(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104707
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】浸透水分により惹起される電位差の検知システム、及び、該検知システムが装着されているパンツ類
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20240729BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20240729BHJP
A61F 13/66 20060101ALI20240729BHJP
A61F 13/42 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01N27/416 341Z
G01N27/00 H
A61F13/66
A61F13/42 F
G01N27/416 341A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009071
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】521147639
【氏名又は名称】ビヨンドエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103160
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 光春
(72)【発明者】
【氏名】鳥光 慶一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健
【テーマコード(参考)】
2G060
3B200
【Fターム(参考)】
2G060AA07
2G060AE11
2G060AF15
2G060AG03
2G060AG06
2G060AG10
2G060AG15
2G060FA01
2G060JA06
2G060KA05
3B200DF04
(57)【要約】
【課題】「電極間において湿潤によってのみ発生する電位差」を用いて、湿潤を検知するシステムの確立することにより、より鋭敏で正確な、程度に応じた湿潤の検知を可能とし、経血、悪露、尿等の漏れを的確に検知する製品の開発につなげることを目的とするものである。
【解決手段】PEDOT-pTSが付着している第1の電極と、金属を素材として含む第2の電極が略対向するように配置されている部分が含まれて配置されている湿潤検知電極部と共に、該電極部に水分が浸透して湿潤することにより、上記第1の電極と第2の電極との間に生じた電位差を検知する電位差検知部が設けられている、水分により惹起される電位差の検知システムを提供し、さらに該システムが装着されている、経血、悪露、尿等の漏れを検知・報知可能なパンツ類を提供することにより、上記の課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水機能と水浸透機能を有する水浸透性連続領域が設けられた吸水浸透部の上記水浸透性連続領域において、PEDOT-pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)が付着している第1の電極と、金属を素材として含む第2の電極が略対向するように配置されている部分が含まれて配置されている湿潤検知電極部と、該湿潤検知電極部の上記水浸透性領域に水分が浸透して湿潤することにより、上記第1の電極と第2の電極との間に生じた電位差を検知する電位差検知部が設けられている、水分により惹起される電位差の検知システム。
【請求項2】
第1の電極の基材は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、これらの合成繊維のセリシン被覆材、紙、綿、及び、絹、からなる1種又は2種以上を含有する基材である、請求項1に記載の検知システム。
【請求項3】
第2の電極の素材は、アルミニウムを含有する、請求項1に記載の検知システム。
【請求項4】
第1の電極と第2の電極の形状は、線状又は帯状である、請求項1に記載の検知システム。
【請求項5】
電位差検知部には、検知した電位差の報知手段が設けられている、請求項1に記載の検知システム。
【請求項6】
請求項1に記載の検知システムにおいて用いられる湿潤検知電極部。
【請求項7】
請求項6に記載の検知システムの湿潤検知電極部が、ヒトの排泄部に対面する領域に配置され、上記湿潤検知電極部に配置された第1の電極と第2の電極において所定の電位差が上記湿潤検知電極部の湿潤により生じたときに、パンツ類に設けられた導電手段に接続されている電位差検知部が作動するように、上記湿潤検知電極部と電位差検知部が電気的に接続される、パンツ類。
【請求項8】
請求項6に記載の検知システムの湿潤検知電極部が、ヒトの排泄部に対面する領域に、着脱自在な状態で配置される、請求項7に記載のパンツ類。
【請求項9】
パンツ類の、ヒトの排泄部に対面する領域に湿潤検知電極部が配置された請求項6に記載の検知システムの湿潤検知電極部に、尿及び/又は軟便、あるいは経血又は悪露若しくは破水した羊水の水分が浸透して、第1の電極と第2の電極が上記水分により上記第1の電極と第2の電極との間に生じた電位差を、パンツ類に設けられた導電手段を介して電位差検知部により検知し、検知された電位差が尿及び/又は軟便、あるいは経血又は悪露若しくは破水した羊水由来の水分であることを示す基準となる電位差以上である場合に、電位差検知部に設けられた電位差報知手段が作動するように調整されていることを特徴とする、請求項7又は8に記載のパンツ類。
【請求項10】
請求項9に記載のパンツ類を構成する、湿潤検知電極部と組み入れパンツ部のセットであって、上記組み入れパンツ部は、上記湿潤検知電極部の第1の電極と第2の電極の端子部のそれぞれを、組み入れパンツ部に設けられた導電手段上の端子部に、着脱自在な機構を介して電気的に接続させることが可能であり、かつ、上記導電手段には、電位差検知部と着脱自在に電気的に接続可能な他の端子部が設けられており、上記の湿潤検知電極部と組み入れパンツ部を電気的に接続後、さらに所定のパンツ形状完成手段により、ヒトの股部に装着可能なパンツ類となる、湿潤検知電極部と組み入れパンツ部のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分の検出手段に関する発明である。より具体的には、吸水・水浸透機能を有する吸水体において吸水・浸透された水分を検出することができる検出システムと、これを用いるパンツ類に関する発明であり、例えば、経血漏れ、悪露漏れ、尿漏れ、軟便漏れ等を検出・報知できるパンツ類として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「パンツ股部に、着脱自在に装着する感知用電極部と、電極と接触した体幹等に着脱自在に装着する報知装置からなり、報知装置には、断続作動するバイブレーターとブザーの報知器、スイッチ等を設け、更にバイブレーター、ブザー又は両者併用のいずれかの報知手段を選択し、かつ、併用の場合先行するバイブレーターの作動時間を適宜変更できる操作部を設けたことを特徴とする放尿報知装置(特許請求の範囲)」が開示されている。この特許文献1の放尿報知装置における感知用電極部は、その先端に陽極と陰極が設けられており、放尿によって取り付け部位が湿潤すればショート電流が導通しコードを通して報知装置を作動させる仕組みとなっている。
【0003】
本発明に関連するPEDOT-pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)は、導電性高分子の中でも、導電性能が高いことが知られており、既にいくつかの特許出願がなされている。ここでは本発明者が行ったPEDOT-pTSについての出願2件を先行技術文献として提示する(特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57-34445号公報
【特許文献2】WO2016/148249号 国際公開パンフレット
