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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010469
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】屋根改修構造およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/40 20060101AFI20240117BHJP
   E04D 3/00 20060101ALI20240117BHJP
   E04B 7/00 20060101ALI20240117BHJP
   E04G 23/03 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
E04D3/40 U
E04D3/00 M
E04B7/00 B
E04G23/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111821
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000217365
【氏名又は名称】田島ルーフィング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧田 均
(72)【発明者】
【氏名】根元 央希
【テーマコード(参考)】
2E108
2E176
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS03
2E108AZ04
2E108BB01
2E108BN01
2E108CV03
2E108CV04
2E108FG01
2E108FG12
2E108GG09
2E108GG18
2E108GG20
2E176AA09
2E176AA23
2E176BB25
(57)【要約】
【課題】屋根改修構造において側壁内部の通気性能および排水性能を確保する。
【解決手段】既存屋根材10の上に設置される新設屋根材30と、新設屋根材30の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁14との取り合いにおいて既存壁水切板16の上に設置される通気部材30と、通気部材30を覆うように設置される新設壁水切板50とを備えており、通気部材30は、側壁14の下端部に開口する側壁通気層17に連通して配置されている。さらに、既存壁水切板16の上に設置され、新設壁水切板50を支持する支持部材40を備え、通気部材30と支持部材40とは、新設屋根材10の上縁部および側縁部の少なくとも一方に沿って配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存屋根材の上に設置される新設屋根材と、
前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて既存壁水切板の上に設置される通気部材と、
前記通気部材を覆うように設置される新設壁水切板とを備えており、
前記通気部材は、前記側壁の下端部に開口する側壁通気層に連通して配置されている
ことを特徴とする屋根改修構造。
【請求項2】
前記既存壁水切板の上に設置され、前記新設壁水切板を支持する支持部材をさらに備え、
前記通気部材と前記支持部材とは、前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根改修構造。
【請求項3】
前記通気部材および前記支持部材は、同形の断面矩形形状を呈し、
前記新設壁水切板は、前記既存屋根材が当接する前記側壁に沿って立ち上がる立上板部と、前記通気部材および前記支持部材の上面を覆う上面板部と、前記通気部材および前記支持部材の前記新設屋根材側の端面を覆う端面板部とを有し、
前記端面板部には、前記通気部材に繋がる通気孔が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の屋根改修構造。
【請求項4】
前記通気孔は、横長のスリット形状を呈しており、前記端面板部の下端から上方に間隔をあけて配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の屋根改修構造。
【請求項5】
前記通気部材および前記支持部材は、同形の断面矩形形状を呈し、
前記新設壁水切板は、前記既存屋根材が当接する前記側壁に沿って立ち上がる立上板部と、前記通気部材および前記支持部材の上面を覆う上面板部と、前記通気部材および前記支持部材の前記新設屋根材側の端面を覆う端面板部とを有し、
前記既存壁水切板の前記既存屋根材側の端面と、前記端面板部との間には所定間隔のクリアランスが形成され、前記クリアランスが前記通気部材に繋がる通気空間となる
ことを特徴とする請求項2に記載の屋根改修構造。
【請求項6】
前記通気部材は、前記新設壁水切板の荷重を支持する複数の支持部と、前記支持部の間に形成された通気空間とを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の屋根改修構造。
【請求項7】
前記既存壁水切板の表面に、防水性両面テープが敷設されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の屋根改修構造。
【請求項8】
既存屋根材の上に設置される新設屋根材と、
