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  • 特開-鉄源の利用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104677
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】鉄源の利用方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/28 20060101AFI20240729BHJP
   C21C 1/02 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C21C5/28 D
C21C1/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009017
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】城 慎之介
【テーマコード(参考)】
4K014
4K070
【Fターム(参考)】
4K014AA02
4K014AB03
4K014AD23
4K014BB01
4K014CE01
4K070AB05
4K070AB11
4K070AC02
4K070AC07
4K070BC12
4K070BC15
4K070EA02
(57)【要約】
【課題】製鋼スラグを鉄源として用いる場合において、精錬負荷の増加を抑制することができる、鉄源の利用方法を提供すること。
【解決手段】製鋼スラグを破砕し磁力選別して得た粉粒状地金を溶銑に添加する添加工程と、前記添加工程の後、前記溶銑に溶銑脱硫処理を施す脱硫工程と、を備え、前記粉粒状地金は、CaOとSとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼スラグを破砕し磁力選別して得た粉粒状地金を溶銑に添加する添加工程と、
前記添加工程の後、前記溶銑に溶銑脱硫処理を施す脱硫工程と、
を備え、
前記粉粒状地金は、CaOとSとを含む、鉄源の利用方法。
【請求項2】
前記添加工程では、溶銑鍋に充填された前記溶銑に前記粉粒状地金を添加する、請求項1に記載の鉄源の利用方法。
【請求項3】
前記粉粒状地金の成分は、CaOが15mass%以上35mass%以下、T.Feが40mass%以下、M.Feが10mass%以上、塩基度が2.5以上を満たす、請求項1又は2に記載の鉄源の利用方法。
【請求項4】
前記粉粒状地金の成分は、Sが0.001mass%以上0.05mass%以下を満たす、請求項3に記載の鉄源の利用方法。
【請求項5】
前記粉粒状地金の粒径は、0.5mm以上5mm以下を満たす、請求項4に記載の鉄源の利用方法。
【請求項6】
前記溶銑鍋の充填量は、200t以上400t以下であり、
前記溶銑の成分は、Siが0.01mass%以上1.0mass%以下、Cが4.0mass%以上5.3mass%以下を満たす、請求項2に記載の冷鉄源の利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄源の利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼工程では、鉄歩留りの向上を目的として、溶鉄への冷鉄源の添加が行われている。例えば、特許文献1では、溶銑鍋に付着する地金量を抑制しつつ冷鉄源を溶銑鍋に投入することができる技術を提供している。また、特許文献2では、空の溶銑鍋に冷鉄源を入置することで熱ロス削減する技術を提供している。
また、製鋼工程では様々なスラグが発生しており、このスラグには不純物(SiやP、S、Mn、Alなどの酸化物)と鉄分とが含まれている。この鉄分を回収して、鉄源として再利用することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-189841号公報
【特許文献2】特開2007-113055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、投入する冷鉄源の成分については触れておらず、冷鉄源が溶銑に溶けた後にピックアップする不純物の除去をするには副原料のコストが大幅に増加する可能性がある。また、特許文献2の技術についても、成分に関する記載がなく、次工程で副原料のコストが増加する可能性がある。
