(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104704
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】金属製保護スリーブ製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 22/26 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
B21D22/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009063
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】592108676
【氏名又は名称】日伸工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500010761
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクター・ハフトゥング
【氏名又は名称原語表記】Robert Bosch GmbH
【住所又は居所原語表記】Robert-Bosch-Platz 1 D-70839 Gerlingen-Schillerhoehe
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆博
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健太
(72)【発明者】
【氏名】松井 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】大谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】亀井 麻央
(72)【発明者】
【氏名】疋田 裕樹
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA01
4E137BB01
4E137CA07
4E137CA09
4E137CA25
4E137CA26
4E137DA13
4E137EA02
4E137GA02
4E137GB20
(57)【要約】
【課題】周面に複数個の突出部分を有する円柱状の機械部品を差し込んで圧入し易い金属製保護スリーブを製造することができる金属製保護スリーブ製造方法を提供する。
【解決手段】この金属製保護スリーブ製造方法は、端面において、機械部品の複数個の突出部分に対応した位置に複数個の凹部分を設け、機械部品の複数個の非突出部分に対応した位置に複数個の凸部分を設けるものであり、また、ワークを円筒状に形成する円筒状形成工程SAと、円筒状のワークの側部にフランジ部を形成するフランジ部形成工程SBと、ワークのフランジ部を含む側部の上面に複数個の凹部分に対応する複数個のワーク端面凹部分と複数個の凸部分に対応する複数個のワーク端面凸部分を形成する凹凸形成工程SCと、フランジ部の周辺部を切除するトリミング工程SDと、を有するようにできる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に複数個の突出部分と複数個の非突出部分を有する円柱状の機械部品を内方に収容して保護する円筒状の金属製保護スリーブを製造する金属製保護スリーブ製造方法であって、
端面において、前記機械部品の前記複数個の突出部分に対応した位置に複数個の凹部分を設け、前記機械部品の前記複数個の非突出部分に対応した位置に複数個の凸部分を設ける金属製保護スリーブ製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属製保護スリーブ製造方法において、
前前記端面近傍では該端面に近づくにつれて内壁面を広げる金属製保護スリーブ製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の金属製保護スリーブ製造方法において、
前記機械部品は、複数個のマグネットが突出してコア部の周面に埋め込まれたものである金属製保護スリーブ製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の金属製保護スリーブ製造方法において、