前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて前記既存屋根材の上に設置される通気部材と、
前記通気部材を覆うように設置される新設壁水切板とを備えており、
前記通気部材は、前記側壁の下端部に開口する側壁通気層に連通して配置されている
ことを特徴とする屋根改修構造。
【請求項9】
既存屋根材の上に新設屋根材を設置する新設屋根設置工程と、
前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁部との取り合いにおいて既存壁水切板の上に防水両面テープを敷設する両面テープ敷設工程と、
前記防水両面テープの上に、空気が通過可能な通気部材と、新設壁水切板を支持する支持部材とを設置する通気部材設置工程と、
前記通気部材および前記支持部材を覆うように前記新設壁水切板を設置し、前記新設壁水切板を前記支持部材および前記既存壁水切板にビス止め固定する新設壁水切板設置工程と、を備えている
ことを特徴とする屋根改修構造の構築方法。
【請求項10】
既存屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁部との取り合いにおいて既存壁水切板の先端部を切除する切除工程と、
前記既存壁水切板の下側の下地を取り除く取除工程と、
縁部を除いた前記既存屋根材の上に新設屋根材を設置する新設屋根設置工程と、
前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁部との取り合いにおいて縁部の前記既存屋根材の上に防水両面テープを敷設する両面テープ敷設工程と、
前記防水両面テープの上に、空気が通過可能な通気部材と、新設壁水切板を支持する支持部材とを設置する通気部材設置工程と、
前記通気部材および前記支持部材を覆うように前記新設壁水切板を設置し、前記新設壁水切板を前記支持部材にビス止め固定する新設壁水切板設置工程と、を備えている
ことを特徴とする屋根改修構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設屋根を改修して形成される屋根改修構造およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧スレート屋根を用いた既存屋根の改修工法としては、既存の化粧スレート屋根を残し、その上に新しい屋根を葺く「カバー工法」が知られている(例えば非特許文献1および特許文献1参照)。カバー工法では、既存の屋根材の上に粘着性の下葺材を敷設し、新設の屋根材を設置している。勾配屋根の水上や側部における外壁(側壁)との取り合い部分では、既存の壁水切板の上に下地板を新設し、この下地板を覆うように新たな壁水切板を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「鋼板製屋根構法標準 SSR2007」社団法人日本金属屋根協会、社団法人日本鋼構造協会、2008年1月、p308-316
【0004】
【特許文献1】特開2017-172156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の改修工法では、防水性能は確保されているものの、側壁の通気性能が確保されていない。新設の屋根構造において確保されていた側壁の通気性能が、改修後に失われるのは好ましくない。
【0006】
そこで、本発明は、側壁内部の通気性能および排水性能を確保できる屋根改修構造およびその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための第一の本発明は、既存屋根材の上に設置される新設屋根材と、前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて既存壁水切板の上に設置される通気部材と、前記通気部材を覆うように設置される新設壁水切板とを備えており、前記通気部材は、前記側壁の下端部に開口する側壁通気層に連通して配置されていることを特徴とする屋根改修構造である。
【0008】
本発明の屋根改修構造によれば、通気部材を通して側壁内部の通気性能を確保することができる。なお、本明細書中において「通気性能」とは、側壁内部の一定量の空気を外部に排出できること、および側壁内部と外部との空気の吸入・排出(吸排出)をできることを言う。また、通気部材を通して側壁内に浸入した水を排水する排水性能も確保できる。さらに、既存屋根材の上に新設屋根材を設置しているので、防水性能も確保できる。
【0009】
本発明の屋根改修構造においては、前記既存壁水切板の上に設置され、前記新設壁水切板を支持する支持部材をさらに備え、前記通気部材と前記支持部材とは、前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方に沿って配置されているものが好ましい。このような構成によれば、通気性能を確保しつつ、新設壁水切板を容易に固定することができる。
【0010】
本発明の屋根改修構造においては、前記通気部材および前記支持部材は、同形の断面矩形形状を呈し、前記新設壁水切板は、前記既存屋根材が当接する前記側壁に沿って立ち上がる立上板部と、前記通気部材および前記支持部材の上面を覆う上面板部と、前記通気部材および前記支持部材の前記新設屋根材側の端面を覆う端面板部とを有し、前記端面板部には、前記通気部材に繋がる通気孔が形成されているものが好ましい。このような構成によれば、通気部材を通過した空気を通気孔から外部に効率的に吸排出できるので、通気性能が高くなる。
