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特開2024-104713冷凍ヤーコン及び冷凍ヤーコンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104713
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】冷凍ヤーコン及び冷凍ヤーコンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/10 20160101AFI20240729BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20240729BHJP
   A23B 7/06 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A23L19/10
A23L19/00 A
A23L19/00 Z
A23B7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023018753
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】300070712
【氏名又は名称】幸福の科学
(72)【発明者】
【氏名】金原 永治
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 達夫
【テーマコード(参考)】
4B016
4B169
【Fターム(参考)】
4B016LC03
4B016LE03
4B016LG06
4B016LK05
4B016LK06
4B016LP03
4B016LP07
4B016LP11
4B016LP13
4B169CA01
4B169CA05
4B169HA03
4B169KA07
4B169KB03
4B169KC22
4B169KC37
4B169KD10
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、冷凍ヤーコン解凍後の残存酵素による褐変や腐食、ブランチング処理による水溶性の機能性成分の流出及び加熱によるフラクトオリゴ糖の分解といった現象を抑制し、さらに、機能性成分による苦味や泥臭さが直接舌に伝わることを抑制することにある。
【解決手段】 生のヤーコン塊根に対して、カット加工後、ヤーコンの葉抽出液と乳化剤と油を混合した乳化液に浸し、115~125℃で5~6分、または、135~145℃で3~4分、油を用いてブランチング処理を施し、その後急速冷凍することにより、同質量の生のヤーコン塊根と比較して、カットされた状態で、酵素残存量が3.5%以下、ヤーコン由来の総ポリフェノール量が150%以上、DPPHラジカル消去活性が100%以上、フラクトオリゴ糖が100%以上であり、表面層にヤーコン葉の成分(カフェオイル誘導体)、乳化剤成分及び油成分を含み、解凍後に褐変しない冷凍ヤーコンを製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同質量の生のヤーコン塊根と比較して、カットされた状態で、酵素残存量が3.5%以下、ヤーコン由来の総ポリフェノールが130%以上、DPPHラジカル消去活性が100%以上、フラクトオリゴ糖が100%以上であり、表面層にヤーコン葉の成分(カフェオイル誘導体)、乳化剤成分及び油成分を含むことを特徴とする冷凍ヤーコン。
【請求項2】
生のヤーコン塊根に対して、カット加工後、ヤーコンの葉抽出液と乳化剤と油を混合した乳化液に浸し、115~125℃で5~6分、または、135~145℃で3~4分、油を用いてブランチング処理を施し、その後急速冷凍することを特徴とする請求項1に記載の冷凍ヤーコンの製造方法。
【請求項3】