前記機械部品は、複数個のマグネットが突出してコア部の周面に埋め込まれたものである金属製保護スリーブ製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の金属製保護スリーブ製造方法において、
ワークを円筒状に形成する円筒状形成工程と、
円筒状の前記ワークの側部にフランジ部を形成するフランジ部形成工程と、
前記ワークの前記フランジ部を含む前記側部の上面に前記複数個の凹部分に対応する複数個のワーク端面凹部分と前記複数個の凸部分に対応する複数個のワーク端面凸部分を形成する凹凸形成工程と、
前記フランジ部の周辺部を切除するトリミング工程と、
を有する金属製保護スリーブ製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の金属製保護スリーブ製造方法において、
前記トリミング工程は、円筒状のトリミング下型周辺部材とトリミング下型中央部材とトリミング上型中央ガイド部材とトリミング上型中央パンチ部材を用い、
前記トリミング上型中央ガイド部材の上面には近傍の外側面が該上面に近づくにつれて広がっている複数個のトリミング上型中央ガイド凹部分と複数個のトリミング上型中央ガイド凸部分が設けられ、
前記トリミング上型中央パンチ部材の下面には複数個のトリミング上型中央パンチ凸部分と複数個のトリミング上型中央パンチ凹部分が設けられており、
前記複数個のトリミング上型中央ガイド凹部分を前記複数個のワーク端面凹部分の内側に配置し、前記複数個のトリミング上型中央ガイド凸部分を前記複数個のワーク端面凸部分の内側に配置し、
前記複数個のトリミング上型中央パンチ凸部分の周縁部を前記複数個のワーク端面凹部分の上側に配置し、前記複数個のトリミング上型中央パンチ凹部分の周縁部を前記複数個のワーク端面凸部分の上側に配置し、
前記トリミング下型周辺部材により前記フランジ部の周辺部を切除する金属製保護スリーブ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製保護スリーブを製造する金属製保護スリーブ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製保護スリーブは、機械部品を内方に収容して保護する金属製のものである。このような金属製保護スリーブは、例えば、モータの回転子などにおいて、マグネットを含む機械部品からマグネットが回転による大きな遠心力により飛び出すのを防止するために用いられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属製保護スリーブが収容する機械部品は、様々な構造及び形状のものが有り得る。機械部品が、例えば、複数個のマグネットが周面から少し突出してコア部の周面に埋め込まれているもののように、周面に複数個の突出部分と複数個の非突出部分を有する円柱状の場合、機械部品を金属製保護スリーブに圧入することで機械部品と金属製保護スリーブが良好に密着するようにすることができる。
【0005】
ここで、圧入のためには、機械部品を金属製保護スリーブに差し込まなければならず、そのために金属製保護スリーブの端面近傍の内壁面をラッパ状に可能な限り広げたとしても差し込みが容易でない場合も少なくない。
【0006】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、周面に複数個の突出部分と複数個の非突出部分を有する円柱状の機械部品を圧入し易い金属製保護スリーブを製造することができる金属製保護スリーブ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係る金属製保護スリーブ製造方法は、周面に複数個の突出部分と複数個の非突出部分を有する円柱状の機械部品を内方に収容して保護する円筒状の金属製保護スリーブを製造する金属製保護スリーブ製造方法であって、端面において、前記機械部品の前記複数個の突出部分に対応した位置に複数個の凹部分を設け、前記機械部品の前記複数個の非突出部分に対応した位置に複数個の凸部分を設ける。
