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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104715
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/32 20060101AFI20240729BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240729BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20240729BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H01F27/32 150
H01F27/29 T
H01F27/29 J
H01F27/29 125
H01F37/00 A
H01F37/00 E
H01F37/00 F
H01F37/00 G
H01F37/00 H
H01F5/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023044378
(22)【出願日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2023008551
(32)【優先日】2023-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】都梅 智也
(72)【発明者】
【氏名】荒澤 崇
(72)【発明者】
【氏名】大井 康裕
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E043EA01
5E043EA05
5E043EB01
5E043EB02
5E043EB04
5E044BA04
5E044BB05
5E044BC01
5E044CA09
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB08
5E070BA08
5E070CA12
5E070DA03
5E070EA02
5E070EB01
(57)【要約】
【課題】高電圧に対応可能であり、かつ、面実装可能なコイル装置を提供すること。
【解決手段】第1端子41a,41bと接続する第1ワイヤ20と、第2端子42a,42bと接続する第2ワイヤ30と、前記第1端子41a,41bと前記第2端子42a,42bとを固定する端子台50a,50bと、前記第1ワイヤ20が巻回され第1軸に沿って延在する第1巻胴部61と、前記第2ワイヤ30が巻回され前記第1軸に沿って延在する第2巻胴部62と、第1巻胴部61と第2巻胴部62とを繋ぐフランジ部63a,63bと、を有するボビン60と、前記ボビン60に収容されるコア10と、を有するコイル装置である。前記端子台50a,50bは、前記ボビン60の前記フランジ部63a,63bの少なくとも一部を覆っている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と接続する第1ワイヤと、
第2端子と接続する第2ワイヤと、
前記第1端子と前記第2端子とを固定する端子台と、
前記第1ワイヤが巻回され第1軸に沿って延在する第1巻胴部と、前記第2ワイヤが巻回され前記第1軸に沿って延在する第2巻胴部と、第1巻胴部と第2巻胴部とを繋ぐフランジ部と、を有するボビンと、
前記ボビンに収容されるコアと、を有し、
前記端子台は、前記ボビンの前記フランジ部の少なくとも一部を覆っているコイル装置。
【請求項2】
前記ボビンは、第1ボビンと第2ボビンとを有し、
前記第1ボビンと前記第2ボビンとは、前記第1巻胴部の第1突き合せ部と、前記第2巻胴部の第2突き合せ部で連結してあり、
前記第1突き合せ部は、前記第1軸方向に沿って前記第2突き合せ部とは位置ずれして配置してある請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記コアは、第1コアと第2コアとを有し、
前記第1コアおよび前記第2コアは、前記第1軸に沿って向き合わされる対向面を有し、
前記対向面は、前記第1突き合せ部と前記第2突き合せ部との双方に位置ずれして配置してある請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記コアは、前記第1巻胴部に収容される第1巻芯部と、前記第2巻胴部に収容される第2巻芯部と、前記第1巻芯部と前記第2巻芯部とを繋ぐ連結部と、を有し、
前記連結部は、前記第1巻芯部および前記第2巻芯部の各基端が接続する内端面と、前記内端面とは前記第1軸に沿って反対の位置に配置されている外端面と、前記内端面と前記外端面とを繋ぐ側面と、を有し、
前記フランジ部は、前記内端面を覆うフランジ内端壁と、前記側面を覆うフランジ側壁と、を有し、
前記端子台は、前記外端面を覆う端子台外端壁と、前記フランジ側壁を覆う端子台側壁と、を有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記第1端子および前記第2端子は、前記端子台外端壁に固定される端子主片と、前記端子台側壁の頂面に配置されるベース片と、を有し、