【特許文献3】WO2016/031872号 国際公開パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、放尿による湿潤を、そこに配置した感知用電極間に流れる電流により検知する、という発想自体は公知である。しかしながら、上記電流は、予め電池電源において発生している電位差のある末端電極の湿潤によるショートによって発生するもの(特許文献1の
図1等参照:陽極1,陰極1’共に、電池6と電気的に接続されている)であって、その鋭敏性と電流に対する人体安全性等に問題がある。
【0006】
本発明は、特許文献1とは異なり、「電極間において湿潤によってのみ発生する電位差」を用いて、湿潤を検知するシステムを確立することにより、より鋭敏で正確な、程度に応じた湿潤の検知を可能とし、経血、悪露、破水した羊水、尿、軟便等の漏れを的確に検知する製品の開発につなげることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題について検討を行ったところ、良好な導電性能を有する導電性高分子PEDOT-pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)を用いた電極と、金属電極の組を用いることにより、最大1.5V程度という大きな電位差を、湿潤の程度に応じて、湿潤状態の継続に応じた時間を伴って得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、吸水機能と水浸透機能を有する水浸透性連続領域が設けられた吸水浸透部の上記水浸透性連続領域において、PEDOT-pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)が付着している第1の電極と、金属を素材として含む第2の電極が略対向するように配置されている部分が含まれて配置されている湿潤検知電極部と、該湿潤検知電極部の上記水浸透性領域に水分が浸透して湿潤することにより、上記第1の電極と第2の電極との間に生じた電位差を検知する電位差検知部が設けられている、水分により惹起される電位差の検知システム(以下、本発明の検知システムという)を提供し;
さらに、上記電位差検知部に、検知した電位差の報知手段が設けられている態様である本発明の検知システムの上記湿潤検知電極部がヒトの排泄部に対面する領域に配置され、上記湿潤検知電極部に配置された第1の電極と第2の電極において、所定の電位差が上記湿潤検知電極部の湿潤により生じたときに、パンツ類に設けられた導電手段に接続されている電位差検知部が作動するように、上記湿潤検知電極部と電位差検知部が電気的に接続される、パンツ類(以下、本発明のパンツ類ともいう)を提供する。
【0009】
本発明の検知システムにおいて検知する対象となる水分は、純粋な水には全く限定されず、むしろ、後述するように、経血、悪露、破水した羊水、尿、軟便に由来する水分が想定されるのであって、種々の電解質等が含有されていることが前提となっている。電解質が含有されていることによる第1の電極と第2の電極との間で発生する電位差に対する阻害作用は認められていない。
【0010】
本発明の検知システムにおいて用いられる湿潤検知電極部の吸水浸透部は、その一部又は全部において水浸透性連続領域が設けられている。該吸水浸透部の素材は、上記のように吸水機能と水浸透機能を有するものであれば限定されず、綿、紙、絹等の天然素材をはじめ、ポリエステル、ナイロン(ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等)等のポリアミド繊維、ポリウレタン、レーヨン等の水浸透性の合成繊維が挙げられる。該吸水浸透部の水浸透性領域において、上記「第1の電極」と「第2の電極」が略対向するように配置されている部分が含まれている。該「第1の電極」の基材は、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、これらの合成繊維のセリシン被覆材、紙、綿、及び、絹、からなる1種又は2種以上を含有する基材であることが好適である。
【0011】
第2電極の素材として含まれる金属としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、錫、銅、銀が、単独金属又は合金の一部若しくは全部として挙げられる。これらの金属素材の中でも、アルミニウムが好適である。アルミニウムは電極として用いられると、反応性が高く、電池にした場合のエネルギー密度が極めて高い。それと同時に、Al2O3等の不動態で覆われ、耐電解液性や耐酸化性を有し、具体的な態様として排泄物と接触することが予定されている本発明においては有利な点の一つと考えられる。排泄物としては、経血、悪露、破水した羊水、尿、軟便等が挙げられる。
【0012】
さらに上記「第1の電極」と「第2の電極」の形状は、線状又は帯状であることが好適である。また、本発明の検知システムにおいては、第1の電極と第2の電極が略対向している部分において、湿潤による電位差が発生するが、かかる第1の電極と第2の電極の「対向距離」は、近ければ近いほど鋭敏になり、本発明の検知システムの具体的な用途に応じて設定することが可能である。例えば、本発明のパンツ類として用いる場合には、5mm程度を下限距離として設定することが好適である。好適距離の上限は、電極のサイズ(太さ等)によっても異なり(サイズの大きい方(太い方)が広い範囲を計測可能)、設計者が適宜判断可能である。
【0013】
さらに本発明の検知システムにおける「電位差検知部」には、検知した電位差の報知手段が設けられていることが、実施態様によっては必要になる。報知手段としては、振動、発光、発音、無音の表示等が挙げられる。また、遠隔でのモニタリング手段を用いることにより、排泄漏れに関する見守りを行うことも可能である。例えば、介護等の現場において、電位差検知部に報知信号の無線発信機能を設け、スマートフォン等のコンピュータ端末に向けての報知信号の送信等により、被介護者の排泄漏れを遠隔的に報知することができる。
【0014】
電位差検知部には、湿潤検知電極部において発生した電位差による電流を検知する電位差検知機構が、最低限備えられている。そして、該電位差検知機構は、上記発生した電位差の大きさに応じた検知を行い、これを検知信号として出力を行う。重要な点の一つとして、電位差検知部又はその外部においても、特許文献1のように、上記した第1の電極及び第2の電極に対して予め電位差を与える電源は存在しない、という点が挙げられる。すなわち、本発明においては電位差検知部にボタン電池等の電源は用いられることが許容されるが、該電源は、電位差検知部のトランジスタを駆動させ、振動素子を振動させる等のための電源であって、第1の電極と第2の電極間に電圧をかけるものではない。
【0015】
また、尿及び/又は軟便、あるいは経血又は悪露若しくは破水した羊水による湿潤を、可能な限りノイズを排除して検出するために、検知信号として出力する「発生した電位差の大きさの下限値」を設定して、該下限値よりも小さな電位差の場合には検知信号の出力を行わず、該下限値以上の電位差の大きさの場合に検知信号の出力を行う手段を該電位差検知機構において設けることができる。該下限値は、第1の電極と第2の電極間に発生する電位差内で自由に設定可能で、特に限定されるものではないが、一例として0.5V程度が想定される。この例のように0.5Vを下限値として設定可能であるのは、本発明の検知システムにおいて発生する電位差が、上記のように最大1.5V程度と大きな値であることによって可能となり、通常の人体から発生される水蒸気や汗等の水分ノイズによって本発明の検知システムが「作動状態」となることを防ぐことができる。すなわち、尿及び/又は軟便、あるいは経血又は悪露若しくは破水した羊水による湿潤に相当するような本格的な湿潤が湿潤検知電極部において発生してはじめて電位差検知機構のトランジスタがオンとなって検知信号が発生するような電位差検知部とすることが可能であり、かつ好適である。電位差検知機構により出力された検知信号は、人間の五感により把握可能な何らかの形式で表現されることが、本発明の検知システムにおいて必要である。本発明の好適な態様は、本発明の検知システムをパンツ類において用いる、尿/又は軟便、あるいは経血又は悪露若しくは破水した羊水による湿潤を報知する手段の提供であるが、この場合の上記パンツ類の装着者における好適な報知手段として、上記のように振動、発光、発音、無音の表示等が挙げられる。