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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104688
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240729BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009035
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】明石 彩
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】野口 祥太
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA21A
4F100AA23A
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK07C
4F100AK15B
4F100AK22B
4F100AK25
4F100AK25B
4F100AK41B
4F100AK51B
4F100AK68B
4F100AL07B
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CA00A
4F100CA00B
4F100CA06C
4F100CA07C
4F100CA13B
4F100CA14B
4F100CB00B
4F100DD01
4F100EC18
4F100EH23
4F100EH46
4F100EJ55
4F100GB07
4F100HB00A
4F100HB31
4F100JA11A
4F100JA11C
4F100JA13A
4F100JA13C
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JC00
4F100JC00C
4F100JK06B
4F100JK12
4F100JK14
4F100JL01
4F100JL10A
4F100JL10C
4F100JL11B
4F100JN01C
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】植物由来の材料を用いても、表面硬度及び加工性をさらに向上させることができる化粧シート及び化粧材を提供する。
【解決手段】着色された熱可塑性樹脂からなる着色樹脂層11と、接着性を有する接着層13と、透明な熱可塑性樹脂からなる透明樹脂層14とをこの順に備え、透明樹脂層14が、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含有する樹脂組成物で形成されると共に、ナノサイズ化処理された造核剤を含有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色された熱可塑性樹脂からなる着色樹脂層と、接着性を有する接着層と、透明な熱可塑性樹脂からなる透明樹脂層とをこの順に備え、
前記透明樹脂層は、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含有する樹脂組成物で形成されると共に、ナノサイズ化処理された造核剤を含有している
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記透明樹脂層は、前記透明樹脂層全体の質量に対し、バイオマス由来の前記ポリプロピレンを5質量%以上99質量%以下の範囲内で含有している
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記透明樹脂層は、厚さが10μm以上150μm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記透明樹脂層は、密度が0.90g/cm以上0.96g/cm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記着色樹脂層は、ポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記着色樹脂層は、厚さが30μm以上70μm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記着色樹脂層は、密度が0.90g/cm以上1.40g/cm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項8】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の化粧シートと
を備えることを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル製の化粧シートに代わる化粧シートとして、例えば、下記特許文献1に記載されているように、オレフィン系樹脂を使用した化粧シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-188941号公報
【特許文献2】特開2016-168830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境問題への取り組みとして、化粧シートを石油由来の材料から植物由来の材料へ切り替えることが要求されている。しかしながら、化粧シートとして利用可能な植物由来の材料である従来のバイオマスポリエチレンを用いたときよりも、表面硬度や加工性をさらに向上させることが強く求められている。
【0005】
このようなことから、本発明は、植物由来の材料を用いても、表面硬度及び加工性をさらに向上させることができる化粧シート及び化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための、本発明に係る化粧シートは、着色された熱可塑性樹脂からなる着色樹脂層と、接着性を有する接着層と、透明な熱可塑性樹脂からなる透明樹脂層とをこの順に備え、前記透明樹脂層が、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含有する樹脂組成物で形成されると共に、ナノサイズ化処理された造核剤を含有していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記透明樹脂層が、前記透明樹脂層全体の質量に対し、バイオマス由来の前記ポリプロピレンを5質量%以上99質量%以下の範囲内で含有していると好ましい。
