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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010470
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】冊子用カバー
(51)【国際特許分類】
   B42D 1/02 20060101AFI20240117BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B42D1/02
G06K19/077 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111824
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 梓
(72)【発明者】
【氏名】小久保 悠
(57)【要約】
【課題】折り曲げた際の開きを抑えることができる冊子用カバーを提供する。
【解決手段】クロス材2と、クロス材2と接着剤3で貼り合わされるシート材4と、を有し、クロス材2は、線状に延びる折目5で折り曲げ可能であり、シート材4および接着剤3は、それぞれ折目5を挟んだ両側に折目5と重ならない位置に配置され、折目5の両側に配置されたシート材4それぞれの折目5側の縁部の間および折目5の両側に配置された接着剤3それぞれの折目5側の縁部の間には、折目5と同じ方向に延びる溝部51が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロス材と、
前記クロス材と接着剤で貼り合わされるシート材と、を有し、
前記クロス材は、線状に延びる折目で折り曲げ可能であり、
前記シート材および前記接着剤は、それぞれ前記折目を挟んだ両側に前記折目と重ならない位置に配置され、
前記折目の両側に配置された前記シート材それぞれの前記折目側の縁部の間および前記折目の両側に配置された前記接着剤それぞれの前記折目側の縁部の間には、前記折目と同じ方向に延びる溝部が形成される冊子用カバー。
【請求項2】
前記接着剤の前記折目側の縁部は、前記シート材の前記折目側の縁部よりも前記折目側に突出する請求項1に記載の冊子用カバー。
【請求項3】
前記シート材に収容されたICモジュールと、
前記ICモジュールに接続されたアンテナと、を有する請求項1または2に記載の冊子用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冊子用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートなどの冊子の表紙に使用される冊子用カバーとして、紙クロスなどのクロス材にプラスチックシートや紙などのシート材が接着剤で貼り付けられた構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。シート材のクロス材に貼り付けられる面とは反対側の面には、見返し紙が接着剤で貼り付けられる。このような冊子用カバーは、折目で折り曲げられ、折目の一方側が表表紙を構成し、他方側が裏表紙を構成するように使用されることがある。
【0003】
冊子用カバーには、クロス材単体で構成されたものも多く採用されている。例えば、インレイシートが表紙に内挿されるタイプのパスポートに使用される冊子用カバーは、クロス材にシート(インレイ)材を貼りつけた構成が一般的であり、インレイシートが別頁に内挿されるタイプのパスポートに使用される冊子用カバーは、クロス材単体の構成が一般的である。
【0004】
出願人は、折目と重ならないように、折目の両側にシート材を設け、シート材が設けられていない部分が溝部を形成する冊子用カバーを提案している(特願2022-067623号)。この冊子用カバーは、折目の位置に溝部が形成されているため、良好に折り曲げることができる。
【0005】
冊子用カバーは、シート材をクロス材に貼り付ける際には、クロス材全面に接着剤を塗布している。このため、上記の折目の位置に溝部が形成された冊子用カバーにおいても、折目の位置に接着剤が設けられる。折目の位置に設けられた接着剤は、シート材に覆われず露出した状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-140027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような冊子用カバーは、溝部が形成されていない場合はクロス材、接着剤の層、シート材が重なり、溝部51が形成されていてもクロス材および接着剤の層が重なった多層構造である。このため、折り曲げて使用される場合に折り曲げられた状態が維持されず、開いてしまうことがある。