電位差検知機構により出力された検知信号をこれらの報知手段として顕在化するために、例えば、検知信号を、発振器を用いて適切な交流信号等に変換して、これにより、湿潤の報知機構として、振動発生器(バイブレーター)、発光器、音発生器(ブザー音,チャイム音等)、表示器(液晶ディスプレイ等)等を、単数又は複数種類作動させることができる。これらの報知機構の作動手段(トランジスタ等)に電源が必要な場合であっても、該電源は上記の第1の電極と第2の電極とは電気的に接続されていないことが必要である。これらの報知機構の作動は、第1の電極と第2の電極との間において発生した電位差、好ましくは水準以上の大きさの電位差を検知すれば、該検知シグナルによって報知機構におけるトランジスタ等の作動が行われる。一旦第1の電極と第2の電極との間に発生した、好ましくは水準以上の大きさの電位差を検知すれば、基本的には上記報知機構の作動が止まらないように設定されていることがシステム管理上好適であり、この基本的には止まらない作動を、スイッチ、タイマー等の機構を用いて、適切な時間、頻度、内容に調整することも可能である。また、「見守り目的」の場合は、上記の検知信号を、距離を隔てたスマートフォン等のコンピュータ端末に送信処理を行うことにより、上記の報知手段を遠隔者の下で顕在化させることも可能であることは上述の通りである。
【0016】
本発明のパンツ類においては、上記湿潤検知電極部が、ヒトの排泄部に対面する領域に、着脱自在な状態で配置されていることが好適であると共に、該湿潤検知電極部は、本発明の検知システムの本質的な部分の一つとなる、独立した発明である。本発明におけるパンツ類とは、排泄部に直接又は間接に接する下着類であり、商品名で表現すれば、パンツ、パンティ、ショーツ(産褥ショーツを含む)、ブリーフ、トランクス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明のパンツ類のさらに具体的な態様として、パンツ類の、ヒトの排泄部(肛門,尿道,膣口)に対面する領域に湿潤検知電極部が配置された本発明の検知システムの湿潤検知電極部に尿及び/又は軟便、あるいは経血又は悪露若しくは破水した羊水の水分が浸透して、第1の電極と第2の電極が上記水分により、上記第1の電極と第2の電極との間に生じた電位差を、パンツ類に設けられた導電手段(導電性の線状体等)を介して電位差検知部により検知し、検知された電位差が尿及び/又は軟便、あるいは経血又は悪露若しくは破水した羊水由来の水分であることを示す基準となる電位差(例えば、上記した0.5V程度)以上である場合は、電位差検知部に設けられた電位差報知手段が作動するように調整されている態様が挙げられる。この態様を具体的な製品レベルで見た場合、「尿及び/又は軟便」はオムツ漏れ対応であり、「経血」は生理用ナプキン漏れ対応、「悪露若しくは破水した羊水」は産褥パッド漏れ対応となるのが一般的である。
【0018】
さらに、本発明のパンツ類を構成する、湿潤検知電極部と組み入れパンツ部のセットが発明として提供される。すなわち、第1の電極と第2の電極とそれぞれ電気的に接続されている端子部を有する湿潤検知電極部と、組み入れパンツ部のセットであって、この組み入れパンツ部は、上記湿潤検知電極部の第1の電極と第2の電極の端子部のそれぞれを、組み入れパンツ部に設けられた導電手段上の端子部に、着脱自在な機構を介して電気的に接続させることが可能であり、かつ、上記導電手段には、電位差検知部と着脱自在に電気的に接続可能な他の端子部が設けられており、上記の湿潤検知電極部と組み入れパンツ部を電気的に接続後、さらに所定のパンツ形状完成手段(後述する「発明を実施するための形態」参照のこと)により、ヒトの股部に装着可能なパンツ類となる、湿潤検知電極部と組み入れパンツ部のセット、が提供される。
【0019】
第1の電極であるPEDOT-pTS電極(正極)と、第2の電極である金属電極(負極)の組において、湿潤によって大きな電位差を得ることができる理由については、詳細は不明であるが、PEDOT-pTSはハイドロゲルであり、水分を含むことで膨潤する性質を有しており、そのため水分子とPEDOT-pTSの接触面積が可逆的に増え、さらにPEDOT-pTSは基材上では粒子状(アイランド状)となっているので、接触面積の増大効率が良いこと等が大きく関係していると推定される。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、湿潤箇所に接触している電極により大きな電位差を得ることができる、水分により惹起される電位差の検知システムが提供され、該検知システムをパンツ類に用いることにより、排泄物、具体的には、尿及び/又は軟便によるオムツの汚れの開始、生理用ナプキン等から漏れ出した経血による汚れの開始、産褥パット等から漏れ出した悪露又は破水した羊水による汚れの開始等、を検知することができるパンツ類が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】「前面空きタイプ」の組み入れパンツの一実施態様の前面視の解説図である。
【
図3】「前面空きタイプ」の組み入れパンツの一実施態様の背面視の解説図である。
【
図4】「前面空きタイプ」の組み入れパンツへの、漏れ検知電極の装着手順の一例を示した図面である。
【
図5】漏れ検知電極と生理用ナプキンを装着した形態の「前面空きタイプ」のパンツの横視解説略図であり
【
図6-1】「クロッチ分離タイプ」の組み入れパンツの一実施態様を、クロッチパーツを分離した形で示した第1の解説図面である。
【
図6-2】「クロッチ分離タイプ」の組み入れパンツの一実施態様を、クロッチパーツを分離した形で示した第2の解説図面である。
【
図7】「クロッチ分離タイプ」の組み入れパンツへの、漏れ検知電極の装着手順の一例を示した図面である。
【
図8】「漏れ検知電極と生理用ナプキンを装着した形態の「クロッチ分離タイプ」のパンツの横視解説略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.PEDOT-pTS電極
(1)PEDOT-pTS電極の形態
本発明の第1の電極として用いられるPEDOT-pTS電極の形状は限定されるものではないが、線状又は帯状であることが好適である。即物的な表現をすれば線状は糸状、帯状はリボン状等として表現される。PEDOT-pTS電極は、上記の形状の基材にPEDOT-pTSを付着させることにより生産することができる。このPEDOT-pTS電極の基材は特に限定されないが、「紙を含有する基材」であることが好適である。「紙を含有する基材」とは、「紙からなる基材」であってもよいし、「紙と紙以外の素材が混じり合っているもの」ものであってもよい。「紙と紙以外の素材が混じり合っているもの」とは、例えば、紙糸において撚糸によって組み合わされた構成繊維の中に、紙以外の繊維が存在する場合が挙げられる。また、基材が布地の場合において、前記紙糸と他の種類の糸が組み合わさって布地、すなわち、編物、織物等を構成する場合も挙げられる。「紙を含有する基材」における紙の含有比率は、当該基材全体に対して紙が10質量%以上であり、100質量%であってもよい。特に、紙の存在を強調する場合には、同20質量%以上が好適である。
【0023】
このようにPEDOT-pTS電極の基材の主要な素材となる「紙」は、植物繊維、さらに必要に応じてその他の繊維を膠着させて製造したものであり、その製造方法は公知であり、植物繊維を叩解等により得て水等に分散させてすき上げ、乾燥させて製造することが基本である。植物繊維としては、綿等の種毛繊維;亜麻、大麻、黄麻、コウゾ、ミツマタ、ガンピ等の靱皮繊維;トウヒ、モミ、マツ、カラマツ等の針葉樹繊維;ポプラ、カバ、ブナ、ヤナギ、ユーカリ、ニレ等の広葉樹繊維;アバカ(マニラ麻)等の葉繊維;稲わら、麦わら等の稲科繊維;その他、エスパルト、アシ、竹、笹、クマザサ等が挙げられる。その他の繊維としては、ナイロン等のポリアミド繊維、PET等のポリエステル繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられ、その繊維の性質に応じて紙の構成成分として加えられる。また、繊維以外の紙において通常含有されている成分、例えば、タルク、クレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の填料、糊等も、一体として紙の成分として、本発明では定義する。上記の「紙とは別個に『紙を含有する基材』において質量計算される『紙以外の素材』」は、「一体として構成されている紙」に対して「外的に組み合わされている素材」であり、この「一体として構成されている紙の内部に含有される成分」とは異なる。