【0008】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記透明樹脂層の厚さが10μm以上150μm以下の範囲内であると好ましい。
【0009】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記透明樹脂層の密度が0.90g/cm以上0.96g/cm以下の範囲内であると好ましい。
【0010】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記着色樹脂層が、ポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成されていると好ましい。
【0011】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記着色樹脂層の厚さが30μm以上70μm以下の範囲内であると好ましい。
【0012】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記着色樹脂層の密度が0.90g/cm以上1.40g/cm以下の範囲内であると好ましい。
【0013】
他方、前述した課題を解決するための、本発明に係る化粧材は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された上述の化粧シートとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る化粧シート及び化粧材によれば、透明樹脂層が、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含有する樹脂組成物で形成されると共に、ナノサイズ化処理された造核剤を含有しているので、植物由来の材料を用いても、表面硬度及び加工性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る化粧シートの主な実施形態の概略構成を表す断面図である。
図2】本発明に係る化粧材の主な実施形態の概略構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る化粧シート及び化粧材の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではなく、各実施形態で説明した各種の技術的事項を必要に応じて置き換えたり組み合わせたりすることが適宜可能なものである。
【0017】
[化粧シート/主な実施形態]
本発明に係る化粧シートの主な実施形態を図1に基づいて説明する。
【0018】
〈化粧シート10〉
図1に示すように、化粧シート10は、着色された熱可塑性樹脂からなる着色樹脂層11上に、絵柄を印刷された絵柄層12が設けられている。絵柄層12上には、接着性を有する透明な接着層13が設けられている。接着層13上には、透明な熱可塑性樹脂からなる透明樹脂層14が設けられている。透明樹脂層14上には、表面を保護する透明な表面保護層15が設けられている。表面保護層15上には、凹凸形状をなすエンボス部10aが形成されている。
【0019】
〈着色樹脂層11〉
着色樹脂層11は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン等を含む着色した熱可塑性樹脂からなっている。着色樹脂層11は、厚さが30μm以上70μm以下の範囲内であると好ましく、40μm以上65μm以下であるとより好ましく、50μm以上60μm以下であるとさらに好ましい。着色樹脂層11は、厚さが30μm以上であると、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して良好な施工仕上がりにすることが容易にできる。他方、着色基材層11は、厚さが70μm以下であると、必要以上の厚さにすることがなく、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0020】
また、着色樹脂層11は、密度が0.90g/cm以上1.40g/cm以下であると好ましく、0.90g/cm以上1.10g/cm以下であるとより好ましい。着色樹脂層11は、密度が0.90g/cm以上であると、剛性や隠蔽性を高めることができる。他方、着色樹脂層11は、密度が1.40g/cm以下であると、加工適性を高め、製造コストを抑えることができる。なお、この密度は、日本工業規格「JIS K6760-1995」で規定されているアニーリングを行った後、日本工業規格「JIS K7112-1980」に規定されたA法に則って測定される値である。
【0021】
着色樹脂層11は、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤、艶調整剤等の各種添加剤を1種以上含有することも可能である。
【0022】
このような着色樹脂層11は、その製造方法が特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。本実施形態においては、カレンダ成形で形成することが好ましい。
【0023】
なお、着色樹脂層11は、バイオマス由来(植物由来)のポリオレフィンを含む着色された樹脂組成物からなるものや、化石燃料由来のポリオレフィンを含む着色された樹脂組成物からなるものを適用することができる。
【0024】
〈絵柄層12〉
絵柄層12は、着色樹脂層11の一方の面(図1中、上方の面)に積層され、意匠性を付与する絵柄を付加するためのものである。絵柄としては、任意の絵柄を用いることが可能であり、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地、又はそれらの組み合わせ等を適用することが可能である。
【0025】
