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特開2024-104679立体造形方法、及び立体造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104679
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】立体造形方法、及び立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/135 20170101AFI20240729BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240729BHJP
【FI】
B29C64/135
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009023
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096080
【弁理士】
【氏名又は名称】井内 龍二
(74)【代理人】
【識別番号】100194098
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 一
(72)【発明者】
【氏名】江川 航平
(72)【発明者】
【氏名】杉原 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】中根 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】神村 尊
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA39
4F213AA43
4F213AB11
4F213AD02
4F213AD16
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL23
4F213WL24
4F213WL25
4F213WL42
4F213WL52
(57)【要約】
【課題】いわゆるコアシェル方式の立体造形方法において、コア材を硬化させる際にシェルで囲われた部分であるコア充填部の変形を防止することができ、かつ、コア材硬化後にシェルの分離を容易に行うことができる立体造形方法を提供すること。
【解決手段】立体造形物の外形を規定するシェル部を造形するシェル造形工程と、シェル部の内側面に囲われた部分であるコア充填部に液相材料であるコア材を充填するコア材充填工程と、コア充填部内のコア材を硬化させるコア材硬化工程と、シェル部の少なくとも一部を硬化後のコア材から分離させて、コア材を主とする立体造形物を得る分離工程とを含む立体造形方法であって、シェル造形工程が、コア充填部を形成するための第1シェル部を造形する第1シェル部造形工程と、第1シェル部の外側面の少なくとも一部に、剛性に異方性を有する第2シェル部を造形する第2シェル部造形工程とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル材を用いて立体造形物の外形を規定するシェル部を造形するシェル造形工程と、
前記シェル部の内側面に囲われた部分であるコア充填部に液相材料であるコア材を充填するコア材充填工程と、
前記コア充填部内の前記コア材を硬化させるコア材硬化工程と、
前記シェル部の少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させて、該コア材を主とする立体造形物を得る分離工程と、を含む立体造形方法であって、
前記シェル造形工程が、
前記コア充填部を形成するための第1シェル部を造形する第1シェル部造形工程と、
前記第1シェル部の外側面の少なくとも一部に、剛性に異方性を有する第2シェル部を造形する第2シェル部造形工程とを含んで構成されていることを特徴とする立体造形方法。
【請求項2】
前記第1シェル部造形工程が、
前記第1シェル部として、前記コア充填部を形成する第1シェル壁を造形する工程を含み、
前記第2シェル部造形工程が、
前記第2シェル部として、前記第1シェル壁から所定間隔を隔てた第2シェル壁と、該第2シェル壁と前記第1シェル壁との間に、前記第2シェル部の剛性に異方性を付与するための異方性付与層とを造形する工程を含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の立体造形方法。
【請求項3】
前記第2シェル部造形工程が、
前記第2シェル部の剛性が前記第1シェル壁と前記第2シェル壁との対向面に平行な方向よりも前記対向面に直交する方向に高くなる形状となるように、前記異方性付与層を造形することを特徴とする請求項2記載の立体造形方法。
【請求項4】
前記第2シェル部造形工程が、
前記異方性付与層として、前記第1シェル壁と前記第2シェル壁とを繋ぎ合わせる複数の連結部を造形し、
これら各連結部における前記第1シェル壁との第1接合部の接合面積が、前記第2シェル壁との第2接合部の接合面積よりも狭くなるように造形することを特徴とする請求項2記載の立体造形方法。
【請求項5】
前記分離工程が、
前記コア材硬化工程の後に、前記第2シェル部を前記第1シェル部から分離させる第1分離工程と、
該第1分離工程の後に、前記第1シェル部の少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させ、前記コア充填部の形状に倣った外形を有する前記コア材を主とする立体造形物を得る第2分離工程とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載の立体造形方法。
【請求項6】
前記第2シェル部造形工程が、
前記第1シェル部の外側面の一部に前記第2シェル部を造形し、
前記シェル部の剛性が前記第2シェル部の前記第1シェル部との対向面に平行な方向よりも前記対向面に直交する方向に高くなる形状となるように、前記第2シェル部を造形することを特徴とする請求項1記載の立体造形方法。
【請求項7】
前記第2シェル部造形工程が、
前記第2シェル部がハニカム構造、トラス構造、又は錐台構造のいずれかとなるように造形する工程を含んで構成されていることを特徴とする請求項6記載の立体造形方法。
【請求項8】
前記コア材が熱硬化性樹脂からなり、