【0024】
本発明のPEDOT-pTS電極の基材の主要な素材となる「紙」の中でも、和紙は、使用素材として優れた吸湿性を有しており、さらに構成繊維が長く繊維同士の絡まり状態が適度であるゆえ、PEDOT-pTSの定着性に優れているという点において好ましい。本発明における和紙とは、実質的に靭皮繊維を構成繊維とする紙である。和紙は、本来、靱皮繊維(上記)を原料とし、ねり(植物粘液)を用いて手すき法によって作られた紙であるが、本発明においては機械すき法によって作られたものも、本発明の「和紙」に含める。また、靭皮繊維と植物性のねり以外の成分、例えば、ねりに代わる化学物質や、他の植物性成分、例えば、クマザサの繊維等が混合しているものも本発明の「和紙」に含める。
【0025】
上記のように、基材の形状は、線状又は帯状が好適である。上記のように素材が「紙を含有する基材」の場合の線状の構造は、上記のように「糸」であることが一般的である。また、帯状の場合は、薄く平らな形状(シート状)の紙であってもよいが、紙糸を基とする布地であってもよい。
【0026】
紙糸は、既に製造されたシート状の紙を細断してスリット化を行い、スリット化された紙の撚糸を行うことによって製造することができる。撚糸の際に、紙以外の繊維又は糸、例えば、絹、レーヨン、綿糸等と交撚することも可能であり、心材として他の種類の糸を用いることも可能であるが、少なくとも糸表面の全面又は一部に紙が露出していることが必要である。
【0027】
紙糸の太さは特に限定されず、0.1μm-3mm程度の範囲で必要に応じて選択することができるが、通常は1μm-1mm程度である。
【0028】
「紙を含有する基材」以外の素材としては、例えば、絹、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維等のポリエステル繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。また、絹の構成成分であるセリシンが被覆されたもの(特開2003-171874号公報)であってもよい。
【0029】
絹は、生糸であってもよいし、セリシンをはじめ、その他の不純物を除く工程である「精練」が行われたものであってもよい。精練には、セッケン精練、アルカリ精練、セッケン・アルカリ精練、酵素精練、高温・高圧精練、酸精練等が挙げられ、いずれの精練方法も用いることができる。さらに、絹と他の繊維との混紡撚糸、例えば、絹-アセテート混紡撚糸、絹-ナイロン混紡撚糸、絹-ポリエステル混紡撚糸、絹-ポリウレタン混紡繊維を用いることも可能であり、混紡の組合せはこれらに限定されない。また、絹は、通常の家蚕糸や野蚕糸、蜘蛛や蜂由来の天然絹の他、遺伝子組み換え技術を用いて得られる絹、例えば、蛍光タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ蚕から得られる「光る絹」等を用いることも可能である。
【0030】
綿糸は、単糸であってもよいが合糸であってもよい。また、ガス糸、シルケット糸、漂白糸、色糸、カタン糸、綿縫糸であってもよい。
【0031】
セリシン被覆糸のセリシンを被覆する対象となる素材としては、ナイロン等のポリアミド繊維、PET等のポリエステル繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリウレタン繊維、炭素繊維等の合成繊維;綿、麻、ジュート等の植物性繊維;上記の絹の他、羊毛、コラーゲン繊維等の動物性繊維;或いは、これらの混合繊維を用いることが可能である。ポリエステル繊維は、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維の他、PEN(ポリエチレンナフタレート)繊維、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)繊維、PBT(ポリブチレンテレフタレート)繊維等も用いることができる。ストレッチ性が付与されたポリエステル糸の形態は、フィラメント糸(長繊維)であっても、紡績工程を経た糸であってもよい。上述のように他の繊維と組み合わせた混紡糸として用いることもできる。ポリアミド繊維は、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等を用いてストレッチ性が付与された糸とすることが可能であり、上述のように他の繊維と組み合わせた混紡糸として用いることもできる。
【0032】
上記の紙糸以外の糸の太さは特に限定されず、1μm-3mm程度の範囲で必要に応じて選択することができるが、通常は10μm-1mm程度である。
【0033】
布地の好適な態様は、PEDOT-pTSが付着した上記の糸を基にする布地であり、好適には、編物又は織物である。編物又は織物は、単層であっても、複層であってもよい。単層であっても、編み方や織り方により、厚さ方向における糸同士の重なり合いを設けることが可能である。
【0034】
編物(ニット)は、基本的には一本の糸からなる布地であり、糸のループに、糸を次々と引っかけて、連続して形成された糸のループ(編み目)からなる布地である。織物のように、縦糸と横糸は用いない。
【0035】
織物は、縦糸に組み合わせて作られる布地であり、多重の織物であってもよい。多重の織物は、厚さ方向における糸同士の重なり合いを設けることが可能である。
【0036】
編み目ないし織り目は均等であることが、全面均等な電位差を得るために好ましいが、例えば、糸のほつれを防ぐために、必要に応じて閉じ編み(耳)を編物ないし織物において、外縁等に設けることも可能である。
【0037】
編み目の大きさは、特に限定されないが、通常は、10cm幅で100-5目、100-5段(編み目の大きさで1mm2-4cm2)程度である。
【0038】
織り目の大きさは、特に限定されないが、通常は、10cm幅で100-15目(織り目の大きさで1mm2-2.25cm2)程度である。
【0039】
(2)基材へのPEDOT-pTSの付着
PEDOT-pTS(poly(3,4-ethylene-dioxythiophene)-p-toluenesulfonate)は、pTS(p-toluenesulfonate)とEDOT(3,4-ethylenedioxythiophene)を重合反応させて形成される導電性高分子であり、例えば、第1の付着方法として、酸化成分とpTSを含有する有機溶媒性溶液と、EDOTの混合液の、基材(主にはシート状の基材又は糸状の基材)への接触による付着を浸漬又は印刷等にて行い、その後に重合促進処理を当該接触箇所に施すことにより、PEDOT-pTSの付着を行うことができる(特許文献2に開示された方法又はその変法)。第2の付着方法として、(a)酸化成分とpTSとを含むpTS溶液を、基材(主にはシート状の基材又は糸状の基材)に付着させる付着工程、(b)付着工程(a)において酸化成分とpTSを付着させた前記基材に、さらにEDOTを付着させて、これらにおいてPEDOT-pTSを生成する重合反応を進行させることにより、PEDOT-pTSの付着を行うことができる(第2の付着方法:特許文献3に開示された方法)。
【0040】
<PEDOT-pTSの第1の付着方法>
第1の付着方法において、pTS溶液とEDOTを混合することにより、EDOTの重合反応がpTS-EDOT混合液中において進行し、高分子ポリマーであるPEDOT-pTSが形成される。この重合反応は、下記式に従い、温度上昇に従って重合速度は大きくなり、冷蔵庫レベルの低温で保存すれば重合速度を低下させて、付着工程の時間確保に資することができる。酸化成分としてFe3+が例示されているが、これに限定されるものではない。
【0041】
【0042】
第1の付着方法において「その後に」とは、pTS-EDOT混合液が基材に接触するタイミングに関連させた「同時以後」のタイミングで重合促進処理を行うことを意味する。具体的には、両タイミングは事実上同時であっても良く、pTS-EDOT混合液が基材に接触するタイミングからタイムラグを設けて、重合促進処理を行っても良い。また、例えば基材上において重合促進処理を行う状態を継続的に保ちつつ、その上にpTS-EDOT混合液の接触を行い、当該タイムラグを実質的に設けない態様も、第1の付着方法における「その後」に含まれる。第1の付着方法におけるpTS溶液とEDOTの混合比は、容積比でpTS溶液:EDOT=10:1-100:1、好適には20:1-40:1である。