【0011】
本発明の屋根改修構造においては、前記通気孔は、横長のスリット形状を呈しており、前記端面板部の下端から上方に間隔をあけて配置されているものが好ましい。このような構成によれば、雨水が通気孔から新設水切板の内部に浸入し難くなる。
【0012】
本発明の屋根改修構造においては、前記通気部材および前記支持部材は、同形の断面矩形形状を呈し、前記新設壁水切板は、前記既存屋根材が当接する前記側壁に沿って立ち上がる立上板部と、前記通気部材および前記支持部材の上面を覆う上面板部と、前記通気部材および前記支持部材の前記新設屋根材側の端面を覆う端面板部とを有し、前記既存壁水切板の前記既存屋根材側の端面と、前記端面板部との間には所定間隔のクリアランスが形成され、前記クリアランスが前記通気部材に繋がる通気空間となるものが好ましい。このような構成によれば、通気部材を通過した空気を通気空間から外部に効率的に排出できるので、通気性能が高くなる。
【0013】
本発明の屋根改修構造においては、前記通気部材は、前記新設壁水切板の荷重を支持する複数の支持部と、前記支持部の間に形成された通気空間とを備えているものが好ましい。このような構成によれば、新設壁水切板を容易に固定することができる。
【0014】
本発明の屋根改修構造においては、前記既存壁水切板の表面に、防水性両面テープが敷設されているものが好ましい。このような構成によれば、既存壁水切板の表面に通気部材と支持部材を容易に接着できるとともに、新設壁水切板を支持部材と既存壁水切板にビス止め固定する際に、防水性両面テープが既存壁水切板のビス穴に入り込むので、止水性を確保できる。
【0015】
前記課題を解決するための第二の本発明は、既存屋根材の上に設置される新設屋根材と、前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて前記既存屋根材の上に設置される通気部材と、前記通気部材を覆うように設置される新設壁水切板とを備えており、前記通気部材は、前記側壁の下端部に開口する側壁通気層に連通して配置されていることを特徴とする屋根改修構造である。
【0016】
本発明の屋根改修構造によれば、請求項1の屋根改修構造と同様に、通気部材を通して側壁内部の通気性能および排水性能を確保することができる。また、既存屋根材の上に新設屋根材を設置しているので、防水性能も確保できる。
【0017】
前記課題を解決するための第三の本発明は、既存屋根材の上に新設屋根材を設置する新設屋根設置工程と、前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁との取り合いにおいて既存壁水切板の上に防水両面テープを敷設する両面テープ敷設工程と、前記防水性両面テープの上に、空気が通過可能な通気部材と、新設壁水切板を支持する支持部材とを設置する通気部材設置工程と、前記通気部材および前記支持部材を覆うように前記新設壁水切板を設置し、前記新設壁水切板を前記支持部材および前記既存壁水切板にビス止め固定する新設壁水切板設置工程と、を備えていることを特徴とする屋根改修構造の構築方法である。
【0018】
本発明の屋根改修構造の構築方法によれば、通気部材を通して側壁内部の通気性能および排水性能を確保することができる。また、既存屋根材の上に新設屋根材を設置しているので、防水性能も確保できる。さらに、防水性両面テープで既存壁水切板の表面に通気部材を接着できるとともに、新設壁水切板を通気部材と既存壁水切板にビス止め固定する際に、防水性両面テープが既存壁水切板のビス穴に入り込むので、止水性を確保できる。
【0019】
前記課題を解決するための第四の本発明は、既存屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁部との取り合いにおいて既存壁水切板の先端部を切除する切除工程と、前記既存壁水切板の下側の下地を取り除く取除工程と、縁部を除いた前記既存屋根材の上に新設屋根材を設置する新設屋根設置工程と、前記新設屋根材の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁部との取り合いにおいて縁部の前記既存屋根材の上に防水両面テープを敷設する両面テープ敷設工程と、前記防水両面テープの上に、空気が通過可能な通気部材と、新設壁水切板を支持する支持部材とを設置する通気部材設置工程と、前記通気部材および前記支持部材を覆うように前記新設壁水切板を設置し、前記新設壁水切板を前記支持部材にビス止め固定する新設壁水切板設置工程と、を備えていることを特徴とする屋根改修構造の構築方法である。
【0020】
本発明の屋根改修構造の構築方法によれば、請求項9の屋根改修構造の構築方法と同様に、通気部材を通して側壁内部の通気性能および排水性能を確保することができる。また、既存屋根材の上に新設屋根材を設置しているので、防水性能も確保できる。さらに、防水性両面テープで既存屋根材の表面に通気部材を接着できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る屋根改修構造およびその構築方法によれば、側壁内部の通気性能および排水性能を確保することができる。さらに、通気性能に加えて側壁内部に浸入した水の排水性能も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造を示した一部破断斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造を桁方向から見た断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造を流れ方向から見た断面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の通気部材と支持部材を示した斜視図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の新設壁水切板を示した斜視図である。
