(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104769
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ケーブルクレーン、運搬方法及び施工方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/22 20060101AFI20240730BHJP
B66C 21/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B66C13/22 N
B66C21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009111
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520183184
【氏名又は名称】株式会社アルファナビゲーション
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】戸田 泰彰
(72)【発明者】
【氏名】石井 正典
(72)【発明者】
【氏名】井上 洸也
(72)【発明者】
【氏名】赤木 晃
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA05
3F204BA09
3F204CA03
3F204DA04
3F204DA09
3F204EA03
3F204EA11
3F204EB05
(57)【要約】
【課題】横行トロリーの減速中に横行トロリーからバケット等の吊り具までの距離が変化しても、横行トロリーの停止時に吊り具を停止できるようにする。
【解決手段】ケーブルクレーン20は、主索21に沿って移動するよう主索21に設置される横行トロリー22と、横行トロリー22を駆動するウインチ23と、横行トロリー22から懸下された吊り具29と、横行トロリー22の位置を計測する第1位置計測器31と、吊り具29の位置を計測する第2位置計測器32と、制御装置40と、を備える。吊り具29の振れ角度が目標値に等しければ、制御装置40が横行トロリー22の減速度を維持し、吊り具29の振れ角度が目標値より大きければ、制御装置40が横行トロリー22の減速度を減少させ、吊り具29の振れ角度が目標値より小さければ、制御装置40が横行トロリー22の減速度を増加させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山の間の谷の上方において前記山の間に架け渡された主索と、
前記主索に沿って移動するよう前記主索に設置される横行トロリーと、
前記横行トロリーを駆動する駆動装置と、
前記横行トロリーから懸下された吊り具と、
前記横行トロリーの位置を計測する第1位置計測器と、
前記吊り具の位置を計測する第2位置計測器と、
前記駆動装置を制御することによって前記横行トロリーの速度を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置が前記横行トロリーを減速させるに際して、
前記制御装置が、前記第1位置計測器によって計測された位置と、前記第2位置計測器によって計測された位置とに基づいて前記吊り具の振れ角度を算出し、
前記制御装置が、算出された前記吊り具の振れ角度と目標値を比較した結果、前記吊り具の振れ角度が前記目標値に等しければ、前記制御装置が前記横行トロリーの減速度を維持するよう前記横行トロリーを減速させ、
前記吊り具の振れ角度が前記目標値より大きければ、前記制御装置が前記横行トロリーの減速度を減少させるよう前記横行トロリーを減速させ、
前記吊り具の振れ角度が前記目標値より小さければ、前記制御装置が前記横行トロリーの減速度を増加させるよう前記横行トロリーを減速させる
ケーブルクレーン。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1位置計測器によって計測された位置から目的地までの距離に基づいて前記目標値を算出する
請求項1に記載のケーブルクレーン。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1位置計測器によって計測された位置から目的地までの距離が小さくなるほど、前記目標値を小さく算出する
請求項2に記載のケーブルクレーン。
【請求項4】
前記吊り具を昇降させる昇降ウインチを更に備え、
前記制御装置が前記横行トロリーを減速させるに際して、前記制御装置が前記昇降ウインチを作動させて、前記吊り具を下降させる
請求項1から3のいずれかに記載のケーブルクレーン。
【請求項5】
山の間の谷の上方において前記山の間に架け渡された主索と、
前記主索に沿って移動するよう前記主索に設置される横行トロリーと、
前記横行トロリーから懸下された吊り具と、を備えるケーブルクレーンを用いて、前記吊り具に保持された吊り荷を運搬する運搬方法であって、
前記横行トロリーを減速させるに際して、
前記横行トロリー及び前記吊り具の位置を計測し、
計測した前記横行トロリー及び前記吊り具の位置に基づいて前記吊り具の振れ角度を算出し、
