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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104767
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240730BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20240730BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20240730BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240730BHJP
【FI】
G02B27/01
G02F1/13357
G02F1/133 535
B60K35/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009109
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】志白 純
【テーマコード(参考)】
2H193
2H199
2H391
3D344
【Fターム(参考)】
2H193ZA04
2H193ZG03
2H193ZG14
2H193ZG43
2H193ZG51
2H193ZH04
2H193ZH07
2H193ZH15
2H193ZH37
2H193ZH43
2H193ZH57
2H193ZR06
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA34
2H199DA43
2H391BA01
2H391BA12
2H391BA13
2H391BA28
2H391CB04
2H391CB24
2H391CB27
2H391FA07
3D344AA22
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】輝度ムラを低減させること。
【解決手段】表示器10と、表示器から出射された表示光を筐体61の中で反射させて被投影部Rwfに投影させる反射部材40と、アイポイントEP又はアイボックスEBに応じた表示光の制御を行う制御部50と、を備え、表示器は、光源21の光を照射面20aから拡散配光させるバックライトユニット20と、被照射面30aに入射した照射面からの照射光を透過させ、表示光として出射面30bから出射させる光透過型の板状の表示ユニット30と、を備え、表示ユニットは、照射面と反射部材との間で、照射面と被照射面における虚像の下端を作り出す第1端部同士の間隔よりも虚像の上端を作り出す第2端部同士の間隔が拡がるよう照射面に対して傾倒させ、制御部は、被照射面に入射させる照射面からの照射光の照度を第1端部よりも第2端部で高くして、表示ユニットの出射面から出射させる表示光の輝度ムラを低減させること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
車室内の乗員に虚像として視認させる表示情報を前記筐体の中で表示光として出射する表示器と、
前記表示器から出射された前記表示光を前記筐体の中で反射させて、前記表示光を前記筐体の開口から車室内の被投影部に投影させる少なくとも1つの反射部材と、
前記乗員のアイポイント又は前記虚像の視認が可能な前記アイポイントの範囲であるアイボックスに応じた前記表示光の制御を行う制御部と、
を備え、
前記表示器は、光源の光を照射面から拡散配光させるバックライトユニットと、被照射面に入射した前記照射面からの照射光を透過させ、前記表示光として出射面から出射させる光透過型の板状の表示ユニットと、を備え、
前記表示ユニットは、前記照射面と当該照射面に対して前記バックライトユニットの光軸方向に配置された前記反射部材との間で、前記照射面と前記被照射面における前記虚像の鉛直方向の下端を作り出す第1端部同士の間隔が前記照射面と前記被照射面における前記虚像の鉛直方向の上端を作り出す第2端部同士の間隔よりも拡がるよう前記照射面に対して傾倒させ、
前記制御部は、前記バックライトユニットを制御し、前記被照射面に入射させる前記照射面からの前記照射光の照度を前記第2端部よりも前記第1端部で高くして、前記表示ユニットの前記出射面から出射させる前記表示光の輝度ムラを低減させることを特徴とした車両用表示装置。
【請求項2】
前記光源は、前記照射面の前記第1端部からの照射光に関わる第1光源位置と前記照射面の前記第2端部からの照射光に関わる第2光源位置との間で複数配列され、
