(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104775
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電気光学装置の駆動回路、電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G09G 3/3233 20160101AFI20240730BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 611H
G09G3/20 642A
G09G3/20 680A
G09G3/20 623R
G09G3/20 622A
G09G3/20 624B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009119
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 剛
【テーマコード(参考)】
5C080
5C380
【Fターム(参考)】
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD05
5C080FF11
5C080FF12
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ06
5C080KK07
5C080KK49
5C380AA01
5C380AB06
5C380AB18
5C380AB21
5C380AB31
5C380AB34
5C380AC02
5C380AC10
5C380AC12
5C380BA19
5C380BA39
5C380BA40
5C380BB02
5C380CA04
5C380CA12
5C380CA27
5C380CA32
5C380CA33
5C380CB01
5C380CC04
5C380CC07
5C380CC26
5C380CC33
5C380CC39
5C380CC63
5C380CC72
5C380CD014
5C380CE05
5C380CF13
5C380CF21
5C380CF31
5C380CF43
5C380CF48
5C380CF51
5C380CF52
5C380DA02
5C380DA05
5C380DA32
5C380EA11
5C380FA02
5C380FA22
5C380GA09
(57)【要約】
【課題】データ線に寄生する容量に起因する表示ムラを抑える。
【解決手段】第1動作において、トーナメント回路82では、選択信号Sel_1a、Sel_1b、Sel2~Sel7に応じていずれか1列のデータ線14が選択されて、選択したデータ線14の電圧がアンプを介してテスト出力端子に出力される。第2動作において、トーナメント回路82の1階層目の選択回路821が、すべてのデータ線14と2階層目の選択回路822の入力端との間でオフ状態になる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1階調データをアナログの信号に変換して第1データ線に供給する第1変換回路と、
第2階調データをアナログの信号に変換して第2データ線に供給する第2変換回路と、
第3階調データをアナログの信号に変換して第3データ線に供給する第3変換回路と、
第4階調データをアナログの信号に変換して第4データ線に供給する第4変換回路と、
第1選択回路、第2選択回路および第3選択回路を含むトーナメント回路と、
テスト出力端子と、
を含み、
第1動作において、
前記第1選択回路は、
前記第1データ線または前記第2データ線を選択して、前記第3選択回路における一方の入力端に電気的に接続し、
前記第2選択回路は、
前記第3データ線または前記第4データ線を選択して、前記第3選択回路における他方の入力端に電気的に接続し、
前記第3選択回路は、
前記一方の入力端または前記他方の入力端を選択し、所定条件を満たす場合に、前記トーナメント回路の出力とし、
前記テスト出力端子には、前記トーナメント回路の選択に基づく電圧が表れ、
第2動作において、
前記第1選択回路は、
前記第1データ線および前記第2データ線の双方を、前記第3選択回路における一方の入力端と電気的に非接続とし、
前記第2選択回路は、
前記第3データ線および前記第4データ線の双方を、前記第3選択回路における他方の入力端と電気的に非接続とする
電気光学装置の駆動回路。
【請求項2】
前記第1選択回路は、
前記第1データ線と前記第3選択回路における一方の入力端との間で、第1選択信号に基づいてオン状態またはオフ状態になる第1スイッチング素子と、
前記第2データ線と前記第3選択回路における一方の入力端との間で、第2選択信号に基づいてオン状態またはオフ状態になる第2スイッチング素子と、
を含み、
前記第2選択回路は、
前記第3データ線と前記第3選択回路における他方の入力端との間で、前記第1選択信号に基づいてオン状態またはオフ状態になる第3スイッチング素子と、
前記第4データ線と前記第3選択回路における他方の入力端との間で、前記第2選択信号に基づいてオン状態またはオフ状態になる第4スイッチング素子と、
を含む
請求項1に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項3】
前記トーナメント回路で選択された信号を増幅して、前記テスト出力端子に供給するアンプを含む、
請求項2に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項4】
前記トーナメント回路は、p(pは2以上の整数)個であり、
前記テスト出力端子は、q(qはq<pを満たす整数)個であり、
前記p個のトーナメント回路に基づく信号のうち、q個を選択して、
前記q個のテスト出力端子に一対一に電気的に接続するスイッチ回路を含む
請求項1に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項5】
前記p個のトーナメント回路で選択された信号を増幅して、前記p個のトーナメント回路に基づく信号として出力するq個のアンプを含む
請求項4に記載の電気光学装置の駆動回路。
【請求項6】
請求項1に記載の電気光学装置の駆動回路は、
走査線を選択する走査線駆動回路を含み、
前記走査線および前記第1データ線の交差に対応して設けられ、前記走査線が選択されたときの第1データ線の電圧に応じて発光する発光素子を含む第1画素回路と、
前記走査線および前記第2データ線の交差に対応して設けられ、前記走査線が選択されたときの第2データ線の電圧に応じて発光する発光素子を含む第2画素回路と、
前記走査線および前記第3データ線の交差に対応して設けられ、前記走査線が選択されたときの第3データ線の電圧に応じて発光する発光素子を含む第3画素回路と、
前記走査線および前記第4データ線の交差に対応して設けられ、前記走査線が選択されたときの第4データ線の電圧に応じて発光する発光素子を含む第4画素回路と、
を有する電気光学装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気光学装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の駆動回路、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばOLEDのような発光素子を用いて各種の表示をする電気光学装置が知られている。OLEDは、Organic Light Emitting Diodeの略である。電気光学装置では、発光素子に電流を流すためのトランジスターなどを含む画素回路が表示画像の各画素に対応して設けられる。当該トランジスターは、輝度レベルに応じた電流を発光素子に供給する。これにより、発光素子、当該電流に応じた輝度で発光する。
【0003】
上記電気光学装置においてトランジスターのゲートノードには、輝度に応じた電圧がデータ線を介して印加される。より具体的には、輝度を指定するデータがDA変換回路によってアナログの電圧に変換され、当該変換された電圧がデータ線を介して、トランジスターのゲートノードに印加される。
このようなDA変換回路としては、例えば各ビットに対応してスイッチおよび容量素子の組を設けて、各ビットに応じて容量素子に蓄積された電荷の充放電をスイッチにより制御して、データ線に出力する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、データ線に出力されたデータ線の電圧を検査するための検査回路等が、走査線駆動回路やDA変換回路とともに設けられる点も一般的である(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-341125号公報
【特許文献2】特開2005-227505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、データ線に寄生する容量がデータ線毎に異なっていると、データ線に出力される電圧も異なってしまい、表示ムラの原因になる、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る電気光学装置は、第1階調データをアナログの信号に変換して第1データ線に供給する第1変換回路と、第2階調データをアナログの信号に変換して第2データ線に供給する第2変換回路と、第3階調データをアナログの信号に変換して第3データ線に供給する第3変換回路と、第4階調データをアナログの信号に変換して第4データ線に供給する第4変換回路と、第1選択回路、第2選択回路および第3選択回路を含むトーナメント回路と、テスト出力端子と、を含み、第1動作において、前記第1選択回路は、前記第1データ線または前記第2データ線を選択して、前記第3選択回路における一方の入力端に電気的に接続し、前記第2選択回路は、前記第3データ線または前記第4データ線を選択して、前記第3選択回路における他方の入力端に電気的に接続し、前記第3選択回路は、前記一方の入力端または前記他方の入力端を選択し、所定条件を満たす場合に、前記トーナメント回路の出力とし、前記テスト出力端子には、前記トーナメント回路の選択に基づく電圧が表れ、第2動作において、前記第1選択回路は、前記第1データ線および前記第2データ線の双方を、前記第3選択回路における一方の入力端と電気的に非接続とし、前記第2選択回路は、前記第3データ線および前記第4データ線の双方を、前記第3選択回路における他方の入力端と電気的に非接続とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る電気光学装置の斜視図である。
