エア)をヘッド7等に供給する正圧通路71、負圧生成部80で生成された負圧をヘッド7等に供給する負圧通路81、及び電磁バルブからなる複数の切換バルブ(62~65)等を含む。なお、「負圧を供給する」とは、真空ポンプにより対象物内を吸引すること同義である。
【0060】
エア回路60は、第1回路部61Aと第2回路部61Bとを含む。第1回路部61Aは、第1ヘッドユニット6Aのヘッド7及び第1ビーム12A側の排熱部材40に対して正圧及び負圧を供給する回路部であり、第2回路部61Bは、第2ヘッドユニット6Bのヘッド7及び第1ビーム12A側の排熱部材40に対して正圧及び負圧を供給するための回路部である。これら回路部61A、61Bは、次のように構成されている。
【0061】
第1回路部61Aにおいて、ヘッド7は、部品吸着バルブ62及び部品装着バルブ63を介して正圧通路71に接続されるとともに、部品吸着バルブ62を介して負圧通路81に接続されている。図6に示す各バルブ62、63は、何れもオフの状態(消磁状態)である。両バルブ62、63がオフのときには、図示の通り、正圧通路71及び負圧通路81の何れもヘッド7には連通しておらず、よって、正圧及び負圧の何れもヘッド7には供給されない。
【0062】
図6の状態から部品吸着バルブ62のみがオン(励磁状態)に切り替えられると、ヘッド7が負圧通路81に連通し、ヘッド7に負圧が供給される。一方、部品装着バルブ63のみがオンに切り替えられると、ヘッド7が正圧通路71に連通し、ヘッド7に正圧が供給される。このように負圧及び正圧が選択的にヘッド7に供給されることにより、ヘッド7による部品の吸着保持及び基板P上への部品のリリース(実装)が行われる。なお、正圧生成部70で生成された正圧は、レギュレータ70aで所定圧力(0.05MPa程度)に調整されて正圧通路71に供給される。
【0063】
第1回路部61Aにおいて、冷媒流通部42は、第1冷却バルブ64を介して正圧通路71に接続されるとともに、第2冷却バルブ65を介して負圧通路81に接続されている。詳しくは、冷媒流通部42の導入ポート部42aが第1冷却バルブ64を介して正圧通路71に接続され、導出ポート部42bが第2冷却バルブ65を介して負圧通路81に接続されている。図6に示す各冷却バルブ64、65は、何れもオフの状態(消磁状態)である。両バルブ64、65がオフのときには、図示の通り、正圧通路71及び負圧通路81の何れもヘッド7に連通しておらず、よって、冷媒流通部42には正圧及び負圧の何れも供給されない。
【0064】
図6の状態から第1冷却バルブ64及び第2冷却バルブ65が各々オン(励磁状態)に切り替えられると、冷媒流通部42(冷媒通路42c)の導入ポート部42aが正圧通路71に、導出ポート部42bが負圧通路81に各々連通する。これにより導入ポート部42aを介して冷媒流通部42に正圧が供給されるとともに、導出ポート部42bを介して冷媒流通部42に負圧が供給される。換言すると、導入ポート部42aを通じて冷媒通路42cに圧縮エアが供給される一方で、当該冷媒通路42cが導出ポート部42bを通じて真空ポンプにより吸引される。これにより、正圧生成部70で生成された圧縮エアが冷媒通路42cに沿って冷媒流通部42の内部を流通する。つまり、既述の通り、圧縮エア(以下、単にエアという)が冷媒として冷媒流通部42の内部を通過する。
【0065】
図6に示すように、負圧生成部80には、排気ダクト82が接続されている。この排気ダクト82は、部品実装装置1の外郭を形成する外装カバー(パネル)の一面に設けられている。そのため、既述のように冷媒流通部42の内部を通過したエアは、負圧生成部80(真空ポンプ)及び排気ダクト82を通じて、そのまま部品実装装置1の機外に排出されることとなる。当例では、この排気ダクト82が本発明の「エア排出部」に相当する。
【0066】