【0043】
pTSは、パラトルエンスルホン酸化合物(パラトルエンスルホン酸(トシル酸)との塩やエステル)として知られており、市販もなされている。pTS溶液の溶媒となり得る有機溶媒は、pTSと酸化成分等を溶解することが可能であり、かつ、好適には水性溶媒との相溶性が良好であるものである。具体的には、炭素原子数が1-6の1価の低級アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、又は、ヘキサノールが挙げられる。これらの1価の低級アルコールを構成する炭素原子の骨格は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、1種のみならず2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、適宜水で希釈して用いてもよい。これらの中で、炭素原子数が1-4の1価の低級アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、又は、ブタノール、がpTS溶液の有機溶媒として好適である。
【0044】
pTS溶液中に含有させる酸化成分は、pTS-EDOT混合液におけるPEDOT-pTSへの重合反応を活性化することが可能である限り特に限定されず、遷移元素、ハロゲン等が例示される。
【0045】
遷移元素としては、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛等の第一遷移元素;モリブデン、銀、ジルコニウム、カドミウム等の第二遷移元素;セリウム、白金、金等の第三遷移元素が例示される。これらの遷移元素は、金属単体としても、金属塩として用いてもよい。これらの中でも、鉄、亜鉛等の第一遷移元素を用いることが好適である。
【0046】
pTS溶液中の酸化成分の含有量は、用いる酸化成分の種類によっても異なり、上記の重合反応を活性化できる量であれば特に限定されない。例えば、第二鉄イオン(Fe3+)であれば、塩化第二鉄として、当該溶液に対して1-10質量%であることが好適であり、特に好適には3-7質量%である。この含有量が多すぎると重合反応の進行は速いが、後工程での鉄の除去が困難になり、少ないと重合反応の進行が遅くなる。
【0047】
pTS溶液中のドーパントとして働くpTSの含有量は、当該溶液に対して0.1-10質量%が好適であり、さらに好適には0.15-7質量%、特に好適には1-6質量%、最も好適には2-5質量%である。
【0048】
EDOTは、3,4-エチレンジオキシチオフェンとして公知であり、市販もなされている。EDOTは、常温において液体で、かつ、水溶性であり、適宜水等の水性溶媒に希釈して用いることも可能である。
【0049】
pTS溶液に、pTS-EDOT混合液の基材への付着性と、出来上がった導電性材における導電性能を実質的に損なわない等、本発明の効果を量的又は質的に損なわない限り、他の成分を必要に応じて配合することができる。
【0050】
当該他の成分としては、例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール-ポリプレングリコールポリマー、エチレングリコール、ソルビトール、スフィンゴシン、及び、フォスファチジルコリン、好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール-ポリプレングリコールポリマー、及び、ソルビトール、からなる1種又は2種以上が挙げられる。
【0051】
その他、第4級アルキルアンモニウム塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤;キトサン、キチン、グルコース、アミノグリカン等の天然多糖類;糖アルコール、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0052】
室温において、pTS-EDOT混合液では上記重合反応による液のゲル化が進行する。そのために、基材に付着した余分なゲル化ポリマーを除去する工程を、当該混合液との接触後に行うことが好ましい。例えば、当該混合液から分離した基材を、振動、送風、ローラーとの接触等の物理的な手段により除くことができる。重合反応を行った後に、この余分なゲル化ポリマーの除去工程を行わない場合は、当該混合液の調製後、基材と混合液との接触を短時間で行うこと、及び、混合液の調製後短時間で当該接触を行うべきとの制約が生じる。具体的には、pTS-EDOT混合液の調製後5分以内、さらに好ましくは1分以内に上記接触による付着を完了すべきである。上記の余分なゲル化ポリマーの除去工程を行う場合には、室温下であってもこの接触による付着工程の時間的な制約は事実上認められず、pTS-EDOT混合液の調製後、好適には10分以上、さらに好適には15分以上の付着工程時間を取って、基材に対するPEDOT-pTSの付着を十分なものとすることが可能である。40分以上の付着工程の時間を取っても、ゲル化の進行により、長時間の工程に見合った付着促進効果は認められない。
【0053】
第1の付着方法における接触による付着は、滴下、噴霧、浸漬、転写、又は、塗布により行われることが好適である。
【0054】
第1の付着方法における重合促進処理としては加熱処理が挙げられる。当該加熱処理としては、(α)重合促進部分における50-90℃の放熱体との接触、(β)重合促進部分が50-90℃になるように設定された熱風との接触、(γ)恒温槽等における50-90℃の加熱雰囲気との接触等が挙げられる。
【0055】
上記(α)の50-90℃の放熱体の接触は、3-10分間の加熱時間が好適であり、特に好適には3-6分間であり、最も好適には4-6分間である。
【0056】
上記(β)の重合促進部分が50-90℃になるように設定された熱風との接触である場合は、3-10分が好適であり、特に好適には4-6分である。
【0057】
上記(γ)の50-90℃になるように設定された加熱雰囲気である場合は、3-10分が好適であり、特に好適には4-6分である。
【0058】
上記加熱処理の後、溶液から基材を取り出し、好ましくは水、さらに好適には蒸留水または脱イオン水で洗浄した後、恒温槽、熱風若しくは温風、天日等により乾燥させる。
【0059】
<PEDOT-pTSの第2の付着方法>
第2の付着方法では、まず、有機溶媒性溶液に、酸化成分と、ドーパントとしてのpTSとを溶かし、その有機溶媒性溶液(pTS溶液)に基材を浸漬する。
【0060】
pTSの溶媒となり得る有機溶媒と、これに含有させる酸化成分は、上述した「第1の付着方法のpTS溶液の有機溶媒と酸化成分」と同一である。また、当該pTS溶液に含有させることができる「他の成分」も、上述した「第1の付着方法のpTS溶液における他の成分」と同一である。
【0061】
pTS溶液中の酸化成分の含有量は、用いる酸化成分の種類によっても異なり、上記の重合反応を活性化できる量であれば、特に限定されない。例えば、第二鉄イオン(Fe3+)であれば、塩化第二鉄として、pTS溶液に対して1-10質量%が好適であり、さらに好適には3-7質量%である。この含有量が多すぎると重合反応の進行は速いが、後工程での鉄の除去が困難になり、少なすぎると重合反応の進行が遅くなる。
【0062】
pTS溶液中のドーパントとして働くpTSの含有量は、当該溶液に対して0.1-10質量%が好適であり、さらに好適には0.15-7質量%、特に好適には1-6質量%、最も好適には2-5質量%である。
【0063】
第2の付着方法では、次に、上記の基材が浸漬されているPTS溶液に、モノマーのEDOTを添加した後、50-100℃で、好ましくは10分-60分間、さらに好ましくは50-80℃、10-40分間、極めて好ましくは60-80℃、10-30分間の加熱を行う。加熱後、溶液から基材を取り出し、好ましくは水、さらに好適には蒸留水または脱イオン水で洗浄した後、恒温槽、熱風若しくは温風、天日等により乾燥させる。
【0064】