前記制御部は、前記光源の配列方向で前記第2光源位置に配置された前記光源の輝度よりも前記第1光源位置側に配置された前記光源の輝度を高くして、前記被照射面に入射させる前記照射面からの前記照射光の照度を前記第2端部よりも前記第1端部で高くすることを特徴とした請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記表示ユニットは、前記筐体の前記開口から入射した外光が前記反射部材で反射して前記出射面に到達した際、前記出射面で反射した前記外光を前記反射部材に向かわせぬように前記照射面に対して傾倒させることを特徴とした請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記表示ユニットの前記出射面を複数に区画した区画領域毎の前記外光の照度に応じて、前記被照射面に入射させる前記照射面からの前記照射光の照度を前記区画領域毎に調整し、前記表示ユニットの前記出射面から出射させる前記表示光の輝度ムラを低減させることを特徴とした請求項3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記表示器と前記筐体の前記開口との間に前記反射部材を1つ備え、
前記照射面と前記被照射面は、各々、鉛直上方側が前記第1端部で且つ鉛直下方側が前記第2端部となる配置で設置され、
前記表示ユニットは、前記照射面と前記反射部材との間で、前記照射面と前記被照射面における鉛直下方の下端同士の間隔よりも前記照射面と前記被照射面における鉛直上方の上端同士の間隔が拡がるよう前記照射面に対して傾倒させ、
前記制御部は、前記バックライトユニットを制御し、前記被照射面に入射させる前記照射面からの前記照射光の照度を前記下端よりも前記上端で高くすることを特徴とした請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記表示器から出射された前記表示光を反射させる第1反射部材と、前記第1反射部材で反射された前記表示光を反射させて前記筐体の前記開口から前記被投影部に投影させる第2反射部材と、を前記反射部材として備え、
前記照射面と前記被照射面は、各々、鉛直方向に対する直交方向の一端側が前記第1端部で且つ前記直交方向の他端側が前記第2端部となる配置で設置され、
前記表示ユニットは、前記照射面と前記第1反射部材との間で、前記照射面と前記被照射面における前記一端同士の間隔が前記照射面と前記被照射面における前記他端同士の間隔よりも拡がるよう前記照射面に対して傾倒させ、
前記制御部は、前記バックライトユニットを制御し、前記被照射面に入射させる前記照射面からの前記照射光の照度を前記他端よりも前記一端で高くすることを特徴とした請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、車室内の乗員に提供する情報を虚像表示させる車両用表示装置が搭載されている。この車両用表示装置は、所謂ヘッドアップディスプレイ装置であり、被投影部に投影させる表示情報を表示光として出射する表示器と、この表示器から出射された表示光を反射させて、この表示光を被投影部に投影させる反射部材と、を備えている。この車両用表示装置は、その被投影部に投影されている表示光に応じた表示情報を乗員に虚像として視認させる。この種の車両用表示装置については、例えば、下記の特許文献1に開示されている。この特許文献1の車両用表示装置は、外光が反射部材で反射して光透過型の表示ユニットの出射面に向かうので、この外光が表示ユニットの出射面から反射部材に戻らないように当該出射面を傾けて、外光の映り込みを避けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-101056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光透過型の表示ユニットは、背面から照射されたバックライトの光を透過させ、出射面から表示光として反射部材に向けて出射させる。従来の車両用表示装置は、バックライトの反射部材に向けた光軸に対して表示ユニットを傾けており、その表示ユニットにて、バックライトから離れた場所の輝度が低下するので、輝度ムラが発生してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、輝度ムラを低減させた車両用表示装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筐体と、車室内の乗員に虚像として視認させる表示情報を前記筐体の中で表示光として出射する表示器と、前記表示器から出射された前記表示光を前記筐体の中で反射させて、前記表示光を前記筐体の開口から車室内の被投影部に投影させる少なくとも1つの反射部材と、前記乗員のアイポイント又は前記虚像の視