図6】(a)は既存屋根材を示した断面図、(b)は本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の構築方法の新設屋根設置工程のうち改修粘着下葺材を敷設した状態を示した断面図である。
図7】(a)は本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の構築方法の新設屋根設置工程のうち新設屋根材を敷設した状態を示した断面図、(b)は両面テープ敷設工程を示した断面図である。
図8】(a)は本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の構築方法の通気部材設置を示した断面のうち支持部材を通過する断面の断面図、(b)は通気部材設置を示した断面のうち通気部材を通過する断面の断面図である。
図9】本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の構築方法の新設壁水切板設置工程のうち新設壁水切板を設置した状態を示した断面図である。
図10】本発明の第二実施形態に係る屋根改修構造を桁方向から見た断面図である。
図11】本発明の第二実施形態に係る屋根改修構造を流れ方向から見た断面図である。
図12】(a)は新設壁水切板の第一変形例を示した斜視図、(b)は断面図、(c)は新設壁水切板の第二変形例を示した斜視図である。
図13】変形例に係る通気部材を用いた屋根改修構造を桁方向から見た断面図である。
図14】(a)は本発明の第一実施形態に係る屋根改修構造の変形例の製造方法の切除工程を示した断面図、(b)は屋根改修構造の変形例を桁方向から見た断面図である。
図15】第二の変形例に係る通気部材を用いた屋根改修構造を桁方向から見た断面図である。
図16】第三の変形例に係る通気部材を用いた屋根改修構造を桁方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第一の実施形態に係る屋根改修構造およびその構築方法について、図面を参照しながら詳細を説明する。まず、屋根改修構造の構成を説明する。本実施形態に係る屋根改修構造は、既存屋根材を残した状態で新設屋根材を設置する改修構造である。図1乃至図3に示すように、屋根改修構造1は、既存屋根材10の上に設置される新設屋根材20と、通気部材30と、支持部材40と、新設壁水切板50と、取合水切板60とを備えている。
【0024】
既存屋根材10は、改修前に構築されている板材であって、垂木(図示せず)上に設置された野地板11の上に、下葺材12を介して複数枚敷設されている。既存屋根材10は、野地板11に釘を用いて固定されている。下葺材12は、側壁14の下地14aの表面まで延在し、下地14aに沿って所定高さ立ち上がっている。具体的には、下葺材12の立上り寸法は200mm程度であり、後記する既存壁水切板16の立上り部16aの上端より50mm程度高く立ち上がっている。既存屋根材10の水勾配方向の上縁部および側縁部において、側壁14との取り合い部分には、笠木15が敷設され、笠木15上に既存壁水切板16が設置されている。既存壁水切板16の上端の立上り部16aは、側壁14の表面板材14bの下地縦材14cの内側に配置されている。下地縦材14cは、所定間隔をあけて表面板材14bの裏面側に配設されている。隣り合う下地縦材14cの間は、側壁14の内部で上下方向に広がる側壁通気層17(図1参照)となっている。側壁通気層17は、側壁14の下端部で、下方に向かって開口している。
【0025】
新設屋根材20は、撤去されず残置した既存屋根材10の上に新設される板材である。新設屋根材20は、既存屋根材10の上に、改修粘着下葺材21を介して複数枚敷設されている。改修粘着下葺材21は、下葺材の裏面に粘着層と剥離紙を備えて構成されており、施工時に剥離紙を剥がして既設屋根材10に貼りつけられる。改修粘着下葺材21は、既存屋根材10の表面から既存壁水切板16の表面に渡って敷設されている。新設屋根材20は、改修粘着下葺材21にて既存屋根材10の上に接着されるとともに、既存屋根材10に釘を用いて固定されている。なお、新設屋根材20は、粘着性の改修粘着下葺材21を用いず、粘着層を有しない下葺材を介して敷設してもよい。新設屋根材20の水勾配方向の上縁部(以下、「上縁部」という場合がある)および側縁部は、既存壁水切板16の横板部16bの先端部に連続する縦板部16cの近傍まで延在している。新設屋根材20の上縁部および側縁部の表面には、シーリング材22が敷設されている。シーリング材22は、新設屋根材20の上縁部および側縁部と、既存壁水切板16の縦板部16cとを覆う不定形のシール材であって、縦板部16cの長手方向に沿って設けられている。シーリング材22は、既存壁水切板16の縦板部16cと新設屋根材20との隙間を埋めるように設けられている。
【0026】
