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▶ レナタ・アーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104725
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ボタン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/109 20210101AFI20240729BHJP
   H01M 50/153 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/169 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/171 20210101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M50/109
H01M50/153
H01M50/169
H01M50/533
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/171
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023189229
(22)【出願日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】23153127.8
(32)【優先日】2023-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510017505
【氏名又は名称】レナタ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ガーバー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・プフロマー
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ヘリング
(72)【発明者】
【氏名】ウサマ・エル バラダイ
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ウー
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011DD13
5H011DD14
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA07
5H043CA12
5H043CA13
5H043GA23
5H043GA26
5H043JA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シールされたボタン電池を提供する。
【解決手段】本発明に係るボタン電池は、カップ状の容器の形態の第1のコンポーネントと、容器に挿入された電極アセンブリーと、自身の外側エッジに沿って容器の側壁3の上側リム20’に固定された蓋状の第2のコンポーネント10とを備える。第1のコンポーネント又は第2のコンポーネントには、導電性の中央部分と、導電性の周部分と、中央部分を周部分から分離し絶縁する中間部分である、3つの部分がある。第1のコンポーネントの側壁3及び第2のコンポーネント10のエッジの形は、組み付けられた電池において互いに接触している相補的な径変化部分22、25がある。好ましい実施形態において、蓋10のエッジ及び側壁3のリムには、さらに、一方の径変化部分の他方の径変化部分への挿入を止めるための止めを定めるように構成している段部分23、24がある。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状の容器の形態の第1のコンポーネント(1)と、蓋状の第2のコンポーネント(10)とを備えるボタン電池であって、
前記容器には、ベース(2)と、このベースの外周に沿って側壁(3)があり、
前記容器の内部には、少なくとも1つの第1の電極(5)、一又は複数の隔離シート(7)及び少なくとも1つの第2の電極(6)を含む電極アセンブリー(4)があり、
前記第2のコンポーネント(10)の外側エッジは、前記電池の内部を環境からシールする少なくとも1つの導電性接続(21)によって、前記側壁(3)の上縁に固定され、
前記第1のコンポーネント又は第2のコンポーネントのいずれかには、導電性の中央部分(11)と、導電性の周部分(12)と、前記中央部分(11)を前記導電性の周部分(12)から分離し電気的に絶縁する絶縁部分(13)があり、
他のコンポーネントは、導電性材料によって一体的に形成されており、