前記ベース片は、前記頂面から所定隙間を空けて配置されている請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記第1端子および前記第2端子は、前記端子台側壁の底面から所定隙間を空けて配置されている実装片を有する請求項4に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記フランジ内端壁は、前記第1巻胴部と前記第2巻胴部との間に、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの沿面距離を確保するフランジ側仕切り部を有する請求項4に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記端子台は、前記第1端子と前記第2端子との間に、前記第1端子と前記第2端子との沿面距離を確保する端子台側凹凸部を有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの上方を覆うように、前記端子台に装着されるカバーをさらに有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項10】
前記フランジ内端壁は、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間に、フランジ側仕切り部を有し、
前記カバーは、前記フランジ側仕切部と嵌合して、前記第1ワイヤのコイル部と前記第2ワイヤのコイル部とを仕切るカバー側仕切部を有する請求項9に記載のコイル装置。
【請求項11】
前記端子台は熱硬化性樹脂で構成され、前記ボビンは熱可塑性樹脂で構成される請求項1に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大電流に対応可能なコイル装置として、特許文献1に示すコモンモードチョークコイルが提案されている。
【0003】
特許文献1のコモンモードチョークコイルは、コアとワイヤとの間にボビンを配置することで大電流への対応を実現している。しかしながら、近年、高電圧に対応可能であり、かつ、面実装可能なコイル装置の需要が高まっている。特許文献1のようなコイル装置では、近年の高電圧化への対応が十分でないと共に、面実装が困難であるという課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-7123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みてなされ、その目的は、高電圧に対応可能であり、かつ、面実装可能なコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
第1端子と接続する第1ワイヤと、
第2端子と接続する第2ワイヤと、
前記第1端子と前記第2端子とを固定する端子台と、
前記第1ワイヤが巻回され第1軸に沿って延在する第1巻胴部と、前記第2ワイヤが巻回され前記第1軸に沿って延在する第2巻胴部と、第1巻胴部と第2巻胴部とを繋ぐフランジ部と、を有するボビンと、
前記ボビンに収容されるコアと、を有し、
前記端子台は、前記ボビンの前記フランジ部の少なくとも一部を覆っている。
【0007】
このように構成することで、端子台がフランジ部の少なくとも一部を覆うことになり、ワイヤとコアとの沿面距離を確保し易くなり、より効果的に絶縁が確保され、近年の高電圧化に対応可能である。また、端子台に端子が固定されることで、コイル装置を基板などへの面実装に対応し易くなる。
【0008】
前記ボビンは、第1ボビンと第2ボビンとを有し、前記第1ボビンと前記第2ボビンとは、前記第1巻胴部の第1突き合せ部と、前記第2巻胴部の第2突き合せ部で連結してあってもよい。好ましくは、前記第1突き合せ部は、前記第1軸方向に沿って前記第2突き合せ部とは位置ずれして配置してある。
【0009】
それぞれの巻胴部の突き合せ部の位置が異なることで、コイル装置を実装した基板などが変形することで生じる応力の影響を緩和することができ、コイル装置自体の強度が向上すると共に、コイル装置を面実装した後の強度も向上する。
【0010】
好ましくは、前記コアは、第1コアと第2コアとを有し、前記第1コアおよび前記第2コアは、前記第1軸に沿って向き合わされる対向面を有し、前記対向面は、前記第1突き合せ部と前記第2突き合せ部との双方に位置ずれして配置してある。
【0011】
コアの対向面と、巻胴部の突き合せ部の位置が異なることで、コイル装置の強度が、さらに向上する。なお、第1コアの対向面と第2コアの対向面とは、接触していてもよく、その間にギャップが形成してあってもよい。
【0012】
前記コアは、前記第1巻胴部に収容される第1巻芯部と、前記第2巻胴部に収容される第2巻芯部と、前記第1巻芯部と前記第2巻芯部とを繋ぐ連結部と、を有し、
前記連結部は、前記第1巻芯部および前記第2巻芯部の各基端が接続する内端面と、前記内端面とは前記第1軸に沿って反対の位置に配置されている外端面と、前記内端面と前記外端面とを繋ぐ側面と、を有していてもよい。好ましくは、前記フランジ部は、前記内端面を覆うフランジ内端壁と、前記側面を覆うフランジ側壁と、を有し、前記端子台は、前記外端面を覆う端子台外端壁と、前記フランジ側壁を覆う端子台側壁と、を有する。