算出した前記吊り具の振れ角度と目標値を比較した結果、前記吊り具の振れ角度が前記目標値に等しければ、前記横行トロリーの減速度を維持するよう前記横行トロリーを減速させ、前記吊り具の振れ角度が前記目標値より大きければ、前記横行トロリーの減速度を減少させるよう前記横行トロリーを減速させ、前記吊り具の振れ角度が前記目標値より小さければ、前記横行トロリーの減速度を増加させるよう前記横行トロリーを減速させる
運搬方法。
【請求項6】
請求項5に記載の運搬方法を用いて前記吊り荷としての生コンクリートを前記谷に運搬することによって、前記谷に構造物を施工する施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルクレーン、運搬方法及び施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山の間に架設されるケーブルクレーンは、谷間にダム堤体等のコンクリート構造物を施工するために用いられる。ケーブルクレーンは、主索、横行トロリー及びバケットなどを備える。主索は山の間に架け渡され、横行トロリーは主索に沿って走行し、バケットは横行トロリーから吊り下げられ、そのバケットにはコンクリートが積み込まれる。
【0003】
ケーブルクレーンを用いて山から谷にコンクリートを運搬する際に、横行トロリーが谷の上で減速して停止するため、バケットが振れる。そのようなバケットの振れが収まった後、バケットが横行トロリーから下降される。その後、コンクリートがバケットから投下される。このような手順を取るため、バケットの振れは、1回当たりのコンクリートの打設サイクルを長くする要因になり、強いてはコンクリート構造物の施工工期の長期化の要因になる。
【0004】
このような問題を解決するべく、特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1は、バケットの振れ角及びその振れ角速度を計測器により計測し、横行トロリーの制動距離を考慮した上で、バケットの振れが相殺されるように、振れ角及び振れ角速度に基づいて横行トロリーの減速を制御装置により制御する技術を開示する。特許文献1の技術によれば、横行トロリーの停止時にバケットの振れも止まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、横行トロリーからバケットの重心までの距離が横行トロリーの減速中に一定という条件では、有効的である。しかしながら、横行トロリーからバケットの重心までの距離が横行トロリーの減速中に変化すると、特許文献1の技術では、横行トロリーの停止時にバケットの振れが止まるとは限らない。
そこで、本発明は、横行トロリーの減速中に横行トロリーからバケット等の吊り具までの距離が変化しても、横行トロリーの停止時に吊り具を停止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための本発明の第1の側面によれば、ケーブルクレーンが、山の間の谷の上方において前記山の間に架け渡された主索と、前記主索に沿って移動するよう前記主索に設置される横行トロリーと、前記横行トロリーを駆動する駆動装置と、前記横行トロリーから懸下された吊り具と、前記横行トロリーの位置を計測する第1位置計測器と、前記吊り具の位置を計測する第2位置計測器と、前記駆動装置を制御することによって前記横行トロリーの速度を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が前記横行トロリーを減速させるに際して、前記制御装置が、前記第1位置計測器によって計測された位置と、前記第2位置計測器によって計測された位置とに基づいて前記吊り具の振れ角度を算出し、前記制御装置が、算出された前記吊り具の振れ角度と目標値を比較した結果、前記吊り具の振れ角度が前記目標値に等しければ、前記制御装置が前記横行トロリーの減速度を維持するよう前記横行トロリーを減速させ、前記吊り具の振れ角度が前記目標値より大きければ、前記制御装置が前記横行トロリーの減速度を減少させるよう前記横行トロリーを減速させ、前記吊り具の振れ角度が前記目標値より小さければ、前記制御装置が前記横行トロリーの減速度を増加させるよう前記横行トロリーを減速させる。
【0008】
本発明の第2の側面によれば、前記制御装置は、前記第1位置計測器によって計測された位置から目的地までの距離に基づいて前記目標値を算出する。
【0009】
本発明の第3の側面によれば、前記制御装置は、前記第1位置計測器によって計測された位置から目的地までの距離が小さくなるほど、前記目標値を小さく算出する。
【0010】
本発明の第4の側面によれば、前記ケーブルクレーンが、前記吊り具を昇降させる昇降ウインチを更に備え、前記制御装置が前記横行トロリーを減速させるに際して、前記制御装置が前記昇降ウインチを作動させて、前記吊り具を下降させる。
【0011】
本発明の第5の側面によれば、山の間の谷の上方において前記山の間に架け渡された主索と、前記主索に沿って移動するよう前記主索に設置される横行トロリーと、前記横行トロリーから懸下された吊り具と、を備えるケーブルクレーンを用いて、前記吊り具に保持された吊り荷を運搬する運搬方法であって、前記横行トロリーを減速させるに際して、前記横行トロリー及び前記吊り具の位置を計測し、計測した前記横行トロリー及び前記吊り具の位置に基づいて前記吊り具の振れ角度を算出し、算出した前記吊り具の振れ角度と目標値を比較した結果、前記吊り具の振れ角度が前記目標値に等しければ、前記横行トロリーの減速度を維持するよう前記横行トロリーを減速させ、前記吊り具の振れ角度が前記目標値より大きければ、前記横行トロリーの減速度を減少させるよう前記横行トロリーを減速させ、前記吊り具の振れ角度が前記目標値より小さければ、前記横行トロリーの減速度を増加させるよう前記横行トロリーを減速させる。