前記乳化液は、ヤーコン葉濃縮液と油と乳化剤を混合することを特徴とする請求項2に記載の冷凍ヤーコンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤーコンを主原料とする加工食品に関し、より詳細には、ヤーコン塊根をカットしてブランチングした後、急速冷凍させることにより得られる冷凍ヤーコン及び冷凍ヤーコンの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤーコンは、南米アンデス高地原産のキク科多年草の植物で、日本へは1984年にニュージーランドを経て渡来し、それ以降、各地で栽培されるようになった。ヤーコンに含まれる栄養素であるフラクトオリゴ糖には整腸作用が、ポリフェノールには抗酸化作用があり、食物繊維はダイエットや健康に有効であり、健康食品用の食材として有望である。ヤーコン特有の問題点としては、褐変しやすさ及び泥臭さが挙げられる。また、冷凍ヤーコンは、解凍すると酵素の働きによって褐変や腐敗が起こりやすく、その改善が行われていないために、市場に流通していない。
【0003】
長期保存のための冷凍加工を行う際には、褐変の対策として、例えば、特許文献1のように、湯を用いたブランチング処理により、酵素を失活させ、保存性を高めるのが一般的であり、湯を用いたブランチング処理は、褐変を防ぐ有効的な方法である。
【0004】
また、ヤーコンの苦みを軽減するため、例えば、特許文献2のように、短時間(3分間)の湯を用いたブランチング処理を行うことが効果的とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-178536号公報
【特許文献2】特開2004-173684号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の製造方法は、褐変を防ぐ有効的な方法であるが、フラクトオリゴ糖や、その他の含有成分であるポリフェノールや、ビタミンCなどの機能性成分は水溶性であるため、湯を用いたブランチング処理の時点で機能性成分の多くが失われてしまう。また、フラクトオリゴ糖は熱によって分解が促進されるという問題を有している。さらに、特許文献1においては、油を用いて、135℃で6分間、105℃で44分間の計50分間のフライ処理を行っている。しかし、高温で長時間加熱することにより、フラクトオリゴ糖が果糖などに分解され、かつ、油加工することにより、ヤーコンが油を吸収してカロリーが高まり、かつ、油の酸化を防ぐ対策が必要であると考えられる。
【0007】
特許文献2に記載されている製造方法では、ヤーコン塊根をそのまま100℃の熱湯で3分間ブランチングし、冷却後にカットする方法が用いられている。しかし、水溶性成分が湯によって流出している欠点に加え、カットをしない状態では、塊根への熱の通りが悪く、3分間の処理では十分な酵素の失活を行うことができず、カット後に残存酵素による褐変が発生すると考えられる。
【0007】
本発明の課題は、上記のごとく、残存酵素による褐変、ブランチング処理による水溶性の機能性成分の流出及び加熱することによるフラクトオリゴ糖の分解といった現象を抑制し、さらに、機能性成分による泥臭さを抑制することにあり、本発明は、上記課題を解決することにより、解凍後も褐変が抑制され、泥臭さがなく、生のヤーコン本来の栄養価を十分に有している冷凍ヤーコン及び冷凍ヤーコンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
生のヤーコン塊根に対して、カット加工後、ヤーコンの葉抽出液と乳化剤と油を混合した乳化液に浸し、115~125℃で5~6分、または、135~145℃で3~4分、油を用いてブランチング処理を施し、その後急速冷凍することにより、同質量の生のヤーコン塊根と比較して、カットされた状態で、酵素残存量が3.5%以下、ヤーコン由来の総ポリフェノール量が130%以上、DPPHラジカル消去活性が100%以上であり、フラクトオリゴ糖が糖全体の100%以上を占め、表面層にヤーコン葉の成分(カフェオイル誘導体)、乳化剤成分及び油成分を含み、解凍後に褐変しない冷凍ヤーコンを製造する。
【発明の効果】
【0009】
冷凍した後、解凍しても褐変が抑制され、苦味や泥臭さが直接舌に伝わることを抑制し、生のヤーコン本来の栄養価を十分に有している冷凍ヤーコン及び冷凍ヤーコンの製造方法を提供することができる。