前記電極アセンブリーの前記第1及び第2の電極(5、6)は、一方のコンポーネントにある導電性の中央部分(11)が前記電池の第1の接触を形成し、他方のコンポーネントが第2の接触を形成するように、前記コンポーネントに電気的に接続されており、
前記側壁(3)のリム(20')には、径変化部分(22)があり、
前記第2のコンポーネント(10)の前記外側エッジには、前記リムの前記径変化部分(22)に対して相補的な径変化部分(25)があり、
前記リムと前記第2のコンポーネントの前記径変化部分(22、25)どうしは、物理的に接触しており、
前記リム(20')と前記外側エッジには、さらに、段部分(23、24)があり、
前記段部分どうしも、物理的に接触している
ことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記リム(20)には、凹状の径変化部分(22)があり、前記外側エッジには、凸状の径変化部分(25)があり、
前記リム(20')の前記段部分(23)は、前記径変化部分(22)の半径方向外側にある第1の段部分であり、
前記リム(20')には、前記第1の段部分(23)の半径方向の外側に追加の段部分(26)があり、
前記第2のコンポーネント(10)のエッジは、前記追加の段部分(26)と実質的に同じ高さである
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記少なくとも1つのシール接続(21)は、溶接接続である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記カップ状の容器(1)のベース(2)は、円形である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記電極アセンブリー(4)には、少なくとも1つの第1の電極(5)と、少なくとも1つの第2の電極(6)と、少なくとも1つの隔離シート(7)とが重なり合った巻き積層体があり、
前記電極アセンブリーは、さらに、前記少なくとも1つの第1の電極(5)と、前記少なくとも1つの第2の電極(6)と、前記電池の第1の接点と第2の接点とにそれぞれ電気的に接続される集電細長材(8)を備える
ことを特徴とする請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記電極アセンブリー(4)は、積層電極アセンブリーである
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記蓋状の第2のコンポーネント(10)は、前記側壁(3)に対して垂直に向いている
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項8】
前記蓋状の第2のコンポーネント(10)又は前記側壁(3)には、欠乏部分(30)がある
ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項9】
請求項1に記載のボタン電池を組み付けて作る方法であって、
前記第2のコンポーネント(10)の前記エッジを、前記第1のコンポーネント(1)の前記側壁(3)のリム(20')に整列させる整列ステップと、
前記第2のコンポーネント(10)の前記エッジの前記径変化部分(25)を前記側壁(3)の前記リム(20')の前記径変化部分(22)に挿入する、又は前記第2のコンポーネント(10)の前記エッジの前記径変化部分(25)に前記側壁(3)の前記リム(20')の前記径変化部分(22)を挿入して、前記径変化部分(22、25)どうしが接触するようにする挿入ステップと、
少なくとも1つのシール接続(21)によって、前記第2のコンポーネント(10)の前記エッジを前記側壁(3)の前記リム(20')に固定する固定ステップとを備え、
前記側壁(3)の前記リム(20')及び前記第2のコンポーネント(10)の前記エッジには、段部分(23、24)があり、
前記段部分どうしが接触したときに前記径変化部分の挿入を止める
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第2のコンポーネント(10)の前記エッジを前記側壁(3)の前記リム(20')に固定する前記固定ステップは、溶接、接着、ポリマーベースの接着剤の硬化の技術のうちのいずれかによって行う
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記技術として、レーザー溶接又は摩擦溶接の技術を行う
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記技術として、摩擦溶接の技術を行い、