【0008】
好ましくは、本発明の実施形態に係る金属製保護スリーブ製造方法は、前記端面近傍では該端面に近づくにつれて内壁面を広げる。
【0009】
前記機械部品は、複数個のマグネットが突出してコア部の周面に埋め込まれたものとすることができる。
【0010】
好ましくは、本発明の実施形態に係る金属製保護スリーブ製造方法は、ワークを円筒状に形成する円筒状形成工程と、円筒状の前記ワークの側部にフランジ部を形成するフランジ部形成工程と、前記ワークの前記フランジ部を含む前記側部の上面に前記複数個の凹部分に対応する複数個のワーク端面凹部分と前記複数個の凸部分に対応する複数個のワーク端面凸部分を形成する凹凸形成工程と、前記フランジ部の周辺部を切除するトリミング工程と、を有する。
【0011】
好ましくは、前記トリミング工程は、円筒状のトリミング下型周辺部材とトリミング下型中央部材とトリミング上型中央ガイド部材とトリミング上型中央パンチ部材を用い、前記トリミング上型中央ガイド部材の上面には複数個のトリミング上型中央ガイド凹部分と複数個のトリミング上型中央ガイド凸部分が設けられ、前記トリミング上型中央パンチ部材の下面には複数個のトリミング上型中央パンチ凸部分と複数個のトリミング上型中央パンチ凹部分が設けられており、前記複数個のトリミング上型中央ガイド凹部分を前記複数個のワーク端面凹部分の内側に配置し、前記複数個のトリミング上型中央パンチ凸部分の周縁部を前記複数個のワーク端面凹部分の上側に配置し、前記複数個のトリミング上型中央ガイド凸部分を前記複数個のワーク端面凸部分の内側に配置し、前記複数個のトリミング上型中央パンチ凹部分の周縁部を前記複数個のワーク端面凸部分の上側に配置し、前記トリミング下型周辺部材により前記フランジ部の周辺部を切除する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る金属製保護スリーブ製造方法によれば、周面に複数個の突出部分と複数個の非突出部分を有する円柱状の機械部品を圧入し易い金属製保護スリーブを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の実施形態に係る金属製保護スリーブ製造方法によって製造することができる金属製保護スリーブが機械部品を収容したときを示す平面図である。
【
図1B】同上の金属製保護スリーブが機械部品を収容したときを示す正面図である。
【
図1C】同上の金属製保護スリーブが機械部品を収容したときを示す斜視図である。
【
図2A】同上の金属製保護スリーブが収容する機械部品を示す平面図である。
【
図2B】同上の金属製保護スリーブが収容する機械部品を示す正面図である。
【
図2C】同上の金属製保護スリーブが収容する機械部品を示す斜視図である。
【
図3A】同上の金属製保護スリーブを示す平面図である。
【
図3B】同上の金属製保護スリーブを示す正面図である。
【
図3C】同上の金属製保護スリーブを示す斜視図である。
【
図3D】同上の金属製保護スリーブを示す正面視断面図(
図3AのA-Aで示す切断面で切断した断面図)である。
【
図4】本発明の実施形態に係る金属製保護スリーブ製造方法を示す工程図である。
【
図5A】同上の金属製保護スリーブ製造方法の円筒状形成工程を示す正面視端面図であって、ワークを円筒状に形成する前の状態である。
【
図5B】同上の金属製保護スリーブ製造方法の円筒状形成工程を示す正面視端面図であって、ワークを円筒状に形成するときの状態である。
【
図6A】同上の金属製保護スリーブ製造方法のフランジ部形成工程を示す正面視端面図であって、フランジ部を形成する前の状態である。
【
図6B】同上の金属製保護スリーブ製造方法のフランジ部形成工程を示す正面視端面図であって、フランジ部を形成するときの状態である。
【
図7A】同上の金属製保護スリーブ製造方法の凹凸形成工程を示す正面視端面図であって、複数個のワーク端面凹部分と複数個のワーク端面凸部分を形成する前の状態であり、(a)はワーク端面凹部分が形成される位置での切断面の図(右又は左側面視端面図)、(b)は、ワーク端面凸部分が形成される位置での切断面の図(正面視端面図)である。
【