絵柄層12は、例えば、染料や顔料等の着色剤を適切なバインダ樹脂と共に希釈溶媒中に溶解又は分散させた印刷インキや塗料等を用いて形成される。上記バインダ樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿、又はそれらの混合物等を適用することが可能であるが、これらに限定されるものではない。絵柄層3を形成する印刷インキ又は塗料等は、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法又はロールコート法等の各種塗工法等を用いて塗布される。
【0026】
絵柄層12は、厚さが、1μm以上10μm以下の範囲内であると好ましい。絵柄層12は、厚さが1μm以上であると、印刷を明瞭にすることができる。他方、絵柄層12は、厚さが10μm以下であると、印刷作業性を向上させることができると共に、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0027】
絵柄層12は、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤、硬化遅延剤等の各種機能を付与する機能性添加剤を含有することも可能である。
【0028】
なお、化粧シート1の隠蔽性を向上するために、着色樹脂層11と絵柄層12との間に、隠蔽層を設けることも可能である。この隠蔽層は、例えば、二酸化チタンや酸化鉄等の不透明顔料を多く含む不透明な印刷インキや塗料を使用して形成することができる。また、絵柄層12は、着色樹脂層11の着色で代用することが可能な場合には、省略することも可能である。
【0029】
〈接着層13〉
接着層13は、絵柄層12の一方の面(図1中、上方の面)に積層され、絵柄層12と透明樹脂層14との間を接着するためのものである。接着層13としては、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル、ポリオレフィン系等の樹脂製の透明な接着剤を適用することができる。特に、透明樹脂層14との接着性の観点からすると、ポリオレフィン系の樹脂製であると非常に好ましい。
【0030】
〈透明樹脂層14〉
透明樹脂層14は、接着層13の一方の面(図1中、上方の面)に積層され、化粧シート10の表面側(外面側)から絵柄層12の絵柄を透視することが可能な程度の透明性(無色透明、有色透明、半透明)を有している。透明樹脂層14は、バイオマス由来(植物由来)のポリプロピレンを含むモノマが重合したバイオマス由来(植物由来)のポリプロピレンを含有する透明な樹脂組成物で形成されると共に、ナノサイズ化処理された造核剤を含有している。
【0031】
《バイオマス由来のポリプロピレン》
バイオマス由来のポリプロピレンは、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマが重合したものである。バイオマス由来のプロピレンは、特に限定されず、従来公知の方法によりバイオマスから製造されたプロピレンが適用される。バイオマス由来のプロピレンをモノマとして原料に使用することにより、これが重合されたポリプロピレンは、バイオマス由来となり、理論上100%バイオマス由来の成分により製造されたこととなる。
【0032】
ポリプロピレン中の放射性炭素(C14)を測定することにより、ポリプロピレン中のバイオマス由来の炭素の含有量を求めて、バイオマス由来のプロピレン濃度(以下「バイオマス度」ともいう。)を算出することが可能である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれていることから、大気中の二酸化炭素を取り込んで成長する植物(例えば、トウモロコシ等)中のC14含有量も105.5pMC程度となっている。他方、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことが知られている。
【0033】
そのため、ポリプロピレン中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を求めることにより、バイオマス由来のプロピレン濃度を算出することができる。なお、ポリプロピレン中のC14の含有量(pMC)をPC14としたとき、バイオマス由来の炭素の含有量Pbio(%)は、下記式(1)に基づいて算出することができる。
【0034】
Pbio=(PC14/105.5)×100 (1)
【0035】
ポリプロピレンの原料として、すべてバイオマス由来のプロピレンを使用すると、バイオマス由来のプロピレン濃度は理論上100%となり、バイオマス由来のポリプロピレンのバイオマス度は100となる。他方、ポリプロピレンの原料として、すべて化石燃料由来のプロピレンを使用すると、バイオマス由来のプロピレン濃度は0%となり、化石燃料由来のポリプロピレンのバイオマス度は0となる。
【0036】
バイオマス由来のプロピレンを含むモノマの重合方法は、特に限定されることはなく、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて、適宜調節される。重合装置についても特に限定されることはなく、従来公知の装置を使用することができる。以下、プロピレンを含むモノマの重合方法の一例を説明する。
【0037】
プロピレン重合体の重合方法は、目的とするポリプロピレンの種類、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等の違いにより、適宜選択することができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒等のマルチサイト触媒や、メタロセン系触媒等のシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリ重合、溶液重合、高圧イオン重合等の各種方法により、1段または2段以上の多段で行うことにより、製造することができる。
【0038】
なお、バイオマス由来のポリプロピレンとして、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンをそれぞれ単独で使用したり、これらを二種以上混合して使用したりすることも可能である。
【0039】
《バイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物》