前記コンポーネントの少なくとも1つには、鋭い端(35、36)がある径変化部分があり、
他のコンポーネントには、前記挿入ステップの後に前記鋭い端が接触するように構成している段部分又は表面があり、
前記固定ステップの間に、1つ又は複数の前記鋭い端のまわりの少なくとも1つの前記コンポーネントの材料は、その近傍にて局所的に溶融し、これによって、少なくとも1つの溶接接続(21)を作る
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)、温度計のような小型の電気駆動される器具の電源としてよく知られているボタン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ボタン電池は、ボタンセルとしても知られており、広く使われており、複数のタイプのものを利用可能であり、様々な寸法構成と形、そして、電極と電解質に用いられる物質によって特徴づけられる。
【0003】
ほとんどの既知のタイプのボタン電池には、正の接点として機能する平坦なベース部分、及びこの平坦なベース部分から上方に延在している直立した側壁がある金属製の底部カップと、金属製の上蓋カップがある。この上蓋カップの平坦なベース部分は、負の接点として機能する。このボタン電池は、さらに、上蓋カップと底部カップの間の空間に電極アセンブリーを備える。例えば、充電式リチウムイオンボタン電池において、電極アセンブリーは、液体電解質を含浸させた隔離シートによって分離される電極層の積層体を巻くことによって得られる渦巻き状のアセンブリーであることがある。他の電極アセンブリーとして、上部接点と底部接点に平行に向いている、交互に積み重なり合った電極層と隔離層の水平方向の積層体として形成されるものがある。ボタンセルは、円形のディスクの形であることがよくあるが、他の形も可能である。
【0004】
上記のタイプの電池の製造プロセスは、電極アセンブリーを上蓋カップ内に配置し、上蓋カップを底部カップ内に挿入することを伴い、その上蓋カップと底部カップの間に、ガスケット又は接着剤タイプの電気的絶縁シール(密封)を配置して、電池の外部に対して電極アセンブリーをシールする。物理的なガスケットを用いる場合、上蓋カップの壁の開放端がガスケット内に挿入され、底部カップがガスケットに圧着される。接着剤タイプの絶縁シールを用いる場合、上蓋カップの側壁の外側をシール材で被覆し、その後に上蓋カップを底部カップ内に挿入する。接着剤を乾かしたり硬化させたりして、電池をシールする。
【0005】
電池をシールするこれらの既知の方法には、多くの課題がある。1つの課題として、例えば、ガスケット又は接着剤を収容するために必要な以下のような二重壁構成の課題がある。上蓋カップの側壁と底部カップどうしは、重なり合う必要がある。これによって、物理的なガスケットやシール用接着剤として絶縁シールが占める空間が無駄になる。
【0006】
この課題に対する対処法として、二重壁構成がない改善された電池設計の形態であるものが考えられている。この電池タイプは、欧州特許出願EP22178203の対象となっている。この電池は依然として、電極アセンブリーを備え正の接点としてはたらく底部カップを備える。この電池には、さらに、導電性の中央部分と、導電性の周部分と、中央部分を周部分から分離し絶縁する電気的絶縁性の中間部分と、である3つの部分によって形成される蓋がある。中央部分は、負の接点として機能し、絶縁部分は、電気的絶縁を実現する。蓋は、カップの開放端に固定されて、電池を外部からシールする。蓋とカップの固定接続は、カップのベースが電池の正の接点を形成するように導電性にされる。
【0007】
この電池タイプの製造プロセスにおいて発生する課題として、蓋をカップに固定するプロセスに関連するものがあり、この固定は、蓋をカップの側壁のリムに対して整列させ、その整列された蓋の周部に沿って蓋をリムに溶接(例えば、レーザー溶接)することによって行うことができる。しかし、完全にシールされた溶接接続を得るには、蓋とカップの寸法構成を高い精度で合致させる必要がある。また、この種の電池の寸法構成が小さいため、溶接プロセス中に蓋を正しい位置のままに維持することは難しい。このような問題は、不完全な溶接につながり、電池の内部から化学物質が漏れてしまうリスクにつながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題を克服する手法を提供することを目的とする。この目的は、添付の請求の範囲に記載のボタン電池及びこのような電池を組み付けて作る方法によって達成される。本発明に係るボタン電池は、カップ状の容器の形態の第1のコンポーネントと、容器に挿入された電極アセンブリーと、さらに、自身の外側エッジに沿って容器の直立側壁の上側リムに固定される蓋状の第2のコンポーネントを備える。第1のコンポーネント又は第2のコンポーネントには、導電性の中央部分と、導電性の周部分と、中央部分を周部分から分離し絶縁する中間部分である、3つの部分がある。他方のコンポーネントは、導電性材料によって均一に形成されている。電極アセンブリーの電極は、一方のコンポーネントが含む導電性の中央部分が電池の一方の接点を形成し、他方のコンポーネントが電池の他方の接点を形成するように、コンポーネントに電気的に接続されている。