前記コア材硬化工程では、前記コア材に熱エネルギーを付与することにより、前記コア材を熱硬化させることを特徴とする請求項1~7のいずれかの項に記載の立体造形方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかの項に記載の立体造形方法を用いて立体造形物を製造することを特徴とする立体造形物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体造形方法、及び立体造形物の製造方法に関し、より詳細には、3Dプリンティングなどの付加製造技術を用いて立体造形物を造形する立体造形方法、及び立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンティング技術を用いた製造装置の名称として、広く3Dプリンタという言葉が使われている。3Dプリンタは、3次元のCADデータをもとにコンピュータで造形物の断面形状を計算し、該造形物を薄い輪切り状の断面構成要素に分割して、その断面構成要素を種々の方法で形成し、それを積層させて目的とする造形物を造形する立体造形装置である。3Dプリンティング技術は、国際的にはAdditive Manufacturing Technologyと同義語として使われる場合が多く、日本語訳として、付加製造技術が用いられている。
【0003】
近年は、3Dプリンタで造形した造形物に対しても、実製品の量産前の評価目的で外観だけでなく剛性や強度が要求されるようになり、金属3Dプリンタや複合材3Dプリンタなどが注目されている。
【0004】
本出願人は、上記した付加製造技術に関連する技術の一つとして、下記の特許文献1記載の立体造形方法を提案している。特許文献1記載の立体造形方法は、造形槽内で複数回のシェルの造形とコア材の充填とを繰り返した後、活性エネルギー線の照射又は熱エネルギーの付与により前記コア材を一括して硬化させることを特徴としている。係る立体造形方法により、前記コア材により造形された部分に積層界面が存在しない、換言すれば、剛性、強度に方向性が無い立体造形物を造形することが可能となった。
【0005】
上記特許文献1記載の立体造形方法(以下この方法をコアシェル方式とも言う。)で立体造形物を得るにあたり、一般には外殻層を形成するシェルと、該シェルの内側の硬化したコア材とを合わせたものを立体造形物と呼んでいる。
[発明が解決しようとする課題]
【0006】
一方で、このコアシェル方式で立体造形物を得るにあたり、立体造形物の一体性が重視されたり、前記シェルの強度が問題視されたりする場合に、前記シェルの少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させて、硬化後のコア材を主とする立体造形物が求められる場合がある。
【0007】
この場合、前記シェルと硬化後の前記コア材とは密着しているため、前記シェルに切削等による外力を加えて前記コア材から前記シェルを分離する工程が必要となる。
上記コアシェル方式においては、液相状態の前記コア材を一括して硬化させる際、前記コア材を歪みなく硬化させるために、前記シェルの厚さは、前記コア材の硬化時に変形しない十分な厚みを有していることが望ましい。
【0008】
一方で、前記シェルの厚みが増すほど、硬化後の前記コア材から前記シェルを分離しにくくなるため、硬化後の前記コア材から前記シェルを分離させる必要がある場合は、前記シェルの厚さは薄い方が望ましい。
しかしながら、前記シェルの厚さを薄くすると前記コア材を一括して硬化させる工程において、前記熱エネルギー等による加熱によって前記シェルが軟化し、硬化前の前記コア材の自重等も加わって、前記シェルの形状が変形しやすくなり、その結果、硬化後の前記コア材の寸法精度が低下してしまうという課題があった。
【0009】
上記課題が生じる現象の一例について、図6、7を用いて説明する。
図6、7は、上記コアシェル方式において、従来のコア材を一括して硬化させる工程の前後の状態を模式的に示す図である。
図6(a)は、シェルの厚さが厚い場合のコア材硬化前の状態を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)におけるb-b線断面図であり、(c)は、シェルの厚さが厚い場合のコア材硬化後の状態を模式的に示す平面図であり、(d)は、(c)におけるd-d線断面図である。
図7(a)は、シェルの厚さが薄い場合のコア材硬化前の状態を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)におけるb-b線断面図であり、(c)は、シェルの厚さが薄い場合のコア材硬化後の状態を模式的に示す平面図であり、(d)は、(c)におけるd-d線断面図である。
【0010】
なお、図6、7に示した例では、シェル40は、上方に開口する有底箱形状に造形されて、シェル40で囲われた部分であるコア部50にコア材60が充填されている。
図6に示すように、シェル40の厚さが厚い場合は、コア材硬化前後でシェル40及びコア部50の変形はほとんど生じておらず、コア材60をほとんど歪みなく硬化させて、硬化コア材60aにすることが可能である。
【0011】
一方、図7に示すように、シェル40の厚さが薄い場合は、図7(c)、(d)に示すコア材硬化後において、シェル40の長手方向の外周面が少し膨らんだ状態となり、図7(d)の断面図に示すように、シェル40が逆ハの字状に少し広がった形態に変形し、これに伴いコア部50も変形することにより、硬化コア材60aが少し歪んだ状態となる。
このように、シェル40の厚さを薄くするとコア材60を一括して硬化させる工程において、熱エネルギー等によってシェル40が軟化し、硬化前のコア材60の自重等も加わって、シェル40の形状が変形して、硬化コア材60aの寸法精度が低下する現象が生じることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2019―136923号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0013】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、いわゆるコアシェル方式の立体造形方法において、コア材を硬化させる際にシェルで囲われた部分であるコア充填部の変形を防止することができ、かつ、コア材硬化後にシェルの分離を容易に行うことができる立体造形方法、及び立体造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
上記目的を達成するために本発明に係る立体造形方法(1)は、
シェル材を用いて立体造形物の外形を規定するシェル部を造形するシェル造形工程と、
前記シェル部の内側面に囲われた部分であるコア充填部に液相材料であるコア材を充填するコア材充填工程と、
前記コア充填部内の前記コア材を硬化させるコア材硬化工程と、
前記シェル部の少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させて、該コア材を主とする立体造形物を得る分離工程と、を含む立体造形方法であって、
