IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キリンホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ 麒麟麦酒株式会社の特許一覧

特開2024-104743まろやかな口当たりおよび柑橘香を有する発泡性アルコール飲料およびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104743
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】まろやかな口当たりおよび柑橘香を有する発泡性アルコール飲料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20240729BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C12G3/04
C12G3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006990
(22)【出願日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2023008966
(32)【優先日】2023-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】307027577
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】天方 迪也
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 桂子
(72)【発明者】
【氏名】小川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】松田 莉央子
(72)【発明者】
【氏名】茶木 香保里
(72)【発明者】
【氏名】有田 麻美
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LH11
4B115LP02
4B115MA03
(57)【要約】
【課題】炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとが両立した発泡性アルコール飲料およびその製造方法の提供。
【解決手段】発泡性アルコール飲料にリモネンを配合し、
(1)起泡剤をさらに配合し、前記起泡剤の質量に対する前記リモネンの質量の比を0.8以上に調整し、かつ/または
(2)発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径を200~600μmに調整する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモネンを含有する発泡性アルコール飲料であって、下記の(1)および(2):
(1)起泡剤をさらに含有し、前記起泡剤の質量に対する前記リモネンの質量の比が0.8以上である;
(2)前記発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径が200~600μmである;
の少なくとも1つを満たす、前記発泡性アルコール飲料。
【請求項2】
前記発泡アルコール飲料が起泡剤を含有し、前記起泡剤の濃度が1~200ppmである、請求項1に記載の発泡性アルコール飲料。
【請求項3】
前記リモネンの濃度が10~300ppmである、請求項1に記載の発泡性アルコール飲料。
【請求項4】
前記起泡剤がサポニンを含む、請求項1に記載の発泡性アルコール飲料。
【請求項5】
前記起泡剤が、キラヤ科植物に由来するサポニンおよびリュウゼツラン科植物に由来するサポニンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の発泡性アルコール飲料。
【請求項6】
リモネンを含有する発泡性アルコール飲料の製造方法であって、下記の(1)および(2):
(1)前記発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比を0.8以上に調整する工程;
(2)前記発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径を200~600μmに調整する工程;
の少なくとも1つの工程を含む、前記製造方法。
【請求項7】
前記発泡性アルコール飲料における前記起泡剤の濃度が1~200ppmである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記発泡性アルコール飲料における前記リモネンの濃度が10~300ppmである、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記起泡剤がサポニンを含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記起泡剤が、キラヤ科植物に由来するサポニンおよびリュウゼツラン科植物に由来するサポニンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項11】
発泡性アルコール飲料にまろやかな口当たりおよび柑橘香を付与する方法であって、下記の(1)および(2):
(1)前記発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比を0.8以上に調整する工程;
(2)前記発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径を200~600μmに調整する工程;
の少なくとも1つの工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まろやかな口当たりおよび柑橘香を有する発泡性アルコール飲料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チューハイ系飲料、サワー系飲料等の発泡性アルコール飲料においては、炭酸による刺激感や爽快感が求められており、今日ではそのような需要に応える多くの発泡性アルコール飲料がRTD飲料として市販されている。例えば、通常の発泡性アルコール飲料と比較して炭酸含有量を増大させることにより刺激感や爽快感を向上させた、強発泡性アルコール飲料等が市販されている。
【0003】
一方、上述したような発泡性アルコール飲料において、炭酸による刺激感や爽快感を抑制して、まろやかな口当たりを実現した発泡性アルコール飲料はほとんど存在していないのが現状であり、そのような発泡性アルコール飲料を得るための試みもほとんど行われていなかった。
【0004】
ところで、発泡性アルコール飲料、特にRTD飲料は、消費者の嗜好を満たすために多くの場合において香気成分を含み、特に柑橘系の果物を想起させる香気成分を含む発泡性アルコール飲料がRTD飲料の市場における需要の大きな一角を占めている。したがって、柑橘系の果物を想起させる香気成分を含む発泡性アルコール飲料において、そのような香気成分を喫飲者に十分に受容させるための試みがなされている。例えば、発泡性アルコール飲料において、オクテニルコハク酸デンプンおよびキラヤサポニンの配合し、さらにアルコール濃度および炭酸ガスボリュームを特定の範囲に調整することにより、泡立ちや泡持ちと良好な香気の立ちとを両立することが報告されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
