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特開2024-104746ポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物およびポリウレタンフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104746
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物およびポリウレタンフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240729BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008605
(22)【出願日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2023008617
(32)【優先日】2023-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏目 拓弥
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF12
4J034DG03
4J034DG04
4J034DQ16
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC06
4J034HC52
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD01
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA02
4J034QA01
4J034QB01
4J034QB10
4J034QB11
4J034QC01
(57)【要約】
【課題】成形性が良好なポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物を提供する。
【解決手段】一分子中に1以上のNを有し、全てのNについて各Nに結合する3つの有機基のうち2つ以上が炭素数2以上の有機基である3級アミンと、ハイドロハロオレフィンと、ポリオールと、を含み、有機酸を含まない、ポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中に1以上のNを有し、全てのNについて各Nに結合する3つの有機基のうち2つ以上が炭素数2以上の有機基である3級アミンと、
ハイドロハロオレフィンと、
ポリオールと、を含み、
有機酸を含まない、
ポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物。
【請求項2】
前記ハイドロハロオレフィンは、ハイドロクロロフルオロオレフィンを含み、
前記ポリオールの総量を100質量部とした場合に、前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが27質量部以上含まれている、
請求項1に記載のポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物を用いたポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物およびポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物は、アミン触媒組成物と、ハイドロハロオレフィン類を含む発泡剤と、ポリオールと、を含んでいる。アミン触媒組成物には、ギ酸などの酸類が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-58663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される原料配合組成物では、アミン触媒組成物と、酸類とを含む(すなわち、酸類でキャッピングされる種類の触媒と、酸類が併存している)ため、低温雰囲気下における立ち上がり悪化などの成形性が不良になってしまう。ここでいう成形不良とは、例えば、立ち上がり悪化により原料が治具底部に滞留することに加え、発泡圧の増大により型又は型を支持する治具が破壊されて膨れが発生すること、ポリウレタンフォームと面材の接着不良によって剥離してしまうこと等である。
本開示は、低温雰囲気下で成形性が良好なポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕一分子中に1以上のNを有し、全てのNについて各Nに結合する3つの有機基のうち2つ以上が炭素数2以上の有機基である3級アミンと、
ハイドロハロオレフィンと、
ポリオールと、を含み、
有機酸を含まない、
ポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、成形性が良好なポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、構造式(1)において、第1のN(左側のN)に結合する有機基を説明する説明図である。
図2図2は、構造式(1)において、第2のN(中央のN)に結合する有機基を説明する説明図である。
図3図3は、構造式(1)において、第3のN(右側のN)に結合する有機基を説明する説明図である。
図4図4は、構造式(2)において、左側のNに結合する有機基を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔1〕一分子中に1以上のNを有し、全てのNについて各Nに結合する3つの有機基のうち2つ以上が炭素数2以上の有機基である3級アミンと、
ハイドロハロオレフィンと、
ポリオールと、を含み、
有機酸を含まない、
ポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物。
【0009】
〔2〕前記ハイドロハロオレフィンは、ハイドロクロロフルオロオレフィンを含み、
