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特開2024-104784青果物皮剥ぎ処理装置、及び青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104784
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】青果物皮剥ぎ処理装置、及び青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システム
(51)【国際特許分類】
   A23N 7/02 20060101AFI20240730BHJP
   A23N 15/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A23N7/02
A23N15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009132
(22)【出願日】2023-01-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発明した「青果物皮剥ぎ処理装置、及び青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システム」に係る装置について、2022年1月28日開催の「第3回SENTAN Maker’s Pitch」で、基礎技術の紹介と共に開発を公開、2022年3月9日掲載開始の「ものづくり創造拠点SENTANホームページ」で公開、2022年3月10日と11日の2日間、スカイホール豊田(豊田市総合体育館)で開催された展示会「とよたビジネスフェア2022」(主催:豊田市、豊田商工会議所)のブース「豊田市役所ものづくり産業振興課/ものづくりミライ塾」に出展して公開
(71)【出願人】
【識別番号】510128199
【氏名又は名称】豊田市
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 悠嵩
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 優人
(72)【発明者】
【氏名】石川 滋秀
(72)【発明者】
【氏名】宗形 賢
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061AA02
4B061AB01
4B061BA02
4B061BA03
4B061BA08
4B061BA13
4B061BB16
4B061CB02
4B061CB04
4B061CB13
4B061CB17
4B061CD01
4B061CD06
4B061CD18
(57)【要約】
【課題】表皮付きの青果物の中でも、じゃがいもに例示されるように、複雑な幾何学的な立体形状で、表皮が密着した状態で青果物本体を覆う青果物の場合でも、表皮をより簡単に取り除くことができる青果物の皮剥ぎ処理装置、及びその皮剥ぎ処理方法を提供する。
【解決手段】青果物皮剥ぎ処理装置2は、平行な2本の第1軸AX1を中心とする各周方向に第1刃12を形成した一対の第1刃具11と、双方の第1軸AX1と垂直な第2軸AX2を中心とする周方向に第2刃32を形成した第2刃具31とを、自転可能な態様で有し、第1刃具11同士は、その間に置く青果物を保持可能な距離で配置されていると共に、第2刃具31の第2刃32は、一対の第1刃具11の先端部13と対向した配置で設けられていること、一対の第1刃具11と第2刃具31は、基部51と連結した支持部材52上に載置され、第2刃32を第1刃12より高い位置関係で配置されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な2本の第1軸を中心とする各周方向に、第1刃がそれぞれ形成された一対の第1刃具と、
前記双方の第1軸と垂直に位置する第2軸を中心に、周方向に第2刃が形成された第2刃具とを、いずれも自転可能な態様で有し、
前記第1刃具同士は、その間に置かれる青果物を保持可能な距離を確保した状態で配置されていると共に、
前記第2刃具の前記第2刃は、前記双方の第1軸の軸方向一端側にある前記一対の第1刃具の先端部と対向した配置で設けられていること、
前記一対の第1刃具と前記第2刃具は、基部と連結した支持部材上に載置され、前記基部を基準に前記第1刃具と前記第2刃具との相対的な高さとして、前記第2刃具の前記第2刃を前記一対の第1刃具より高くした位置関係で、配置されていること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
青果物の表皮を剥ぐにあたり、前記一対の第1刃具上に載置された状態にある青果物に対し、前記一対の第1刃具及び前記第2刃具に自転運動を伴いながら、前記第1刃が、表皮を剥離すると共に、前記第2刃具が、前記一対の第1刃具から青果物の落下を規制した状態で、前記第2刃により表皮を剥離すること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
第3刃が形成された第3刃具を備え、前記第3刃具は、前記双方の第1軸かつ前記第2軸と直交する第3軸に沿い、前記一対の第1刃具と相対的に近接または離間する方向に移動可能であること、
青果物の表皮に残存する除去対象物を取り除くのにあたり、前記第3刃具が、前記一対の第1刃具上に載置された状態にある青果物の除去対象物に向けて移動することにより、前記第3刃が除去対象物を切除すること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
前記支持部材は、前記第2軸に沿う方向に延びる回動軸を支点に、前記基部と相対的に回動可能であり、
前記双方の第1軸の前記軸方向に対し、他端側ある前記一対の第1刃具の後端部が前記一対の第1刃具の前記先端部より高くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第1の傾斜動作と、前記一対の第1刃具の後端部が前記一対の第1刃具の前記先端部より低くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第2の傾斜動作とが、選択可能であること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
前記支持部材は、前記第2軸に沿う方向に延びる回動軸を支点に、前記基部と相対的に回動可能であり、
前記双方の第1軸の前記軸方向に対し、他端側ある前記一対の第1刃具の後端部が前記一対の第1刃具の前記先端部より高くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第1の傾斜動作と、前記一対の第1刃具の後端部が前記一対の第1刃具の前記先端部より低くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第2の傾斜動作とが、選択可能であること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
前記基部と前記支持部材との回動角度θは、0≦θ<90(単位:deg)であること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
前記第2刃具の外径は、前記第1刃具の外径と同等、または大きいこと、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載する前記青果物皮剥ぎ処理装置と、表皮または除去対象物の少なくとも一方を取り除いた除去処理後の青果物を搬送する搬送手段と、前記除去処理後の青果物を細断可能な切断手段と、前記切断手段により、前記除去処理後の青果物を細断処理した青果物片を回収する青果物片回収部と、を備えること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システム。
【請求項9】
請求項8に記載する青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムにおいて、
前記青果物片回収部には、青果物片を加熱する加熱手段を備えること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、じゃがいも、玉葱、人参、林檎や柿等、青果物の中でも、青果物本体を覆う表皮を剥ぐ青果物の皮剥ぎ処理装置、及びこの青果物の皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、じゃがいも、玉葱、人参等、表皮付きの野菜は、周知の通り、具材の一つとして、数多くの調理メニューで使用されている。表皮付きの野菜では調理時に、表皮が剥ぎ取られ、芽や傷んだ部分がある場合には、これらも表皮と共に取り除かれる。他方、このような表皮付きの野菜を対象とした皮剥き技術も開発され、その一例が、特許文献1,2に開示されている。