しかしながら、上述したように、発泡性アルコール飲料における刺激感や爽快感を抑制する試みはほとんど行われていないため、炭酸による刺激感や爽快感が抑制され、かつ喫飲者が香気成分を十分に受容することができる発泡性アルコール飲料を得る試みも同様にほとんど行われていない。本発明者らは、柑橘香を有する発泡性アルコール飲料において、発生する泡の径を小さくすることにより、喫飲時の刺激感や爽快感を抑制してまろやかな口当たりを付与し得ることを見出した。しかしながら、発生する泡の径を小さくすることにより、喫飲時の刺激感や爽快感を抑制してまろやかな口当たりが実現する一方で、柑橘香の香り立ちが抑制されて、十分な柑橘香を受容できなくなるという課題を新たに見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-245538号公報
【0007】
このような状況下、柑橘香を有する発泡性アルコール飲料に、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりを付与し、かつ柑橘香の良好な香り立ちを実現することが、技術的な課題として存在する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとが両立した発泡性アルコール飲料およびその製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、柑橘香を有する発泡性アルコール飲料に、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとを付与する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、発泡性アルコール飲料にリモネンを配合し、
(1)起泡剤をさらに配合し、起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比を0.8以上に調整すること;および/または
(2)発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径を200~600μmに調整することにより、発泡性アルコール飲料に、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとを付与することができるとの知見を得た。本発明はこのような知見に基づくものである。
【0010】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]リモネンを含有する発泡性アルコール飲料であって、下記の(1)および(2):
(1)起泡剤をさらに含有し、前記起泡剤の質量に対する前記リモネンの質量の比が0.8以上である;
(2)前記発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径が200~600μmである;
の少なくとも1つを満たす、前記発泡性アルコール飲料。
[2]前記発泡アルコール飲料が起泡剤を含有し、前記起泡剤の濃度が1~200ppmである、[1]に記載の発泡性アルコール飲料。
[3]前記リモネンの濃度が10~300ppmである、[1]または[2]に記載の発泡性アルコール飲料。
[4]前記起泡剤がサポニンを含む、[1]~[3]のいずれかに記載の発泡性アルコール飲料。
[5]前記起泡剤が、キラヤ科植物に由来するサポニンおよびリュウゼツラン科植物に由来するサポニンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の発泡性アルコール飲料。
[6]リモネンを含有する発泡性アルコール飲料の製造方法であって、下記の(1)および(2):
(1)前記発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比を0.8以上に調整する工程;
(2)前記発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径を250~550μmに調整する工程;
の少なくとも1つの工程を含む、前記製造方法。
[7]前記発泡性アルコール飲料における前記起泡剤の濃度が1~200ppmである、[6]に記載の製造方法。
[8]前記発泡性アルコール飲料における前記リモネンの濃度が10~300ppmである、[6]または[7]に記載の製造方法。
[9]前記起泡剤がサポニンを含む、[6]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]前記起泡剤が、キラヤ科植物に由来するサポニンおよびリュウゼツラン科植物に由来するサポニンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[6]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]発泡性アルコール飲料にまろやかな口当たりおよび柑橘香を付与する方法であって、下記の(1)および(2):
(1)前記発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比を0.8以上に調整する工程;
(2)前記発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径を250~550μmに調整する工程;
の少なくとも1つの工程を含む、前記方法。
【0011】
本発明によれば、柑橘香を有する発泡性アルコール飲料に、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりを付与し、かつ柑橘香の良好な香り立ちを実現することができる。
【発明の具体的説明】
【0012】
本明細書において「ppm」とは百万分率を表し、「mg/L」と同義である。すなわち、1ppmは1mg/Lに相当する。
【0013】
本明細書において、発泡性アルコール飲料の「まろやかな口当たり」とは、通常の炭酸ガス(二酸化炭素)濃度を有する発泡性アルコール飲料と比較して、発泡性アルコール飲料に溶存する炭酸ガスに起因して生じる、喫飲時に舌や口腔内において知覚される刺激感や爽快感が抑制されている状態を指す。具体的には、「刺激感」および「爽快感」とは、舌や口腔内で無数の泡が生じるようなシュワシュワとした刺激や泡が弾けるようなピリピリとした刺激(刺すようなシャープな刺激)を意味する。
【0014】
[発泡性アルコール飲料]
本発明の一つの態様によれば、リモネンを含有する発泡性アルコール飲料であって、下記の(1)および(2):
(1)起泡剤をさらに含有し、前記起泡剤の質量に対する前記リモネンの質量の比が0.8以上である;
(2)前記発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径が200~600μmである;
の少なくとも1つを満たす発泡性アルコール飲料(以下、「本発明の発泡性アルコール飲料」ともいう。)が提供される。本発明の発泡性アルコール飲料は、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとを備えた発泡性アルコール飲料である。以下、上述した(1)を満たす発泡性アルコール飲料を「第1の実施形態」とし、上述した(2)を満たす発泡性アルコール飲料を「第2の実施形態」とする。
【0015】
本明細書において「発泡性」とは、喫飲時に、該発泡性アルコール飲料に溶存する炭酸ガスに起因して泡が発生することを指し、すなわち、本発明の発泡性アルコール飲料はいわゆる炭酸飲料である。
【0016】
本発明の発泡性アルコール飲料における炭酸ガスの濃度は、本発明の発泡性飲料を容器に詰めて密封された状態のガス圧として、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、また、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.8MPa以下、より一層好ましくは0.5MPa以下である。炭酸ガスのガス圧の範囲としては、好ましくは0.05~1MPa、より好ましくは0.1~0.8MPa、より一層好ましくは0.2~0.5MPaである。なお、発泡性アルコール飲料における炭酸ガスの圧力は、20℃における圧力を意味する。