バイオマス由来のポリプロピレンを含む樹脂組成物は、バイオマス由来のプロピレンを樹脂組成物全体に対して5質量%以上、好ましくは5質量%以上99質量%以下、より好ましくは25質量%以上75質量%以下、最も好ましくは40質量%以上75質量%以下で含有するものである。樹脂組成物中のバイオマス由来のプロピレンの濃度が5質量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。
【0040】
上記樹脂組成物は、異なるバイオマス度のポリプロピレンを2種以上含有することも可能であり、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のプロピレンの濃度が、上記範囲内であると好ましい。言い換えると、上記樹脂組成物は、化石燃料由来のプロピレンを含有することも可能である。つまり、上記樹脂組成物は、バイオマス由来のポリプロピレンと、化石燃料由来のポリプロピレンとの混合物とすることも可能である。混合方法としては、特に限定されることはなく、例えば、ドライブレンド法やメルトブレンド法等のような従来公知の方法で混合することが可能である。
【0041】
上記樹脂組成物は、好ましくは5質量%以上99質量%以下、より好ましくは25質量%以上75質量%以下のバイオマス由来のポリプロピレンと、好ましくは1質量%以上95質量%以下、より好ましくは25質量%以上75質量%以下の化石燃料由来のポリプロピレンとを含むものである。このようなバイオマス由来のポリプロピレンと化石燃料由来のポリプロピレンとの混合物の樹脂組成物のとき、樹脂組成物全体として、バイオマス由来のプロピレンの濃度が上記範囲内であると好ましい。言い換えると、透明樹脂層14全体のバイオマス度が10%以上90%以下の範囲内であると好ましい。バイオマス由来のポリプロピレンの含有量が5質量%以上であると、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができ、カーボンニュートラルな化粧シートを実現できる。他方、バイオマス由来のポリプロピレンの含有量が99質量%以下であると、造核剤等の添加剤の調整が可能となる。
【0042】
《ナノサイズ化処理された造核剤》
透明樹脂層14は、ナノサイズ化処理された造核剤をさらに含有している。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜で包含されてベシクル化された造核剤ベシクルの状態で上記樹脂組成物に含有される。また、透明樹脂層14を構成する樹脂組成物中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていることも可能である。透明樹脂層14は、造核剤を含むことにより、結晶化度を向上させて、化粧シート10の表面硬度や加工性等を向上させることができる。
【0043】
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
【0044】
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。
【0045】
そのため、結晶性樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂組成物とすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂組成物を実現することができる。
【0046】
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が二次凝集することで粒径が大きくなる。一方、造核剤ベシクルを添加する場合、樹脂中における分散性が向上するため、造核剤を単純添加した場合と比較して添加した造核剤量に対しする結晶核の数が大幅に増加する。このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することができる。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
【0047】
透明樹脂層14における造核剤の添加量は、例えば、樹脂組成物100質量部に対して好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内である。造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂組成物への造核剤の添加量は、造核剤ベシクル中の造核剤に換算した添加量である。
【0048】
造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、樹脂組成物の結晶化度が十分に向上せず、透明樹脂層14の耐傷性等を十分に向上し得ないおそれがある。また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のため樹脂組成物の球晶成長が逆に阻害され、結果的に樹脂組成物の結晶化度が十分に向上せず、透明樹脂層14の表面硬度や加工性等を十分に向上し得ないおそれがある。
【0049】
造核剤をナノサイズ化処理する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。
【0050】
固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
【0051】
造核剤をナノサイズ化処理する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味する。臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0052】
超臨界逆相蒸発法による具体的なナノサイズ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
【0053】
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法等によって調製される。造核剤ベシクルは、その中でも特に超臨界逆相蒸発法を用いて調整されることが好ましい。
【0054】
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。また、その外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
