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  • 特開-盤の換気構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104762
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】盤の換気構造
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/28 20060101AFI20240730BHJP
   H02B 11/02 20060101ALI20240730BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240730BHJP
   E06B 7/082 20060101ALI20240730BHJP
   H02B 1/56 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H02B1/28 E
H02B11/02 C
H05K7/20 G
E06B7/082
H02B1/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009098
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆之
【テーマコード(参考)】
2E036
5E322
5G016
【Fターム(参考)】
2E036JA03
2E036KA03
2E036LA01
2E036MA06
2E036NA04
2E036NB01
5E322BA01
5E322BC02
5E322EA01
5E322EA11
5G016AA04
5G016CG05
5G016CG07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】盤の換気構造に防水機能および防塵機能も加えることで電気的なトラブルの防止を図る。
【解決手段】盤の筐体の扉を構成するカバーは、複数の通気孔10cと、通気孔10c群を被覆する凸状の通気ドーム11と、通気ドーム11の上下部に形成された通気口15と、通気口15に設けられた通気網16と、通気孔10c群の背面側のエアフィルター12と、通気ドーム11内に配置されたガイド部材14a,14bと、エアフィルター12の下方に配置された受け皿13とを備え、両者12,13間に水抜孔Sを有している。ガイド部材14aは通気孔10c群の上方部分10aに固定されている一方、ガイド部材14bは通気孔10c群の2行目・3行目間の枠10bに固定され、それぞれ通気ドーム11内の天板11aに向かった下り勾配の傾斜が施されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
盤の筐体を構成するカバーに施される換気構造であって、
前記カバーに形成された通気孔と、
前記通気孔の前方に被された凸状の通気ドームと、
を備え、
前記通気ドームの上下部に形成された通気口と、
前記通気口に設けられた通気網と、
前記通気孔の後方に装着されるフィルターと、
前記通気ドーム内に配置されたガイド部材と、
を備え、
前記ガイド部材は、前記通気孔の上方に固定され、
前記通気ドームの天井方向に向かった下り勾配の傾斜に形成されていることを特徴とする盤の換気構造。
【請求項2】
複数の前記通気孔群を備え、
前記通気孔群は、「複数行×複数列」に配置され、
前記通気孔群の上方に固定された第1のガイド部材と、
前記通気孔群の行間に固定された第2のガイド部材と、
を備え、
前記両ガイド部材は、それぞれ前記天井方向に向かった下り勾配の傾斜が施されていることを特徴とする請求項1記載の盤の換気構造。
【請求項3】
前記フィルターの下方に受け皿が配置され、
前記フィルターと前記受け皿との間に水抜孔を有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の盤の換気構造。
【請求項4】
前記ガイド部材と前記天井との間の面積(S)と、
前記フィルターを施された前記通気孔の有効面積(S)と、
について、
「S≧S」の関係が成立することを特徴とする請求項1または2記載の盤の換気構造。
【請求項5】
前記各通気口の開口面積(S,S)と、
前記有効面積(S)と、
前記面積(S)と、
について、
「S,S≦S,S」の関係が成立することを特徴とする請求項4記載の盤の換気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外設置型盤の筐体に施される換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外設置型盤の換気構造(通気構造)については、筐体内に雨水などの水滴が侵入するおそれがある。そこで、特許文献1~3に示すように、換気構造に防水対策が施されている。