図7B】同上の金属製保護スリーブ製造方法の凹凸形成工程を示す正面視端面図であって、複数個のワーク端面凹部分と複数個のワーク端面凸部分を形成するときの状態であり、(a)はワーク端面凹部分が形成される位置での切断面の図(右又は左側面視端面図)、(b)は、ワーク端面凸部分が形成される位置での切断面の図(正面視端面図)である。
【
図8】同上の金属製保護スリーブ製造方法の凹凸形成工程で用いる凹凸形成下型周辺部材を示すものであって、(a)が平面図、(b)が側面図(下部は省略)である。
【
図9】同上の金属製保護スリーブ製造方法の凹凸形成工程で用いる凹凸形成上型周辺部材を示すものであって、(a)が側面図(上部は省略)、(b)が底面図である。
【
図10A】同上の金属製保護スリーブ製造方法のトリミング工程を示す正面視端面図であって、ワークのフランジ部の周辺部を切除する前の状態であり、(a)はワーク端面凹部分が形成された位置での切断面の図(右又は左側面視端面図)、(b)は、ワーク端面凸部分が形成された位置での切断面の図(正面視端面図)である。
【
図10B】同上の金属製保護スリーブ製造方法のトリミング工程を示す正面視端面図であって、ワークのフランジ部の周辺部を切除した後の状態であり、(a)はワーク端面凹部分が形成された位置での切断面の図(右又は左側面視端面図)、(b)は、ワーク端面凸部分が形成された位置での切断面の図(正面視端面図)である。
【
図11】同上の金属製保護スリーブ製造方法のトリミング工程で用いるトリミング下型周辺部材を示すものであって、(a)が平面図、(b)が側面図(下部は省略)である。
【
図12】同上の金属製保護スリーブ製造方法のトリミング工程で用いるトリミング上型中央ガイド部材を示すものであって、(a)が平面図、(b)が側面図(下部は省略)である。
【
図13】同上の金属製保護スリーブ製造方法のトリミング工程で用いるトリミング上型中央パンチ部材を示すものであって、(a)が側面図(上部は省略)、(b)が底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、以下説明する。本発明の実施形態に係る金属製保護スリーブ製造方法によって製造することができる金属製保護スリーブ1は、
図1A~
図1Cに示すように、機械部品2を内方に収容して保護するものである。
【0015】
機械部品2は、
図2A~
図2Cに示すように、周面2aに複数個の突出部分2aa(
図2Aに示す平面視において半径方向に突出した部分)と複数個の非突出部分2ab(複数個の突出部分2aa以外の部分)を有する円柱状のものである。
【0016】
機械部品2は、例えば、複数個(本実施形態の例では6個)のマグネット21が少し突出してコア部22に埋め込まれた円柱状のものとすることができる。周面2aにおいて、マグネット21によって少し突出した部分が上記の突出部分2aaとなり、マグネット21のないコア部22の部分が非突出部分2abとなっている。なお、コア部22は、一般的に、積層鋼板により構成されているが、
図2A~
図2C(及び
図1A~
図1C)においては積層鋼板により構成されている様子や内部の詳細な構造などは、本出願の要旨でないので省略している。また、
図2A~
図2Cにおいては、突出部分2aa、非突出部分2ab、マグネット21のそれぞれの符号は、代表して1つ記載している。
【0017】
金属製保護スリーブ1は、
図3A~
図3Dに示すように、円筒状のものである。円筒状とは、有底のものも有底でないものも含むものとする。
図3A~
図3Dに示す金属製保護スリーブ1は、側部1aと底部1bを有する有底のものであり、底部1bに貫通孔1baを有している。
【0018】
金属製保護スリーブ1は、端面(側部1aの端面)に凹凸形状が形成されている。つまり、金属製保護スリーブ1は、端面に複数個(本実施形態の例では6個)の凹部分1aaと複数個(本実施形態の例では6個)の凸部分1abが設けられている。複数個の凹部分1aaは、機械部品2の上記複数個の突出部分2aaに対応した位置に設けられ、複数個の凸部分1abは、機械部品2の上記複数個の非突出部分2abに対応した位置に設けられている。なお、凹凸形状は、
図3A~
図3Dでは比較的滑らかな波形状であるが、矩形の波形状なども可能である。
【0019】