詳細には、油加工によって、褐変をもたらす酵素を十分に失活させ、ポリフェノールや糖の流出を防ぎ、また、ヤーコン葉の成分添加によってさらにポリフェノールを増加させ、油の酸化をより抑制させ、保存性が高める。さらに、乳化剤による被膜効果により、余分な油の吸収が抑制し、カロリーの増加を抑制する。
【発明を実施するための最良の形態】
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の製造方法の概略を示す図である。
図2】本発明の工程6後のカットヤーコン及び、その他の条件におけるカットヤーコンの、ペルオキシダーゼ酵素活性度の比較を示す図である。
図3】本発明の工程6後のカットヤーコン及び、その他の条件におけるカットヤーコンの、総ポリフェノール量の比較を示す図である。生鮮カットヤーコンの総ポリフェノール量がグラフの縦軸の100%に相当する。
図4】本発明の工程6後のカットヤーコンと、本発明の工程1、2、4を省いたヤーコン葉濃縮液を含まないカットヤーコンとの、総ポリフェノール量の比較を示す図である。
図5】本発明の工程1、2、4を省いたヤーコン葉濃縮液を含まないカットヤーコンの温度上昇によるDPPHの変化と、生鮮のカットヤーコンのDPPHの比較を示す図である。
図6】本発明の工程6後のカットヤーコンと、本発明の工程1、2、4を省いたヤーコン葉濃縮液を含まないカットヤーコンとのDPPHの比較を示す図である。
図7】生鮮のカットヤーコンと、湯100℃で6分加熱したカットヤーコンと、本発明の工程6後のカットヤーコンのフラクトオリゴ糖の量の比較を示す図である。
図8】官能評価における、苦味に対する結果を示す図である。
図9】官能評価における、泥臭さに対する結果を示す図である。
図10】本発明の冷凍ヤーコンを流水で10分解凍し、10分常温においた写真である。
図11】ブランチング施していない冷凍ヤーコンを流水で10分解凍し、10分常温においた写真である。
【0011】
図1に示すように、まず、ヤーコン葉を煮詰め、→その煮汁と乳化剤と油をミキサーで乳化させることで、ヤーコン葉混合乳化液を作成する。次に生鮮ヤーコンを水洗い・切断→ヤーコン葉混合乳化液への液浸→油を用いたブランチング→冷水へ液浸→急速冷凍の工程を経ることで冷凍ヤーコンを作成する。以下に、工程の詳細を述べる。
【0012】
(工程1)ヤーコン葉を2時間以上煮詰めることによって、ヤーコン葉中のポリフェノール類(特にカフェオイル誘導体)を煮汁に流出させ、その濃縮液を作成する。煮汁は常温で30℃以下になるまで冷ます。
【0013】
(工程2)工程1の濃縮液と油と乳化剤をミキサーで混合させることにより、油と煮汁を分離させずに混合でき、かつ、親水性と親油性の両方の性質を持ち、ヤーコン葉成分を含んだ乳化液を作成する。
【0014】
乳化剤の種類はW/O型・HLB値が2-6の乳化剤とする。例えば、グリセリン脂肪酸エステルが一般的である。W/O型の乳化剤を用いることによって、水分量が90%に近いヤーコンであっても、油との親和性を高めることができる。
【0015】
(工程3)収穫したヤーコンを水洗いし、皮付きのまま6-7gにカットする。フラクトオリゴ糖やポリフェノールは表皮付近に多く含まれる。
【00016】
用いる芋の形状にはこだわらないが、重量が300-500gで糖分が10%以上のものを用いる。
【00017】
ヤーコンの品種としては、サラダオトメ、サラダオカメ、アンデスの雪、アンデスの乙女などが挙げられるが、今発明ではヤーコンの品種を問わない。また、用いる油の種類も問わない。
【0018】
(工程4)カット後すぐに工程2の乳化液に攪拌しながら30分間ひたすことにより、光や空気を遮断され、カット直後の変色を防ぐ。また、ヤーコン葉成分を含んだ乳化液がヤーコン塊根の周りにコーティングされることにより、ヤーコン葉に含まれるポリフェノールがカットしたヤーコン塊根に付加され、ポリフェノール含有量および、抗酸化能を増すことができる。また、そのポリフェノールの一種であるカフェオイル誘導体の強いα-グルコシダーゼ阻害作用によって、体内におけるフラクトオリゴ糖以外の糖や油による血糖値上昇を防ぐ。
【0019】