通気部材30は、側壁14の内部の空気を外部に通気させる部材である。通気部材30は、樹脂製の三次元網目構造の板状部材にて構成されており、中空部が連続して上下前後左右に通気可能となっている。通気部材30は、例えば、可撓性を備えており、ロール状に保管された状態から展開されて敷設される。通気部材30は、新設屋根材20の水勾配方向の上縁部(図2参照)および側縁部(図3参照)と、側壁14との取り合いにおいて、既存壁水切板16の上に設置されている。通気部材30は、既存壁水切板16の長手方向に延在する長尺の直方体形状を呈しており(図4参照)、既存壁水切板16の長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数敷設されている。通気部材30は、既存壁水切板16の横板部16bの先端部寄りの部分であって、側壁14の表面板材14bよりも外側に突出している部分の上面に敷設されており、側壁14の下端部に開口する側壁通気層17に連通して配置されている。
【0027】
支持部材40は、新設壁水切板50を支持する部材であって、ブロック状の木材にて構成されている。図4にも示すように、支持部材40の断面形状は、通気部材30の断面形状と同等であり、間隔をあけて配置された通気部材30,30の間に配置されている。つまり、通気部材30と支持部材40とは、新設屋根材20の上縁部および側縁部に沿って設けられた新設壁水切板50の上に交互に配置されている。なお、通気部材30と支持部材40との配置は、一個ずつ交互に限定されるものではない。同じ部材を複数個ずつ並べて配置してもよいし、一方の部材を複数個並べ、その間に他方の部材を単数並べてもよい。また、本実施形態では、支持部材40の断面形状は、通気部材30の断面形状と同等であるが、これに限定されるものではなく、支持部材40の断面形状と通気部材30の断面形状とが異なった形状であってもよい。例えば、通気部材30の断面形状を支持部材40の断面形状よりも小さくしてもよい。通気部材30と支持部材40とは、既存壁水切板16の横板部16bの上に敷設された防水性両面テープ31を介して既存壁水切板16に仮固定されている。新設屋根材20の側縁部に沿って設けられた新設壁水切板50に設けられる支持部材40は、水勾配の上側となる側面41が、側壁14から離れるに連れて水勾配の下流側になるように傾斜していることが好ましい(図4参照)。これによって、通気部材30に流れ込んだ水が側壁14側に流れるのを抑制している。なお、水勾配の上側となる支持部材40の側面41は傾斜していないものであってもよい。
【0028】
新設壁水切板50は、図1乃至図3に示すように、既存壁水切板16の上方で、通気部材30および支持部材40を覆う水切材であって、側壁14の表面を流れた水を新設屋根材20上に流す。図5にも示すように、新設壁水切板50は、金属製の板材を折曲げ加工して形成されており、立上板部51と上面板部52と端面板部53とを有している。
【0029】
立上板部51は、新設壁水切板50を側壁14に固定する部位であって、側壁14の表面板材14bに沿って立ち上がって、表面板材14bの下端部に当接して固定されている。立上板部51の上端部には、側壁14から離間する方向に突出するリップ部54が形成されている。なお、新設壁水切板50は、立上板部51の上端部にリップ部54が無い形状であってもよい。
【0030】
上面板部52は、通気部材30および支持部材40の上面を覆う部位である。上面板部52は、立上板部51の下端部に連続して形成され、立上板部51に対して新設屋根材20側に向かって屈曲している。新設屋根材20の上縁部に設けられた新設壁水切板50の上面板部52は、立上板部51に対して鈍角で屈曲し、先端側が斜め下方に傾斜している(図2参照)。新設屋根材20の側縁部に設けられた新設壁水切板50の上面板部52は、立上板部51に対して直角で屈曲している(図3参照)。上面板部52は、支持部材40を覆う部分から支持部材40および既存壁水切板16に向けてビス止めされて固定されている。このとき、ビスの先端部が既存壁水切板16の横板部16bを貫通するが、横板部16bの表面に防水性両面テープ31が敷設されていることで、横板部16bに形成されたビス孔とビスとの隙間が防水性両面テープ31で塞がれて、防水性を確保することができる。
【0031】
端面板部53は、通気部材30および支持部材40の新設屋根材20側の端面を覆う部位である。端面板部53は、上面板部52の先端部に連続して形成され、下方に向かって直角に屈曲している。端面板部53は、通気部材30および支持部材40の端面に当接または近接している。端面板部53には、通気孔55が形成されている。通気孔55は、側壁14の側壁通気層17の空気を外部に通気させるための孔であって、通気部材30に対向して繋がるように配置されている。通気孔55は、側壁14内に浸入した水を排水する機能も備えている。通気孔55は、横長のスリット形状を呈しており、新設壁水切板50の長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数形成されている。通気孔55は、端面板部53の下端部に形成されており、端面板部53の下端から上方に一定間隔の間隔(通気孔55の高さ寸法と同等の間隔)をあけて配置されている。端面板部53の下端部には、シーリング材22を覆うスカート部56が形成されている。スカート部56は、端面板部53の下端部に連続して形成され、端面板部53に対して鈍角で屈曲し、先端側が斜め下方に傾斜している。スカート部56の先端部は、新設屋根材20の表面に当接または近接している。スカート部56とその内側のシーリング材22によって、雨水等が通気部材30や支持部材40側に逆流するのを抑制している。また、通気孔55が端面板部53の下端から一定間隔の高さに形成したことで、下流側から吹き込んだ雨水等の浸入を阻止するとともに、剛性の低下を抑制している。