前記シェル造形工程が、
前記コア充填部を形成するための第1シェル部を造形する第1シェル部造形工程と、
前記第1シェル部の外側面の少なくとも一部に、剛性に異方性を有する第2シェル部を造形する第2シェル部造形工程とを含んで構成されていることを特徴としている。
【0015】
上記立体造形方法(1)によれば、前記シェル造形工程が前記第1シェル部造形工程と前記第2シェル部造形工程とを含んでいるので、前記シェル部として、前記コア充填部を形成するための第1シェル部と、該第1シェル部の外側面の少なくとも一部に、剛性に異方性を有する第2シェル部とが造形される。そのため、前記コア材硬化工程において、剛性に異方性を有する前記第2シェル部によって前記コア充填部が変形しないように前記第1シェル部の外側面の少なくとも一部を支持することが可能となる。したがって、前記第2シェル部を造形することによって、前記コア材硬化工程における前記コア充填部の変形を防止することができる。しかも、前記第2シェル部を造形することによって、前記第1シェル部の厚さを薄くすることも可能となり、前記分離工程において、前記第1シェル部を硬化後の前記コア材から容易に分離させることが可能となる。
【0016】
また本発明に係る立体造形方法(2)は、上記立体造形方法(1)において、
前記第1シェル部造形工程が、
前記第1シェル部として、前記コア充填部を形成する第1シェル壁を造形する工程を含み、
前記第2シェル部造形工程が、
前記第2シェル部として、前記第1シェル壁から所定間隔を隔てた第2シェル壁と、該第2シェル壁と前記第1シェル壁との間に、前記第2シェル部の剛性に異方性を付与するための異方性付与層とを造形する工程を含んで構成されていることを特徴としている。
【0017】
上記立体造形方法(2)によれば、前記第1シェル部造形工程において、前記第1シェル部として、前記コア充填部を形成する前記第1シェル壁が造形され、前記第2シェル部造形工程において、前記第2シェル部として、前記第1シェル壁から所定間隔を隔てた前記第2シェル壁と、該第2シェル壁と前記第1シェル壁との間に、前記シェル部の剛性に異方性を付与するための前記異方性付与層とが造形される。
前記第2シェル壁と前記異方性付与層とを造形することによって、前記シェル部の厚さを十分に確保しつつ、前記第1シェル壁の厚さを薄く造形することが可能となる。そして、前記コア材硬化工程において、前記第2シェル壁と前記異方性付与層とによって前記コア充填部が変形しないように前記第1シェル壁の外側面を支持することが可能となり、前記コア充填部の変形を防止することができる。
また、前記異方性付与層は剛性に異方性を有しているので、前記分離工程において、前記第2シェル壁と前記異方性付与層とを前記第1シェル壁から分離させた後に、前記第1シェル壁を前記コア材から分離させることが可能となり、硬化後の前記コア材と密着している部分の厚さを薄くした状態にして、前記第1シェル壁を硬化後の前記コア材から容易に分離させることが可能となる。
【0018】
また本発明に係る立体造形方法(3)は、上記立体造形方法(2)において、
前記第2シェル部造形工程が、
前記第2シェル部の剛性が前記第1シェル壁と前記第2シェル壁との対向面に平行な方向よりも前記対向面に直交する方向に高くなる形状となるように、前記異方性付与層を造形することを特徴としている。
【0019】
上記立体造形方法(3)によれば、前記第2シェル部造形工程において、前記第2シェル部の剛性が前記第1シェル壁と前記第2シェル壁との対向面に平行な方向よりも前記対向面に直交する方向に高くなる形状となるように、前記異方性付与層が造形される。
そのため、前記異方性付与層によって、前記シェル部が前記第1シェル壁と前記第2シェル壁との対向面に直交する方向に剛性が高く、前記対向面に平行な方向に相対的に剛性が低い構造、換言すれば、前記コア材硬化工程での前記コア充填部の変形方向に剛性が高く、前記分離工程での前記第1シェル壁と前記第2シェル壁との分離方向に相対的に剛性が低い構造にすることができる。
したがって、前記コア材硬化工程において、前記異方性付与層によって前記第1シェル壁の外側面を確実に支持することが可能となり、前記コア充填部の変形を防止することができる。また、前記分離工程において、前記第1シェル壁を硬化した前記コア材から分離させる前に、先に前記第2シェル壁と前記異方性付与層とを前記第1シェル壁から容易に分離させることができ、その後に行われる前記第1シェル壁を硬化後の前記コア材から分離させる作業を容易に行うことが可能となる。
【0020】
また本発明に係る立体造形方法(4)は、上記立体造形方法(2)において、
前記第2シェル部造形工程が、
前記異方性付与層として、前記第1シェル壁と前記第2シェル壁とを繋ぎ合わせる複数の連結部を造形し、
これら各連結部における前記第1シェル壁との第1接合部の接合面積が、前記第2シェル壁との第2接合部の接合面積よりも狭くなるように造形することを特徴としている。
【0021】
上記立体造形方法(4)によれば、前記第2シェル部造形工程において、前記異方性付与層として、前記第1シェル壁と前記第2シェル壁とを繋ぎ合わせる複数の連結部が造形され、これら各連結部における前記第1シェル壁との第1接合部の接合面積が、前記第2シェル壁との第2接合部の接合面積よりも狭くなるように造形される。
そのため、前記複数の連結部によって、前記シェル部が前記第1シェル壁と前記第2シェル壁との対向面に直交する方向に剛性が高く、前記対向面に平行な方向に相対的に剛性が低い構造、換言すれば、前記コア材硬化工程での前記コア充填部の変形方向に剛性が高く、前記分離工程での前記第1シェル壁と前記第2シェル壁との分離方向に相対的に剛性が低い構造にすることができる。
したがって、前記コア材硬化工程において、前記複数の連結部によって前記第1シェル壁の外側面を確実に支持することが可能となり、前記コア充填部の変形を防止することができる。また、前記分離工程において、前記第1シェル壁を硬化した前記コア材から分離させる前に、先に前記第2シェル壁と前記連結部とを前記第1シェル壁から容易に分離させることができ、その後に行われる前記第1シェル壁を硬化後の前記コア材から分離させる作業も容易に行うことが可能となる。
【0022】
また本発明に係る立体造形方法(5)は、上記立体造形方法(1)~(4)のいずれかにおいて、
前記分離工程が、
前記コア材硬化工程の後に、前記第2シェル部を前記第1シェル部から分離させる第1分離工程と、
該第1分離工程の後に、前記第1シェル部の少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させ、前記コア充填部の形状に倣った外形を有する前記コア材を主とする立体造形物を得る第2分離工程とを含んで構成されていることを特徴としている。
