(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104676
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】クレーン仕様ハンドリング装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240729BHJP
B66C 1/68 20060101ALI20240729BHJP
B66C 1/42 20060101ALI20240729BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B25J15/00 D
B66C1/68 B
B66C1/42 M
B25J15/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009015
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000168506
【氏名又は名称】鉱研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 義彦
(72)【発明者】
【氏名】田島 史郷
【テーマコード(参考)】
3C707
3F004
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS09
3C707CS08
3C707DS02
3C707ES03
3C707ET01
3C707EV23
3C707HS12
3C707NS07
3C707WA17
3F004AA01
3F004AB14
3F004AE01
3F004AH01
3F004AJ01
3F004EA04
(57)【要約】
【課題】クレーンに装着して使用することにより、長尺物の姿勢変更の自由度があり、他の装置への受け渡しを円滑に行うことができ、しかも危険な吊り作業を不要とすることが可能なハンドリング装置を提供する。
【解決手段】クレーン2のクレーンアーム5の先端に着脱可能に連結される連結部材11と、連結部材11に進退可能に取り付けられて軸方向に伸縮動作するハンドリングロッド12と、連結部材11に対してハンドリングロッド12を旋回させる旋回機構32と、連結部材11に対するハンドリングロッド12の角度を変更する角度変更機構13と、ハンドリングロッド12の長さ方向の少なくとも2箇所に取り付けられ、長尺物16を3点で把持する把持部材14と、把持部材14をハンドリングロッド12に対して揺動させるスイング機構15とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能なクレーンの本体に旋回及び伸縮可能に設けられたクレーンアームに取り付けられて円筒状の長尺物をハンドリングするクレーン仕様ハンドリング装置であって、
前記クレーンアームの先端に着脱可能に連結される連結部材と、
前記連結部材に進退可能に取り付けられて軸方向に伸縮動作するハンドリングロッドと、
前記連結部材に対して前記ハンドリングロッドを旋回させる旋回機構と、
前記連結部材とハンドリングロッドとの間に設けられ、連結部材に対するハンドリングロッドの角度を変更する角度変更機構と、
前記ハンドリングロッドの長さ方向の少なくとも2箇所に取り付けられ、前記長尺物を把持する把持部材と、
前記把持部材を前記ハンドリングロッドに対して揺動させるスイング機構と、を備え、
前記把持部材は、開閉動作して前記長尺物を把持する一対の把持ピースと、一対の把持ピースの間で前記長尺物に当接する当接ピースとによる3点支持によって前記長尺物を把持することを特徴とするクレーン仕様ハンドリング装置。
【請求項2】
前記角度変更機構は、前記連結部材と前記ハンドリングロッドとの間に掛け渡された油圧の角度変更シリンダであることを特徴とする請求項1記載のクレーン仕様ハンドリング装置。
【請求項3】
前記スイング機構は、前記ハンドリングロッドと前記把持部材との間に掛け渡された油圧のスイングシリンダであることを特徴とする請求項1記載のクレーン仕様ハンドリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラクレーン、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン等のような自走可能なクレーンに取り付けられて長尺物をハンドリングするクレーン仕様ハンドリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鋼材、鋼管等の長尺物をハンドリングする従来のハンドリング装置が開示されている。このハンドリング装置は、鉛直方向に旋回、揺動、屈曲可能な第1アームと、水平方向に旋回、揺動可能な第2アームとを台車に別個に取り付け、第1アーム及び第2アームの先端のそれぞれに第1把持部材、第2把持部材を取り付けた構造となっている
【0003】
このハンドリング装置は、第1把持部材が把持した鋼材、鋼管等の長尺物を第1アームの駆動により鉛直状として掘削孔内に下降させ、長尺物が孔の口部に達したとき、第2アームの第2把持部材が長尺物を把持する。第1アームは次の長尺物を把持して孔に移動させ、第2アームが把持している前段の長尺物とボルトや溶接によって継ぎ足して延長した後、延長した長尺物を孔に挿入するように動作するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のハンドリング装置では、第1アームが置き場の長尺物を取り出して孔内に挿入する一方、長尺物を継ぎ足すために第2アームが長尺物を把持するように動作するだけであり、長尺物がこれ以外の姿勢となるように、その姿勢を自由に変更することができない構造となっている。また、従来のハンドリング装置は、台車専用に設けられる構造であり、長尺物を運搬したり、ボーリングマシン等の他の装置に受け渡す等の機能は有していない。
