(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104680
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理装置の制御方法、及び情報処理装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240729BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009024
(22)【出願日】2023-01-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-22
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SWIFT
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】吉原 千尋
(72)【発明者】
【氏名】後藤 守規
(72)【発明者】
【氏名】山村 真規
(72)【発明者】
【氏名】藤野 駿
(72)【発明者】
【氏名】吉野 碧
(72)【発明者】
【氏名】石田 淳
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 保範
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】清水 慎太郎
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】効率のよい配送システムを提供すること
【解決手段】本発明の一実施形態に係る、需要家へのガスの配送に係る配送システムにおける情報処理装置は、需要家のガスの使用量に関する情報を取得する取得部、過去のガスの使用量から将来のガスの予測使用量を算出する予測部、予測使用量に基づいて、ガスの配送優先度が最も高い必須需要家と必須需要家よりもガスの配送優先度が低い準必須需要家とを含むグループを生成可能な危険度算出部、グループにおけるガスの配送順序を設定する配送決定部を備え、危険度算出部は、需要家が必須需要家となる第1転換日と、需要家が準必須需要家となる第2転換日とに基づいて、配送日におけるグループを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家へのガス容器の配送に係る配送システムにおける情報処理装置であって、
前記需要家のガスの使用量に関する情報を取得する取得部と、
前記需要家の過去のガスの使用量から将来のガスの予測使用量を算出し、前記需要家が使用可能なガス残量を予測する残量予測部と、
前記ガス残量とに基づいて、前記ガス残量が所定の閾値以下となる確率である危険度を算出する危険度算出部と、
前記危険度に基づいて、前記複数の需要家のうち、新たなガス容器の配送対象となる2以上の配送対象需要家と、当該2以上の配送対象需要家に対して前記新たなガス容器を配送する配送順序とを決定する配送決定部と、
を備え、
前記所定の閾値は、前記配送対象需要家のうち、前記新たなガス容器の配送を優先すべき必須配送需要家を抽出するための第1種閾値と、前記必須配送需要家以外の非必須配送需要家を抽出するための複数の第2種閾値と、
を含む、
情報処理装置。
【請求項2】
前記危険度算出部は、前記需要家ごとに、前記複数の第2種閾値それぞれについて、ガス残量が前記第2種閾値以下となる確率である第2種危険度を算出し、
前記配送決定部は、前記需要家ごとに、複数の前記第2種危険度の総和である実質危険度を算出し、前記実質危険度に基づいて、前記非必須配送需要家を抽出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記配送決定部は、配送対象日において、前記ガス残量が前記第1種閾値以下となる第1種危険度が第1種基準値以上となる需要家を、前記必須配送需要家とし、前記実質危険度が第2種基準値以上となる需要家を、前記非必須配送需要家として、前記配送対象需要家として抽出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記配送決定部は、前記配送対象日における前記非必須配送需要家に対し、前記新たなガス容器の配送を許容するとの条件を含む制約条件のもとで、1以上の所定の目的関数をあらかじめ設定された順序で求めた解に基づいて、前記配送対象日における車両による1回の配送当たりの配送順序と、配送回数とを決定する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記配送決定部は、前記1以上の所定の目的関数について、先行する順序の目的関数の解を、後続の目的関数における解の算出に用いる、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記1以上の所定の目的関数は、前記1以上の配送対象需要家それぞれについて算出した複数の前記実質危険度の総和に関する項を含み、
前記配送決定部は、前記実質危険度の総和を最大化する解に基づいて、前記配送対象日における前記車両による前記1回の配送当たりの配送順序と、前記配送回数とを決定する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記1以上の所定の目的関数は、さらに、前記配送対象日における複数回の配送において、1回の配送当たりに配送されるガス容器の総量の差異に関する項を含み、
前記配送決定部は、前記実質危険度の総和を最大化し、かつ、前記ガス容器の総量の差異を最小化する解に基づいて、前記配送対象日における前記車両による前記1回の配送当たりの配送順序と、前記配送回数とを決定する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記配送決定部は、前記制約条件として、前記配送対象日における前記必須配送需要家には、前記新たなガス容器を必ず配送するとの条件をさらに含むハード制約条件のもとで、前記1以上の所定の目的関数の解を求める、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記配送決定部は、前記ハード制約条件のもとで前記1以上の所定の目的関数の解が求まらない場合、前記ハード制約条件に代わり、前記ハード制約条件とは異なる制約条件であるソフト制約条件のもとで、前記1以上の所定の目的関数の解を求める、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記配送決定部は、前記ハード制約条件のもとで前記1以上の所定の目的関数の解が求まらない場合、前記ハード制約条件に代わり、目的関数の解を求めるにあたり、前記ハード制約条件よりも緩和した制約条件であるソフト制約条件のもとで、前記1以上の所定の目的関数の解を求める、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記配送決定部は、前記ハード制約条件のもとで前記1以上の所定の目的関数の解が求まらない場合、前記ハード制約条件に代わり、前記制約条件として、前記必須配送需要家に対し、前記配送対象日前後での前記新たなガス容器の配送を許容するとの条件をさらに含むソフト制約条件のもとで、前記1以上の所定の目的関数に加え、追加の目的関数の解を算出するものであって、前記追加の目的関数は、前記配送対象日に配送する前記必須配送需要家の総和の項を含み、
前記配送決定部は、前記追加の目的関数を最大化する解に基づいて、前記配送対象日における前記車両による前記1回の配送当たりの配送順序と、前記配送回数とを決定する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記需要家が使用する前記ガス容器に、主容器と予備容器とが含まれる場合、
前記危険度算出部は、前記危険度の算出に際し、前記第1種閾値を、前記主容器及び前記予備容器の総容量に対して適用し、前記第2種閾値を、前記主容器の容量に対して適用する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記需要家が使用するガス容器が主容器のみである場合、
前記危険度算出部は、前記主容器を所定の割合で分割してみなし主容器とみなし予備容器とし、前記危険度の算出に際し、前記第1種閾値を、前記主容器の容量に対して適用し、前記第2種閾値を、前記みなし主容器の容量に対して適用する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記残量予測部は、前記需要家ごとに、過去のガスの実測使用量に関するデータセットを用いた機械学習によって、前記予測使用量を算出する複数の予測モデルを生成し、前記予測モデルに基づいて、将来の予測使用量を算出するものであって、前記予測使用量を算出する予測対象期間を連続N日間(Nは1以上の整数)としたとき、N個の予測モデルを生成し、前記N個の各予測モデルを用いて、1からN日間それぞれに対する前記予測使用量を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記残量予測部は、前記N日間の前記予測使用量を算出する前記予測モデルを生成する場合、前記N日間においてN=1とした日の前日におけるガスの実測使用量を目的変数、前記前日よりN日以前までの過去の所定期間にわたるガスの実測使用量を用いて生成された所定の次元数の特徴量を説明変数とした機械学習によって、前記N日間の前記予測使用量を算出する前記予測モデルを生成し、生成されたN個の予測モデルに、前記前日を含む過去の前記所定期間にわたるガスの実測使用量を用いて生成された、前記所定の次元数の特徴量を説明変数として入力して、前記N日間それぞれに対する前記予測使用量を算出する、