【0023】
上記立体造形方法(5)によれば、前記第1分離工程において、先に前記第2シェル部を前記第1シェル部から分離させて、その後、前記第2分離工程において、前記第2シェル部のない状態で、前記第1シェル部の少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させることが可能となる。したがって、硬化後の前記コア材と密着している部分の厚さを薄くした状態にして、前記第1シェル部を硬化後の前記コア材から分離させることが容易となり、前記分離工程での作業効率を高めることができる。
【0024】
また本発明に係る立体造形方法(6)は、上記立体造形方法(1)において、
前記第2シェル部造形工程が、
前記第1シェル部の外側面の一部に前記第2シェル部を造形し、
前記シェル部の剛性が前記第2シェル部の前記第1シェル部との対向面に平行な方向よりも前記対向面に直交する方向に高くなる形状となるように、前記第2シェル部を造形することを特徴としている。
【0025】
上記立体造形方法(6)によれば、前記第1シェル部の外側面の一部に前記第2シェル部が造形され、前記シェル部の剛性が前記第2シェル部の前記第1シェル部との対向面に平行な方向よりも前記対向面に直交する方向に高くなる形状となるように、前記第2シェル部が造形される。
そのため、前記第2シェル部によって、前記第1シェル部と前記第2シェル部との対向面に直交する方向に剛性が高くなる構造、換言すれば、前記コア材硬化工程での前記コア充填部の変形方向に剛性が高い構造にすることができる。
したがって、前記コア材硬化工程において、前記第2シェル部によって前記第1シェル部の外側面の一部を確実に支持することが可能となり、前記コア充填部の変形を防止することができる。
【0026】
また、前記第2シェル部が前記第1シェル部の外側面の一部にしか造形されていないので、前記第2シェル部を造形するのに使用する前記シェル材の量が少なくてすみ、造形コストを節減できる。また前記第1シェル部から前記第2シェル部の分離も容易に行うことができる。
【0027】
また本発明に係る立体造形方法(7)は、上記立体造形方法(6)において、
前記第2シェル部造形工程が、
前記第2シェル部がハニカム構造、トラス構造、又は錐台構造のいずれかとなるように造形する工程を含んで構成されていることを特徴としている。
【0028】
上記立体造形方法(7)によれば、前記第2シェル部造形工程において、前記第2シェル部がハニカム構造、トラス構造、又は錐台構造のいずれかを含むように造形される。したがって、前記第2シェル部によって、前記シェル部の剛性が前記第1シェル部と前記第2シェル部との対向面に直交する方向に高くなる構造、換言すれば、前記コア材硬化工程での前記コア充填部の変形方向に剛性が高い構造にすることができる。
【0029】
また本発明に係る立体造形方法(8)は、上記立体造形方法(1)~(7)のいずれかにおいて、
前記コア材が熱硬化性樹脂からなり、
前記コア材硬化工程では、前記コア材に熱エネルギーを付与することにより、前記コア材を熱硬化させることを特徴としている。
【0030】
上記立体造形方法(8)によれば、前記コア材が熱硬化性樹脂からなるので、前記コア材硬化工程において、前記コア材全体を積層界面が存在しないように一体化させた状態に効率良く硬化させることができる。
【0031】
また本発明に係る立体造形物の製造方法は、上記立体造形方法(1)~(8)のいずれかを用いて立体造形物を製造することを特徴としている。
【0032】
上記立体造形物の製造方法によれば、前記立体造形物を製造する場合に、上記立体造形方法(1)~(8)のいずれかにより得られる効果を奏することとなり、前記コア材硬化工程において前記コア充填部の変形を防止して、硬化した前記コア材の寸法精度を高めることができる。そして、前記分離工程での前記シェル部の分離を、前記第2シェル部と前記第1シェル部とで分けて行うことが可能となり、前記第1シェル部を硬化した前記コア材から分離する作業が容易となり、寸法精度の高い前記コア材を主とする立体造形物の製造効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態に係る立体造形方法に用いる立体造形装置の構成例を示す概略図である。
図2】実施の形態に係る立体造形方法の一例を説明するための図であり、(a)はシェル造形工程、(b)はコア材充填工程を説明するための図である。
図3】実施の形態に係る立体造形方法におけるコア材硬化工程の一例を説明するための図であり、(a)はコア材硬化前、(b)はコア材硬化後の状態を示す図である。
図4】実施の形態に係る立体造形方法における分離工程の一例を説明するための図であり、(a)は第2シェル部の分離前、(b)は第2シェル部分離中、(c)は第1シェル部の分離中、(d)、(e)は第1シェル部の分離後の状態を示す図である。
図5】実施の形態に係る立体造形方法のシェル造形工程で造形されたシェル部の別の造形例を示す図であり、(a)はコア材充填工程後の造形物の断面斜視図であり、(b)はコア材硬化工程後の造形物の断面斜視図の一例である。
図6】コアシェル方式において、従来のコア材を一括して硬化させる工程の前後の立体造形物の状態の一例を模式的に示す図であり、(a)は、シェルの厚さが厚い場合のコア材硬化前の状態を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)におけるb-b線断面図であり、(c)は、シェルの厚さが厚い場合のコア材硬化後の状態を模式的に示す平面図であり、(d)は、(c)におけるd-d線断面図である。
図7】コアシェル方式において、従来のコア材を一括して硬化させる工程の前後の立体造形物の状態の一例を模式的に示す図であり、(a)は、シェルの厚さが薄い場合のコア材硬化前の状態を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)におけるb-b線断面図であり、(c)は、シェルの厚さが薄い場合のコア材硬化後の状態を模式的に示す平面図であり、(d)は、(c)におけるd-d線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る立体造形方法、及び立体造形物の製造方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図面に記載しているシェル部やコア充填部の形態などは、本発明の主旨が容易に理解できるように模式的に描かれており、これらの形態に限定されるものではない。
【0035】