【0003】
特許文献1は、一列に並んだ複数対のピーラー(刃物)の間に被加工野菜を通過させ、ピーラーで被加工野菜の皮を剥く被加工野菜の皮剥き装置である。特許文献1によると、被加工野菜の進行方向に対し最後方のピーラーに、剥かれた皮を側方に排出するガイドを設けることで、被加工野菜の皮剥き能力を高めることができるとされている。
【0004】
特許文献2は、皮むき用の円筒内に玉葱を入れた状態で、玉葱にエアを吹き付けることにより、玉葱の皮を剥ぐ球状野菜の皮むき装置である。特許文献2では、外部から円筒内にエアを吹き込むことで、円筒の内部に空気流が形成され、この空気流によって、玉葱の皮を、短時間で効率良く剥がすことができるとされている。
【0005】
ところで、本出願人は、一般的な家庭で、一例とするカレーライスを調理するにあたり、具材となる野菜に対し、皮剥き処理、切断処理を経て、鍋に収容するまでの一連の段取りを、自動化で実施する調理システムの実現可否について、検討を行った。そして、本出願人は、このような調理システムを構築する上で、具材となるじゃがいも、玉葱、人参等、表皮付きの野菜から表皮を剥ぎ取る皮剥き処理をどのようにするかの課題を解決するため、特許文献1,2のような技術を適用することも検討してみた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-121552号公報
【特許文献2】特開2021-10329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
検討の結果、特許文献1は、大根、人参、ゴボウ等のように、略棒状野菜の表皮を剥ぐことはできる。しかしながら、例えば、じゃがいもやサツマイモ等をなす周知の形状として、棒状形状以外の幾何学的な立体(例えば、略球体、略多面体、略錐体等)形状をなす被加工野菜の表皮を剥ごうとする場合、特許文献1の技術では、野菜全体の表皮をより万遍に剥ぐことができない虞がある。
【0008】
また、特許文献2の技術は、幾層にも重なる葉の付け根となっている鱗茎を、肥厚して積層した鱗葉(表皮)で、剥離し易い態様で覆った略球体形状の玉葱を対象に、その表皮を剥ぐことはできる。しかしながら、表皮付きの野菜の中でも、略球体形状や略多面体形状等をなすじゃがいもや里芋、サツマイモ等、根菜類を対象とした野菜の表皮を剥ごうとする場合、表皮が、玉葱の鱗葉に比べ剥離し難い態様で、食用となる茎部に密着して覆っているため、特許文献2の技術では、根菜類を対象とした野菜の表皮を剥ぐことは困難である。従って、特許文献1,2の技術では、前述した調理システムを開発することができない問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、表皮付きの青果物の中で、じゃがいも、玉葱等に例示されるように、複雑で幾何学的な立体形状をなし、表皮が密着した状態で青果物本体を覆う青果物の場合でも、表皮をより簡単に取り除くことができる青果物の皮剥ぎ処理装置、及びこの青果物の皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る青果物の皮剥ぎ処理装置は、以下の構成を有する。
【0011】
(1)互いに平行な2本の第1軸を中心とする各周方向に、第1刃がそれぞれ形成された一対の第1刃具と、前記双方の第1軸と垂直に位置する第2軸を中心に、周方向に第2刃が形成された第2刃具とを、いずれも自転可能な態様で有し、前記第1刃具同士は、その間に置かれる青果物を保持可能な距離を確保した状態で配置されていると共に、前記第2刃具の前記第2刃は、前記双方の第1軸の軸方向一端側にある前記一対の第1刃具の先端部と対向した配置で設けられていること、前記一対の第1刃具と前記第2刃具は、基部と連結した支持部材上に載置され、前記基部を基準に前記第1刃具と前記第2刃具との相対的な高さとして、前記第2刃具の前記第2刃を前記一対の第1刃具より高くした位置関係で、配置されていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、青果物の表皮を剥ぐにあたり、前記一対の第1刃具上に載置された状態にある青果物に対し、前記一対の第1刃具及び前記第2刃具に自転運動を伴いながら、前記第1刃が、表皮を剥離すると共に、前記第2刃具が、前記一対の第1刃具から青果物の落下を規制した状態で、前記第2刃により表皮を剥離すること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、第3刃が形成された第3刃具を備え、前記第3刃具は、前記双方の第1軸かつ前記第2軸と直交する第3軸に沿い、前記一対の第1刃具と相対的に近接または離間する方向に移動可能であること、青果物の表皮に残存する除去対象物を取り除くのにあたり、前記第3刃具が、前記一対の第1刃具上に載置された状態にある青果物の除去対象物に向けて移動することにより、前記第3刃が除去対象物を切除すること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、前記支持部材は、前記第2軸に沿う方向に延びる回動軸を支点に、前記基部と相対的に回動可能であり、前記双方の第1軸の前記軸方向に対し、他端側ある前記一対の第1刃具の後端部が前記一対の第1刃具の前記先端部より高くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第1の傾斜動作と、前記一対の第1刃具の後端部が前記一対の第1刃具の前記先端部より低くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第2の傾斜動作とが、選択可能であること、を特徴とする。
(5)(4)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、前記基部と前記支持部材との回動角度θは、0≦θ<90(単位:deg)であること、を特徴とする。
(6)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、前記第2刃具の外径は、前記第1刃具の外径と同等、または大きいこと、を特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る青果物の皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムは、以下の構成を有する。
【0013】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載する前記青果物皮剥ぎ処理装置と、表皮または除去対象物の少なくとも一方を取り除いた除去処理後の青果物を搬送する搬送手段と、前記除去処理後の青果物を細断可能な切断手段と、前記切断手段により、前記除去処理後の青果物を細断処理した青果物片を回収する青果物片回収部と、を備えること、を特徴とする。
(8)(7)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムにおいて、前記青果物片回収部には、青果物片を加熱する加熱手段を備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明に係る青果物の皮剥ぎ処理装置、及び青果物の皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムの作用・効果について、説明する。
【0015】
(1)互いに平行な2本の第1軸を中心とする各周方向に、第1刃がそれぞれ形成された一対の第1刃具と、双方の第1軸と垂直に位置する第2軸を中心に、周方向に第2刃が形成された第2刃具とを、いずれも自転可能な態様で有し、第1刃具同士は、その間に置かれる青果物を保持可能な距離を確保した状態で配置されていると共に、第2刃具の第2刃は、双方の第1軸の軸方向一端側にある一対の第1刃具の先端部と対向した配置で設けられていること、一対の第1刃具と第2刃具は、基部と連結した支持部材上に載置され、基部を基準に第1刃具と第2刃具との相対的な高さとして、第2刃具の第2刃を一対の第1刃具より高くした位置関係で、配置されていること、を特徴とする。
【0016】
この特徴により、表皮を剥ぐ対象の青果物が、例えば、じゃがいも、里芋等のように、地下で成長する茎を食用とする種類の野菜や、ごぼう、人参、大根等のように、地下で成長する根を食用とする種類の野菜、玉葱等のように、葉の付け根を食用とする種類の野菜であっても、簡単な構造で構成された一対の第1刃具の第1刃、及び第2刃具の第2刃により、表皮を、簡単かつ万遍に除去することができる。特に、根菜類の野菜(例えば、じゃがいも、里芋他)や仁果果実のように、青果物が、複雑で幾何学的な立体形状をなし、表皮が密着した状態で青果物本体を覆う態様の野菜等であっても、表皮が効果的に除去可能である。また、例示する玉葱のように、青果物が、幾層にも重なる葉の付け根となっている鱗茎を、肥厚して積層した略球体形状の鱗葉(表皮)で、剥離し易い態様で覆う野菜等であっても、表皮を効果的に除去可能である。