【0013】
このように構成することで、コアの連結部は、ボビンのフランジ部と端子台によって完全に覆われるため、コアの絶縁性がさらに向上する。特に、連結部の側面では、フランジ側壁と端子台側壁とで二重に覆われるため、端子と連結部との沿面距離がさらに向上する。
【0014】
前記第1端子および前記第2端子は、前記端子台外端壁に固定される端子主片と、前記端子台側壁の頂面に配置されるベース片と、を有し、前記ベース片は、前記頂面から所定隙間を空けて配置されていてもよい。前記第1端子および前記第2端子は、前記端子台側壁の底面から所定隙間を空けて配置されている実装片を有していてもよい。このように構成することで、端子と連結部との沿面距離がさらに向上する。
【0015】
前記フランジ内端壁は、前記第1巻胴部と前記第2巻胴部との間に、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの沿面距離を確保するフランジ側仕切り部を有してもよい。前記端子台は、前記第1端子と前記第2端子との間に、前記第1端子と前記第2端子との沿面距離を確保する端子台側凹凸部を有してもよい。
【0016】
前記第1ワイヤおよび前記第2ワイヤの上方を覆うように、前記端子台に装着されるカバーをさらに有してもよい。
【0017】
カバーは、端子やワイヤを保護することができると共に、端子やワイヤから他の部品に漏電することを防止する。また、カバーの平坦な面を吸着ノズルなどで吸着することで、コイル装置を容易に運搬することができる。
【0018】
前記フランジ内端壁は、前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの間に、フランジ側仕切り部を有し、前記カバーは、前記フランジ側仕切部と嵌合して、前記第1ワイヤのコイル部と前記第2ワイヤのコイル部とを仕切るカバー側仕切部を有してもよい。
【0019】
このように構成することで、第1ワイヤと第1ワイヤとの絶縁がさらに向上する。
【0020】
前記端子台は熱硬化性樹脂で構成され、前記ボビンは熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。
【0021】
このように構成することで、ボビンと端子台との間の組み合わせ部分での割れ欠けを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は一実施形態に係るコイル装置の全体斜視図である。
図2図2図1に係るコイル装置の分解斜視図である。
図3図3図1に係るコイル装置の一部分の側面図である。
図4図4図1に係るコイル装置の一部分の平面図である。
図5図5図1に係るコイル装置の一部分の正面図である。
図6図6図1に示すVI-VI線での断面図である。
図7図7図1に示すVII-VII線での断面図である。
図8図8図1に示すVIII-VIII線での断面図である。
図9図9図1に示すコイル装置の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。また、以下、実施形態により具体的に説明するが、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0024】
図1に示す本発明の一実施形態に係るコイル装置1は、たとえばコモンモードフイルタ、コモンモードチョークコイルなどとして好適に用いられる。図1に示すように、本実施形態に係るコイル装置1は、全体として略直方体形状を有する。コイル装置1は、その外形寸法は限定されないが、図1に示すように、たとえばX軸方向長さL0は23.5~32.5mm、Y軸方向幅W0は、23.9~31.1mm、Z軸方向高さH0は14.4~21.6mmとすることができる。
【0025】
図2に示すように、コイル装置1は、コア10と、第1ワイヤ20と、第2ワイヤ30と、ボビン60と、端子台50a,50bと、第1端子41a,41bと、第2端子42a,42bと、を有する。また、コイル装置1は、ケース100を有する。
【0026】
コア10は、第1軸であるX軸方向に延在する第1巻芯部11および第2巻芯部12を有する。また、コア10は、第2軸であるY軸方向に延在し、第1巻芯部11および第2巻芯部12の端部をそれぞれ繋ぐ連結部13a,13bを有する。コア10は、X軸方向およびY軸方向に対称な形状を有するが、必ずしも対称でなく、異なる分があってもよい。なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に略垂直である。
【0027】
コア10は、磁性体を含んでいる。磁性体としては、たとえばNi-Zn系や、Mn-Zn系などのフェライト、あるいはFe-Ni合金、Fe-Si合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Co合金、Fe-Si-Al合金、アモルファス鉄等の金属の磁性体などが例示される。コア10は、これらの磁性体の粉体を、成型および焼結することにより作製され得る。また、コア10は、磁性体を樹脂で固めて成形してもよい。樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、その他の合成樹脂、あるいはその他の非磁性体材料等が例示される。