以上、エア回路60の第1回路部61Aの構成について説明したが、第2回路部61Bも同等に構成されている。なお、各回路部61A、61Bについては、便宜上、8つのヘッド7のうち、一つのみを図示しており、その他のヘッド7を省略している。しかし、その他のヘッド7も、既述のヘッド7と同様に、部品吸着バルブ62及び部品装着バルブ63を介して正圧通路71に接続されるとともに、部品吸着バルブ62を介して負圧通路81に接続されている。また、各回路部61A、61Bについては、便宜上、各ビーム12A、12Bの両側(X1側及びX2側)の排熱部材40のうち、一方側の排熱部材40のみを図示しており、他方側の排熱部材40を省略している。しかし、他方側の排熱部材40も、一方側の排熱部材40と同様に、第1冷却バルブ64を介して正圧通路71に接続されるとともに、第2冷却バルブ65を通じて負圧通路81に接続されている。
【0067】
エア回路60における各バルブ62~65の切り替え制御、すなわち、ヘッド7による部品の吸着保持及び基板P上への部品のリリース(実装)や、排熱部材40(冷媒流通部42)に対するエアの流通は、前記制御部50により統括的に制御される。
【0068】
図7は、部品実装基板の生産中のバルブ切替制御を示すタイミングチャートであり、図8は、生産停止中のバルブ切替制御を示すタイミングチャートである。
【0069】
制御部50は、部品実装基板の生産中は、図7に示すように、ヘッド7による部品の吸着及び実装が行われている期間以外の時、すなわち部品実装処理の実行中を除く期間に、排熱部材40(冷媒流通部42)の内部をエアが流通するように各バルブ62~65を制御する。その理由は以下の通りである。
【0070】
この部品実装装置1では、ヘッド7に対する負圧及び正圧の供給と、排熱部材40(冷媒流通部42)に対する負圧及び正圧の供給が共通のエア回路60で行われる。そのため、仮に、部品実装処理の実行中に、エアを排熱部材40に流通させる(以下、この処理を「エア流通処理」という場合がある)場合には、ヘッド7に供給される負圧や正圧に圧力変動が生じ、ヘッド7による部品の吸着保持や部品のリリース動作に悪影響が出ることが考えられる。例えば、ヘッド7からの吸着部品の脱落や部品のリリースミスなどの不都合を招くことが考えられる。
【0071】
係る不都合を回避するために、部品実装基板の生産中は、ヘッド7による部品実装処理の動作(t1~t2時点、t5~t6時点)の合間(t3~t4時点)にのみ、エア流通処理が実行されるように、各バルブ62~65のオンオフを制御部50が制御する。なお、図7は、エア回路60のうち、第1回路部61Aに属する各バルブ62~65の制御を示しているが、第2回路部61Bに属する各バルブ62~65の制御も同じである。
【0072】
図8に示すように、制御部50は、部品実装基板の生産停止中にもエア流通処理が実行されるように、各バルブ62~65を制御する。例えば先行ロットの生産と後続ロットの生産の合間に、エア流通処理が実行されるように、制御部50は各バルブ62~65を制御する。図8の例では、制御部50は、先行ロットの生産後(t11時点)、一定時間が経過した時点(t12時点)から設定時間(t12~t13時点)だけエア流通処理が実行されるように各バルブ62~65を制御する。例えば、制御部50は、生産計画情報に基づき先行ロットと後続ロットとのインターバル(t11~t14時点)を取得し、当該インターバルが前記一定時間以上の場合にエア流通処理を実行する。
【0073】
なお、部品実装基板の生産停止中とは、既述のような先行ロットと後続ロットとの合間の期間の他、例えば部品切れ等による生産停止中であってもよい。この場合、制御部50は、生産停止後、前記一定時間経過時点から設定時間だけエア流通処理を実行する。この設定時間の経過前に生産が再開された場合には、制御部50は、生産再開時点でエア流通処理が終了するように各バルブ62~65を制御する。
【0074】
[作用効果等]
上記部品実装装置1は、固定レール24及びスライダ22を備えるY方向案内部材11と、スライダ22に固定された第1ビーム12A(第2ビーム12B)と、固定レール24に沿って第1ビーム12A(第2ビーム12B)を移動させる駆動力を生成する第1Y軸リニアモータ30A(第2Y軸リニアモータ30B)と、可動子32で発生する熱を排熱する排熱部材40を備えている。そして、排熱部材40は、可動子32を覆いかつエア(冷媒)が内部を通過するように形成された冷媒流通部42と、冷媒流通部42と第1ビーム12A(第2ビーム12B)との間に配置されて内部に真空空間44aを有する真空断熱部44とを備える。