【0009】
本発明に係る電池において、カップ状の容器の側壁及び蓋状の第2のコンポーネントのエッジの形は、組み付けられた電池で相互に接触している相補的な径変化部分があるように形が作られる。前記相補的な径変化部分は、電池の組み付け中に蓋を側壁のリムに自律的に整列させることを可能にし、これらの径変化部分は、シールプロセス中に、蓋を容器上に維持するために寄与し、このシールプロセスは、蓋のエッジ及び側壁のリムの共通の周部に沿って蓋を容器に溶接するプロセスであることができる。いくつかの好ましい実施形態において、蓋のエッジ及び側壁のリムには、さらに、一方の径変化部分の他方の径変化部分への挿入を止めるための止めを形成するように構成している段部分がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来技術の欧州特許出願EP22178203による、巻かれた電極アセンブリーを備える、電池の主要コンポーネントを示している。
図2】組み付けられた状態の図1の電池を示している。
図3】シールプロセスの前における図1及び2の電池のカップと蓋の断面図を示している。
図4a図4a及び4bは、図1~3の電池の側壁のリムと、蓋のエッジとの典型的な断面を示している。
図4b図4a及び4bは、図1~3の電池の側壁のリムと、蓋のエッジとの典型的な断面を示している。
図5a図5a及び5bは、本発明の一実施形態に係る電池における、側壁のリムと、蓋のエッジとが合致している断面を示している。
図5b図5a及び5bは、本発明の一実施形態に係る電池における、側壁のリムと、蓋のエッジとが合致している断面を示している。
図6a図6a及び6bは、側壁のリムに追加の段部分があること以外はいくつかの前の図と同様のリムとエッジの断面を有するような実施形態について示している。
図6b図6a及び6bは、側壁のリムに追加の段部分があること以外はいくつかの前の図と同様のリムとエッジの断面を有するような実施形態について示している。
図7】側壁の厚みが薄い電池におけるものであること以外は図5と同様なリムとエッジの断面を示している。
図8a図8a及び8bは、図5~7の実施形態に対して、リムとエッジの断面の径変化部分が逆になっている実施形態について示している。
図8b図8a及び8bは、図5~7の実施形態に対して、リムとエッジの断面の径変化部分が逆になっている実施形態について示している。
図9a図9a及び9bは、蓋自体又は側壁に欠乏部分があるような実施形態について示している。
図9b図9a及び9bは、蓋自体又は側壁に欠乏部分があるような実施形態について示している。
図10a図10a及び10bは、カップ状のコンポーネントに絶縁部分によって分離される導電性の中央部分と周部分があり、蓋状のコンポーネントが導電性材料によって均一に形成されているような、本発明の実施形態について示している。
図10b図10a及び10bは、カップ状のコンポーネントに絶縁部分によって分離される導電性の中央部分と周部分があり、蓋状のコンポーネントが導電性材料によって均一に形成されているような、本発明の実施形態について示している。
図11a図11a~11cは、本発明の一実施形態に係る、コンポーネント間のシール接続を設ける方法として摩擦溶接を用いるような、蓋状のコンポーネント及びカップ状のコンポーネントの接合シーケンスを示している。
図11b図11a~11cは、本発明の一実施形態に係る、コンポーネント間のシール接続を設ける方法として摩擦溶接を用いるような、蓋状のコンポーネント及びカップ状のコンポーネントの接合シーケンスを示している。
図11c図11a~11cは、本発明の一実施形態に係る、コンポーネント間のシール接続を設ける方法として摩擦溶接を用いるような、蓋状のコンポーネント及びカップ状のコンポーネントの接合シーケンスを示している。
図12a図12a~12cは、コンポーネントが摩擦溶接によって接続されている本発明に係る電池の別の例を示している。
図12b図12a~12cは、コンポーネントが摩擦溶接によって接続されている本発明に係る電池の別の例を示している。
図12c図12a~12cは、コンポーネントが摩擦溶接によって接続されている本発明に係る電池の別の例を示している。