【0012】
本発明の第6の側面によれば、前記運搬方法を用いて前記吊り荷としての生コンクリートを前記谷に運搬することによって、前記谷に構造物を施工する施工方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、横行トロリーの減速中に横行トロリーから吊り具までの距離が変化しても、横行トロリーの停止時に吊り具が停止する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、施工現場におけるケーブルクレーンの斜視図である。
【
図2】
図2は、ケーブルクレーンのブロック図である。
【
図3】
図3は、ケーブルクレーンの横行トロリー及び吊り具の側面図である。
【
図5】
図5は、横行トロリーの速度の変化を示したグラフである。
【
図6】
図6は、横行トロリーから目的地までの距離と目標値の関係と、その距離と振れ角度の関係を示したグラフである。
【
図7】
図7は、横行トロリーから目的地までの距離と目標値の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。実施形態の特徴及び技術的な効果は、以下の詳細な説明及び図面から理解される。ただし、本発明の範囲は、以下に開示された実施形態に限定されない。図面は例示のみのために提供されるため、本発明の範囲は図面の例示に限定されない。
【0016】
[1. 施工システムの概要]
図1は、施工システム1の斜視図である。
施工システム1は、山91と山92の間の谷93にダム堤体等のような構造物99を施工する。施工システム1は、構造物99の施工のために、生コンクリート等のような資材を山91又は山92から谷93に運搬する。施工システム1は、谷93において不要となった資材を谷93から山91又は山92に運搬してもよい。
【0017】
施工システム1は、コンクリート供給設備10及びケーブルクレーン20を備える。
【0018】
コンクリート供給設備10は、山92の中腹に構築されている。コンクリート供給設備10は、生コンクリートを製造するとともに、製造済みの生コンクリートをケーブルクレーン20に供給する。なお、コンクリート供給設備10と併せて、又は、コンクリート供給設備10の代わりに、別のコンクリート供給設備が山92の中腹に構築されてもよい。
【0019】
ケーブルクレーン20は、山91と山92の間に架設されている。ケーブルクレーン20は、コンクリート供給設備10から生コンクリートの供給を受けて、その生コンクリートを谷93へ運搬する。ケーブルクレーン20は、生コンクリート以外の資材を谷93へ運搬してもよい。ケーブルクレーン20は、山92から谷93へ資材を運搬してもよい。ケーブルクレーン20は、谷93において不要となった資材を谷93から山91又は山92に運搬してもよい。以下、ケーブルクレーン20によって運搬される生コンクリート及び資材等のような対象を吊り荷という。
【0020】
[2. コンクリート供給設備]
コンクリート供給設備10は、バッチャープラント11、バンカー軌道12及び運搬車13を備える。
【0021】
バッチャープラント11は、山92の中腹に構築されている。バッチャープラント11は、セメントと水と骨材を混練して、生コンクリートを製造する。
【0022】
バンカー軌道12は、山92の中腹において、バッチャープラント11から谷93に沿って敷設されている
【0023】
。
運搬車13は、例えばトランスファーカー又はバケット台車によって構成される。運搬車13は、バンカー軌道12上をバンカー軌道12に沿って走行可能である。運搬車13は、次のような動作を繰り返し実行する。
まず、運搬車13は、バッチャープラント11において生コンクリートの供給を受けて、生コンクリートを積載する。運搬車13は、バッチャープラント11から積み替え場所P1までバンカー軌道12に沿って、生コンクリートを運搬する。次に、運搬車13は、積み替え場所P1において生コンクリートを後述の吊り具29に積み替える。次に、運搬車13は、生コンクリートを受け取りにバッチャープラント11に戻る。
なお、積み替え場所P1は、バンカー軌道12沿い且つ後述の主索21の下方にある。つまり、バンカー軌道12及び主索21をそれらの上から見て、バンカー軌道12と主索21が交差する箇所が積み替え場所P1である。
【0024】
[3. ケーブルクレーン]
図1~
図3を参照して、ケーブルクレーン20について詳細に説明する。
図2は、ケーブルクレーン20の制御構成のブロック図である。
図3は、ケーブルクレーン20の横行トロリー22及び吊り具29の側面図である。
【0025】
ケーブルクレーン20は、軌索式の中でも特に片側移動式のケーブルクレーンである。軌索式のケーブルクレーンとは、山91と山92の間に架設された主索21の片端又は両端が谷93に沿って移動するものをいう。片側移動式のケーブルクレーンとは、主索21の一方の端又は他方の端が谷93に沿って移動するものをいう。なお、ケーブルクレーン20は、軌索式の中でも両側移動式のケーブルクレーンであってもよいし、軌索式ではなく固定式のケーブルクレーンであってもよい。両側移動式のケーブルクレーンとは、主索21の両端が谷93に沿って移動するものをいう。固定式のケーブルクレーンとは、主索21の両端が移動せずに固定されているものをいう。