また、金属製保護スリーブ1は、端面(側部1aの端面)近傍では、端面に近づくにつれて内壁面1acが広がる(内壁面1acの直径が広がる)ようにすることができる。つまり、ラッパ状に広がるようにすることができる(
図3D参照)。
【0020】
金属製保護スリーブ1は、複数個の凹部分1aaと複数個の凸部分1abが設けられている端面(側部1aの端面)の内側に機械部品2が差し込まれる。ここで、先ず、複数個の凸部分1abの位置に複数個の非突出部分2abを合わせて、機械部品2が金属製保護スリーブ1に差し込まれる。複数個の非突出部分2abにおいては、機械部品2の外径は金属製保護スリーブ1の内径(内壁面1acの直径)との間の余裕は大きいので、乗り上げることなく機械部品2を容易に金属製保護スリーブ1に差し込むことができる。
【0021】
金属製保護スリーブ1の内径は、端面(側部1aの端面)近傍以外では機械部品2の最大の外径(突出部分2aaの位置の外径)よりも僅かに小さくなっている。機械部品2を金属製保護スリーブ1に差し込んだ後、機械部品2を金属製保護スリーブ1の中に押し込んで行くと(圧入して行くと)、金属製保護スリーブ1が僅かに歪んで機械部品2と金属製保護スリーブ1は良好に密着するようになる。
【0022】
こうして、金属製保護スリーブ1は、機械部品2が圧入されることにより、機械部品2を内方に収容する。金属製保護スリーブ1は、端面(側部1aの端面)に複数個の凹部分1aaと複数個の凸部分1abが設けられているので、周面2aに複数個の突出部分2aaと複数個の非突出部分2abを有する円柱状の機械部品2を圧入し易くなっている。
【0023】
本発明の実施形態に係る金属製保護スリーブ製造方法は、金属製のワーク10を加工して製品たる上記の金属製保護スリーブ1を製造することができる方法である。この金属製保護スリーブ製造方法は、
図4に示すように、円筒状形成工程SAと、フランジ部形成工程SBと、凹凸形成工程SCと、トリミング工程SDと、を有する。
【0024】
円筒状形成工程SAは、
図5A及び
図5Bに示すように、ワーク10を円筒状に形成する工程である。円筒状形成工程SAは、ワーク10を円筒状に形成できれば、特に限定されるものではないが、例えば、加工前のワーク10を円板形状のものとし、円筒状形成下型周辺部材31と円筒状形成下型中央部材32と円筒状形成上型周辺部材33と円筒状形成上型中央部材34を用いて以下のようにすることができる。
【0025】
円筒状形成下型周辺部材31は、円筒状であって中空部を有し、円筒状形成下型中央部材32は、円筒状形成下型周辺部材31の中空部に配置されている。円筒状形成上型周辺部材33は、円筒状であって中空部を有する。円筒状形成上型中央部材34は、円筒状形成上型周辺部材33の中空部に配置されており、下降して円筒状形成下型周辺部材31の中空部に入り込んだときにそれとの間に隙間を有する大きさである。
【0026】
ワーク10は、円筒状形成下型周辺部材31及び円筒状形成下型中央部材32の上面に配置され、その後、円筒状形成下型周辺部材31の上側に有る部分が円筒状形成上型周辺部材33によって上側から押さえられる(
図5A参照)。円筒状形成上型周辺部材33は、ワーク10のしわ押さえ用の部材である。そして、円筒状形成上型中央部材34が下降して来てワーク10を押圧するとともに円筒状形成下型周辺部材31の中空部に入り込み円筒状形成下型中央部材32を所定位置まで押し下げる(
図5B参照)。
【0027】
そうすると、ワーク10は、円筒状形成上型中央部材34と円筒状形成下型周辺部材31の間が側部10a、円筒状形成上型中央部材34と円筒状形成下型中央部材32の間が底部10bの有底の円筒状に形成される
【0028】
フランジ部形成工程SBは、
図6A及び
図6Bに示すように、円筒状のワーク10の側部10aにフランジ部10a’を形成する工程である。フランジ部形成工程SBは、フランジ部10a’を形成できれば、特に限定されるものではないが、例えば、フランジ部形成下型周辺部材41とフランジ部形成下型中央部材42とフランジ部形成上型中央部材43を用いて以下のようにすることができる。
【0029】