【0075】
この構成によると、既述した通り、可動子で発生した熱は、真空断熱部44によって第1ビーム12A(第2ビーム12B)側への移動が抑制(遮断)されながら、冷媒流通部42を流通するエア(冷媒)によって積極的に可動子32及びその周辺から排熱される。そのため、可動子32で発生する熱に起因する各ビーム12A、12BやY方向案内部材11の熱変形が抑制ないし防止される。そして、このような各部の熱変形の抑制は、各ビーム12A、12Bの移動精度の向上に繋がり、結果的に、部品実装装置1による部品の実装精度の向上に寄与する。
【0076】
特に、部品実装装置1は、第1Y軸リニアモータ30A(第2Y軸リニアモータ30B)がY方向案内部材11に組み込まれた構成を有する。この構成では、スライダ22、固定レール24及び第1ビーム12A(第2ビーム12B)が隣接しているため、可動子32の発熱によるこれらの熱変形が特に懸念される。しかし、実施形態の構成によれば、既述の通り、可動子32で発生した熱は、排熱部材40(冷媒流通部42)を流通するエアによって積極的に可動子32及びその周辺から排熱される。そのため、各ビーム12A、12BやY方向案内部材11の熱変形が効果的に抑制される。
【0077】
また、冷媒流通部42の冷媒通路42cは、電磁コイルが配列される面(スライダ22の上面22a及び側面22b)に沿って蛇行するように形成されている。この構成によると、電磁コイルに沿ってエアが蛇行しながら流通するで、可動子から冷媒への熱移動が促進され、電磁コイルで発生する熱を、当該電磁コイル及びその周辺から効果的に排熱することが可能となる。
【0078】
なお、このような冷媒通路42cを備える冷媒流通部42は、例えば、図10に示すように、蛇行溝45aを主面に形成した第1板部材45と、第1板部材45と対称な蛇行溝46aを主面に形成した第2板部材46とを重ね併せて接合することにより構成できる。
【0079】
また、部品実装装置1で用いられるエア(圧縮エア)を冷媒として排熱部材40に流通させるため、可動子32で発生した熱を部品実装装置1の既存の設備を用いて排熱する合理的な構成が達成される。具体的には、部品実装装置1は、負圧生成部80からの負圧の供給を受けて部品を吸着保持し、負圧に代えて正圧生成部70からの正圧の供給を受けて部品をリリースするように構成されている。そして、冷媒通路42cの一端(導出ポート部42b)に対して負圧生成部80から負圧が供給され、かつ他端(導出ポート部42b)に対して正圧生成部70から正圧が供給される。これにより、冷媒通路42cに沿ってエアが冷媒流通部42を流通する。従って、部品実装装置1で用いられるエアを利用した合理的な構成で、可動子32で発生する熱を排熱することができる。
【0080】
しかも、部品実装装置1は、冷媒流通部42に対する負圧及び正圧の供給と停止を切り換える第1、第2の冷却バルブ64、65を備え、制御部50が、部品実装処理の実行中を除く期間に、冷媒流通部42をエアが流通するように第1、第2の冷却バルブ64、65を制御する。そのため、可動子32で発生する熱を、ヘッド7による部品実装処理に影響を与えること無く排熱することができる。すなわち、部品実装処理中の負圧や正圧の圧力変動により部品の吸着不良や装着不良などのトラブルを招くおそれが無い。
【0081】
また、部品実装装置1は、冷媒流通部42を流通した後のエアを、そのまま部品実装装置1の外部(機外)に排出する排気ダクト82を備えている。そのため、冷媒として冷媒流通部42を流通させたエアを再生(冷却)するための設備を設けることなく、継続的に可動子32で発生する熱を排熱することができる。
[変形例]
以上説明した部品実装装置1は、本発明に係る部品実装装置(本発明に係るリニア駆動装置を備えた部品実装装置)の好ましい実施形態の例示であり、部品実装装置1やリニア駆動装置の具体的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、以下の構成も採用され得る。
【0082】