認が可能な前記アイポイントの範囲であるアイボックスに応じた前記表示光の制御を行う制御部と、を備え、前記表示器は、光源の光を照射面から拡散配光させるバックライトユニットと、被照射面に入射した前記照射面からの照射光を透過させ、前記表示光として出射面から出射させる光透過型の板状の表示ユニットと、を備え、前記表示ユニットは、前記照射面と当該照射面に対して前記バックライトユニットの光軸方向に配置された前記反射部材との間で、前記照射面と前記被照射面における前記虚像の鉛直方向の下端を作り出す第1端部同士の間隔が前記照射面と前記被照射面における前記虚像の鉛直方向の上端を作り出す第2端部同士の間隔よりも拡がるよう前記照射面に対して傾倒させ、前記制御部は、前記バックライトユニットを制御し、前記被照射面に入射させる前記照射面からの前記照射光の照度を前記第2端部よりも前記第1端部で高くして、前記表示ユニットの前記出射面から出射させる前記表示光の輝度ムラを低減させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用表示装置は、表示ユニットの出射面の第2端部よりも第1端部で輝度を高くして、その出射面から出射させる表示光の輝度ムラを出射面の全体で低減させるので、虚像表示の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の車両用表示装置について示す模式図である。
図2図2は、実施形態の表示器について示す模式図である。
図3図3は、光源の配置の一例を示す説明図である。
図4図4は、表示ユニットにおける出射角度と光透過率との関係について説明する説明図である。
図5図5は、表示ユニットの輝度ムラについて説明する説明図である。
図6図6は、外光の照度に対する輝度補正値のマップデータの一例を示す説明図である。
図7図7は、変形例の車両用表示装置について示す模式図である。
図8図8は、変形例の表示器について示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る車両用表示装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係る車両用表示装置の実施形態の1つを図1から図6に基づいて説明する。
【0011】
図1の符号1は、実施形態の車両用表示装置を示す。この車両用表示装置1は、車両(自動車等)の車室内の乗員に提供する情報を虚像表示させる所謂ヘッドアップディスプレイ装置である。
【0012】
車両用表示装置1は、車室内の乗員に虚像として視認させる表示情報を下記の筐体61の中で表示光として出射する表示器10を備える(図1)。この表示器10は、バックライトユニット20と光透過型の板状の表示ユニット30とを備えるものであり、バックライトユニット20から表示ユニット30に照射させた照射光を透過させ、表示情報の表示光として表示ユニット30から出射させる(図1)。
【0013】
更に、この車両用表示装置1は、その表示器10から出射された表示光を筐体61の中で反射させて、その表示光を筐体61の開口61aから車室内の被投影部Rwfに投影させる少なくとも1つの反射部材を備える。本実施形態では、反射部材40を1つ備えている(図1)。この反射部材40は、例えば、表示器10から出射された表示光を拡大させて反射させる拡大ミラーである。この反射部材40としては、例えば、非球面(自由曲面)ミラーが用いられる。被投影部Rwfに投影された表示光は、この被投影部RwfからアイポイントEP又はアイボックスEBに反射されることによって、乗員に虚像として視認される(図1)。アイポイントEPとは、車室内の乗員の目の位置を示すものである。アイボックスEBとは、虚像の視認が可能なアイポイントEPの範囲を示すものである。
【0014】
この車両用表示装置1は、乗員のアイポイントEP又はアイボックスEBに応じた表示光の制御を行う制御部50を備える(図1)。
【0015】
この車両用表示装置1は、更に、少なくとも表示器10と反射部材40とを内方に収容させる筐体61と、この筐体61の開口61aを塞ぐ透明のカバー62と、を備える(図1)。この車両用表示装置1においては、反射部材40で反射させた表示光をカバー62から筐体61の外に出射させ、その先に存在している被投影部Rwfに投影させる。ここで示す車両用表示装置1は、カバー62を露出させた状態で車室内のインスツルメントパネルPiの中に収容され、被投影部Rwfに反射部材40で反射させた表示光を投影させる(図1)。そして、この車両用表示装置1は、その被投影部Rwfで表示光をアイポイントEP又はアイボックスEBに向けて反射させる。
【0016】