図1は、実施の形態に係る立体造形方法に用いる立体造形装置の構成例を示す概略図である。
立体造形装置10は、複合材3Dプリンタとしての機能を備え、液槽重合が行われる造形槽11、レーザー光学系12、コア材供給系13、及び熱硬化手段16を主たる構成要素としている。
【0036】
造形槽11内には、シェル材2として、例えば、液相材料である光硬化性樹脂が貯留されており、図示しない光硬化性樹脂調整系により、その液面位置を所定位置に維持、調整可能となっている。シェル材2には、例えば、エポキシ系、アクリル系などの公知の紫外線硬化樹脂などが使用可能である。また、造形槽11内には造形台15が設けられている。造形台15は、造形中の造形物を支持するためのものであり、図示しない駆動機構により図中z軸方向の任意の位置に移動(昇降)かつ設置可能となっている。
【0037】
レーザー光学系12は、紫外線レーザー光源12a、及び走査光学系12bを備えている。紫外線レーザー光源12aから紫外線レーザー光12cが出射され、出射された紫外線レーザー光12cは、走査光学系12bの駆動により、シェル材2の液面上(すなわちxy平面)の所定範囲を走査させることが可能となっている。
【0038】
シェル材2は、活性エネルギー線の一つである紫外線レーザー光12cの照射により、図1にて硬化済み紫外線硬化樹脂層3で示すように液面から所定の深さだけ硬化するようになっている。この硬化深度は、紫外線レーザー光源12aの出力を調整することにより、ある程度の幅で調整可能となっており、例えば、0.1mm~0.4mm程度の範囲で調整されている。
【0039】
したがって、造形台15上面をシェル材2の液面から所定の硬化深度だけ沈めた深さに位置させ、シェル材2の液面の任意の位置へ紫外線レーザー光12cを照射することにより、造形台15上に任意の面積の硬化済み紫外線硬化樹脂層3が形成される。そして、造形台15上に硬化済み紫外線硬化樹脂層3が形成された後、硬化深度分だけ造形台15を下降させ、シェル材2の液面の任意の位置へ紫外線レーザー光12cを照射することにより、硬化済み紫外線硬化樹脂層3の上に硬化済み紫外線硬化樹脂層3が積層されるようになっている。
【0040】
そして、造形台15の下降とシェル材2液面への紫外線レーザー光12cの照射とを繰り返し実施することにより、硬化済み紫外線硬化樹脂層3の積層が進行し、3次元形状の硬化済み紫外線硬化樹脂層3を得ることが可能となっている。
本実施の形態では、このようにして造形された造形物をシェル部4(図2参照)と呼ぶ。シェル部4は、第1シェル部5と、第1シェル部5の外側面を囲う第2シェル部6とを含んで構成されている。第1シェル部5は、コア材8を充填するための外殻層としての機能を備えており、第1シェル部5の内側面に囲われた部分のうち底面を有する部分をコア充填部7(図2参照)と呼ぶ。
【0041】
コア材供給系13は、コア材8を内部に貯留するコア材タンク13a中から、ポンプ13bで配管系13c、13dを順に介して圧送しながらコア材8を供給し、ノズル14先端からコア材8を吐出する。ノズル14は図示しないノズル移動機構により、図中xyz各方向に移動かつ固定可能となっている。このため配管系13dはノズル14の移動に追随するようフレキシブルな構造及び材料で構成されている。
【0042】
コア材8は、例えば、エポキシ系、アクリル系など公知の液相材料である熱硬化性樹脂の中に強化材が均一に分散された複合材で構成されている。前記強化材は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びアラミド繊維のうちの少なくとも1つを含む繊維状の強化材でもよいし、シリカ等の無機材料粉などでもよい。コア材8にはシェル材2よりも高比重なものが使用されている。また、コア材8の粘度は、シェル材2の粘度よりも2倍以上であることが好ましい。
【0043】
熱硬化手段16は、加熱対象を密閉可能なチャンバを有する加熱炉で構成されている。ここでの加熱対象は、造形槽11から取り出された、コア材8が充填されたシェル部4(図3参照)であり、熱硬化手段16は、その加熱炉内をコア材8の熱硬化温度よりも高い温度まで昇降させることが可能となっている。
【0044】
熱硬化手段16を用いて、コア材8が充填されたシェル部4を加熱するにあたり、加熱による第1シェル部5の変形を抑え込むための手段として第2シェル部6を機能させることが可能となっている。
【0045】
そして、熱硬化手段16によって、シェル部4に充填されているコア材8に熱エネルギーを付与し、コア材8の熱硬化温度よりも高い温度まで昇温させて、第2シェル部6によって第1シェル部5の外側面を支持しながらコア充填部7が変形する現象を抑え込んだ状態で、コア材8を一括して熱硬化させることが可能となっている。シェル部4は、物性としてガラス転移温度Tgsを有し、このガラス転移温度Tgsはコア材8の熱硬化温度Tpcよりも低い値となっている。
熱硬化手段16を用いたコア材硬化工程では、コア材8の熱硬化温度Tpcよりも高い温度まで昇温させて、第1シェル部5が軟らかくなったとしても、第1シェル部5がコア材8の自重に耐えきれずに変形するのを第2シェル部6によって抑え込むことができ、これによりコア充填部7の変形を防止することが可能となっている。
【0046】
この硬化したコア材8を本実施の形態では硬化コア材8a(図3参照)と呼び、この硬化コア材8aが本実施の形態における立体造形物を主として構成する。
コア充填部7が後に形成される立体造形物における所望の形状を有するように第1シェル部5が造形され、このコア充填部7全体にコア材8を充填してからコア材8を熱硬化させることにより、前記所望の形状の立体造形物1(図4(d)、(e)参照)を得ることが可能となる。
また、本方法によると、硬化コア材8aにより形成される立体造形物1には積層界面が存在しないため、剛性、強度に方向性が無い立体造形物を造形することが可能となっている。
【0047】
次に、実施の形態に係る立体造形方法の一例について、図2~4を用いて説明する。
図2(a)はシェル造形工程、図2(b)はコア材充填工程の一場面を示す図である。
図3は、コア材硬化工程の一例を説明するための図であり、(a)はコア材硬化前、(b)はコア材硬化後の状態を示す図である。
図4は、分離工程の一例を説明するための図であり、(a)は第2シェル部の分離前、(b)は第2シェル部分離中、(c)は第1シェル部の分離中、(d)、(e)は第1シェル部の分離後の状態を示す図である。
【0048】
実施の形態に係る立体造形方法では、最初に立体造形装置10によってシェル部4を構成する第1シェル部5及び第2シェル部6の造形、及び造形されたシェル部4内へのコア材8の充填が行われる。