【0055】
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質等が挙げられる。
【0056】
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類又はトリアシルグリセロールとの混合物等の分散剤が挙げられる。
【0057】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマ、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0058】
コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
【0059】
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにすることも可能である。造核剤ベシクルは、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームであると好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、透明樹脂層14の樹脂組成物とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
【0060】
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いることも可能である。
【0061】
本実施形態においては、透明樹脂層14を形成する際に、樹脂組成物に対してベシクルに内包された造核剤を添加して樹脂組成物を結晶化させるようにしている。造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂組成物中、すなわち、透明樹脂層14中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果を奏する。
【0062】
ところで、ベシクルに内包された造核剤を、完成された化粧シート10の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。
【0063】
ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっており、作製された化粧シート10の前駆体である積層体の状態においても透明樹脂層14に高分散されている。しかしながら、化粧シート10の作製工程において、通常、積層体は圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施され、このような処理によって造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕したり、化学反応を生じたりする場合がある。
【0064】
このため、化粧シート10の処理工程によって、完成後の化粧シート10における造核剤の外膜が破砕したり、化学反応を生じたりしている状態にバラつきがあり、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高い。そして、造核剤が外膜で包含されていない場合、造核剤の物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。
【0065】
このように、本発明では、従来に比して、化粧シート10に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート10の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
【0066】
また、上記樹脂組成物は、その特性が損なわれない範囲において、主成分であるポリプロピレン以外に、各種の添加剤を含有することも可能である。具体的には、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料等を挙げることができる。これら添加剤は、樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下の範囲内で混合される。さらに、透明樹脂層14は、必要に応じて、例えば、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤、艶調整剤等の各種の添加剤を含有することも可能である。
【0067】
透明樹脂層14は、その製造方法が特に限定されることはなく、従来公知の方法により製造することができる。本実施形態においては、押出成形で形成することが好ましい。
【0068】
透明樹脂層14は、厚さが10μm以上150μm以下の範囲内であると好ましく、50μm以上120μm以下であるとより好ましく、55μm以上100μm以下であるとさらに好ましい。透明樹脂層14は、厚さが10μm以上であると、良好なエンボス加工が容易にできると共に、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して良好な施工仕上がりにすることが容易にできる。他方、透明基材層14は、厚さが150μm以下であると、必要以上の厚さにすることがなく、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0069】
また、透明樹脂層14は、密度が0.90g/cm以上0.96g/cm以下であると好ましく、0.90g/cm以上0.91g/cm以下であるとより好ましい。透明樹脂層14は、密度が0.90g/cm以上であると、剛性を高めることができる。他方、透明樹脂層14は、密度が0.96g/cm以下であると、透明性や柔軟性、機械的強度を高めることができる。なお、この密度は、日本工業規格「JIS K6760-1995」で規定されているアニーリングを行った後、日本工業規格「JIS K7112-1980」に規定されたA法に則って測定される値である。
【0070】