【0017】
容器に詰められて密封された状態の発泡性アルコール飲料の炭酸ガスの濃度(炭酸ガスの圧力)は、株式会社アントンパール製の飲料分析システム(PBA-S)を用いて炭酸ガス(気体の二酸化炭素)の濃度を測定することにより求めることができる。
【0018】
発泡性アルコール飲料における炭酸ガスの濃度は、炭酸ガス(気体の二酸化炭素)そのものを発泡性アルコール飲料に配合することによって調整してもよく、発泡性アルコール飲料に配合される炭酸ガスを含有する原料等の量を増減させることによって調整してもよく、また、発泡性アルコール飲料の製造過程において炭酸ガスを生成する原料等の含有量を増減させることによって調整してもよい。これらは1種を単独で行ってもよく、2種以上を組み合わせて行ってもよい。一つの実施形態において、本発明の発泡性アルコール飲料においては、所望の発泡性を得るために、発泡性アルコール飲料を容器に詰める際に炭酸ガス(二酸化炭素)を添加(圧入)してその濃度を適宜調整することができる。
【0019】
本明細書において「アルコール飲料」とは、日本国の酒税法上アルコール飲料とみなされる、アルコール度数1度以上の飲料を意味する。なお、本明細書において「アルコール」とは、特に言及がない限り「エタノール」を意味する。また、「アルコール度数」とは、発泡性アルコール飲料に対するアルコール(エタノール)の体積濃度を百分率(%)で表した割合(すなわち、v/v%)を指す。
【0020】
本発明の発泡性アルコール飲料におけるアルコールの濃度は、好ましくは1~30v/v%、より好ましくは3~20v/v%、より一層好ましくは4~15v/v%、特に好ましくは5~15v/v%である。
【0021】
発泡性アルコール飲料におけるアルコールの濃度は、日本国国税庁が定める方法(日本国国税庁が発行する「国税庁所定分析方法」)に従って、ガスクロマトグラフ法を用いて測定することができる。
【0022】
発泡性アルコール飲料におけるアルコールの濃度は、エタノールそのものを発泡性アルコール飲料に配合することによって調整してもよく、発泡性アルコール飲料に配合されるエタノールを含有する原料等の量を増減させることによって調整してもよく、また、発泡性アルコール飲料の製造過程においてエタノールを生成する原料等の含有量を増減させることによって調整してもよい。これらの調製は1種を単独で行ってもよく、2種以上を組み合わせて行ってもよい。発泡性アルコール飲料においてエタノールを含有する原料の含有量を増減させる場合、そのようなエタノールを含有する原料としては、食品としての安全性が確認された原料であれば特に限定されず、例えば、原料アルコール、蒸留酒(スピリッツ)、穀類や果実の成分(例えば、果汁等)の発酵物等が挙げられる。エタノールを含有する原料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、蒸留酒としては、例えば、ウォッカ、焼酎、テキーラ、ラム、ジン、ウイスキー等を用いることができる。なお、ジンは、大麦、ライ麦、ジャガイモ等の穀類の発酵液にジュニパーベリー(セイヨウネズの実)の香りを付けた蒸留酒であり、市販のものを用いてもよく、公知の方法により作製されたものを用いてもよい。また、発泡性アルコール飲料において、その製造過程においてエタノールを生成する原料の含有量を増減させる場合、そのようなエタノールを生成する原料としては、エタノール発酵によりエタノールを生成する糖質を含む原料であれば特に限定されず、例えば、果汁等が挙げられる。一つの実施形態において、発泡性アルコール飲料のアルコールの濃度は、原料アルコールを発泡性アルコール飲料に配合することにより調整される。
【0023】
本発明の発泡性アルコール飲料は、柑橘香を有する発泡性のアルコール飲料であれば特に限定されず、どのような種類のアルコール飲料であってもよい。本発明の発泡性アルコール飲料の種類としては、例えば、混成酒、醸造酒、蒸留酒等が挙げられ、好ましくは混成酒である。
【0024】
混成酒とは、酒類のうち、醸造酒および蒸留酒そのものではない酒類(例えば、チューハイ、サワー、RTD、RTS、浸漬酒、リキュール等)の総称であり、日本国の酒税法上の「混成酒類」が含まれる。
【0025】
「リモネン」とは、(R)-1-メチル-4-(1-メチルエテニル)シクロヘキセン(d-リモネン)および(S)-1-メチル-4-(1-メチルエテニル)シクロヘキセン(l-リモネン)の総称であり、d-リモネンは柑橘類、特にその果皮に多く含まれることが知られている単環式のモノテルペンである。本発明の発泡性アルコール飲料は、少なくともd-リモネンを含有することにより柑橘香を呈する。したがって、本明細書において「リモネン」とは、特に言及しない限りd-リモネンを指す。
【0026】
発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度は、リモネンそのものを発泡性アルコール飲料に配合することによって調整してもよく、発泡性アルコール飲料に配合されるリモネンを含有する原料等の量を増減させることによって調整してもよく、また、発泡性アルコール飲料の製造過程においてリモネンを生成する原料等の含有量を増減させることによって調整してもよい。これらは1種を単独で行ってもよく、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0027】
リモネンを含有する原料としては、例えば、リモネンを含有する香料、柑橘類に属する種の果実、果汁、果肉、果皮、樹皮等が挙げられる。柑橘類に属する種は特に限定されず、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライム、ミカン、ユズ、カボス、イヨカン、カシス等が挙げられ、好ましくはレモン、グレープフルーツである。一つの実施形態において、発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度は、柑橘類に属する種の果汁を発泡性アルコール飲料に配合することにより調整される。一つの実施形態において、発泡性アルコール飲料に含まれるリモネンは、その一部または全部がリモネンを含有する原料、好ましくはリモネンを含有する果汁、より好ましくは柑橘類に属する種の果汁に由来する。
【0028】
果汁としては、混濁果汁および透明果汁のいずれも用いることができ、混濁果汁と透明果汁との混合物を用いることもできる。また、果汁としては、ストレート果汁および濃縮還元果汁のいずれも用いることができ、ストレート果汁と濃縮果汁との混合物を用いることもできる。また、果汁としては、果皮、その破砕物またはそのオイルを含まない果汁、および果皮、その破砕物またはそのオイルを含む果汁のいずれも用いることができ、これらの混合物を用いることもできる。また、果汁としては、その成分が発酵していない果汁(無発酵果汁)、およびその成分の一部または全部が発酵した果汁(発酵果汁)のいずれも用いることができ、これらの混合物を用いることもできる。
【0029】