前記ポリオールの総量を100質量部とした場合に、前記ハイドロクロロフルオロオレフィンが27質量部以上含まれている、
〔1〕に記載のポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物。
【0010】
〔3〕〔1〕又は〔2〕に記載のポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物を用いたポリウレタンフォーム。
【0011】
以下、本開示を詳しく説明する。
1.ポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物
本開示のポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物(以下、単に組成物ともいう)は、3級アミンと、ハイドロハロオレフィンと、ポリオールと、を含む。組成物は、有機酸を含まない。ここでいう有機酸は、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、フマル酸、アジピン酸である。
【0012】
[ポリオール]
ポリオールは、特に限定されない。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエステルポリオール等を用いることができる。これらの中でも、ポリオールは、ポリエーテルポリオールを含有することが好ましい。
【0013】
ポリエーテルポリオールとしては、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。なお、ポリエーテルポリオールとしては、1種のポリエーテルポリオールのみが含有されてもよいし、2種以上のポリエーテルポリオールが併用されてもよい。
【0014】
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、好ましくは150以上2000以下であり、より好ましくは200以上1500以下であり、さらに好ましくは300以上1000以下である。
ポリエーテルポリオールの官能基数は、好ましくは2以上5以下であり、より好ましくは3以上5以下であり、さらに好ましくは4又は5である。
【0015】
ポリマーポリオールは、特に限定されない。ポリマーポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール(ベースポリオール)に、スチレン、アクリロニトリル、メラミン等のビニルモノマーを重合したポリマーポリオールが挙げられる。
【0016】
ポリエステルポリオールは、特に限定されない。ポリエステルポリオールは、例えば、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する化合物の1種又は2種以上と、少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物の1種又は2種以上との縮合により得られるポリエステルポリオール、又はカプロラクトン、メチルバレロラクトン等の環状エステルの開環重合体類である。
【0017】
[3級アミン]
3級アミンは、ポリオールとイソシアネートのウレタン化反応を促進する触媒として用いられる。本開示で用いる3級アミンは、一分子中に1以上のN(窒素原子)を有し、全てのNについて各Nに結合する3つの有機基のうち2つ以上が炭素数2以上の有機基であるとの条件を満たす3級アミンである。3級アミンには、一分子中において同じNに2つの有機基が結合して環状構造を形成し、環状構造に含まれる炭素数の半分が2以上であるとの条件を満たすものも含まれ得る。Nに結合する3つの有機基のうち2つ以上は、炭素数が2以上10以下であることが好ましい。有機基には、窒素原子が含まれていてもよい。
【0018】
3級アミンは、ジアミン、トリアミン、テトラミンなどのポリアミンが好ましい。ポリアミンにおいて、隣合うアミンのNは、炭素数1以上5以下のアルキレン基で結合されていることが好ましい。ポリアミンにおいて全てのNは3級アミンとされていることが好ましい。ポリアミンのNは、前記アルキレン基で結合されている位置以外は、炭素数1以上5以下のアルキル基が結合していることが好ましい。
【0019】
3級アミンとしては、例えば、N1,N2-dimethyl-N1-{2-[methyl(propan-2-yl)amino]ethyl}-N2-(propan-2-yl)ethane-1,2-diamine、2,2-ジモルホリノジエチルエーテル、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパン-1,3-ジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,1,4,7,7-ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,7-ペンタエチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,7-ペンタメチルジプロピレントリアミン、2,5,8,11-テトラメチル-2,5,8,11-テトラアザドデカン、N,N,N’-トリメチル-N’-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-1,2-エタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4-メチル-4-アザヘプタン-1,7-ジアミン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,3,5-トリス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ヘキサヒドロ-s-トリアジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、2,5-ジメチルトリエチレンジアミン、ヒドロキシメチルトリエチレンジアミン、1-メチル-4