請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記残量予測部は、前記過去のガスの実測使用量に関するデータセットの、時系列での連続性に応じて、前記複数の予測モデルを生成するものであって、
前記残量予測部は、前記データセットが時系列で不連続である場合、前記複数の予測モデルとは異なる他の予測モデルを1つ生成し、前記予測使用量を算出する、
請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記残量予測部は、前記予測モデルを、線形回帰(Linear Regression)、サポートベクトル回帰(Support Vector Regression)、ランダムフォレスト回帰(Random Forest Regression)、勾配ブースティング回帰(Gradient Boosting Regression)、又は勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree)、LightGBM(Light Gradient Boosting Machine)の少なくともいずれかを用いたアルゴリズムによって生成する、
請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項18】
複数の需要家へのガス容器の配送に係る配送システムにおける情報処理装置の制御方法であって、
情報処理装置が、
前記複数の需要家それぞれのガスの使用量に関する情報を取得するステップと、
過去のガスの使用量から将来のガスの予測使用量を算出し、前記需要家が使用可能なガス残量を予測するステップと、
前記ガス残量が所定の閾値以下となる確率である危険度を、前記需要家ごとに算出するステップと、
前記危険度に基づいて、前記複数の需要家のうち、新たなガス容器の配送対象となる1以上の配送対象需要家と、当該配送対象需要家への、前記新たなガス容器の配送順序とを決定するステップと、
を含み、
前記所定の閾値は、前記配送対象需要家のうち、前記新たなガス容器の配送を優先すべき必須配送需要家を抽出するための第1種閾値と、前記必須配送需要家以外の非必須配送需要家を抽出するための複数の第2種閾値とを含む、
情報処理装置の制御方法。
【請求項19】
複数の需要家へのガス容器の配送に係る配送システムにおける情報処理装置の制御プログラムであって、
情報処理装置に、
前記複数の需要家それぞれのガスの使用量に関する情報を取得する機能と、
過去のガスの使用量から将来のガスの予測使用量を算出し、前記需要家が使用可能なガス残量を予測する機能と、
前記ガス残量が所定の閾値以下となる確率である危険度を、前記需要家ごとに算出する機能と、
前記危険度に基づいて、前記複数の需要家のうち、新たなガス容器の配送対象となる1以上の配送対象需要家と、当該配送対象需要家への、前記新たなガス容器の配送順序とを決定する機能と、
を実現させ、
前記所定の閾値は、前記配送対象需要家のうち、前記新たなガス容器の配送を優先すべき必須配送需要家を抽出するための第1種閾値と、前記必須配送需要家以外の非必須配送需要家を抽出するための複数の第2種閾値とを含む、
情報処理装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理装置の制御方法、及び情報処理装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスの検針データに基づいて交換対象となるガス容器を特定し、配送ルートを決定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ガス使用量またはガス残量のトレンドを算出し、当該トレンド及び所定の条件に基づいてガス容器交換日及び配送ルートを決定することが開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トレンドのみでは、天候等の不測の事態によってガス切れが生じるリスクが高まる。したがって、より段階的にガス残量を考慮した配送システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る、複数の需要家へのガス容器の配送に係る配送システムにおける情報処理装置は、需要家のガスの使用量に関する情報を取得する取得部と、需要家の過去のガスの使用量から将来のガスの予測使用量を算出し、需要家が使用可能なガス残量を予測する残量予測部と、ガス残量とに基づいて、ガス残量が所定の閾値以下となる確率である危険度を算出する危険度算出部と、危険度に基づいて、複数の需要家のうち、新たなガス容器の配送対象となる2以上の配送対象需要家と、当該2以上の配送対象需要家に対して新たなガス容器を配送する配送順序とを決定する配送決定部と、を備え、所定の閾値は、配送対象需要家のうち、新たなガス容器の配送を優先すべき必須配送需要家を抽出するための第1種閾値と、必須配送需要家以外の非必須配送需要家を抽出するための複数の第2種閾値と、を含む。
【0006】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、危険度算出部は、需要家ごとに、複数の第2種閾値それぞれについて、ガス残量が第2種閾値以下となる確率である第2種危険度を算出し、配送決定部は、需要家ごとに、複数の第2種危険度の総和である実質危険度を算出し、実質危険度に基づいて、非必須配送需要家を抽出してよい。
【0007】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、配送決定部は、配送対象日において、ガス残量が第1種閾値以下となる第1種危険度が以上となる需要家を、必須配送需要家とし、実質危険度が第2種基準値以上となる需要家を、非必須配送需要家として、配送対象需要家として抽出してよい。
【0008】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、配送決定部は、配送対象日における非必須配送需要家に対し、新たなガス容器の配送を許容するとの条件を含む制約条件のもとで、1以上の所定の目的関数をあらかじめ設定された順序で求めた解に基づいて、配送対象日における車両による1回の配送当たりの配送順序と、配送回数とを決定してよい。
【0009】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、配送決定部は、1以上の所定の目的関数について、先行する順序の目的関数の解を、後続の目的関数における解の算出に用いてよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、1以上の所定の目的関数は、1以上の配送対象需要家それぞれについて算出した複数の実質危険度の総和に関する項を含み、配送決定部は、実質危険度の総和を最大化する解に基づいて、配送対象日における車両による1回の配送当たりの配送順序と、配送回数とを決定してよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、1以上の所定の目的関数は、さらに、配送対象日における複数回の配送において、1回の配送当たりに配送されるガス容器の総量の差異に関する項を含み、配送決定部は、実質危険度の総和を最大化し、かつ、ガス容器の総量の差異を最小化する解に基づいて、配送対象日における車両による1回の配送当たりの配送順序と、配送回数とを決定してよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、配送決定部は、制約条件として、配送対象日における必須配送需要家には、新たなガス容器を必ず配送するとの条件をさらに含むハード制約条件のもとで、1以上の所定の目的関数の解を求めてよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、配送決定部は、ハード制約条件のもとで1以上の所定の目的関数の解が求まらない場合、ハード制約条件に代わり、ハード制約条件とは異なる制約条件であるソフト制約条件のもとで、1以上の所定の目的関数の解を求めてよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、配送決定部は、ハード制約条件のもとで1以上の所定の目的関数の解が求まらない場合、ハード制約条件に代わり、目的関数の解を求めるにあたり、ハード制約条件よりも緩和した制約条件であるソフト制約条件のもとで、1以上の所定の目的関数の解を求めてよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、配送決定部は、ハード制約条件のもとで1以上の所定の目的関数の解が求まらない場合、ハード制約条件に代わり、制約条件として、必須配送需要家に対し、配送対象日前後での新たなガス容器の配送を許容するとの条件をさらに含むソフト制約条件のもとで、1以上の所定の目的関数に加え、追加の目的関数の解を算出するものであって、追加の目的関数は、配送対象日に配送する必須配送需要家の総和の項を含み、配送決定部は、追加の目的関数を最大化する解に基づいて、配送対象日における車両による1回の配送当たりの配送順序と、配送回数とを決定してよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、需要家が使用するガス容器に、主容器と予備容器とが含まれる場合、危険度算出部は、危険度の算出に際し、第1種閾値を、主容器及び予備容器の総容量に対して適用し、第2種閾値を、主容器の容量に対して適用してよい。