【0026】
ケーブルクレーン20は、主索21、横行トロリー22、第1ウインチ23、第1の塔24、一対の第2の塔25、軌索26、走行トロリー27、第2ウインチ28、吊り具29、昇降ウインチ30、第1位置計測器31、第2位置計測器32、制御装置40及び操縦器41を備える。
【0027】
第1の塔24は主索塔ともいう。第1の塔24は、山91の中腹又は頂上に立てた状態に構築されている。
【0028】
第2の塔25は軌索塔ともいう。第2の塔25は、山92の頂上又は中腹に立てた状態に構築されている。第2の塔25の設置箇所がバッチャープラント11及びバンカー軌道12の設置箇所よりも高く、第2の塔25がバッチャープラント11及びバンカー軌道12よりも山92の頂上の近くに設置されている。2体の第2の塔25は、これらの間に間隔をおいて、谷93に沿って並んでいる。
【0029】
軌索26は、山92において谷93に沿って架設されている。より具体的には、軌索26の一端が一方の第2の塔25、特にその頂部に連結され、軌索26の他端が他方の第2の塔25、特にその頂部に連結され、軌索26がこれら第2の塔25の間に架け渡されている。
【0030】
走行トロリー27は、軌索26に支持されるとともに、軌索26上において軌索26に沿って走行可能に設けられている。走行トロリー27が走行用牽引ケーブルに連結され、走行用牽引ケーブルが第2ウインチ28に巻き掛けられている。
【0031】
第2ウインチ28は、山92に設置されている。より具体的には、第2ウインチ28は、その山92上の機械室82内に設置されている。第2ウインチ28は、走行用牽引ケーブルの巻き取り・繰り出しにより走行用牽引ケーブルに張力を与えることによって、走行トロリー27を軌索26に沿って走行させるよう走行トロリー27を牽引する。第2ウインチ28は、走行用牽引ケーブルが巻き掛けられるドラムと、そのドラムを駆動するモーターと、を有する。なお、走行トロリー27が牽引式ではなく、自走式であってもよい。自走式とは、モーターが走行トロリー27に設けられ、走行トロリー27がモーターの動力によって走行するものをいう。
【0032】
主索21は、谷93の上方において、山91と山92との間に架け渡されている。より具体的には、主索21の一端が山91において第1の塔24、特にその頂部に連結され、主索21の他端が山92において走行トロリー27に連結され、主索21が第1の塔24と走行トロリー27との間に架け渡されている。
【0033】
なお、ケーブルクレーン20が固定式である場合、1体の第2の塔25が山92の頂上又は中腹に立てた状態に構築され、主索21が第1の塔24と第2の塔25との間に架け渡されている。ケーブルクレーン20が両側移動式である場合、2体の第1の塔24が山91の頂上又は中腹に立てた状態に構築され、軌索が2体の第1の塔24の間に架け渡され、第2走行トロリーがその軌索に沿って走行し、主索21が第2走行トロリーと走行トロリー27との間に架け渡されている。
【0034】
横行トロリー22は、主索21に支持されているとともに、主索21上において主索21に沿って走行可能に設けられている。横行トロリー22が横行用牽引ケーブルに連結され、横行用牽引ケーブルが第1ウインチ23に巻き掛けられている。
【0035】
第1ウインチ23は、山91に設置されている駆動装置である。より具体的には、第1ウインチ23は、その山91上の機械室81内に設置されている。第1ウインチ23は、横行用牽引ケーブルの巻き取り・繰り出しにより横行用牽引ケーブルに張力を与えることによって、横行トロリー22を主索21に沿って走行させるよう横行トロリー22を牽引する。第1ウインチ23は、横行用牽引ケーブルが巻き掛けられるドラムと、そのドラムを駆動するモーターと、を有する。なお、横行トロリー22が牽引式ではなく、自走式であってもよい。自走式とは、駆動装置としてのモーターが横行トロリー22に設けられ、横行トロリー22がモーターの動力によって走行するものをいう。
【0036】
吊り具29は、巻き揚げケーブル30aによって横行トロリー22から吊り下げられているとともに、吊り荷を保持する。吊り具29は、その巻き揚げケーブル30aを介して昇降ウインチ30に連結されている。吊り具29は、昇降ウインチ30による巻き揚げケーブル30aの巻き取り・繰り出しによって、昇降する。
【0037】
吊り具29は、ブロック29a及びバケット29bを有する。ブロック29aは、巻き揚げケーブル30aが巻き掛けられる動滑車を有する。昇降ウインチ30が巻き揚げケーブル30aを繰り出すと、ブロック29aが上昇し、昇降ウインチ30が巻き揚げケーブル30aを巻き取ると、ブロック29aが下降する。バケット29bは、ブロック29aから懸下されている。バケット29bは、吊り荷、特にコンクリートを収容して保持する。バケット29bは、遠隔操縦により開閉する開閉器29cを底に有する。開閉器29cが閉じると、吊り荷がバケット29b内に保持され、開閉器29cが開くと、吊り荷がバケット29bから投下される。
【0038】
