(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104759
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】反射防止ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 1/14 20150101AFI20240730BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20240730BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20240730BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B1/111
G02B1/18
C08F2/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009093
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青谷 光
(72)【発明者】
【氏名】平出 稜
【テーマコード(参考)】
2K009
4J011
【Fターム(参考)】
2K009AA04
2K009AA15
2K009BB24
2K009CC03
2K009CC09
2K009CC24
2K009DD02
2K009DD05
2K009EE05
2K009FF03
4J011PA07
4J011PA13
4J011PA99
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA22
4J011QA24
4J011QA33
4J011QA38
4J011RA10
4J011SA04
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011TA06
4J011TA08
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
(57)【要約】
【課題】単層構成でありながら、反射率が低く視認性が良好で、十分な耐摩耗性と共に防汚性を有する反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルムに低屈折率層が直接積層されている反射防止フィルムであって、
前記低屈折率層がアルキレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートと、アミン変性(メタ)アクリレートと、中空シリカと、アルミナ微粒子と、表面調整剤と、光重合開始剤と、を含むことを特徴とする反射防止ハードコートフィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムに低屈折率層が直接積層されている反射防止フィルムであって、
前記低屈折率層がアルキレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート(A)と、アミン変性(メタ)アクリレート(B)と、中空シリカ(C)と、アルミナ微粒子(D)と、表面調整剤(E)と、光重合開始剤(F)と、を含むことを特徴とする反射防止ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記(A)のアルキレンオキサイド変性がエチレンオキサイド変性であることを特徴とする請求項1記載の反射防止ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記(B)の配合量が、低屈折率層中の固形分全量に対し0.5~5.0重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記(E)の配合量が、低屈折率層中の固形分全量に対し5~20重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルム。
【請求項5】
前記透明基材フィルムの低屈折率層積層面が、屈折率1.55以上の易接着層面であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単層構成の反射防止ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止ハードコートフィルムは、蛍光灯などの外部光源の反射が少なく視認性が良好であるという特徴から、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどに代表される画像表示装置で広く使用されている。反射防止ハードコートフィルムとしては、フィルム基材の表面にハードコート層(高屈折率層)を設け、その上層に低屈折率の反射防止層を配置する複数層の構成が一般的である。一方で、この仕様は最低でも2回のコーティング工程が必要となるため、低コストで生産するという面では大きな制約となっていた。
【0003】
こうした課題に対応する技術として、透明基材フィルムの易接着層を介して低屈折率層が積層された、単層構成の反射防止フィルムが提案されている(特許文献1)。このフィルムで用いる低屈折率層としては、例えば中空シリカと重合性バインダーを含む組成物が開示され、低コストで生産可能な単層構成であると同時に、下地との密着性や耐擦傷性が優れていることが特徴とされていた。
【0004】