【0017】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、需要家が使用するガス容器が主容器のみである場合、危険度算出部は、主容器を所定の割合で分割してみなし主容器とみなし予備容器とし、危険度の算出に際し、第1種閾値を、主容器の容量に対して適用し、第2種閾値を、みなし主容器の容量に対して適用してよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、残量予測部は、需要家ごとに、過去のガスの実測使用量に関するデータセットを用いた機械学習によって、予測使用量を算出する複数の予測モデルを生成し、予測モデルに基づいて、将来の予測使用量を算出するものであって、予測使用量を算出する予測対象期間を連続N日間(Nは1以上の整数)としたとき、N個の予測モデルを生成し、N個の各予測モデルを用いて、1からN日間それぞれに対する予測使用量を算出してよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、残量予測部は、N日間の予測使用量を算出する予測モデルを生成する場合、N日間においてN=1とした日の前日におけるガスの実測使用量を目的変数、前日よりN日以前までの過去の所定期間にわたるガスの実測使用量を用いて生成された所定の次元数の特徴量を説明変数とした機械学習によって、N日間の予測使用量を算出する予測モデルを生成し、生成されたN個の予測モデルに、前日を含む過去の所定期間にわたるガスの実測使用量を用いて生成された、所定の次元数の特徴量を説明変数として入力して、N日間それぞれに対する予測使用量を算出してよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、残量予測部は、過去のガスの実測使用量に関するデータセットの、時系列での連続性に応じて、複数の予測モデルを生成するものであって、残量予測部は、データセットが時系列で不連続である場合、複数の予測モデルとは異なる他の予測モデルを1つ生成し、予測使用量を算出してよい。
【0021】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置において、残量予測部は、予測モデルを、線形回帰(Linear Regression)、サポートベクトル回帰(Support Vector Regression)、ランダムフォレスト回帰(Random Forest Regression)、勾配ブースティング回帰(Gradient Boosting Regression)、又は勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree)、LightGBM(Light Gradient Boosting Machine)の少なくともいずれかを用いたアルゴリズムによって生成してよい。
【0022】
本発明の一実施形態に係る、複数の需要家へのガス容器の配送に係る配送システムにおける情報処理装置の制御方法は、情報処理装置が、複数の需要家それぞれのガスの使用量に関する情報を取得するステップと、過去のガスの使用量から将来のガスの予測使用量を算出し、需要家が使用可能なガス残量を予測するステップと、ガス残量が所定の閾値以下となる確率である危険度を、需要家ごとに算出するステップと、危険度に基づいて、複数の需要家のうち、新たなガス容器の配送対象となる1以上の配送対象需要家と、当該配送対象需要家への、新たなガス容器の配送順序とを決定するステップと、を含み、所定の閾値は、配送対象需要家のうち、新たなガス容器の配送を優先すべき必須配送需要家を抽出するための第1種閾値と、必須配送需要家以外の非必須配送需要家を抽出するための複数の第2種閾値とを含む。
【0023】
本発明の一実施形態に係る、複数の需要家へのガス容器の配送に係る配送システムにおける情報処理装置の制御プログラムは、情報処理装置に、複数の需要家それぞれのガスの使用量に関する情報を取得する機能と、過去のガスの使用量から将来のガスの予測使用量を算出し、需要家が使用可能なガス残量を予測する機能と、ガス残量が所定の閾値以下となる確率である危険度を、需要家ごとに算出する機能と、危険度に基づいて、複数の需要家のうち、新たなガス容器の配送対象となる1以上の配送対象需要家と、当該配送対象需要家への、新たなガス容器の配送順序とを決定する機能と、を実現させ、所定の閾値は、配送対象需要家のうち、新たなガス容器の配送を優先すべき必須配送需要家を抽出するための第1種閾値と、必須配送需要家以外の非必須配送需要家を抽出するための複数の第2種閾値とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る配送システム構成の概略図である。
【
図2】
図2は、需要家データテーブルの一例である。
【
図3】
図3(a)は配送員データテーブル、(b)は配送車両データテーブルの一例である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、検針データテーブルの一例である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る配送システムの処理フロー図の一例である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る配送システムの処理フロー図の一例である。
【
図8】
図8は、予測モデルの生成について説明する概略図である。
【
図9】
図9は、予測モデルの生成にあたり学習に用いる説明変数(特徴量)の作成を説明する概略図である。
【
図10】
図10は、予測モデルの生成について説明する概略図である。
【
図11】
図11(a)、(b)は、本発明の一実施形態に係る危険度を説明する概略図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態における、配送ルートに関するテーブルの一例である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態に係るサーバを実現可能なコンピュータのハードウェア構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以降、図を用いて、本開示に係る発明(本発明ともいう)の一実施形態を説明する。なお、図は一例であって、本発明は図に示すものに限定されない。例えば、図示した配送システム、情報処理装置(サーバ)の構成図、メーター、通信装置、ガス容器の数、データセット(テーブル)、並びにフローチャートは一例であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る配送システムの構成例を示す図である。配送システム800は、需要家へのガスの配送に係るシステムであってよい。例えば、配送システム800は、需要家が使用したガスの量に応じてガス容器の交換が行われるガス提供サービスにおいて、ガスを効率的に配送するためのシステムであってよい。ガスの効率的な配送とは、例えば、需要家1件あたりの交換頻度及び交換に要する時間を最小とし、配送員一人あたりのガスの配送量を最大とすることを目標としてよい。例えば、訪問したにもかかわらず、ガス残量が多くガス容器の交換が不要であった場合、交換頻度の増加につながり効率が悪い。また、各需要家への配送順序によっては、需要家間の移動に時間を要し効率が悪い。本発明の一実施形態によれば、ガス容器の効率的な配送のために、需要家のガス残量を精度よく予測し、ガス容器を配送すべき需要家の抽出と各需要家へのガスの配送順序とを含む配送計画を、適切に設定する配送システム800を実現することができる。
【0027】
配送システム800は、サーバ(演算処理サーバ)100と、管理サーバ210と、事業者DB(データベース)220と、外部DB 230と、ガス容器330A,330Bのメーター320に設置された通信装置310と、配送員500が所有する通信端末510とを含んでよい。
【0028】
メーター320は、通信装置310を備えるいわゆる「スマートメーター」であって、ガス容器330A,330Bに接続され、需要家のガスの使用量を測定してよい。通信装置310は、メーター320の検針値、ガス容器の交換に関する情報等、ガスに関する情報を管理サーバ210へ送信してよい。なお、通信装置310は、メーター320の検針値を、所定の間隔で管理サーバ210へ送信してよい。通信装置310は、例えば、1日1回設定された時間に、管理サーバ210へ検針データを送信してよい。また、通信装置310は、ガスに関する情報として、ガス漏れ、ガス切れ、ガス容器からの供給停止等、異常や警報に関する情報を、ネットワーク600を介して管理サーバ210へ送信してよい。なお、通信装置310は、メーター320の外側の入出力I/Fに接続されて、別個の通信装置としてメーター320の外部に備えられてもよい。すなわち、通信装置310は、メーター320に後付けされるものであってよい。また、通信装置310は、メーター320の製造時に組込まれて、メーター320と一体化されてもよい。あるいは、通信装置310は、メーター320の内部に、例えば通信ボードとして組み込まれていてもよい。