昇降ウインチ30は、山91に、より具体的には機械室81内に設置されている。昇降ウインチ30は、巻き揚げケーブル30aの巻き取り・繰り出しにより巻き揚げケーブル30aに張力を与えることによって、吊り具29を昇降させる。昇降ウインチ30は、巻き揚げケーブル30aが巻回されるドラムと、そのドラムを駆動するモーターと、を有する。
【0039】
第1位置計測器31は、横行トロリー22に取り付けられている。第1位置計測器31は、複数の衛星から衛星波を受信することによって、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)の測位法に従って横行トロリー22の三次元的な位置を計測する。第1位置計測器31によって計測される位置は、三次元の直交座標系によって表現される。例えば、直交座標系におけるX座標は、緯度又は経度のどちらか一方が距離に換算されたものであり、Y座標は、他方が距離に換算されたものであり、Z座標は、高度(標高)である。第1位置計測器31は、短い周期で周期的に横行トロリー22の位置を計測するとともに、計測のたびに計測位置を制御装置40へ無線又は有線により転送する。
【0040】
第2位置計測器32は、吊り具29、具体的にはブロック29aに取り付けられている。第2位置計測器32は、第1位置計測器31と同様に、GNSSの測位法に従って短周期で周期的に吊り具29の位置を計測するとともに、計測のたびに計測位置を制御装置40へ無線又は有線により転送する。第2位置計測器32によって計測される位置の座標系は、第1位置計測器31によって計測される位置の座標系と共通している。
【0041】
なお、位置計測器31,32は、GNSSの測位法による計測器に限るものではない。例えば、位置計測器31,32は、山91、山92又は谷93に設置された追尾型光学的測量器であってもよい。この場合、第1位置計測器31は、横行トロリー22に追尾するよう横行トロリー22を光学的に視準することによって、横行トロリー22の三次元的な位置を計測し、第2位置計測器32も第1位置計測器31と同様に、光学的な視準により吊り具29の三次元的な位置を計測する。
【0042】
制御装置40及び操縦器41は、施工現場全体、つまり谷93全体を俯瞰できる場所、例えば山91,92の中腹又は頂上の管理室に設置されている。制御装置40は、コンピューター及び各種の電気回路を有する。制御装置40は、有線又は無線により位置計測器31,32と通信して、位置計測器31,32によって計測された横行トロリー22及び吊り具29の位置を取得する。
【0043】
制御装置40は、有線又は無線によりウインチ23,28,30及び開閉器29cのドライブ回路に接続され、ドライブ回路を通じてウインチ23,28,30及び開閉器29cを制御する。制御装置40が第1ウインチ23を制御することによって、横行トロリー22が主索21に沿って移動するとともに、横行トロリー22の速度及び加速度が制御される。制御装置40が第2ウインチ28を制御することによって、主索21の端及び走行トロリー27が軌索26に沿って移動する。制御装置40が昇降ウインチ30を制御することによって、吊り具29が昇降する。制御装置40が開閉器29cを制御することによって、開閉器29cが開閉する。
【0044】
なお、制御装置40による第1ウインチ23の制御は、開ループ制御と閉ループ制御のどちらであってもよい。開ループ制御とは、制御装置40が第1ウインチ23の回転速度及び回転加速度等を監視することなく、第1ウインチ23の回転速度及び回転加速度を制御することをいう。閉ループ制御とは、制御装置40がロータリーエンコーダ等によって第1ウインチ23の回転速度及び回転加速度と横行トロリー22の位置等を監視しながら、第1ウインチ23の回転速度及び回転加速度を制御することをいう。制御装置40によるウインチ28,30の制御も、開ループ制御と閉ループ制御のどちらであってもよい。
【0045】
操縦器41は、ウインチ23,28,30及び開閉器29cを遠隔操作するために利用される。操縦器41は、操作レバー、足踏みペダル、ハンドル、押しボタン、ジョイスティック及びスイッチ等のような入力デバイスを有する。作業員が操縦器41に対して操作を行うと、操縦器41が操作内容に従った信号を制御装置40に出力し、制御装置40がその信号に従ってウインチ23,28,30及び開閉器29cを制御する。これにより、ウインチ23,28,30及び開閉器29cが遠隔操作される。なお、通常、ケーブルクレーン10は制御装置40によって自動運転され、作業員が操縦器41を用いてケーブルクレーン10を補助的に手動運転する。
【0046】
[4. ケーブルクレーンの動作]
制御装置40がウインチ23,28,30及び開閉器29cを制御することに伴うケーブルクレーン10の動作について説明する。併せて、ケーブルクレーン10を用いて、吊り荷としての生コンクリートを運搬する方法について説明する。併せて、ケーブルクレーン10を用いて、構造物99を施工する方法について説明する。
【0047】
(1) 積み替え場所の調整
制御装置40が第2ウインチ28を作動させることによって、走行トロリー27が軌索26に沿って移動する。これにより、主索21の端が軌索26に沿って変位し、積み替え場所P1の位置がバンカー軌道12に沿って調整される。走行トロリー27の移動の際にウインチによって主索21の巻き取り・繰り出しが行われることによって、主索21の長さ及び張力が走行トロリー27から第1の塔24までの距離に合わせて適切に調整されてもよい。