(工程5)工程4のカットヤーコンを115-125℃で5-6分、または、135-145℃で3-4分、油を用いてブランチングをすることにより、湯を用いたブランチングと比較して水溶性成分(ポリフェノール・糖・ビタミンCなど)の流出を十分に防止でき、短時間で酵素失活処理を行うことができる。また、高温・短時間で加工を行うことにより、作業時間の短縮とフラクトオリゴ糖の分解抑制をもたらすことができる。また、油で加熱するときに乳化剤による皮膜効果が生まれ、ヤーコン塊根成分の流出を防ぐと同時に、余分な油の吸収を防ぎ、ヤーコンらしい美観と食感を維持することができる。また、ヤーコンの周りを覆っている油によって、ヤーコン特有の泥臭さが直接舌に伝わることを防ぐことができる。
【0020】
(工程6)ブランチングしたヤーコン塊根を冷水(-5℃以下)に2分間浸すことにより、油加熱による熱を十分に取り除くことでヤーコンの形を維持し、かつ、余分な油を取り除くことができる。
【0021】
工程6後のカットヤーコンは、同質量の生のカットヤーコン塊根と比較して、酵素残存量が3.5%以下、ポリフェノール濃度が130%以上、DPPHラジカル消去活性が100%以上であり、フラクトオリゴ糖が糖全体の100%以上を占め、表面層にヤーコン葉の成分(カフェオイル誘導体)、乳化剤成分及び油成分を含む。
【0022】
(工程7)工程6の後に、-30℃以下の冷気を吹きつけて急速冷凍にかけることにより、ヤーコン塊根内の水分が凍る温度帯を素早く通過させることができるため、氷の結晶の成長を抑制し、細胞破壊を限りなく防ぐことが可能となる。
【0023】
工程7後の冷凍ヤーコンを解凍したものは、生鮮のヤーコンと比較して、苦味や泥臭さ・褐変反応が抑制されている。
【0024】
本発明のヤーコンの製造法の実施例を以下に示す。
【実施例
収穫して2週間以内のヤーコン塊根(300g以上)と加工当日に収穫した葉を用いた。まず、ヤーコン葉を水洗いした後、葉の重量に対して十倍の水と一緒に鍋の中で2時間煮詰め、その後葉のみを取り出し、煮汁を常温で冷ました(工程1)。次に、工程1で作成した煮汁と米油を3:1(V:V)で混ぜ合わせ、その総重量に対して、5%の乳化剤を加え、ミキサーを用いて3分ほど十分に泡が発生するまで混ぜ合わせた。乳化剤の種類はHLB値が3.3のグリセリン脂肪酸エステルを用いた(工程2)。次に、ヤーコン塊根を皮が剥がれない程度に水洗いをして水切りをした。その後、6-7gの立方体にカットし(工程3)、すぐに工程2の乳化液に攪拌しながら20分以上浸した。(工程4)。20分以上乳化液に浸したカットヤーコンを140℃のこめ油で4分間加熱した。ヤーコンを入れた時に、あまり温度変化が起きない程度の油量を用いた。また、本発明の効果を示すため、油温度120℃または140℃で加熱時間2、4、6分および、湯100℃で2、4、6分加熱した試料も同時に作成し、同様に測定を行なった。(工程5)油による加熱終了後、すぐに氷水に2分浸し、十分に熱を取り除くことでヤーコンの形を維持し、余分な油を取り除いた(工程6)。氷水に浸した後、キッチンペーパーの上に加工済みヤーコンを広げ、数分間水切りをし、-50℃の冷凍庫で急速冷凍させた(工程7)。完成した冷凍ヤーコンは、一般的な-30℃の冷凍庫で保管した。
【0025】
ブランチング時間の目安とする酵素としては、ブランチングの適正度を評価する指標として一般に用いられるペルオキシダーゼ活性を指標とした。測定方法はグアイヤコール試薬を用いた方法を採用した(参考文献:Peroxidase activity and sensory quality of ready to cook mixed vegetables for soup:Combined effect of biopreservatives and refrigerated storage (Food Sci.Technol,Campinas,35(1):86-94,2015)。
工程6処理後のヤーコンおよび、そのほかの条件で加工したヤーコンの酵素活性の比較を図2に示す。
図2の結果から、同質量の生鮮カットヤーコンと比較して、油120℃で6分、または、油140℃で4分加熱した場合に、酵素の残存活性を3.5%以下に減らすことが可能であることが分かった。
また、お湯100℃の結果と比較して、短時間で十分な酵素失活処理が可能になることがわかる。