【0017】
従って、本発明に係る青果物の皮剥ぎ処理装置によれば、表皮付きの青果物の中で、じゃがいもや、玉葱、人参等に例示されるように、複雑な幾何学的な立体形状をなし、表皮が密着した状態で青果物本体を覆う青果物の場合でも、表皮をより簡単に取り除くことができる、という優れた効果を奏する。
【0018】
(2)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、青果物の表皮を剥ぐにあたり、一対の第1刃具上に載置された状態にある青果物に対し、一対の第1刃具及び第2刃具に自転運動を伴いながら、第1刃が、表皮を剥離すると共に、第2刃具が、一対の第1刃具から青果物の落下を規制した状態で、第2刃により表皮を剥離すること、を特徴とする。
【0019】
この特徴により、処理する青果物の大きさや形状に依らず、青果物は、第2刃具に基づき、安定性を維持しながら、一対の第1刃具上に保持された状態で載置することができる。そのため、青果物の表皮に対し、一方の第1刃具の第1刃と、他方の第1刃具の第1刃と、第2刃具の第2刃とが、より引っ掛かり易い状態にでき、青果物全体の周囲を覆う表皮の中で、削り残しを抑制して表皮を剥ぐことができる。
【0020】
(3)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、第3刃が形成された第3刃具を備え、第3刃具は、双方の第1軸かつ第2軸と直交する第3軸に沿い、一対の第1刃具と相対的に近接または離間する方向に移動可能であること、青果物の表皮に残存する除去対象物を取り除くのにあたり、第3刃具が、一対の第1刃具上に載置された状態にある青果物の除去対象物に向けて移動することにより、第3刃が除去対象物を切除すること、を特徴とする。
【0021】
この特徴により、除去対象物が青果物に残存している場合でも、表皮を剥ぐ以外にも、除去対象物が除去できることから、別途、除去対象物だけを取り除く必要がなく、表皮を剥いだ除去処理後の青果物は、除去対象物を含まず、調理する料理の具材として、使用することができる。
【0022】
(4)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、支持部材は、第2軸に沿う方向に延びる回動軸を支点に、基部と相対的に回動可能であり、双方の第1軸の前記軸方向に対し、他端側ある一対の第1刃具の後端部が一対の第1刃具の先端部より高くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第1の傾斜動作と、一対の第1刃具の後端部が一対の第1刃具の先端部より低くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第2の傾斜動作とが、選択可能であること、を特徴とする。
【0023】
この特徴により、第1の傾斜動作の場合、一対の第1刃具上では、載置した青果物は、一方の第1刃具との第1接触部と、他方の第1刃具との第2接触部と、第2刃具との第3接触部に基づいた3箇所の接触部で、必然的に支持された状態となる。そのため、青果物が、例えば、じゃがいもやサツマイモ等をなす周知の形状として、略棒状形状以外にも、略球体、略多面体、略錐体等、複雑で幾何学的な立体形状をなしていても、青果物は、一対の第1刃具上では、一方の第1刃具と他方の第1刃具との間に形成される隙間部分に置かれ、少なくとも前述した3箇所の接触部により、安定した状態で保持され易くなる。それ故に、本発明に係る青果物皮剥ぎ処理装置では、青果物が、幾何学的に複雑な立体形状をなしていても、青果物全体の周囲を覆う表皮は、一対の第1刃具の第1刃と第2刃具の第2刃により、万遍に効率良く剥ぐことが可能となる。また、表皮が青果物全体の周囲から剥ぎ取られた後、第2の傾斜動作を行うことにより、除去処理後の青果物は、載置状態にある一対の第1刃具上から落下させて排出することができる。
【0024】
(5)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、基部と支持部材との回動角度θは、0≦θ<90(単位:deg)であること、を特徴とする。
【0025】
この特徴により、回動角度θを調節して変更するだけで、青果物から表皮を剥ぐ青果物の皮剥き処理と、残存している除去対象物を除去する青果物の除去対象物切除処理との双方を、自在に切り替えて行うことができる。
【0026】
(6)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、第2刃具の外径は、第1刃具の外径と同等、または大きいこと、を特徴とする。
【0027】
この特徴により、青果物が、例えば、玉葱やかぶ、さつまいも、里芋のように、略球体形状で比較的大きい態様の野菜等であっても、青果物は、一対の第1刃具上に保持されている状態から落下し難くなる。
【0028】
(7)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置と、表皮または除去対象物の少なくとも一方を取り除いた除去処理後の青果物を搬送する搬送手段と、除去処理後の青果物を細断可能な切断手段と、切断手段により、除去処理後の青果物を細断処理した青果物片を回収する青果物片回収部と、を備えること、を特徴とする。
【0029】
この特徴により、本発明に係る青果物の皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムが、一例として、一般的な家庭内の厨房で設置されるような場合、食事を家庭内で調理するにあたり、例えば、仕事、育児や子育て、家事等で多忙な調理者に代わって、この調理システムが、青果物から食用に適す大きさに細断された青果物片を得るまでの準備作業を行うことができるようになる。
【0030】
従って、本発明に係る青果物の皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムによれば、表皮付きの青果物の中で、じゃがいもや、玉葱、人参等に例示されるように、複雑な幾何学的な立体形状をなし、表皮が密着した状態で青果物本体を覆う青果物の場合でも、表皮をより簡単に取り除くことができるため、青果物を利用した調理を補助的に行うことができる、という優れた効果を奏する。
【0031】
(8)に記載する青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムにおいて、青果物片回収部には、青果物片を加熱する加熱手段を備えること、を特徴とする。
【0032】
この特徴により、青果物が、本発明に係る青果物の皮剥ぎ処理装置にセットされれば、食材の一種として、青果物から食用に適す大きさに細断された青果物片を加熱した料理が、本発明に係る青果物の皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムで調理することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施形態に係る青果物調理システムの構成を概略的に示す正面図である。
図2】実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置の構成を概略的に示す正面図であり、図1に示す青果物調理システムに搭載された青果物皮剥ぎ装置を説明する図である。
図3図2に示す青果物皮剥ぎ装置の側面図である。
図4】実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置にセットされたじゃがいもに対し、表皮を剥ぐ場合の第1刃具ユニット等の姿勢を示す説明図である。
図5】実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置にセットされたじゃがいもに対し、表皮にある芽を除去する場合の第1刃具ユニット等の姿勢を示す説明図である。
図6】実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置で、一対の第1刃具及び第2刃具の動作を模式的に示す説明図である。
図7】実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置にセットされた人参の表皮を、一対の第1刃具で剥いでいる様子を示す図である。