また、接着剤にシート材に覆われず露出した部分があると、クロス材とシート材とを接着剤で貼り合わせた後の乾燥工程において、ブロッキングが生じる可能性がある。このため、接着剤の露出した部分を合紙で覆う必要があり、製造工程が増えるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、折り曲げた際の開きを抑えることができる冊子用カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る冊子用カバーは、クロス材と、前記クロス材と接着剤で貼り合わされるシート材と、を有し、前記クロス材は、線状に延びる折目で折り曲げ可能であり、前記シート材および前記接着剤は、それぞれ前記折目を挟んだ両側に前記折目と重ならない位置に配置され、前記折目の両側に配置された前記シート材それぞれの前記折目側の縁部の間および前記折目の両側に配置された前記接着剤それぞれの前記折目側の縁部の間には、前記折目と同じ方向に延びる溝部が形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、折り曲げた冊子用カバーの開きを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態による冊子用カバーの断面図である。
図2】第1実施形態による冊子用カバーの平面図である。
図3】折曲げられた状態の冊子用カバーを示す断面図である。
図4】デボス加工によってクロス材の片面に凹凸が形成された冊子用カバーの断面図である。
図5】デボス加工によってクロス材の両面に凹凸が形成された冊子用カバーの断面図である。
図6】エンボス加工によってクロス材の片面に凹凸が形成された冊子用カバーの断面図である。
図7】エンボス加工によってクロス材の両面に凹凸が形成された冊子用カバーの断面図である。
図8】冊子用カバーの開き評価を説明する表である。
図9】第2実施形態による冊子用カバーの断面図である。
図10】第3実施形態による冊子用カバーの断面図である。
図11】第3実施形態による冊子用カバーの平面図である。
図12】第3実施形態による冊子用カバーにおけるICモジュールおよびアンテナシートが設けられた形態を示す断面図である。
図13】冊子用カバーのブロッキング評価を説明する表である。
図14】実施形態の変形例による冊子用カバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による冊子用カバーについて、図1から図4に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、第1実施形態による冊子用カバー1は、例えばパスポートなどの表紙に使用される。冊子用カバー1は、クロス材2と、クロス材2に接着剤3で貼り合わされるシート材4と、を有している。
クロス材2とシート材4とが貼り合わされて積層される方向を厚さ方向と表記する。厚さ方向のうち、シート材4に対するクロス材2が設けられる側を一方側と表記し、クロス材2に対してシート材4が設けられる側を他方側と表記する。
図示していないが、冊子用カバー1は、シート材4の他方側の面、すなわちクロス材2と貼り合わされていない側の面に見返し紙が貼り合わされる。
【0013】
冊子用カバー1は、図3に示すように、所定の位置において折り曲げられて使用される。冊子用カバー1における折り曲げられる部分を折目5と表記する。折目5は、直線状に延びている。冊子用カバー1は、折目5の一方側が表表紙を構成し、折目5の他方側が裏表紙を構成している。
【0014】
図1および図2に示すように、シート材4および接着剤3は、それぞれ折目5を挟んだ両側に折目5と重ならない位置に配置されている。すなわち、冊子用カバー1における折目5が設けられる位置には、シート材4および接着剤3が設けられていない。本実施形態では、1つのクロス材2に2つのシート材4がそれぞれ接着剤3で貼り付けられている。2つのシート材4は、折目5を挟んだ両側に互いに間隔をあけて配置されている。2つシート材4をクロス材2に貼り付ける接着剤3も、折目5を挟んだ両側に互いに間隔をあけて配置されている。
2つのシート材4およびこれらをクロス材2に貼り付ける接着剤3は、それぞれ折目5側の縁部が折目5と同じ方向に直線状に延びている。
冊子用カバー1には、折目5の両側に配置される2つのシート材4の間隔、および折目5の両側に配置される2つの接着剤3の間隔によって形成された直線状に延びる溝部51が設けられている。
【0015】
溝部51の断面形状は、側部52が垂直となるC字形状である。すなわち、溝部51の幅は、溝部51の深さ方向(厚さ方向)全体にわたって同じ寸法である。溝部51の底部53は、クロス材2の厚さ方向の他方側の面である。2つのシート材4のうち一方のシート材4の折目5側の縁部4aと、一方のシート材4をクロス材2に貼り付ける接着剤3の折目5側の縁部3aとは、重なっている。2つのシート材4の他方のシート材4の折目5側の縁部4aと、他方のシート材4をクロス材2に貼り付ける接着剤3の折目5側の縁部3aとは、重なっている。