発泡性アルコール飲料に配合され得る果汁としては、上述した柑橘類に属する種の果汁の他に、例えば、マンゴー果汁、リンゴ果汁、洋ナシ果汁、熱帯果実果汁(パイナップル果汁、グァバ果汁、バナナ果汁、アセロラ果汁、パパイヤ果汁、パッションフルーツ果汁、ライチ果汁等)、ブドウ果汁、ブルーベリー果汁、ラズベリー果汁、レッドラズベリー果汁、モモ果汁、スイカ果汁、イチゴ果汁、メロン果汁、およびその他の果汁(ウメ果汁、ナシ果汁、アンズ果汁、スモモ果汁、キウイフルーツ果汁、サクランボ果汁、クリ果汁等)等が挙げられる。一つの実施形態において、果汁としては、オレンジ果汁、グレープフルーツ果汁、マンゴー果汁、リンゴ果汁、洋ナシ果汁、パイナップル果汁、ブドウ果汁等が挙げられる。これらの果汁は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。本発明の第1の実施形態において、発泡性アルコール飲料は、リモネンを含有し、起泡剤をさらに含有し、起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比(リモネン/起泡剤比)が0.8以上に調整される。リモネン/起泡剤比は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上に調整され、また、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、より一層好ましくは20以下に調整される。さらに、リモネン/起泡剤比の範囲としては、好ましくは0.8~30、より好ましくは1~25、より一層好ましくは2~20に調整される。起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比が上述した範囲にあることにより、発泡性アルコール飲料において、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとを両立することができる。
【0031】
第1の実施形態において、発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度は、上述したリモネン/起泡剤比を満たす限り特に限定されないが、好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上、より一層好ましくは30ppm以上、さらにより一層好ましくは45ppm以上、特に好ましくは60ppm以上であり、また、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、より一層好ましくは150ppm以下である。発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度の範囲としては、好ましくは10~300ppm、より好ましくは20~200ppm、より一層好ましくは30~200ppm、さらにより一層好ましくは45~150ppm、特に好ましくは60~150ppmである。発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度が上述した範囲にある場合、発泡性アルコール飲料の喫飲時の柑橘香の香り立ちを良好なものとすることができる。また、発泡性アルコール飲料の苦味の抑制というさらなる効果を得るという観点から、発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度は、好ましくは20ppm以上、より好ましくは30ppm以上、より一層好ましくは40ppm以上、さらにより一層好ましくは50ppm以上、特に好ましくは120ppm以上である。
【0032】
発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度は、下記の装置および条件を用いたGC-MS/MSにより測定することができる。
装置
GC:Agilent社製 7890B
カラム:VF-5MS 30m×0.25mm I.D.、膜厚0.25μm(P/N CP8944)
MS:Agilent社製 7000D
GC条件
カラムオーブン温度:40℃(3min)-10℃/min-300℃(5min)
気化室温度:250℃
注入モード:スプリット(1:10)
キャリアガス:He
圧力:59.6KPa
全流量:15.65mL/分
カラム流量:1.15mL/分
パージ流量:3.00mL/分
MS条件
イオン源温度:250℃
四重極温度:150℃
溶媒溶出時間:2.5分
【0033】
起泡剤(気泡成分)としては、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、例えば、増粘性多糖類、界面活性剤等が挙げられる。起泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
増粘性多糖類としては、水に溶解させた時に増粘性を示す多糖類であれば特に限定されず、例えば、アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸エステル(例えば、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等が挙げられる。
【0035】
界面活性剤としては、サポニン(例えば、キラヤ科植物やリュウゼツラン科植物に由来するサポニン(それぞれ「キラヤサポニン」、「リュウゼツランサポニン」とも言う)、大豆に由来するサポニン(「大豆サポニン」とも言う)等)、オクテニルコハク酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、ラウリン酸デカグリセリン等)等が挙げられる。
【0036】
一つの実施形態において、起泡剤はサポニンを含有する。サポニンとは、サポニゲンと糖とから構成される配糖体の総称であり、様々な植物に含まれている。サポニンとしては、キラヤ科植物およびリュウゼツラン科植物(例えば、それらの樹皮、葉等)の抽出物、特に、それらの樹皮、葉等に含まれるサポニン(すなわち、キラヤサポニン、リュウゼツランサポニン)が好ましく用いられる。キラヤ科植物としては、例えば、シャボンノキ等が挙げられる。また、リュウゼツラン科植物としては、例えば、ユッカ属、リュウゼツラン属等に属する植物が挙げられる。
【0037】
発泡性アルコール飲料における起泡剤の濃度は、起泡剤そのものを発泡性アルコール飲料に配合することによって調整してもよく、発泡性アルコール飲料に配合される起泡剤を含有する原料等の量を増減させることによって調整してもよく、また、発泡性アルコール飲料の製造過程において起泡剤を生成する原料等の含有量を増減させることによって調整してもよい。これらは1種を単独で行ってもよく、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0038】
第1の実施形態において、発泡性アルコール飲料における起泡剤の濃度は、上述したリモネン/起泡剤比を満たす限り特に限定されないが、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上、より一層好ましくは5ppm以上であり、また、好ましくは200ppm以下、より好ましくは150ppm以下、より一層好ましくは100ppm以下である。発泡性アルコール飲料における起泡剤の濃度の範囲としては、好ましくは1~200ppm、より好ましくは3~150ppm、より一層好ましくは5~100ppmである。
【0039】
一つの実施形態において、起泡剤としてキラヤサポニンが用いられる場合、発泡性アルコール飲料におけるキラヤサポニンの濃度は、好ましくは3ppm以上、より好ましくは5ppm以上、より一層好ましくは10ppm以上であり、また、好ましくは100ppm以下、より好ましくは80ppm以下、より一層好ましくは60ppm以下である。発泡性アルコール飲料におけるキラヤサポニンの濃度の範囲としては、好ましくは3~100ppm、より好ましくは5~80ppm、より一層好ましくは10~60ppmである。発泡性アルコール飲料におけるキラヤサポニンの濃度が上述した範囲にある場合、発泡性アルコール飲料の喫飲時の炭酸による刺激感や爽快感が抑制され、まろやかな口当たりとすることができる。
【0040】
別の実施形態において、起泡剤としてリュウゼツランサポニンが用いられる場合、発泡性アルコール飲料におけるリュウゼツランサポニンの濃度は、好ましくは15ppmppm以上、より好ましくは25ppm以上、より一層好ましくは50ppm以上であり、また、好ましくは100ppm以下、より好ましくは90ppm以下、より一層好ましくは75ppm以下である。発泡性アルコール飲料におけるリュウゼツランサポニンの濃度の範囲としては、好ましくは15~100ppm、より好ましくは25~90ppm、より一層好ましくは50~75ppmである。発泡性アルコール飲料におけるリュウゼツランサポニンの濃度が上述した範囲にある場合、発泡性アルコール飲料の喫飲時の炭酸による刺激感や爽快感が抑制され、まろやかな口当たりとすることができる。