しかしながら、タッチパネルなどのように画像表示面を指で触る場合や、タッチペンで入力する場合は、外部光源の反射率を低くすると共に、より高い耐摩耗性や防汚性が要求されるようになってきている。特許文献1の発明では、耐擦傷性としてスチールウールに1~2.5Nの荷重をかけ10往復させる評価が開示されているが、防汚性については言及がなかった。また実際にフィルム表面に付着した汚れを拭取る場合は、クリーニングクロスに大きな荷重をかけるため、スチールウールに過小な荷重をかけ数回擦るだけの耐擦傷性評価では、必要にして十分な耐摩耗性を有しているとは言い難かった。そのため、低コスト化が可能な単層構成でありながら、反射率が低く視認性が良好で、十分な耐摩耗性と共に防汚性を有する反射防止ハードコートフィルムが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、単層構成でありながら、反射率が低く視認性が良好で、十分な耐摩耗性と共に防汚性を有する反射防止ハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、透明基材フィルムに低屈折率層が直接積層されている反射防止フィルムであって、前記低屈折率層がアルキレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート(A)と、アミン変性(メタ)アクリレート(B)と、中空シリカ(C)と、アルミナ微粒子(D)と、表面調整剤(E)と、光重合開始剤(F)と、を含むことを特徴とする反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【0008】
請求項2の発明は、前記(A)のアルキレンオキサイド変性がエチレンオキサイド変性であることを特徴とする請求項1記載の反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【0009】
請求項3の発明は、前記(B)の配合量が、低屈折率層中の固形分全量に対し0.5~5.0重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【0010】
請求項4の発明は、前記(E)の配合量が、低屈折率層中の固形分全量に対し5~20重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【0011】
請求項5の発明は、前記透明基材フィルムの低屈折率層積層面が、屈折率1.55以上の易接着層面であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハードコートフィルムは、低コスト化の点で有利な単層構成でありながら、外部光源の反射が少なく良好な視認性を有すると共に、十分な耐摩耗性と防汚性を有しているため、画像表示装置等に用いられる反射防止フィルムとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の反射防止ハードコートフィルムは、透明基材フィルムに低屈折率層が直接積層された構成である。低屈折率層を形成するための低屈折率樹脂組成物はアルキレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート(A)と、アミン変性(メタ)アクリレート(B)と、中空シリカ微粒子(C)と、アルミナ微粒子(D)と、表面調整剤(E)を含む組成物である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。またポリ(メタ)アクリレートとは、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートの総称とする。
【0014】
本発明で使用するアルキレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート(A)は、非芳香族でアクリロイルオキシ基を複数有する硬化皮膜を構成する主要成分である。アルキレンオキサイド変性とは、骨格中にアルキレンオキサイドのブロック構造を有することを意味し、例えばエチレンオキサイド(以下EOという)変性、プロピレンオキサイド(以下POという)変性、ブチレンオキサイド(以下BOという)変性が挙げられる。アルキレンオキサイド変性の平均付加数は3~20が好ましく、3~10が更に好ましい。20以下とすることで適度な粘度に調整がしやすくなる。
【0015】
前記(A)としては、例えばEO変性グリセリンポリ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンポリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、及びこれらのPO変性物、BO変性物等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、硬化性と硬化収縮のバランスの点で3~6官能が好ましく、3~4官能が更に好ましい。また粘度、硬化性、入手性の点でEO変性物が好ましく、特にペンタエリスリトール骨格を有するポリ(メタ)アクリレートが好ましい。例えばEO変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
【0016】
前記(A)の配合量は、低屈折率層中の固形分全量に対し5~30重量%が好ましく、10~25重量%が更に好ましく、15~22重量%が特に好ましい。5重量%以上とすることで十分な硬化性と耐摩耗性を確保でき、30重量%以下とすることで十分な鉛筆硬度と低反射特性の確保が可能となる。
【0017】
