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  • 特開-コネクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104768
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009110
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 慧
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE07
5E087FF02
5E087LL02
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM05
5E087MM08
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】接続対象物との接続を円滑に行うことができるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、接続対象物90に接続される端子4を保持し、接続対象物90に形成される嵌合孔91に対し挿入される嵌合部21を有するハウジング2と、嵌合部21の外周に取り付けられ、嵌合孔91の内面91Aと接触し、ハウジング2と接続対象物90との間を止水するシール部材3と、を備え、シール部材3は、弾性部材により形成され、外周面3Aから突出する第一リップ31を有し、第一リップ31は、嵌合孔91に対する嵌合部21の挿入方向に沿った断面の形状が山型とされ、挿入時に先行する第一斜面311及び挿入時に後行する第二斜面312を有し、挿入方向Xに対する第一斜面311の第一傾斜角度α1は、第二斜面312の第二傾斜角度α2より小さくなるように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物に接続される端子を保持し、前記接続対象物に形成される嵌合孔に対し挿入される嵌合部を有するハウジングと、
前記嵌合部の外周に取り付けられ、前記嵌合孔の内面と接触し、前記ハウジングと前記接続対象物との間を止水するシール部材と、を備え、
前記シール部材は、弾性部材により形成され、外周面から突出するリップを有し、
前記リップは、前記嵌合孔に対する前記嵌合部の挿入方向に沿った断面の形状が山型とされ、前記嵌合部の前記嵌合孔に対する挿入時に先行する第一斜面及び前記挿入時に後行する第二斜面を有し、
前記挿入方向に対する前記第一斜面の第一傾斜角度は、前記第二斜面の第二傾斜角度より小さい、
コネクタ。
【請求項2】
前記リップは、複数形成され、前記挿入方向に沿って並べて設けられている、
請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタとして、例えば、特許文献1に記載されるように、ハウジングに対し環状のシール部材(止水部材)が取り付けられ、シール部材によってハウジングと接続対象物(相手方機器)の間の止水を行うものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-032605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなコネクタでは、接続対象物との接続が困難となる場合があるという点で改善の余地がある。例えば、コネクタの接続対象物への接続は、シール部材を接続対象物の嵌合部分に対し接触させ移動させながら行われる。このとき、シール部材と嵌合部分の間の摩擦係数が高い場合など、コネクタの接続において大きな挿入力が必要となり、コネクタと接続対象物の接続が円滑に行えない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、接続対象物との接続が円滑に行えるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係るコネクタは、接続対象物に接続される端子を保持し、前記接続対象物に形成される嵌合孔に対し挿入される嵌合部を有するハウジングと、前記嵌合部の外周に取り付けられ、前記嵌合孔の内面と接触し、前記ハウジングと前記接続対象物との間を止水するシール部材と、を備え、前記シール部材は、弾性部材により形成され、外周面から突出するリップを有し、前記リップは、前記嵌合孔に対する前記嵌合部の挿入方向に沿った断面の形状が山型とされ、前記嵌合部の前記嵌合孔に対する挿入時に先行する第一斜面及び前記挿入時に後行する第二斜面を有し、前記挿入方向に対する前記第一斜面の第一傾斜角度は、前記第二斜面の第二傾斜角度より小さくなるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタによれば、接続対象物との接続を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るコネクタを示す分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-IIIにおけるコネクタのシール部材の断面図である。
図4図4は、実施形態に係るコネクタの接続時の説明図である。
図5図5は、実施形態に係るコネクタの接続時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