【
図2】電気光学装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】電気光学装置における表示領域の等価回路を示す図である。
【
図5】電気光学装置におけるDA変換回路の等価回路を示す図である。
【
図8】検査回路におけるトーナメント回路を示す図である。
【
図9】トーナメント回路における初段選択回路を示す図である。
【
図10】トーナメント回路における非初段選択回路を示す図である。
【
図11】電気光学装置における表示動作を示すタイミングチャートである。
【
図12】比較例に係る電気光学装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図13】第2実施形態に係る電気光学装置の検査回路を示す図である。
【
図14】電気光学装置を用いたヘッドマウントディスプレイを示す斜視図である。
【
図15】ヘッドマウントディスプレイの光学構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る電気光学装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
図1は、実施形態に係る電気光学装置10を示す斜視図である。電気光学装置10は、例えばヘッドマウントディスプレイなどにおいて画像を表示するマイクロ・ディスプレイ・パネルである。電気光学装置10は、発光素子を含む画素回路や、当該画素回路を駆動する駆動回路、検査回路などを含む。画素回路、駆動回路および検査回路は半導体基板に集積化される。半導体基板は、典型的にはシリコン基板であるが、他の半導体基板であってもよい。
【0010】
電気光学装置10は、表示領域100で開口する枠状のケース192に収納される。電気光学装置10は、FPC基板194の一端に接続される。なお、FPCとは、Flexible Printed Circuitsの略称である。FPC基板194の他端には、図示省略されたホスト装置に接続される複数の端子196が設けられる。複数の端子196がホスト装置に接続されると、電気光学装置10には、当該ホスト装置からFPC基板194を介して映像データや同期信号などが供給される。
なお、図において、X方向は、電気光学装置10における走査線の延在方向を示し、Y方向は、データ線の延在方向を示す。X方向およびY方向で定まる二次元平面が半導体基板の基板面である。Z方向は、X方向およびY方向に垂直であって、発光素子から発せられる光の出射方向である。
【0011】
図2は、電気光学装置10の電気的な構成を示すブロック図であり、
図3は、電気光学装置10の表示領域における画素回路の配列を示す図である。
図2に示されるように、電気光学装置10は、制御回路20、データ信号出力回路40、初期化回路60、検査回路80、表示領域100および走査線駆動回路120に大別される。
表示領域100では、例えば1080行の走査線12が図においてX方向に沿って設けられ、5856(=1952×3)列のデータ線14が、Y方向に沿って、かつ、各走査線12と互いに電気的に絶縁を保つように設けられる。
【0012】
画素回路110R、110Gおよび110Bは、1080行で配列する走査線12と、5856列で配列するデータ線14とに対応して次のように設けられる。詳細には、赤の画素回路110Rが、i行目の走査線12と(3j-2)列目のデータ線14との交差に対応して設けられる。緑の画素回路110Gは、i行目の走査線12と(3j-1)列目のデータ線14との交差に対応して設けられる。青の画素回路110Bは、i行目の走査線12と(3j)列目のデータ線14との交差に対応して設けられる。
なお、iは、1以上1080以下の整数であり、走査線12を一般化して説明する場合に用いられる。また、jは、1以上1952以下の整数であり、カラー画素の配列およびデータ線14を一般化して説明する場合に用いられる。
【0013】
画素回路110Rは、出射される光に赤色成分を含む発光素子を含み、画素回路110Gは、出射される光に緑色成分を含む発光素子を含み、画素回路110Bは、出射される光に青色成分を含む発光素子を含む。行が同一であって互いに隣り合う画素回路110R、110Gおよび画素回路110Bから出射する光の加法混色によって1個のカラーが表現される。したがって、本実施形態は、カラー画素でみれば、縦1080行×横1952列でマトリクス配列する画像を表示することになる。
【0014】
画素回路110R、110Gおよび110Bは、カラーの1画素のうち、赤色成分、緑色成分、青色成分を順に表現するので、厳密にいえばサブ画素回路と呼ぶべきものであるが、本説明では便宜的に画素回路と呼ぶことにする。
また、画素回路110R、110Gおよび110Bの電気的な回路構成は互いに同一であるので、色を特定しないで一般的に説明する場合には、画素回路の符号を単に110として説明する。
【0015】
制御回路20は、ホスト装置から供給される映像データVidや同期信号Syncに基づいて各部を制御する。映像データVidは、縦1080×横1952列で配列するカラー画素の各階調レベルをR、G、B毎に例えば8ビットで指定する。
同期信号Syncには、映像データVidの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、映像データの1画素分のタイミングを示すドットクロック信号が含まれる。
【0016】
ホスト装置から供給される映像データVidにおいて階調レベルで示される明るさの特性と、画素回路110に含まれるOLEDの輝度の特性とは、必ずしも一致しない。そこで、制御回路20は、映像データVidで指定される階調レベルに対応した輝度でOLEDを発光させるために、映像データVidの8ビットを、本実施形態では例えば10ビットにアップコンバージョンして、映像データVdataとして出力する。このため、10ビットの映像データVdataは、映像データVidで指定される階調レベルに対応したデータになる。
【0017】
アップコンバージョンには、入力である映像データVidの8ビットと、出力である映像データVdataの10ビットとの対応関係を予め記憶したルックアップテーブルが用いられる。また、制御回路20は、各部を制御するために各種の制御信号を生成するが、詳細については後述する。
【0018】
走査線駆動回路120は、各種の信号を出力して、制御回路20による制御にしたがって、1080行5856列で配列する画素回路110を1行毎に駆動するための回路である。例えば、走査線駆動回路120は、1、2、3、…、1079、1080行目の走査線12に、順に走査信号/Gwr(1)、/Gwr(2)、…、/Gwr(1079)、/Gwr(1080)を供給する。一般的には、i行目の走査線12に供給される走査信号が/Gwr(i)と表記される。走査線駆動回路120は、走査信号/Gwr(1)~/Gwr(1080)の他にも各種の制御信号を出力するが、詳細については後述する。
【0019】
データ信号出力回路40は、データ線14に一対一に対応して設けられるDA変換回路41を含む。DA変換回路41は、走査線駆動回路120によって選択された行に位置する画素回路110に向けてデータ信号を出力する。具体的には、DA変換回路41は、10ビットの映像データVdataをアナログのデータ信号に変換して、データ信号出力線14cに出力する。
初期化回路60は、データ線14に一対一に対応して設けられたスイッチ回路61を含む。スイッチ回路61は、データ信号が出力される前に、データ線14や、データ信号出力線14c、OLED等を初期化する。
なお、DA変換回路41およびスイッチ回路61の詳細については後述する。
【0020】
検査検査回路80は、5856列のデータ線14に出力されたデータ信号を検査するための回路である。検査回路80の詳細については後述するが、検査動作において、5856列のうち、検査対象のデータ線14を特定するための信号を入力する一方で、検査対象のデータ線14に印加されたデータ信号の電圧を出力する。
なお、本実施形態において、検査動作は、
図1に示される状態ではなく、例えばダイシング前のウェハー状態で実行される。このため、検査の対象になるデータ線14が、半導体基板に設けられたテストパッドを介して、電気光学装置10の外部のテスターから指示される。一方で、検査対象のデータ線14に印加されたデータ信号の電圧は、上記テスト出力端子およびテスターのプローブを介して出力される。
【0021】
図4は、i行目に位置する任意の1個の画素回路110を示す回路図である。画素回路110は、OLED130と、p型のトランジスター121~124と、容量素子140とを含む。トランジスター121~124は、例えばMOS型である。なお、MOSとは、Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistorの略称である。
また、i行目の画素回路110には、走査信号/Gwr(i)のほか、制御信号/Gel(i)、/Gcmp(i)が、走査線駆動回路120から供給される。
【0022】
制御信号/Gel(i)とは、1、2、…、1079、1080行目に対応して順に供給される制御信号/Gel(1)、/Gel(2)、…、/Gel(1079)、/Gel(1080)を一般化して表記したものである。同様に、制御信号/Gcmp(i)は、1、2、…、1079、1080行目に対応して順に供給される制御信号/Gcmp(1)、/Gcmp(2)、…、/Gcmp(1079)、/Gcmp(1080)を一般化して表記したものである。