また、製鋼スラグを溶鉄に添加した場合、製鋼スラグには不純物が多く含まれていることから、精錬コストの悪化が見込まれる。特にSは酸化反応での除去ができないため、精錬コストが大幅に悪化することが問題となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、製鋼スラグを鉄源として用いる場合において、精錬負荷の増加を抑制することができる、鉄源の利用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様によれば、製鋼スラグを破砕し磁力選別して得た粉粒状地金を溶銑に添加する添加工程と、上記添加工程の後、上記溶銑に溶銑脱硫処理を施す脱硫工程と、を備え、上記粉粒状地金は、CaOとSとを含む、鉄源の利用方法が提供される。
(2)上記(1)の構成において、上記添加工程では、溶銑鍋に充填された上記溶銑に上記粉粒状地金を添加する。
(3)上記(1)又は(2)の構成において、上記粉粒状地金の成分は、CaOが15mass%以上35mass%以下、T.Feが20mass%以上40mass%以下、M.Feが10mass%以上、塩基度が2.5以上を満たす。
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの構成において、上記粉粒状地金の成分は、Sが0.001%以上0.05%以下を満たす。
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つの構成において、上記粉粒状地金の粒径は、0.5mm以上5mm以下を満たす。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つの構成において、上記溶銑鍋の充填量は、200t以上400t以下であり、上記溶銑の成分は、Siが0.01mass%以上1.0mass%以下、Cが4.0mass%以上5.3mass%以下を満たす。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、製鋼スラグを鉄源として用いる場合において、精錬負荷の増加を抑制することができる、鉄源の利用方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態における添加工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0010】
<鉄源の利用方法>
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る鉄源の利用方法を説明する。本実施形態では、製鋼スラグを粉砕し磁力選別して得た粉粒状地金を溶銑に添加する添加工程を行った後に、溶銑に脱硫処理を施す脱硫工程を行う。なお、添加工程と脱硫工程との間では、他の精錬処理は行われないものとする。
【0011】
添加工程では、図1に示すように、溶銑鍋1に充填された溶銑2に、粉粒状地金3を上方から自由落下させることによって投入する。粉粒状地金3は、転炉等で発生した製鋼スラグを粉砕し磁力選別して得られ、CaOとSとを含む。粉粒状地金3にCaOが含まれることにより、脱硫工程において含有されるCaOが脱硫剤としての役割を担うため、脱硫工程における粉粒状地金3中のSのピックアップによる脱硫剤の増加を抑制することができる。
【0012】
粉粒状地金3の成分は、CaOが15mass%以上35mass%以下、塩基度が2.5以上を満たすことが好ましく、CaOが15mass%以上30mass%以下、塩基度が2.5以上を満たすことがより好ましい。粉粒状地金3の含有成分として、CaOを15mass%以上、塩基度を2.5以上とすることで、脱硫工程における脱硫剤の役割を十分に担うことができ、脱硫剤の増加を抑えることができる。なお、塩基度は、粉粒状地金3の含有成分における、CaO含有量(mass%)に対するSiO含有量(mass%)の比である。つまり、粉粒状地金3には、CaO含有量と塩基度とに応じて、SiOも成分として含まれる。また、粉粒状地金3の含有成分として、CaOが35mass%超となると、粉粒状地金3に含まれる鉄分が少なくなることから、鉄歩留りの向上効果が小さくなる。このため、鉄歩留りの向上効果に対する熱ロス(溶銑温度の低下)の影響が大きくなり、製造コストが悪化する。
【0013】