なお、透明樹脂層14は、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含有する樹脂組成物で形成された透明な樹脂層であればよく、化石燃料由来のポリプロピレンを含有することも可能である。さらには、ポリプロピレンの原料となるプロピレンモノマは、すべてがバイオマス由来のプロピレンモノマでなくてもよく、一部が化石燃料由来のプロピレンモノマとすることも可能である。つまり、バイオマス由来のプロピレンやそのプロピレンを使用したポリプロピレンを含有する透明樹脂層14は、バイオマス度が100でなくてもよい。
【0071】
〈表面保護層15〉
表面保護層15は、透明樹脂層14の一方の面(図1中、上方の面)に積層され、耐候性、耐傷性、耐汚染性、意匠性等の機能を付与するためのものである。表面保護層15は、熱硬化樹脂、電離放射線硬化樹脂等を適用することができ、例えば、アクリル系樹脂組成物を利用して形成することができる。
【0072】
表面保護層15は、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤、艶調整剤等の各種添加剤を含有することが可能である。さらに、表面保護層15は、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤、抗ウイルス剤等の機能性添加剤を含有することも可能である。
【0073】
〈本実施形態の効果〉
本実施形態に係る化粧シート10によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0074】
(1)透明樹脂層14が、バイオマス由来のプロピレンを含むモノマが重合したバイオマス由来のポリプロピレンを含有する樹脂組成物で形成されると共に、ナノサイズ化処理された造核剤を含有している。そのため、環境適正の高い植物由来の材料であっても、表面硬度及び加工性をさらに向上させることができると共に、十分な透明度を有して高い意匠性を発現することができる。
【0075】
(2)透明樹脂層14が、透明樹脂層14全体の質量に対し、バイオマス由来のポリプロピレンを5質量%以上99質量%以下の範囲内で含んでいるので、環境適正をより高くすることができる。
【0076】
(3)透明樹脂層14が、厚さ10μm以上150μm以下の範囲内であるので、良好なエンボス加工が容易にできると共に、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して良好な施工仕上がりにすることが容易にできる。
【0077】
(4)透明樹脂層14が、密度0.90g/cm以上0.96g/cm以下の範囲内であるので、剛性を高めることができると共に、透明性や柔軟性、加工適性を高めることができる。
【0078】
(5)着色樹脂層11が、ポリオレフィンを含む樹脂組成物で形成されているので、十分な柔らかさを有する化粧シート10とすることができる。
【0079】
(6)着色樹脂層11が、厚さが30μm以上70μm以下の範囲内であるので、下地となる床材等の凹凸や段差等を吸収して良好な施工仕上がりにすることが容易にできる。
【0080】
(7)着色樹脂層11が、密度0.90g/cm以上1.40g/cm以下の範囲内であるので、剛性や隠蔽性を高めることができると共に、加工適性を高め、製造コストを抑えることができる。
【0081】
[化粧材/主な実施形態]
本発明に係る化粧材の主な実施形態を図2に基づいて説明する。ただし、前述した化粧シートの実施形態と同様な部分については、前述した化粧シートの実施形態と同様な符号を用いることにより、前述した化粧シートでの説明と重複する説明を省略する。
【0082】
〈化粧材200〉
図2に示すように、化粧材200は、板形状の基材201の一方の面(図2中、上方の面)に、下地層29を介して化粧シート20の着色樹脂層11が積層されている。
【0083】
〈化粧シート20〉
化粧シート20は、下地層29が着色樹脂層11の他方の面(図2中、下方の面)に積層されたものである。それ以外は、化粧シート10と同一である。
【0084】
〈下地層29〉
下地層29は、着色樹脂層11の他方の面(図2中、下方の面)に積層され、着色樹脂層11と基材101との密着性や耐食性を向上させるためのものである。下地層29は、例えば、ポリエステル系樹脂、有機添加剤、顔料等を用いて形成される。下地層29は、耐食性を向上させるために防錆顔料を含有することも可能である。下地層29は、厚さが、1μm以上10μm以下の範囲内であると好ましい。
【0085】
〈基材201〉
基材201は、例えば、木質ボード類、無機質ボード類、金属板等を利用して板形状をなし、一方の面(図2中、上側の面)に、化粧シート20が積層され、下地層29を介して接着されている。
【0086】
〈本実施形態の効果〉
このような本実施形態に係る化粧材200によれば、環境適正の高い植物由来の材料であっても、表面硬度及び加工性をさらに向上させることができると共に、十分な透明度を有して高い意匠性を発現することができる。
【0087】
[他の実施形態]
前述した実施形態では、基材201の一方の面に化粧シート20を積層した化粧材200の場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、基材201の一方の面及び他方の面の両面に化粧シート20をそれぞれ積層した化粧材とすることも可能である。
【実施例0088】
本発明に係る化粧シート及び化粧材の実施例等を具体的に説明するが、本発明は具体的に説明する以下の実施例等に限定されるものではない。
【0089】
[試験体及び比較体の作製]
〈試験体1〉
ポリエチレン(石油由来)樹脂組成物をカレンダ成型することにより、着色樹脂層(厚さ55μm、密度1.36g/cm)を得た。また、バイオマス由来のホモポリプロピレン樹脂と、ポリプロピレン(石油由来)樹脂とを90:10の質量比で混合し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤500ppm、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤2000ppm、ヒンダードアミン系光安定剤2000ppmを添加すると共に、固相法によってナノサイズ化処理を施した造核剤(2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム)1000ppmを添加する。これを溶融押出機で溶融混合してルーダーラミネートすることにより、高結晶性の透明樹脂層(厚さ70μm、密度0.91g/cm)を得た。