【0023】
OLED130は、画素電極131と共通電極133とで発光機能層132を挟持した発光素子である。画素電極131はアノードとして機能し、共通電極133はカソードとして機能する。なお、共通電極133は光透過性を有する。OLED130において、アノードからカソードに向かって電流が流れると、アノードから注入された正孔とカソードから注入された電子とが発光機能層132で再結合して励起子が生成され、白色光が発生する。
【0024】
発生した白色光は、例えば図示省略された反射層と半反射半透過層とで構成された光共振器にて共振し、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかの色に対応して設定された共振波長で出射する。光共振器から光の出射側には当該色に対応したカラーフィルターが設けられる。したがって、OLED130からの出射光は、光共振器およびカラーフィルターによる着色を経て、観察者に視認される。なお、光共振器およびカラーフィルターは図では省略されている。また、電気光学装置10が単に明暗のみの単色画像を表示する場合には、上記カラーフィルターが省略される。
【0025】
i行目の画素回路110において、トランジスター121のゲートノードgがトランジスター122のドレインノードに電気的に接続される。当該トランジスター121のソースノードsが、電位Velが供給される給電線116に電気的に接続され、トランジスター121のドレインノードdがトランジスター123のソースノードおよびトランジスター124のソースノードに電気的に接続される。
なお、本説明において「電気的に接続され」または単に「接続され」とは、2以上の要素間の直接的または間接的な接続または結合を意味し、例えば半導体基板において2以上の要素間が直接的ではなくても、異なる配線層およびコンタクトホールを介して結合されることも含む。
【0026】
容量素子140にあっては、一端がトランジスター121のゲートノードgに電気的に接続され、他端が給電線116に電気的に接続される。このため、容量素子140は、トランジスター121におけるゲートノードgおよびソースノードsの間の電圧を保持する。
なお、容量素子140の他端は、給電線116以外であっても、電位がほぼ一定に保たれていればよいので、他の電位の給電線に電気的に接続されてもよい。
【0027】
本実施形態において、容量素子140として、例えば、トランジスターの半導体層(下部の電極)とゲートノード層(上部の電極)とでトランジスターのゲート絶縁層を挟持することによって形成される、いわゆるMOS容量が用いられる。なお、容量素子140としては、トランジスター121のゲートノードgの寄生容量を用いてもよいし、半導体基板において互いに異なる導電層で絶縁層を挟持することによって形成される、いわゆるメタル容量を用いてもよい。
【0028】
i行目の画素回路110において、トランジスター122のゲートノードがi行目の走査線12に電気的に接続され、トランジスター122のソースノードが当該画素回路110に対応するデータ線14に電気的に接続される。
i行目の画素回路110において、トランジスター123のゲートノードには、制御信号/Gcmp(i)が供給され、トランジスター123のドレインノードが当該画素回路110に対応するデータ線14に電気的に接続される。
i行の画素回路110において、トランジスター124にあっては、ゲートノードには、制御信号/Gel(i)が供給され、トランジスター124のドレインノードがOLED130のアノードである画素電極131に電気的に接続される。
【0029】
なお、トランジスター122、123および124では、電流が流れる方向が反転すると、ソースノードとドレインノードとが入れ替わるが、本説明では、ソースノードとドレインノードとについて上述した通りとする。
【0030】
図5は、データ信号出力回路40において任意の1列分のDA変換回路41を示す図である。
DA変換回路41には、選択される走査線12と当該DA変換回路41に対応する列のデータ線14との交差に位置する画素回路110であって、当該画素回路110に対応した映像データVdataの10ビットが後述する出力期間(書込期間)に供給される。具体的には、例えば(3j-2)列目のDA変換回路41には、i行目の水平走査期間の書込期間において、i行(3j)列のカラー画素のうち、Rの成分である映像データVdataの10ビットが供給される。
便宜的に、出力期間に供給される映像データVdataの10ビットのうち、最下位ビットをD0とし、以降、2位ビットから最上位ビットまでを、順にD1~D9とする。出力期間以外では、ビットD0~D9はLレベルにされる。
なお、本説明においてLレベルは電位Gndであり、Hレベルは例えば電位Velである。
【0031】
DA変換回路41には、制御信号Rstが制御回路20から供給され、電位Vrst、VL、VPLおよびVPHが図示省略された電源回路から給電される。制御信号Rstは、各列のDA変換回路41にわたって共通であり、電位Vrst、VL、VPLおよびVPHについても、各列のDA変換回路41にわたって共通である。
なお、電位VPLおよびVPHに分けているが、実施形態では便宜的にVPL=VPHとして説明する。また、電位VL、VPLおよびVPHは、VL<VPL=VPHという関係にある。
【0032】
DA変換回路41は、容量素子C0~C9、Cser、スイッチRswおよび選択回路410~419を含む。容量素子C0~C9と選択回路410~419とは、各ビットに対応するように、次のように対をなす。詳細には、ビットD0に対応して選択回路410と容量素子C0とが対をなし、ビットD1に対応して選択回路411と容量素子C1とが対をなし、以下同様にして、ビットD9に対応して選択回路419と容量素子C9とが対をなす。
【0033】
下位ビットに対応する選択回路410~414は、対応するビットが「0」に対応するLレベルであれば電位VLを選択し、対応するビットが「1」に対応するHレベルであれば電位VPLを選択する単極双投スイッチであり、当該選択した電位を、対応する容量素子の一端に供給する。
また、上位ビットに対応する選択回路415~419は、対応するビットが「0」に対応するLレベルであれば電位VLを選択し、対応するビットが「1」に対応するHレベルであれば電位VPHを選択する単極双投スイッチであり、当該選択した電位を、対応する容量素子の一端に供給する。
【0034】
例えばビットD0に対応する選択回路410は、ビットD0が「1」であれば(Hレベルであれば)電位VPLを選択し、ビットD0が「0」であれば(Lレベルであれば)電位VLを選択して、当該選択した電位を容量素子C0の一端に供給する。また例えばビットD6に対応する選択回路416は、ビットD6が「1」であれば(Hレベルであれば)電位VPHを選択し、ビットD6が「0」であれば(Lレベルであれば)電位VLを選択して、当該選択した電位を容量素子C6の一端に供給する。
【0035】
容量素子C0~C9の容量値は、本実施形態では次のような比に設定される。詳細には、容量素子C0の容量値を「1」とすると、容量素子C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9の容量値は、この順で「2」、「4」、「8」、「16」、「1」、「2」、「4」、「8」、「16」である。
【0036】
なお、ビットD0~D9の重みは、全体の10ビットとして考えれば、順に「1」、「2」、「4」、「8」、「16」、「32」、「64」、「128」、「256」、「512」である。このため、容量素子C0~C9の容量値は、重み通りにはなっていない。ただし、ビットD0~D9を下位のビットD0~D4と上位のビットD5~D9とに分けた場合に、ビットD5~D9のうち、ビットD5を最下位ビットとし、重みを「1」とみなせば、ビットD5~D9の重みが順に「1」、「2」、「4」、「8」、「16」になる。
【0037】
また、容量素子Cserの容量値は実施形態では「1」である。なお、容量素子C0~C9およびCserの容量値については、後述する出力電圧の線形性が保たれるのであれば、ある程度の誤差が許容される。実施形態では、画素回路110における容量素子140としてMOS容量が用いられるので、容量素子C0~C9およびCserについてもMOS容量が用いられるのが好ましい。なお、容量素子C0~C9およびCserについてメタル容量が用いられてもよい。
【0038】
容量素子C0~C9のうち、下位5ビットに対応する容量素子C0~C4の他端は、容量素子Cserの一端に電気的に接続される。便宜的に、容量素子C0~C4の他端と容量素子Cserの一端との接続線を中継線14bとする。
また、容量素子C0~C9のうち、上位5ビットに対応する容量素子C5~C9の他端は、DA変換回路41の出力端であるデータ信号出力線14cと容量素子Cserの他端とに電気的に接続される。
【0039】
スイッチRswは、電位Vrstの給電線と中継線14bとの間で、制御信号Rstにしたがってオン状態またはオフ状態になる。詳細には、スイッチRswは、制御信号RstがHレベルであればオン状態になり、制御信号RstがLレベルであればオフ状態になる。
本説明において、スイッチ、トランジスターまたはトランスミッションゲートの「オン状態」とは、スイッチの両端、トランジスターにおけるソースノード・ドレインノードの間、または、トランスミッションゲートの両端が電気的に閉じて低インピーダンス状態になることをいう。また、スイッチ、トランジスターまたはトランスミッションゲートの
「オフ状態」とは、スイッチの両端、ソースノード・ドレインノードの間、または、トランスミッションゲートの両端が電気的に開いて高インピーダンス状態になることをいう。
【0040】
なお、
図5においては、任意の1列分のDA変換回路41について説明したが、他の列に対応するDA変換回路41についても同様な構成である。