-[2-(ジメチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、4,4’-(オキシジメチレン)ジモルホリン、4,4’-(オキシジエチレン)ジモルホリン、ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]エーテル、ビス[2-(ジエチルアミノ)エチル]エーテル、ビス[2-(ジエチルアミノ)プロピル]エーテル、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチル-1H-イミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルノニルアミン、N,N-ジメチルデシルアミン、N,N-ジメチルウンデシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルトリデシルアミン、N,N-ジメチルテトラデシルアミン、N,N-ジメチルペンタデシルアミン、N,N-ジメチルヘキサデシルアミン、N,N-ジメチルヘプタデシルアミン、N,N-ジメチルオクタデシルアミン、メチルイソプロピルベンジルアミン、メチルシクロペンチルベンジルアミン、イソプロピル-sec-ブチル-トリフルオロエチルアミン、ジエチル-(α-フェニルエチル)アミン、N,N-ジメチルアミノエタノール、1-(ジメチルアミノ)-2-プロパノール、1-アミノ-3-(ジメチルアミノ)プロパン、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシイソプロパノール、2-[2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エトキシ]エタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシイソプロパノール、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル](メチル)アミノ]エタノール、N,N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルアミノイソプロパノール、N,N-ジメチルアミノプロピル-N’-メチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノプロピル-N’-メチルアミノイソプロパノール、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]エタノール、2-[3-(ジメチルアミノ)プロピルアミノ]エタノール、2-[[2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エチル]メチルアミノ]エタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシイソプロピルビスアミノエチルエーテル、N-(3-アミノプロピル)-N,N’,N’-トリメチル-[2,2’-オキシビス(エタンアミン)]、N,N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルアミノエチル-N"-メチルアミノエタノール、1,3,6,9-テトラメチル-3,6,9-トリアザ-1-デカノール、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N’,N",N"-テトラメチルジエチレントリアミン、1-[ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アミノ]-2-プロパノール、1,1’-[[3-(ジメチルアミノ)プロピル]イミノ]ビス(2-プロパノール)、1-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルピペラジン、6-(ジメチルアミノ)-1-ヘキサノール、5-ジメチルアミノ-3-メチル-1-ペンタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)-1H-イミダゾール、3-(1H-イミダゾール-1-イル)-1-プロパノール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチル-1H-イミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)-2-メチル-1H-イミダゾール、N,N,N’,N’,N",N"-ヘキサメチル-(4-アミノメチル)オクタン-1,8-ジアミン、ビス(N,N-ジメチルアミノエチルピペラジニル)エタン、N,N’,N’-トリメチル-N’-(2-メトキシエチル)エチレンジアミン等が挙げられる。これらのうち一種又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
3級アミンとしては、以下の構造式(1)で表される、N1,N2-dimethyl-N1-{2-[methyl(propan-2-yl)amino]ethyl}-N2-(propan-2-yl)ethane-1,2-diamine、以下の構造式(2)で表される、2,2-ジモルホリノジエチルエーテルが好ましい。特に、3級アミンとしては、以下の構造式(1)で表される、N1,N2-dimethyl-N1-{2-[methyl(propan-2-yl)amino]ethyl}-N2-(propan-2-yl)ethane-1,2-diamineがより好ましい。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
上記の構造式(1)において、図1に示すように、第1のN(左側のN)に着目すると、第1のNに結合する左右両側の有機基(図中の破線で囲まれた有機基)は、炭素数2以上の有機基である。
また、図2に示すように、第2のN(中央のN)に着目すると、第2のNに結合する左右両側の有機基(図中の破線で囲まれた有機基)は、炭素数2以上の有機基である。