【0032】
取合水切板60は、新設壁水切板50の上端部を覆う水切りであって、新設壁水切板50の上方の側壁14の表面板材14bに取り付けられている。取合水切板60は、新設壁水切板50の上端部に水が流れるのを抑制する部材である。取合水切板60は、当接板部61と張出板部62と垂下板部63とを備えている。当接板部61は、取合水切板60を側壁14に固定する部位であって、新設壁水切板50の上方で側壁14の表面板材14bに沿って立ち上がって、表面板材14bに当接して固定されている。張出板部62は、新設壁水切板50の立上板部51の上端部を上方から覆う部位である。張出板部62は、当接板部61の下端部に連続して形成され、側壁14から離間する方向に屈曲して張り出している。垂下板部63は、新設壁水切板50の立上板部51の上端部を側方から覆う部位である。垂下板部63は、張出板部62の先端部に連続して形成され、下方に向かって直角に屈曲している。垂下板部63の下端部は、立上板部51の上端より低い位置に配置されている。
【0033】
次に、本実施形態に係る屋根改修構造1の構築方法を図6乃至図9を参照しながら説明する。かかる屋根改修構造1の構築方法は、新設屋根設置工程と、両面テープ敷設工程と、通気部材設置工程と、新設壁水切板設置工程と、取合水切板設置工程とを備えている。
【0034】
新設屋根設置工程は、既存屋根材10の上に新設屋根材20を設置する工程である。既存屋根材10は、図6の(a)に示すように、野地板11の上に、下葺材12を介して敷設されている。既存屋根材10と側壁14との取り合い部分には、笠木15が敷設され、笠木15上に既存壁水切板16が設置されている。新設屋根材20を設置するには、まず、図6の(b)に示すように、既存屋根材10の上に改修粘着下葺材21を敷設する。改修粘着下葺材21の先端部は、既存壁水切板16の縦板部16cに沿って立ち上がり、横板部16bの上面まで延在している。その後、図7の(a)に示すように、改修粘着下葺材21の上に新設屋根材20を敷設し、新設屋根材20の端部にシーリング材22を塗布する。シーリング材22は、新設屋根材20の端縁部と、既存壁水切板16の縦板部16cとの隙間を覆うように塗布する。
【0035】
両面テープ敷設工程は、図7の(b)に示すように、新設屋根材20の上縁部および側縁部(図7では上縁部を示す)と、側壁14との取り合いにおいて、既存壁水切板16の上に防水性両面テープ31を敷設する工程である。防水性両面テープ31は、通気部材30および支持部材40を既存壁水切板16に接着するためのものであって、既存壁水切板16の横板部16bの上面に貼り付ける。防水性両面テープ31の新設屋根材20側の先端部は、横板部16bに敷設された改修粘着下葺材21の表面に貼り付けられ、横板部16bの先端まで延在している。
【0036】
通気部材設置工程は、図8に示すように、防水性両面テープ31の上に、通気部材30と支持部材40とを設置する工程である。通気部材設置工程では、交互に接続され所定長さで一体化された通気部材30(図8の(b)参照)と支持部材40(図8の(a)参照)とを、防水性両面テープ31のうち、側壁14より外側となる横板部16bの先端部よりに設置する。通気部材30と支持部材40は、同等の断面形状であるので、図8の断面図では同じ位置に設置される。新設屋根材20の上縁部と側縁部との取り合い部分では、角部に支持部材40を配置し、支持部材40から通気部材30がL字状に延在するように配置する(図4参照)。
【0037】
新設壁水切板設置工程は、図9に示すように、通気部材30および支持部材40を覆うように新設壁水切板50を設置し、新設壁水切板を支持部材40と側壁14に固定する工程である。新設壁水切板設置工程では、新設壁水切板50の立上板部51を側壁14の表面板材14bに当接して接着するとともに、上面板部52を支持部材40に載置してビス止めする。側壁14とリップ部54とで構成される入隅部には、シール材を設ける。ビスの先端部は、支持部材40と既存壁水切板16の横板部16bを貫通する。横板部16bに形成されたビス孔とビスとの隙間は防水性両面テープ31で塞がれる。新設壁水切板50の端面板部53は、通気部材30および支持部材40の新設屋根材20側の端面に近接して覆う。端面板部53には通気孔55が形成されているので、側壁14の側壁通気層17は、通気部材30と通気孔55を介して外気に繋がるので、側壁14内と外部との通気性を確保できる。
【0038】
取合水切板設置工程は、新設壁水切板50の上方に取合水切板60を設置する工程である。取合水切板設置工程では、図2に示すように、新設壁水切板50の上方の側壁14の表面板材14bに取合水切板60の当接板部61を接着する。当接板部61の上端部の接着面にはシール材を敷設しておく。これによって、取合水切板60の張出板部62と垂下板部63とが新設壁水切板50の上端部を覆って、新設壁水切板50の上端部に水が流れるのが抑制される。取合水切板60を設置すると、屋根改修構造1の構築が完了する。
【0039】