ここで、被投影部Rwfとは、ウインドシールド(ここでは、フロントウインドシールドWf)そのもの又はその一部分のことである。また、被投影部Rwfは、反射面で反射部材40からの表示光を受けてアイポイントEP又はアイボックスEBへと反射させ、かつ、車外からの光を乗員側に出射させるハーフミラーとして形成されたものであってもよい。例えば、このハーフミラーとしての被投影部Rwfは、ウインドシールド(フロントウインドシールドWf)の曲面形状に沿わせた半透過性のフィルム状に形成され、このウインドシールドの車室内側の壁面に接着剤で貼り付けられる。また、このハーフミラーとしての被投影部Rwfは、ウインドシールド(フロントウインドシールドWf)の曲面形状に沿わせた半透過性のフィルム状に形成され、合せガラスのウインドシールドの中に中間膜と共に封止されたものであってもよい。また、このハーフミラーとしての被投影部Rwfは、ウインドシールド(フロントウインドシールドWf)の車室内側の壁面に塗布等でコーティングされた半透過性の被膜であってもよい。尚、被投影部Rwfは、フロントウインドシールドWfを車室内側から覆うコンバイナであってもよい。
【0017】
バックライトユニット20は、光源21と、この光源21の制御基板22と、光源21で発生した熱を放熱させるヒートシンク23と、を備える(図2)。光源21は、発光素子である。ここでは、その発光素子として発光ダイオード素子を用いている。光源21は、後述する照射面20aの第1端部(鉛直方向の上端)からの照射光に関わる第1光源位置と照射面20aの第2端部(鉛直方向の下端)からの照射光に関わる第2光源位置との間で複数配列される。ここで示すバックライトユニット20は、鉛直方向に複数配列された光源21を備えている。制御基板22は、配線パターンを介して光源21と電源を電気的に接続させる。ここで示す制御基板22の基板面22aには、鉛直方向と鉛直方向に直交する方向とに各々等間隔で複数並べた光源21が配置されている(図2及び図3)。
【0018】
更に、バックライトユニット20は、制御基板22の基板面22aに対して対向配置され、その基板面22aとの間に介在する光源21からの光(以下、「光源光」という。)を集光させる集光レンズ24と、この集光レンズ24で集光させた光源光を拡散配光させるフィールドレンズ25と、を備える(図2)。
【0019】
集光レンズ24は、光源21からの光源光を集光させるガラス又は透明樹脂から成るレンズ部材である。ここで示す集光レンズ24には、例えば、光源21毎のレンズ素子24aが光源21と向かい合わせに配列されたコンデンサレンズを用いる。そのレンズ素子24aは、光源21からの光源光を入射させる入射面と、この入射面から入射してきた光源光を出射させる出射面と、を有しており、その入射面が平坦面で且つ出射面が凸状の湾曲面の平凸レンズとして形成されている。
【0020】
フィールドレンズ25は、集光レンズ24から出射された光源光の進行方向を揃えるガラス又は透明樹脂から成るレンズ部材であり、集光レンズ24と表示ユニット30との間に介在させる。このフィールドレンズ25は、集光レンズ24を介したそれぞれの光源21の光源光を入射させる入射面と、この入射面から入射してきた光源光を出射させる出射面と、を有する。ここで示すフィールドレンズ25には、例えば、フレネルレンズを用いる。
【0021】
バックライトユニット20においては、そのフィールドレンズ25の出射面が照射面20aとなり(図2)、集光レンズ24を介したそれぞれの光源21の光源光の進行方向をフィールドレンズ25で揃えて、その照射面20aから光源光を拡散配光させる。このバックライトユニット20においては、例えば、制御基板22の基板面22aに対する直交方向や集光レンズ24のレンズ素子24aの入射面に対する直交方向が光軸方向となる。このバックライトユニット20は、照射面20aから出射させた光源光を照射光として表示ユニット30に照射させる。
【0022】
表示ユニット30は、バックライトユニット20の照射面20aからの照射光を裏面の被照射面30aに入射させ、表示情報の表示光を表面の出射面30bから反射部材40に向けて出射させる(図2)。この表示ユニット30は、被照射面30aに入射した照射面20aからの照射光を透過させ、表示光として出射面30bから出射させる。ここで示す表示ユニット30は、光透過型のTFT液晶(Thin Film Transistor Liquid Crystal Display)を用いる。この表示ユニット30は、制御部50によって制御され、表示情報を表示させる。例えば、その表示情報としては、文字、数字、図形等の画像情報が表示される。
【0023】