【0028】
図2に示すように、コア10は、連結部13aを有する第1コア10aと、連結部13bを有する第2コア10bと、に分割され得る。第1コア10aおよび第2コア10bは、それぞれ対称のU字形状を有していてもよい。連結部13aは、第1巻芯部11および第2巻芯部12の各基端が接続する内端面14aと、内端面14aとはX軸に沿って反対の位置に配置されている外端面15aと、を有する。また、連結部13aは、内端面14aと外端面15aとを繋ぐ側面を有する。連結部13aは、概略直方体形状を有し、側面は、第1側面16a、第2側面17a、第3側面18aおよび第4側面19aを有する。
【0029】
連結部13bは、連結部13aと同様の形状を有する。連結部13bは、内端面14bと、外端面15bと、内端面14bと外端面15bとを繋ぐ側面を有する。連結部13bは、概略直方体形状を有し、側面は、第1側面16b、第2側面17b、第3側面18bおよび第4側面19bを有する。
【0030】
図2に示すように、第1コア10aは、第1巻芯部11に対向面11aと、第2巻芯部12に対向面12aと、を有する。第2コア10bの第1巻芯部11は、X軸に沿って対向面11aに向き合わされる対向面11bを有する。第2コア10bの第2巻芯部12は、X軸に沿って対向面12aに向き合わされる対向面12bを有する。
【0031】
図8に示すように、コア10は、第1コア10aの対向面11aと第2コア10bの対向面11bとが接着剤で固定され、第1コア10aの対向面12aと第2コア10bの対向面12bとが接着剤で固定されたリング形状を有する。対向面11a,11bおよび対向面12a,12bは、それぞれ直接的に接触していてもよいが、対向面11a,11bの間および対向面12a,12bの間には、ギャップが形成してあってもよい。コア10は、図2に示すボビン60に収容してある。図7に示すように、コア10は、ボビン60と接着剤70で接着して固定されていてもよい。接着剤70は絶縁性であることが好ましい。
【0032】
図2に示すように、ボビン60は、第1ワイヤ20が巻回されX軸に沿って延在する第1巻胴部61と、第2ワイヤ30が巻回されX軸に沿って延在する第2巻胴部62と、第1巻胴部61と第2巻胴部62とを繋ぐフランジ部63a,63bと、を有する。
【0033】
ボビン60は、絶縁材料で形成されている。絶縁材料は、特に限定されないが、第1巻胴部および第2巻胴部を薄く成形し易く、かつ、耐トラッキング性に優れた材料であることが好ましい。このような絶縁材料は、たとえば、耐熱性ポリアミド(半芳香族ポリアミド)、耐熱性ナイロン(PA9T,PA6Tなど)、PPSなどを用いることができる。
【0034】
あるいは、ボビンを形成する絶縁材料としては、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の一例としては、汎用プラスチックに加えて、スーパーエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。スーパーエンジニアリングプラスチックの一例としては、PEEK、PBN、PBI、PPS、LCP、PAI、PTFE、PSF、PCTFE、PAR、PI、PES、PFA、ETFE、PVDFなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱温度が240℃以上であるPAI、PPS、PEEKなどが好適に利用でき、耐熱温度が280℃以上のLCP等も好適に利用できる。これらの材料は、耐衝撃性が高く、靭性にも優れ切削加工もしやすいため、ボビン同士の接合のような細かい加工にも好適に利用することができる。
【0035】
ボビン60は、第1ボビン60aと第2ボビン60bとを有する。第2ボビン60bは、第1ボビン60aは同じ形状を有するが、多少異なる形状を有していてもよい。以下、第1ボビン60aに関する説明は、性質が異ならない範囲で第2ボビン60bにも当てはまる。
【0036】
図8に示すように、第1ボビン60aの第1突き合せ部61aは、第2ボビン60bの第1突き合せ部61bに挿入されている。第2ボビン60bの第2突き合せ部62bは、第1ボビン60aの第2突き合せ部62aに挿入されている。第1ボビン60aと第2ボビン60bとは、第1巻胴部61の第1突き合せ部61a,61bと、第2巻胴部62の第2突き合せ部62a,62bで連結してある。第1突き合せ部61a,61bは、X軸方向に沿って第2突き合せ部62a,62bとは位置ずれして配置してある。第2突き合せ部62a,62bは、第1突き合せ部61a,61bよりもX軸方向に沿ってフランジ部63aに近い位置に配置されている。
【0037】
図8に示すように、フランジ部63aは、内端面14aを覆うフランジ内端壁64aと、連結部13aの側面16a,17a,18a,19aを覆うフランジ側壁65aと、を有する。フランジ部63aには、ボビン60とは別体の端子台50aが取り付けられている。フランジ部63bは、内端面14bを覆うフランジ内端壁64bと、連結部13bの側面16b,17b,18b,19bを覆うフランジ側壁65bと、を有する。
【0038】