この工程におけるpTS溶液とEDOTの使用量比は、容積比でpTS溶液:EDOT=10:1-100:1、好適には20:1-40:1である。
【0065】
2.金属電極
金属電極も、線状又は帯状であることが好適である。また、上記のPEDOT-pTS電極(正極)の形状と同一又は類似の形状を組み合わせて用いることが好適である。また、金属電極(負極)の中でもアルミニウム電極が好適であることは、上述した通りである。
【0066】
3.基礎的試験例
太さ50-200μm長さ5cm程度のアルミ線又はアルミ箔(第2の電極)と、PEDOT-pTSを重合した長さ5cm程度の繊維(第1の電極)を、一定の間隔(5mm以上)を空けて水または塩を含む水溶液中に投入すると、水の場合で0.6-0.8V、体液組成に近い生理食塩水などの塩を含む水溶液においては1-1.5Vの起電力を発生した。使用したアルミ線の太さや長さを変えてもあまり顕著な変化は観測できなかった。
【0067】
この基礎的な試験により得られた知見が、本発明を創出する基礎となっている。
【0068】
4.本発明の実施態様の開示
以下、図面を用いて、経血漏れの報知に関する検知システムないしパンツ類についての、本発明の実施態様を開示する。本発明は、経血漏れに関して開示された実施態様に限定されるものではない。さらに本発明には、尿漏れや軟便漏れ、さらに悪露や破水による羊水漏れ等の報知に関する検知システムないしパンツ類に関する態様も含まれている。
【0069】
本実施態様の経血漏れ防止パンツは、漏れ検知電極と組み入れパンツで構成されており、組み入れパンツの前面部(腹側)に設けられた2本の導電性糸(「導電手段」にあたる)に、漏れ検知電極の第1の電極(PEDOT-pTS電極)と第2の電極(金属電極)がそれぞれ電気的に接続されるように該漏れ検知電極部を着脱自在に組み入れることができる構造であることを特徴としている。
【0070】
(1)漏れ検知電極(
図1)
図1は、漏れ検知電極10の解説図である。漏れ検知電極10は、本発明における「湿潤検知電極部」にあたる。漏れ検知電極10は、前面基板部111と、折り込み部112を挟んで後面基板部113とからなる基板部11に、線状又は帯状の第1の電極(PEDOT-pTS電極)12と、線状又は帯状の第2の電極(金属電極)13が互いに略対向するように所定の位置に配置されている、第1の電極12と第2の電極13は互いに略対向しつつ、電極交差部(151,152,153)において互いに交差している。基板部11の素材は、水分を吸収浸透させることが可能であれば限定されず、例えば、綿、紙、絹等の天然素材をはじめ、ポリエステル、ナイロン(ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等)等のポリアミド繊維、ポリウレタン、レーヨン等の水浸透性の合成繊維等が挙げられることは上述の通りである。また、本実施例では漏れ検知電極10は、後述する組み入れパンツ20又は40に対して着脱自在であるが、変更例として、直接パンツ又はクロッチパーツに縫い付け、接着等の手段によって定着化されている態様も可能である。また、折り込み部112は、前面基板部111と後面基板部113との間の折り曲げが自在な構造となっている。前面基板部111の最前面向かって左端近傍と同向かって右端近傍に導電金属等の導電性と剛性を伴う導電材製であって、後述する組み入れパンツ20(40)の接続用端子2101、2102(4101,4102)(これらも導電金属等の導電性と剛性を伴う導電材製)と、嵌合等の着脱自在とする結合手段(例えば、凸側ホックと凹側ホックの組による嵌合)を伴って第1の接続用ガイド端子141(向かって左側)と第2の接続用ガイド端子142(向かって右側)が、前面基板部111の電極配置側に設けられている。これらの接続用ガイド端子141、142もまた、導電金属等の導電性と剛性を伴う導電材製である。また、該接続用ガイド端子141と142の前面基板部111を挟んだ非電極配置側に、第1の探知電極側留め具143と第2の探知電極側留め具144が設けられている。これらの非電極配置側の留め具143、144が導電材製であるか否かは、具体的な態様によって異なる。第1の電極12は、第1の接続用ガイド端子141から2手に分かれて、一方(121)は略真っ直ぐに後面方向に伸びた形で前面基板部111上に配置され、他方(122)は、向かって右斜め方向に伸びて右端少し手前で真っ直ぐに後面方向に折れ曲がって伸びた形で配置され、2手に分かれた第1の電極121と122は、前面基板部111の後面側終端近傍で合流して、1本の第1の電極123となって、そのまま後面基板部113の後面側に向かって真っ直ぐ伸張して配置されている。第2の電極13は、第2の接続用ガイド端子142から2手に分かれて、一方(131)は略真っ直ぐに後面方向に伸びた形で前面基板部111上に配置され;他方(132)は、向かって左斜め方向に伸びて左端少し手前で真っ直ぐに後面方向に折れ曲がって伸びた形で配置され;2手に分かれた第2の電極131と132は、前面基板部111の後面側終端近傍で合流して、1本の第2の電極133となって、そのまま後面基板部113の後面側に向かって真っ直ぐ伸張して配置されている。前面基板部111において、第2の電極132と131は、それぞれ第1の電極121と122の外側に配置され、第1の電極121と第2の電極132、及び、第1の電極122と第2の電極131は、前面基板部111の幅方向(矢印1)において略対向している。また、後面基板部113においては、第1の電極123と第2の電極133は、互いに略対向して配置されている。前面基板部111における長手方向の第1の電極と第2の電極の対向領域(121-132,122-131:これらは囲み点線にて象徴的に示したもので、真の対向領域は図中これらの電極が対向している領域全般に及ぶ)は、装着した生理用ナプキン30の側部からの経血の漏れ(横漏れ)を検知するための領域であり、後面基板部113における第1の電極123と第2の電極133の対向領域(123-133:これは囲み点線にて象徴的に示したもので、真の対向領域は図中これらの電極が対向している領域全般に及ぶ)は、装着した生理用ナプキン30の後ろ(尻部側)からの経血の漏れ(後漏れ)を検知するための領域である。前面基板部111におけるこれらの領域に漏れ出した経血が上記横漏れ対応領域(121-132,122-131:これらは囲み点線にて象徴的に示したもので、真の対向領域は図中これらの電極が対向している領域全般に及ぶ)に浸透して該領域が湿潤することにより、これらの領域の第1の電極と第2の電極との間に電位差が生じ;後面基板部113におけるこれらの領域に漏れ出した経血が上記後漏れ対応領域(123-133:これは囲み点線にて象徴的に示したもので、真の対向領域は図中これらの電極が対向している領域全般に及ぶ)に浸透して該領域が湿潤することにより、これらの領域の第1の電極と第2の電極との間に電位差が生じる。これらの電位差が、本実施態様における経血の漏れシグナルとして働くのである。漏れ検知電極10は、後述するように、生理用ナプキンと一緒に用いて経血漏れを検知するための、本発明における「湿潤検知電極部」の一態様である。経血漏れの検知を目的とする場合であっても、適宜他の形状、内容に変更することが可能である。さらに他の具体的な用途、例えば、尿漏れ及び/又は軟便漏れの検知を目的とする場合は、使用時に基板部11が、少なくとも尿及び/又は軟便(大便)の排泄口である肛門ないし尿道口に直接的又は間接的に当接するように設計される。また、産褥に伴う悪露又は破水による羊水漏れの検知を目的とする場合は、使用時に基盤部11が、少なくとも悪露又は破水による羊水の排出口である膣口と共に、好ましくは肛門ないし尿道口も広範囲に直接的又は間接的に当接するように設計される。間接的当接とは、例えば、生理用ナプキンやオムツ、さらに産褥パッドのように、排泄口により近く接する他の部材があり、該他の部材の排泄口から見て外側に漏れ検知電極10のような「湿潤検知電極部」を当接させる態様をいう。後述するように、漏れ検知電極10を用いる本実施例は、間接的当接が見込まれて設計されている例である。
【0071】
(2)「前面空きタイプ」のパンツ(
図2,3)
図2は、「前面空きタイプ」の組み入れパンツ20(以下、パンツ20ともいう)の一実施態様の前面視(パンツの腹側からの視線)の解説図である。