本発明で使用するアミン変性(メタ)アクリレート(B)は、少なくとも1つのアミノ基と、少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基とを有する化合物で、紫外線硬化時の酸素による重合阻害を緩和し、硬化度を上げ耐摩耗性を向上させる目的で配合する。酸素による硬化阻害を回避するためには、窒素等の不活性ガスによる環境下で露光する方法がよく知られている。一方、高速搬送されるような生産プロセスでは、被露光物に付着した酸素の影響を完全になくすことが難しいとされ、(B)の配合と組み合わせることで硬化性が格段に向上する。アミノ基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基のいずれでもよいが、硬化促進性の点で3級アミノ基が好ましい。
【0018】
前記(B)としては、例えば、アミノ(メタ)アクリレート、アミン変性脂肪族(メタ)アクリレート、アミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレート、アミン変性ポリエステル(メタ)アクリレート、アミン変性エポキシ(メタ)アクリレート、アミン変性ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、反応性が高い点でアミン変性ポリエーテル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0019】
前記(B)の(メタ)アクリロイル基数は2~8官能が好ましく、2~6官能が更に好ましく、2~4官能が特に好ましい。この範囲とすることで、硬化収縮を大きくすることなく、表面硬度や耐摩耗性を向上させることができる。
【0020】
前記(B)の配合量は、低屈折率層中の固形分全量に対し0.3~5.0重量%が好ましく、0.5~4.0重量%が更に好ましく、1.0~3.0重量%が特に好ましい。0.3重量%以上とすることで十分な硬化性と共に耐摩耗性を確保することができ、5.0重量%以下とすることで十分な防汚性を確保することができる。
【0021】
本発明で使用する中空シリカ微粒子(C)は、低屈折率層の屈折率を低下させる目的で配合する。(C)は低屈折率層の塗膜強度を保持しつつ、その屈折率を下げる機能を有し、内部に屈折率1の空気を含む空洞を有するシリカ粒子である。中実シリカ粒子の屈折率が1.45程度に対し、(C)の屈折率は内部の空洞の占有率が高くなるにつれて低下し、1.15~1.40程度である。
【0022】
前記(C)の一次平均粒子径は10~120nmが好ましく、40~100nmが更に好ましく、50~90nmが特に好ましい。この範囲とすることで、低屈折率層の透明性を損なうことなく、良好な分散性を得られる。特に50~90nmであれば、強度不足とならない外殻の厚みを確保しつつ、空洞の占有率を上げて屈折率を下げることができる。なお平均粒子径は、JISZ8825-1に準拠したレーザー回折・散乱法により測定したメジアン径(d=50)とする。
【0023】
前記(C)の配合量は、低屈折率層中の樹脂組成物の固形分全量に対し20~60重量%が好ましく、25~50重量%が更に好ましい。20重量%以上とすることで屈折率を十分低くすることができ、60重量%以下とすることで十分な耐摩耗性を確保することができる。また(A)と(B)と反応性希釈剤の合計であるバインダー成分100重量部に対する配合量は80~300重量部が好ましく、100~20重量部が更に好ましい。市販品としてはスルーリア5320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径80nm)が挙げられる。
【0024】
本発明で使用するアルミナ微粒子(D)は、低屈折率層の硬度を上げて耐摩耗性を向上させる目的で配合する。(D)の一次平均粒子径は1~100nmが好ましく、5~50nmが更に好ましく、10~30nmが特に好ましい。1nm以上とすることで耐擦傷性の向上が期待でき、100nm以下とすることでヘイズを高くすることなく十分な全光線透過率を確保することができる。
【0025】
前記(D)の配合量は、低屈折率層中の固形分全量に対し2~15重量%が好ましく、3~10重量%が更に好ましく、4~8重量%が特に好ましい。2重量%以上とすることで耐摩耗性を向上させることができ、15重量%以下とすることで十分に反射率を低く保つことができる。また(A)と(B)と反応性希釈剤の合計であるバインダー成分100重量部に対する配合量は5~35重量部が好ましく、10~30重量部が更に好ましく、15~28重量部が特に好ましい。市販品としてはALMIBK30WT%-M47(商品名:CIKナノテック社製、固形分30%、平均粒子径20nm)が挙げられる。
【0026】
本発明で使用する表面調整剤(E)は、低屈折率層のスリップ性を向上させて耐摩耗性を向上させると共に、撥水撥油性を上げて防汚性を向上させる目的で配合し、例えばシリコーン系、フッ素系、アクリル系等が挙げられる。これらの中で防汚性が優れる点でシリコーン系及びフッ素系が好ましく、特にフッ素系シリコーン化合物が低い表面自由エネルギーにより、塗工~乾燥後に塗膜表面に偏析しやすい点で好ましい。また硬化後の皮膜からブリード等により経時的に欠落することが無く効果を長期的に持続できる点で、バインダー樹脂と重合して硬化塗膜を形成できる反応性官能基を有することが好ましい。
【0027】