図13a図13a~13cは、コンポーネントが摩擦溶接によって接続されている本発明に係る電池の別の例を示している。
図13b図13a~13cは、コンポーネントが摩擦溶接によって接続されている本発明に係る電池の別の例を示している。
図13c図13a~13cは、コンポーネントが摩擦溶接によって接続されている本発明に係る電池の別の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、欧州特許出願EP22178203による充電式リチウムイオン電池のコンポーネントを示している。この電池は、好ましくは金属によって形成される、丸いベース2と、ベース2の周部に沿って直立する側壁3とを含む導電性のカップ状の底部容器1を備える。また、この電池は、正極5と、負極6と、巻き電極の間の隔離シート7によって構成している巻き電極アセンブリー4を備え、さらに、集電細長材8を備える。電極アセンブリー4の描画は、簡略化しており、アセンブリー4は、その任意の既知の設計に従って実現することができる。負極6につながった負の集電細長材8のみを図面にて見ることができる。正極5につながった正の集電細長材は、電極アセンブリー4の下側に存在する。集電細長材8を、まっすぐな長方形の細長材として単純な形態で示しているが、それとは異なる形であることができる。当業者に知られているように、集電細長材8は、好ましくは、細長材の端を各電池接点に溶接することができるように、フレキシブルである。
【0012】
この電池は、導電性の中央部分11と、導電性の周部分12と、中央部分11と周部分12を互いに分離し電気的に絶縁する電気的絶縁性の中間部分13である、3つの部分がある蓋10を備える。これらの3つの部分11~13は、1つの単一の物体を形成する。すなわち、中間部分13が、その対応する内側エッジと外側エッジに沿って導電性部分11及び12に接合している。図1に示している実施形態において、蓋10の3つの部分11、12、13はすべて、同じ厚みを有する。代替的実施形態において、これらの部分の厚みは異なることかできる。
【0013】
これらの部分11、12及び13に用いられる材料は、電池の内側の材料に対して、機械的に強く、化学的に安定している。導電性部分11及び12は、底部容器1と同じ材料、好ましくは金属、によって形成することができる。適切な金属として、ニッケル、コバルト、及びSS304やSS316のような特定のタイプのステンレス鋼がある。絶縁部分13の材料は、さらに、部分11及び12に用いられる材料に対して気密を保って結合することができる。絶縁部分13は、例えば、ガラス、特定のタイプのゴム、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)又はその任意の誘導体によって形成することができる。蓋10は、異なる材料どうしを接合するためのよく知られているプロセスによって製造することができる。
【0014】
図示している実施形態に係る電池の組み付けは、正の集電細長材をカップ状の底部容器1のベース2の内面に溶接し、電極アセンブリー4を前記容器に挿入することを伴う。液体電解質が容器1に注入され、負の集電細長材8が蓋10の中央部分11に溶接される。次に、蓋10は、カップ状の容器1の側壁3上に配置され、蓋10と容器1の間のシール接続を実現する結合技術によって、側壁3の外側エッジに沿って側壁3に接合されて、図2に示した完成した電池を得る。シール接続は、レーザー溶接のような溶接によって実現することができる。
【0015】
この電池には、カップ状の容器1のベース2によって形成される正の接点と、蓋10の中央部分11によって形成される負の接点がある。これらの接点どうしは、蓋10の中間部分13によって電気的に絶縁されている。直立壁3のリムに対する蓋のエッジのシール接続は、導電性であり、電池20の内部を環境からシールする。
【0016】
図3は、蓋10とともにカップ1の断面図を示しており、シール接続を実現する前に蓋10が側壁3のリム20に整列される。この図には、電極アセンブリーを示していない。側壁3は、図4aに示している拡大詳細図に示しているように、長方形の断面を有することができる。すなわち、リム20は、側壁3の側面に実質的に垂直であることができる。代わりに、図4aにて点線で示しているように、リム20はわずかに凸状であることができる。後者の断面は、典型的には、カップが深絞りプロセスによって作られるときに発生する。図示している例において、蓋10と側壁3の厚みは同じであるが、両者の厚みをわずかに違うようにすることもできる。ほとんどの電池において、これらの厚みは、数十ミリメートルのオーダーである。例えば、側壁3の厚みが0.1mm~0.3mmの範囲内で、蓋10の厚みが0.1mm~0.5mmの範囲内であることができる。好ましい実施形態において、側壁3の厚みは0.15mmであり、蓋10の厚みは0.2mmである。