【0041】
起泡剤としてキラヤサポニンおよびリュウゼツランサポニン等のサポニンが用いられる場合、発泡性アルコール飲料のサポニンの濃度は、HPLCを用いて測定することができる。例えば、サポニンの濃度の測定は、日本国厚生労働省が作成する「第8版 食品添加物公定書(2007)」の第305~307頁に記載の方法に従って行うことができる。
【0042】
第1の実施形態において、発泡性アルコール飲料から形成される泡(気泡)の直径(以下、単に「気泡径」とも言う。)は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、好ましくは200μm以上、より好ましくは350μm以上、より一層好ましくは400μm以上(例えば500μm以上)であり、また、好ましくは600μm以下、より好ましくは550μm以下である。気泡径の範囲としては、好ましくは200~600μmの範囲、より好ましくは350~600μm、より一層好ましくは350~550μm、さらにより一層好ましくは400~550μm、特に好ましくは500~550μmである。気泡径が上述した範囲にあることにより、発泡性アルコール飲料において、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとを高いレベルで両立することができる。
【0043】
発泡性アルコール飲料の気泡径の調整および測定は、いずれも後述する第2の実施形態について説明するのと同様の方法で行うことができる。
【0044】
第1の実施形態において、本発明の発泡性アルコール飲料は、その糖類の濃度が調整されていてもよい。本発明の発泡性アルコール飲料の糖類の濃度は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、好ましくは1.0g/100mL以下、より好ましくは1.0g/100mL未満、より一層好ましくは0.5g/100mL以下、特に好ましくは0.5g/100mL未満である。発泡性アルコール飲料の糖類の濃度は、日本国消費者庁が定める「食品表示基準」で定義される「糖類ゼロ」に相当する0.5g/100mL未満とすることができる。発泡性アルコール飲料の糖類の濃度は、ガスクロマトグラフ法およびHPLC法等の当業者によく知られた方法によって測定することができる。
【0045】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態において、発泡性アルコール飲料は、リモネンを含有し、発泡性アルコール飲料から形成される泡(気泡)の直径(気泡径)が特定の範囲に調整される。
【0046】
第2の実施形態において、発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度は、後述する発泡性アルコール飲料の気泡径を満たす限り特に限定されないが、好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上、より一層好ましくは30ppm以上、さらにより一層好ましくは45ppm以上、特に好ましくは60ppm以上であり、また、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、より一層好ましくは150ppm以下である。発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度の範囲としては、好ましくは10~300ppm、より好ましくは20~200ppm、より一層好ましくは30~200ppm、さらにより一層好ましくは45~150ppm、特に好ましくは60~150ppmである。発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度が上述した範囲にある場合、発泡性アルコール飲料の喫飲時の柑橘香の香り立ちを良好なものとすることができる。また、発泡性アルコール飲料の苦味の抑制というさらなる効果を得るという観点から、発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度は、好ましくは20ppm以上、より好ましくは30ppm以上、より一層好ましくは40ppm以上、さらにより一層好ましくは50ppm以上、特に好ましくは120ppm以上である。発泡性アルコール飲料のリモネンの濃度の調整および測定は、いずれも上述した第1の実施形態について説明したのと同様の方法で行うことができる。
【0047】
第2の実施形態において、発泡性アルコール飲料の気泡径は200μm以上に調整され、かつ600μm以下に調整される。発泡性アルコール飲料の気泡径は、好ましくは350μm以上、より好ましくは400μm以上(例えば500μm以上)に調整され、また、好ましくは550μm以下に調整される。さらに、気泡径の範囲としては、好ましくは350~600μm、より好ましくは350~550μm、より一層好ましくは400~550μm、特に好ましくは500~550μmに調整される。気泡径が上述した範囲にあることにより、発泡性アルコール飲料において、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとを両立することができる。
【0048】
発泡性アルコール飲料の気泡径は、以下の手順に従って測定することができる。
高さ25cm×幅6cm×奥行3cmのガラスの直方体型グラス(評価用グラス)に発泡性アルコール飲料を注ぎ入れ、発生した気泡をグラスの正面からCCDカメラを用いて撮影を行って画像を得る。撮影は、評価用グラスの底面から鉛直上方11.5cmの高さの位置で行い、撮影開始時点は撮影箇所に気泡群が存在する間の任意の時点(例えば、上述したグラスに発泡性アルコール飲料を注ぎ終えた後から約20秒以内の時点)とする。撮影された画像を保存し、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製、WinRooF)を用いて、焦点が合っている50個の気泡の円相当径を測定する。なお、測定値は、50個の気泡の円相当径の平均値として算出する。撮影条件を以下に示す。
プログレッシブCCDカメラ iLLunis社製 RMV-29M
レンズ 株式会社ミュートロン製 XLS10-F
撮影速度 4.8fps
シャッター速度 1/Frame sec
解像度 6576×4384
拡大 気泡径に合わせて4~10m/pixelとなるよう調整
【0049】
発泡性アルコール飲料の気泡径は、発泡性アルコール飲料のリモネン濃度、発泡性アルコール飲料に起泡剤を配合する場合にはその種類および/または濃度等によって調整することができる。また、必要に応じて、発泡性アルコール飲料に消泡剤を配合する場合には、その種類および/または濃度により発泡性アルコール飲料の気泡径を調節することもできる。
【0050】
第2の実施形態において、発泡性アルコール飲料に配合する起泡剤の種類および濃度は、上述した第1の実施形態において説明したのと同様の種類および濃度とすることができる。また、発泡性アルコール飲料の起泡剤の濃度の調整および測定は、いずれも上述した第1の実施形態について説明したのと同様の方法で行うことができる。
【0051】