【0029】
管理サーバ210は、ネットワーク600を介して、各家庭、企業、施設等に設置されたメーター320からの情報を収集したり、メーター320の制御を遠隔で行ったりしてよい。すなわち、管理サーバ210は、通信装置310から送信された各メーター320の情報を処理し、図示しないメーターの管理者へ必要なデータを受け渡すIoT-PF(プラットフォーム)としての機能を有してもよい。管理サーバ210は、各メーターの検針データを格納(記憶)する検針データDB 212を備えてよい。また、管理サーバ210は、後述する配送計画の設定に要する各種パラメータを格納するパラメータDB213を備えてもよい。
【0030】
管理サーバ210と通信装置310との間のネットワーク600における通信方式は、例えば、LTE、LTE-Advanced、第4世代通信(4G)、第5世代通信(5G)、第6世代通信(6G)以降の通信方式、CDMA等であってよい。また、例えば、Category M, Category M1、NB-IoT(Narrow Band IoT)等のIoT向けの無線通信方式であり、LTEを拡張した通信方式であってよい。なお、通信方式は、これらの例に限られるものではない。
【0031】
なお、現在、スマートメーターの普及が進められているものの、通信装置を備えず、検針員440による定期的な検針を必要とする需要家も存在する。本明細書では、これ以降、通信装置310を備えるメーター320が設置された需要家を「設置需要家」、通信装置310のないメーター420が設置された需要家を「非設置需要家」と称する。非設置需要家のガスの使用量は、検針員440が例えば一カ月おきに、ガス容器430A,430Bに接続されたメーター420の検針値を確認し、例えば通信端末441によって管理サーバ210へ検針値を送信してもよい。なお、設置需要家と非設置需要家を特に区別する必要がない場合、それらをまとめて「需要家」と称することもある。また、
図1では、設置需要家、非設置需要家とも戸建て住宅で1件ずつ示してあるが、需要家としてはこれに限定されず、集合住宅、法人等であってよいし、それぞれ複数の設置需要家、非設置需要家が存在してよい。
【0032】
事業者DB 220は、ガス配送サービスを提供する事業者のデータベースであって、需要家データDB 221、配送員データDB 222、配送車両情報DB 223を備えてよい。
図2に、需要家データDB 221に格納される需要家データの一例を示す。需要家データテーブルTB1は、各需要家に関する情報であって、各需要家を一意に識別する需要家ID(Identifier)(識別子の一例)に、メーターID、配送先ID、容量情報、配送指定情報等が関連付けられた情報を含んでよい。なお、識別子は、付与された対象を一意に識別する情報であればその種類は問わない。
【0033】
需要家データテーブルTB1を参照すると、需要家ID「CS0001」の需要家は、メーターID「mt0001」のメーターが設置され、配送先ID「LC0001」で識別される区域がガス容器の配送先であることがわかる。なお、配送先IDと区域(住所)とを関連付けて格納する配送先情報が図示しないデータベースとして記憶され、配送先IDから配送先の住所が判定されてよい。容量情報は、需要家に供給されたガス容器の総容量を示す情報であってよい。需要家ID「CS0001」の需要家の場合、ガス容器の容量は「50L」、ガス容器は、主容器と予備容器とから成る「2本」であって、ガス容器の総容量は100Lとなる。また、配送指定情報は、配送に関して各需要家から指定された条件に関する情報であってよい。例えば、配送指定情報により、需要家ID「CS0001」の需要家は、ガス容器の配送を「月曜から木曜の16時以降」に指定していることが示されてよい。
【0034】
また、需要家データテーブルTB1を参照すると、需要家ID「CS0005」の需要家は非設置需要家であって、メーターIDが関連付けられなくてよい。さらに、需要家ID「CS0015」、「CS0016」は、同一の配送先IDが「LC0040」が関連付けられている。これは、マンション、アパートといった集合住宅や、複数の法人が入居するビル等、一の住所に複数の需要家が存在する場合を示してよい。なお、この場合、容量情報は、一の配送先IDに設置されているガス容器の総容量を指すものであってよい。
【0035】
なお、
図2のテーブルTB1は一例であって、これに限られるものではない。例えば、容量情報は、ガス容器の総容量が判定できる情報であれば、図示した形式に限定されない。また、需要家データは、複数のテーブルに分けて記憶されてよい。さらに、需要家データテーブルTB1には、通信装置310の識別子、メーター320,420の設置日、ガス配送サービスの提供者(需要家が利用するサービス事業者)に関する情報、需要家の連絡先その他のデータが記憶されてもよい。
【0036】
図3(a)に、配送員データDB 222に格納される配送員データの一例を示す。配送員データテーブルTB2は、各配送員に関する情報であって、各配送員を一意に識別する配送員IDに、勤務時間、勤務日、担当区域ID等が関連付けられた情報を含んでよい。配送員データテーブルTB2を参照すると、配送員ID「DP0001」の配送員は、勤務時間が「9:00-17:00」であって、担当区域ID「AR0100」で識別される区域が担当する配送区域であることがわかる。なお、担当区域IDと、上述した配送先IDとを関連付けた図示しないテーブルがさらに記憶されてよい。なお、配送員に担当区域がない場合、担当区域IDは記憶されなくてよい。また、配送員データテーブルTB2には、配送員の体重、残業が可能な上限時間(例えば、勤務時間は17時までだが、20時までの残業が可能である等)がさらに格納されてよい。
【0037】
図3(b)に、配送車両情報DB 223に格納される配送車両情報の一例を示す。配送車両情報テーブルTB3は、各配送車両に関する情報であって、各配送車両を一意に識別する車両IDに、車両種別、最大積載量等が関連付けられた情報を含んでよい。配送車両情報テーブルTB3を参照すると、車両ID「TR0001」の配送車両は、市車両種別が「大型」であって、最大積載量が「20000kg」であることがわかる。また、配送車両情報テーブルTB3には、最大積載容量や、次回の使用予定に関する情報であって、使用予定日、時間、配送員等に関する情報がさらに含まれてもよい。なお、配送車両情報テーブルTB3は、事業者ごとに、各事業者が所有する配送車両の情報を含んでよい。
【0038】
また、
図4に、通信装置310から管理サーバ210へ送信される、ガスの使用量に関する情報の一例を示す。通信装置310から管理サーバ210へは、例えば、メーターID、検針日時、メーターの指針値に関する情報が送信されてよい。
図4(a)は、通信装置310から管理サーバ210へ検針値を送信する場合のデータテーブルTB4の一例である。さらに、ガス容器の交換がされたか否かを示す情報が、例えば交換された場合は「1」、未交換の場合は「0」とのフラグによって送信されてもよい。管理サーバ210では、
図4(b)に示すように、受信した検針値に基づいて、検針データDB 212に、各メーターの検針データテーブルTB5が記憶されてよい。
【0039】
また、
図5に、天候データDB 231に記憶される天候データテーブルTB6の一例を示す。天候データテーブルTB6は、例えば市単位で記憶され、年月日、昼間、夜間の天気、最高気温、平均気温、最低気温などが記憶されてよい。なお、天候データは、外部のサードパーティから取得してもよい。
【0040】
<機能構成>
図1に戻り、サーバ(演算処理サーバ)100の各機能部の機能について簡単に説明する。サーバ100は、配送システム800における各種演算処理を実行するサーバであって、通信部110、残量予測部120、危険度算出部130及び配送決定部140を備えてよい。なお、
図1では、残量予測部120、危険度算出部130及び配送決定部140を、1つのサーバ100における機能部として示してある。しかしながら、各機能部は、それぞれ別個のサーバやエンジンで実現されてもよい。また、サーバ100は、例えば、ネットワークを介して通信を行うことで協調動作する分散型サーバシステムでもよく、いわゆるクラウドサーバでもよい。すなわち、サーバ100は、物理的なサーバに限らず、ソフトウェアによる仮想的なサーバも含まれてよい。
【0041】
通信部110は、管理サーバ210から、需要家のガスの使用量に関する情報を取得する取得部として機能してよい。需要家のガスの使用量に関する情報とは、通信装置310や検針員440の通信端末441から送信された各需要家のガスの使用量を示す情報であって、上述した検針データDB 212に格納される、メーターの検針値であってよい。
【0042】
残量予測部120は、需要家の過去のガスの使用量から将来のガスの予測使用量を算出し、将来の所定の時点において需要家が使用可能なガス残量を予測してよい。詳細は後述するが、残量予測部120は、需要家ごとに、過去のガスの実測使用量に関するデータセットを用いた機械学習によって、予測使用量を算出する複数の予測モデルを生成してよい。そして、残量予測部120は、需要家毎に、予測モデルに基づいて、将来の予測使用量を算出してよい。