具体的には、まず、ノズル14が紫外線レーザー光12cの照射範囲から退避した状態において、造形台15上のシェル材2の液面の任意の位置への紫外線レーザー光12cの照射、及び硬化深度分の造形台15の降下が交互に行われる。これら動作により、図2(a)に示すように所望の形状のコア充填部7を有する第1シェル部5と第2シェル部6とからなるシェル部4が造形される。上記のようにしてコア充填部7を形成するための第1シェル部5を造形する第1シェル部造形工程と、第1シェル部5の外側面に、その剛性に異方性を有する第2シェル部6を造形する第2シェル部造形工程とを含んでシェル造形工程が構成されている。
【0049】
図2に示すシェル部4は、コア充填部7を形成する第1シェル部5と、第1シェル部5の外側面を囲う第2シェル部6とを含んでいる。第1シェル部5は、後の分離工程での作業性向上の観点から、第2シェル部6よりもその厚さが薄くなるように造形することが好ましい。
【0050】
第1シェル部5は、コア材8を充填するための外殻層として機能し、上面に開口を有する略有底箱形状に造形されている。第2シェル部6は、第1シェル部5の外側面を囲うように造形され、剛性に異方性を有する形状、例えば、後のコア材硬化工程でのコア充填部7の変形方向である第1シェル部5の外側面に直交する方向に剛性が高く、第1シェル部5と第2シェル部6との対向面に平行な方向に相対的に剛性が低い形状となるように造形されている。
【0051】
本実施の形態のシェル造形工程では、第1シェル部造形工程が、第1シェル部5として、コア充填部7を囲う薄壁状の第1シェル壁5aを造形する工程を含み、第2シェル部造形工程が、第2シェル部6として、第1シェル壁5aから所定間隔Dを隔てた第2シェル壁6aと、第2シェル壁6aと第1シェル壁5aとの間に、シェル部4の剛性に異方性を付与するための異方性付与層6bとを造形する工程を含んでいる。この場合、第2シェル部6は、第1シェル部5の外周面と底面とを囲うように形成されているが、別の形態例では、第2シェル部6が第1シェル部5の外周面だけを囲うように造形されてもよい。
【0052】
異方性付与層6bは、第1シェル壁5aと第2シェル壁6aとを繋ぎ合わせる複数の連結部6cを含む構造で構成されている。これら各連結部6cは、例えば、円錐台や角錐台などの錐台形状、又は断面略台形の薄板形状を有し、各連結部6cにおける第1シェル壁5aとの第1接合部6dの幅W1が第2シェル壁6aとの第2接合部6eの幅W2よりも狭くなるように形成されている。換言すれば、各連結部6cにおける第1シェル壁5aとの第1接合部6dの接合面積が第2シェル壁6aとの第2接合部6eの接合面積よりも小さくなるように形成されている。
【0053】
第1シェル壁5aの厚さt1と第2シェル壁6aの厚さt2は、例えば、1mm程度、異方性付与層6bの厚さ(各連結部6cの長さ)を示す所定間隔Dは、例えば、3mm程度、第1接合部6dの幅W1は、例えば、0.5mm程度、第2接合部6eの幅W2は、例えば、2.5mm程度となるように造形することが可能である。なお、これら各部のサイズは上記サイズに限定されるものではなく、コア充填部7の形状やサイズに応じて適宜設定することが可能である。
【0054】
次に、図2(b)に示すようにシェル部4内に形成されたコア充填部7内へノズル14が移動し、ノズル14からコア充填部7へコア材8が吐出されることにより、コア充填部7内へのコア材8の充填が進行する。上記のようにしてシェル部4の内側面に囲われた部分であるコア充填部7へコア材8を充填する工程をコア材充填工程という。
【0055】
本実施の形態では、コア材充填工程は、シェル部4が造形槽11内のシェル材2に浸漬した状態で実施され、コア材8の充填前には、図2(a)に示すようにコア充填部7にシェル材2が存在する。そして、シェル材2より比重が大きいコア材8がコア充填部7に充填されていくにしたがって、コア充填部7内のシェル材2は押し上げられ、図2(b)に示すように、シェル部4の上部に設けられた開口を経てコア充填部7からシェル部4の外部へシェル材2が押し出されて、シェル材2からコア材8への置換が行われる。
【0056】
なお、上記のシェル造形工程、及びコア材充填工程は交互に複数回ずつ実施されてもよい。すなわち、所定の高さまで第1シェル部5及び第2シェル部6からなるシェル部4を造形し、その第1シェル部5によって形成されるコア充填部7にコア材8を充填した後、さらに第1シェル部5及び第2シェル部6を増築し、そして増築された第1シェル部5によって新たに形成されたコア充填部7にコア材8を充填する、という工程を繰り返し行ってもよい。このように第1シェル部5及び第2シェル部6の造形を複数回に分割することで、特にコア充填部7が複雑な形状(例えば、狭い、細い、薄い、など)を有する場合にも、段階的にコア材8を充填することによってコア充填部7の隅々までコア材8を充填することが可能となる。なお、上記シェル造形工程およびコア材充填工程は、通常室温(例えば、20℃~30℃)環境下にて実施される。
【0057】
そして、コア材充填工程が完了すると、次に造形槽11内にある造形台15をシェル材2の液面よりも上に上昇させて、造形台15からコア材8が充填されたシェル部4を取り外し、次のコア材硬化工程に進む。
【0058】
コア材硬化工程では、図3(a)に示すように、コア材8が充填されたシェル部4を熱硬化手段16に投入して、コア材8の熱硬化処理を開始する。
すなわち、コア材8が充填されたシェル部4を熱硬化手段16内に載置し、熱硬化手段16内をコア材8の熱硬化温度Tpcよりも高い温度まで上昇させることにより、シェル部4及びコア材8が加熱されて、コア材8の硬化が開始、進行する。そこから所定時間経過するとコア材8全体の硬化が完了して、図3(b)に示すように、コア充填部7に硬化コア材8aが形成される。
【0059】
コア材硬化工程においては、第1シェル部5の外周面を囲う第2シェル部6、すなわち、異方性付与層6bを構成する複数の連結部6c及び第2シェル壁6aが、第1シェル壁5aの外側面を支持する構造となっている。そのため、コア材硬化工程でシェル部4のガラス転移温度Tgs以上の温度(熱硬化温度Tpcよりも高い温度)で加熱されて、第1シェル部5が軟らかくなったとしても、第2シェル部6によって、熱硬化中におけるコア充填部7の変形方向(図3(a)に示す断面図ではx軸方向)に対する第1シェル壁5aの変形を防止することが可能となっている。
【0060】
なお、異方性付与層6bの形態は、図3(a)に示した、連結部6cのような錐台構造に限定されるものではなく、例えば、複数のセル壁が周期的に配列されたハニカム構造、トラス構造などの形態にしても良く、これらの構造によっても連結部6cの有する効果と同様の効果を奏するものとなる。
【0061】