フランジ部形成下型周辺部材41は、円筒状であって中空部を有し、その上側開口部は上がるにつれて広がるテーパー形状になっている。フランジ部形成下型中央部材42は、フランジ部形成下型周辺部材41の中空部に配置されている。フランジ部形成上型中央部材43は、フランジ部形成下型中央部材42の上方に配置されており、下降してフランジ部形成下型周辺部材41の中空部に入り込んだときにそれとの間に隙間を有する大きさである。
【0030】
ワーク10は、フランジ部形成下型中央部材42の上面に配置される(
図6A参照)。そして、フランジ部形成上型中央部材43が下降して来てフランジ部形成下型周辺部材41の中空部に入り込みワーク10とフランジ部形成下型中央部材42を所定位置まで押し下げる(
図6B参照)。
【0031】
そうすると、ワーク10は、フランジ部形成下型周辺部材41の上側開口部のテーパー形状に沿って、斜めのフランジ部10a’が形成される。
【0032】
凹凸形成工程SCは、
図7A(a)、(b)及び
図7B(a)、(b)に示すように、ワーク10のフランジ部10a’を含めた側部10aに凹凸形状を施す工程である。つまり、凹凸形成工程SCにより、ワーク10のフランジ部10a’ を含めた側部10aに、合わせて凹凸形状をなす複数個のワーク端面凹部分10aaと複数個のワーク端面凸部分10abが形成される。複数個のワーク端面凹部分10aaは、金属製保護スリーブ1の上記の複数個の凹部分1aaに対応し、複数個のワーク端面凸部分10abは、金属製保護スリーブ1の上記の複数個の凸部分1abに対応するものである。
【0033】
凹凸形成工程SCは、例えば、凹凸形成下型周辺部材51と凹凸形成下型中央部材52と凹凸形成上型周辺部材53と凹凸形成上型中央部材54を用いて以下のようにすることができる。なお、
図7A(a)及び
図7B(a)は、ワーク端面凹部分10aaが形成される位置での切断面の図であり、
図7A(b)及び
図7B(b)は、ワーク端面凸部分10abが形成される位置での切断面の図である。
【0034】
凹凸形成下型周辺部材51は、
図8(a)、(b)に示すように、円筒状であって中空部を有し、その上面には、合わせて凹凸形状をなす複数個(本実施形態の例では6個)の凹凸形成下型凹部分51aと複数個(本実施形態の例では6個)の凹凸形成下型凸部分51bが形成されている。
【0035】
凹凸形成下型中央部材52は、上方に空間を有して凹凸形成下型周辺部材51の中空部に配置されている。
【0036】
凹凸形成上型周辺部材53は、
図9(a)、(b)に示すように、円筒状であって中空部を有し、その下面には、合わせて凹凸形状をなす複数個の凹凸形成上型凸部分53aと複数個の凹凸形成上型凹部分53bが形成されている。複数個の凹凸形成上型凸部分53aは、凹凸形成下型周辺部材51の複数個の凹凸形成下型凹部分51aの上方に位置決めされ、複数個の凹凸形成上型凹部分53bは、凹凸形成下型周辺部材51の複数個の凹凸形成下型凸部分51bの上方に位置決めされている。また、凹凸形成上型周辺部材53は、上記中空部の内側面には段差が形成されている(
図7A(a)、(b)及び
図7B(a)、(b)参照)。
【0037】
凹凸形成上型中央部材54は、凹凸形成上型周辺部材53の中空部に配置されている。また、凹凸形成上型中央部材54は、下降したときに凹凸形成上型周辺部材53の上記段差に接することができる段差が外側面に形成されている(
図7A(a)、(b)及び
図7B(a)、(b)参照)。
【0038】
ワーク10は、凹凸形成下型中央部材52の上面に配置される(
図7A(a)、(b)参照)。そして、凹凸形成上型中央部材54が下降すると、それに形成された段差が凹凸形成上型周辺部材53に形成された段差に接して凹凸形成上型周辺部材53が下降する。そして、凹凸形成上型周辺部材53はワーク10のフランジ部10a’に接し、それからフランジ部10a’及びそれに連続する側部10aの上部を垂直方向(上下方向に対して垂直方向)に曲げて行き、それから凹凸形成下型周辺部材51を下側にしてフランジ部10a’及びそれに連続する側部10aの上部を押圧する(
図7B(a)、(b)参照)。
【0039】
そうすると、ワーク10のフランジ部10a’を含めた側部10aの端面(上面)には、複数個の凹凸形成上型凸部分53aの位置に複数個のワーク端面凹部分10aaが形成され、複数個の凹凸形成上型凹部分53bの位置に複数個のワーク端面凸部分10abが形成される。