【0043】
危険度算出部130は、残量予測部120が予測したガス残量に基づいて、当該ガス残量が所定の閾値以下となる確率である危険度を算出してよい。なお、危険度については後述する。
【0044】
配送決定部140は、危険度算出部130によって算出された危険度に基づいて、複数の需要家のうち、新たなガス容器の配送対象となる2以上の配送対象需要家と、当該2以上の配送対象需要家に対して新たなガス容器を配送する配送順序とを決定してよい。なお、配送対象需要家及び配送順序の決定については後述する。
【0045】
なお、本発明の一実施形態によれば、新たなガス容器の配送対象である「配送対象需要家」は、ガス配送の優先度に応じて、「必須配送需要家」と「非必須配送需要家」とにカテゴリ分けされてよい。「必須配送需要家」とは、ガスの配送優先度が最も高い需要家を指してよい。例えば、「必須配送需要家」とは、ある配送日にガスの配送が必要な需要家を指してよい。詳細は後述するが、具体的には、「必須配送需要家」とは、配送対象日において、ガス残量の予測値が第1種閾値以下である確率(後述する第1種危険度)が所定の基準値(第1種基準値)以上である需要家を指してよい。
【0046】
また、「非必須配送需要家」とは、配送対象ではあるものの、必須配送需要家よりもガス配送の優先度が低い需要家を指してよい。例えば、「非必須配送需要家」とは、ある配送日に配送しなくてもガス切れは起こらないが、配送しなかった場合にどれだけガス残量が危険な水準となるかに応じて、配送対象としての優先度が決定される需要家を指してよい。具体的には、「非必須配送需要家」は、例えば、複数の第2種閾値それぞれについて、ガス残量の予測値が、第2種閾値以下である確率(後述する第2種危険度)を算出し、複数の第2種危険度の総和である実質危険度に基づいて抽出されてよい。例えば、「非必須配送需要家」は、配送対象日において実質危険度が所定の基準値(第2種基準値)以上である需要家であってよい。
【0047】
<配送システムの処理フロー>
ここで、
図6,7に示す、本発明の一実施形態に係る配送システム800の処理フローに基づき、各機能部による処理について続けて説明する。一実施形態に係る配送システム800では、残量予測部120による各需要家のガスの使用量予測ステップS1(
図6)と、危険度算出部130による、予測したガス使用量に基づいたガス切れの危険度を算出する危険度算出ステップS2(
図6)と、配送決定部140による、配送先の設定及び配送ルート(配送順序)を設定する配送最適化ステップS3(
図7)との3つのステップを経て、効率的なガス配送が行われてよい。
【0048】
なお、上記のステップは、多数存在する需要家それぞれに対して実行されてよい。さらに、ガス切れの可能性を減らすため、上記のステップは、毎日検針されて管理サーバ210へ送信されるガスの検針値を用いて、日単位で実行されることが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態による配送システム800は、多数の需要家についての大量のデータを用いた演算処理を実行するシステムであってよい。
【0049】
図6に示すように、通信部110は、残量予測部120によるガス使用量の予測にあたり、上述した需要家データ、検針データ、配送員データ、外部データ(天候データ)と、予測にあたり用いられる各種パラメータデータを入力データとして取得してよい(ステップS10)。残量予測部120は、入力データに基づいて、需要家が、スマートメーターが設置された設置需要家であるか、スマートメーターが設置されていない非設置需要家であるかを判定してよい(ステップS11)。例えば、ある一の需要家の検針データ中に2日以上連続する欠損がある場合、当該一の需要家は非設置需要家として判定されてよい。需要家が設置需要家である場合(ステップS11でYES)、残量予測部120は、スマートメーター向けの予測モデルで用いる特徴量を作成してよい(ステップS12)。特徴量が作成されると、残量予測部120は、スマートメーター向けの予測モデルを用いて、予測使用量を算出してよい(ステップS13)。なお、これ以降、スマートメーター向けの予測モデルを、「設置需要家の予測モデル」とも称する。
【0050】
残量予測部120は、過去のガスの実測使用量に関するデータセットを用いた機械学習によって、予測使用量を算出する複数の予測モデルを、需要家ごとに生成してよい。そして、残量予測部120は、予測使用量を算出する予測対象期間を連続N日間(Nは1以上の整数)としたとき、N個の予測モデルを生成し、N個の各予測モデルを用いて、1からN日間それぞれに対する予測使用量を算出してよい。また、残量予測部120は、N日間の予測使用量を算出する予測モデルを生成する場合、N日間においてN=1とした日の前日におけるガスの実測使用量を目的変数とし、当該前日よりN日以前までの過去の所定期間にわたるガスの実測使用量を用いて生成された所定の次元数の特徴量を説明変数とした機械学習によって、N日間の予測使用量を算出する予測モデルを生成してよい。そして、残量予測部120は、生成されたN個の予測モデルに、前日を含む過去の所定期間にわたるガスの実測使用量を用いて生成された、所定の次元数の特徴量を説明変数として入力して、N日間それぞれに対する予測使用量を算出してよい。
【0051】
このことを、図を用いて説明する。
図8(a)、(b)は、予測モデルの生成について説明する概略図である。本発明の一実施形態において、ガスの使用量は、予測処理を実行した日以降の将来の所定の期間(N日間)にわたって予測されてよい。所定の期間は例えば14日間であってよいが、これに限定されない。なお、
図8(a)、(b)において、「5/31」まではガスの使用量の実測値(実績値)が存在し、予測モデルによって、「6/1」以降の使用量が予測されるものとする。このとき、本発明の一実施形態によれば、N個の予測モデルが生成され、各N個の予測モデルを用いて、「6/1」の予測使用量、「6/1~6/2」の予測使用量、「6/1~6/3」の予測使用量、「6/1~6/14」の予測使用量のように、1からN日間の累積使用量が予測されてよい。
【0052】
次に、設置需要家の予測モデルを生成する際の機械学習に用いる特徴量の作成について、
図9を用いて説明する。
図9は、予測モデルの生成にあたり学習に用いる説明変数(特徴量)の作成を説明する概略図である。
図9において、〇印は、日ごとのガスの使用量の実測値であってよい。なお、残量予測部120は、例えば、通信エラーによって検針データが取得できずに需要家の過去の検針データに欠損がある場合は、検針データを、必要に応じて所定の補完アルゴリズムで補完してよい。補完アルゴリズムについては特に限定されないが、例えば、線形補完であってよい。
【0053】
本発明の一実施形態において、設置需要家向けの予測モデルの生成に用いられる説明変数(特徴量)は、16次元であってよい。具体的には、それぞれ予測開始日の1~4週間前に相当する日(4日間)の実測使用量の4つと、それら4日間の平均値の1つと、それぞれ予測開始日の1~4週間前の週ごとの実測使用量の累積値の4つと、それら週ごとの4つの累積値の平均値の1つと、予測開始日の2日前から1週間前までの6日間の実測使用量の6つとからなる16次元の特徴量であってよい。これらの特徴量によって、予測モデルを、曜日の影響、各週の曜日のばらつき、曜日の影響は除去した上での週ごとの影響、週のばらつきとメーターの規模感、予測開始日直近の影響がそれぞれ考慮された予測モデルとすることができる。
【0054】
例えば、
図8(a)に示すように、「6/1」の予測使用量を予測する予測モデルを、「5/31」までの実測値(データセット11)を用いて生成する場合について説明する。残量予測部120は、「5/31」の実測値を目的変数12Y1、「5/4~5/30」の実測値から作成される16次元の特徴量を説明変数12X1とした学習、「5/30」の実測値を目的変数12Y2、「5/3~5/29」の実測値から作成される16次元の特徴量を説明変数12X2とした学習のように、過去の14日間分シフトさせて学習を行い、予測開始日「6/1」のガス使用量を予測する予測モデルを生成してよい。
【0055】
次に、
図8(b)に示すように、残量予測部120は、データセット21を用いて、予測開始日から2日間の「6/1~6/2」のガス使用量を予測する予測モデルを生成してよい。具体的には、残量予測部120は、「5/30~5/31」の実測値を目的変数22Y1、「5/3~5/29」の実測値から作成される16次元の特徴量を説明変数22X1とした学習、「5/29~5/30」の実測値を目的変数22Y2、「5/2~5/28」の実測値から作成される16次元の特徴量を説明変数22X2とした学習のように、過去の14日間分シフトさせて学習を行い、予測開始日から2日間の「6/1~6/2」のガス使用量を予測する予測モデルを生成してよい。
【0056】
例えば、N=14であって、予測使用量を算出する予測対象期間を連続14日間としたとき、本発明の一実施形態によれば、上述した機械学習によって14個の予測モデルが生成されてよい。そして、生成されたN個の予測モデルに対して、予測開始日の前日を含む過去の所定期間にわたるガスの実測使用量を用いて生成された、上述の16次元の特徴量を説明変数として入力することで、N日間それぞれの予測使用量が算出されてよい。例えば、