上記のようにして、シェル部4の外層を構成する第2シェル部6により第1シェル部5の変形を抑え込み可能な状態で、コア材8を硬化させて硬化コア材8aを形成させる工程をコア材硬化工程という。なお、コア充填部7に充填されたコア材8全体を硬化させるためには、本実施の形態のようにコア材8として熱硬化性樹脂からなる材料を使用し、コア材硬化工程では、例えば光エネルギーによる硬化よりも熱エネルギーによるコア材8の硬化を実施することが好ましい。
【0062】
コア材硬化工程が完了した後、熱硬化手段16内からシェル部4(コア充填部7に硬化コア材8aが形成された状態のシェル部4)を取り出し、次の分離工程に進む。
【0063】
この分離工程は、シェル部4を硬化コア材8aから分離させる工程である。分離工程は、上記コア材硬化工程の後に、第2シェル部6を第1シェル部5から分離させる第1分離工程と、該第1分離工程の後に、第1シェル部5の少なくとも一部を硬化コア材8aから分離させ、コア充填部7の形状に倣った外形を有し硬化コア材8aを主とする立体造形物1を得る第2分離工程とを有している。
【0064】
分離工程では、熱硬化手段16内から取り出した図4(a)に示すシェル部4(第1シェル部5と第2シェル部6の2層構造)の状態から、まず、図4(b)に示すように、第2シェル部6を第1シェル部5から分離させる。例えば、カッターなどの工具17を用いて、第2シェル部6の異方性付与層6bを構成する連結部6cに切り込みを入れた後、第2シェル部6(第2シェル壁6a及び連結部6c)を第1シェル壁5aから剥離させる。連結部6cの第1接合部6dの幅W1が第2接合部6eの幅W2よりも狭くなっているので、第1シェル部5と第2シェル部6との剥離方向(x方向)に外力を加えると、第1シェル壁5aの外側面から連結部6cの第1接合部6dが順次切り離されて、第2シェル部6が第1シェル部5から分離される(第1分離工程)。この第1分離工程では、手作業による第2シェル部6の分離も可能となっている。
【0065】
第2シェル部6を第1シェル部5から分離し終えると、次に図4(c)に示すように、第1シェル部5の少なくとも一部を硬化コア材8aから分離させる(第2分離工程)。例えば、切削工具などの工具18を用いて、不要な第1シェル部5を硬化コア材8aから分離させることによって、図4(d)に示すように、コア充填部7の形状に倣った形状を有する硬化コア材8aからなる立体造形物1が得られる。また、図4(e)に示すように、第1シェル部5を全て分離せずに、一部の第1シェル部5が残され、この第1シェル部5と硬化コア材8aとを合わせたものを立体造形物1と呼んでもよい。
【0066】
第2分離工程は、例えば、第1シェル部5と硬化コア材8aとの少なくとも一方が軟化する条件下で実施してもよい。前記条件としては、例えば、第1シェル部5は軟化するが、硬化コア材8aは軟化せずに硬い状態を維持できる温度条件が好ましい。該温度条件にする方法としては、例えば、温水槽へ投入したり、熱雰囲気に設置したり、ドライヤーやヒートガンなどを用いて熱エネルギーを局所的に付与したりして、第1シェル部5を軟化させる方法が採用され得る。
係る方法によれば、第2分離工程において、第1シェル部5と硬化コア材8aとの間の密着性が緩和され、図4(c)に示すように、厚さが薄い第1シェル部5を硬化コア材8aから剥離しやすくなり、容易に第1シェル部5を硬化コア材8aから剥離させることが可能となる。
【0067】
上記実施の形態に係る立体造形方法によれば、シェル造形工程が第1シェル部造形工程と第2シェル部造形工程とを含んでいるので、シェル部4として、コア充填部7を形成するための第1シェル部5と、第1シェル部5の外側面に、剛性に異方性を有する第2シェル部6とが造形される。
そして、第1シェル部造形工程において、第1シェル部5として、コア充填部7を形成する薄壁状の第1シェル壁5aが造形され、第2シェル部造形工程において、第2シェル部6として、第1シェル壁5aから所定間隔Dを隔てた第2シェル壁6aと、第2シェル壁6aと第1シェル壁5aとの間に、シェル部4の剛性に異方性を付与するための異方性付与層6bとが造形される。
【0068】
そして、異方性付与層6bとして、第1シェル壁5aと第2シェル壁6aとを繋ぎ合わせる複数の連結部6cが造形され、これら各連結部6cにおける第1シェル壁5aとの第1接合部6dの幅W1が、第2シェル壁6aとの第2接合部6eの幅W2よりも狭くなるように造形される。
【0069】
そのため、第2シェル壁6aと異方性付与層6bを構成する複数の連結部6cとによって、シェル部4が第1シェル壁5aと第2シェル壁6aとの対向面に直交する方向に剛性が高く、前記対向面に平行な方向に相対的に剛性が低い構造にすることができる。換言すれば、コア材硬化工程でのコア充填部7の変形方向に剛性が高く、分離工程での第1シェル壁5aと第2シェル壁6aとの分離方向に相対的に剛性が低い構造にすることができる。したがって、コア材硬化工程において、複数の連結部6cによって第1シェル壁5aの外側面を確実に支持することが可能となり、第1シェル壁5aの厚さを1mm程度にした場合であってもコア充填部7の変形を防止することができる。
【0070】
また、分離工程では、まず第1分離工程において、先に第2シェル部6を第1シェル部5から分離させて、その後、第2分離工程において、第2シェル部6のない状態で、第1シェル部5の少なくとも一部を硬化コア材8aから分離させることが可能となる。
そのため、分離工程において、第1シェル壁5aを硬化コア材8aから分離させる前に、先に第2シェル壁6aと連結部6cとを第1シェル壁5aから容易に分離させることができ、その後に行われる第1シェル壁5aを硬化コア材8aから分離させる作業も容易に行うことが可能となる。
したがって、硬化コア材8aと密着しているシェル部分の厚さを薄くした状態(1mm程度)にして、第1シェル部5を硬化コア材8aから分離させることが容易となり、分離工程での作業性を向上させることができる。
【0071】
また上記実施の形態に係る立体造形方法によれば、コア材8が熱硬化性樹脂からなるので、コア材硬化工程において、コア材8全体を積層界面が存在しないように一体化させた状態に効率良くと硬化させることができる。
【0072】
また上記実施の形態に係る立体造形方法を用いて立体造形物1を製造することにより、立体造形物1を製造する場合に、コア材硬化工程において第1シェル部5の変形、すなわち、コア充填部7の変形を防止して、硬化コア材8aの寸法精度を高めることできる。そして、分離工程でのシェル部4の分離を、第2シェル部6と第1シェル部5とで分けて行うことが可能となり、第1シェル部5を硬化コア材8aから分離する作業が容易となり、寸法精度の高い硬化コア材8aを主とする立体造形物1の製造効率を高めることができる。