図5は、あくまでも電気的な構成のみを示し、DA変換回路41を構成する要素の実際の位置や配列を示してはいない。また、ある特定のデータ線14に対応したDA変換回路41について説明する場合、データ線14と同様に、整数jを用いて説明することがある。
【0041】
DA変換回路41の動作は、リセット期間と出力期間とに分けられる。なお、DA変換回路41のリセット期間は、後述する電気光学装置10の動作期間のうちの初期化期間(A1)から補償期間(B)までに相当し、DA変換回路41の出力期間は、電気光学装置10の動作期間の書込期間(C)に相当する。
DA変換回路41では、リセット期間において、スイッチRswがオン状態になり、ビットD0~D9が書込期間以外では「0」になるので、選択回路410~419が電位VLを選択する。また、リセット期間では、後述するように出力端であるデータ信号出力線14cが、電位Viniになる。このため、容量素子C0~C9には容量値に応じた電荷が蓄積される。
【0042】
DA変換回路41において出力期間では、選択回路410~414が、対応するビットが「0」であれば電位VLを選択し、対応するビットが「1」あれば電位VPLを選択する。また、出力期間では選択回路415~419が、対応するビットが「0」であれば電位VLを選択し、対応するビットが「1」であれば電位VPHを選択する。このため、出力期間の終期では、選択回路410~419は、順にビットD0~D9に応じて電位VLまたはVPL/VPHを選択することになる。
【0043】
すなわち、出力期間では、容量素子C0~C9の一端における電圧が、ビットD0~D9に応じて変化する(高められる)か、または、維持される、のどちらかになる。このため、容量素子C0~C9のうち、一端の電圧が変化した容量素子C0~C9の他端では、蓄積された電荷の放電により、リセット期間の終期における電圧から、容量値に応じて電圧だけ上昇する。
【0044】
上位ビットに対応した容量素子C5~C9の他端では、容量値に応じてデータ信号出力線14cの電圧を上昇させる。これに対して下位ビットに対応した容量素子C0~C4の他端は、データ信号出力線14cとは容量素子Cserを介して接続されるので、容量素子C0~C4の他端である中継線14bの電圧変化は、容量素子C0~C4およびCserにより定まる比で圧縮されて、データ信号出力線14cの電圧を変化させる。この比を圧縮比kと表記すると、この圧縮比kは、次式(1)で表される。
k=Cser/(Cser+C0+C1+C2+C3+C4)…(1)
なお、圧縮比kは、実施形態では、1/32(=1/(1+1+2+4+8+16))である。
【0045】
ここで、
図5において、容量素子C5~C9と選択回路515~519とを含む回路を 上位変換回路Upbと呼ぶ。当該上位変換回路Upbは、ビットD5~D9に対応する電圧をデータ信号出力線14cに出力する。
同様に、容量素子C0~C4と選択回路510~514とを含む回路を下位変換回路Lwbと呼ぶ。当該下位変換回路Lwbは、ビットD0~D4に対応する電圧を中継線14bに出力する。ただし、中継線14bの電圧変化は、圧縮比kの1/32に圧縮されて、データ信号出力線14cに出力される。
このため、仮にビットD0~D4がビットD5~D9とこの順で同じであっても、下位変換回路Lwbによるデータ信号出力線14cの電圧変化は、上位変換回路Upbによるデータ信号出力線14cの電圧変化の1/32になる。
したがって、DA変換回路41は、データ信号出力線14cを、リセット期間の終期における電圧(電位Vini)から、出力期間においてビットD0~D9の重みに応じた電圧だけ変化させることになる。
【0046】
図6は、初期化回路60において3列分のスイッチ回路61を示す図である。なお、当該3列を(3j-2)列、(3j-1)列および(3j)列とする。
各列のスイッチ回路61は、p型のトランジスター611、614と、n型のトランジスター612と、トランスミッションゲート613との集合体である。トランジスター611、612、614と、トランスミッションゲート613を構成するトランジスターは、画素回路110におけるトランジスター121~124と同様なMOS型である。
【0047】
例えば(3j-2)列に着目すると、当該列のスイッチ回路61におけるトランジスター611のゲートノードには制御信号/Drstが供給される。制御信号/Drstは、制御回路20によって各列で共通に供給される。トランジスター611のソースノードは電位Velの給電線に電気的に接続され、トランジスター611のドレインノードは当該(3j-2)列目のデータ線14に電気的に接続される。
【0048】
(3j-2)列目のスイッチ回路61におけるトランジスター612のゲートノードには制御信号Grstが供給される。制御信号Grstは、制御回路20によって各列で共通に供給される。トランジスター612のソースノードは電圧ゼロの基準である電位Gndに接地され、トランジスター612のドレインノードは当該(3j-2)列目のデータ線14に電気的に接続される。
【0049】
(3j-2)列目のスイッチ回路61におけるトランスミッションゲート613は、当該(3j-2)列目のデータ信号出力線14cと当該(3j-2)列目のデータ線14との間に設けられ、制御信号Gopおよび/Gopにしたがってオン状態またはオフ状態になる。制御信号Gopおよび/Gopは、論理レベルが互いに排他的な関係にあり、制御回路20によって各列で共通に供給される。制御信号GopがHレベルであって制御信号/GopがLレベルであれば、トランスミッションゲート613がオン状態になり、制御信号GopがLレベルであって制御信号/GopがHレベルであれば、トランスミッションゲート613がオフ状態になる。
【0050】
(3j-2)列目のスイッチ回路61におけるトランジスター614のゲートノードには制御信号/Giniが供給される。制御信号/Giniは、制御回路20によって各列で共通に供給される。トランジスター614のソースノードは電位Viniの給電線に電気的に接続され、トランジスター614のドレインノードは当該(3j-2)列目のデータ信号出力線14cに電気的に接続される。
なお、電位Viniは、画素回路110においてトランジスター121のゲートノードgおよびソースノードsの間の電圧が当該トランジスター121の閾値電圧Vthであるときのゲートノードgの電位(Vel-Vth)よりも低くなるように設定される。
【0051】
図7は、検査回路80を示す図である。
本実施形態では、5856列のデータ線14が、122列毎にグループ化される。各グループには、トーナメント回路82、アンプ84およびテスト出力端子88の1組が対応して設けられる。
【0052】
1個のトーナメント回路82は、122列のデータ線14のうち、いずれか1列のデータ線14を、選択信号にしたがって選択する。なお、当該選択信号を供給する回路構成は図示省略されている。
【0053】
アンプ84は、トーナメント回路82によって選択されたデータ線14の信号を増幅する。データ線14の出力インピーダンスは高いので、わずかな負荷の接続によって当該データ線14の電圧が大きく変動してしまう。このため、データ線14から出力される信号を、アンプ84によって電圧ゲインを「1」として電流増幅して、すなわちデータ線の14の出力インピーダンスを低インピーダンスに変換して、出力する。アンプ84によって電流増幅された信号は、テスト出力端子88に出力される。このような、トーナメント回路82、アンプ84およびテスト出力端子88は、48組(=5856÷122)設けられる。
【0054】
なお、トーナメント回路82、アンプ84およびテスト出力端子88の48組は、X方向に沿って配列する。このため、トーナメント回路82、アンプ84またはテスト出力端子88について、組を特定して説明する場合には、左から数えて何番目という呼び方にする。
【0055】
図8は、検査回路80における1個のトーナメント回路82を示す図である。トーナメント回路82は、トーナメント形式でデータ線14を選択する選択回路821~827を含む。なお、トーナメント形式で選択するとは、2つの入力のいずれかを順次階層的に選択し、最後に1つの入力を選択することをいう。
本実施形態においてトーナメント回路82では、二者択一が階層的に7回実行される。すなわち、1階層目の選択が64個の選択回路821で実行され、2階層目の選択が32個の選択回路822で実行され、3階層目の選択が16個の選択回路823で実行され、以降、同様にして7階層目の選択が1個の選択回路827で実行される。換言すれば、選択回路821~827は、それぞれ2個の入力端を有し、このうち、選択回路821~826の出力端が、1つ上の階層の選択回路における2個の入力端のうち、いずれかに電気的に接続され、選択回路827の出力端がアンプ84の入力端に電気的に接続される。
【0056】
64個の各選択回路821は、配線S1aを介して供給される選択信号Sel_1aと、配線S1bを介して供給される選択信号Sel_1bの論理レベルに応じて、いずれかの入力端を選択する、または、双方の入力端を非選択とする。
64個の選択回路821のうち、61個の選択回路821の一方の入力端には、隣り合う2列のデータ線14のうち、奇数列のデータ線14が電気的に接続され、他方の入力端には、偶数列のデータ線14が電気的に接続される。64個のうち、残りの3個の選択回路821の入力端は、図において×印で示されるように、データ線14に非接続である。
【0057】
32個の各選択回路822は、配線S2を介して供給される選択信号Sel_2の論理レベルに応じて、いずれかの入力端を選択する。以下同様に、16個の各選択回路823は、配線S3を介して供給される選択信号Sel_3の論理レベルに応じて、いずれかの入力端を選択し、8個の各選択回路824は、配線S4を介して供給される選択信号Sel_4の論理レベルに応じて、いずれかの入力端を選択し、4個の各選択回路825は、配線S5を介して供給される選択信号Sel_5の論理レベルに応じて、いずれかの入力端を選択し、2個の各選択回路826は、配線S6を介して供給される選択信号Sel_6の論理レベルに応じて、いずれかの入力端を選択し、1個の選択回路827は配線S7を介して供給される選択信号Sel_7の論理レベルに応じて、いずれかの入力端を選択する。