【0017】
蓋の直径DLは、側壁3の外径DW1と合致する(すなわち、可能なかぎり近い)ように構成している。蓋10は、前記側壁3の外径DW1に整列され、リム20上に配置され、その後に、図4bに示しているように、アセンブリーは、レーザー溶接のような溶接プロセスを経て、リム20と蓋10の整列された周部に沿って溶接接続21を作る。溶接接続21は、示している図においては黒い半円として象徴的に表しているが、実際には、例えば、凸状のリムの場合にリム20の曲がりに応じて、異なる形と大きさを有することができる。
【0018】
冒頭で述べたように、溶接プロセスによって電池の内部をシールすることが効果的であるためには、蓋10と側壁3の直径の合致及び整列が非常に正確でなければならない。また、溶接プロセス中に蓋10が変位すると、効果的なシールを得ることを難しくさせてしまいがちである。
【0019】
本発明によると、側壁3のリム及び蓋10のエッジの形は、整列の困難性及び変位に起因する誤差を低減して、シール接続の品質を改善させる。図5a及び5bは、本発明の一実施形態について示している。側壁3のリム20'には、径変化部分(円錐部分)22及び段部分23があることがわかる。段部分23は、リム20'の外径DW1と中間直径Diの間に延在している。径変化部分22は、中間直径Diとリム20'の内径DW2の間に延在している。蓋10のエッジの形には、蓋10の外径に沿った段部分24と、この段部分24の半径方向内側に径変化部分25があるように作られる。径変化部分22及び25どうしは相補的である。すなわち、それらは、蓋10の外側径変化面がリム20'の内側径変化面(円錐面)に嵌まるように、同じ傾斜角を有する。
【0020】
ここで、蓋10をカップ1に組み付けることは、蓋の段部分24がカップの段部分23にて止まるまで、蓋10の径変化部分25をカップの径変化部分22に挿入することを伴う。したがって、この時点で、径変化部分22及び25と、段部分23及び24との両方が相互に接触している。その後に、図5bに示しているように、段部分23及び24の整列された周部に沿って溶接接続21が作られる。
【0021】
この構成のおかげで、相補的な径変化部分22及び25の自律的に整列する性質によって、側壁3のリム20'に対する整列を改善させることが可能になる。また、一方の径変化部分を他方に挿入することによって、蓋10と側壁3の間の機械的に安定した仮の接続も実現され、これによって、溶接プロセス中に整列がより容易に維持される。蓋10の直径DLは、好ましくは、図1~4の設計と同じ程度の精度で側壁3の外径DW1と依然として合致するが、この場合、正しい整列が確実になっていることを考えると、溶接接続の品質を低下させずに、前記直径の間のわずかに大きな相違を許容することができる。
【0022】
しかし、別の実施形態において、図6a及び6bに示しているように、蓋10の直径DLは、側壁3の外径よりも意図的に小さくされる。ここで、リム20'には、第1の段部分23の半径方向外側に追加の段部分26がある。図6bに示しているように、追加の段部分26は、蓋10の直径DLと合致する内径を有し、蓋の段部分24の高さは、追加の段部分26の高さに実質的に等しく、これによって、蓋10は、組み付けられた電池における前記追加の段部分26と実質的に同じ高さである。この自律的な整列は、対応する径変化部分22及び25、及び段部分23及び24のおかげで、上記と同様に確実にされる。しかし、この場合、溶接接続21は、側方からではなく、蓋10の周部に沿って、上部から作られる。場合によっては、この手法の方が実用的である。
【0023】
図7は、直立壁3の厚みが蓋10の厚みよりも小さいような実施形態について示している。今まで説明したすべての実施形態において、図5bに示しているように、相補的な径変化部分どうしの傾斜角αは、約30°である。しかし、この角度は、側壁3の厚みなどに応じて、異なるように選択することができる。例えば、側壁3がいくつかの上記例よりも著しく厚い場合、傾斜角αを大きくすることが好ましい場合がある。
【0024】
図8a及び8bは、前記のいくつかの実施形態と比べて、径変化部分22及び25の傾斜角の向きが逆になっている実施形態について示している。ここで、側壁3のリム20'には、外側径変化面があり、一方、蓋10には、リム20'の外側径変化面に嵌まる内側径変化面がある。ここでも段部分23及び24があり、上記と同じ機能を有する。
【0025】