【0090】
そして、着色樹脂層の一方の面にコロナ放電処理を施すと共に、透明樹脂層の両面にコロナ放電処理を施す。次に、着色樹脂層の一方の面にウレタン系印刷インキを印刷して絵柄層(厚さ2μm)を形成する。続いて、ウレタン系接着剤及び無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂接着剤を塗布して接着層(厚さ10μm)を設けた後、透明樹脂層を積層し、さらに、アクリル系樹脂組成物を主成分とする表面保護層(厚さ6μm)を積層する。最後に、着色樹脂層の他方の面にコロナ放電処理を施して、ポリエステル系樹脂組成物からなる下地層(厚さ1~2μm)を積層することにより、化粧シート(厚さ135μm)を得た後、中密度繊維板(MDF)からなる基材(厚さ2.5mm)に下地層を介して接着することにより、化粧材の試験体1を作製した。
【0091】
〈試験体2〉
透明樹脂層のバイオマス由来のポリプロピレン樹脂と石油由来のポリプロピレン樹脂との質量比を5:95とした以外は、試験体1と同様にして作製することにより、化粧材の試験体2を得た。
【0092】
〈試験体3〉
透明樹脂層のバイオマス由来のポリプロピレン樹脂と石油由来のポリプロピレン樹脂との質量比を99:1とした以外は、試験体1と同様にして作製することにより、化粧材の試験体3を得た。
【0093】
〈試験体4〉
着色樹脂層の厚さを30μmとし、透明樹脂層の厚さを10μmとした以外は、試験体1と同様にして作製することにより、化粧材の試験体4(厚さ50μm)を得た。
【0094】
〈試験体5〉
着色樹脂層の厚さを70μmとし、透明樹脂層の厚さを150μmとした以外は、試験体1と同様にして作製することにより、化粧材の試験体5(厚さ235μm)を得た。
【0095】
〈試験体6〉
着色樹脂層の密度を0.90g/cmとし、透明樹脂層の密度を0.90g/cmとした以外は、試験体1と同様にして作製することにより、化粧材の試験体7を得た。
【0096】
〈試験体7〉
着色樹脂層の密度を1.40g/cmとし、透明樹脂層の密度を0.96g/cmとした以外は、試験体1と同様にして作製することにより、化粧材の試験体8を得た。
【0097】
〈試験体8〉
ポリプロピレン(石油由来)樹脂組成物をカレンダ成型することにより、着色樹脂層(厚さ60μm、密度1.05g/cm)を得た。それ以外は、試験体1と同様に作製することにより、化粧材の試験体9を得た。
【0098】
〈比較体1〉
ナノサイズ化処理を施した造核剤の添加を省略して透明樹脂層を作製する以外は、試験体1と同様に作製することにより、化粧材の比較体1を得た。
【0099】
〈比較体2〉
ナノサイズ化処理を施した造核剤の添加を省略して透明樹脂層を作製する以外は、試験体9と同様に作製することにより、化粧材の比較体2を得た。
【0100】
〈比較体3〉
バイオマス由来のホモポリプロピレン樹脂に代えて、ポリプロピレン(石油由来)樹脂を使用して透明樹脂層を作製する、すなわち、透明樹脂層のポリプロピレン樹脂を石油由来のみとした以外は、試験体1と同様に作製することにより、化粧材の比較体3を得た。
【0101】
[試験方法]
〈鉛筆硬度試験〉
試験体1~8及び比較体1~3に対して、日本工業規格「JIS K5600-5-4」に準拠して鉛筆硬度試験を行った。すなわち、鉛筆の硬度を順次高くする引っ掻き試験を行って、表面(表面保護層)に生じた損傷(抉れ)を目視確認することにより、評価を行った。その結果を下記表1に示す。
【0102】
なお、表1において、「○」は、硬度4B以上の鉛筆を用いたときに表面に損傷を生じた場合を示し、「△」は、硬度5Bの鉛筆を用いたときに表面に損傷を生じた場合を示し、「×」は、硬度6B以下の鉛筆を用いたときに表面に損傷を生じた場合を「×」示す。
【0103】
〈ホフマンスクラッチ試験〉
試験体1~8及び比較体1~3に対して、ホフマンスクラッチ試験を行った。具体的には、試験体1~8及び比較体1~3の表面(表面保護層)に対して、円柱形状(直径7mm)のスクラッチ刃(縁端部)を45度の角度で当接させるように試験機にセットし、スクラッチ刃に荷重を加えながらスクラッチ刃を移動させた後、表面の傷の有無を目視して、傷を生じた荷重(200~2000gの範囲を200gごと)を確認した。例えば、荷重600gで傷を生じた場合には、耐荷重を「400g」とした。その結果を下記表1に示す。
【0104】
〈加工性試験〉
試験体1~8及び比較体1~3に対して、Vカット曲げ加工性試験を行った。すなわち、試験体1~8及び比較体1~3にV字型の切り込みを加えて折り曲げ加工することにより、割れや白化等の有無を目視確認した。その結果を下記表1に示す。なお、表1中、「○」は、割れや白化等を生じなかった場合を示し、「△」は、目立たない程度の割れや白化等を生じてしまった場合を示し、「×」は、明確に割れや白化等を生じてしまった場合を示す。
【0105】
〈化石燃料依存性〉
試験体1~8及び比較体1~3において、使用した材料の化石燃料の依存性を確認した。その結果を下記表1に示す。なお、表1中、「◎」は、化石燃料の依存性が極めて低いものであることを示し、「○」は、化石燃料の依存性がとても低いものであることを示し、「△」は、化石燃料の依存性が低いものであることを示し、「×」は、化石燃料の依存性が高いものであることを示している。
【0106】
[試験結果]
試験体1~8及び比較体1~3の試験結果を下記表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1からわかるように、試験体1~8は、比較体1~3よりも優良な結果を得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る化粧シート及び化粧材は、植物由来の材料を用いても、表面硬度及び加工性をさらに向上させることができるので、建設業を始めとする各種産業において、極めて有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0110】
10 化粧シート
10a エンボス部
11 着色樹脂層
12 絵柄層
13 接着層
14 透明樹脂層
15 表面保護層
20 化粧シート
29 下地層
200 化粧材
201 基材
図1
図2