【0058】
なお、選択信号Sel_1a、Sel_1b、Sel_2~Sel_7は、着目した1個のトーナメント回路82のみならず、他の47個のトーナメント回路82にも共通に供給される。
また、
図8において、選択回路821には、選択信号Sel_1aおよびSel_1bのみが供給されているが、実際には、次の
図9に示されるように、選択信号Sel_1aの論理レベルを反転した選択信号/Sel_1aと、選択信号Sel_1bの論理レベルを反転した選択信号/Sel_1bと、が供給される。同様に、選択回路822~827には、順に選択信号/Sel_2~/Sel_7も供給される。選択信号/Sel_2~/Sel_7は、選択信号Sel_2~Sel_7の論理レベルを反転した信号である。
【0059】
また、1個のトーナメント回路82において、64個の選択回路821はX方向に沿って配列する。このため、選択回路821を特定して説明する場合には、左から数えて何番目という呼び方にする。
同様に、選択回路822~826は、各階層においてX方向に沿って配列する。このため、選択回路822~826を特定して説明する場合には、同様に、左から数えて何番目という呼び方にする。
【0060】
図9は、1階層目における64個の選択回路821のうち、データ線14に接続される任意の1個の選択回路821の構成を示す図である。
選択回路821には、選択信号Sel_1a、/Sel_1a、Sel_1bおよび/Sel_1bが順に配線S1a、/S1a、S1bおよび/S1bを介して供給される。選択信号/Sel_1aは、選択信号Sel_1aの論理レベルをNOT回路Inv_1aによって反転した信号であり、選択信号/Sel_1bは、選択信号Sel_1bの論理レベルをNOT回路Inv_1bによって反転した信号である。
【0061】
選択回路821は、トランスミッションゲートSwaおよびSwbを有する。トランスミッションゲートSwaの入力端は、隣り合う2列のデータ線14のうち、奇数列のデータ線14に電気的に接続され、トランスミッションゲートSwbの入力端は、当該2列のうち、偶数列のデータ線14に電気的に接続される。
トランスミッションゲートSwaの出力端およびトランスミッションゲートSwbの出力端は共通接続されて、当該接続端が、2階層目の選択回路822における2個の入力端のうち、いずれかに電気的に接続される。
なお、64個の選択回路821のうち、データ線14と非接続である3個の選択回路821についても、トランスミッションゲートSwaの入力端およびトランスミッションゲートSwbの入力端がデータ線14と非接続となる点以外、他の選択回路821と同様な構成である。
【0062】
図10は、2階層目における32個の選択回路822のうち、任意の1個の選択回路822の構成を示す図である。
選択回路822には、選択信号Sel_2および/Sel_2が順に配線S2および/S2を介して供給される。選択信号/Sel_2は、選択信号Se2の論理レベルをNOT回路Inv_1aによって反転した信号である。
【0063】
選択回路822は、トランスミッションゲートSwcおよびSwdを有する。トランスミッションゲートSwcの入力端は、隣り合う2列のうち、奇数番目の選択回路821の出力端に電気的に接続され、トランスミッションゲートSwdの入力端は、2列のうち、偶数番目の選択回路821の出力端に電気的に接続される。
トランスミッションゲートSwcの出力端およびトランスミッションゲートSwdの出力端は共通接続されて、当該接続端が、3階層目の選択回路823における2個の入力端のうち、いずれかに電気的に接続される。
【0064】
3階層目における16個の選択回路823、4階層目における8個の選択回路824、5階層目における4個の選択回路825、6階層目における2個の選択回路826および7階層目における1個の選択回路827についても、選択信号が異なる以外、選択回路822と同様な構成である。
【0065】
なお、検査動作においてテスターが接続されて、データ線14に出力されたデータ信号を検査する場合を除き、図示省略された構成によって、配線S1aおよび配線S1bはLレベルに固定され、配線/S1aおよび配線/S1bはHレベルに固定される。また、データ線14に出力されたデータ信号を検査する場合を除き、配線S2~S7は、LまたはHレベルに固定される。
【0066】
電気光学装置10の動作については、5856列のデータ線14に出力される電圧を検査する検査動作と、映像データVinで指定される映像を表示する表示動作と、に分けられる。説明の便宜上、先に検査動作について説明する。
【0067】
電気光学装置10の検査動作では、テスターによる指示にしたがって選択信号Sel_1a、Sel1b、Sel2~Sel_7が供給される。また、48個のテスト出力端子88の各々には、プローブが接触して、テスト出力端子88からプローブを介して出力される電圧がテスターによって測定される。
【0068】
検査動作において、制御回路20は、各列のDA変換回路41に対し、リセット期間の動作をさせた後に、出力期間の動作をさせる。具体的には、制御回路20は、制御信号RstをHレベルにして、スイッチRswをオン状態にさせ、GopをLレベル(制御信号/GopをHレベル)にして、トランスミッションゲート613をオフ状態にさせるとともに、ビットD0~D9をすべて「0」にして、選択回路410~419に電位VLを選択させる(リセット期間)。
この後、制御回路20は、制御信号RstをLレベルにして、スイッチRswをオフ状態にさせ、制御信号GopをHレベル(制御信号/GopをLレベル)にして、トランスミッションゲート613をオン状態にさせるとともに、ビットD0~D9として所定値(例えばすべて「1」)を供給する(出力期間)。
これにより、5856列のデータ線14には、それぞれビットD0~D9で示される所定値に応じた電圧が出力される。
【0069】
一方、テスターは、122列のうち、検査の対象とする1列のデータ線14を指示する。この指示された1列のデータ線14を選択するための選択信号Sel_1a、Sel1b、Sel2~Sel_7が生成され、当該選択信号Sel_1a、Sel1b、Sel2~Sel_7によって当該1列のデータ線14が選択される。
選択されたデータ線14の電圧は、アンプ84で増幅されてテスト出力端子88から出力される。このため、テスターは、選択されたデータ線14から出力された電圧が所定値に対応する電圧の範囲以内であるか否かをチェックする。
このようなチェックを、テスターは、122列のデータ線14を順番に指示しながら、かつ、48個のテスト出力端子88から出力される電圧について、それぞれ実行することで、5856列のデータ線14に出力された電圧をチェックする。
【0070】
次に、電気光学装置10における表示動作について説明する。
【0071】
図11は、表示動作を説明するためのタイミングチャートである。
表示動作においては、テスターが非接続であるので、配線S1_aおよび配線S1_bは常時Lレベルであり、配線/S1_aおよび配線/S1_bは常時Hレベルである。
【0072】
電気光学装置10では、表示動作において、1080の走査線12が1フレーム(V)の期間に1、2、…、1079、1080行目という順番で1行ずつ走査される。
本説明において1フレーム(V)の期間とは、映像データVidで指定される画像の1コマを表示するのに要する期間をいう。1フレーム(V)の期間の長さは、垂直同期期間と同じであれば、例えば同期信号Syncに含まれる垂直同期信号の周波数が60Hzであれば、当該垂直同期信号の1周期分に相当する16.7ミリ秒である。また、水平走査期間(H)とは、1~1080行目の走査線12が順に走査される時間の間隔である。
【0073】
電気光学装置10の表示動作において、1つの水平走査期間(H)は、主に初期化期間(A)、補償期間(B)および書込期間(C)の3つの期間に分けられる。初期化期間(A)は、3つ初期化期間(A1)、(A2)および(A3)に分けられる。また、画素回路110の動作としては、上記3つの期間とは別に、さらに発光期間(D)が加わる。
【0074】
水平走査期間(H)における動作についてi行目を例にとって説明する。また、画素回路110については、i行目における任意の1列の画素回路110を例にとって説明する。
【0075】
i行目の初期化期間(A1)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルであり、制御信号/Gcmp(i)がHレベルであり、制御信号/Gel(i)がHレベルである。このため、i行目の画素回路110では、トランジスター122がオン状態であり、トランジスター123がオフ状態であり、トランジスター124がオフ状態である。
【0076】
また、初期化期間(A1)では、制御信号/DrstがLレベルであり、制御信号GrstがLレベルであり、制御信号GopがLレベル(制御信号/GopがHレベル)であり、制御信号/GiniがLレベルである。このため、初期化期間(A1)では、トランジスター611がオン状態であり、トランジスター612がオフ状態であり、トランスミッションゲート613がオフ状態であり、トランジスター614がオン状態である。
【0077】
したがって、データ信号出力線14cは電位Viniになり、データ線14は電位Velになる。i行目の画素回路110においてトランジスター122がオン状態であるので、当該画素回路のトランジスター121のゲートノードgは電位Velになって、当該トランジスター121におけるソースノードおよびドレインノードは強制オフ状態になる。
【0078】
なお、DA変換回路41において、初期化期間(A1)では、制御信号GrstがHレベルであるので、スイッチRswがオン状態になり、また、トランジスター614のオン状態によってデータ信号出力線14cが電位Viniになる。ビットD0~D9が「0」であるので、選択回路410~419の各々は電位VLを選択し、これによりで、容量素子C0~C9には容量値に応じた電荷が蓄積される。