【0003】
特許文献1では、筐体の排気口を覆うように取り付けられた排気ダクトと、該排気ダクトの上方に取り付けられた吸水部材とを備える。この吸水部材は、排気ダクトから上方に舞い上がった細かい水滴を吸収し、筐体内への侵入を防止している。
【0004】
特許文献2では、筐体の吸気口に通気ギャラリーが設けられている。この通気ギャラリーは、換気口に連通する開口部群と、該開口部群を指令に応じて閉鎖する防護シールとを備える。ここでは異常気象などの際に前記指令を発して前記開口部を閉鎖することで泥水などの侵入を防止している。
【0005】
特許文献3では、筐体の通気口に縦断面逆U字状のギャラリー群と、該ギャラリー群の内側を被覆するフィルターベースとを備え、フィルターベースの下部には水抜き孔が形成されている。ここではギャラリー内を通って落下する水滴を水抜き孔により排出し、筐体内への侵入を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-168232
【特許文献2】特開2017-200298
【特許文献3】特開2000-295721
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~3は、前述した防水対策を施しているものの、以下の問題が生じる。
【0008】
すなわち、特許文献1は、排気ダクトの開口部からゴミなどの塵埃が侵入しやすい構造であるが、それを処理する構造を備えていなく、筐体内の電気機器の故障につながるおそれがある。
【0009】
また、特許文献2の換気構造も、換気口から通気ギャラリー内にゴミなどの塵埃が侵入する場合がある。この場合には通気ギャラリー内に侵入物が蓄積され、開口部群を閉塞するおそれがある。
【0010】
さらに特許文献3の換気構造は、ギャラリーから小さなゴミなどが侵入する場合がある。この場合、フィルター内の底部に侵入物が蓄積されるため、水抜き孔が閉塞され、水滴を排出できなくなるおそれがある。
【0011】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、盤の換気構造に防水対策および防塵対策を施すことで電気的なトラブルの防止を図ることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、盤の筐体を構成するカバーに施される換気構造であって、
前記カバーに形成された通気孔と、
前記通気孔の前方に被された凸状の通気ドームと、
を備え、
前記通気ドームの上下部に形成された通気口と、
前記通気口に設けられた通気網と、
前記通気孔の後方に装着されるフィルターと、
前記通気ドーム内に配置されたガイド部材と、
を備え、
前記ガイド部材は、前記通気孔の上方に固定され、
前記通気ドームの天井方向に向かった下り勾配の傾斜に形成されていることを特徴としている。
【0013】
(2)本発明の一態様は、
複数の前記通気孔群を備え、
前記通気孔群は、「複数行×複数列」に配置され、
前記通気孔群の上方に固定された第1のガイド部材と、
前記通気孔群の行間に固定された第2のガイド部材と、
を備え、
前記両ガイド部材は、それぞれ前記天井方向に向かった下り勾配の傾斜が施されていることを特徴としている。
【0014】
(3)本発明の他の態様は、
前記フィルターの下方に受け皿が配置され、
前記フィルターと前記受け皿との間に水抜孔を有する
ことを特徴としている。
【0015】
(4)本発明のさらに他の態様は、
前記ガイド部材と前記天井との間の面積(S)と、
前記フィルターを施された前記通気孔の有効面積(S)と、
について、
「S≧S」の関係が成立することを特徴としている。
【0016】
(5)本発明のさらに他の態様は、
前記各通気口の開口面積(S,S)と、
前記有効面積(S)と、
前記面積(S)と、
について、
「S,S≦S,S」の関係が成立することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、盤の換気構造に防水対策および防塵対策を施すことで電気的なトラブルの防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る換気構造の適用された屋外設置型盤の筐体を示す正面図。
図2】同 斜視図。
図3】同 前面カバーの分解斜視図1
図4】同 前面カバーの分解斜視図2
図5】同 換気構造の縦断面図。
図6】同 面積関係図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る換気構造を説明する。ここでは図1,2に示す屋外設置型盤(制御盤・配電盤など)の筐体1への適用例を説明する。