本実施形態の屋根改修構造1およびその構築方法によれば、新設壁水切板50の下部に通気部材30を設けているので、側壁14の内部と外部との通気性能を確保することができる(側壁14内の一定量の空気を排水できるとともに、側壁14の内部と外部とで空気の吸入および排出が行える)。また、新設壁水切板50の端面板部53に通気孔55が形成されていることによって、通気部材30を外気につなげることができるので、側壁14内の空気を通気部材30と通気孔55から外部に効率的に排出できるとともに、外部の空気を内部に吸入することができる。したがって、通気性能をより一層高めることができる。さらに、通気部材30と支持部材40とが交互に配置されているので、新設壁水切板50を安定した状態でビス止めすることができる。また、本実施形態の屋根改修構造1によれば、通気部材30を通して側壁14の内部に浸入した水を通気孔55から外部に排水できる。つまり、本実施形態の屋根改修構造1によれば、通気性能に加えて排水性能も確保することができる。
【0040】
また、既存屋根材10を残置し、その上に新設屋根材20および新設壁水切板50を設置しているので、防水構造が二重になり、防水性能も高めることができる。さらに、既存壁水切板16の表面に、防水性両面テープ31が敷設されているので、既存壁水切板16の表面に通気部材30と支持部材40を容易に接着できるとともに、新設壁水切板50を支持部材40と既存壁水切板16にビス止め固定する際に、防水性両面テープ31が既存壁水切板16のビス穴に入り込むので、止水性を確保できる。
【0041】
次に、図10および図11を参照しながら、第二の実施形態に係る屋根改修構造101の構成を説明する。第一実施形態に係る屋根改修構造1は、新設壁水切板50の端面板部53に通気孔55が形成されているのに対して、第二実施形態に係る屋根改修構造101は、新設壁水切板150の端面板部153に通気孔は形成されていない。
【0042】
図10および図11に示すように、第二実施形態の新設壁水切板150は、上面板部152が幅広く形成されており、その先端部152aが通気部材30および支持部材40(図10,11では通気部材30を図示している)の端面よりも新設屋根材20側に所定長さ延出している。これによって、既存壁水切板16の既存屋根材10側の端面と、端面板部153との間に、所定間隔のクリアランスが形成され、このクリアランスが通気部材30に繋がる通気空間155となる。スカート部156は、新設屋根材20と所定の間隔をあけて、新設屋根材20と平行に配置されている。スカート部156と新設屋根材20との間の隙間によって、通気空間155が外気と繋がる。なお、その他の通気部材30や支持部材40の構成は第一の実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0043】
前記構成の屋根改修構造101によれば、新設壁水切板50に通気孔が無くても、側壁14内の空気を通気部材30と通気空間155から外部に効率的に排出できるとともに、外部の空気を内部に吸入することができる。さらに側壁14の内部に浸入した水を通気空間155から外部に排水できる。つまり、屋根改修構造101によれば、通気性能および排水性能を確保できる。さらに、新設壁水切板150に通気孔が無いので、新設壁水切板50の内側に雨水等が浸入し難く、防水性能を高めることができる。
【0044】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記第一実施形態では、新設壁水切板50の通気孔55が横長のスリット形状であるが、通気孔の形状はこれに限定されるものではない。例えば、縦長のスリット形状であってもよいし、図12に示すような他の形状であってもよい。図12の(a)および(b)に示す新設壁水切板50aの通気孔55aは、端面板部53の一部を押し込んで形成され、上面板部52の下方に入り込んだ変形板部57を備えている。変形板部57は断面コ字状を呈している。変形板部57の上下の縁部は、端面板部53から切断されており、その切断部の隙間が通気路となっている。このような構成の通気孔55aによれば、通気性能を確保できるとともに、変形板部57が吹き込んだ雨水等を堰き止めるので、新設壁水切板50の内部へ雨水等が浸入し難くなる。一方、図12の(c)に示す新設壁水切板50bの通気孔55bは、円形状を呈しており、新設壁水切板50bの長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数形成されている。
【0045】
また、前記実施形態では、通気部材30と支持部材40が別々に構成されていたがこれに限定されるものではない。例えば、通気部材が新設壁水切板50の荷重を支持可能な構成としてもよい。図13に示すように、変形例に係る通気部材35は、通気性能を保持しつつ新設壁水切板50を支持可能な強度を備えている。通気部材35は、樹脂にて構成されており、支持部36と通気空間37と板状部38とを備えている。支持部36は、新設壁水切板50の荷重を支持する部位であって、柱状に立設されている。支持部36は、上下の板状部38,38に掛け渡されており、横方向に間隔をあけて複数形成されている。通気空間37は、側壁14の内部の空気を外部に流すための空間であって、隣り合う支持部36の間の隙間にて構成されている。下側の板状部38は、既存壁水切板16の横板部16bの上面に貼り付けられた防水性両面テープ31の上に設置されている。上側の板状部38は、その上に新設壁水切板50が設置される。このような構成によれば、通気性能および排水性能を確保しつつ、新設壁水切板50を容易に固定することができる。