本発明は、蓋10と側壁3どうしが垂直である実施形態に限定されない。図9a及び9bは、それぞれ蓋10又は直立壁3に、電池の上側の方に移るに従って細くなる欠乏部分30がある実施形態について示している。これらの実施形態における直立壁3のリム及び蓋10のエッジにおいても、上記の径変化部分及び段部分が存在することがわかる。
【0026】
また、本発明は、蓋10に、絶縁部分13によって分離される導電性の中央部分11と周部分12がある実施形態に限定されない。代替的実施形態において、カップ状の容器1には、これらの部分11、12及び13があり、蓋10は、導電性材料によって均一に形成される。図10a及び10bに、このような実施形態の例を示している。ここで、カップ状の容器1のベース2には、部分11、12及び13があることがわかる。したがって、より一般的な意味で、添付の請求の範囲の文言に反映されているように、本発明に係る電池は、カップ状の容器の形を有する第1のコンポーネント1と、蓋状の第2のコンポーネント10とを備え、これらのコンポーネントのいずれか1つには、部分11、12及び13があることができる。
【0027】
図10a及び10bに示している実施形態に対して、本発明のすべてのバリエーションを、側壁3のリム20'と、蓋10のエッジの合致する断面に関して、適用可能である。
【0028】
直立壁3のリム20'、及び蓋10のエッジに、段部分23及び24があることが好ましいが、本発明は、これらの段部分がなく、すなわち、蓋10とリム20'には、単独で、自律的に整列される性質及び仮の接続を実現することができる、相補的な径変化部分のみがあるような実施形態を含む。この場合、一方の径変化面の他方の径変化面への挿入が、正しい径変化部分どうしの相対位置で止まり、電池の内部を効果的にシールする接続を作ることができるように注意する必要がある。
【0029】
他の実施形態において、コンポーネントの接合の前に、一方のコンポーネントのみに段部分があり他方のコンポーネントには段部分がない。このような実施形態は、例えば、コンポーネントどうしが摩擦溶接によって接合される場合に、適用することができる。図11a~11cは、図8a及び8bの実施形態と同様の実施形態について示している。側壁3のリムには、図8aにおけるように径変化部分22と段部分23があるが、蓋10のエッジには、鋭い端35がある径変化部分25のみがあり、壁3の段部分23に接触するように構成している段部分はない。図11bに示しているように、蓋10が側壁3上に配置されたときに、鋭い端35が段部分23に接触する。同様に、側壁3の径変化部分22の鋭い上端36は、蓋10の内面に接触する。図11bに示している状態において、コンポーネントどうしが、例えば超音波溶接ツールにおいて、摩擦溶接される。鋭い端35及び36の接触領域において、側壁3及び蓋10の材料のうちの少なくとも一方は、溶融温度よりも大きい温度にされ、したがって、材料は局所的に溶融し、溶接接続を形成する。図11cは、溶接ステップの後における、接合されたコンポーネントを示している。材料どうしの局所的な溶融によって、蓋10は、側壁3に対してわずかに、蓋10の側面及び側壁3が実質的に面一である位置まで、下降している。この実施形態は、コンポーネントどうしが複数の溶接接続21によって接続することができるということを示している。この実施形態は、さらに、完成した電池において、段部分23が下側溶接接続21によって包囲されているため、段部分23を識別できないようにすることができることを示している。また、図5a及び5bに示しているような実施形態においても、溶接領域21が段部分23及び24の幅を超えて延在している場合、完成した電池において段部分23及び24を識別できないようにすることができる。
【0030】
図12a~12c及び13a~13cに、摩擦溶接に関連する別の態様を示している。図12aに示しているように、側壁3と、蓋10のエッジの両方に、図8a及び8bにおけるように、対応する段部分23及び24と、等しく対応する径変化部分22と25があるが、ここでは、側壁3の径変化部分22はより長く、蓋10が側壁3上に配置されると(図12bに示しているように)、段部分23及び24どうしが接触し始めることができるようになる前に、側壁3の鋭い端36は蓋10の内面に接触する。次に、このアセンブリーに摩擦溶接を施して、図12cに示している接合されたアセンブリーを得る。溶接接続21は、鋭い端36のまわりにおける局所的な溶融によって形成され、これによって、蓋10は、段部分23及び24どうしの接触によって止まるまで、下降する。したがって、この場合、段部分は、溶接ステップの前ではなく溶接ステップ中に、蓋の位置を定める機能を果たす。
【0031】