【0020】
この筐体1は、図2に示すように、ボックス状に形成され、内部にインバータや変圧器,リアクトルなど各種の電気機器ユニットが収納され、底部2とカバー3,5,6と屋根部7とにより構成されている。
【0021】
すなわち、筐体1は、前後のカバー3,5により正面・背面の垂直面が構成され、底部2の両サイドに立設されたカバー6により両側面の垂直面が構成され、各カバー3,5,6の上端部を屋根部7により閉塞されている。ここでは左右のカバー3により前扉が構成され、該各カバー3に前記換気構造が適用されている。
【0022】
≪構成例≫
図3および図4に基づき各カバー3の換気構造を説明する。このカバー3は、略長方形状に形成されたカバー本体10と、カバー本体10の上下に形成された通気孔(換気孔)10c群と、各通気孔10c群の前方に被された凸状の通気ドーム11と、通気ドーム11内に配置される上下一対のガイド部材14a,14bと、前記通気孔10c群の後方に装着されたエアフィルター(防塵フィルター)12と、エアフィルター12をカバー本体10に装着するための抑え枠17と、エアフィルター12の下方に配置される受け皿13と、を備えている。
【0023】
通気孔10c群は、長方形状の通気孔10cを「4行×3列」に配列して構成されている。ここではカバー本体10は、通気孔10c群の上方部分10aにガイド部材14aが固定される一方、通気孔10c群の2行目・3行目間の枠10bにガイド部材14bが固定され、同4行目の下方に受け皿13用のスリット10dが形成されている。
【0024】
通気ドーム11は、断面U字形状に形成され、四角形状に形成された天板(天井)11aと、天板11aの両側部に立設された側板11bと、天板11aの上下部に開脚状に折曲して立設された上下板11c,11dとを備える。この上下板11c,11dは、長手方向に沿って通気用に開口部15が形成されている。以下、開口部15を通気口(換気口)15と呼び、通気口15には筐体1内へゴミや塵埃などの侵入を防止する通気網(メッシュ)16が施されている。なお、通気ドーム11は前記扉のサイズに応じて大きさや形状が定められ、前記扉の幅サイズが大きければ天板11aが横長の長方形状を呈し、前記扉の幅サイズが小さければ天板11aが縦長の長方形状を呈する傾向となる。
【0025】
ガイド部材14a,14bは相似形に形成され、その幅方向の長さが通気孔10c群より若干長く形成され、上下板11c,11dよりも若干短く形成されている。具体的にはガイド部材14a,14bは、それぞれの固定箇所10a,10bに溶着される固定板24aと、固定板24aの下端部から天板11a方向に折曲形成された傾斜板24bとを備えている。この傾斜板24bは、天板11a方向に向かった下り勾配の傾斜が施され、その両端部には下方向への折曲部24cが形成されている。
【0026】
エアフィルター12は、抑え枠17内に保持され、長方形状のウレタンフォーム(スポンジ)により構成されている。ただし、材質はウレタンフォームに限定されるものではなく、他の材質でもよいものとする。
【0027】
抑え枠17は、通気孔10c群と相似の格子状に形成された枠本体17aと、枠本体17aの両端部に長方形状に形成された固定部17bとを備えている。この枠本体17aは通気孔10cに連通する「4行×3列」の空洞部17c群を備えている。この固定部17bを通気孔10c群の周囲にねじ止めすることでエアフィルター12が通気孔10c群の後方(背面)に装着されている。
【0028】
受け皿13は、スリット10dに差し込まれる水平部13aと、水平部13aの後端部から傾斜状に立ち上がった傾斜部13bと、傾斜部13bの上端部から垂直に立設された垂直部13cとを備えている。ここでは図5に示すように、傾斜部13bが枠本体17aの下端部17dに当接し、エアフィルター12の下端部と水平部13aとの間に隙間を有している。この隙間とスリット10dとは連通しており、該両者を一体(連通した)とした水抜孔Sが形成されている。
【0029】
≪作用効果≫
図5に基づきカバー3の作用効果を説明する。このカバー3の換気構造には、以下に示すように、エアフローに防水機能および防塵機能が加えられている。図5中の矢印P1~P6は吸排気経路(エアフロー)を示し、同矢印Q1~Q8は雨水などの水滴の排水経路を示し、Xは筐体1外側を示し、Yは筐体1内側を示している。
【0030】
(1)まず、エアフローについて説明すれば、カバー3は冷気が下に溜まりやすく、暖気が上に逃げやすい煙突効果の特性を利用し、通気ドーム11の下板11cから上板11d方向への自然空冷方式を採用する。
【0031】
吸気側については、矢印P1に示すように、通気ドーム11は自然換気により冷却風を下板11cの通気口15から取り込む。このとき大きなゴミなどがあれば、通気網16により通気ドーム11内への侵入が防止される(防塵機能1)。