【0073】
図5は、別の実施の形態に係る立体造形方法のシェル造形工程で造形されたシェル部の造形例を示す図であり、(a)はコア材充填工程後の造形物の断面斜視図であり、(b)はコア材硬化工程後の造形物の断面斜視図の一例である。
【0074】
図2(a)に示した実施の形態では、シェル造形工程において、第1シェル部5と、第1シェル部5の外側面全体を囲う第2シェル部6とを有する2層構造からなるシェル部4を造形するようになっていた。
この別の実施の形態では、前述2層構造からなるシェル部4の代替構成として、シェル造形工程において、シェル部4Aとして、コア充填部7Aを形成する第1シェル部5Aと、第1シェル部5Aの外側面の一部に、剛性に異方性を有する第2シェル部6Aとを造形することを特徴としている。
【0075】
第2シェル部6Aは、例えば、第1シェル部5Aの外周面の一部を囲う枠状に造形され、シェル部4Aの剛性が第2シェル部6Aの第1シェル部5Aとの対向面(接合面)に平行な方向よりも前記対向面に直交する方向に高くなる形状となるように造形されている。
すなわち、第2シェル部6Aは、コア材硬化工程でのコア充填部7Aの変形方向に剛性が高く、分離工程でのシェル部4Aの分離方向に相対的に剛性が低くなるように、その剛性に異方性を有する構造となっている。なお、第2シェル部6Aの構造は、図5に示すような、複数のセル壁が周期的に配列されているハニカム構造の他、トラス構造などでもよく、また、前述した錐台構造などであってもよく、これら構造によってもハニカム構造と同様の作用及び効果を得ることが可能である。
また、第2シェル部6Aが造形される箇所は、図5に示した箇所に限定されるわけではなく、第1シェル部5Aの変形が大きくなることが予想される箇所であることが好ましく、第1シェル部5Aの形状に応じて第2シェル部6Aが造形される箇所を適宜決めることができる。
【0076】
別の実施の形態におけるコア材硬化工程では、上記と同様、コア材8が充填されたシェル部4Aを熱硬化手段16に投入して、コア材8の硬化処理を開始する。コア材硬化工程が完了した後、熱硬化手段16内からシェル部4A(コア充填部7Aに硬化コア材8aが形成された状態のシェル部4A)を取り出し、次の分離工程に進む。
【0077】
分離工程では、第2シェル部6Aが第1シェル部5Aの外側面の一部にしか造形されていないので、第1シェル部5Aから第2シェル部6Aの分離も容易に行える。なお、シェル造形工程では、第2シェル部6Aを造形するのに使用するシェル材2の量が少なくてすみ、造形コストを節減できる。
そして、第1シェル部5Aから第2シェル部6Aを分離した後、例えば、図4(c)に示した切削工具などの工具18を用いて、不要な第1シェル部5Aを硬化コア材8aから分離させることによって、コア充填部7Aの形状に倣った形状を有する硬化コア材8aからなる立体造形物を得ることが可能となっている。
この分離工程では、例えば、シェル部4Aと硬化コア材8aとの少なくとも一方が軟化する条件下で実施してもよい。前記条件としては、例えば、シェル部4Aは軟化するが、硬化コア材8aは軟化せずに硬い状態を維持できる温度条件が好ましい。
【0078】
上記した別の実施の形態に係る立体造形方法によれば、第1シェル部5Aの外周面の一部に第2シェル部6Aが造形され、シェル部4の剛性が第2シェル部6Aの第1シェル部5Aとの対向面(接合面)に平行な方向よりも前記対向面に直交する方向に高くなる形状となるように、ハニカム構造を有する第2シェル部6Aが造形される。
そのため、第2シェル部6Aによって、シェル部4Aの剛性が第1シェル部5Aと第2シェル部6Aとの対向面に直交する方向に高くなる構造、換言すれば、コア材硬化工程でのコア充填部7Aの変形方向に剛性が高い構造にすることができる。
【0079】
したがって、コア材硬化工程において、第2シェル部6Aによって第1シェル部5Aの外周面を確実に支持することが可能となり、コア充填部7Aの変形を防止することができる。
また、第2シェル部6Aは第1シェル部5Aの外周面の一部に造形されているだけであり、第2シェル部6Aは前記対向面に平行な方向に相対的に剛性が低い構造、換言すれば、第1シェル部5Aと硬化コア材8aとの分離方向に相対的に剛性が低い構造となっている。
そのため、コア材硬化工程後の分離工程においては、第1シェル部5Aから第2シェル部6Aの分離を容易に行うことができる。
【0080】
本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、上記したシェル造形工程において造形される第1シェル部と第2シェル部とからなるシェル部の構造は、上記の構造の他、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
なお、上記実施の形態では、シェル部4(第1シェル部5及び第2シェル部6)、4A(第1シェル部5A及び第2シェル部6A)の造形に用いられるシェル材2が液相材料である場合について説明したが、シェル部4、4Aの造形は、液相材料を硬化させる方法(液相重合法)に限定されるものではなく、たとえば熱溶解積層方式(Fused Deposition Molding、FDM)等の他の付加製造の方法などが適用されてもよい。
また、コア材8はコア充填部7、7Aに充填後一度に硬化させることが可能であれば、熱硬化性樹脂に限らずたとえば光硬化性樹脂などから構成されていても構わない。
【0081】
本発明は、3Dプリンタなどの付加製造技術の分野において広く適用可能であり、係る分野に本発明を適用することにより、例えば、自動車、航空機、ロボットなどの各種産業機器に用いられる部品、介護用品、スポーツ用品など、特に、軽量且つ高強度が要求される部品、製品の試作のみならず、量産化を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0082】
1 立体造形物
2 シェル材
3 硬化済み紫外線硬化樹脂層
4、4A シェル部
5、5A 第1シェル部
5a 第1シェル壁
6、6A 第2シェル部
6a 第2シェル壁
6b 異方性付与層
6c 連結部
6d 第1接合部
6e 第2接合部
7、7A コア充填部
8 コア材
8a 硬化コア材
10 立体造形装置
11 造形槽
12 レーザー光学系
12a 紫外線レーザー光源
12b 走査光学系
12c 紫外線レーザー光
13 コア材供給系
13a コア材タンク
13b ポンプ
13c、13d 配管系
14 ノズル
15 造形台
16 熱硬化手段
17、18 工具

40 シェル
50 コア部
60 コア材
60a 硬化コア材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7