図13a~13cは同様の実施形態について示しているが、ここでは、側壁3には、径変化部分22の半径方向内側に追加の段部分37がある。図13bに示しているように、ここでは、第2の段部分37が蓋10の内面に接触する前に、蓋の径変化部分25の鋭い端35が段部分23に接触する。摩擦溶接の後に、段部分37と前記内面は相互に接触しており、一方、溶接接続21が、アセンブリーの外周に沿って形成される。
【0032】
上記の実施形態において、段部分23、24及び26は、まっすぐでありカップ1のベース2に実質的に平行な上面があるものとして表されている。しかし、これらの段部分は、例えば、図4aに点線で示しているように凸状のリムを成形することによってリム20'が得られる場合、わずかに丸まっていることができる。蓋10のエッジ及び側壁3のリム20'の成形は、標準的な機械加工技術によって行うことができる。
【0033】
本発明に係る電池は、円形に限定されず、長方形や正方形のような他の任意の形を有することができる。
【0034】
上記のいくつかの実施形態において、底部の接点は正接点と呼ばれ、上部の接点は負の接点と呼ばれる。しかし、本発明は、その構成に限定されず、したがって、添付の請求の範囲においては「第1及び第2」の接点のように表現している。
【0035】
一般的には、図面に示している実施形態のいずれか1つを参照して、本発明の任意の実施形態に係る電池を組み付けるための方法は、
- 第2のコンポーネント10のエッジを第1のコンポーネント1の側壁3のリム20'に整列させる整列ステップと、
- 第2のコンポーネント10のエッジの径変化部分25を、側壁3のリム20'の径変化部分22に挿入する又はその逆をし(すなわち、図8a及び8bのように、リム20'の径変化部分22を蓋10の径変化部分25に挿入する)、径変化部分22、25どうしが接触するようにする、挿入ステップと、
- シール接続によって、第2のコンポーネント10のエッジを側壁3のリム20'に固定する固定ステップと
を備える。
【0036】
前記「整列」及び「挿入」のステップは、コンポーネントの相対的な運動に関連し、例えば、整列は、固定容器に対して蓋を能動的に動かすことによって、又は固定蓋に対して容器を動かすことによって、行うことができる。挿入は、静止した凹状の径変化面に凸状の径変化面を能動的に挿入することによって、又は静止した凸状の径変化面の上に凹状の径変化面を配置することによって、行うことができる。
【0037】
両方のコンポーネントに段部分23及び24がある場合、これらの段部分どうしが接触するときに、径変化部分どうしの相対的な挿入が終わる可能性がある。そして、例えば、図5a及び5bに示しているように段部分の外周に沿って溶接接続を形成することによって、固定ステップを行う。例えば図12a~12cに示している、摩擦溶接を伴う他の実施形態において、段部分どうしは、固定ステップ中にのみ接触する。
【0038】
本発明に係る方法は、コンポーネントを固定する最後のステップがレーザー溶接又は摩擦溶接によって行われる実施形態に限定されない。アーク溶接のような他のタイプの溶接を適用することができる。溶接の他に、ポリマーベースの接着剤を接着したり塗布したりした後に硬化させるような、他の接合技術を適用することができる。どの手法が最も適しているかは、接合されるコンポーネントの断面の形に依存することがある。
【0039】
図面や上の説明において本発明について図示したり詳細に説明したりしたが、このような図示や説明は、説明用や例示的なものであり、限定するものではないと考えるべきである。開示した実施形態に対する他の変異形態は、図面、開示及び請求の範囲を検討することによって、請求の範囲に記載された発明を実践する際に当業者によって理解し実現することができる。請求の範囲において、用語「備える」は、他の要素又はステップがあることを排除するものではなく、単数形であっても複数あることを排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているということだけにおいて、この手段の組み合わせを有利に用いることができないことを示すものではない。請求の範囲における参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0040】
1 第1のコンポーネント
2 ベース
3 側壁
4 電極アセンブリー
5 第1の電極
6 第2の電極
7 隔離シート
8 集電細長材
10 第2のコンポーネント
13 絶縁部分
20、20’ リム
21 シール接続
22、25 径変化部分
23、24 段部分
26 追加の段部分
30 欠乏部分
35、36 鋭い端
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c
図12a
図12b
図12c
図13a
図13b
図13c
【外国語明細書】