図8】実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置にセットされたじゃがいもに対し、表皮にある芽を除去する過程を示す説明図であり、(a)は芽に向けて第3刃具を下降させている様子、(b)は第3刃具で芽を切除している状態、(c)は切除後に第3刃具をじゃがいもから退避させている様子を、それぞれ示す。
図9図1中、A-A矢視断面図である。
図10図1中、B矢視から視た側面図である。
図11】実施形態に係る青果物調理システム内の青果物皮剥ぎ装置で表皮を剥いだ青果物を、細かい青果物片に切断している様子を示すと共に、切断された青果物片を、青果物片回収部に置いた鍋の中に収容した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る青果物皮剥ぎ処理装置、及び青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムについて、好ましい一の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本発明に青果物皮剥ぎ処理装置は、青果物を覆う表皮を青果物本体から剥ぐ装置であり、本発明に青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システム(以下、単に「青果物調理システム」と称する)は、その一部に、本発明係る青果物皮剥ぎ処理装置を含んで構成されている。
【0035】
本発明に係る青果物皮剥ぎ処理装置で表皮を剥ぐ対象の青果物は、野菜の場合、例えば、(1)じゃがいも、里芋、自然薯、ナガイモ、ツクネイモ、イチョウイモ、ダイジョ、レンコン、しょうが、キクイモ、ウコン等のように、地下で成長する茎を食用とする種類の野菜、(2)さつまいも、山芋、ごぼう、人参、大根、かぶ、ヤーコン等のように、地下で成長する根を食用とする種類の野菜、(3)玉葱、ビーツ等のように、葉の付け根を食用とする種類の野菜である。また、果実の場合、例えば、林檎、梨、柿等のように、主に仁果果実である。
【0036】
すなわち、前述した根菜類の野菜や仁果果実のように、青果物の中でも主に、複雑で幾何学的な立体形状をなし、表皮が密着した状態で青果物本体を覆う表皮付きの青果物が、本発明に係る青果物皮剥ぎ処理装置で表皮を剥ぐ対象となっている。以下では、表皮付きの青果物に、本実施形態では、じゃがいも、人参、玉葱の場合を挙げて、本発明係る青果物皮剥ぎ処理装置を主に説明を行う。
【0037】
はじめに、実施形態に係る青果物調理システムの概要について、説明する。図1は、実施形態に係る青果物調理システムの構成を概略的に示す正面図である。図2は、実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置の構成を概略的に示す正面図であり、図1に示す青果物調理システムに搭載された青果物皮剥ぎ装置を説明する図である。図3は、図2に示す青果物皮剥ぎ装置の側面図である。図11は、実施形態に係る青果物調理システム内の青果物皮剥ぎ装置で表皮を剥いだ青果物を、細かい青果物片に切断している様子を示すと共に、切断された青果物片を、青果物片回収部に置いた鍋の中に収容した状態を示す説明図である。
【0038】
なお、説明の便宜上、青果物調理システム及び青果物皮剥ぎ処理装置において、図1中、左右方向をX方向とし、上下方向をZ方向とし、図2中、左右方向(図1の紙面と垂直な方向)をY方向と定義する。図3以降の各図についても、定義した方向に準ずる。
【0039】
図1及び図2に示すように、青果物調理システム1(青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システム)は、青果物皮剥ぎ処理装置2と、第1搬送手段3と、第2搬送手段4(搬送手段)と、切断手段5(切断手段)と、加熱手段6と、制御部7と、操作部8と、青果物片回収部77等を備えている。青果物調理システム1の筐体は、略直方体形状に組まれた3段構造の本体フレーム70に、図示しないカバー部材で被覆した態様で形成されている。
【0040】
図1に示すように、本体フレーム70の上段で内部空間なす第1処理スペース71には、第1搬送手段3と青果物皮剥ぎ処理装置2が、X方向に沿って一列状に配設されている。第1処理スペース71の上方には、筐体の一部を開口した青果物投入部74が配置され、青果物投入部74は、スライド可能な投入部側蓋75により、開閉可能となっている。
【0041】
第1搬送手段3は、第1摺動部3Aと、第1押出部3Bと、第1ガイド部3Cと、第1搬送経路3Dとを有し、青果物投入部74を通じて投入された表皮付きの青果物である青果物90を、青果物皮剥ぎ処理装置2まで搬送する役割りを果たす(図6等参照)。第1搬送経路3Dは、青果物投入部74下の場所から青果物皮剥ぎ処理装置2に向けて延設されており、その青果物皮剥ぎ処理装置2側の先端部は、X方向に対し、青果物皮剥ぎ処理装置2と近接または離間する進退可能な第1搬送経路スライド部3Dxとなっている。これにより、青果物皮剥ぎ処理装置2の支持部材52(図4及び図5等参照)が回動しても、第1搬送経路3Dは、青果物皮剥ぎ処理装置2と干渉することはない。
【0042】
第1ガイド部3Cは、第1搬送経路3Dに沿って、青果物皮剥ぎ処理装置2まで延設されている。第1押出部3Bを装着した第1摺動部3Aは、図示しないモータ等の駆動源による動力に基づいて、第1ガイド部3C上を摺動しながら、X方向に移動可能に設けられている。じゃがいも、人参、玉葱等の青果物90は、青果物投入部74から投入されて第1搬送経路3D上に置かれると、第1摺動部3Aが移動することにより、青果物90は、第1押出部3Bと当接した状態で、果物皮剥ぎ処理装置2の第1刃具ユニット10まで搬送される。青果物皮剥ぎ処理装置2の詳細な説明については、後述する。
【0043】
図1に示すように、本体フレーム70の中段で内部空間なす第2処理スペース72には、第2搬送手段4と切断手段5が、X方向に沿って一列状に配設されている。第2搬送手段4は、青果物皮剥ぎ処理装置2の真下にある場所に配置されている。第2搬送手段4は、第2摺動部4Aと、第2押出部4Bと、緩衝部材4Bxと、第2ガイド部4Cと、第2搬送経路4Dとを有し、青果物皮剥ぎ処理装置2で表皮、芽や損傷部等、食用とならない除去対象物を取り除いた除去処理後の青果物93を、切断手段5まで搬送する役割りを果たす(図11等参照)。
【0044】
図9は、図1中、A-A矢視断面図であり、図1中、B矢視から視た側面図を図10に示す。図1図9及び図10に示すように、第2搬送経路4Dは、断面形状を略V字形状に形成され、青果物皮剥ぎ処理装置2の真下に位置するX方向一端側(図1中、右側)から、X方向他端側(図1中、左側)の端部に位置する切断手段5に向けて延設されている。第2搬送経路4Dは、そのV字状の両側壁の間に、除去処理後の青果物93を収容可能な大きさとなっている。
【0045】
第2ガイド部4Cは、X方向に対し、第2搬送経路4Dに沿って、切断手段5を超えた場所まで延設されている。第2押出部4Bを装着した第2摺動部4Aは、図示しないモータ等の駆動源による動力に基づいて、第2ガイド部4C上を摺動しながら、X方向に移動可能に設けられている。第2押出部4Bは、図1に示すように、柔軟性を有した刷毛や、樹脂やゴム等の比較的柔らかい材料により、クッション機能を具備した部材とした緩衝部材4Bxを有している。
【0046】
第2押出部4Bは、第2搬送経路4Dに載置された除去処理後の青果物93を、緩衝部材4Bxと接触した状態で、第2摺動部4Aの移動により、切断手段5を通過する場所まで搬送を行う(図11等参照)。このとき、除去処理後の青果物93は、第2押出部4Bで押圧して移送されても、第2押出部4Bとの間に緩衝部材4Bxが設けてられているため、除去処理後の青果物93への損傷は、防止できている。
【0047】
切断手段5は、除去処理後の青果物93を、細かく一片状に細断可能なユニットで、第1切断刃5Aと、第2切断刃5Bと、第2切断刃ガイド部5Bxとを有している。第1切断刃5Aは、図10に示すように、X方向他端側(図1中、左側)に位置する第2搬送経路4Dの端部に装着された格子(メッシュ)状の刃である。
【0048】
図11は、実施形態に係る青果物調理システム内の青果物皮剥ぎ装置で表皮を剥いだ青果物を、細かい青果物片に切断している様子を示すと共に、切断された青果物片を、青果物片回収部に置いた鍋の中に収容した状態を示す説明図である。第1切断刃5Aは、図11に示すように、第2摺動部4Aの移動により、第2搬送経路4Dに載置された除去処理後の青果物93をX方向他端側に移送しながら、この除去処理後の青果物93の長手方向への切り込みを相対的に行う。
【0049】
第2切断刃5Bは、図1及び図11に示すように、第2切断刃ガイド部5Bxに取付けられ、Z方向に対し上下動可能に構成されている。第2切断刃5Bは、除去処理後の青果物93のうち、第1切断刃5Aのメッシュ内を通過した切断後の部分を、長手方向の大きさを小さくした一片状の青果物片93Aにするための刃である。