この表示ユニット30は、照射面20aと当該照射面20aに対してバックライトユニット20の光軸方向に配置された反射部材40との間で、照射面20aと被照射面30aにおける虚像の鉛直方向の下端を作り出す第1端部同士の間隔が照射面20aと被照射面30aにおける虚像の鉛直方向の上端を作り出す第2端部同士の間隔よりも拡がるよう照射面20aに対して傾倒させる。本実施形態の照射面20aと被照射面30aは、各々、鉛直上方側が第1端部で且つ鉛直下方側が第2端部となる配置で設置されている。よって、表示ユニット30は、照射面20aと反射部材40との間で、照射面20aと被照射面30aにおける鉛直上方の上端同士の間隔が照射面20aと被照射面30aにおける鉛直下方の下端同士の間隔よりも拡がるよう照射面20aに対して傾倒させる(図2)。ここで示す表示ユニット30とバックライトユニット20の照射面20aは、各々、鉛直下方の下端を回動中心にして、鉛直上方の上端を車両前方に向けて傾ける。この車両用表示装置1においては、そのバックライトユニット20の照射面20aの傾倒角度よりも表示ユニット30の傾倒角度を大きくして、バックライトユニット20の光軸を表示ユニット30の被照射面30aと出射面30bに直交させずに交差させている。
【0024】
具体的に、ここで示す表示ユニット30は、外光の映り込みを避けるべく、筐体61の開口61aから入射した外光が反射部材40で反射して出射面30bに到達した際、その出射面30bで反射した外光を反射部材40に向かわせぬようにバックライトユニット20の照射面20aに対して傾倒させる。例えば、ここでは、その出射面30bで反射した外光を筐体61の底壁に向かわせている(図1)。
【0025】
このように、この車両用表示装置1においては、バックライトユニット20の光軸方向と表示ユニット30における被照射面30a及び出射面30bに対する直交方向とが交差している。このため、表示ユニット30においては、出射面30bから出射させる表示光の基準出射方向(ここでは出射面30bに対する直交方向)に対する表示光の出射角度θ(図2)の絶対値が下端よりも上端で大きくなる(θ2>θ1)。例えば、ここで示す表示ユニット30においては、出射面30bの下端から表示光が基準出射方向に対して負の出射角度θで出射し、この下端よりも上端側に向かうほど基準出射方向に対する表示光の負の出射角度θの絶対値が一旦小さくなり、或る位置で基準出射方向に向けて表示光を出射させる(θ=0)。そして、ここで示す表示ユニット30においては、その正負切替位置(θ=0)から上端側に向かうほど基準出射方向に対する表示光の正の出射角度θが大きくなり、この正の出射角度θの絶対値が或る位置で下端における負の出射角度θの絶対値と同じ大きさになって、この位置よりも上端側に向かうほど基準出射方向に対する表示光の正の出射角度θが更に大きくなっていく。
【0026】
ここで、表示ユニット30は、基準出射方向に対する表示光の出射角度θが0度のときに最も光透過率T(θ)が高く、基準出射方向に対する表示光の出射角度θが正負に拘わらず大きくなるほど光透過率T(θ)が低下する(図4)。つまり、この表示ユニット30は、基準出射方向に対する表示光の出射角度θが0度のときに最も輝度L(θ)が高く、基準出射方向に対する表示光の出射角度θが正負に拘わらず大きくなるほど輝度L(θ)が低下する。このため、この表示ユニット30においては、被照射面30aに入射させるバックライトユニット20の照射面20aからの照射光の照度が被照射面30aの全面に亘って均等であれば、被照射面30aと照射面20aとの間隔が下端よりも拡がっている上端で輝度L(θ)が下端よりも低下することになり、輝度ムラが発生してしまう(図5)。例えば、この表示ユニット30においては、出射面30bにて、基準出射方向に対する表示光の出射角度θの絶対値が或る大きさ以下に抑えられた第1領域と当該出射角度θの絶対値が或る大きさを越えて更に大きくなっている第2領域とが混在している場合に、その第1領域と第2領域との間で虚像表示に違和感を与えるほどの輝度ムラが発生する。ここでは、出射面30bの下端から上端の手前までが第1領域となり、第2領域となる出射面30bの上端で第1領域よりも輝度L(θ)が大きく低下する。
【0027】
そこで、制御部50には、バックライトユニット20の制御によって表示ユニット30の輝度ムラを低減させる。この制御部50は、バックライトユニット20を制御し、表示ユニット30の被照射面30aに入射させるバックライトユニット20の照射面20aからの照射光の照度を第2端部よりも第1端部で高くして(即ち、鉛直方向の下端よりも鉛直方向の上端で高くして)、表示ユニット30の出射面30bから出射させる表示光の輝度ムラを低減させる。つまり、この制御部50は、表示ユニット30の被照射面30aに照射させるバックライトユニット20の照射面20aからの照射光の照度を被照射面30aの第2端部よりも第1端部で高くして(即ち、鉛直方向の下端よりも鉛直方向の上端で高くして)、表示ユニット30の出射面30bの第2端部よりも第1端部で(即ち、鉛直方向の下端よりも鉛直方向の上端で)輝度L(θ)を高くして、その出射面30bから出射させる表示光の輝度ムラを出射面30bの全体で低減させる。