図8(a)の場合、データセット11の学習によって生成された予測モデルにおいて、「5/5~5/31」の実測値から作成される16次元の特徴量を説明変数13Xとして、目的変数13Yである「6/1」の予測使用量を算出してよい。また、
図8(b)の場合、データセット12の学習によって生成された予測モデルにおいて、「5/5~5/31」の実測値から作成される16次元の特徴量を説明変数23Xとして、目的変数23Yである「6/1~6/2」の累積の予測使用量を算出してよい。
【0057】
このように、本発明の一実施形態によれば、需要家ごとに、需要家自身の過去の使用量に応じた予測モデルが生成される。従って、需要家の使用傾向に則った精度のよい予測モデルを生成することができる。
【0058】
また、本発明の一実施形態によれば、予測使用量を算出する予測対象期間を連続N日間(Nは1以上の整数)としたとき、N個の予測モデルが生成され、N個の各予測モデルを用いて、1からN日間それぞれに対する予測使用量が算出されてよい。これにより、より精度のよい予測が可能になる。また、予測モデルは、曜日の影響等が考慮された特徴量の学習によって生成されるため、単に過去の検針データの推移を学習した場合と比較して、より精度のよい予測を行うことができる。
【0059】
さらに、本発明の一実施形態によれば、将来のガスの使用量を予測するにあたり、予測開始日からN日間の累積使用量が予測される。このとき、学習時の目的変数として用いられるデータは、予測開始日の前日を含む過去N日間の実測値である。すなわち、本発明の一実施形態において、予測モデルの生成にあたり、予測値が用いられることがない。したがって、より精度の高い予測モデルを生成することが可能となる。
【0060】
なお、需要家が非設置需要家である場合(ステップS11でNO)、または、ステップS12で設置需要家の予測モデルで用いる特徴量の作成に失敗した場合は、非スマートメーター向けの予測モデルで用いる特徴量が生成されてよい(ステップS14)。特徴量の作成に失敗するとは、例えば、検針データの欠損が多く補完ができない場合であってよい。そして、残量予測部120は、非スマートメーター向けの予測モデルを生成してよい(ステップS15)。なお、非スマートメーター向けの予測モデルを、「非設置需要家の予測モデル」とも称する。
【0061】
ここで、非設置需要家、または、検針データに欠損が多い設置需要家に対する、ガス使用量の予測モデルの生成に関し、機械学習に用いる特徴量について、
図10を用いて説明する。
図10において、〇印は、検針員が訪問した際に取得した検針データであって、例えば、月ごとのガスの実測使用量であってよい。なお、設置需要家の場合と異なり、残量予測部120は、検針データに欠損があっても補完せずに、予測モデルを生成してよい。
【0062】
本発明の一実施形態において、非設置需要家向けの予測モデルの生成に用いられる説明変数(特徴量)は、19次元であってよい。具体的には、直近の2回前の検針日から直近の1回前の検針日までの日数を「間隔a」、直近の2回前の検針時から直近の1回前の検針時までのガス使用量を「変化a」、直近の1回前の検針日から直近の検針日までの日数を「間隔b」、直近の1回前の検針時から直近の検針時までのガス使用量を「変化b」、直近の検針日から予測対象日までの日数を「間隔c」、予測対象の月を表す12次元のワンホットベクトルを「予測対象の月」としたときに、特徴量(説明変数)は、
図10のように、「間隔a」、「変化a」、「変化a/間隔a」、「間隔b」、「変化b」、「変化b/間隔b」、「間隔c」、「予測対象日の月」としてよい。そして、目的変数を「変化c/間隔c」として、過去のデータセットを用いて学習を行い、予測モデルを生成してよい。
【0063】
すなわち、残量予測部120は、過去のガスの実測使用量に関するデータセットの、時系列での連続性に応じて、複数の予測モデルを生成するものであって、データセットが時系列で不連続である場合、複数の予測モデルとは異なる他の予測モデルを1つ生成し、予測使用量を算出してよい。
【0064】
このように、本発明の一実施形態によれば、設置需要家であるか非設置需要家であるか、すなわち、検針データの連続性に応じて、適切な予測モデルが生成されてよい。したがって、予測対象が制限されず、ユーザビリティの高い配送システムを提供することができる。
【0065】
なお、残量予測部120は、上述した予測モデルを、線形回帰(Linear Regression)、サポートベクトル回帰(Support Vector Regression)、ランダムフォレスト回帰(Random Forest Regression)、勾配ブースティング回帰(Gradient Boosting Regression)、又は勾配ブースティング決定木(Gradient Boosting Decision Tree)、LightGBM(Light Gradient Boosting Machine)の少なくともいずれかを用いたアルゴリズムによって生成してよい。これらの手法により、精度よく予測モデルを生成することができる。
【0066】
なお、ステップS14で、非設置需要家の予測モデルで用いる特徴量の作成に失敗した場合、残量予測部120は、全需要家の中央値による予測モデル(これ以降、「中央値予測モデル」とも称する)を生成してよい(ステップS16)。中央値予測モデルでは、予測に用いる日単位の使用量を、全ての非設置需要家のメーターから取得された検針データのうち、日単位の使用量の中央値としてよい。そして、残量予測部120は、日単位の使用量の中央値に、最終の検針日から予測対象日までの日数を掛け合わせることにより、最終の検針日から予測対象日までの、ガスの累積使用量の予測値を算出してよい。
【0067】
図6へ戻り、危険度算出部130は、ステップS13,S15,S16のいずれかで、残量予測部120が生成した予測モデルを用いて算出された、将来の所定期間にわたるガスの予測使用量から、危険度を算出してよい(ステップS17)。具体的には、危険度算出部130は、残量予測部120によって算出された予測使用量から、需要家ごとに将来の所定期間にわたるガス残量を算出し、当該ガス残量に基づいて危険度を算出してよい。なお、ガス残量は、需要家データに含まれるメーターの交換日と、交換日からの検針データの実績値、需要家のガス容器の容量、予測使用量に基づいて算出されてよい。
【0068】
ここで、危険度について説明する。本発明の一実施形態において、危険度は、「予測対象日において、予測対象の需要家のガス残量の予測値が、所定の閾値を下回る確率」であってよい。すなわち、予測対象日をi、予測対象日iにおけるLC(予測対象の需要家)のガス残量の予測値をpredLC,i、所定の閾値をremainThrLC,iとすると、危険度riskLC,iは、以下の式で定義されてよい。
【0069】
【0070】
なお、あるLCの予測対象日iにおける予測誤差の分散をσ2
LC,iとすると、(ガス残量の閾値-ガス残量の予測値)は、N(0,σ2
LC,i)の正規分布に従うと仮定されてよい。
【0071】
上述の危険度関数を用いて、危険度算出部130は、ガス残量が所定の閾値以下となる確率である危険度を日単位で算出し、日単位のガス残量とともに出力してよい(ステップS18)。なお、危険度は、後述する配送最適化において用いられてよい。
【0072】
図7を用いて、配送システムの処理フローのうち、配送最適化ステップS3について説明する。配送最適化ステップS3において、配送決定部140は、残量予測モデルの出力結果や、配送員のシフト等の各種制約条件の下に、配送を最適化するための各種条件を定式化した最適化問題を解くことによって、配送計画(配送リスト及び配送ルート)を出力してよい。
【0073】
まず、配送決定部140は、需要家データ、配送員データ、配送車両情報、拠点情報、ステップS18の残量予測モデルの出力データ、配送最適化処理を実行する前日の配送計画データ、各種パラメータデータを取得してよい(ステップS20)。なお、拠点情報とは、ガス容器を配送車両に積載する場所を指し、例えば、ガス事業者の販売店であってよい。また、前日の配送計画データとは、前日に行われた配送最適化処理によって出力されたデータであって、日別の配送先リスト、配送ルートに関するデータであってよい。また、残量予測モデルの出力データとは、需要家ごとの、日別のガス残量の予測結果、日別の危険度に関するデータであってよい。
【0074】
配送決定部140は、上述した危険度に基づいて、複数の需要家のうち、新たなガス容器の配送対象となる2以上の配送対象需要家と、当該2以上の配送対象需要家に対して、新たなガス容器を配送する配送順序とを決定してよい。
【0075】
まず、配送決定部140は、前処理として、上述した危険度に基づいて、必須配送需要家及び非必須配送需要家を抽出してよい(ステップS21)。上述のように、危険度は、「予測対象日において予測対象の需要家のガス残量の予測値が、所定の閾値を下回る確率」であって所定の閾値は、新たなガス容器の配送を優先すべき必須配送需要家を抽出するための第1種閾値を含んでよい。また、所定の閾値は、非必須配送需要家を抽出するための複数の第2種閾値を含んでよい。
【0076】
第1種閾値、第2種閾値について、
図11を用いて説明する。