【0050】
図1に示すように、本体フレーム70の下段で内部空間なす第3処理スペース73には、青果物片回収部77と制御部7が配置されている。制御部7は、青果物皮剥ぎ処理装置2をはじめ、第1搬送手段3、第2搬送手段4、及び切断手段5に有するモータ、インバータ、動作制御ユニット、センサ等の動力源・電装品に対し、電気的な制御を行うほか、加熱手段6の加熱制御を行い、操作部8と電気的に接続されている。青果物調理システム1の運転操作は、操作部8で行われる。
【0051】
なお、青果物皮剥ぎ処理装置2単体で使用する場合には、制御手段が、青果物皮剥ぎ処理装置2に装着され、後述する第1刃具11のモータ15、第2刃具31のモータ35、第3刃具41のモータ等の動力源や、インバータ、動作制御ユニット、センサ等の電装品に対する電気的な制御を行う。
【0052】
第3処理スペース73は、開口部76で第2処理スペース72と連通している。青果物片回収部77は、切断手段5により、除去処理後の青果物93を細断処理した青果物片93Aを、開口部76を通じて回収する部分である。なお、切断手段5で細断処理した青果物片93Aを、開口部76を通じて青果物片回収部77に移動するにあたり、図1には図示されていないが、青果物片93Aを自動で運ぶための運搬ユニットが補助的に設けられていても良い。
【0053】
青果物調理システム1の筐体の側部には、一部を開口した青果物排出部78が配置され、青果物排出部78は、スライド可能な排出部側蓋79により、開閉可能となっている。青果物片回収部77には、容器が配置され、青果物片93Aは、開口部76から容器内に収容される。このとき、加熱手段6が青果物片回収部77に配設されない場合、調理者は、青果物片回収部77にある青果物片93Aの入った容器を、青果物排出部78を通じて青果物調理システム1の外部に取り出すことができる。
【0054】
なお、図1には図示されていないが、青果物排出部78を挟み、青果物片回収部77とその外部との間に、例えば、青果物片93A入りの容器を移送するためのコンベアが敷設されていても良い。これにより、青果物片回収部77において、容器が、コンベアの搬送面上に載置してセットされた状態になっていると、容器内に青果物片93Aを収容後、青果物片93A入りの容器は、コンベアにより、青果物調理システム1の外部に自動で搬送されて取り出すことができるようになる。
【0055】
本実施形態の場合、加熱手段6が、青果物片回収部77に配設されている。加熱手段6は、電磁誘導加熱(IH:induction heating)により、加熱可能な鍋Kを加熱するヒータである。本実施形態のように、加熱手段6を具備した青果物調理システム1では、図11に示すように、第2切断刃5Bによる切断後、青果物片93Aは、開口部76を通じて、加熱手段6に置かれた鍋Kの中に収容される。このとき、必要に応じて、青果物片93A以外の具材、調味料や水等、作ろうとしている料理に必要な材料も、この鍋Kに投入することで、青果物調理システム1では、鍋Kに収容された青果物片93A等が、加熱手段6で加熱され、例えば、カレーやシチュー、スープ、豚汁等、所望の料理を、青果物調理システム1で調理することができる。
【0056】
次に、青果物皮剥ぎ処理装置2の構成について、説明する。青果物皮剥ぎ処理装置2は、第1刃具ユニット10と、第2刃具ユニット30と、第3刃具ユニット40等を備えている。
【0057】
<第1刃具ユニット10の構成>
図2及び図3に示すように、第1刃具ユニット10は、一対の第1刃具11(11A、11B)と、モータ15と、モータ取付け部17と、支持ローラ18と、ローラ支持部19等を有している。一対の第1刃具11(11A、11B)は、互いに平行な2本の第1軸AX1を中心とする各周方向に、それぞれ第1刃12を有してなり、自転可能となっている。
【0058】
具体的には、第1刃具11Aと第1刃具11Bとは、図2及び図3に示すように、双方とも、実質的に同じ第1刃具11であり、第1軸AX1を中心に外径D1の円筒状に形成された刃具本体となっている。第1刃具11の刃具本体は、パンチングメタル材の外側表面に、メタル材の穴と共に、例えば、すりおろし金の刃のように、小さな凸状の刃を無数、所定の間隔(刃ピッチ)で隣接して散在した形態等の第1刃12を、メタル材全周に形成してなる。第1刃具11では、隣接する第1刃12同士は、例えば、1~十数mm程の範囲内にある刃ピッチで配置され、メタル材の外側表面からの第1刃12の突起高は、一例として、0より大きく、概ね2mm以下の範囲内である。
【0059】
なお、例示した第1刃12の態様は、本実施形態に限定されるものではなく、第1刃の態様は、じゃがいも、人参、玉葱等の青果物90の表皮91を剥ぎ取ることができる仕様で構成されていれば良く、種々変更可能である。
【0060】
一対の第1刃具11はそれぞれ、図2及び図3に示すように、モータ15と連結した第1刃具軸16を、第1軸AX1上に有している。モータ15は、支持部材52に固設したモータ取付け部17に取付けられている。第1刃具11は、モータ15から出力される回転力を第1刃具軸16に伝達することにより、自転可能となっている。モータ15は、インバータ制御により、出力軸の回転数や、出力軸の回転方向を自在に可変できる特性を有したモータであり、第1刃具11Aのモータ15と第1刃具11Bのモータ15は、それぞれ独立した系統で設けられている。
【0061】
図7は、実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置にセットされた人参の表皮を、一対の第1刃具で剥いでいる様子を示す図である。第1刃具11は、第1刃具軸16をモータ取付け部17で支持すると共に、支持部材52に固設したローラ支持部19に軸支して転動可能に装着された支持ローラ18により、第1刃具11の刃具本体を支持した態様で設けられている。一対の第1刃具11は、図7に示すように、双方の第1刃具11の間に置かれる青果物90を保持可能な距離を確保した状態で配置されている。
【0062】
具体的には、図3に示すように、第1刃具11Aの第1軸AX1と第1刃具11Bの第1軸AX1との間で、第1刃具11Aの第1刃12の先と、第1刃具11Bの第1刃12の先との最短距離は、例えば、数~数十mm程の範囲内である。好ましくは、図7に示すように、じゃがいも、人参、玉葱等の青果物90が、一対の第1刃具11(11A、11B)上に載置された状態にあるとき、青果物90の表皮91が、第1刃具11Aの第1刃12と第1刃具11Bの第1刃12の双方で、十分に接することができる条件を満たす距離である。
【0063】
なお、第1刃具11Aの第1軸AX1と第1刃具11Bの第1軸AX1との軸間距離を可変できる構造で、一対の第1刃具11(11A、11B)が構成されていても良い。これにより、青果物90が、じゃがいもである場合、人参である場合、玉葱である場合等のように、種類毎に大きさや形状が異なっている青果物90であっても、前述の最短距離は、青果物90の種類に応じた最適な距離に調節することができるからである。
【0064】
<第2刃具ユニット30の構成>
図2及び図3に示すように、第2刃具ユニット30は、第2刃具31と、第2刃具軸33と、第2刃具取付け部34等を有している。第2刃具31は、双方の第1軸AX1とそれぞれ垂直に位置する第2軸AX2上に第2刃具軸33を有すると共に、この第2刃具軸33を中心とする周方向に第2刃32を有している。第2刃具31は、第2軸AX2を中心とする円筒状に形成された刃具本体となっており、モータ35から出力される回転力を第2刃具軸33に伝達することにより、第2刃具軸33を中心に自転可能となっている。モータ35は、インバータ制御による出力軸の回転数や、出力軸の回転方向を自在に可変できる特性を有したモータである。第2刃具31の刃具本体は、第1刃具11の刃具本体の外径D1と同等、または大きい外径D2(D1≦D2)となっている。
【0065】
第2刃具31の第2刃32は、双方の第1軸AX1のX方向一端側(図1中、右側)にある第1刃具11の先端部13と対向した配置で設けられている。第1刃具11の刃具本体と同様、第2刃具31の刃具本体も、パンチングメタル材の外側表面に、メタル材の穴と共に、例えば、すりおろし金の刃のように、小さな凸状の刃を無数、所定の間隔(刃ピッチ)で隣接して散在した形態等の第2刃32を、メタル材全周に形成してなる。第2刃具31では、隣接する第2刃32同士は、例えば、1~十数mm程の範囲内にある刃ピッチで配置され、メタル材の外側表面からの第2刃32の突起高は、一例として、0より大きく、概ね2mm以下の範囲内である。
【0066】