溝部51の幅w1は、例えば、3mm以上15mm以下である。
【0016】
クロス材2は、例えば、最表層に樹脂層が塗工された紙基材などである。クロス材2の基材は、紙基材以外に、布・不織布・樹脂シートなど布基材や樹脂系の基材であってもよい。樹脂層は、例えば、熱可塑性樹脂であり、ニトロセルロース、アクリル、ポリウレタン、PVC等樹脂、ポリオレフィンなどである。クロス材2は、耐水性および加飾加工含めた加工適性を有している。クロス材2の樹脂層(最表層)の加工は、塗工やシート貼り合わせなどによって積層される。
クロス材2の厚さは、例えば、150μm以上400μm以下程度である。クロス材2の坪量は、例えば、270g/m以上720g/m以下程度である。クロス材2は、上記範囲の厚さおよび坪量であれば、表面加工適性および製本加工適性に優れる。
冊子用カバー1がパスポートのカバーとして使用される場合、クロス材2には、5-10年の長期使用に耐え得る強度や耐水性などの機能性と、後加工や表面加工適性などの製本適正に優れる材料を採用する。表面加工適性とは、例えば、箔押しやデボス加工などである。
【0017】
図4図7に示すようにクロス材2には、厚さ方向に凹んだり突出したりするデボスやエンボスなどの凹凸21が形成されていてもよい。図4および図5に示すクロス材2の凹凸21は、クロス材2を厚さ方向の一方側から凹ませて凹部22を形成するデボス加工によって形成されている。図4に示すクロス材2は、厚さ方向の一方側の面のみに凹凸21が形成されている。図5に示すクロス材2は、厚さ方向の両側の面に凹凸21が形成されている。
図6および図7に示すクロス材2の凹凸21は、クロス材2を厚さ方向の一方側に押し出して凸部23を形成するエンボス加工によって形成されている。図6に示すクロス材2は、厚さ方向の一方側の面のみに凹凸21が形成されている。図7に示すクロス材2は、厚さ方向の両側の面に凹凸21が形成されている。
【0018】
シート材4は、例えば、プラスチックシートや、紙、プラスチックと紙とが合成された合成紙などである。シート材4に採用されるプラスチックシートは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、TESLIN(登録商標)などで、発泡プラスチックシートや多孔質プラスチックシートも該当する。発泡プラスチックシートや多孔質プラスチックシートは、柔軟性に富み、熱可塑性を有する。
シート材4の密度は、例えば、0.5以上1.5以下である。さらには、シート材4の密度は、0.6以上0.8以下としてもよい。シート材4の密度は、シート材の柔軟性に寄与するため、上記の範囲では機械での加工に適した、良好なしなりを有する。また、上記範囲であれば冊子化後にページをめくる際のユーザビリティ、すなわち冊子本文のページ送りの際の曲げ適性も高い。このように、シート材4は、加工性、ユーザビリティに適した柔軟性を有している。
冊子用カバー1がパスポートのカバーとして使用される場合、シート材4には、5-10年の長期使用に耐え得る強度や耐水性、耐薬品性、耐湿度性などの耐久性に優れる材料を採用する。
【0019】
接着剤3は、例えば、ポリウレタン系の接着剤、製本などに使用されるPUR系のホットメルト、空気中や用紙中の水分と反応し硬化する湿気硬化型の接着剤などである。接着剤3は、一度硬化すると熱を加えても軟化せず、耐久性に優れる。
接着剤3の粘度(mPa/S,120℃)は、例えば、4000以上30000以下である。接着剤3の硬度(HS、A型鋼時計、20℃)は、例えば、70以上である。
接着剤3の粘度および硬度を上記の範囲にすると、接着剤塗布工程における機械適性や貼合加工に適する。
接着剤3の厚さは、例えば、10μm以上40μm以下である。
【0020】
冊子用カバー1がパスポートのカバーとして使用される場合、接着剤3には、5-10年の長期保管および長期使用に耐え得る耐水性、耐薬品性、耐湿度性などの耐久性に優れる材料を採用する。加えて、冊子用カバー1の開きやすさ(閉じやすさ)を加味した強度や柔軟性に優れる材料を採用する。例えば、体積収縮率が少なく、加水分解性が低く、弾性率が高い接着剤である。
また、クロス材2にデボスやエンボスなどの凹凸21の加工を施した場合、上記の接着剤3を塗布することによって、冊子用カバー1裏面(シート材4側の面)の凹凸21を平滑化することができ、外観および後工程の機械適性も向上する効果を有する。
【0021】
冊子用カバー1の製造工程について説明する。
クロス材2における折目5の両側、すなわちシート材4が貼り付けられる領域に接着剤3を塗布する接着剤塗布工程を行う。
クロス材2にシート材4を貼り付ける貼り付け工程を行う。クロス材2における折目5の両側それぞれにシート材4が接着剤3で貼り付けられることによって溝部51が形成される。
接着剤3を乾燥させる乾燥工程を行う。