また、図3に示すように、第3のN(右側のN)に着目すると、第3のNに結合する左右両側の有機基(図中の破線で囲まれた有機基)は、炭素数2以上の有機基である。
したがって、構造式(1)で表される3級アミンは、一分子中に3つのNを有し、全てのNについて各Nに結合する3つの有機基のうち2つが炭素数2以上の有機基である。
【0024】
上記の構造式(2)において、図4に示すように、左側のNに着目すると、左側のNに結合する有機基(図中の破線で囲まれた有機基)は、炭素数2以上の有機基である。
また、図4に示すように、右側のNは、左側のNと同様の構成である。
したがって、構造式(2)で表される3級アミンは、一分子中に2つのNを有し、全てのNについて各Nに結合する3つの有機基のうち2つが炭素数2以上の有機基である。
【0025】
上記の構造式(2)において、図4に示す破線で囲まれた有機基は、同じ左側のNに結合し、Nと結合していない側において同じO(酸素原子)に結合することで環状構造(環状エーテル構造)を形成している。
また、図4に示すように、右側のNは、左側のNと同様の環状構造を形成している。
したがって、構造式(2)で表される3級アミンは、一分子中において同じNに2つの有機基が結合して環状構造を形成し、環状構造に含まれる炭素数の半分が2以上である。
【0026】
3級アミンとしてのN1,N2-dimethyl-N1-{2-[methyl(propan-2-yl)amino]ethyl}-N2-(propan-2-yl)ethane-1,2-diamineの含有量は、ポリオールの総量を100質量部としたとき、0.1質量部以上1.5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上1.0質量部以下がより好ましく、0.4質量部以上0.6質量部以下がさらに好ましい。
【0027】
3級アミンとしての2,2-ジモルホリノジエチルエーテルの含有量は、ポリオールの総量を100質量部としたとき、0.5質量部以上3.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以上2.5質量部以下がより好ましく、1.5質量部以上2.0質量部以下がさらに好ましい。
【0028】
[発泡剤]
組成物は、発泡剤としてハイドロハロオレフィンを含む。ハイドロハロオレフィンは、フッ素原子を含むハイドロハロオレフィンが好ましい。フッ素原子を含むハイドロハロオレフィンとして、トリフルオロプロペン、HFO-1234等のテトラフルオロプロペン、及びHFO-1225等のペンタフルオロプロペンが挙げられる。フッ素原子を含むハイドロハロオレフィンは、ハイドロクロロフルオロオレフィンを含む。ハイドロクロロフルオロオレフィンとして、HFO-1233等のクロロトリフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、及びクロロテトラフルオロプロペンが挙げられる。
【0029】
フッ素原子を含むハイドロハロオレフィンとして、具体的には、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFO-1233zd)、及びシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)、これらの構造異性体、幾何異性体、立体異性体等が例示される。
【0030】
組成物は、発泡剤として、ハイドロクロロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。組成物中のハイドロクロロフルオロオレフィンの含有量は、ポリオールの総量を100質量部とした場合に、20質量部以上35質量部以下が好ましく、24質量部以上33質量部以下がより好ましく、27質量部以上30質量部以下がさらに好ましい。
【0031】
組成物に含まれるハイドロクロロフルオロオレフィンとしては、以下の構造式(2)で表される、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(HFO-1233zd)が好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】
組成物は、ハイドロハロオレフィン以外の発泡剤を含んでいてもよい。組成物は、例えば、水、CO発生材料等が挙げられる。これらのうち一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
[その他の成分]
組成物は、3級アミン、ハイドロハロオレフィン、及びポリオール以外に、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、整泡剤、相溶化剤、架橋剤、鎖延長剤、着色剤、難燃剤、上記3級アミン以外の触媒等が挙げられる。
【0035】
整泡剤は、特に限定されない。整泡剤は、例えば、シリコーン界面活性剤が好ましい。シリコーン界面活性剤としては、シロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーが好ましく、例えば、ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマーが挙げられる。シリコーン界面活性剤は、1種のシリコーン界面活性剤のみが用いられてもよいし、2種以上のシリコーン界面活性剤が併用されてもよい。
整泡剤の含有量は、ポリオールの総量を100質量部としたとき、1.0質量部以上10.0質量部以下が好ましく、2.0質量部以上8.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以上6.0質量部以下がさらに好ましい。
【0036】
2.ポリウレタンフォーム製造用反応液セット
上記組成物を用いて、2液型ポリウレタンフォーム製造用反応液セットを構成してもよい。ポリウレタンフォーム製造用反応液セットは、例えば、A液として上記組成物と、B液としてイソシアネートと、を備えている。
【0037】