図2及び図3に示すように、一対の第1刃具11と第2刃具31は、基部51と連結した支持部材52上に載置されている。支持部材52上では、一対の第1刃具11と第2刃具31とは、基部51を基準に第1刃具11と第2刃具31との相対的な高さとして、第2刃具31の第2刃32を一対の第1刃具11より高くした位置関係の下、第2刃具31の第2刃32と一対の第1刃具11との干渉を回避して配置されている。
【0067】
図4は、実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置にセットされたじゃがいもに対し、表皮を剥ぐ場合の第1刃具ユニット等の姿勢を示す説明図であり、表皮にある芽を除去する場合の第1刃具ユニット等の姿勢を示す説明図を、図5に示す。図2図5に示すように、支持部材52は、第2軸AX2に沿う方向に延びる回動軸54を支点Mに、基部51と相対的に回動可能に構成されている。
【0068】
具体的には、支持部材52は、回動軸54を含む回動支持部53で基部51と枢支して連結され、本体フレーム70に水平姿勢HZで固設されている基部51に対し、支点Mとなる回動軸54を軸心に回動する。支持部材52は、双方の第1軸AX1の軸方向(X方向)に対し、他端側(図1中、左側)にある一対の第1刃具11の後端部14が、一端側(図1中、右側)にある先端部13より高くなる傾斜姿勢CLに、水平姿勢HZの状態から傾くこと(第1の傾斜動作)が可能である。また、支持部材52は、双方の第1軸AX1の軸方向(X方向)に対し、他端側(図1中、左側)にある一対の第1刃具11の後端部14が、一端側(図1中、右側)にある先端部13より低くなる傾斜姿勢CLに、水平姿勢HZの状態から傾くこと(第2の傾斜動作)が可能である。第1の傾斜動作と第2の傾斜動作とは、選択的に行われる。支持部材52の回動動作と傾斜姿勢CLの維持は、ブレーキ付きモータ等の駆動源(図示せず)により、行われる。基部51と支持部材52との回動角度θは、第1の傾斜動作と第2の傾斜動作とも、0≦θ<90(単位:deg)であり、任意の角度で設定可能となっている。
【0069】
<第3刃具ユニット40の構成>
図1に示すように、第3刃具ユニット40は、第3刃具41と、ガイド部43と、摺動部44と、本体部45等を有している。第3刃具41は、第3刃42を有し、双方の第1軸AX1かつ第2軸AX2と直交する第3軸AX3に沿い、一対の第1刃具11と相対的に近接または離間するZ方向に移動可能である。
【0070】
具体的には、図2に示すように、第3刃具41は、本実施形態では、例えば、ドリル刃のように、下方先端(図2中、下側)から上方側(図2中、上側)に向けてスパイラル状に形成してなる第3刃42(切刃)を有する。ガイド部43は、第1刃具ユニット10の第1刃具11に沿って、その先端部13と後端部14とを繋ぐ区間に配設されている。
【0071】
摺動部44は、ガイド部43上を摺動しながら、X方向に移動可能に配設されていると共に、本体部45は、Z方向の移動として、摺動部44と相対的に上下動可能に配設されている。第3刃具41は、本体部45に装着され、図示しないモータの回転に基づき、自転を伴いながら、第3刃42で切削可能となっている。
【0072】
次に、実施形態に係る青果物皮剥ぎ処理装置2により、青果物90の皮剥き処理と、青果物90の除去対象物切除処理を行う要領について、青果物90にじゃがいもを一例に挙げて説明する。図6は、実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置で、一対の第1刃具及び第2刃具の動作を模式的に示す説明図である。
【0073】
青果物皮剥ぎ処理装置2では、図6に示すように、じゃがいも(青果物90)が、一対の第1刃具11に供給されたら、青果物90を、第1刃具11Aの第1刃12と第1刃具11Bの第1刃12との間に、第2刃具31の第2刃32と接触した状態で置く。青果物90の表皮91を剥ぐ皮剥き処理では、一対の第1刃具11上に載置された状態にある青果物90に対し、一対の第1刃具11及び第2刃具31に自転運動を伴いながら、第1刃具11の第1刃12が、表皮91を剥離すると共に、第2刃具31が、一対の第1刃具11から青果物90の落下を規制した状態で、第2刃32により表皮91を剥離する。
【0074】
具体的には、図7に示すように、青果物90の表皮91を剥ぐ処理を行う場合、図4に示すように、まず第1の傾斜動作を行い、支持部材52を回動角度θ1に傾ける。回動角度θ1は、0≦θ1≦θα(但し、0<θα<90、単位:deg)であり、一例として、θα=10(deg)とする場合もある等、青果物90の種類や、処理する青果物90の大きさや形状に応じて、適宜角度を調整される。
【0075】
次に、第1刃具11Aと第1刃具11Bとを、第1軸AX1を中心に、それぞれ同方向(例えば、図6中、第1軸AX1の矢印方向で示した第1順方向)に回転させながら、第2刃具31を、第2軸AX2を中心に、一方向(例えば、図6中、第2軸AX2の矢印方向で示した第2順方向)に回転させる。これにより、青果物90の表皮91は、第1軸AX1に沿う軸を中心とした当該青果物90の周方向で、第1刃具11Aの第1刃12と第1刃具11Bの第1刃12により、剥ぎ取られると共に、第2軸AX2に沿う軸を中心とした当該青果物90の周方向で、第2刃具31の第2刃32により、剥ぎ取られる。
【0076】
このとき、第1刃具11Aと第1刃具11Bでは、双方で回転数が異なり、回転数差があると、青果物90は、一対の第1刃具11上で、第1順方向に向けて自転し易くなる。また、一対の第1刃具11で表皮91を剥いでいるとき、局部的に剥き難い表皮91の部位がある場合には、第2刃具31の回転を一時的に停止することや、第2刃具31の回転を減速することを行うと良い。これにより、第1刃具11の第1刃12が、このような表皮91の部位に対し、その接触時間をより長くすることができるため、剥き取り易くなる。
【0077】
また、青果物90が、食用となる茎部に密着して表皮で覆うじゃがいも等のような、根菜類の野菜と同様、幾層にも重なる葉の付け根となっている鱗茎を、肥厚して積層した鱗葉(表皮)で、剥離し易い態様で覆った略球体形状の玉葱等のような、葉の付け根を食用とする種類の野菜であっても、青果物皮剥ぎ処理装置2は、前述した青果物90の皮剥き処理を行うことができる。
【0078】
次に、青果物90の表皮91に残存する芽や損傷部等、食用とならない除去対象物を取り除く青果物90の除去対象物切除処理では、第3刃具41が、一対の第1刃具11上に載置された状態にある青果物90の除去対象物92に向けて移動することにより、第3刃42が除去対象物92を切除する。
【0079】
具体的に説明する。青果物皮剥ぎ処理装置2では、じゃがいも(青果物90)が、一対の第1刃具11に供給されたら、青果物90を、第1刃具11Aの第1刃12と第1刃具11Bの第1刃12との間に、第2刃具31の第2刃32と接触した状態で置く。一対の第1刃具11上に置く除去対象物切除処理の対象は、表皮91を除去する前の状態にある青果物90、または表皮91を除去した後の状態にある除去処理後の青果物(参照する図11中、除去処理後の青果物93)である。ここでは、前者の場合で以下に説明する。
【0080】
図8は、実施形態に係る青果物皮剥ぎ装置にセットされたじゃがいもに対し、表皮にある芽を除去する過程を示す説明図であり、(a)は芽に向けて第3刃具を下降させている様子、(b)は第3刃具で芽を切除している状態、(c)は切除後に第3刃具をじゃがいもから退避させている様子を、それぞれ示す。図8に示すように、青果物90の芽(除去対象物92)の切除処理を行う場合、図5に示すように、まず第1の傾斜動作の下で、支持部材52を、回動角度θ2に傾ける。回動角度θ2は、θα0≦θ2<θβ(但し、0<θα<θβ<90、単位:deg)である。回動角度θ2は、例えば、10≦θ2≦45とする場合もある等、青果物90の種類や、処理する青果物90の大きさや形状に応じて、適宜角度を調整される。
【0081】
次に、図8に示すように、青果物90の除去対象物92をZ方向上向きに配置する。この配置にあたり、一対の第1刃具11と第2刃具31とをそれぞれ、皮剥き処理時と同じ要領で回転させる場合のほか、調理者の手で行う場合であっても良い。次に、必要に応じて摺動部44と本体部45とを動作させ、除去対象物92をZ方向上向きに配置した青果物90に対し、除去対象物92のあるポイントに第3刃具41を位置合わせした後、図8(a)に示すように、自転を伴った第3刃具41を除去対象物92に向けて下降させる。
【0082】
次に、図8(b)に示すように、第3刃具41の第3刃42が、除去対象物92から青果物90の芯に向けて切り込み、第3刃42によって除去対象物92を外部に排出された段階で、図8(c)に示すように、第3刃具41を上昇させて青果物90から退避させる。このとき、青果物90は、支持部材52を傾斜姿勢CLにして、第1刃具11Aの第1刃12と、第1刃具11Bの第1刃12と、第2刃具31の第2刃32により、引っ掛かった状態で保持されているため、第3刃具41による昇降動作が生じても、安定性を維持したまま、一対の第1刃具11上に載置できている。