第2の実施形態において、発泡性アルコール飲料が起泡剤を含有する場合、発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比(リモネン/起泡剤比)は、本発明の効果が奏される限り特に限定されないが、好ましくは0.8以上、より好ましくは1以上、より一層好ましくは2以上であり、また、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、より一層好ましくは20以下である。さらに、リモネン/起泡剤比の範囲としては、好ましくは0.8~30、より好ましくは1~25、より一層好ましくは2~20である。起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比が上述した範囲にあることにより、発泡性アルコール飲料において、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとを高いレベルで両立することができる。
【0052】
第2の実施形態において、本発明の発泡性アルコール飲料は、その糖類の濃度が調整されていてもよい。本発明の発泡性アルコール飲料の糖類の濃度の調整および測定は、上述した第1の実施形態について説明したのと同様にして行うことができる。
【0053】
第1および第2の実施形態の発泡性アルコール飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、上述した各成分に加えて、発泡性アルコール飲料の製造に通常用いられる各種の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、乳、発酵乳、糖類(例えば、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖果糖液糖、グラニュー糖、多糖類、オリゴ糖類等)、甘味料(例えば、糖アルコール、高甘味度甘味料、ハチミツ等)、酸味料(例えば、リン酸、クエン酸、無水クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸、フマル酸、酢酸、これらの塩類等)、着色料、食品添加物(例えば、苦味料、保存料、酸化防止剤、増粘安定剤、乳化剤、食物繊維、pH調整剤等)、エキス類、茶類、コーヒー類等が挙げられる。これらのは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、発泡性アルコール飲料におけるこれらの成分の配合量は、用いられる成分の種類、他の成分の種類や配合量、目的とする発泡性アルコール飲料の種類や特性に応じて適宜設定することができる。
【0054】
一つの実施態様において、本発明の発泡性アルコール飲料は無糖である。本明細書において「無糖」とは、発泡性アルコール飲料における単糖類および二糖類の含有量の合計が、発泡性アルコール100mLあたり0.5g未満であることをいう。
【0055】
[発泡性アルコール飲料の製造方法]
本発明の別の態様によれば、リモネンを含有する発泡性アルコール飲料の製造方法であって、下記の(1)および(2):
(1)前記発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比を0.8以上に調整する工程;
(2)前記発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径を200~600μmに調整する工程;
の少なくとも1つの工程を含む製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)が提供される。本発明の製造方法により得られる発泡性アルコール飲料は、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとを備えた発泡性アルコール飲料である。以下、上述した(1)および(2)の工程についてそれぞれ詳述する。
【0056】
<工程(1)>
工程(1)では、発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比(リモネン/起泡剤比)が0.8以上に調整され、好ましくは1以上、より好ましくは2以上に調整され、また、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、より一層好ましくは20以下に調整される。さらに、リモネン/起泡剤比の範囲としては、好ましくは0.8~30、より好ましくは1~25、より一層好ましくは2~20に調整される。起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比を上述した範囲に調整することにより、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとが両立した発泡性アルコール飲料を得ることができる。
【0057】
発泡性アルコール飲料におけるリモネンの濃度、起泡剤の種類および濃度は、いずれも上述した本発明のアルコール飲料について説明したのと同様の種類および濃度とすることができる。また、リモネンおよび起泡剤の濃度の調整および測定は、いずれも上述した本発明のアルコール飲料について説明したのと同様の方法で行うことができる。
【0058】
<工程(2)>
工程(2)では、発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径(気泡径)が200μm以上に調整され、かつ600μm以下に調整される。発泡性アルコール飲料の気泡径は、好ましくは350μm以上、より好ましくは400μm以上に調整され、また、好ましくは550μm以下、より好ましくは500μm以下に調整される。さらに、気泡径の範囲としては、好ましくは350~600μm、より好ましくは350~550μm、より一層好ましくは400~550μm、特に好ましくは400~500μmに調整される。気泡径が上述した範囲にあることにより、発泡性アルコール飲料において、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとを両立することができる。
【0059】
発泡性アルコール飲料における気泡径の調整は、上述した本発明のアルコール飲料について説明したのと同様の方法で行うことができる。
【0060】
上述した工程(1)および(2)は一方を単独で行ってもよく、両方を組み合わせて行ってもよい。工程(1)および(2)の両方を組み合わせて行うことにより、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとが高いレベルで両立した発泡性アルコール飲料を得ることができる。
【0061】
本発明の製造方法は、上述した工程(1)および(2)に加えて、発泡性アルコール飲料における炭酸ガスの濃度を調整する工程を含んでもよい。発泡性アルコール飲料における炭酸ガスの濃度の調整は、上述した本発明の発泡性アルコール飲料について説明したのと同様の方法で行うことができる。
【0062】
本発明の製造方法は、上述した工程(1)および(2)に加えて、発泡性アルコール飲料におけるアルコールの濃度を調整する工程を含んでもよい。発泡性アルコール飲料におけるアルコールの濃度の調整は、上述した本発明の発泡性アルコール飲料について説明したのと同様の方法で行うことができる。
【0063】
本発明の製造方法により得られる発泡性アルコール飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、上述した各成分に加えて、発泡性アルコール飲料の製造に通常用いられるその他の成分を含んでいてもよい。そのようなその他の成分としては、上述した本発明の発泡性アルコール飲料について説明したその他の成分が挙げられる。
【0064】
[発泡性アルコール飲料にまろやかな口当たりおよび柑橘香を付与する方法]
本発明の別の態様によれば、発泡性アルコール飲料にまろやかな口当たりおよび柑橘香を付与する方法であって、下記の(1)および(2):
(1)前記発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比を0.8以上に調整する工程;
(2)前記発泡性アルコール飲料から形成される泡の直径を200~600μmに調整する工程;