【0026】
総ポリフェノール濃度の測定は、フォーリン・チオカルト(Folin-Ciocalteu)法を用いた[参考文献:Total phenolic content and antioxidant activity of yacon(Smallanthus Sonchifolius Poepp.and Endl.)Chips:Effect of Cultivar,Pre-Treatment and Drying、Agriculture 8(12);183,2018]。
工程6処理後のヤーコンおよび、そのほかの条件で加工したヤーコンのポリフェノール濃度の変化を図3及び図4に示す。また、乳化剤の有無によるポリフェノール含有量の変化を図5に示す。吸光度が高いほどポリフェノール含有量が多いことを示す。図3の結果から、同質量中の生鮮ヤーコンと比較して、油120℃で6分、または、油140℃で4分加熱した場合に、ポリフェノール濃度が生鮮のヤーコンと比べて130%以上になっていることが確認された。また、湯100℃の加工と比較して、油120℃で6分、または、油140℃での加工は、同重量中のポリフェノール含量の向上にとても効果的であることがわかった。また、図4の結果からヤーコン葉濃縮液を含む乳化液に浸すことによって、ポリフェノール含有量が1.2倍以上増加することもわかった。
【0027】
抗酸化能の測定方法として、DPPHラジカル消去活性が一般的に用いられる。今回はDPPHラジカル消去活性の測定を行うことにより、加工による抗酸化能の変化を比較した。[参考文献:Application of the DPPH assay for evaluating the antioxidant capacity of food additives(Analytical Science 2014,Vol.30)]
生鮮ヤーコン及び、工程6処理後カットヤーコンのDPPHラジカル消去活性の比較を図5に示す。また、ヤーコン葉濃縮液を含む乳化液に浸す工程の有無によるDPPHラジカル消去活性の変化を図6に示す。図5の結果から、加熱温度が高まることによって、DPPHラジカル消去活性が低くなることがわかった。しかし、図6の結果から、ヤーコン葉濃縮液を含む乳化液に浸すことによって、同質量の生鮮カットヤーコンと比較して100%以上のDPPHラジカル消去活性をもたらすことが可能とわかった。乳化液のコーティング効果により、ヤーコン本来のDPPHラジカル消去活性が保持されると同時に、ヤーコン葉の成分によって、さらなるDPPHラジカル消去活性の向上がもたらされたと考えられる。
【0028】
フラクトオリゴ糖の含有量の測定には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。生鮮ヤーコン及び、工程6処理後のフラクトオリゴ糖[GF2(1-Kestose)・GF3(Nystose)・GF4(1-Fructofuranosylnystose)]の含有量の比較を図8に示す。図7の結果から、同質量の生鮮カットヤーコンと比較して、油120℃で6分もしくは油140℃で4分ブランチングしたカットヤーコンは、フラクトオリゴ糖が100%以上含まれていることが分かった。また、湯100℃でブランチングを行った場合のフラクトオリゴ糖の含有量と比較して、油120℃で6分もしくは油140℃で4分ブランチングしたカットヤーコンは、1.2倍以上のフラクトオリゴ糖を保持していることがわかった。
【0029】
生鮮のヤーコン(A)と、工程7処理後の冷凍ヤーコンの解凍品(B)と、ブランチング処理を施していない冷凍ヤーコンの解凍品(C)の官能評価結果を図8、9に示す。この評価は6人を対象にアンケートを行い、1~5の5段階で評価していただいた。図8、9の結果から、油によるブランチング処理によって、ヤーコンの苦味や泥臭さが生鮮のヤーコンと比べて改善されたことがわかる。また、表1、図10、11から、油によるブランチングによって、冷凍ヤーコンを解凍した後の褐変を抑制し、本来のヤーコンよりも良い美観をもたらしたことがわかる。
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11