【0083】
かくして、青果物皮剥ぎ処理装置2では、青果物90が、幾何学的に複雑な立体形状をなしていても、青果物90全体の周囲を覆う表皮91は、一対の第1刃具11の第1刃12と第2刃具31の第2刃32により、万遍に剥ぐことが可能となる。また、除去対象物92が、青果物90全体の周囲を覆う表皮91に残存していても、除去対象物92は、第3刃具41により、切除することが可能となる。
【0084】
次に、実施形態に係る青果物調理システム1の機能を確認する実験について、説明する。本出願人は、青果物調理システム1を用いて、カレーを実際に調理する実験を行って、青果物調理システム1の機能を検証した。青果物90には、じゃがいも、人参、及び玉葱が用いられ、青果物調理システム1内の青果物皮剥ぎ処理装置2では、これらの青果物90の表皮91の剥ぎ取りと、じゃがいもの芽(除去対象物92)を切除が行われた。そして、青果物調理システム1では、図11に示すように、除去処理後の青果物93が、カレーの具材として適す大きさの青果物片93A(じゃがいも、人参、及び玉葱)に細断され、鍋Kに投入された。また、鍋Kには、水やカレールー等、カレーに必要な材料も投入された後、材料を投入した状態の鍋Kが、加熱手段6で加熱され、青果物調理システム1により、カレーを無事に調理できることが確認できた。
【0085】
次に、本実施形態に係る青果物皮剥ぎ処理装置2、及び青果物調理システム1の作用・効果について、説明する。
【0086】
本実施形態に係る青果物皮剥ぎ処理装置2は、互いに平行な2本の第1軸AX1を中心とする各周方向に、第1刃12がそれぞれ形成された一対の第1刃具11(11A、11B)と、双方の第1軸AX1と垂直に位置する第2軸AX2を中心に、周方向に第2刃32が形成された第2刃具31とを、いずれも自転可能な態様で有し、第1刃具11Aと第1刃具11Bとは、その間に置かれる青果物90を保持可能な距離を確保した状態で配置されていると共に、第2刃具31の第2刃32は、双方の第1軸AX1の軸方向一端側(図1中、左右方向右側)にある一対の第1刃具11(11A、11B)の先端部13と対向した配置で設けられていること、一対の第1刃具11(11A、11B)と第2刃具31は、基部51と連結した支持部材52上に載置され、基部51を基準に第1刃具11と第2刃具31との相対的な高さとして、第2刃具31の第2刃32を一対の第1刃具11より高くした位置関係で、配置されていること、を特徴とする。
【0087】
この特徴により、表皮91を剥ぐ対象の青果物90が、例えば、じゃがいも、里芋等のように、地下で成長する茎を食用とする種類の野菜や、ごぼう、人参、大根等のように、地下で成長する根を食用とする種類の野菜、玉葱等のように、葉の付け根を食用とする種類の野菜であっても、簡単な構造で構成された一対の第1刃具11の第1刃12と第2刃具31の第2刃32により、表皮91を、簡単かつ万遍に除去することができる。特に、根菜類の野菜(じゃがいも、里芋他)や仁果果実のように、青果物90が、複雑で幾何学的な立体形状をなし、表皮91が密着した状態で青果物本体を覆う態様の野菜等であっても、表皮91が効果的に除去可能である。また、例示する玉葱のように、青果物90が、幾層にも重なる葉の付け根となっている鱗茎を、肥厚して積層した略球体形状の鱗葉(表皮)で、剥離し易い態様で覆う野菜等であっても、表皮91を効果的に除去可能である。
【0088】
従って、本実施形態に係る青果物皮剥ぎ処理装置2によれば、表皮91付きの青果物90の中で、じゃがいも、玉葱、人参等に例示されるように、複雑な幾何学的な立体形状をなし、表皮91が密着した状態で青果物本体を覆う青果物90の場合でも、表皮91をより簡単に取り除くことができる、という優れた効果を奏する。
【0089】
また、本実施形態に係る青果物皮剥ぎ処理装置2では、青果物90の表皮91を剥ぐにあたり、一対の第1刃具11(11A、11B)上に載置された状態にある青果物90に対し、一対の第1刃具11(11A、11B)及び第2刃具31に自転運動を伴いながら、第1刃12が、表皮91を剥離すると共に、第2刃32が、一対の第1刃具11(11A、11B)から青果物90の落下を規制した状態で、第2刃具31により表皮91を剥離すること、を特徴とする。
【0090】
この特徴により、処理する青果物90の大きさや形状に依らず、青果物90は、第2刃具31に基づき、安定性を維持しながら、一対の第1刃具11上に保持された状態で載置できている。そのため、青果物90の表皮91に対し、第1刃具11Aの第1刃12と、第1刃具11Bの第1刃12と、第2刃具31の第2刃32とが、より引っ掛かり易い状態にでき、青果物90全体の周囲を覆う表皮91の中で、削り残しを抑制して表皮91を剥ぐことができる。
【0091】
また、本実施形態に係る青果物皮剥ぎ処理装置2では、第3刃42が形成された第3刃具41を備え、第3刃具41は、双方の第1軸AX1かつ第2軸AX2と直交する第3軸AX3に沿い、一対の第1刃具11(11A、11B)と相対的に近接または離間するZ方向に移動可能であること、青果物90の表皮91に残存する除去対象物92を取り除くのにあたり、第3刃具41が、一対の第1刃具11(11A、11B)上に載置された状態にある青果物90の除去対象物92に向けて移動することにより、第3刃42が除去対象物92を切除すること、を特徴とする。
【0092】
この特徴により、除去対象物92が青果物90に残存している場合でも、表皮91を剥ぐ以外にも、除去対象物92が除去できることから、別途、除去対象物92だけを取り除く必要がなく、除去処理後の青果物93は、除去対象物92を含まず、調理する料理の具材として、使用することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る青果物皮剥ぎ処理装置2では、支持部材52は、第2軸AX2に沿うY方向に延びる回動軸54を支点Mに、基部51と相対的に回動可能であり、双方の第1軸AX1の軸方向に対し、他端側(図1中、左右方向左側)ある一対の第1刃具11(11A、11B)の後端部14が一対の第1刃具11(11A、11B)の先端部13より高くなる傾斜姿勢CLに水平姿勢HZの状態から傾く第1の傾斜動作と、一対の第1刃具11(11A、11B)の後端部14が一対の第1刃具11(11A、11B)の先端部13より低くなる傾斜姿勢CLに水平姿勢HZの状態から傾く第2の傾斜動作とが、選択可能であること、を特徴とする。
【0094】
この特徴により、第1の傾斜動作の場合、一対の第1刃具11上では、載置した青果物90は、図6に示すように、第1刃具11A(または第1刃具11Aの第1刃12)との第1接触部と、第1刃具11B(または第1刃具11Bの第1刃12)との第2接触部と、第2刃具31(または第2刃具31の第2刃32)との第3接触部に基づいた3箇所の接触部で、必然的に支持された状態となる。そのため、青果物90が、例えば、じゃがいもやサツマイモ等をなす周知の形状として、略棒状形状以外にも、略球体、略多面体、略錐体等、複雑で幾何学的な立体形状をなしていても、青果物90は、一対の第1刃具11上では、第1刃具11Aと第1刃具11Bとの間に形成される隙間部分に置かれ、少なくとも前述した3箇所の接触部により、安定した状態で保持され易くなる。それ故に、青果物皮剥ぎ処理装置2では、青果物90が、幾何学的に複雑な立体形状をなしていても、青果物90全体の周囲を覆う表皮91は、一対の第1刃具11の第1刃12と第2刃具31の第2刃32により、万遍に効率良く剥ぐことが可能となる。また、除去対象物92が、青果物90全体の周囲を覆う表皮91に残存していても、除去対象物92は、第3刃具41により、効率良く切除することが可能となる。
【0095】
また、表皮91が青果物90全体の周囲から剥ぎ取られた後、第2の傾斜動作を行うことにより、除去処理後の青果物93は、載置状態にある一対の第1刃具11上から落下して排出することができる。特に、青果物皮剥ぎ処理装置2が、青果物調理システム1内に組み込まれている場合には、一対の第1刃具11の後端部14を、その先端部13より低くなる傾斜姿勢CLに水平姿勢HZの状態から傾けることで、一対の第1刃具11上に載置された状態にある除去処理後の青果物93は、そのまま第2搬送経路4Dに落下させて収容することが可能になる。ひいては、青果物90から青果物片93Aを得るまでの一連の処理作業を、連続的に行うことができるようになる。
【0096】
また、本実施形態に係る青果物皮剥ぎ処理装置2では、基部51と支持部材52との回動角度θは、0≦θ<90(単位:deg)であること、を特徴とする。
【0097】