の少なくとも1つの工程を含む製造方法(以下、「本発明の方法」ともいう。)が提供される。本発明の方法によれば、発泡性アルコール飲料に、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりと、柑橘香の良好な香り立ちとを付与することができる。
【0065】
本発明の方法における(1)および(2)の工程は、それぞれ上述した本発明の製造方法について説明した(1)および(2)の工程と同様にして行うことができる。
【実施例0066】
以下の実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1:発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比と口当たりおよび香り立ちとの相関1
発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比と、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりおよび柑橘香の良好な香り立ちとの相関を、以下の手順にしたがって検討した。
【0068】
飲料サンプルの作製
下記の各成分をそれぞれ所定の最終濃度および圧力となるように混合して、ベース飲料を作製した。
原料アルコール 5v/v%
炭酸ガス 0.1MPa以上
糖類(フジフラクト H-100S 日本食品化工株式会社製) 2.8質量%
酸味料(精製クエン酸ナトリウム M 扶桑化学工業株式会社製) 0.14質量%
【0069】
得られたベース飲料に起泡剤(キラヤ科の植物の抽出物)および/またはリモネンをそれぞれ下記表1~3に示す最終濃度となるように添加して、試験区1-1~1-7(試験群1)、2-1~2-7(試験群2)および3-1~3-11(試験群3)の各飲料サンプルを作製した。
【0070】
【表1】
【表2】
【表3】
【0071】
各試験区の飲料サンプルについて、訓練された7名のパネルによる官能評価を行った。官能評価の評価項目は、「柑橘香の香り立ち」、「苦味」および「まろやかな口当たり」の3項目とした。
【0072】
各評価項目について、
1:なし
2:わずかに感知される
3:十分に感知される
4:強く感知される
5:非常に強く感知される
の5段階で点数をつけて評価を行った。なお、柑橘香の香り立ちについては試験群1~3において1-2、2-2および3-2をそれぞれ1点とし、1-1、2-1および3-1をそれぞれ5点とし、2.5点以上を特に効果ありと判断した。また、苦味については試験群1~3において試験区1-1、試験区2-1および試験区3-1をそれぞれ1点とし、試験区1-2、試験区2-2および試験区3-2をそれぞれ5点とし、4点未満を特に効果ありと判断した。また、まろやかな口当たりについては試験群1~3において試験区1-1、試験区2-1および試験区3-1をそれぞれ1点とし、試験区1-2、試験区2-2および試験区3-2をそれぞれ5点とし、2.5点以上を特に効果ありと判断した。
【0073】
上述した表1~3に、各試験区の飲料サンプルについての官能評価の結果をまとめて示す。なお、官能評価の各項目の点数は、いずれも7名のパネルの平均値±標準偏差として示す。
【0074】
表1に示す結果から、起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比が1以上である場合には、柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりが特に良好に感じられることが分かる。さらに、起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比が2以上である場合には、特に良好な柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりに加えて、苦味が特に抑制されることが分かる。
【0075】
表2に示す結果から、起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比が0.8以上である場合には、柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりが特に良好に感じられることが分かる。さらに、起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比が0.8以上である場合には、特に良好な柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりに加えて、苦味が特に抑制されることが分かる。
【0076】
表3に示す結果から、起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比が0.9以上である場合には、柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりが特に良好に感じられることが分かる。さらに、起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比が0.9以上である場合には、特に良好柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりに加えて、苦味が特に抑制されることが分かる。
【0077】
実施例2:発泡性アルコール飲料における起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比と口当たりおよび香り立ちとの相関2
実施例1において、発泡性アルコール飲料に配合するリモネンとして、リモネンを含有する果汁を配合した場合の、発泡性アルコール飲料における、炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりおよび柑橘香の良好な香り立ちとの相関を検討した。
【0078】
具体的には、実施例1と同様の手順により作製したベース飲料に、起泡剤(キラヤ科の植物の抽出物)、およびリモネンを含有するレモン果汁を添加して、起泡剤およびリモネンの最終濃度をそれぞれ25ppmおよび90ppmに調整して試験区4の飲料サンプルを作製した。
【0079】
試験区4の飲料サンプルについて、実施例1で行ったのと同様の方法により官能評価を行った。感応評価の結果を下記表4に示す。なお、官能評価の各項目の点数は、いずれも7名のパネルの平均値±標準偏差として示す。
【0080】
【表4】
【0081】
表4に示す結果から、起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比が3.6である場合には、柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりが特に良好に感じられ、さらに苦味が特に抑制されることが分かる。また、この結果から、発泡性アルコール飲料に配合されるリモネンがリモネン単体ではなく果汁に含まれるリモネンであっても、起泡剤の質量に対するリモネンの質量の比が所定の範囲であれば、発泡性アルコール飲料において特に良好な柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりが達成されることが分かる。
【0082】
実施例3:発泡性アルコール飲料における気泡径と口当たりおよび香り立ちとの相関
発泡性アルコール飲料から形成される泡(気泡)の直径(気泡径)と、発泡性アルコール飲料における炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりおよび柑橘香の良好な香り立ちとの相関を、以下の手順にしたがって検討した。
【0083】
飲料サンプルの準備
飲料サンプルとして、実施例1で作製した下記の各飲料サンプルを準備した。
ベース飲料(キラヤ抽出物0ppm リモネン0ppm)
試験区1-2(キラヤ抽出物10ppm リモネン0ppm)