本実施形態は、コネクタに関する。図1は、実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。図2は、実施形態に係るコネクタを示す分解斜視図である。図3は、図1のIII-IIIにおけるコネクタのシール部材の断面図である。図4及び図5は、実施形態に係るコネクタの接続時の説明図である。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「挿入方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、挿入方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に直交する。挿入方向Xは、コネクタと接続対象物の接続方向及び接続対象物に対するコネクタの嵌合部の挿入方向に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、挿入方向Xと交差する交差方向に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。なお、ここでいう直交は、ほぼ直交を含む。
【0012】
図1に示すように、コネクタ1は、接続対象物90との接続に用いられる接続機器であり、ハウジング2及びシール部材3を備えている。コネクタ1は、例えば、車両に搭載されて用いられる。
【0013】
ハウジング2は、接続対象物90に接続するための端子4を保持する部材であり、接続対象物90に形成される嵌合孔91に対し挿入される嵌合部21を有している。ハウジング2は、例えば、幅方向Yに並べられた二つの端子4を保持しており、嵌合部21の端面21Aから挿入方向Xへ向けて端子4を延出させている。端子4は、ハウジング2内で電線Wに取り付けられている。嵌合部21は、挿入方向Xに沿って接続対象物90側へ延び出た部位であり、嵌合孔91の形状に合わせて形成され、例えば、幅方向Yに長い断面形状であって、楕円又は長円の断面形状とされる。
【0014】
接続対象物90は、コネクタ1に接続される機器であり、例えば、電気機器及びバッテリなどが該当する。また、接続対象物90は、電気機器及びバッテリなどに取り付けられる相手方コネクタであってもよい。なお、図1は、説明の便宜上、接続対象物90の外壁を板状として示している。嵌合孔91は、端子4及び嵌合部21を挿入させるための孔であり、例えば、挿入方向Xに交差する方向の断面を楕円又は長円の形状とされる。嵌合孔91は、コネクタ1側へ延びる筒体92に形成されている。接続対象物90の内部には、端子4に接続される相手方端子93が設置されている。また、接続対象物90には、コネクタ1との締結のためのフランジ部94が形成されている。
【0015】
例えば、嵌合孔91の内面91Aは、防錆のための表面処理が行われていてもよい。具体的には、接続対象物90において、嵌合孔91を形成する部分がアルミニウムを主成分とする金属により形成される場合、嵌合孔91の内面91Aは、アルマイト処理が行われていてもよい。アルマイト処理は、内面91Aに酸化被膜を形成する処理である。この場合、嵌合孔91が錆びにくくなり、コネクタ1の接続状態は、良好に維持される。しかしながら、アルマイト処理によって内面91Aの表面粗さが大きくなり、内面91Aの表面が粗くなる。これにより、嵌合孔91とシール部材3との摺動性が悪化し、コネクタ1の接続時の挿入力が増大化することが懸念される。
【0016】
嵌合部21の外周には、シール部材3が取り付けられている。シール部材3は、ハウジング2と接続対象物90との間の止水を行う止水部材又はパッキンであり、環状に形成されている。シール部材3は、弾性変形可能な弾性部材であって含油されたものにより形成される。
【0017】
図2に示すように、コネクタ1は、フロントホルダ5、シールドシェル6及びリアカバー7を備えている。フロントホルダ5は、シール部材3を保持する保持部材であって、端子4を挿通させる挿通孔51を形成している。挿通孔51は、端子4の設置数に応じて形成され、例えば、二つ形成される。フロントホルダ5は、嵌合部21の先端位置に取り付けられ、シール部材3が嵌合部21から抜け外れることを防止している。シールドシェル6は、ハウジング2を覆うカバー部材又はケース部材であり、嵌合部21以外のハウジング2の外周部分を覆っている。シールドシェル6は、例えば、金属により形成され、電磁シールドとして機能する。シールドシェル6は、フランジ部61を形成している。フランジ部61は、挿入方向Xに延びる板状の部位であり、接続対象物90との締結に用いられる締結孔61Aを形成している。リアカバー7は、ハウジング2の背部に取り付けられる部材であって、シールドシェル6の外側を覆うように取り付けられる。
【0018】
図3に示すように、シール部材3には、例えば、二つのリップが形成され、第一リップ31及び第二リップ32が形成されている。第一リップ31及び第二リップ32は、シール部材3の外周側に形成されるリップであり、接続対象物90と接触して止水を行う。第一リップ31及び第二リップ32は、挿入方向Xに沿って並べて設けられ、接続対象物90側から第一リップ31及び第二リップ32の順で設けられている。すなわち、嵌合部21が接続対象物90の嵌合孔91に挿入される場合、第一リップ31及び第二リップ32は、第一リップ31、第二リップ32の順で嵌合孔91の内面91Aに接触していく。
【0019】
第一リップ31及び第二リップ32は、シール部材3の外周面3Aから突出しており、例えば、先端に向けて先細り状とした断面山型に形成される。例えば、第一リップ31及び第二リップ32の突出長は、同じ長さとされる。第一リップ31及び第二リップ32は、挿入方向Xに対し非対称な形状とされる。すなわち、第一リップ31は、嵌合孔91に対する嵌合部21の挿入方向に沿った断面の形状が山型とされ、嵌合部21の嵌合孔91に対する挿入時に先行する第一斜面311及びその挿入時に後行する第二斜面312を有している。第一斜面311は接続対象物90側の斜面であり、第二斜面312は接続対象物90と反対側の斜面である。そして、挿入方向Xに対する第一斜面311の第一傾斜角度α1は、第二斜面312の第二傾斜角度α2より小さい。つまり、嵌合部21の嵌合孔91への挿入時において、先行して接続対象物90に接触する第一斜面311の傾斜角が第二斜面312の傾斜角より緩くなっている。このため、接続対象物90と接触したときに第一リップ31が倒れやすくなっている。