この特徴により、回動角度θを調節して変更するだけで、青果物90の皮剥き処理と、青果物90の除去対象物切除処理との双方を、自在に切り替えて行うことができる。
【0098】
また、本実施形態に係る青果物皮剥ぎ処理装置2では、第2刃具31の外径D2は、第1刃具11の外径D1と同等、または大きい(D1≦D2)こと、を特徴とする。
【0099】
この特徴により、青果物90が、玉葱やかぶ、さつまいも、里芋等のように、略球体形状で比較的大きい態様の野菜等であっても、青果物90は、一対の第1刃具11上に保持されている状態から落下し難くなる。特に、青果物90の表皮91に残存する除去対象物92を切除する場合に、支持部材52が、水平姿勢HZから、一例である回動角度θ2=45(deg)近傍の傾斜姿勢CLに傾けられても、青果物90は、第2刃具31により、安定した状態で保持することが可能になる。
【0100】
また、本実施形態に係る青果物調理システム1では、前述した青果物皮剥ぎ処理装置2と、表皮91または除去対象物92の少なくとも一方を取り除いた除去処理後の青果物93を搬送する第2搬送手段4と、除去処理後の青果物93を細断可能な切断手段5(第1切断刃5A、第2切断刃5B)と、切断手段5(第1切断刃5A、第2切断刃5B)により、除去処理後の青果物93を細断処理した青果物片93Aを回収する青果物片回収部77と、を備えること、を特徴とする。
【0101】
この特徴により、青果物調理システム1は、例えば、一般的な家庭内の厨房をはじめ、学校給食向けの厨房、病院内の厨房、子供や老人が入居している施設内の厨房、業務用の厨房等、各種の厨房で使用することができる。一例として、特に一般的な家庭内の厨房で、青果物調理システム1が設置されると、食事を家庭内で調理するにあたり、例えば、仕事、育児や子育て、家事等で多忙な調理者に代わって、青果物調理システム1は、青果物90から青果物片93Aを得るまでの調理の準備作業を、行うことができるようになる。
【0102】
従って、本実施形態に係る青果物調理システム1によれば、表皮91付きの青果物90の中で、じゃがいもや玉葱、人参等に例示されるように、複雑な幾何学的な立体形状をなし、表皮91が密着した状態で青果物本体を覆う青果物90の場合でも、表皮91をより簡単に取り除くことができるため、青果物90を利用した調理を補助的に行うことができる、という優れた効果を奏する。
【0103】
また、本実施形態に係る青果物調理システム1では、青果物片回収部77には、青果物片93Aを加熱する加熱手段6を備えること、を特徴とする。
【0104】
この特徴により、青果物90が、青果物皮剥ぎ処理装置2にセットされれば、食材の一種として、青果物片93Aを加熱した料理が、当該青果物調理システム1で調理することができるようになる。
【0105】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0106】
例えば、実施形態では、第1刃具11の第1刃12と第2刃具31の第2刃32を、すりおろし金の刃に似た小さな凸状の刃とした。また、第3刃具41の第3刃42を、ドリル刃に似たスパイラル状の刃とした。しかしながら、第1刃具の第1刃、第2刃具の第2刃、及び第3刃具の第3刃は、実施形態に限定されるものではなく、青果物の表皮を剥ぐことができ、表皮に残存する除去対象物を切除することができる構成になっていれば、種々変更可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 青果物調理システム(青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システム)
2 青果物皮剥ぎ処理装置
4 第2搬送手段(搬送手段)
5 切断手段(切断手段)
6 加熱手段
11、11A、11B 一対の第1刃具
12 第1刃
13 第1刃具の先端部
14 第1刃具の後端部
31 第2刃具
32 第2刃
41 第3刃具
42 第3刃
51 基部
52 支持部材
54 回動軸
76 青果物片回収部
90 青果物
91 表皮
92 除去対象物
93 除去処理後の青果物
93A 青果物片
θ 回動角度
M 支点
HZ 水平姿勢
CL 傾斜姿勢
D1 第1刃具の外径
D2 第2刃具の外径
AX1 第1軸
AX2 第2軸
AX3 第3軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な2本の第1軸を中心とする各周方向に、第1刃がそれぞれ形成された一対の第1刃具と
方の前記第1軸と垂直に位置する第2軸を中心に、周方向に第2刃が形成された第2刃具とを、いずれも自転可能な態様で有し、
前記第1刃具同士は、その間に置かれる青果物を保持可能な距離を確保した状態で配置されていると共に、
前記第2刃具の前記第2刃は、双方の前記第1軸の軸方向一端側にある前記一対の第1刃具の先端部と対向した配置で設けられていること、
前記一対の第1刃具と前記第2刃具は、基部と連結した支持部材上に載置され、前記支持部材を基準に前記第1刃具と前記第2刃具との相対的な高さとして、前記第2軸が前記第1軸より離れた位置関係で、配置されていること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
青果物の表皮を剥ぐにあたり、前記一対の第1刃具上に載置された状態にある青果物に対し、前記一対の第1刃具及び前記第2刃具に自転運動を伴いながら、前記第1刃が、表皮を剥離すると共に、前記第2刃具が、前記一対の第1刃具から青果物の落下を規制した状態で、前記第2刃により表皮を剥離すること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
第3刃が形成された第3刃具を備え、前記第3刃具は、水平面に対して直交する第3軸に沿い、前記一対の第1刃具と相対的に近接または離間する方向に移動可能であること、
青果物の表皮に残存する除去対象物を取り除くのにあたり、前記第3刃具が、前記一対の第1刃具上に載置された状態にある青果物の除去対象物に向けて移動することにより、前記第3刃が除去対象物を切除すること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
前記支持部材は、前記第2軸に沿う方向に延びる回動軸を支点に、前記基部と相対的に回動可能であり
方の前記第1軸の前記軸方向に対し、他端側ある前記一対の第1刃具の後端部が前記一対の第1刃具の前記先端部より高くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第1の傾斜動作と、前記一対の第1刃具の前記後端部が前記一対の第1刃具の前記先端部より低くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第2の傾斜動作とが、選択可能であること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
前記支持部材は、前記第2軸に沿う方向に延びる回動軸を支点に、前記基部と相対的に回動可能であり
方の前記第1軸の前記軸方向に対し、他端側ある前記一対の第1刃具の後端部が前記一対の第1刃具の前記先端部より高くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第1の傾斜動作と、前記一対の第1刃具の前記後端部が前記一対の第1刃具の前記先端部より低くなる傾斜姿勢に水平姿勢の状態から傾く第2の傾斜動作とが、選択可能であること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
前記基部と前記支持部材との回動角度θは、0≦θ<90(単位:deg)であること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載する青果物皮剥ぎ処理装置において、
前記第2刃具の外径は、前記第1刃具の外径と同等、または大きいこと、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載する前記青果物皮剥ぎ処理装置と、表皮または除去対象物の少なくとも一方を取り除いた除去処理後の青果物を搬送する搬送手段と、前記除去処理後の青果物を細断可能な切断手段と、前記切断手段により、前記除去処理後の青果物を細断処理した青果物片を回収する青果物片回収部と、を備えること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システム。
【請求項9】
請求項8に記載する青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システムにおいて、
前記青果物片回収部には、青果物片を加熱する加熱手段を備えること、
を特徴とする青果物皮剥ぎ処理装置を備えた調理システム。