【0048】
(2) 吊り具の積み替え場所への移動
制御装置40が第1ウインチ23を作動させることによって、横行トロリー22が主索21に沿って山91及び走行トロリー27の方へ移動する。併せて、制御装置40が昇降ウインチ30を作動させることによって、吊り具29が下降する。そして、横行トロリー22が積み替え場所P1の上方にまで移動したら、制御装置40が第1ウインチ23を停止させる。更に、吊り具29が積み替え場所P1まで下降したら、制御装置40が昇降ウインチ30を停止させる。制御装置40が昇降ウインチ30を停止させるタイミングは、制御装置40が第1ウインチ23を停止させるタイミングと同時であってよい。
【0049】
この際、運搬車13が生コンクリートをバッチャープラント11から積み替え場所P1まで運搬する。
【0050】
(3) 積み替え
制御装置40が開閉器29cを制御することによって、開閉器29cが閉じる。そして、運搬車13が積み替え動作をすることによって、生コンクリートが運搬車13から吊り具29のバケット29bに積み替えられる。
【0051】
(4) 運搬先への生コンクリートの運搬
図4は、吊り具29が積み替え場所P1から運搬先P2まで移動する際の吊り具29の軌跡を示した図である。
図4において、吊り具29の軌跡が丸印により示されている。
【0052】
運搬先P2は、生コンクリートが運搬される目的地をいう。積み替え場所P1から鉛直上方に向かって主索21と交差する箇所P3を出発地P3という。運搬先P2から鉛直直上に向かって主索21と交差する箇所P4を目的地P4という。三次元の直交座標系における積み替え場所P1、運搬先P2、出発地P3及び目的地P4の位置は、構造物99の設計データなどから決まる既知データである。つまり、制御装置40は、積み替え場所P1、運搬先P2、出発地P3及び目的地P4のXYZ座標を予め記憶している。
【0053】
生コンクリートの積み替え後、制御装置40が第1ウインチ23の回転速度を漸増するよう第1ウインチ23を加速制御することによって、横行トロリー22が加速しながら出発地P3から目的地P4の方へ移動する。横行トロリー22の加速中の横行トロリー22の加速度は一定であってもよいし、時間経過に伴って漸増してもよい。また、制御装置40が、位置計測器31,32によって計測された横行トロリー22の計測位置及び吊り具29の計測位置に基づいて吊り具29の振れ角度θ [rad] 及びその角速度ω [rad/s]を算出するとともに、振れ角度θ及び角速度ωに基づいて第1ウインチ23の速度及び加速度を調整してもよい。調整された第1ウインチ23の速度及び加速度は、吊り具29の振れの相殺に寄与する。ここで、振れ角度θは、
図3に示すように、位置検出部31を通る鉛直線と、位置検出部31及び位置検出部32を通る直線とが成す角度である。角速度ωは、振れ角度θを時間で微分することによって算出される。
横行トロリー22の移動開始と同時に、制御装置40が昇降ウインチ30を作動させることによって、吊り具29が上昇する。
【0054】
吊り具29が横行トロリー22の近くまで上昇したら、制御装置40が昇降ウインチ30を停止させる。また、第1ウインチ23の速度が第1所定値まで上昇したら、制御装置40が第1ウインチ23の回転速度を第1所定値に維持するよう第1ウインチ23を定速制御する。そのため、横行トロリー22が一定の速度V1[m/s] で移動する。横行トロリー22の定速移動中では、吊り具29が横行トロリー22からほぼ鉛直に吊り下げられる。なお、横行トロリー22の定速移動の前の加速中に第1ウインチ23及び横行トロリー22の加速度が制御装置40によって振れ角度θ及び角速度ωに基づいて制御されたため、横行トロリー22の運動が加速運動から定速運動に切り替わった時には、吊り具29の振れが止まる。
【0055】
横行トロリー22の定速移動中、制御装置40が昇降ウインチ30を作動させることによって、吊り具29が下降する。
【0056】
横行トロリー22の定速移動中、制御装置40が横行トロリー22から目的地P4までの距離を監視する。具体的には、制御装置40は、第1位置計測器31によって計測された横行トロリー22の計測位置を第1位置計測器31から取得する度に、横行トロリー22の計測位置と目的地P4の位置とに基づいて、横行トロリー22から目的地P4までの距離を算出するとともに、その距離を閾値と比較する。ここで、閾値は、一定の値ではなく、第1ウインチ23の回転速度、つまり横行トロリー22の速度から決まる正の値であり、制御装置40が横行トロリー22の速度から閾値を算出する。つまり、閾値を求める式は横行トロリー22の速度の関数であり、例えば、横行トロリー22の速度が高いほど、制御装置40によって算出される閾値が高い。
図4に示されるTh [m] は閾値の値である。
【0057】
比較の結果、横行トロリー22から目的地P4までの距離が閾値Thに到達しなければ、制御装置40が第1ウインチ23の定速制御を継続する。
比較の結果、横行トロリー22から目的地P4までの距離が閾値Thに到達したら、制御装置40が第1ウインチ23の減速制御を開始する。以下に、
図5~
図7を参照して、減速制御について詳細に説明する。