前記(E)の配合量は、低屈折率層中の固形分全量に対し5~20重量%以下が好ましく、7~18重量%が更に好ましく、10~16重量%が特に好ましい。5重量%以上とすることで十分な耐摩耗性と防汚性を確保することができ、20重量%以下とすることで十分な硬化性を確保することができる。市販品としてはX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%、反応性官能基を有するフッ素系シリコーン化合物)が挙げられる。
【0028】
本発明で使用する光重合開始剤(F)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
前記(F)は黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、特に酸素による重合阻害を受けにくい点でOmnirad127D(2‐ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)を用いることが好ましい。光重合開始剤の低屈折率樹脂組成物におけるラジカル重合性分100重量部に対する配合は5~20重量部が好ましく、10~16重量部が更に好ましい。
【0030】
本発明の組成物には、性能を損なわない範囲で必要に応じて反応性希釈剤、酸化防止剤、密着促進剤、ブルーイング剤、シランカップリング剤、消泡剤、増粘剤、沈澱防止剤、帯電防止剤、防曇剤、抗菌剤、有機微粒子等を添加してもよい。
【0031】
前記反応性希釈剤としては、低粘度で(A)及び(B)との相溶性に優れる点で、アルキレンオキサイド変性ではない多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。また硬化性に優れる例えば2官能では(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレートが、3官能ではトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが、4官能でジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートが、5官能ではジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが、6官能ではジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
低屈折率樹脂組成物を塗工する際には、塗工特性を向上させるため溶剤にて希釈してもよい。希釈溶剤としては、例えばエタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(以下IPA)、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(以下MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、PGM,ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒等があげられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。希釈する場合の固形分としては1~70%が例示されるが、特に指定は無く、塗工しやすい粘度となるように適宜設定可能である。
【0033】
低屈折率樹脂組成物が塗布される透明基材フィルムとしては、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンフィルム、アクリルフィルム、ポリイミドフィルム、ABSフィルム、ポリオレフィンフィルム、PVCフィルム、PVAフィルム等を挙げることができる。なかでも耐候性、加工性、寸法安定性などの点から二軸延伸処理されたポリエステルフィルム(以下PETフィルムという)が好ましく用いられる。フィルムの厚みは概ね25μm~500μmであればよい。
【0034】
上記透明基材フィルムは、低屈折率樹脂組成物との密着性を向上させるため、易接着層があることが好ましい。易接着層と低屈折率層とは、外部光源の反射を小さくするため、その屈折率差を大きくすることが好ましい。易接着層の屈折率としては1.55以上が好ましく、1.60以上が更に好ましい。1.55以上とすることで十分に低い反射率とすることができる。
【0035】
低屈折率樹脂組成物を塗布する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成できる。
【0036】
低屈折率樹脂組成物の膜厚は乾燥時で50~200nmであることが好ましく、80~150nmであることが更に好ましい。低屈折率層の厚さがこの範囲であれば、反射率を十分低くすることが可能となる。
【0037】
低屈折率樹脂組成物を硬化させる際に用いる紫外線照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプなどがある。照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよいが、硬化性向上の点で窒素雰囲気下が好ましい。また紫外線照射時にバックロールの加温や、IRヒーターなどにより塗膜を加熱することで、より硬化性を上げることができる。照射条件としては照射強度500mW/cm2~3000mW/cm2、露光量50~400mJ/cm2が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0038】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げて詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温25℃、相対湿度65%の条件下で測定を行った。また配合量は重量部を示す。