【0040】
トリミング工程SDは、
図10A(a)、(b)及び
図10B(a)、(b)に示すように、フランジ部10a’の周辺部を切除する工程である。トリミング工程SDでの加工前のワーク10は、凹凸形成工程SCを経たものである。トリミング工程SDは、例えば、トリミング下型周辺部材61とトリミング下型中央部材62とトリミング上型中央ガイド部材63とトリミング上型中央パンチ部材64を用いて以下のようにすることができる。なお、
図10A(a)及び
図10B(a)は、ワーク端面凹部分10aaが形成された位置での切断面の図であり、
図10A(b)及び
図10B(b)は、ワーク端面凸部分10abが形成された位置での切断面の図である。
【0041】
トリミング下型周辺部材61は、
図11(a)、(b)に示すように、円筒状であって中空部を有し、その上面には、合わせて凹凸形状をなす複数個(本実施形態の例では6個)のトリミング下型凹部分61aと複数個(本実施形態の例では6個)のトリミング下型凸部分61bが形成されている。なお、円筒状のトリミング下型周辺部材61は、中空部を形成する内壁面が円筒状のものと言える部材ならば、外壁面はどのような形状も可能である。
【0042】
トリミング下型中央部材62は、上方に空間を有してトリミング下型周辺部材61の中空部に配置されている。
【0043】
トリミング上型中央ガイド部材63は、
図12(a)、(b)に示すように、上面に、合わせて凹凸形状をなす複数個(本実施形態の例では6個)のトリミング上型中央ガイド凹部分63aと複数個(本実施形態の例では6個)のトリミング上型中央ガイド凸部分63bが設けられている。複数個のトリミング上型中央ガイド凹部分63aは、トリミング上型中央ガイド部材63が下降したときにワーク10の複数個のワーク端面凹部分10aaの内側になるように位置決めされ、トリミング上型中央ガイド凸部分63bは、トリミング上型中央ガイド部材63が下降したときにワーク10のワーク端面凸部分10abの内側になるように位置決めされる。トリミング上型中央ガイド部材63は、下降したときトリミング下型周辺部材61の中空部に隙間を有して入り込むことができる大きさである。
【0044】
複数個のトリミング上型中央ガイド凹部分63aの近傍及び複数個のトリミング上型中央ガイド凸部分63bの近傍では、それら(上面)に近づくにつれて外側面が広がっている(
図12(b)参照)。それにより、後述する切除時に、ワーク10の複数個のワーク端面凹部分10aaの内側を複数個のトリミング上型中央ガイド凹部分63aによって確実に支持し、ワーク10の複数個のワーク端面凸部分10abの内側を複数個のトリミング上型中央ガイド凸部分63bによって確実に支持することができる。
【0045】
なお、トリミング上型中央ガイド部材63は、複数個のトリミング上型中央ガイド凹部分63aと複数個のトリミング上型中央ガイド凸部分63bが設けられた部材とその下側でトリミング上型中央ガイド部材63が下降したときにワーク10の側部10aの多くの部分と底部10bに接し得る部材に分けて別体としておいて結合しておくことが可能である。
【0046】
トリミング上型中央パンチ部材64は、トリミング上型中央ガイド部材63の上側に配置される。本実施形態では、トリミング上型中央パンチ部材64はトリミング上型中央ガイド部材63に固定されている。トリミング上型中央パンチ部材64は、
図13(a)、(b)に示すように、下面に、合わせて凹凸形状をなす複数個(本実施形態の例では6個)のトリミング上型中央パンチ凸部分64aと複数個(本実施形態の例では6個)のトリミング上型中央パンチ凹部分64bが設けられている。複数個のトリミング上型中央パンチ凸部分64aは、トリミング上型中央ガイド部材63の複数個のトリミング上型中央ガイド凹部分63aの上側に接触し、複数個のトリミング上型中央凹部分64bは、トリミング上型中央ガイド部材63の複数個のトリミング上型中央ガイド凸部分63bの上側に接触している。トリミング上型中央パンチ部材64の下面の外縁部は、高さを変えないようにしてトリミング上型中央ガイド部材63の上面よりも半径方向外側に延びてはみ出ている。