図5は、横行トロリー22の速度V [m/s] の変化を示したグラフである。
図5において、横軸は横行トロリー22から目的地P4までの距離L [m] を表し、縦軸は横行トロリー22の速度Vを表す。
図6は、横行トロリー22から目的地P4までの距離Lと目標値C [rad] の関係と、距離Lと振れ角度θ [rad] の関係とを示したグラフである。
図7は、横行トロリー22から目的地P4までの距離Lと目標値C [rad] の関係を示したグラフである。
図6及び
図7において、横軸は横行トロリー22から目的地P4までの距離L [m] を表し、縦軸は目標値C及び振れ角度θを表す。
【0058】
横行トロリー22から目的地P4までの距離が閾値Thに到達したら、制御装置40が第1ウインチ23の回転速度を第1所定値から第2所定値まで立ち下げる。これにより、横行トロリー22の速度Vが速度V1[m/s] から速度V2 [m/s] に急低下することから、吊り具29及び生コンクリートが横行トロリー22を支点とした振り子の運動をする。ここで、並進運動する横行トロリー22から懸下された吊り具29及び生コンクリートを剛体振り子とした場合、横行トロリー22及び剛体振り子からなる系の運動方程式は、次のように表される。
【0059】
【0060】
この運動方程式は横行トロリー22の加速度と剛体振り子の振れ角度との関係を記述していることから、横行トロリー22の速度及び加速度の制御によって剛体振り子の振れ角度を制御できることがわかる。剛体振り子、つまり吊り具29の振れ角度を制御するべく、制御装置40が以下のような処理を行う。
【0061】
横行トロリー22から目的地P4までの距離が閾値に到達した以降、制御装置40は、位置計測器31,32から横行トロリー22の計測位置及び吊り具29の計測位置を取得する度に、以下の振れ角度算出処理、目標値算出処理、比較処理及び減速度調整処理を行う。
【0062】
振れ角度算出処理では、制御装置40が、位置計測器31,32によって計測された横行トロリー22の計測位置及び吊り具29の計測位置に基づいて、吊り具29の振れ角度θ [rad] を算出する。更に、制御装置40が、吊り具29の振れ角度θを時間微分することによって、角速度ωを算出する。
【0063】
目標値算出処理では、制御装置40が、横行トロリー22の計測位置に基づいて、目標値C [rad] を算出する。より具体的には、制御装置40が、横行トロリー22の計測位置と目的地P4の位置とに基づいて横行トロリー22から目的地P4までの距離を算出した上で、その距離から目標値Cを算出する。
図6又は
図7に示すように、目標値Cは、横行トロリー22から目的地P4までの距離から決まる正の値である。つまり、目標値Cを求める式は横行トロリー22から目的地P4までの距離の関数であり、その距離が短いほど、制御装置40によって算出される目標値Cが低くなる。
図6に示す例では、制御装置40は、横行トロリー22から目的地P4までの距離に対応する目標値Cを、正の比例定数によって定められる線形一次関数の式から算出する。
図7に示す例では、制御装置40は、横行トロリー22から目的地P4までの距離に対応する目標値Cを、縦軸と横軸によって定義されるグラフにおいて原点を通って下に凸の曲線を描く関数の式から算出する。
【0064】
比較処理では、制御装置40が、振れ角度算出処理で算出した振れ角度θと、目標値算出処理で算出した目標値Cを比較する。
【0065】
減速度調整処理では、制御装置40が、比較処理の比較結果に従って第1ウインチ23の減速度を調整する。減速度とは、負の加速度の絶対値のことをいう。従って、減速度が大きいほど、単位時間当たりの速度の減少量が大きい。
【0066】
減速度調整処理について具体的に説明する。
振れ角度θが目標値Cに等しければ、制御装置40が第1ウインチ23の減速度を維持させるように第1ウインチ23の回転速度を減速するため、横行トロリー22が等減速度運動の並進をする。
【0067】
振れ角度θが目標値Cよりも大きければ、制御装置40が第1ウインチ23の減速度を減少させるように第1ウインチ23の回転速度を減速するため、横行トロリー22の減速度が減少する。そのため、吊り具29は、その振れ角度が目標値Cに近づくように振れる。なお、振れ角度θと目標値Cの差の絶対値が大きいほど、制御装置40が減少させる第1ウインチ23の減速度の減少量が大きくてもよい。
【0068】
振れ角度θが目標値Cよりも小さければ、制御装置40が第1ウインチ23の減速度を増加させるように第1ウインチ23の回転速度を減速するため、横行トロリー22の減速度が増加する。そのため、吊り具29は、その振れ角度が目標値Cに近づくように振れる。なお、振れ角度θと目標値Cの差の絶対値が大きいほど、制御装置40が増加させる第1ウインチ23の減速度の増加量が大きくてもよい。
【0069】
以後、横行トロリー22が目的地P4に到達するまで、制御装置40は、位置計測器31,32から計測位置を取得する度に、振れ角度算出処理、目標値算出処理、比較処理及び減速度調整処理を行う。
【0070】
なお、横行トロリー22から目的地P4までの距離が閾値Thに到達した時から