図2(1)は、パンツ20の前面解放時を示している。パンツ20の全体像としては、パンツ20のマチ部21の前マチ接ぎ線に相当する箇所がマチ幅方向に切断されており、前中心丈側の切断線211aの前中心丈側直近の左右両裾近傍の2点に、嵌合面がパンツ外側に設けられている導体製の第1の接続用端子2101と第2の接続用端子2102が設けられている。他方、後中心丈方向側の切断線211bのさらに後中心丈方向側直近の左右両裾近傍のパンツ内側2点に第1のパンツ側留め具2103と第2のパンツ側留め具2104が設けられている。この第1のパンツ側留め具2103は、上記の第1の接続用端子2101と着脱自在であると同時に、漏れ探知電極10の非電極配置側の面に設けられた第1の探知電極側留め具143と着脱自在である。また、第2のパンツ側留め具2104は、上記の第2の接続用端子2102と着脱自在であると同時に、漏れ探知電極10の非電極配置側の面に設けられた第2の探知電極側留め具144と着脱自在である。このパンツ20における非電極配置側の留め具143、144とパンツ側留め具2101、2102の組は、導電材製であっても絶縁材製であってもよい。着脱自在な嵌合の形態は限定されないが、例えば、凸側ホックと凹側ホックの組による嵌合が挙げられる。
【0072】
上記第1の接続用端子2101と第2の接続用端子2102のそれぞれから、前中心丈上部に向けて導電性の糸(221,222)が、パンツ外側又は内側に設けられており、それぞれが電位差検知部の端子となる、導電性材料製の第1の検知部結合用端子2105と第2の検知部結合用端子2106と電気的に接続されている。第1の検知部結合用端子2105と第2の検知部結合用端子2106は、電位差検知部23の正極と負極に、好ましくは着脱自在な形態で電気的な接続を形成することができる。着脱自在な嵌合の形態は限定されないが、例えば、凸側ホックと凹側ホックの組による嵌合が挙げられる。ただし、この電気的な接続は、電位差検知部内の報知機構におけるトランジスタ等の作動等に必要な電源(ボタン電池等の小型蓄電池が好適である)とは独立しており、専ら第1の電極検知部12と第2の電極13の間において、経血による湿潤により生じた電位差を、電位差検知部23に向けて伝達するための電気的な接続である。そして、経血による湿潤による電位差による電位差検知部23内の報知機構が、発汗、水蒸気等のノイズ水分により誤作動することを防止するために、報知機構のトランジスタ等が作動する作動シグナルが発生されるための「第1の電極12と第2の電極13の間で発生する電位差の下限値」(例えば、0.5V程度)が、電位差検知部23において設定されていることが好適であることは、上述した通りである。
図2(1)のパンツ20を背面視したものが、
図3(1)である。
【0073】
図2(2)は、
図2(1)の前面解放時のパンツ20のマチ部21を織り込んで、第1のパンツ側留め具2103と第2のパンツ側留め具2104を、第1の接続用端子2101と第2の接続用端子2102に対して嵌合させて、パンツ20を「通常着用時」の形とした状態を示している。さらに
図2(3)は、第1の検知部結合用端子2105と第2の検知部結合用端子2106に対して、電位差検知部23の正負の接続用端子(図示せず)を電気的に接続した状態で結合させた形を示している。
図3(2)は、上記の
図2(2)(3)(通常着用時)を背面視したものである。
【0074】
(3)「前面空きタイプ」のパンツへの漏れ検知電極等の装着(
図4,5)
図4は、「前面空きタイプ」のパンツ20への、漏れ検知電極10の装着手順の一例を示している。すなわち
図4(1)に示すように、パンツ20の前中心丈側を捲り上げて、パンツ20のマチ部21と後中心丈側を露出させ;
図4(2)に示すように、マチ部21上の第1のパンツ側留め具2103と第2のパンツ側留め具2104に対して、漏れ検知電極10の第1の探知電極側留め具143と第2の探知電極側留め具144を嵌合し(図示せず)、マチ部21上に漏れ検知電極10の電極側を表に向けた状態で固定し;
図4(3)に示すように、該漏れ検知電極10の前面基板部111の上に生理用ナプキン30を配置する。この状態を保ちながら、漏れ検知電極10上の第1の接続用ガイド端子141と第2の接続用ガイド端子142を、パンツ20に設けられた第1の接続用端子2101と第2の接続用端子2102に対して嵌合等、例えば、凸側ホックと凹側ホックの組による嵌合等によって物理的・電気的な接続を行い、「漏れ検知電極10と生理用ナプキン30を装着した形態のパンツ200」となる。使用者は、このパンツ200を所定の要領で股尻部に装着して、本発明のパンツ類として使用することができる。この一連の装着の工程は、「所定のパンツ形状完成手段」の一例にあたる。
【0075】
図5は、上記のパンツ200の横視解説略図であり、向かって左側は前面(腹)方向であり、右側は背面(尻)方向である。パンツ200のマチ部21の直上に漏れ検知電極10の前端がパンツ200の前中心丈の底基点近傍(固定ポイントA)において固定されつつ、その前面基板部111には生理用ナプキン30が載置されている。上記の固定ポイントAは抽象化記号であり、具体的には上記の通りに「マチ部21上の第1のパンツ側留め具2103と第2のパンツ側留め具2104に対して、漏れ検知電極10の第1の探知電極側留め具143と第2の探知電極側留め具144と嵌合することで固定されつつ載置されている」ことを抽象化している。固定ポイントAからは、固定ポイントBに向けて導電性糸(221,222)が、パンツ200の前中心丈上方に向かって縫い付け等によって、パンツ200の生地上に設けられている。固定ポイントBもまた、第1の検知部結合用端子2105と第2の検知部結合用端子2106を示す抽象化記号であり、具体的には上記の通りに「第1の検知部結合用端子2105と第2の検知部結合用端子2106は、電位差検知部23の正極と負極(
図5では231として両極を抽象化)に、好ましくは着脱自在な形態で電気的な接続を形成することができる」ことを抽象化している。
【0076】
(4)「クロッチ(マチ部)分離タイプ」のパンツ(
図6-1,
図6-2)
図6-1,
図6-2は、「クロッチ(マチ部)分離タイプ」の組み入れパンツ40(以下、パンツ40ともいう)の一実施態様を、クロッチパーツ42を分離した形で示した解説図面である。
図6-1(1)はクロッチパーツ42が取り外されている前面解放時のパンツ本体41の前面視の解説図面であり、
図6-1(2)は同パンツ本体41の背面視の解説図面である。
図6-2(3)は、パンツ本体41に装着して用いるクロッチパーツ42の解説図面である。パンツ40と、上記のパンツ20との差異は、パンツ20におけるマチ部21に代えて、着脱自在のクロッチパーツ42を用いている点である。パンツ40の前面側のクロッチパーツ42を着脱する箇所は、パンツ20の第1の接続用端子2101と第2の接続用端子2102に対応した形で、パンツ40には、第1の接続用端子4101と第2の接続用端子4102が設けられている。これらの接続用端子は、クロッチパーツ42に設けられた、クロッチパーツ側留め具421と422、並びに、漏れ検知用電極10の第1の接続用ガイド端子143と第2の接続用ガイド端子144と、着脱自在であり、結合状態においてこれらは下記の導電性の糸(431,432)に対して電気的に接続された状態になっていることが必要であるため、これらの着脱手段は、例えば、導電金属等の導電性と剛性を伴う導電材製の凸側ホックと凹側ホックの組による嵌合が挙げられる。特に、本例のパンツ40における「漏れ検知用電極10の第1の接続用ガイド端子143と第2の接続用ガイド端子144」は、導電材製であるところが、絶縁材製であることも許容される「上記したパンツ20の例」と異なる点に留意が必要である。
【0077】