【0047】
ワーク10は、トリミング下型中央部材62の上面に配置される。そして、トリミング上型中央パンチ部材64とトリミング上型中央ガイド部材63が下降し、トリミング上型中央ガイド部材63は、ワーク10の側部10aの内側に配置され、トリミング上型中央パンチ部材64の下面の外縁部は、ワーク10の側部10aの上端(フランジ部10a’の内方側の一部)の上側に配置される(
図10A(a)、(b)参照)。
【0048】
そして、トリミング上型中央パンチ部材64とトリミング上型中央ガイド部材63は、更に下降して、ワーク10とトリミング下型中央部材62を押し下げる。そうすると、ワーク10のフランジ部10a’は、トリミング下型周辺部材61に接して、その接した部分より外方の部分(フランジ部10a’の周辺部分)がトリミング下型周辺部材61により切除される。
【0049】
ここで、この切除時に、ワーク10のフランジ部10a’を含めた側部10aは、その内側においてトリミング上型中央ガイド部材63によって支持され、その上側においてトリミング上型中央パンチ部材64の下面の外縁部によって支持される。つまり、ワーク10の複数個のワーク端面凹部分10aaは、その内側において複数個のトリミング上型中央ガイド凹部分63aによって支持され、その上側において複数個のトリミング上型中央パンチ凸部分64aによって支持される。ワーク10の複数個のワーク端面凸部分10abは、その内側において複数個のトリミング上型中央ガイド凸部分63bによって支持され、その上側において複数個のトリミング上型中央パンチ凹部分64bによって支持される。そうすることで、複数個のワーク端面凹部分10aa近傍及びワーク端面凸部分10ab近傍を、切除による反動で変形するのを防止して、精度の良いものとすることができる。
【0050】
以上説明した金属製保護スリーブ製造方法により、金属製のワーク10を加工して製品たる金属製保護スリーブ1を容易に精度良く製造することができる。ワーク10における側部10a、複数個のワーク端面凹部分10aa、複数個のワーク端面凸部分10ab、底部10bがそれぞれ、金属製保護スリーブ1における側部1a、複数個の凹部分1aa、複数個の凸部分1ab、底部1bとなる。なお、この金属製保護スリーブ製造方法は、上記の円筒状形成工程SA~トリミング工程SD以外の工程を適宜有するようにすることができる。例えば、
図3Aなどに示される底部1bの貫通孔1baは、上記の円筒状形成工程SA~トリミング工程SDの間又はその後の工程で形成される。
【0051】
以上、本発明の実施形態に係る金属製保護スリーブ製造方法(及びそれによって製造することができる金属製保護スリーブ)について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 金属製保護スリーブ
1a 側部
1aa 凹部分
1ab 凸部分
1ac 内壁面
1b 底部
1ba 貫通孔
10 ワーク
10a ワークの側部
10a’フランジ部
10aa ワーク端面凹部分
10ab ワーク端面凸部分
10b ワークの底部
2 機械部品
2a 周面
2aa 突出部分
2ab 非突出部分
21 マグネット
22 コア部
31 円筒状形成下型周辺部材
32 円筒状形成下型中央部材
33 円筒状形成上型周辺部材
34 円筒状形成上型中央部材
41 フランジ部形成下型周辺部材
42 フランジ部形成下型中央部材
43 フランジ部形成上型中央部材
51 凹凸形成下型周辺部材
51a 凹凸形成下型凹部分
51b 凹凸形成下型凸部分
52 凹凸形成下型中央部材
53 凹凸形成上型周辺部材
53a 凹凸形成上型凸部分
53b 凹凸形成上型凹部分
54 凹凸形成上型中央部材
61 トリミング下型周辺部材
61a トリミング下型凹部分
61b トリミング下型凸部分
62 トリミング下型中央部材
63 トリミング上型中央ガイド部材
63a トリミング上型中央ガイド凹部分
63b トリミング上型中央ガイド凸部分
64 トリミング上型中央パンチ部材
64a トリミング上型中央パンチ凸部分
64b トリミング上型中央パンチ凹部分
SA 円筒状形成工程
SB フランジ部形成工程
SC 凹凸形成工程
SD トリミング工程