【0046】
また、前記実施形態では、通気部材30と支持部材40が既設壁水切板16の上に載置されているが、これに限定されるものではない。例えば、図14の(b)に示すように、既設壁水切板16の横板部16bおよび縦板部16cと、横板部16bの下方の笠木15を除去した部分の既存屋根材10(側壁14との取り合いにおける既存屋根材10の側縁部または上縁部)の上に、通気部材と支持部材40aを設置してもよい(図14では「支持部材40a」を図示している)。既設壁水切板16の横板部16bは先端部が除去され、基端部は残置されている。この場合、通気部材と支持部材40aは高さ寸法が、前記実施形態よりも新設屋根材20の厚さ分大きくなっている。新設壁水切板50は、前記実施形態よりも下方に配置されている。このような構成によっても、前記実施形態と同様の作用効果を得られる。
【0047】
以下に、変形例に係る前記構成の屋根改修構造の構築方法を説明する。かかる構築方法は、切除工程と、取除工程と、新設屋根設置工程と、両面テープ敷設工程と、通気部材設置工程と、新設壁水切板設置工程とを備えている。本構築方法では、第一の実施形態の構築方法に、切除工程と取除工程とが追加されている。
【0048】
図14の(a)に示すように、切除工程は、既存屋根材10の上縁部および側縁部の少なくとも一方と、側壁14との取り合いにおいて既存壁水切板16の先端部を切除する工程である。切除工程では、既設壁水切板16の横板部16bの先端部、縦板部16cおよびその先の傾斜部を切除する。横板部16b、後の工程で設置する通気部材と支持部材40aと干渉しない位置で切断する。
取除工程は、既存壁水切板16の下側の下地(笠木15)を取り除く工程である。取除工程では、笠木15を固定している釘(図示せず)を抜き、既設壁水切板16の横板部16bの基端部の下側から笠木15を引いて抜き取る。
【0049】
以下の工程については、第一の実施形態の構築方法と概ね同等であるので詳細な説明を省略する。新設屋根設置工程では、上縁部および側縁部を除いた既存屋根材10の上に新設屋根材20を設置する。両面テープ敷設工程では、新設屋根材20の上縁部と側壁部との取り合いにおいて、上縁部の既存屋根材10の上に防水両面テープ31を敷設する。防水両面テープ31は、新設屋根材20の上縁に近接する位置まで敷設する。通気部材設置工程では、防水両面テープ31の上に、空気が通過可能な通気部材と、新設壁水切板を支持する支持部材40aとを設置する。なお、図14の(b)では、支持部材40aが図示されている。なお、通気部材は、支持部材40aと同じ断面であり、支持部材40aの延長線上に配置されている。新設壁水切板設置工程では、通気部材および支持部材40aを覆うように新設壁水切板50を設置し、新設壁水切板50を支持部材40aにビス止め固定する。以上の工程によって屋根改修構造1が構築される。
【0050】
変形例に係る前記構築方法によれば、第一の実施形態の構築方法と同様に、通気部材を通して側壁14の内部の通気性能を確保することができる。また、既存屋根材10の上に新設屋根材20を設置しているので、防水性能も確保できる。さらに、防水性両面テープ31で既存屋根材10の表面に通気部材を接着できる。
【0051】
さらに、前記実施形態では、通気部材30と支持部材40が側壁14の表面板材14bの下端部に近接して設けられているが、これに限定されるものでない。図15に示すように、通気部材30aと支持部材を、表面板材14bの下端部から所定長さ離して配置してもよい。図15の通気部材30aおよび図示しない支持部材は、第一実施形態の通気部材および支持部材よりも水勾配方向の長さが短く形成され、通気部材30aおよび支持部材の水上側の端部が表面板材14bの下端部から離間している。これによって、通気部材30aおよび支持部材と、表面板材14bとの間に、通気路18となる隙間が形成される。通気路18は、通気部材30および支持部材の長手方向に沿って横方向に延在している。このような構成によれば、側壁通気層17から支持部材の上流側に流れた空気は、通気路18に沿って横方向に流れて通気部材30に誘導される。これによって、通気性能が向上する。また、通気部材30aおよび支持部材と、表面板材14bの下端部との隙間は、表面板材14bの下端部の通り精度が悪い場合に、表面板材14bの寸法誤差を吸収するクリアランスとすることができる。したがって施工性が向上する。
【0052】
また、図16に示すように、通気部材30bの上端部を、側壁14の表面板材14bの下端部から側壁14の内側に押し込む構成としてもよい。通気部材30bの上端部は、下地縦材14cの下方まで張り出し、側壁通気層17に対向している。このような構成によれば、表面板材14bの下端部の通り精度が悪い場合であっても、側壁通気層17と通気部材30bとを連通させることができるので、通気性能を確保することができる。また、通気部材30bの上端部が表面板材14bの下端部に係止されるので、通気部材30bの固定性が向上する。
【符号の説明】
【0053】
1 屋根改修構造
10 既存屋根材
14 側壁
17 側壁通気層
20 新設屋根材
30 通気部材
31 防水性両面テープ
40 支持部材
50 新設壁水切板
51 立上板部
52 上面板部
53 端面板部
55 通気孔
60 取合水切板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16