【0079】
i行目の初期化期間(A2)では、走査信号/Gwr(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gcmp(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がLレベルに変化する。このため、i行目の画素回路110では、トランジスター122がオフ状態に変化し、トランジスター123がオン状態に変化し、トランジスター124がオン状態に変化する。
【0080】
また、初期化期間(A2)では、制御信号/DrstがHレベルに変化し、制御信号GrstがHレベルに変化し、制御信号GopがLレベル(制御信号/GopがHレベル)を維持し、制御信号/GiniがLレベルを維持する。このため、初期化期間(A2)では、トランジスター611がオフ状態に変化し、トランジスター612がオン状態に変化し、トランスミッションゲート613がオフ状態を維持し、トランジスター614がオン状態を維持する。
【0081】
したがって、データ信号出力線14cは電位Viniを維持し、データ線14は電位Gndになる。i行目の画素回路110においてトランジスター123および123がオン状態になるので、OLED130のアノードである画素電極131は、トランジスター124、123、データ線14およびトランジスター612を順に介して、電位Gndにリセットされる。なお、画素電極131をリセットするのは、OLED130には容量が寄生するので、直前の発光期間に印加された電圧の影響を排除するためである。
【0082】
i行目の初期化期間(A3)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gcmp(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルに変化する。このため、i行目の画素回路110では、トランジスター122がオン状態に変化し、トランジスター123がオフ状態に変化し、トランジスター124がオフ状態に変化する。
【0083】
また、初期化期間(A3)では、制御信号/DrstがHレベルを維持し、制御信号GrstがLレベルに変化し、制御信号GopがHレベル(制御信号/GopがLレベル)に変化し、制御信号/GiniがLレベルを維持する。このため、初期化期間(A3)では、トランジスター611がオフ状態を維持し、トランジスター612がオフ状態に変化し、トランスミッションゲート613がオン状態に変化し、トランジスター614がオン状態を維持する。
【0084】
したがって、データ信号出力線14cは電位Viniに維持されるとともに、当該電位Viniは、トランスミッションゲート613、データ線14およびトランジスター122を順に介して、トランジスター121のゲートノードgに到達する。
なお、DA変換回路41において、初期化期間(A3)では、初期期間(A1)および(A2)の状態、すなわち容量素子C0~C9に容量値に応じた電荷の蓄積状態が維持される。
【0085】
初期化期間(A3)の終了後、補償期間(B)となる。i行目の補償期間(B)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルを維持し、制御信号/Gcmp(i)がLレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルを維持する。このため、i行目の画素回路110では、トランジスター122がオン状態を維持し、トランジスター123がオン状態に変化し、トランジスター124がオフ状態を維持する。
【0086】
この補償期間(B)では、オン状態のトランジスター123、データ線14およびトランジスター122を介して、トランジスター121がダイオード接続状態になるので、当該トランジスター121におけるゲートノードgおよびソースノードsの間は、当該トランジスター121の閾値電圧(近い電圧)に収束する。なお、このときのトランジスター121におけるゲートノードgおよびデータ線14の電位を閾値相当電位とする。
【0087】
また、補償期間(B)では、制御信号/DrstがHレベルを維持し、制御信号GrstがLレベルを維持し、制御信号GopがHレベル(制御信号/GopがLレベル)を維持し、制御信号/GiniがHレベルに変化する。このため、初期化期間(A3)では、トランジスター611がオフ状態を維持し、トランジスター612がオフ状態を維持し、トランスミッションゲート613がオン状態を維持し、トランジスター614がオフ状態に変化する。
【0088】
したがって、補償期間(B)の終期において、データ線14およびトランジスター121のゲートノードgにおける閾値相当電位は、トランスミッションゲート613を介して、容量素子Cserの他端および容量素子C5~C9の他端に到達する。
【0089】
なお、補償期間(B)において、容量素子C0~C9の一端は、選択回路410~419により電位VLに維持され、容量素子Cserの一端および容量素子C0~C4の他端は、スイッチRswのオン状態により、電位Vrstに維持される。
電位Vrstは、トランジスター121における平均的な閾値相当電位に設定される。このため、補償期間(B)の終期において、容量素子C0~C4の両端に印加される電圧と、容量素子C5~C9の両端に印加される電圧とは、ほぼ同じである。このため、補償期間(B)では、依然として容量素子C0~C9に容量値に応じた電荷が蓄積されるとみなしてよい。
【0090】
補償期間(B)の終了後、書込期間(C)となる。i行目の書込期間(C)では、走査信号/Gwr(i)がLレベルを維持し、制御信号/Gcmp(i)がHレベルに変化し、制御信号/Gel(i)がHレベルを維持する。このため、i行目の画素回路110では、トランジスター122がオン状態を維持し、トランジスター123がオフ状態に変化し、トランジスター124がオフ状態を維持する。
【0091】
また、書込期間(C)では、制御信号/DrstがHレベルを維持し、制御信号GrstがLレベルを維持し、制御信号GopがHレベル(制御信号/GopがLレベル)を維持し、制御信号/GiniがHレベルを維持する。このため、初期化期間(A3)では、トランジスター611がオフ状態を維持し、トランジスター612がオフ状態を維持し、トランスミッションゲート613がオン状態を維持し、トランジスター614がオフ状態を維持する。
【0092】
ただし、各列のDA変換回路41では、制御信号RstがLレベルに変化するので、スイッチRswがオフ状態に変化する。また、書込期間(C)では、ビットD0~D9が映像データVdataに対応した値となる。
【0093】
選択回路410~414のうち、供給されたビットが「1」である選択回路は、電位VPLを選択し、ビットが「0」である選択回路は、電位VLを選択する。また、選択回路415~419のうち、ビットが「1」である選択回路は、電位VPHを選択し、ビットが「0」である選択回路は、電位VLを選択する。
【0094】
書込期間(C)において、容量素子C0~C9のうち、「0」のビットに対応する容量素子の一端は、補償期間(B)から電圧変化しないので、データ信号出力線14c、さらにはオン状態にあるトランスミッションゲート613を介したデータ線14の電圧上昇には寄与しない。
上位5ビットに対応する容量素子C5~C9のうち、「1」のビットに対応する容量素子の一端は、書込期間(C)において電位VLから電位VPHに変化する。このため、容量素子C5~C9のうち、「1」のビットに対応する容量素子が、データ線14を、補償期間(B)における閾値相当電位から、当該容量値の重みに応じた分、上昇させる。
下位5ビットに対応する容量素子C0~C4のうち、「1」のビットに対応する容量素子の一端は、書込期間(C)において電位VLから電位VPLに変化する。ただし、容量素子C0~C4の他端は、容量素子C5~C9の他端とは異なり、データ線14とは容量素子Cserを介している。このため、容量素子C0~C4のうち、「1」のビットに対応する容量素子の一端における電位VLから電位VPLへの変化分は、圧縮比k(上述した例であれば1/32)で圧縮されて、データ線14の電圧を上昇させる。
【0095】
このように、書込期間(C)において、例えば(3j-2)列のDA変換回路41は、(3j-2)列のデータ線14を、閾値相当電位から、i行(3j-2)列の映像データVdataに応じた電圧、すなわちi行(3j-2)列のOLEDの輝度を指定する電圧の分だけ上昇させる。
【0096】
i行目の書込期間(C)では、i行目の画素回路110においてトランジスター122がオン状態であるので、当該データ線14の電位は、トランジスター121のゲートノードgに到達して、容量素子140によって保持される。
また、i行目の書込期間(C)では、i行目の画素回路110ではトランジスター124のオフ状態が引き続き継続する。
【0097】
走査信号/Gwr(i)がHレベルに変化したときに、i行目の書込期間(C)が終了する。走査信号/Gwr(i)がHレベルになると、i行目の画素回路110ではトランジスター122がオフ状態になるが、ゲートノードgの電位と電位Velとの差の電圧は、容量素子140に保持される。
【0098】
書込期間(C)の終了後、発光期間(D)になる。i行目の発光期間(D)に至ると、制御信号/Gel(i)がLレベルに反転するので、トランジスター124がオン状態になる。このため、OLED130には、容量素子140によって保持された電圧に応じた電流がトランジスター121によって流れる。このため、当該OLED130が、当該電流に応じた光学状態、すなわち輝度で発光した状態になる。
【0099】
なお、
図11は、i行目の走査線12の選択終了後、発光期間(D)が連続した例であるが、制御信号/Gel(i)がLレベルになる期間は、間欠的であってもよいし、輝度調整に応じて調整されてもよい。