図11(a)、(b)は、横軸を予測処理日からの日数として、一の需要家について、ガスの残量が所定の閾値以下となる確率を示す危険度関数をプロットした模式図であって、
図11(a)は第1種閾値、
図11(b)は第2種閾値に関する図であってよい。
【0077】
図11(a)において、実線及び破線は、必須配送需要家を抽出するための残ガス率である第1種閾値α1を、全ガス容器(主容器及び予備容器)の20%相当値(α1=0.2)とした場合の、それぞれ需要家A、需要家Bの第1種危険度の推移を表す。ここで、必須配送需要家は、ガス残量が第1種閾値以下となる第1種危険度が第1種基準値以上となる需要家であってよい。例えば、第1種基準値を0.5とした場合、
図11(a)において第1種危険度が最初に0.5以上となる日は、需要家Bについては予測日から「t11日後」である。従って、需要家Bが必須配送需要家として判定されるのは、予測日から「t11日後」となる。これに対し、需要家Aについては、第1種危険度が最初に0.5以上となる日は、予測日から「t12日後」である。従って、需要家Aが必須配送需要家として判定されるのは、予測日から「t12日後」となる。
【0078】
なお、上述した第1種閾値α1、第1種基準値の値は一例であって、本発明はこれらに限定されない。第1種閾値α1は、0≦α1≦1の範囲であればよい。また、第1種基準値は、必須配送需要家として抽出するためのガス残量の水準に応じて、事業者の需要に応じて適宜設定されてよい。また、需要家によっては、予備容器が設置されず、主容器のみが配送されている場合もある。このように予備容器のみが配送されている需要家に対しては、第1種閾値α1をα1=0.3とし、第1種基準値を0.5としてもよい。
【0079】
次に、非必須配送需要家の抽出について説明する。
図11(b)において、実線、破線、一転連鎖線、二点連鎖線は、それぞれ、非必須配送需要家を抽出するための残ガス率である第2種閾値(α2)を、それぞれ、主容器の5%、0%、-5%、-10%とした場合の、一の需要家の第2種危険度の推移を示す。なお、第2種閾値は、主容器のみに適用されてよい。したがって、主容器に対してマイナスの割合は、主容器は空であって、予備容器の利用が始まっていることを意味してよい。なお、第2種閾値の数は任意に設定されてよく、これ以上、あるいはこれ以下の数で存在してもよい。本発明の一実施形態によれば、第2種閾値は5%刻みで-30%までの8個あってよい。なお、
図11(b)では、簡単のため、第2種危険度の推移を4つのみプロットしてある。
【0080】
図11(b)において、予測日から「t11日後」の第2種閾値5%、0%、-5%、-10%ごとの第2種危険度は、それぞれ、「0.5」、「0.3」、「0.1」、「0.07」である。したがって、第2種危険度の総和である実質危険度は、「0.97」となる。これに対し、予測日から「t12日後」の第2種危険度は、「t12日」以前に、主容器の残ガス率が5%、0%以下となっており、第2種閾値5%、0%についての第2種危険度は「1.0」となっている。そして、予測日から「t12日後」の第2種危険度の総和である実質危険度は、例えば「3.0」となってよい。このように、実質危険度は、値が大きいほど、配送しなかった場合にガス残量が危険な水準となることを示す指標であってよい。
【0081】
なお、本発明の一実施形態によれば、第2種閾値は上述のように8個あってよく、第2種危険度の総和である実質危険度の最大値は「8.0」であってよい。配送決定部140は、実質危険度が所定の閾値(第2種基準値)以上ある需要家を、非必須配送需要家として抽出して、配送計画を設定してよい。第2種基準値は、例えば「5.0」であってもよいが、特に限定されない。すなわち、第2種閾値α2は、-1≦α2≦1の範囲であればよい。また、第2種基準値の値も一例であって、事業者の需要に応じて適宜設定できてよく、その個数も限定されない。
【0082】
上述の処理により、ある配送対象日における必須配送需要家、非必須配送需要家を抽出することができる。そして、配送決定部140は、配送対象日における非必須配送需要家に対し、新たなガス容器の配送を許容するとの条件を含む制約条件のもとで、1以上の所定の目的関数をあらかじめ設定された順序で求めた解に基づいて、配送計画を出力してよい。具体的には、例えば、配送決定部140は、当該解に基づいて、配送対象日における車両による1回の配送当たりの配送順序と、配送回数とを決定してよい。ここで、目的関数は、以下の3つを実現するものを少なくとも含んでよい。
(1)各トリップにおける積載重量が750kgを下回っている過少積載重量を最小化する、(2)配送計画がなされた全需要家(必須配送需要家)の実質危険度の総和を最大化しつつ、トリップ毎の重量のばらつきを最小化し、他社の充填拠点の利用回数を最小化する、(3)合計移動時間を最小化し、スポット指定がある場合に挿入されうる待ち時間を最小化する
【0083】
なお、トリップとは、ガス容器を積載する配送センター(充填拠点)から出発して、配送先を回り、配送センターへ帰着する一回の配送を指してよい。また、スポットとは、需要家によって配送時間や配送場所が指定されていることを指してよい。なお、上述の数値は一例であって、積載重量等は他の値であってよい。
【0084】
このように、本発明の一実施形態によれば、必須配送需要家のみならず、非必須配送需要家に対してもガス容器の配送を許容した上で、配送計画が作成されてよい。したがって、全ての需要家のガス切れの可能性を低くすることが可能となる。
【0085】
また、配送決定部140は、1以上の所定の目的関数について、先行する順序の目的関数の解を、後続の目的関数における解の算出に用いてよい。すなわち、配送決定部140は、先行する順序の目的関数を最大化/最小化したのち、次の目的関数を最大化/最小化してよい。これにより、例えば、上述の目的関数は、(1)、(2)、(3)の順番に解が求められてよいが、目的関数(1)の最適解を維持しながら、目的関数(2)の最適解を求めることが可能となる。
【0086】
上述の目的関数(2)のように、本発明の一実施形態において、1以上の所定の目的関数は、1以上の配送対象需要家それぞれについて算出した複数の実質危険度の総和に関する項を含んでよい。そして、配送決定部140は、目的関数(2)の実質危険度の総和を最大化する解に基づいて、配送対象日における車両による1回の配送当たりの配送順序と、配送回数とを決定してよい。これにより、配送対象日ではまだガス残量はあるものの、次の配送対象日までにガス残量が少なく成り得る非必須配送需要家を、できるだけ多く抽出して、早いうちにガスを配送することができる。
【0087】
上述の目的関数(2)のように、本発明の一実施形態において、1以上の所定の目的関数は、配送対象日における複数回の配送において、1回の配送当たりに配送されるガス容器の総量の差異に関する項を含んでよい。配送決定部140は、実質危険度の総和を最大化し、かつ、ガス容器の総量の差異を最小化する解(すなわち、トリップ毎の重量のばらつきを最小化する解)に基づいて、配送対象日における車両による1回の配送当たりの配送順序と、配送回数とを決定してよい。これにより、配送時にトラックに積載するガス容器の量が、配送ごとに差が発生することを抑え、バランスのよい配送が可能となる。
【0088】
配送決定部140は、制約条件として、配送対象日における必須配送需要家には、新たなガス容器を必ず配送するとの条件をさらに含むハード制約条件のもとで、上述した1以上の所定の目的関数の解を求めてよい(
図7のステップS22)。例えば、配送決定部140は、ある一の需要家について、上述した第1種危険度が第1種基準値以上となる日を、一の需要家の必須配送日とし、一の需要家には、必須配送日に必ずガス容器を配送するとの制約条件の下で、上述した目的関数(1)~(3)を解いてよい。これにより、ガス切れのリスクが高い需要家に必ずガス容器を配送することができる。
【0089】
配送決定部140は、上述したハード制約条件のもとで、1以上の所定の目的関数の解が求まらない場合、ハード制約条件に代わり、ハード制約条件とは異なる制約条件であるソフト制約条件のもとで、目的関数の解を求めてよい。例えば、ソフト制約条件は、目的関数の解を求めるにあたり、ハード制約条件よりも緩和した条件である制約条件であってよい。具体的には、例えば、ソフト制約条件は、ハード制約条件に含まれる条件に加えて、必須配送需要家に対し、配送対象日前後での新たなガス容器の配送を許容するとの条件をさらに含む制約条件であってよい。すなわち、ソフト制約条件は、新たなガス容器について、配送対象日に配送することを優先しつつ、配送対象日前後で配送してよいことを意味してもよい。配送決定部140は、ソフト制約条件のもとで、1以上の所定の目的関数に加え、追加の目的関数の解を算出してもよい(
図7のステップS23)。ここで、追加の目的関数は、配送対象日に配送する必須配送需要家の総和の項を含んでよい。例えば、追加の目的関数(4)は、(4)ガス切れリスクの高い需要家にできるだけ配送する、であってよい。
【0090】
配送決定部140は、追加の目的関数(4)を最大化する解に基づいて、配送対象日における車両による1回の配送当たりの配送順序と、配送回数とを決定してよい。なお、本発明の一実施形態において、目的関数(4)を用いる場合、目的関数を解く順序は(1)、(4)、(2)、(3)であってよい。
【0091】