【0028】
具体的に、この制御部50は、バックライトユニット20にて光源21の配列方向で第1光源位置(つまり、鉛直上方の上端)に配置された光源21の輝度を第2光源位置側(つまり、鉛直下方)に配置された光源21の輝度よりも高くして、表示ユニット30の被照射面30aに入射させるバックライトユニット20の照射面20aからの照射光の照度を第2端部よりも第1端部で(つまり、鉛直方向の下端よりも鉛直方向の上端で)高くする。例えば、制御部50は、基準出射方向に対する表示光の出射角度θの絶対値が最小になる場所の輝度L(θmin)と光透過率T(θmin)に基づいて、下記の式1から制御対象となる場所(ここでは出射面30bの上端)の輝度L(θ)を演算する。そして、この制御部50は、その輝度L(θ)の演算値に基づいて、この輝度L(θ)に近づけるように、制御対象となる場所(ここでは出射面30bの上端)に対応させた光源21の輝度を制御する。
【0029】
L(θ)={T(θmin)/T(θ)}*L(θmin) ・・・(1)
【0030】
このように、本実施形態の車両用表示装置1は、表示ユニット30の出射面30bの第2端部よりも第1端部で(つまり、鉛直方向の下端よりも鉛直方向の上端で)輝度L(θ)を高くして、その出射面30bから出射させる表示光の輝度ムラを出射面30bの全体で低減させるので、虚像表示の視認性を向上させることができる。
【0031】
ところで、厳密に見たならば、表示ユニット30においては、基準出射方向に対する表示光の出射角度θの絶対値が出射面30bの各位置で異なるので、その各位置で輝度L(θ)にずれが生じている。このため、この表示ユニット30においては、虚像表示の視認性への影響が少ない場所であっても、厳密には輝度ムラが発生している。
【0032】
そこで、先ずは、表示ユニット30の出射面30bを複数に区画した区画領域を設定する。例えば、その出射面30bにおいては、光源21毎の区画領域、つまり、鉛直方向と鉛直方向に直交する方向とに各々等間隔で複数並べた区画領域に区画される。そして、制御部50は、基準出射方向に対する表示光の出射角度θの絶対値が最小になる区画領域を除いた各区画領域の輝度L(θ)を上記式1に基づき演算する。そして、この制御部50は、その区画領域毎の輝度L(θ)の演算値に基づいて、この輝度L(θ)に近づけるように、制御対象となる区画領域に対応させた光源21の輝度を制御する。これにより、この車両用表示装置1は、表示ユニット30の出射面30bから出射させる表示光の輝度ムラを出射面30bの全体で更に低減させることができるので、虚像表示の視認性の更なる向上を図ることができる。
【0033】
また、制御部50は、その区画領域毎の外光の照度に応じて、表示ユニット30の被照射面30aに入射させるバックライトユニット20の照射面20aからの照射光の照度を区画領域毎に調整し、表示ユニット30の出射面30bから出射させる表示光の輝度ムラを低減させてもよい。この場合、車両用表示装置1は、反射部材40から反射してきた外光の照度を測定する区画領域毎の照度計を設ける。または、車両用表示装置1は、筐体61の開口61aから入射した外光の照度を照度計で測定し、この測定結果に基づいて区画領域毎の外光の照度を制御部50に推定させる。例えば、制御部50には、外光の照度に応じた輝度補正値L(S)のマップデータを持たせておき(図6)、このマップデータから区画領域毎の外光の照度に応じた輝度補正値L(S)を演算させる。例えば、この輝度補正値L(S)を補正係数とし、下記の式2から制御対象となる区画領域の輝度L(θ)を演算する。
【0034】
L(θ)={T(θmin)/T(θ)}*L(θmin)*L(S)・・・(2)
【0035】
制御部50は、この輝度L(θ)の演算値に基づいて、この輝度L(θ)に近づけるように、制御対象となる区画領域に対応させた光源21の輝度を制御する。これにより、この車両用表示装置1は、外光の影響を取り除いて、表示ユニット30の出射面30bから出射させる表示光の輝度ムラを出射面30bの全体で更に低減させることができるので、虚像表示の視認性の更なる向上を図ることができる。
【0036】
[変形例]
本変形例の車両用表示装置2は、前述した実施形態の車両用表示装置1に対して、表示器10の搭載角度を変更し、かつ、別の反射部材を1つ増やしたものである(図7)。
【0037】