また、発光期間(D)における制御信号/Gel(i)のレベルについては、補償期間(B)におけるLレベルより上昇させてもよい。すなわち、発光期間(D)における制御信号/Gel(i)のレベルについては、HレベルとLレベルとの中間的なレベルを用いてもよい。
【0100】
図11においては、i行目の水平走査期間(H)において、ある1列に対応するDA変換回路41と、i行目であって当該列に対応する画素回路110について着目して説明したが、他の列に対応するDA変換回路41および画素回路110についても同様な動作が実行される。
また、
図11においては、i行目の水平走査期間(H)について着目し、当該水平走査期間(H)の動作について説明したが、同様な動作は、1、2、3、…、1079、1080行目の水平走査期間(H)について順次実行される。
【0101】
画素回路110において、書込期間(C)および発光期間(D)において、トランジスター121におけるゲートノードgの電位は、補償期間(B)における閾値相当電位から、当該画素回路110の階調レベルに応じて変化させた電位である。同様な動作が他の画素回路110でも実行されるので、実施形態では、1080行5785列のすべての画素回路110にわたってトランジスター121の閾値が補償された状態で、OLED130に階調レベルに応じた電流が流れることになる。したがって、本実施形態では、輝度のばらつきが小さくなる結果、高品位な表示が可能になる。
【0102】
ここで、説明の便宜上、実施形態に対する比較例について説明する。比較例では、端的にいえば、検査回路80における1階層目の選択回路821が、2階層目の選択回路822から7階層目の選択回路827までと同様な選択回路に置き換えられた構成である。
比較例では、検査動作において、特に図示しないが、選択信号Sel_1~Sel_7がテスターによって指示される構成になる。一方、表示動作では、テスターから選択信号Sel_1~Sel_7がテスターによって指示されないので、不定になる、または、選択信号Sel_1~Sel_7がLまたはHレベルで固定される、あるいは、特定の1列だけを選択する選択信号Sel_1~Sel_7が供給される。
【0103】
このような構成の比較例では、表示動作において、例えば同じ映像データVdata(ビットD0~D9が同じ)が、すべての画素回路110に共通に供給された場合、すなわち、いわゆるベタ表示する場合、
図12に示されるように、Y方向に沿って表示ムラが122列周期で発生する。この原因について検討する。
【0104】
比較例では、1階層目の選択回路が2列のうち、いずれかのデータ線14を選択し、2階層目の選択回路822が、1階層目の2個の選択回路のうち、いずれかを選択し、以下同様に、7階層目の選択回路827が、6階層目の2個の選択回路826のうち、いずれかを選択する。
1階層目の選択回路で非選択のデータ線14は、当該選択回路の入力端で遮断されるのに対し、1階層目の選択回路で選択されたデータ線14は、2階層目の選択回路822の入力端まで延長される。
このため、選択されたデータ線14の実質的な経路長は、非選択のデータ線14の経路長よりも長くなってしまう。なお、ここでいうデータ線14の実質的な経路長とは、データ線14単体のみならず、トーナメント回路82において選択されて電気的に接続される配線までを含む。
2階層目の選択回路822で非選択のデータ線14は、当該選択回路822の入力端で遮断されるのに対し、2階層目の選択回路822で選択されたデータ線14は、さらに3階層目の選択回路823の入力端まで延長される。以下同様に、7階層目の選択回路827で非選択のデータ線14は、当該選択回路827の入力端で遮断されるのに対し、7階層目の選択回路827で選択されたデータ線14は、アンプ84の入力端まで延長される。
【0105】
このように、比較例では、表示動作において、7階層の選択回路による選択に応じて、データ線14の実質的な経路長が異なってしまう。データ線14には容量が寄生するので、経路長が異なれば、データ線14に寄生する容量もデータ線14毎に異なってしまう。
特に本実施形態のDA変換回路41のように、リセット期間において容量素子C0~C9に蓄積された電荷を、出力期間において、ビットD0~D9に応じて持ち上げてデータ信号出力線14c(データ線14)に出力する構成では、出力先であるデータ線14に寄生する容量が異なっていれば、ビットD0~D9が同じ(階調レベルが同じ)であっても、出力期間におけるデータ線14の電位がデータ線14毎に異なってしまい、これが表示ムラとなって表れる。
48個のトーナメント回路82において122列のデータ線14が選択されるパターンは同じであるので、表示ムラは、122列周期で表れることになる。
【0106】
これに対して、本実施形態では、表示動作においては、配線S1_aおよび配線S1_bが常時Lレベルであり、配線/S1_aおよび配線/S1_bは常時Hレベルであるので、1階層目の選択回路821において、トランスミッションゲートSwa、Swbがいずれもオフ状態になる。1個のトーナメント回路82では、122列のデータ線14が、選択回路821の入力端で遮断され、他の47個のトーナメント回路82でも同様にデータ線14が、選択回路821の入力端で遮断される。このため、本実施形態では、表示動作において、5856列のデータ線14における実質的な経路長が揃えられる。
したがって、本実施形態によれば、表示動作において5856列のデータ線14に寄生する容量が揃うので、
図12に示されるような表示ムラを抑えることができる。
【0107】
テスターの種類、形式等によっては、同時に測定する電圧数が制限されることがある。例えば、同時に測定可能な電圧数が第1実施形態のように「48」ではなく、より少数の、例えば「4」である場合がある。そこで、同時に測定可能な電圧数が、例えば「4」であるテスターであっても、5856列のデータ線14から出力される電圧を測定することが可能な第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態に係る電気光学装置10は、第1実施形態とは、検査回路80の構成が相違するだけで、他の要素は同一である。そこで、第2実施形態は、検査回路80を主に説明することにする。
【0108】
図13は、第2実施形態に係る電気光学装置10の検査回路80を示す図である。第2実施形態の検査回路80では、図において左から順に、トーナメント回路82およびアンプ84が4個毎にグループ化される。このため、トーナメント回路82の個数が第1実施形態と同じ48個であれば、グループ数は「12」である。第2実施形態では、テスト出力端子88が4個であり、各テスト出力端子88に配線87が電気的に接続される。
第2実施形態では、12個のグループに一対一に対応してスイッチ回路85が設けられる。12個のスイッチ回路85には、左から順に選択信号Sctl_1~Sct_12が例えばテスターから供給され、1個のスイッチ回路85は、4個のスイッチを含む。1個のスイッチ回路85に含まれる4個のスイッチは、対応する選択信号がHレベルであれば一斉にオン状態になり、Lレベルであれば一斉にオフ状態になる。
【0109】
各スイッチの一端はアンプ84の出力端に接続され、各スイッチの他端は、4本の配線87のうち、次の関係にある1本の配線87に接続される。詳細には、1個のグループに属する4個のトーナメント回路82のうち、左から数えて1個目に対応するアンプ84の出力端に一端が接続されたスイッチの他端は、1番目の配線87に接続される。左から数えて2個目に対応するアンプ84の出力端に一端が接続されたスイッチの他端は、2番目の配線87に接続される。同様に、左から数えて3個目に対応するアンプ84の出力端に一端が接続されたスイッチの他端は、3番目の配線87に接続され、左から数えて4個目に対応するアンプ84の出力端に一端が接続されたスイッチの他端は、4番目の配線87に接続される。
【0110】
検査動作においてテスターは、12個のグループのうち、1個を選択し、選択したグループへの選択信号のみをHレベルにする。例えばテスターは、左から数えて1番目のグループを選択する場合、選択信号Sct_1~Sct_12のうち、選択信号Sct_1のみをHレベルとし、他の選択信号Sct_2~Sct_12をLレベルにする。
テスターは、1つのグループを選択している期間において、選択信号Sel_1a、Sel_1b、Sel2~Sel_7によって、122列のうち、1列のデータ線14を選択する。選択されたデータ線14の電圧は、アンプ84で増幅されてテスト出力端子88から出力される。このため、テスターは、選択したデータ線14から出力された電圧が所定の範囲以内であるか否かをチェックする。このチェックを、122列のデータ線14を順番に選択しながら、かつ、4個のテスト出力端子88から出力される電圧について、それぞれ実行する。
さらに、このような動作を、テスターは、12個のグループを順番に1個ずつ選択しながら繰り返すことで、5856列のデータ線14に出力された電圧が所定の範囲以内であるか否かをチェックする。
【0111】
第2実施形態によれば、テスターが同時に測定する電圧数が「48」よりも小さい「4」であっても、5856列のデータ線14から出力される電圧が測定可能になる。
なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、表示動作において5856列のデータ線14に寄生する容量が揃うので、
図12に示されるような表示ムラを抑えることができる。
【0112】
上述した第1実施形態および第2実施形態(以下、実施形態等と呼ぶ)では、以下のように種々の変形または応用が可能である。
【0113】
実施形態等において、発光素子の一例としてOLED130を例示して説明したが、他の発光素子を用いてもよい。例えば発光素子としてLEDを用いてもよいし、照明機構を併用した液晶素子であってもよい。すなわち、発光素子としては、データ線14の電圧に応じた光学状態になる電気光学素子であればよい。
実施形態等では、DA変換回路41として10ビットの変換例を示したが、これに限られない。
【0114】