【実施例0039】
実施例1~9
前記(A)としてMiramer M4004(商品名:Miwon社製、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、n≒5)及びMiramer M3130(商品名:Miwon社製、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、n=3)を、(B)としてEBECRYL80(商品名:ダイセルオルネクス社製、アミン変性ポリエーテルアクリレート、固形分100%、4官能の3級アミノ基化合物)を、(C)としてスルーリア5320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径80nm)を、(D)としてALMIBK 30WT%-M47(商品名:CIKナノテック社製、固形分30%、平均粒子径20nm、MIBK希釈)を、(E)としてX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%、反応性官能基含有フッ素系シリコーン化合物)を、(F)としてOmnirad127D(商品名:IGM Resins社製)を、反応性希釈剤としてMiramer M300(商品名:Miwon社製、トリメチロールプロパントリアクリレート)及びKAYARAD PET-30(商品名:日本化薬社製、トリメチロールプロパンテトラ(トリ)アクリレート混合物)を、表1記載の配合で用い、固形分が3%になるようIPAとPGMを用いて希釈(IPA:PGM=1:1)し、均一に溶解・分散するまで撹拌して実施例1~9を得た。
【0040】
比較例1~5
実施例で用いた材料の他に、バインダーとしてライトアクリートDCP-A(商品名:共栄社化学社製、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート)を、表2記載の配合で用い、固形分が3%になるようIPAとPGMを用いて希釈(IPA:PGM=1:1)し、均一に溶解・分散するまで撹拌して比較例1~5を得た。
【0041】
【0042】
【0043】
評価方法は以下の通りとした。
【0044】
反射防止フィルムの調製
透明基材フィルムとしてUH5V(商品名:東レ社製、厚さ50μm、片面高屈折率易接着層PET、高屈折率易接着面の屈折率1.64)を用い、その高屈折率易接着層面上に 実施例1及び3~9、比較例1~5の低屈折率樹脂組成物を乾燥膜厚で100nmとなるように塗布し、80℃で1分乾燥した。その後、高圧水銀ランプで出力1300mW/cm2、積算光量が200mJ/cm2となる様に窒素雰囲気化で紫外線照射し、反射防止フィルムを調製した。次に透明基材フィルムとしてU403(商品名:東レ社製、厚さ50μm、両面易接着層PET、易接着面の屈折率1.49)を用い、実施例2の低屈折率樹脂組成物を乾燥膜厚で100nmとなるように塗布し、上記と同様の条件で乾燥~硬化させ反射防止フィルムを調製した。
【0045】
全光線透過率:上記反射防止フィルムを、東洋精機製作所社製のHaze-GARD2を用いJISK7361-1に準拠して測定し、90%以上を〇、90%未満を×とした。
【0046】
ヘイズ:上記反射防止フィルムを、東洋精機製作所社製のHaze-GARD2を用いJISK7136に準拠して測定し、1.0%以下を〇、1.0%超を×とした。
【0047】
最小反射率:上記反射防止フィルムを用い、塗工面とは反対面を紙やすりで擦り傷を付け、黒色顔料マーカーで塗りつぶし、更に黒色PETを貼り合せ反対面側の反射率を0%とする。その後HC面側を分光光度計にて300nm~780nmの範囲で1nm毎に反射率をプロットして最低の反射率を測定し、1.0%以下を〇、1.0%超を×とした。
【0048】
鉛筆硬度:JISK5600-5-4(1999年版)に準拠し、東洋精機製作所製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いて500g荷重で測定し、F以上を〇、HB以下を×とした。
【0049】
耐摩耗性:東洋精機社製の摩耗試験機を用い、接触面積が1cm2のブラックノーマルクロスKCT-009BK(商品名:エレコム社製、クリーニングクロス)の上に500gの荷重を載せて100往復させ、目視による観察で傷が付かない場合を○、傷が付く場合を×とした。
【0050】
水接触角:JIS R 3257:1999の静滴法に準じ、協和界面科学社製のDMs-400により、室温で水を滴下し30秒静置後の接触角を測定し、120°超を◎、110°~120°を〇、110°未満を×とした。
【0051】
屈折率:アタゴ社製のアッペ屈折計DR-M2を用い、試験片をプリズム面の上にセットして、1-ブロモナフタレンを中間液に使用しD線589nmでの屈折率を測定した。
【0052】
【0053】
【0054】
実施例は、全光線透過率、ヘイズ、最小反射率、鉛筆硬度、耐摩耗性、水接触角の全ての面で問題はなく良好であった。
【0055】
一方、(B)が未配合の比較例1、(D)が未配合の比較例3、アルキレンオキサイド未変性のバインダーを用いた比較例5は耐摩耗性が劣っていた。また(C)が未配合の比較例2は最小反射率と水接触角が劣り、(E)が未配合の比較例4は耐摩耗性と水接触角が劣り、いずれも本願発明に適さないものであった。