試験区1-6(キラヤ抽出物10ppm リモネン90ppm)
試験区1-7(キラヤ抽出物10ppm リモネン150ppm)
試験区2-2(キラヤ抽出物25ppm リモネン0ppm)
試験区2-6(キラヤ抽出物25ppm リモネン90ppm)
試験区2-7(キラヤ抽出物25ppm リモネン150ppm)
試験区3-2(キラヤ抽出物50ppm リモネン0ppm)
試験区3-10(キラヤ抽出物50ppm リモネン90ppm)
試験区3-11(キラヤ抽出物50ppm リモネン150ppm)
【0084】
次いで、各試験区の飲料サンプルから形成される気泡の径を、以下の手順に従って測定した。
まず、高さ25cm×幅6cm×奥行3cmのガラスの直方体型グラス(評価用グラス)に各試験区の飲料サンプルを注ぎ入れ、発生した気泡をグラスの正面からCCDカメラを用いて撮影を行って画像を得た。撮影は、評価用グラスの底面から鉛直上方11.5cmの高さの位置で行い、撮影開始時点はいずれも上述したグラスに各試験区の飲料サンプルを注ぎ終えた後から20秒以内の時点とした。撮影された画像を保存し、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製、WinRooF)を用いて、焦点が合っている50個の気泡の円相当径を測定した。なお、測定値は、50個の気泡の円相当径の平均値として算出した。撮影条件は以下に示す通りとした。
プログレッシブCCDカメラ iLLunis社製 RMV-29M
レンズ 株式会社ミュートロン製 XLS10-F
撮影速度 4.8fps
シャッター速度 1/Frame sec
解像度 6576×4384
拡大 気泡径に合わせて4~10μm/pixelとなるよう調整
【0085】
各試験区の飲料サンプルから形成された気泡径を、下記表5~7に示す。各表中、気泡径は、いずれも50個の気泡の円相当径の平均値(平均径)±標準偏差として示す。また、実施例1で行った各飲料サンプルについての官能評価試験の結果を下記表5~7に示す。なお、上述したベース飲料についても気泡径を測定したところ、807.0μm±165.5(平均値(平均径)±標準偏差)であった。
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
表5~7に示す結果から、発泡性アルコール飲料がリモネンを含み、かつ発泡性アルコール飲料から形成される泡の径(気泡径)が特定の範囲にある場合には、柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりが特に良好に感じられ、さらに苦味が特に抑制されることが分かる。
【0090】
実施例4:発泡性アルコール飲料における起泡剤の濃度と口当たりおよび香り立ちとの相関
発泡性アルコール飲料における起泡剤の濃度と、発泡性アルコール飲料における炭酸による刺激感や爽快感が抑制されたまろやかな口当たりおよび柑橘香の良好な香り立ちとの相関を、以下の手順にしたがって検討した。
【0091】
飲料サンプルの作製
下記の各成分をそれぞれ所定の最終濃度および圧力となるように混合して、ベース飲料を作製した。
原料アルコール 5v/v%
炭酸ガス 0.1MPa以上
糖類(フジフラクト H-100S 日本食品化工株式会社製) 2.8質量%
酸味料(精製クエン酸ナトリウム M 扶桑化学工業株式会社製) 0.14質量%
【0092】
得られたベース飲料に起泡剤(キラヤ科の植物の抽出物またはリュウゼツラン科ユッカ属の植物の抽出物)および/またはリモネンをそれぞれ下記表8に示す最終濃度となるように添加して、試験区5-1~5-7の各飲料サンプルを作製した。
【0093】
【表8】
【0094】
各試験区の飲料サンプルについて、訓練された6名のパネルによる官能評価を行った。官能評価の評価項目は、「柑橘香の香り立ち」、「苦味」および「まろやかな口当たり」の3項目とした。
【0095】
各評価項目について、実施例1と同様の5段階で点数をつけて評価を行った。なお、柑橘香の香り立ちについては試験区5-2を1点とし、試験区5-1を5点とし、2.5点以上を特に効果ありと判断した。また、苦味については試験区5-1を1点とし、試験区5-2を5点とし、4点未満を特に効果ありと判断した。また、まろやかな口当たりについては試験区5-1を1点とし、試験区5-2を5点とし、2点以上を効果あり、2.5点以上を特に効果ありと判断した。
【0096】
上述した表8に、各試験区の飲料サンプルについての官能評価の結果をまとめて示す。なお、官能評価の各項目の点数は、いずれも6名のパネルの平均値±標準偏差として示す。
【0097】
表8に示す結果から、飲料サンプルがリモネンと起泡剤とを含有し、かつ起泡剤の濃度が25~90ppmである場合には、柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりが特に良好に感じられることが分かる。さらに、起泡剤の濃度が上述した範囲である場合には、特に良好な柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりに加えて、苦味が特に抑制されることが分かる。また、飲料サンプルがリモネンと起泡剤とを含有し、かつ起泡剤の濃度が10ppmである場合でも、柑橘香の良好な香り立ちが特に良好に感じられ、まろやかな口当たりも感知できる程度に良好に感じられることが分かる。さらに、起泡剤の濃度が10ppmである場合には、これらに加えて苦味が特に抑制されることが分かる。
【0098】
実施例5:発泡性アルコール飲料における起泡剤の濃度と気泡径との相関
発泡性アルコール飲料における起泡剤の濃度と、発泡性アルコール飲料から形成される泡(気泡)の直径(気泡径)との相関を、実施例4で作製した飲料サンプル5-1および5-3~5-7を用いて以下の手順にしたがって検討した。
【0099】
飲料サンプルの作製
飲料サンプルとして、実施例4で作製した試験区5-1および5-3~5-7の各飲料サンプルを準備した。
【0100】
飲料サンプルの気泡径の測定
次いで、各試験区の飲料サンプルから形成される気泡の径を、以下の手順に従って測定した。
まず、実施例1で用いたのと同様の評価用グラスに各試験区の飲料サンプルを注ぎ入れ、発生した気泡をグラスの正面からCCDカメラを用いて撮影を行って画像を得た。撮影は、評価用グラスの底面から鉛直上方11.5cmの高さの位置で行い、撮影開始時点はいずれも上述したグラスに各試験区の飲料サンプルを注ぎ終えた後から撮影箇所に気泡群が存在する間の任意の時点とした。撮影された画像を保存し、画像解析ソフト(三谷商事株式会社製、WinRooF)を用いて、焦点が合っている50個の気泡の円相当径を測定した。なお、測定値は、50個の気泡の円相当径の平均値として算出した。撮影条件は以下に示す通りとした。
プログレッシブCCDカメラ iLLunis社製 RMV-29M
レンズ 株式会社ミュートロン製 XLS10-F
撮影速度 4.8fps
シャッター速度 1/Frame sec
解像度 6576×4384
拡大 気泡径に合わせて4~10μm/pixelとなるよう調整
【0101】
各試験区の飲料サンプルから形成された気泡径を、下記表9に示す。表中、気泡径は、いずれも50個の気泡の円相当径の平均値(平均径)±標準偏差として示す。また、表8に示した「柑橘香の香り立ち」、「苦味」および「まろやかな口当たり」の3項目の官能評価の結果も併せて示す。
【0102】
【表9】
【0103】
表9に示す結果から、飲料サンプルから形成される泡の直径(気泡径)が502.4~536.6μmである場合には、柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりが特に良好に感じられることが分かる。さらに、気泡径が上述した範囲である場合には、特に良好な柑橘香の良好な香り立ちおよびまろやかな口当たりに加えて、苦味が特に抑制されることが分かる。