上記第1の接続用端子4101と第2の接続用端子4102のそれぞれから、前中心丈上部に向けて導電性の糸(431,432)が、パンツ外側又は内側に設けられており、それぞれが電位差検知部の端子となる、導電性材料製の第1の検知部結合用端子4106と第2の検知部結合用端子4107と電気的に接続されている。第1の検知部結合用端子4106と第2の検知部結合用端子4107は、電位差検知部44の正極と負極に、好ましくは着脱自在な形態で電気的な接続を形成することができる。着脱自在な嵌合の形態は限定されないが、例えば、凸側ホックと凹側ホックの組による嵌合が挙げられる。ただし、この電気的な接続は、電位差検知部内の報知機構におけるトランジスタ等の作動等に必要な電源(ボタン電池等の小型蓄電池が好適である)とは独立しており、専ら第1の電極検知部12と第2の電極13の間において、経血による湿潤により生じた電位差を、電位差検知部23に向けて伝達するための電気的な接続である。そして、経血による湿潤による電位差による電位差検知部44内の報知機構が、発汗、水蒸気等のノイズ水分により誤作動することを防止するために、報知機構のトランジスタ等が作動する作動シグナルが発生されるための「第1の電極12と第2の電極13の間で発生する電位差の下限値」(例えば、0.5V程度)が、電位差検知部44において設定されていることが好適であることは、上述した通りである。
図6-1(1)のパンツ40を背面視したものが、
図6-1(2)である。後中心丈の下方から上方に向けて先端R型の切れ込み42’が、クロッチパーツ42の先端R形状よりもやや小さく設けられており、パンツ40の切れ込みの先端R部分1箇所(パンツ側留め具4103)と左右中間部2箇所(パンツ側留め具4104,4105)に、パンツ側留め具が設けられている。パンツ側留め具4103は、クロッチパーツ側留め具423と着脱自在であり、パンツ側留め具4104と4105は、それぞれクロッチパーツ側留め具424と425と着脱自在である。着脱自在とする手段は限定されないが、例えば、凸側ホックと凹側ホックの組による嵌合、ボタンとボタン穴の組による嵌合、マジックテープ(登録商標)等による接着等が挙げられる。ここに示した留め具は、クロッチパーツ側留め具423、424、425、及びこれらと組になる、パンツ側留め具4103、4104、4105に関しては、積極的に導電する必要が無いため、着脱自在とする手段を実現する素材が導電体であっても、絶縁体であっても良い。クロッチパーツ42は、上記のように、パンツ40の先端R型の切れ込み42’を覆うことが可能な先端R形状を有する擬三角形状の布地である。パンツ40に対するクロッチパーツ42の装着の際には、上記パンツ側留め具4103、4104、及び4105に対してクロッチパーツ側留め具423、424及び425と嵌合させ、さらにパンツ40の第1の接続用端子4101と第2の接続用端子4102に対して、クロッチパーツ側留め具421と422を嵌合固定することにより、検知電極未搭載の「通常着用時」のパンツ40となる。クロッチパーツ側留め具421、422は、これらと組になる第1の接続用端子4101と第2の接続用端子4102と共に素材が導電体である必要がある。着脱自在とする形態も導電状態が保たれている限り限定されず、例えば、導電金属等の導電性と剛性を伴う導電材製の凸側ホックと凹側ホックの組による嵌合が挙げられることは上述した通りである。通常着用時のパンツ40の正面図は、
図2(2)の「通常着用時のパンツ20」と略同一であり、その背面図は
図6-2(4)に示した。
【0078】
(5)「クロッチ分離タイプ」のパンツへの漏れ検知電極等の装着(
図7,8)
図7は、「クロッチ分離タイプ」のパンツ40への、漏れ検知電極10の装着手順の一例を示している。すなわち、
図7(1)に示すように、クロッチパーツ42に設けられたクロッチパーツ側留め具421と422に対して、漏れ検知電極10の第1の探知電極側留め具143と第2の探知電極側留め具144を嵌合し、クロッチパーツ40上に漏れ検知電極10の電極側を表に向けた状態で固定し;
図7(2)に示すように、該漏れ検知電極10の前面基板部111の上に生理用ナプキン50を配置し;この状態を保って、
図7(3)に示すように、パンツ40の背面に設けられたパンツ側留め具4103、4104、及び4105に対して、クロッチパーツ40のクロッチパーツ側留め具423、424、及び425を嵌合してクロッチパーツ40のR形状側をパンツ40に対して固定し;
図7(4)に示すように、クロッチパーツ40の残部をパンツ40の前面側に回し込んで、パンツ40の前面に設けられている第1の接続用端子4101と第2の接続用端子4102に対して、クロッチパーツ40に固定されている漏れ検知電極10の第1の接続ガイド用端子141と第2の接続ガイド用端子142を嵌合し、固定することで「漏れ検知電極10と生理用ナプキン50を装着した形態のパンツ400」となる。使用者は、このパンツ400を所定の要領で股尻部に装着して、本発明のパンツ類として使用することができる。この一連の装着の工程は、「所定のパンツ形状完成手段」の一例にあたる。
【0079】
図8は、上記のパンツ400の横視解説略図であり、向かって左側は前面(腹)方向であり、右側は背面(尻)方向である。パンツ400の固定されたクロッチパーツ40の直上に漏れ検知電極10の前端がパンツ400の前中心丈の底基点近傍(固定ポイントA’)において固定されつつ、その前面基板部111には生理用ナプキン50が載置されている。上記の固定ポイントA’は抽象化記号であり、具体的には上記の通りに「クロッチパーツ40上の第1のパンツ側留め具4103と第2のパンツ側留め具4104に対して、漏れ検知電極10の第1の探知電極側留め具143と第2の探知電極側留め具144と嵌合することで固定されている」ことを抽象化している。固定ポイントA’からは、固定ポイントB’に向けて導電性糸(431,432)が、パンツ400の前中心丈上方に向かって縫い付け等によって、パンツ400の生地上に設けられている。固定ポイントB’もまた、第1の検知部結合用端子4106と第2の検知部結合用端子4107を示す抽象化記号であり、具体的には上記の通りに「第1の検知部結合用端子4106と第2の検知部結合用端子4107は、電位差検知部44の正極と負極(
図8では441として両極を抽象化)に、好ましくは着脱自在な形態で電気的な接続を形成することができる」ことを抽象化している。また、クロッチパーツ40のR形状側は、クロッチパーツ側留め具423とパンツ側留め具4103の嵌合を介して、パンツ400に固定化されている。
【0080】
パンツ20ないし40は、生理用ナプキン30又は50と一緒に用いて経血漏れを検知するために、漏れ検知電極10を装着するためのパンツ類の態様の例示である。経血漏れの検知を目的とする場合であっても、湿潤検知電極部の形状、内容と共に、適宜他の形状、内容のパンツ類に変更することができる。さらに他の具体的な用途、例えば、尿漏れ及び/又は軟便漏れの検知を目的とする場合も、使用者の性別、年齢、健康状態、嗜好等に応じた形態のパンツ類を、湿潤検知電極部の形状、内容と組み合わせて適宜採用することができる。また、産褥に伴う悪露又は破水による羊水漏れの検知を目的とする場合も、使用者の年齢、健康状態、嗜好等に応じた形態のパンツ類を、湿潤検知電極部の形状、内容と組み合わせて適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0081】
漏れ検知電極の幅方向矢印:1
漏れ検知電極:10
基板部:11
前面基板部:111
折り込み部:112
後面基板部:113
第1の電極(PEDOT-pTS電極):12,121,122,123
第2の電極(アルミニウム電極):13,131,132,133
第1の電極と第2の電極の対向領域:121-132,122-131,123-133
第1の接続用ガイド端子:141
第2の接続用ガイド端子:142
第1の探知電極側留め具:143
第2の探知電極側留め具:144
電極交差部:151,152,153
前面空きタイプの組み入れパンツ:20
マチ部:21
前中心丈側の切断線:211a
後中心丈側の切断線:211b
第1の接続用端子:2101
第2の接続用端子:2102
第1のパンツ側留め具:2103
第2のパンツ側留め具:2104
第1の検知部結合用端子:2105
第2の検知部結合用端子:2106
導電性の糸:221,222
電位差検知部:23
電位差検知部の両極:231
クロッチ分離タイプの組み入れパンツ:40
パンツ本体:41
第1の接続用端子:4101
第2の接続用端子:4102
パンツ側留め具:4103,4104,4105
第1の検知部結合用端子:4106
第2の検知部結合用端子:4107
先端R型の切れ込み:42’
クロッチパーツ:42
クロッチパーツ側留め具:421,422,423,424,425
導電性の糸:431,432
電位差検知部:44
電位差検知部の両極:441
生理用ナプキン:30,50
固定ポイント:A,B,A’,B’