クロス材2とシート材4とが接着剤3で貼り付けられた冊子用カバー1の縁部1aは、裁断されて切り揃えられる。
このようにして冊子用カバー1が製造される。
【0022】
第1実施形態による冊子用カバー1は、シート材4および接着剤3は、それぞれ折目5を挟んだ両側に折目5と重ならない位置に配置され、折目5の位置に溝部51が形成される。これにより、冊子用カバー1は、折目5の部分が他よりも薄くなる。このため、折目5で折り曲げられた冊子用カバー1の開きを抑えることができる。
【0023】
シート材4が折目5と重ならないように設けられていても、接着剤3が折目5に塗布されている場合、冊子用カバーが折り曲げられた際に、折目5に塗布された接着剤3の応力によって冊子用カバー開いてしまうことがある。第1実施形態による冊子用カバー1では、接着剤3が折目5に塗布されていないことによって、冊子用カバーが折り曲げられた際の応力が低減するため、冊子用カバー1の開きを抑えることができる。
【0024】
シート材4が折目5と重ならないように設けられていても、接着剤3が折目5に塗布されている場合は、接着剤3がシート材4で覆われず露出しているため、乾燥工程において接着剤3の露出している部分を合紙で覆う工程、および接着剤3が乾燥した後に合紙を撤去する工程が必要となる。これに対し、第1実施形態による冊子用カバーでは、乾燥工程において接着剤3の露出している部分を合紙で覆う工程、および接着剤3が乾燥した後に合紙を撤去する工程を省略できるため、製造工程を簡便にできる。
【0025】
折曲げられた後の冊子用カバー1の開きについて、従来のサッシ用カバーと比較する評価(開き評価)を行った。以下に開き評価について記載する。
開き評価では、図8に示すように、第1実施形態の冊子用カバー1(項番1)と、従来の2種類の冊子用カバー(項番2、3)とを比較した。上述しているが、第1実施形態の冊子用カバー1(項番1)は、折目にシート材4および接着剤3が設けられないことで溝部51が形成されている。従来の冊子用カバーの一方(項番2)は折目にシート材4が設けられないことで溝部151が形成されており、溝部151の底部全体に接着剤3が設けられている。従来の冊子用カバーのもう一方(項番3)は、溝部が形成されておらず、全体にわたってクロス材2、接着剤3およびシート材4が重なっている。接着剤3には、ホットメルトを使用した。各項番のサンプル数は、いずれも2(N1、N2)である。
【0026】
評価では、以下の(1)および(2)を行った。
(1)各冊子用カバーの表紙面(クロス材2が設けられている側)が山折りとなるように折り曲げ、48.6g/cmの荷重を48時間加え、その後に30秒放置し、冊子用カバーの開きを測定する。
(2)各冊子用カバーの表紙面(クロス材2が設けられている側)が山折りとなるように折り曲げ、48.6g/cmの荷重を48時間加え、その後に一度折り返した(谷折り)後1時間放置し、冊子用カバーの開きを測定する。
【0027】
開き評価により、上記の(1)および(2)の両方において、溝部が形成された冊子用カバー(項番1、2)の方は、溝部が無い冊子用カバー(項番3)と比べて開きが少ないことがわかる。溝部が形成された冊子用カバーでは、溝部にシート材4および接着剤3がない本実施形態の冊子用カバー(項番1)が、溝部151の底部全体に接着剤3が設けられた冊子用カバー(項番2)よりも開きが少ないことがわかる。
【0028】
(他の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0029】
(第2実施形態)
図9に示すように、本発明の第2実施形態による冊子用カバー1Bは、シート材4に収容されたICモジュール6と、ICモジュール6に接続されたアンテナシート7(アンテナ)と、を有する。本実施形態では、シート材4は、2層であり、第1シート材41と、第2シート材42と、を有する。第1シート材41および第2シート材42には、ICモジュール6を収容する孔部43が設けられている。孔部43は、第1シート材41および第2シート材42のいずれか一方にもうけられていてもよいし、両方に設けられていてもよい。孔部43は、第1シート材41および第2シート材42を厚さ方向に貫通する貫通孔であってもよいし、貫通せずに窪んだ凹部であってもよい。
【0030】
第2実施形態による冊子用カバー1Bでは、ICモジュール6およびアンテナシート7が設けられている場合でも、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0031】
(第3実施形態)