フランジ部63bには、ボビン60とは別体の端子台50bが取り付けられている。図7に示すように、端子台50a,50bは、接着剤70でコア10に固定してもよい。頂面15a,15bと外端面15a,15bの交差する部分に接着剤70を配置することで端子台50a,50b、ボビン60およびコア10を容易に固定することができるとともに、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bとコア10との縁面距離を向上させることができる。
【0039】
端子台50aは、外端面15aを覆う端子台外端壁51aと、フランジ側壁65aを覆う端子台側壁52aと、を有する。端子台50bは、外端面15bを覆う端子台外端壁51bと、フランジ側壁65bを覆う端子台側壁52bと、を有する。図3に示すように、端子台50aには、第1端子41aと第2端子42aとが固定されている。端子台50bには、第1端子41bと第2端子42bとが固定されている。
【0040】
端子台50a,50bは、ボビン60に例示される絶縁材料で形成されていてもよいが異なる絶縁材料で形成されていてもよい。端子台50a,50bに用いられる絶縁材料は、特に限定されないが、260℃以上の高温に耐えうる耐熱性に優れた材料であることが好ましい。端子台50a,50bに用いられる絶縁材料は、たとえば、LCPなどを用いることができる。
【0041】
あるいは、端子台50a,50bを形成する材料としては、熱硬化性樹脂であることが好ましい。熱硬化樹脂としては、UP、UF、MF、PUR、SI、PL-FLE、PL-PEM、EP・EG・FRPなどが挙げられる。熱硬化性樹脂は要求特性に応じて種々選択可能であるが、一例としては、高温における強度の観点からはフェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられ、電磁気特性の観点からはユリア樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられ、難燃性の観点からはメラミン樹脂などが挙げられる。
【0042】
好ましくは、本実施形態では、端子台50a,50bが熱硬化性樹脂で形成され、しかもボビン60が熱可塑性樹脂で形成されることが好ましい。このように構成することで、曲げや歪曲などのクリープ特性に優れ、機械的強度が強く、かつ耐衝撃性にも優れたコイル部品を得ることが可能となる。また、ボビン60と端子台50a,50bとの間の組み合わせ部分での割れ欠けを有効に防止することができる。
【0043】
第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bは、たとえばタフピッチ鋼、リン青銅、黄銅、鉄、ニッケル、ニッケルアロイ、ステンレスなどの金属で構成される。第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bは、導電性を持つ金属板を、打ち抜きプレス加工して折曲成形することなどにより一体成形することができる。また、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bの外面には、ハンダ付着強化層としてスズまたはスズを含む合金などのめっき膜が形成してあることが好ましい。
【0044】
図4に示すように、端子台50aは、第1端子41aと第2端子42aとの間に、Y軸に沿って起伏する端子台側凹凸部57aを有する。端子台50bも同様に、第1端子41bと第2端子42bとの間に、Y軸に沿って起伏する端子台側凹凸部57bを有する。特に、端子台外端壁51a,51bに形成されている端子台側凹凸部57a,57bは、後述するカバー100のカバー側凹凸部106と勘合可能に形成してある。
【0045】
図3に示すように、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bは、それぞれ端子主片43と、実装片44と、ベース片45と、立上片46と、接続片47と、を有する。第1端子41aおよび第2端子42aは、端子台外端壁51aに固定されている。第1端子41bおよび第2端子42bは、端子台外端壁51bに固定されている。第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bの実装片44は、同一のXY平面に配置してある。
【0046】
図5に示すように、端子主片43は、端子台外端壁の係合凸部58に係合して端子の位置決めをする係合溝431を有する。端子と端子台に固定する方法は、特に限定されない。端子を端子台に圧入して固定してもよく、あるいは、インサート成型によって端子を端子台に固定してもよい。また、端子主片43を端子台外端壁に接着剤を用いて固定してもよい。図7に示すように、端子主片43は、端子台外端壁から離れるように突出する突出部430を有していてもよい。
【0047】
実装片44は、端子台側壁の底面54a,54bから所定隙間W1を空けて、底面54a,54bに略平行に配置してある。ベース片45は、端子台側壁の頂面53a,53bから所定隙間W2を空けて、頂面53a,53bに略平行に配置されている。所定隙間W1,2は、特に限定されないが、好ましくは0以上、さらに好ましくは端子を構成する金属板の厚みの0.1倍以上である。