この車両用表示装置2は、表示器10から出射された表示光を反射させる第1反射部材141と、この第1反射部材141で反射された表示光を反射させて筐体61の開口61aから被投影部Rwfに投影させる第2反射部材142と、を反射部材として備えている(図7)。第1反射部材141は、折返しミラーである。また、第2反射部材142は、実施形態の反射部材40と同様の拡大ミラーである。
【0038】
本変形例の表示器10の表示ユニット30は、実施形態の表示器10と同じように、照射面20aと反射部材40との間で、照射面20aと被照射面30aにおける虚像の鉛直方向の下端を作り出す第1端部同士の間隔が照射面20aと被照射面30aにおける虚像の鉛直方向の上端を作り出す第2端部同士の間隔よりも拡がるよう照射面20aに対して傾倒させる。但し、実施形態の表示器10は、表示ユニット30の出射面30bから車両前方に向けて表示光を出射させるべく配置されている。一方、本変形例の表示器10は、表示ユニット30の出射面30bから鉛直上方側(つまり、車両上方)又は鉛直下方側(つまり、車両下方)に向けて表示光を出射させるべく配置される。よって、本変形例の表示器10は、下記の如き構成を採っている。
【0039】
本変形例の照射面20aと被照射面30aは、各々、鉛直方向に対する直交方向の一端側が第1端部で且つ鉛直方向に対する直交方向の他端側が第2端部となる配置で設置される。そして、本変形例の光源21は、その本変形例の照射面20aの第1端部からの照射光に関わる第1光源位置と照射面20aの第2端部からの照射光に関わる第2光源位置との間で複数配列される。表示ユニット30は、照射面20aと第1反射部材141との間で、照射面20aと被照射面30aにおける一端同士の間隔よりも照射面20aと被照射面30aにおける他端同士の間隔が拡がるよう照射面20aに対して傾倒させる。
【0040】
この例示では、表示ユニット30の出射面30bから鉛直上方側(つまり、車両上方)に向けて表示光を出射させ、車両前方に虚像を作り出す(図7)。よって、ここで示す照射面20aと被照射面30aは、各々、車両前方側が第1端部で且つ車両後方側が第2端部となる配置で設置されている(図8)。そして、ここで示すバックライトユニット20は、車両前後方向に複数配列された光源21を備えている(図8)。ここで示す表示ユニット30は、照射面20aと第1反射部材141との間で、照射面20aと被照射面30aにおける車両後方側の端部同士の間隔よりも照射面20aと被照射面30aにおける車両前方側の端部同士の間隔が拡がるよう照射面20aに対して傾倒させている(図7)。
【0041】
本変形例の制御部50は、バックライトユニット20を制御し、表示ユニット30の被照射面30aに入射させるバックライトユニット20の照射面20aからの照射光の照度を他端よりも一端で高くして(即ち、車両後方側の端部よりも車両前方側の端部で高くして)、表示ユニット30の出射面30bから出射させる表示光の輝度ムラを低減させる。つまり、この制御部50は、表示ユニット30の被照射面30aに照射させるバックライトユニット20の照射面20aからの照射光の照度を被照射面30aの他端よりも一端で高くして(即ち、車両後方側の端部よりも車両前方側の端部で高くして)、表示ユニット30の出射面30bの他端よりも一端で(即ち、車両後方側の端部よりも車両前方側の端部で)輝度L(θ)を高くして、その出射面30bから出射させる表示光の輝度ムラを出射面30bの全体で低減させる。
【0042】
具体的に、本変形例の制御部50は、バックライトユニット20にて光源21の配列方向で第2光源位置(つまり、車両後方側の端部)に配置された光源21の輝度よりも第1光源位置側(つまり、車両前方)に配置された光源21の輝度を高くして、表示ユニット30の被照射面30aに入射させるバックライトユニット20の照射面20aからの照射光の照度を他端よりも一端で(即ち、車両後方側の端部よりも車両前方側の端部で)高くする。
【0043】
本変形例の車両用表示装置2は、このように表示器10と第2反射部材(拡大ミラー)142との間に第1反射部材(折返しミラー)141を介在させたとしても、実施形態の車両用表示装置1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
1,2 車両用表示装置
10 表示器
20 バックライトユニット
20a 照射面
21 光源
30 表示ユニット
30a 被照射面
30b 出射面
40 反射部材
50 制御部
61 筐体
61a 開口
141 第1反射部材
142 第2反射部材
EB アイボックス
EP アイポイント
Rwf 被投影部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8