長尺物を作業現場で取り扱う場合には、クレーンを用い、長尺物をワイヤ、マグネット等に固定して吊り上げる吊り作業が必要であり、誘導員等の作業人員の削減ができないと共に怪我の危険性の問題を有している。
【0006】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたものであり、クレーンに装着して使用することにより、長尺物の姿勢変更の自由度があり、他の装置への受け渡しを円滑に行うことができ、しかも危険な吊り作業を不要とすることが可能なクレーン仕様ハンドリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のクレーン仕様ハンドリング装置は、自走可能なクレーンの本体に旋回及び伸縮可能に設けられたクレーンアームに取り付けられて円筒状の長尺物をハンドリングするクレーン仕様ハンドリング装置であって、前記クレーンアームの先端に着脱可能に連結される連結部材と、前記連結部材に進退可能に取り付けられて軸方向に伸縮動作するハンドリングロッドと、前記連結部材に対して前記ハンドリングロッドを旋回させる旋回機構と、前記連結部材とハンドリングロッドとの間に設けられ、連結部材に対するハンドリングロッドの角度を変更する角度変更機構と、前記ハンドリングロッドの長さ方向の少なくとも2箇所に取り付けられ、前記長尺物を把持する把持部材と、前記把持部材を前記ハンドリングロッドに対して揺動させるスイング機構と、を備え、前記把持部材は、開閉動作して前記長尺物を把持する一対の把持ピースと、一対の把持ピースの間で前記長尺物に当接する当接ピースとによる3点支持によって前記長尺物を把持することを特徴とする。
【0008】
本発明では、前記角度変更機構は、前記連結部材と前記ハンドリングロッドとの間に掛け渡された油圧の角度変更シリンダであることを特徴とする。
また、前記スイング機構は、前記ハンドリングロッドと前記把持部材との間に掛け渡された油圧のスイングシリンダであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クレーンのクレーンアームを利用して長尺物を運搬でき、長尺物の姿勢変更の自由度があり、他の装置への受け渡しを円滑に行うことができ、危険な吊り作業を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態のクレーン仕様ハンドリング装置の全体の斜視図である。
【
図2】クレーン仕様ハンドリング装置の正面図である。
【
図3】クレーン仕様ハンドリング装置の動作を示す正面図である。
【
図4】クレーン仕様ハンドリング装置の動作を示すクレーン側からの側面図である。
【
図5】(A)は把持部材の正面図、(B)は把持部材の動作を示す正面図である。
【
図6】長尺物をボーリングマシンへ渡す状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図6を参照して本発明の一実施形態のクレーン仕様ハンドリング装置1を説明する。
【0012】
図1に示すように、クレーン仕様ハンドリング装置1(以下、ハンドリング装置1)は、クレーン2に取り付けられて用いられる。クレーン2は、クローラクレーン、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、その他の自走可能なクレーンを選択することができ、この形態では、クローラクレーンが用いられている。クレーン2はクローラ3を有した本体4と、本体4に設けられたクレーンアーム5とを備えている。
クレーンアーム5は本体4に設けた回転テーブル6上に取り付けられて旋回可能となっている。また、クレーンアーム5は回転テーブル6に設けた伸縮シリンダ7によって伸縮可能となっている。
このようなクレーン2に対し、ハンドリング装置1はクレーンアーム5の先端に
取り付けられる。このため、ハンドリング装置1は、クレーン2によって運搬されると共に、クレーンアーム5が備える動作、すなわちクレーンアーム5の旋回と、クレーンアーム5の伸縮による前後移動を行うことができる。
【0013】
図1~
図4に示すように、ハンドリング装置1は、連結部材11と、ハンドリングロッド12と、角度変更機構13と、旋回機構32と、把持部材14と、スイング機構15とを備えている。
【0014】
連結部材11は取付ブラケット20を有し、この取付ブラケット20を介して連結部材11がクレーンアーム5の先端に着脱可能に連結される。連結部材11をクレーンアーム5に連結することにより、ハンドリング装置1の全体がクレーンアーム5の先端に装着される。
【0015】
ハンドリングロッド12は支持ブラケット22を有し、この支持ブラケット22を介してハンドリングロッド12が連結部材11に取り付けられる。支持ブラケット22は取付ブラケット20に設けた進退用シリンダ21に連結されており、進退用シリンダ21が油圧によって伸縮動作することによりハンドリングロッド12が連結部材11に対して進退移動する。
【0016】
図1に示すように、取付ブラケット20のクレーン2側には、旋回モータ33からなる旋回機構32が設けられている。旋回機構32の旋回モータ33の出力軸は支持ブラケット22に連結されており、旋回モータ33が駆動することにより支持ブラケット22及びハンドリングロッド12が旋回する(
図4参照)。
【0017】