【0048】
図3に示すように、立上片46は、ベース片45からZ軸に沿って端子台50a,50bから離れる方向に延び、第1ワイヤ20および第2ワイヤ30のリード部22a,22b,32a,32bと接続する接続片47に繋がっている。接続片47は、フランジ内端壁64a,6dbから離れる方向に延びている。また、接続片47は、第1ワイヤ20および第2ワイヤ30のリード部22a,22b,32a,32bを固定するカシメ片48を有する。
【0049】
図4に示すように、第1ワイヤ20は、第1巻胴部61に巻回されるコイル部21と、コイル部21から引き出されるリード部22a,22bと、を有する。リード部22aは第1端子41aに接続されている。リード部22bは第1端子41bに接続されている。
【0050】
図4に示すように、第2ワイヤ30は、第2巻胴部62に巻回されるコイル部31と、コイル部31から引き出されるリード部32a,32bと、を有する。リード部32aは第2端子42aに接続されている。リード部32bは第2端子42bに接続されている。
【0051】
ワイヤのリード部22a,22b,32a,32bは、接続片47および/または各カシメ片48とは、レーザ溶接、ハンダ接続、熱圧着接合、アーク溶接、抵抗溶接などの方法で接続される。
【0052】
第1ワイヤ20および第2ワイヤ30としては、特に限定されず、たとえば銅などで構成される平角線、丸線、撚り線、リッツ線、編組線などの導電性芯線、あるいはこれらの導電性芯線を絶縁被覆してあるワイヤなどを用いることができる。第1ワイヤ20および第2ワイヤ30の直径Dは、特に限定されないが、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bの板厚の1.2~5倍程度の外径を有してもよい。第1ワイヤ20および第2ワイヤ30の直径Dは、たとえば0.9~2.7mmであってもよい。
【0053】
図8に示すように、第1ワイヤ20と第2ワイヤ30との間には、フランジ内端壁64aに形成されているフランジ側仕切部64a1と、フランジ内端壁64bに形成されるフランジ側仕切部64b1と、が配置されている。フランジ側仕切部64a1,64b1は、カバー100に形成されるカバー側仕切部104と勘合しており、第1ワイヤ20と第2ワイヤ30のコイル部21,31とを仕切っている。
【0054】
図7に示すように、カバー100は、第1ワイヤ20と第2ワイヤ30のZ軸方向の上方を覆う天板105を有する。カバー100は、端子台50a,50bに装着される。カバー100と端子台50a,50bとの装着は、カバー100の接着面103(図9参照)を端子台50a,50bの頂面53a,53bに接着剤などで固定し装着してもよく、勘合構造によって固定できるようにしてあってもよい。
【0055】
カバー100は、端子台外端面51a,51bおよび端子台側壁52a,52bの側面55a,55b,56a,56bを覆う外壁107を有する。図9に示すように、端子台外端面51a,51bを覆う外壁107には、切り欠き101が形成してある。図1に示すように、端子の突出部430が、切り欠き101から突出しており、コイル装置1を基板などに実装する場合には、突出部430にハンダフィレットを形成することも可能になる。
【0056】
図9に示すように、端子台外端面51a,51bを覆う外壁107には、Y軸に沿って起伏するカバー側凹凸部106が形成してある。図8に示すように、カバー側凹凸部106は、端子台側凹凸部57a,57bと勘合するように形成してある。
【0057】
このように、本実施形態では、端子台側凹凸部57a,57bがあることで、第1端子41a,41bと第2端子42a,42bとの縁面距離が長くなっている。さらに、ケース側凹凸部106が、端子台側凹凸部57a,57bに勘合することで、ケース100と端子台50a,50bとの固定が強固になるとともに、第1端子41a,41bと第2端子42a,42bとの絶縁がより向上する。
【0058】
カバー100は、ボビン60に例示される絶縁材料で形成されていてもよいが異なる絶縁材料で形成されていてもよい。カバー100に用いられる絶縁材料は、たとえば、LCPなどを用いることができる。
【0059】
本実施形態では、図1に示すように、カバー100は、天板105と外壁107によって、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bや第1ワイヤ20および第2ワイヤ30を保護することができると共に、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bや第1ワイヤ20および第2ワイヤ30から他の部品に漏電することを防止する。また、カバーの平坦な天板105を吸着ノズルなどで吸着することで、コイル装置1を容易に運搬することができる。
【0060】
図7に示すように、コア10がボビン60に収容されている。コア10の第1巻芯部11はボビン60の第1巻胴部61に覆われており、第2巻芯部12はボビン60の第2巻胴部62に覆われている。コア10の連結部13a,13bは、ボビン60のフランジ部63a,63bと、端子台50a,50bによって完全に覆われている。そのため、コア10が、第1ワイヤ20および第2ワイヤ30から絶縁できる。