[イソシアネート]
イソシアネートとしては、一般にポリウレタンフォームの製造に使用されるものを用いることができる。イソシアネートは、ポリメリックメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルMDI、及び変性MDIからなる群より選ばれる1種以上のMDI系化合物を含有することが好ましい。イソシアネートは、ポリメリックMDIを含有することが好ましい。
【0038】
ポリメリックMDIは、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートであり、例えば、二核体であるMDIと、三核体以上の多核体との混合物である。ポリメリックMDIは、MDI合成反応により得られる未処理の粗(クルード)MDIであってもよく、また上記の粗(クルード)MDIから減圧蒸留により所望量のモノメリックMDIを分離して組成を調整したものであってもよい。
【0039】
モノメリックMDIは、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、およびこれらの2種以上の混合物である。
【0040】
変性MDIは、例えば、MDIのカルボジイミド変性体、MDIのウレタン変性体、MDIのウレトイミン変性体等である。
【0041】
イソシアネートの含有量は、ポリオールの総量を100質量部とした場合に、80質量部以上140質量部以下が好ましく、90質量部以上120質量部以下がより好ましく、100質量部以上105質量部以下がさらに好ましい。
【0042】
ポリウレタンフォーム製造用反応液セットは、組成物(A液)とイソシアネート(B液)とを所定の混合割合で混合して使用できる。組成物とイソシアネートの混合割合は、特に限定されない。組成物とイソシアネートの混合割合は、イソシアネートインデックスに応じて規定できる。イソシアネートインデックス(INDEX)は、80以上140以下が好ましく、95以上135以下がより好ましく、110以上130以下が更に好ましい。イソシアネートインデックス(INDEX)は、組成物中に含まれる活性水素基1モルに対するイソシアネート成分のモル数を100倍した値であり、[(イソシアネート当量/組成物中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0043】
3.ポリウレタンフォームの製造方法
ポリウレタンフォームの製造方法は特に限定されない。ポリウレタンフォームの製造方法は、例えば、上記組成物(A液)と、イソシアネート(B液)と、を混合する。
ポリウレタンフォームを製造するにあたって、A液とB液を混合する手法は特に限定されない。例えば、A液とB液は、小型ミキサーや、一般のウレタンフォームを製造する際に使用する、注入発泡用の低圧、または高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧、または高圧発泡機、連続ライン用の低圧、または高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機等を用いて混合できる。ポリウレタンフォームを発泡成形する場合には、A液とB液を混合した所定量の混合液を、所定の液温にてモールドに注入すればよい。
【0044】
4.ポリウレタンフォーム
ポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォーム製造用反応液セットから得られる。なお、ポリウレタンフォーム製造用反応液セットは、現場発泡に用いられてもよく、製造工場内でA液とB液を混合してポリウレタンフォームを製造する際に用いられてもよい。
【0045】
得られるポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
(4.1)見かけ密度(フリー密度)
見かけ全体密度(フリー密度、JIS K7222:2005準拠)は、20kg/m以上35kg/m以下が好ましく、23kg/m以上33kg/m以下がより好ましく、25kg/m以上30kg/m以下が更に好ましい。
【0046】
5.本実施形態の効果
本開示のポリウレタンフォーム製造用の原料配合組成物は、有機酸を含まず、発泡時の立ち上がりが良く、成形性が良好である。また、低温環境下(例えば15℃程度)でも、発泡時の立ち上がりが良く、成形性が良好である。また、低温環境下(例えば15℃程度)でも、原料の発泡圧を抑制でき、成形性が良好である。また、接着不良が無く、低温雰囲気下での立ち上がりが良好且つ発泡圧により型又は型を支持する治具が破壊されない程度に成形性が良好となる。
【0047】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。
【実施例0048】
次に、実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。
1.ポリウレタンフォームの製造
表1,2の割合で配合した組成物(A液)を調製した。表1,2において、配合割合はポリオール全体を100質量部とした場合の配合割合(質量部)を表す。表3,4では、各実施例及び各比較例の発泡剤の配合割合を物質量で表している。
各原料の詳細は以下の通りである。
ポリオール1:ペンタエリトリトールを出発物質としたポリエーテルポリオール、官能基数4(三井化学SKC社製、品番:PE400)
ポリオール2:ショ糖を出発物質としたポリエーテルポリオール、官能基数5(AGC社製、品番:EXCENOL100S)
ポリオール3:芳香族アミン系ポリエーテルポリオール、出発物質がトルエンジアミン、官能基数4(BASF社製、品番:VP9234)
整泡剤1:ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OH末端)(Evonik社製、品番:B8516)
整泡剤2:ジメチルポリシロキサン-ポリオキシアルキレンコポリマー(OR末端)(ダウ東レ社製、品番:SZ1677)
触媒1:N,N-ジメチルシクロへキシルアミン