図6に示す交点Pのように振れ角度θが目標値Cに到達する時までは、制御装置40が減速度調整処理を行うことなく横行トロリー22の速度を単に漸減させてもよいし、横行トロリー22の速度を速度V2 [m/s] に維持してもよい。また、横行トロリー22から目的地P4までの距離が閾値Thに到達した時から角速度ωがゼロになる時までは、制御装置40が減速度調整処理を行うことなく横行トロリー22の速度を単に漸減させてもよいし、横行トロリー22の速度を速度V2 [m/s] に維持してもよい。
【0071】
横行トロリー22が目的地P4に到達した時には、第1ウインチ23の回転速度は、上述のような制御装置40によってゼロになる。そのため、横行トロリー22が目的地P4で停止する。また、制御装置40が減速度調整処理により第1ウインチ23の減速度、ひいては横行トロリー22の減速度を調整するため、横行トロリー22が目的地P4に到達した時には吊り具29の振れも止まる。特に、目標値Cを求める式が
図7に示すような曲線の関数であれば、吊り具29の振れが止まる時が、横行トロリー22が目的地P4に到達した時に合いやすい。
【0072】
上述のように、制御装置40が減速制御を行っている際も、吊り具29が継続的に下降する。横行トロリー22が目的地P4に到達する時又はその少し前に、吊り具29が運搬先P2の高さにまで到達するので、制御装置40が昇降ウインチ30を停止させる。そのため、横行トロリー22が目的地P4に到達する時には、吊り具29も運搬先P2に到達する。
【0073】
(5) 投下
その後、制御装置40が開閉器29cを制御することによって、開閉器29cが開く。そのため、バケット29b内の生コンクリートがバケット29bからその下方へ投下される。なお、作業員が操縦器41を操作することによって、開閉器29cが開いてもよい。
【0074】
(6) 積み替え場所への吊り具の戻り
生コンクリートの投下後、制御装置40が第1ウインチ23の回転速度を漸増するよう第1ウインチ23を加速制御することによって、横行トロリー22が加速しながら目的地P4から出発地P3の方へ移動する。横行トロリー22の加速中の横行トロリー22の加速度は一定であってもよいし、時間経過に伴って漸増してもよい。
【0075】
横行トロリー22の移動開始と同時に、制御装置40が昇降ウインチ30を作動させることによって、吊り具29が上昇する。
【0076】
吊り具29が横行トロリー22の近くまで上昇したら、制御装置40が昇降ウインチ30を停止させる。また、第1ウインチ23の速度が第1所定値まで上昇したら、制御装置40が第1ウインチ23の回転速度を第1所定値に維持するよう第1ウインチ23を定速制御する。
【0077】
横行トロリー22が出発地P3に近づいたら、制御装置40が第1ウインチ23の回転速度を漸減するよう第1ウインチ23を減速制御する。そのため、横行トロリー22が減速しながら出発地P3の方へ移動する。また、制御装置40が昇降ウインチ30を作動させることによって、吊り具29が下降する。
【0078】
横行トロリー22が出発地P3に到達した時には、制御装置40が第1ウインチ23を停止させる。横行トロリー22が出発地P3に到達する時又はその少し前に、吊り具29が積み替え場所P1の高さにまで到達するので、制御装置40が昇降ウインチ30を停止させる。そのため、横行トロリー22が出発地P3に到達する時には、吊り具29も積み替え場所P1に到達する。
【0079】
以後、上述のような「(3) 積み替え」、「(4) 目的地への生コンクリートの運搬」、「(5) 投下」及び「(6) 積み替え場所への吊り具の戻り」が繰り返されることによって、生コンクリートが次々に谷93に運搬されて投下される。
【0080】
[5. 有利な効果]
横行トロリー22が目的地P4へ移動する際に、横行トロリー22から目的地P4までの距離が閾値Th以下になったら、横行トロリー22が減速されて、横行トロリー22の減速度が調整される。具体的には、計測された吊り具29の振れ角度θが目標値Cに等しければ、横行トロリー22の減速度が維持され、振れ角度θが目標値Cよりも大きければ、横行トロリー22の減速度が減少し、振れ角度θが目標値Cよりも小さければ、横行トロリー22の減速度が増加する。それゆえ、横行トロリー22の減速中に吊り具29が下降して、吊り具29及吊り荷の重心から横行トロリー22までの距離が変化しても、吊り具29の振れ角度θが目標値Cに収束される。そのため、横行トロリー22が目的地P4に到達した時には、吊り具29の振れも止まる。
【0081】
図6及び
図7に示すように、目標値Cを求める式は横行トロリー22から目的地P4までの距離の関数であり、横行トロリー22が目的地P4に近づくにつれて、目標値Cが低く算出される。そのような目標値Cと振れ角度θの比較結果に従って横行トロリー22の減速度が調整されるため、横行トロリー22が目的地P4に到達した時には、吊り具29の振れも止まる。
【0082】
横行トロリー22が目的地P4へ移動する際に吊り具29が下降し、横行トロリー22が目的地P4に到達した時には吊り具29の振れも止まる。よって、横行トロリー22が目的地P4に到達した直後に、生コンクリートをバケット29bからその下方へ投下することができる。1回当たりのコンクリートの打設サイクルが短く、構造物99の施工工期の短期化も実現できる。
【符号の説明】
【0083】
20 ケーブルクレーン
21 主索
22 横行トロリー
23 第1ウインチ(駆動装置)
29 吊り具
31 第1位置計測器
32 第2位置計測器
40 制御装置