(1)第1ヘッドユニット6AをX方向に移動させるためのリニア駆動装置(第1X方向案内部材13A及び図外の第1X軸リニアモータ)や、第2ヘッドユニット6BをX方向に移動させるためのリニア駆動装置(第2X方向案内部材13B及び図外の第2X軸リニアモータ)についても排熱部材40を設けるようにしてもよい。すなわち、第1ヘッドユニット6Aは、そのフレーム部材(移動体)が、排熱部材40を介して第1X方向案内部材13Aのスライダ26に固定される構成であってもよい。同様に、第2ヘッドユニット6Bは、そのフレーム部材(移動体)が、排熱部材40を介して第2X方向案内部材13Bのスライダ26に固定される構成であってもよい。
【0083】
これらの構成によれば、第1、第2のX軸リニアモータの可動子で発生する熱を、排熱部材40(冷媒流通部42)を流通するエアによって積極的に可動子及びその周辺から排熱できる。そのため、可動子の発熱に起因する、前記フレーム部材、各X方向案内部材13A、13B、及び各ビーム12A、12Bの熱変形の抑制に寄与する。
【0084】
(2)実施形態では、第1Y軸リニアモータ30Aは、Y方向案内部材11に組み込まれている。しかし、第1Y軸リニアモータ30Aは、図11に示すように、Y方向案内部材11とは別に設けられていてもよい。
【0085】
図11は、変形例に係る部品実装装置1のY方向視の模式図である。同図に示すように、第1Y軸リニアモータ30A(第2Y軸リニアモータ30B)は、Y方向案内部材11に隣接して配置されている。具体的には、高架フレーム10における固定レール20に隣接する位置に固定子34が固定され、第1ビーム12A(第2ビーム12B)の下面における固定子34に対向する位置に可動子32が固定されている。可動子32は、排熱部材40を介して第1ビーム12A(第2ビーム12B)に固定されている。
【0086】
このような構成によれば、可動子32の発熱に起因する、第1ビーム12A(第2ビーム12B)の熱変形が抑制される。
【0087】
(3)実施形態では、導入ポート部42aに正圧を供給しながら、導出ポート部42bに負圧を供給することで、冷媒流通部42にエアを流通させている。しかし、正圧又は負圧のいずれか一方のみを供給することで、冷媒流通部42にエアを流通させてもよい。具体的には、エアフィルタ等を介して導入ポート部42aをエア大気開放しておき、導出ポート部42bに負圧を供給するようにしてもよい(正圧は供給しない)。また、負圧通路81を介さず、導出ポート部42bを直接排気ダクト82に接続しておき、導入ポート部42aに正圧を供給するようにしてもよい(負圧は供給しない)。このような構成によっても、冷媒流通部42にエアを流通させることが可能である。但し、冷媒流通部42に対してより安定的かつスムーズにエアを流通させる、つまり排熱を促進する上では、実施形態のように、冷媒流通部42の導入ポート部42aに正圧を供給しながら、導出ポート部42bに負圧を供給することで、冷媒流通部42にエアを流通させるのが望ましい。
【0088】
(4)実施形態は、冷媒として圧縮エア(気体)が排熱部材40(冷媒流通部42)を流通する構成であるが、冷媒として液体が流通する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 部品実装装置
5 部品供給部
6A 第1ヘッドユニット
6B 第2ヘッドユニット
7 ヘッド(実装ヘッド)
9 ヘッドユニット駆動機構
11 Y方向案内部材(案内部材)
12A 第1ビーム(移動体)
12B 第2ビーム(移動体)
20 固定レール(レール)
22 スライダ
30A 第1Y軸リニアモータ(リニアモータ)
30B 第2Y軸リニアモータ(リニアモータ)
32 可動子
34 固定子
40 排熱部材
42 冷媒流通部
42c 冷媒通路
44 真空断熱部
44a 真空空間
50 制御部
60 エア回路
61A 第1回路部
61B 第2回路部
62 部品吸着バルブ
63 部品装着バルブ
64 第1冷却バルブ
65 第2冷却バルブ
70 正圧発生部
80 負圧発生部
82 排気ダクト(エア排出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11