触媒2:N,N,N´,N´,N´´-ペンタメチルジエチレントリアミン
触媒3:N1,N2-dimethyl-N1-{2-[methyl(propan-2-yl)amino]ethyl}-N2-(propan-2-yl)ethane-1,2-diamine
触媒4:2,2-ジモルホリノジエチルエーテル
発泡剤1:水
発泡剤2:ギ酸
発泡剤3:トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン
【0049】
イソシアネート(B液)として、以下の原料を用いた。
イソシアネート:ポリメリックMDI(BASF INOACポリウレタン社製、LUPRANATE(登録商標) M20S)
【0050】
上記の組成物(A液)と上記のイソシアネート(B液)とを混合した混合液を、15℃の液温に調整した。混合液をミキサーを用いて3600rpmで8秒間攪拌混合してフリー発泡させ、ポリウレタンフォームを得た。
【0051】
組成物(A液)と、イソシアネート(B液)との反応性(クリームタイム、ゲルタイム、ライズタイム)を以下の手法により測定した。
クリームタイム:上記混合液において、クリーム状には白濁してフォームの上昇が開始するまでの時間をクリームタイム(秒)として測定した。
ゲルタイム:上記混合液において、増粘しゲル化が始まるまでの時間をゲルタイム(秒)として測定した。
ライズタイム:上記混合液において、発泡によるフォームの上昇が停止するまでの時間をライズタイム(秒)として測定した。
なお、上記測定においては、組成物(A液)と、イソシアネート(B液)との混合を開始した時間をゼロ秒として測定した。判定は、目視により行った。
【0052】
フリー発泡によって得られたポリウレタンフォームの見かけ密度(フリー密度)は、JIS K7222:2005に準拠して測定した。
【0053】
また、実施例1-4及び比較例1について、モールド成形によってポリウレタンフォームを得て、成形性を確認した。具体的には、A液とB液を混合した混合液を15℃の液温に調整して、型に注入して発泡させた。そして、発泡時に型又は型を支持する治具が破壊される程度に原料の発泡圧が大きいか否か判断した。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
2.評価方法
(1)立ち上がり
実施例および比較例におけるポリウレタンフォームのフリー発泡時の立ち上がりを、ライズプロファイル(経過時間とフォームの立ち上がり高さとの関係を示すデータ)に基づいて評価した。
立ち上がりの評価は、以下の基準とした。
「A」:立ち上がりが強い
「B」:立ち上がりが弱い
【0059】
(2)接着性
実施例および比較例におけるポリウレタンフォームの接着性をJIS A9526に準じて評価した。試験片は、底面が50±1mmの正方形であり、厚さが20mm程度のものを用いた。試験片の両面側に接着材を用いて、底面が50±1mmの正方形の金属治具(引っ張り用の治具)を取り付け、24時間放置した。
試験片を0.2N/minの加重速度で引っ張り、破壊荷重を求め、接着強さを以下の式を用いて算出した。
接着強さ(kPa)=F/A×10
ここで、Fは破壊荷重(N)であり、Aは試験片の断面積(mm)である。また、試験片の破壊又は試験片と直貼り接着材の剥離時の荷重を破壊荷重とする。
接着性の評価は、以下の基準とした。
「A」:接着強さが80kPa以上である
「B」:接着強さが80kPa未満である
【0060】
(3)貯蔵安定性
実施例および比較例におけるポリウレタンフォームの貯蔵安定性を評価した。原料配合組成物(A液)を70℃の恒温槽の中に48時間配置した後、恒温槽から取り出して発泡させ、恒温槽に配置することなく発泡させた発泡体に比べて変化がないか評価した。
貯蔵安定性の評価は、以下の基準とした。
「A」:貯蔵安定性が良好(発泡体の変化なし)
「B」:貯蔵安定性が不良(発泡体の変化あり)
【0061】
3.評価結果
実施例1-4は、「立ち上がり」「貯蔵安定性」のいずれの評価も「A」であった。
実施例1-4は、下記要件(a)(b)を満たしている。
・要件(a):組成物に3級アミン(一分子中に1以上のNを有し、全てのNについて各Nに結合する3つの有機基のうち2つ以上が炭素数2以上の有機基である化合物)が含まれる
・要件(b):組成物に有機酸が含まれない
実施例1-4は、上記要件(a)(b)を満たすことで、発泡時の立ち上がりが良好で、かつ貯蔵安定性も良好なポリウレタンフォームを製造できた。
【0062】
実施例3は、「立ち上がり」「接着性」「貯蔵安定性」のいずれの評価も「A」であった。
実施例3は、上記要件(a)(b)に加え下記要件(c)を満たしている。
・要件(c):組成物において、ポリオールの総量を100質量部とした場合に、触媒3(N1,N2-dimethyl-N1-{2-[methyl(propan-2-yl)amino]ethyl}-N2-(propan-2-yl)ethane-1,2-diamine)が0.4質量部以上含まれている。
実施例3は、上記要件(a)(b)に加え上記要件(c)を満たすことで、実施例4等に比べて、さらに接着性が向上した。
【0063】
比較例1では、発泡時に型又は型を支持する治具が破壊される程度にA液とB液との混合後の発泡時の発泡圧が大きく、成形性が不良であった。実施例1-4では、発泡時に型又は型を支持する治具が破壊されることなく、A液とB液との混合後の発泡時の発泡圧が抑制され、成形性が良好であった。実施例1-4は、上記要件(a)(b)を満たすことで、A液とB液との混合後の発泡時の発泡圧が抑制された。
【0064】
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、発泡時の立ち上がりが良く成形性が良好であり、貯蔵安定性も良好にすることができた。また、以上の実施例によれば、A液とB液を混合後の発泡時の発泡圧を抑制でき、成形性が良好にできた。
【0065】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
図1
図2
図3
図4