ハンドリングロッド12はシリンダ構造の2重管ロッドとなっており、ロッド12a、12bによって軸方向に伸縮動作する。ハンドリングロッド12のそれぞれのロッド12a、12bには、把持部材14が取り付けられることにより2つの把持部材14がハンドリングロッド12に設けられている。ハンドリングロッド12が軸方向に伸縮動作することにより2つの把持部材14の間隔調整が行うことができる。2つの把持部材14は、ボーリングロッドや鋼管等の円筒状の長尺物を把持する。把持部材14としては、ハンドリングロッド12のそれぞれのロッド12a、12bに取り付けられるものであれば、3つ以上を設けることができる。
【0018】
角度変更機構13は、連結部材11とハンドリングロッド12との間に掛け渡されて油圧動作する角度変更シリンダ23によって形成されている。角度変更シリンダ23が伸縮することにより、連結部材11に対するハンドリングロッド12の角度を変更することができる。これにより
図2、
図3に示すように、ハンドリングロッド12が支持ブラケット22回りに旋回することができる。このとき把持部材14がハンドリングロッド12と共に旋回するため、長尺物16を旋回させて姿勢を変更することができる。
【0019】
図5は、把持部材14を示す。それぞれの把持部材14はハンドリングロッド12のそれぞれのロッド12a、12bに取り付けられる把持用ブラケット24と、把持用ブラケット24に取り付けられた中間ブラケット30と、中間ブラケット30に取り付けられた把持用シリンダ25と、開口部分から長尺物16が差し込まれる把持本体部26と、把持本体部26の内部に設けられた一対の把持ピース27と、把持用シリンダ25のピストンの先端部に取り付けられた当接ピース28とによって形成されている。
【0020】
一対の把持ピース27は連結ピン29を中心に回動して長尺物16に当接及び離反する。連結ピン29は図示を省略した可動アームを介して把持用シリンダ25に連結されており、把持用シリンダ25の伸縮によって把持ピース27が連結ピン29を中心に回動する。この回動のための構造は、出願人が保有する第7006972号特許、第7006977号特許の公報に開示した構造と同様の構造とすることができるため、説明は省略する。当接ピース28は一対の把持ピース27の間に配置されており、把持用シリンダ25の伸縮によって把持ピース27の間で長尺物16に対して進退移動する。
【0021】
このような構造の把持部材14は、把持用シリンダ25の作動によって把持ピース27及び当接ピース28が長尺物16を3点で支持する。このため、長尺物16の径が異なっていても確実に把持することができる。従って、長尺物16が
図1、
図2、
図3に示すようなアウターロッド16aとインナーロッド16bからなる2重管構造のボーリングロッドであっても、アウターロッド16a及びインナーロッド16bの双方を確実に把持することができる。
【0022】
以上の把持部材14には、スイング機構15が設けられている。スイング機構15は把持用ブラケット24と中間ブラケット30との間に掛け渡された油圧のスイングシリンダ31によって形成されている。スイングシリンダ31が伸縮することにより
図5(B)で示すように、把持本体部26が揺動する。このため、長尺物16に対する角度を変更することができ、長尺物16の姿勢に良好に対応することができる。
【0023】
以上の構造のハンドリング装置1では、旋回機構32によってハンドリングロッド12が旋回し(
図4)、ハンドリングロッド12が連結部材11に対して角度変更可能となっているため、長尺物16の角度変更ができ(
図3)、ハンドリングロッド12が軸方向に伸縮するため、ハンドリングロッド12に設けた把持部材14を長尺物16の長さに対応させることができ、把持部材14がスイング動作するため、長尺物16の姿勢変更ができる(
図5)。しかも把持部材14が長尺物16を3点支持するため、径の異なる長尺物への対応も可能である。
【0024】
本発明では、かかるハンドリング装置1をクレーン2のクレーンアーム5に取り付けるため、長尺物16を運搬するだけなく、長尺物16を例えば、ボーリングマシン等の他の装置に容易に渡すことができる。
【0025】
図1及び
図6は、クレーン2が運搬した長尺物16としてのボーリングロッドをボーリングマシン40に渡す状態を示す。ボーリングマシン40はドリルヘッド41が取り付けられたマスト42を備えており、マスト42に沿って長尺物16としての2重管のボーリングロッドを配置してドリルヘッド4に取り付ける。なお、マスト42は下部にロッドブレーカ43及びロッドクランプ44、45を備えている。
マスト42が直立状態、傾斜状態であっても、長尺物(ボーリングロッド)16をボーリングマシン40に組み付けることができる。
図1及び
図6はマスト42が傾斜しており、このように傾斜した状態であっても、クレーン2がボーリングマシン40側に移動した後、ハンドリング装置1がマスト42の傾斜状態に合わせて長尺物16を傾斜状に把持し、マスト42に長尺物16を沿わせて渡すことができる。このようなハンドリングでは、作業者が長尺物を吊り上げる危険な作業を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 クレーン仕様ハンドリング装置
2 クレーン
3 クローラ
4 本体
5 クレーンアーム
6 回転テーブル
7 伸縮シリンダ
11 連結部材
12 ハンドリングロッド
13 角度変更機構
14 把持部材
15 スイング機構
16 長尺物
20 取付ブラケット
21 進退用シリンダ
22 支持ブラケット
23 角度変更シリンダ
24 把持用ブラケット
25 把持用シリンダ
26 把持本体部
27 把持ピース
28 当接ピース
29 連結ピン
30 中間ブラケット
31 スイングシリンダ
40 ボーリングマシン
41 ドリルヘッド
42 マスト
43 ロッドブレーカ
44、45 ロッドクランプ