【0061】
また、図6に示すように、ボビン60のフランジ側壁65a,65bが、連結部13a,13bの側面16a,17a,18a,19a,16b,17b,18b,19bを覆っている。さらに、そのボビン60のフランジ側壁65a,65bが、端子台側壁52a,52bによって覆われている。このように、コア10の連結部13a,13bが二重に覆われることで、第1ワイヤ20および第2ワイヤ30からコア10との沿面距離を確保し易くなる。また、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bが端子台50a,50bに接触している端子主片43からコア10までの縁面距離も向上する。そのため、コイル装置1は、より効果的に絶縁が確保され、たとえば800kV以上といった、近年の需要が高まっている高電圧化に対応可能である。
【0062】
図3に示すように、端子台50a,50bに第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bが固定されており、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bの実装片44は、同一のXY平面に配置してある。そのため、コイル装置1を基板などへの面実装に対応し易くなる。
【0063】
図7に示すように、実装片44は、端子台側壁の底面54a,54bから所定隙間W1を空けて、底面54a,54bに略平行に配置してある。ベース片45は、端子台側壁の頂面53a,53bから所定隙間W2を空けて、頂面53a,53bに略平行に配置されている。このように構成することで、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bとコア10との縁面距離がさらに向上する。また、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bがZ軸方向に端子台50a,50bから所定隙間を有することで、コイル装置1を面実装した後の強度も向上する。
【0064】
図8に示すように、第1突き合せ部61a,61bは、X軸方向に沿って第2突き合せ部62a,62bとは位置ずれして配置してある。それぞれの巻胴部61,62の突き合せ部の位置が異なることで、コイル装置1を実装した基板などが変形することで生じる応力の影響を緩和することができ、コイル装置1自体の強度が向上すると共に、コイル装置1を面実装した後の強度もさらに向上する。
【0065】
図2に示すように、第1コア10aと第2コア10bとの対向面11a,11b,12a,12bは、第1突き合せ部61a,61bと第2突き合せ部62a,62bとの双方に位置ずれして配置してある。コア10の対向面11a,11b,12a,12bと、巻胴部61,62の突き合せ部61a,61b,62a,62bの位置が異なることで、コイル装置1の強度がさらに向上する。
【0066】
なお、上述した実施形態は、特許請求の範囲の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
【0067】
上述の実施形態では、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bは、それぞれ端子主片43と、実装片44と、ベース片45と、立上片46と、接続片47と、を有するS字形状を有するが、他の形状であってもよい。たとえば、第1端子41a,41bおよび第2端子42a,42bは、立上片46および接続片47を有しないU字形状であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…コイル装置
10…コア
10a…第1コア
10b…第2コア
11…第1巻芯部
11a,11b…対向面
12…第2巻芯部
12a,12b…対向面
13a,13b…連結部
14a,14b…内端面
15a,15b…外端面
16a,16b…第1側面
17a,17b…第2側面
18a,18b…第3側面
19a,19b…第4側面
20…第1ワイヤ
21…コイル部
22a,22b…リード部
30…第2ワイヤ
31…コイル部
32a,32b…リード部
41a,41b…第1端子
42a,42b…第2端子
43…端子主片
430…突出部
431…係合溝
44…実装片
45…ベース片
46…立上片
47…接続片
48…カシメ片
50a,50b…端子台
51a,51b…端子台外端壁
52a,52b…端子台側壁
53a,53b…頂面
54a,54b…底面
55a,55b,56a,56b…側面
57a,57b…端子台側凹凸部
58…係合凸部
60…ボビン
60a…第1ボビン
60b…第2ボビン
61…第1巻胴部
61a,61b…第1突き合せ部
62…第2巻胴部
62a,62b…第2突き合せ部
63a,63b…フランジ部
64a,64b…フランジ内端壁
64a1,64b1…フランジ側仕切部
65a,65b…フランジ側壁
70…接着剤
100…カバー
101…切り欠き
103…接着面
104…カバー側仕切部
105…天板
106…カバー側凹凸部
107…外壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9