実施形態等では、画素回路110におけるトランジスター121の閾値電圧を補償する構成としたが、閾値電圧を補償しない構成、具体的にはトランジスター123が省略された構成にしてもよい。
トランジスター121~124、611、612、614のチャネル型は、実施形態等に限定されない。また、これらのトランジスター121~124、611、612、614は、適宜トランスミッションゲートに置き換えてもよい。その逆にトランスミッションゲート613、Swa、Swb、Swc、Swdについては、一方のチャネル型のトランジスターに置き換えてもよい。
【0115】
次に、実施形態等に係る電気光学装置10を適用した電子機器について説明する。電気光学装置10は、画素が小サイズで高精細な表示な用途に向いている。そこで、電子機器として、ヘッドマウントディスプレイを例に挙げて説明する。
【0116】
図14は、ヘッドマウントディスプレイの外観を示す図であり、
図15は、その光学的な構成を示す図である。
まず、
図14に示されるように、ヘッドマウントディスプレイ300は、外観的には、一般的な眼鏡と同様にテンプル310や、ブリッジ320、レンズ301L、301Rを有する。また、ヘッドマウントディスプレイ300は、
図15に示されるように、ブリッジ320近傍であってレンズ301L、301Rの奥側(図において下側)には、左眼用の電気光学装置10Lと右眼用の電気光学装置10Rとが設けられる。
電気光学装置10Lの画像表示面は、
図15において左になるように配置している。これによって電気光学装置10Lによる表示画像は、光学レンズ302Lを介して図において9時の方向に出射する。ハーフミラー303Lは、電気光学装置10Lによる表示画像を6時の方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。電気光学装置10Rの画像表示面は、電気光学装置10Lとは反対の右になるように配置している。これによって電気光学装置10Rによる表示画像は、光学レンズ302Rを介して図において3時の方向に出射する。ハーフミラー303Rは、電気光学装置10Rによる表示画像を6時方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。
【0117】
この構成において、ヘッドマウントディスプレイ300の装着者は、電気光学装置10L、10Rによる表示画像を、外の様子と重ね合わせたシースルー状態で観察することができる。
また、このヘッドマウントディスプレイ300において、視差を伴う両眼画像のうち、左眼用画像を電気光学装置10Lが表示し、右眼用画像を電気光学装置10Rが表示すると、装着者に、表示された画像があたかも奥行きや立体感を持つかのように知覚させることができる。
【0118】
なお、電気光学装置10を含む電子機器については、ヘッドマウントディスプレイ300のほかにも、ビデオカメラやレンズ交換式のデジタルカメラなどにおける電子式ビューファインダー、携帯情報端末、腕時計の表示部、投写式プロジェクターのライトバルブなどにも適用可能である。
【0119】
以上に例示した形態から、例えば以下の態様が把握される。
【0120】
ひとつの態様(態様1)に係る電気光学装置の駆動回路では、第1階調データをアナログの信号に変換して第1データ線に供給する第1変換回路と、第2階調データをアナログの信号に変換して第2データ線に供給する第2変換回路と、第3階調データをアナログの信号に変換して第3データ線に供給する第3変換回路と、第4階調データをアナログの信号に変換して第4データ線に供給する第4変換回路と、第1選択回路、第2選択回路および第3選択回路を含むトーナメント回路と、テスト出力端子と、を含み、第1動作において、前記第1選択回路は、前記第1データ線または前記第2データ線を選択して、前記第3選択回路における一方の入力端に電気的に接続し、前記第2選択回路は、前記第3データ線または前記第4データ線を選択して、前記第3選択回路における他方の入力端に電気的に接続し、前記第3選択回路は、前記一方の入力端または前記他方の入力端を選択し、所定条件を満たす場合に、前記トーナメント回路の出力とし、前記テスト出力端子には、前記トーナメント回路の選択に基づく電圧が表れ、第2動作において、前記第1選択回路は、前記第1データ線および前記第2データ線の双方を、前記第3選択回路における一方の入力端と電気的に非接続とし、前記第2選択回路は、前記第3データ線および前記第4データ線の双方を、前記第3選択回路における他方の入力端と電気的に非接続とする。
態様1によれば、データ線に寄生する容量に起因する表示ムラを抑えることができる。
【0121】
検査動作が第1動作の一例であり、表示動作が第2動作の一例である。
1列目のデータ線14が第1データ線の一例であり、2列目のデータ線14が第2データ線の一例であり、3列目のデータ線14が第3データ線の一例であり、4列目のデータ線14が第4データ線の一例である。
1列目に対応するDA変換回路41が第1変換回路の一例であり、2列目に対応するDA変換回路41が第2変換回路の一例であり、3列目に対応するDA変換回路41が第3変換回路の一例であり、4列目に対応するDA変換回路41が第4変換回路の一例である。
トーナメント回路82において、1階層目であって、1列目のデータ線14および2列目のデータ線14を入力する選択回路821が第1選択回路の一例であり、3列目のデータ線14および4列目のデータ線14を入力する選択回路821が第2選択回路の一例である。また、2階層目であって
図8において左から数えて1番目の選択回路822が第3選択回路の一例である。
なお、所定条件とは、第3選択回路での選択結果が最終的にトーナメント回路の出力となる条件をいい、具体的には、2階層目であって1番目の選択回路822が、3~7階層目であって1番目の選択回路823~837によって選択されるときの条件をいう。
【0122】
態様1の具体的な態様2に係る電気光学装置の駆動回路において、前記第1選択回路は、前記第1データ線と前記第3選択回路における一方の入力端との間で、第1選択信号に基づいてオン状態またはオフ状態になる第1スイッチング素子と、前記第2データ線と前記第3選択回路における一方の入力端との間で、第2選択信号に基づいてオン状態またはオフ状態になる第2スイッチング素子と、を含み、前記第2選択回路は、前記第3データ線と前記第3選択回路における他方の入力端との間で、前記第1選択信号に基づいてオン状態またはオフ状態になる第3スイッチング素子と、前記第4データ線と前記第3選択回路における他方の入力端との間で、前記第2選択信号に基づいてオン状態またはオフ状態になる第4スイッチング素子と、を含む。
1番目の選択回路821において、トランスミッションゲートSwaが第1スイッチング素子の一例であり、トランスミッションゲートSwbが第2スイッチング素子の一例である。2番目の選択回路821において、トランスミッションゲートSwaが第3スイッチング素子の一例であり、トランスミッションゲートSwbが第4スイッチング素子の一例である。選択信号Sel_1aが第1選択信号の一例であり、選択信号Sel_1bが第2選択信号の一例である。
【0123】
態様2の具体的な態様3に係る電気光学装置の駆動回路において、前記トーナメント回路で選択された信号を増幅して、前記テスト出力端子に供給するアンプを含む。態様3によれば、データ線14の出力インピーダンスが高い場合でも、データ線14の電圧を正確に測定することができる。
【0124】
態様1の別の具体的な態様4に係る電気光学装置の駆動回路において、前記トーナメント回路は、p(pは2以上の整数)個であり、前記テスト出力端子は、q(qはq<pを満たす整数)個であり、前記p個のトーナメント回路に基づく信号のうち、q個を選択して、前記q個のテスト出力端子に一対一に電気的に接続するスイッチ回路を含む。態様4によれば、複数のトーナメント回路で選択された信号を、少ない数のテスト出力端子で測定することができる。
【0125】
態様4の具体的な態様5に係る電気光学装置の駆動回路において、前記p個のトーナメント回路で選択された信号を増幅して、前記p個のトーナメント回路に基づく信号として出力するq個のアンプを含む。態様5によれば、データ線14の出力インピーダンスが高い場合でも、データ線14の電圧を正確に測定することができる。
【0126】
態様6に係る電気光学装置は、態様1に係る電気光学装置の駆動回路が走査線を選択する走査線駆動回路を含み、前記走査線および前記第1データ線の交差に対応して設けられ、前記走査線が選択されたときの第1データ線の電圧に応じて発光する発光素子を含む第1画素回路と、前記走査線および前記第2データ線の交差に対応して設けられ、前記走査線が選択されたときの第2データ線の電圧に応じて発光する発光素子を含む第2画素回路と、前記走査線および前記第3データ線の交差に対応して設けられ、前記走査線が選択されたときの第3データ線の電圧に応じて発光する発光素子を含む第3画素回路と、前記走査線および前記第4データ線の交差に対応して設けられ、前記走査線が選択されたときの第4データ線の電圧に応じて発光する発光素子を含む第4画素回路と、を有する。
ある1行の走査線と、1列目のデータ線との交差に対応する画素回路110が第1画素回路の一例であり、ある1行の走査線と、2列目のデータ線との交差に対応する画素回路110が第2画素回路の一例であり、ある1行の走査線と、3列目のデータ線との交差に対応する画素回路110が第3画素回路の一例であり、ある1行の走査線と、4列目のデータ線との交差に対応する画素回路110が第4画素回路の一例である。
【0127】
態様7に係る電子機器では、態様6に係る電気光学装置を含む。
【符号の説明】
【0128】
10…電気光学装置、12…走査線、14…データ線、20…制御回路、40…データ信号出力回路、41…DA変換回路、60…初期化回路、82…トーナメント回路、84…アンプ、85…スイッチ回路、88…テスト出力端子、110、110R、110G、110B…画素回路、120…走査線駆動回路、821~827…選択回路、Swa、Swb…トランスミッションゲート。