【0032】
その結果、通気ドーム11内にゴミが蓄積されることはなく、この点でゴミなどの侵入を防止しながら通気性を向上させることができる。また、通気網16が目詰まりした場合には、簡単に清掃することができ、メンテナンス性もよい。
【0033】
通気口15から取り込まれた冷却風は、前記特性により通気ドーム11内を上昇しようとするものの、ガイド部材14bの傾斜板24bに抑えられるため、矢印P2,P3に示すようにY方向に流れ、3行目・4行目の通気孔10cから筐体1内に流入する。
【0034】
その際、小さなゴミや塵埃などが通気網16を通り抜けられたとしても、通気孔10cの背面側にエアフィルター12が設置されているため、そこに吸着されて筐体1内への侵入が阻止される(防塵機能2)。
【0035】
一方、排気側については、電気機器ユニットを冷却後の暖気は、筐体1内を上昇して充満すると、矢印P4,P5に示すように、X方向に流れ、1行目・2行目の通気孔10cから通気ドーム11内に流出される。通気ドーム11内では、ガイド部材14aの傾斜板24bを迂回して上昇し、矢印P6に示すように、上板11dの通気口15から排気される。
【0036】
(2)つぎに雨水などの水滴の排水経路を説明すれば、矢印Q1,Q8に示すように、水滴は上下板11cの通気口15から侵入するおそれがある。ここで矢印Q1から侵入した場合に水滴は、矢印Q2に示すように、ガイド部材14aの傾斜板24bに沿ってX方向に流された後に落下する。
【0037】
このとき落下した水滴は、矢印Q3方向と矢印Q4方向とに分岐し、矢印Q3の水滴はY方向に流れ、2行目の通気孔10cを通ってエアフィルター12内に含侵し、矢印Q6に示すように、受け皿13方向まで浸っていく。
【0038】
その後は、矢印Q7に示すように、水抜孔Sを通ってX方向に流れ、通気ドーム11内に戻って下板11c方向に落下し、通気口15を通って通気ドーム11外に排水される(防水機能1)。一方、矢印Q4の水滴は、ガイド部材14bの傾斜板24bに沿ってX方向に流された後に落下し、通気口15から排水される(防水機能2)。
【0039】
つぎに矢印Q8の水滴は、下板11cの通気口15から通気ドーム11内に侵入するものの、受け皿13の水平部13aの先端に跳ね返されるため、通気口15から通気ドーム11外に排水される(防水機能3)。このとき通気孔10c内に侵入しても、前述した矢印Q6,Q7の経路を通って排水される。
【0040】
このように前記換気構造によれば、ゴミなどの塵埃や雨水などの水滴の筐体1内への侵入を阻止することが可能となる。その結果、防水・排水性に優れ、塵埃や雨水などによる盤の電気的トラブルを防止することができる。
【0041】
なお、傾斜板24bの両端には折曲部24cが下方向に形成されているため、前記両端方向からエアフィルター12内に水滴が侵入し難くなっており、この点でも防水性等に優れている。
【0042】
(3)図6に基づき通気面積の関係を説明する。図6中の「S」は通気孔10cの有効面積、即ち通気孔10cの開口面積に対してエアフィルター12により減少する分を差し引いた面積を示している。
【0043】
また、「S」は傾斜板24bと天板11aとの間の面積(通気ドーム11内の上下方向の通風路面積)を示し、「S,S」は上下の通気口15の開口面積を示し、エアフロー的には式(1)の関係が成立する設計が理想的といえる。
【0044】
【数1】
【0045】
ただし、現実的には、式(2)に示すように、「S」および「S」を若干大きく、かつ「S2」と「S3」とを等しく設計することにより、好ましいエアフローとすることができる。逆に「S」および「S」を小さく設計するとエアフローが悪化するおそれがある。
【0046】
【数2】
【0047】
式(2)の設計の場合、「S」が「S2,S3」よりも大きいため、雨水の落下面積が広くなり、筐体1内への侵入を抑止する効果を向上させることもできる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。例えばカバー3だけでなく、カバー5,6にも換気構造を適用でき、また通気孔10c群は「4行×3列」の配列に限らず、他の配列としてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…筐体
3…カバー
10a,10b…固定箇所
10c…通気孔
11…通気ドーム
11a…天板(天井)
11c…下板(下部)
11d…上板(上部)
15…通気口
16…通気網
12…フィルター
13…受け皿
14a,14b…ガイド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6