【0020】
第二リップ32も、第一リップ31と同様に、嵌合孔91に対する嵌合部21の挿入方向に沿った断面の形状が山型とされ、嵌合部21の嵌合孔91に対する挿入時に先行する第一斜面321及びその挿入時に後行する第二斜面322を有している。第一斜面321は接続対象物90側の斜面であり、第二斜面322は接続対象物90と反対側の斜面である。そして、挿入方向Xに対する第一斜面321の第一傾斜角度α1は、第二斜面322の第二傾斜角度α2より小さい。つまり、嵌合部21の嵌合孔91への挿入時において、先行して接続対象物90に接触する第一斜面321の傾斜角が第二斜面322の傾斜角より緩くなっている。このため、接続対象物90と接触したときに第二リップ32が倒れやすくなっている。
【0021】
次に、本実施形態に係るコネクタ1の接続について説明する。
【0022】
図1に示すように、コネクタ1において接続対象物90への接続として、まず、コネクタ1が接続対象物90に対峙して配置される。すなわち、接続対象物90の嵌合孔91に対し端子4及び嵌合部21が向けられて、コネクタ1が配置される。そして、コネクタ1が接続対象物90へ近づけられ、端子4が嵌合孔91へ挿入され、次いで嵌合部21が嵌合孔91へ挿入される。
【0023】
図4に示すように、嵌合部21が嵌合孔91へ挿入されると、シール部材3が嵌合孔91の内面91Aに接触しながら挿入方向Xへ移動していく。シール部材3において、まず、第一リップ31が内面91Aに接触する。第一リップ31は、先行して接続対象物90に接触する第一斜面311の傾斜角が第二斜面312に対し緩くなっている。このため、第一リップ31が内面91Aに接触すると、内面91Aに押圧されて倒れやすい。つまり、第一リップ31は、内面91Aの押圧により潰れて、容易に変形する。従って、コネクタ1の接続において、コネクタ1の挿入力を低減することができる。
【0024】
そして、図4において、更に、嵌合部21が嵌合孔91へ挿入されると、第二リップ32が内面91Aに接触する。第二リップ32も、第一リップ31と同様に、先行して接続対象物90に接触する第一斜面321の傾斜角が第二斜面322に対し緩くなっている。このため、第二リップ32が内面91Aに接触すると、内面91Aに押圧されて倒れやすい。つまり、第二リップ32は、内面91Aの押圧により潰れて、容易に変形する。従って、コネクタ1の接続において、継続してコネクタ1を小さい挿入力で挿入していくことができる。
【0025】
そして、図5に示すように、嵌合部21が嵌合孔91内へ所定の位置まで挿入されると、第一リップ31及び第二リップ32は、変形して嵌合孔91の内面91Aに密着する。また、シール部材3の内周面3B側のリップ34も、変形して嵌合部21の外周面21Bに密着する。これにより、シール部材3により、ハウジング2と接続対象物90との間が止水される。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係るコネクタ1は、シール部材3の第一リップ31及び第二リップ32において、第一斜面311、321の第一傾斜角度α1を第二斜面312、322の第二傾斜角度α2より小さくすることにより、接続対象物90に対する挿入力を低減させることができる。従って、本実施形態に係るコネクタ1は、接続対象物90との接続を円滑に行うことができる。
【0027】
また、本実施形態に係るコネクタ1は、シール部材3に複数のリップを設ける場合であっても、接続対象物90に対する挿入力が大きくなることを抑制することができる。従って、本実施形態に係るコネクタ1は、接続対象物90との接続を円滑に行うことができる。
【0028】
なお、本発明に係るコネクタは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係るコネクタ1は、以上で説明した各実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【0029】
例えば、上述した実施形態に係るコネクタ1は、シール部材3が第一リップ31及び第二リップ32の二つのリップを有しているが、リップ数は一つ又は三つ以上であってもよい。このようなコネクタであっても、上述した実施形態に係るコネクタ1と同様な作用効果を得ることができる。すなわち、コネクタは、第一斜面の第一傾斜角度を第二斜面の第二傾斜角度より小さくすることにより、接続対象物90に対する挿入力を低減させることができ、接続対象物90との接続を円滑に行うことができる。
【0030】
また、上述した実施形態に係るコネクタ1は、車両に搭載される場合について説明したが、車両に搭載せずに用いられてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1:コネクタ
2:ハウジング
3:シール部材
3A:外周面
4:端子
21:嵌合部
31:第一リップ(リップ)
32:第二リップ(リップ)
90:接続対象物
91:嵌合孔
91A:内面
311:第一斜面
312:第二斜面
321:第一斜面
322:第二斜面
α1:第一傾斜角度
α2:第二傾斜角度
X:挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5