また、粉粒状地金3の成分は、T.Fe(全鉄分)が40mass%以下、M.Fe(金属鉄分)が10mass%以上を満たすことが好ましい。製鋼スラグから得られる粉粒状地金3には、鉄分として、金属鉄分の他に、FeOやFeといった酸化鉄分が含まれる。粉粒状地金3のT.Feの含有量が多くなると、酸化鉄分も多くなるため、粉粒状地金3の添加によって溶銑2中の酸素濃度が高くなり、脱硫工程での脱硫効率が低下する懸念がある。このため、T.Feが40mass%超となる場合、酸化鉄の含有量も多くなることから、脱硫工程における脱硫効率が低下する。このため、粉粒状地金3のT.Feの含有量は、40mass%以下であることが好ましい。また、粉粒状地金3のM.Feの含有量が10mass%未満となる場合、鉄歩留りの向上効果に対する熱ロスの影響が大きくなり、製造コストが悪化する。
【0014】
さらに、粉粒状地金3の成分は、Sが0.001mass%以上0.05mass%以下を満たすことが好ましい。粉粒状地金3のSの含有量が、0.05mass%超となると、粉粒状地金3から溶銑2へのSのピックアップが大きくなり、またピックアップする量のばらつきも大きくなることから、脱硫工程における脱硫剤の削減効果が小さくなる。
さらに、粉粒状地金3の粒径は、0.5mm以上5mm以下を満たす。粉粒状地金3の粒径が0.5mm未満の場合、発塵リスクが高まる。一方、粉粒状地金3の粒径が5mm超の場合、脱硫工程において溶解していない粉粒状地金3が溶銑鍋1内の耐火物に損傷を与える恐れがある。
【0015】
溶銑2の成分は、Siが0.01mass%以上1.0mass%以下、Cが4.0mass%以上5.3mass%以下を満たすことが好ましい。また、溶銑鍋1の充填量、つまり溶銑鍋1に収容可能な溶銑2の量は、200t以上400t以下であることが好ましい。
脱硫工程では、粉粒状地金3が添加された溶銑2に脱硫処理を施す。脱硫工程における脱硫処理方法は特に限定されないが、例えば、機械撹拌式の脱硫処理方法を用いることができる。
【0016】
<変形例>
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態とともに種々の変形例を含む本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態には、本明細書に記載したこれらの変形例を単独または組み合わせて含む実施形態も網羅すると解すべきである。
例えば、上記実施形態では、粉粒状地金3の添加方法として、溶銑2の上方から粉粒状地金3を投入するとしたが、本発明はかかる例に限定されない。粉粒状地金3の添加方法は、特に限定されるものではなく、例えば、インジェクションランスを用いて溶銑2へ吹き込む等の他の添加方法であってもよい。
【0017】
また、上記実施形態では、添加工程では溶銑鍋1に充填された溶銑2に粉粒状地金3を添加し、添加工程の直後に脱硫工程が行われるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、粉粒状地金3は脱硫処理前の溶銑2に添加されればよく、トーピード等の他の溶銑容器に収容された溶銑2や、高炉から出銑した溶銑2に行われる鋳床脱珪処理中の溶銑2であってもよい。なお、溶銑容器に粉粒状地金3を予め入れ置きしておき、その後、溶銑容器に溶銑2を装入する場合、溶銑装入時に発塵をして操業トラブルや歩留りの悪化を引き起こす可能性がある。しかし、溶銑容器に収容された溶銑2に粉粒状地金3を添加することで、このようなリスクを低減することができる。
【実施例0018】
次に、本発明者らが行った実施例について説明する。本実施例では、上記実施形態の添加工程と脱硫工程とを行い、脱硫工程における脱硫剤の使用量について評価した。溶銑鍋1の充填量は、200t以上400t以下である。溶銑2の成分は、Siが0.01mass%以上1.0mass%以下、Cが4.0mass%以上5.3mass%以下である。添加工程で添加する粉粒状地金3の成分は、CaOが15mass%以上35mass%以下、Sが0.001mass%以上0.05mass%以下、T.Feが20mass%以上40mass%以下、M.Feが10mass%以上、塩基度が2.5以上である。粉粒状地金3の粒径は、0.5mm以上5mm以下である。粉粒状地金3の添加量は、溶銑1t当たりに対して、2.5kg以上7.0kg以下である。
【0019】
実施例では、脱硫工程での脱硫剤の実際の使用量と、粉粒状地金3に含まれるSによって溶銑2中のSが上昇した場合における脱硫剤の使用量(ピックアップ分を考慮した使用量)とを比較することで、脱硫剤の削減量を評価した。この結果、脱硫剤のピックアップ分を考慮した使用量に対して、実際の使用量は38%削減できることを確認した。つまり、上記実施形態に係る鉄源の利用方法によれば、製鋼スラグを鉄源として用いる場合において、精錬負荷の増加を抑制することができることが確認できた。
【符号の説明】
【0020】
1 溶銑鍋
2 溶銑
3 粉粒状地金
図1