図10および図11に示すように、本発明の第3実施形態による冊子用カバー1Cは、接着剤3の折目5側の縁部3aは、シート材4の折目5側の縁部4aよりも折目5側に突出している。2つのシート材4のうち、折目5の一方側に位置する一方のシート材4の折目5側の縁部4aよりも、一方のシート材4をクロス材2に貼り付ける接着剤3の折目5側の縁部3aの方が折目5側に突出している。2つのシート材4のうちの折目5の他方側に位置する他方のシート材4の折目5側の縁部4aよりも、他方のシート材4をクロス材2に貼り付ける接着剤3の折目5側の縁部3aの方が折目5側に突出している。2つのシート材4の間および2つのシート材4をクロス材2に貼り付ける接着剤3の間に位置する溝部51Cの幅は、接着剤3の縁部3a,3aの間である底部53側(クロス材2側)の方がシート材4の縁部4a,4aの間である頂部54側(クロス材2と離れる側)よりも小さい。
溝部51Cの側部52には、接着剤3の縁部3aとシート材4の縁部4aによって段部55が形成される。
2つのシート材4の間隔w2は、例えば5mm以上15mm以下である。2つの接着剤の間隔w3は、例えば3m以上10mm以下である。
【0032】
第3実施形態による冊子用カバー1Cでは、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、シート材4の折目5側の縁部4aがクロス材2から剥がれにくい構造となるため、冊子用カバー1Cの品質を良好に維持できる。
【0033】
図12に冊子用カバー1Dのように、第3実施形態による冊子用カバー1Cと同様の溝部51Cが形成されるとともに、第2実施形態による冊子用カバー1Bと同様に、シート材4に収容されたICモジュール6と、ICモジュール6に接続されたアンテナシート7(アンテナ)と、が設けられていてもよい。
【0034】
冊子用カバー1,1Cのブロッキングについて、従来のサッシ用カバーと比較する評価(ブロッキング評価)を行った。以下にブロッキング評価について記載する。
ブロッキング評価では、図13に示すように、第1実施形態の冊子用カバー1(項番1)と、第3実施形態の冊子用カバー1C(項番2)と、従来の冊子用カバー(項番3)とを比較した。上述しているが、第1実施形態の冊子用カバー(項番1)は、折目にシート材4および接着剤3が設けられないことで溝部51が形成され、溝部51の底部に接着剤3が設けられていない。溝部51の幅(溝幅)は、接着剤3の部分およびシート材4の部分で等しい。第3実施形態の冊子用カバー(項番2)は、折目にシート材4および接着剤3が設けられないことで溝部51Cが形成され、溝部51Cの底部の一部に接着剤3が露出している。溝部51Cの幅は、接着剤3の部分よりもシート材4の部分が小さい。従来の冊子用カバー(項番3)は、折目にシート材4が設けられないことで溝部151が形成され、溝部151の底部全体に接着剤3が露出している。接着剤3には、ホットメルトを使用した。
【0035】
評価では、各冊子用カバーに2kgの荷重を加えた後、ブロッキングの有無を目視にて確認した。図13に示すように、冊子用カバーに溝部が形成されていることにより、ブロッキングが生じにくいことがわかる。ブロッキング評価結果は、変化なし(〇)、変化あり(×)の基準にて示す。今回の評価では、いずれの項番も変化なし(〇)である。
【0036】
以上、本発明による冊子用カバーの実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の第3実施形態では、溝部51Cの側部52に段部55が形成されているが、溝部51Cの断面形状が台形となるように、溝部51Cの側部52が傾斜面であってもよい。
【0037】
上記の第1実施形態および第2実施形態では、シート材4の折目5側の縁部4aと接着剤3の折目5側の縁部3aとが重なり、第3実施形態では、シート材4の折目5側の縁部4aよりも接着剤3の折目5側の縁部3aが折目5側に突出している。これに対し、図14に示す本実施形態の変形例による冊子用カバー1Eのように、シート材4の折目5側の縁部4aが接着剤3の折目5側の縁部3aよりも折目5側に突出していてもよい。2つのシート材4の間および2つのシート材4をクロス材2に貼り付ける接着剤3の間に位置する溝部51Eの幅は、接着剤3の縁部3a,3aの間である底部53側(クロス材2側)の方がシート材4の縁部4a,4aの間である頂部54側(クロス材2と離れる側)よりも大きい。このような冊子用カバー1Eでは、乾燥工程におけるブロッキングが生じにくい。本実施形態の変形例による冊子用カバー1Eにおいても、溝部51Eの断面形状が台形となるように、溝部51Eの側部52が傾斜面であってもよい。
【0038】
第2実施形態、第3実施形態および実施形態の変形例による冊子用カバー1B-1Eにおいても、クロス材2に凹凸21が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1,1B-1E 冊子用カバー
1a 縁部
2 クロス材
3 接着剤
3a 縁部
4 シート材
4a 縁部
5 折目
6 ICモジュール
51,51C,51E 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14