なお、本発明の一実施形態において、配送計画の最適化問題に対する制約条件は、例えば、集合分割制約、配送日時制約、トリップ制約、積載重量制約、積載容量制約、矩形制約、勤務時間制約、配送開始時間制約、スポット配送制約を含んでよい。また、その他の制約条件として、始点と終点の整合性に関する条件、配送員が取るべき休憩時間に関する条件が含まれてよい。
【0092】
ハード制約モデルでは目的関数の解が見つからない場合、配送決定部140は、ソフト制約モデルによって解を求めてもよい。また、ソフト制約モデルによっても解が見つからない場合は、配送決定部140は、前日の配送計画を出力してよい(ステップS26)。
【0093】
目的関数の最適解が算出できた場合、配送決定部140は、配送計画として、日別の配送リストと、日別の配送ルートを出力してよい(ステップS25)。
図12に、配送計画に関するテーブルTB20の一例を示す。図のように、配送計画に関する情報には、配送すべき各需要家への配送時間、配送ルート(トリップ種別)に関する情報が含まれてよい。
【0094】
また、配送計画に関する情報が、配送員に提供されてもよい。すなわち、通信部110は、配送決定部140によって設定された配送順序に関する情報を、配送員500の通信端末510へ送信してもよい。配送員500の通信端末510において、配送順序は、例えば、地図上に重畳して表示されてもよい。なお、配送順序に関する情報には、配送時刻に関する情報が含まれ、地図上、又はテキスト情報として、通信端末510で表示可能であってよい。これにより、配送員500は、配送順序を確認しながら配送作業を行うことができる。
【0095】
<ハードウェア構成>
サーバ100のハードウェア構成について説明する。
図13は、本実施形態におけるサーバ100を実現可能なコンピュータのハードウェア構成例である。サーバ100は、プロセッサ101と、ストレージ102と、メモリ103と、入出力インタフェース(入出力I/F)104と、通信インタフェース(通信I/F)105とを含む。各構成要素は、バスBを介して相互に接続される。サーバ100は、これら各構成要素の協働により、本実施形態に記載される機能や方法を実現する。例えば、サーバ100の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、ストレージ102からメモリ103に読み込まれたプログラムに含まれる命令をプロセッサ101が実行することによって実現される。すなわち、本実施形態に係るサーバ100は、プロセッサ101がメモリ103上に読み込まれたプログラムを実行することにより、通信部110、残量予測部120、危険度算出部130及び配送決定部140として機能する。
【0096】
プロセッサ101は、例えば、中央処理装置(CPU)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ(microprocessor)、プロセッサコア(processor core)、マルチプロセッサ(multiprocessor)、ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を含み、集積回路(IC(Integrated Circuit)チップ、LSI(Large Scale Integration))等に形成された論理回路(ハードウェア)や専用回路によって実現されてよい。なお、サーバ100は、上述の大量のデータを処理するための演算能力の高いプロセッサ101を有することが好ましい。
【0097】
通信I/F105は、ネットワークアダプタ等のハードウェアや通信用ソフトウェア、及びこれらの組み合わせとして実装され、外部装置と各種データの送受信を行う。当該通信は、有線、無線のいずれで実行されてもよく、互いの通信が実行できるのであれば、どのような通信プロトコルを用いてもよい。
【0098】
入出力I/F104は、サーバ100に対する各種操作を入力する入力装置、及び、サーバ100で処理された処理結果を出力する出力装置を含む。入力装置は、例えば、タッチパネル、タッチディスプレイ、キーボード等のハードウェアキーや、マウス等のポインティングデバイス、カメラ(画像を介した操作入力)、マイク(音声による操作入力)を含む。出力装置は、プロセッサ101で処理された処理結果を出力する。出力装置は、例えば、タッチパネル、スピーカ等を含む。
【0099】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上記実施の形態に示す構成を適宜組み合わせることとしてもよい。例えば、サーバ100が備えるとして説明した各構成部は、複数のサーバによって分散されて実現されてもよい。
【0100】
なお、一般に、集合住宅やビルなどでは、集合住宅又はビル全体に対して複数のガス容器がまとめて設置され、各需要家へのガスの共有が行われている。すなわち、複数の需要家で複数のガス容器を共有している。そして、需要家それぞれに対してメーターが設置され、それぞれの使用量が検針されている。従って、ガス容器が共有である場合、需要家それぞれのガスの使用量の予測モデルを算出し、各需要家の予測使用量を足し合わせて、共有する複数のガス容器のガス残量が予測されてよい。
【0101】
また、配送順序の設定において、道路に関する情報が用いられてもよい。例えば、道路が2車線であるか1車線であるかや、道路工事、また、駐車場の位置などは、ガス容器の配送の際、配送に要する時間に影響を及ぼし得る。従って、配送員の勤務時間を超過するか否かの判定に影響する。そのため、配送順序を設定する際の制約条件として、道路に関する情報を定式化してもよい。
【0102】
また、上述では、非必須配送需要者の抽出に際し、第2種閾値を主容器に対して適用する例について説明した。しかしながら、需要家によっては、予備容器を有さず、主容器1本のみが配送されているものも存在する。この場合、需要家が使用するガス容器が主容器のみである場合、危険度算出部130は、主容器を所定の割合で分割してみなし主容器とみなし予備容器とし、危険度の算出に際し、第1種閾値を、主容器の容量に対して適用し、第2種閾値を、みなし主容器の容量に対して適用してよい。例えば、主容器を7:3で分割し、主容器の70%をみなし主容器、30%をみなし予備容器として、第2種閾値をみなし主容器に対して適用して、実質危険度が算出されてよい。これにより、予備容器のない需要家も対象として、適切に非必須需要家を抽出することができる。
【0103】
本開示の各実施形態のプログラムは、情報処理装置に読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供されてもよい。記憶媒体は、「一時的でない有形の媒体」に、プログラムを記憶可能である。プログラムは、例えば、ソフトウェアプログラムや情報処理装置プログラムを含む。情報処理装置としてのサーバ100の各機能部をソフトウェアにより実現する場合、サーバ100は、プロセッサがメモリ上にロードされたプログラムを実行することにより、通信部110、残量予測部120、危険度算出部130及び配送決定部140として機能する。
【0104】
記憶媒体は適切な場合、1つ又は複数の半導体ベースの、又は他の集積回路(IC)(例えば、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途向けIC(ASIC)等)、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)、ハイブリッド・ハード・ドライブ(HHD)、光ディスク、光ディスクドライブ(ODD)、光磁気ディスク、光磁気ドライブ、フロッピィ・ディスケット、フロッピィ・ディスク・ドライブ(FDD)、磁気テープ、固体ドライブ(SSD)、RAMドライブ、セキュア・デジタル・カードもしくはドライブ、任意の他の適切な記憶媒体、又はこれらの2つ以上の適切な組合せを含むことができる。記憶媒体は、適切な場合、揮発性、不揮発性、又は揮発性と不揮発性の組合せでよい。
【0105】
また、本開示のプログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して、サーバ100に提供されてもよい。
【0106】
また、本開示の各実施形態は、プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0107】
なお、本開示のプログラムは、例えば、JavaScript(登録商標)、Python等のスクリプト言語、C言語、Go言語、Swift,Koltin、Java(登録商標)等を用いて実装されてよい。
【0108】
以上説明した本開示の各態様によれば、ひとがより住みやすい環境を提供することにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成に貢献できる。
【符号の説明】
【0109】
100 サーバ(演算処理サーバ)
110 通信部
120 残量予測部
130 危険度算出部
140 配送決定部
210 管理サーバ
212 検針データDB(データベース)
213 パラメータDB
220 事業者DB
221 需要家データDB
222 配送員データDB
223 配送車両情報DB
230 外部DB
231 天候データDB
232 道路情報DB
310 通信装置
320,420 メーター
330A,330B,430A,430B ガス容器
440 検針員
441 通信端末
500 配送員
510 通信端末
800 配送システム