(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104785
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】液圧式打撃装置
(51)【国際特許分類】
B25D 9/14 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B25D9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009135
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小柴 英俊
(72)【発明者】
【氏名】原 秀治
【テーマコード(参考)】
2D058
【Fターム(参考)】
2D058AA12
2D058CA03
2D058CB03
2D058CC03
2D058CC25
(57)【要約】
【課題】効率を向上させつつ、蓄圧機構を小型コンパクト化し得てメンテナンス性に優れた液圧式打撃装置を提供する。
【解決手段】液圧式打撃装置1は、シリンダ10の後端に設けられるバックヘッド60と、ピストン前室31とピストン後室32との間に画成されるピストン中室33と、バックヘッド60内に前後進可能に収嵌された蓄圧ピストン71と、蓄圧ピストン71とバックヘッド60との間に画成されてピストン中室33に接続された蓄圧前室61およびガスが封入された蓄圧後室62と、を備える。蓄圧ピストン71は、打撃ピストン20の前進行程時には、ピストン中室33に油圧エネルギとガスエネルギとを放出し、打撃ピストン20の後退行程時には、ピストン中室33から油圧エネルギとガスエネルギとを回収する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、該シリンダ内に前後進可能に摺嵌された打撃ピストンと、前記シリンダと前記打撃ピストンとの間に画成されたピストン前室およびピストン後室と、油圧ポンプで高圧回路に圧油を供給するとともに低圧回路から圧油をタンクに排出する油圧回路と、該油圧回路から前記ピストン前室および前記ピストン後室に供給される圧油の油路を切り替えて前記打撃ピストンを前記シリンダ内で前後進させて打撃用のロッドを打撃させる油路切替機構と、を備える液圧式打撃装置であって、
前記シリンダに付設される蓄圧シリンダと、前記ピストン前室と前記ピストン後室との間に画成されるピストン中室と、前記蓄圧シリンダ内に前後進可能に摺嵌された蓄圧ピストンと、前記蓄圧ピストンと前記蓄圧シリンダとの間に画成されて前記ピストン中室に接続された蓄圧前室およびガスが封入された蓄圧後室と、を備え、
前記蓄圧ピストンは、
前記打撃ピストンの前進行程時には、前記ピストン中室に油圧エネルギとガスエネルギとを放出し、
前記打撃ピストンの後退行程時には、前記ピストン中室から油圧エネルギとガスエネルギとを回収する、
ことを特徴とする液圧式打撃装置。
【請求項2】
前記蓄圧シリンダは、前記シリンダの後端に設けられるバックヘッドであり、
前記蓄圧ピストンは、該バックヘッドの内部に、前記打撃ピストンと同軸に配置されている請求項1に記載の液圧式打撃装置。
【請求項3】
前記シリンダに内蔵されて若しくは前記シリンダに付設したブロックに内蔵された絞り付きチェック弁を更に有し、
前記油路切替機構は、前記シリンダ内に形成されたバルブ室と、該バルブ室内に摺嵌されて前記打撃ピストンの前後進に応じて前後進する切替バルブと、を有し、該切替バルブの前後進によって前記ピストン前室および前記ピストン後室の少なくとも一方に供給される圧油を高圧回路と低圧回路とに切り替えるように構成され、
前記絞り付きチェック弁は、前記ピストン中室と前記バルブ室とを繋ぐ油路に介装されて該油路を絞るとともに、前記ピストン中室側の圧力が設定値を越えたときに前記バルブ室側に向けて該油路の絞り部分をより開くように設けられている請求項1に記載の液圧式打撃装置。
【請求項4】
前記油路切替機構は、前記シリンダの前記ピストン後室内に同軸に形成されたバルブ室と、該バルブ室内に前記打撃ピストンと同軸に摺嵌されて前記打撃ピストンの前後進に応じて前後進する前記切替バルブと、を有し、前記ピストン前室が常時高圧接続されるとともに、該切替バルブの前後進によって前記ピストン後室に供給される圧油を高圧回路と低圧回路とに切り替えるように構成されている請求項3に記載の液圧式打撃装置。
【請求項5】
当該液圧式打撃装置は、油圧ブレーカである請求項1から4のいずれか一項に記載の液圧式打撃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ブレーカ等の液圧式打撃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液圧式打撃装置では、効率(例えば打撃効率やエネルギ効率)を向上させるために、蓄圧機構として内蔵型のアキュムレータが用いられている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1記載の蓄圧機構は、打撃ピストンの軸方向の中間に、低圧が供給される中室を設けており、この中室の外周を囲繞するようにダイアフラム(ゴム膜)を配し、このダイアフラムを介したガス室によってエネルギの回収および放出を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、同文献記載の技術では、中室の外周を囲繞するようにダイアフラムを配しているので、蓄圧機構が大型化するとともに構造が複雑となり、メンテナンス性に改善の余地がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、効率を向上させつつ蓄圧機構を小型コンパクト化し得てメンテナンス性に優れた液圧式打撃装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る液圧式打撃装置は、シリンダと、該シリンダ内に前後進可能に摺嵌された打撃ピストンと、前記シリンダと前記打撃ピストンとの間に画成されたピストン前室およびピストン後室と、油圧ポンプで高圧回路に圧油を供給するとともに低圧回路から圧油をタンクに排出する油圧回路と、を備え、前記油圧回路から前記ピストン前室および前記ピストン後室に供給される圧油によって前記打撃ピストンを前記シリンダ内で前後進させて打撃用のロッドを打撃する液圧式打撃装置であって、前記シリンダに付設される蓄圧シリンダと、前記ピストン前室と前記ピストン後室との間に画成されるピストン中室と、前記蓄圧シリンダ内に前後進可能に摺嵌された蓄圧ピストンと、前記蓄圧ピストンと前記蓄圧シリンダとの間に画成されて前記ピストン中室に接続された蓄圧前室およびガスが封入された蓄圧後室と、を備え、前記蓄圧ピストンは、前記打撃ピストンの前進行程時には、前記ピストン中室に油圧エネルギとガスエネルギとを放出し、前記打撃ピストンの後退行程時には、前記ピストン中室から油圧エネルギとガスエネルギとを回収する。
【0006】
本発明の一態様に係る液圧式打撃装置の蓄圧機構によれば、蓄圧ピストンは、打撃ピストンの前進行程時には、ピストン中室に油圧エネルギとガスエネルギとを放出し、打撃ピストンの後退行程時には、ピストン中室から油圧エネルギとガスエネルギとを回収することができる。そのため、液圧式打撃装置の効率を向上させることができる。
そして、本発明の一態様に係る液圧式打撃装置によれば、蓄圧シリンダをシリンダに付設しており、この蓄圧シリンダ内に、蓄圧ピストンを前後進可能に摺嵌する蓄圧機構なので、特許文献1での打撃ピストンの外周を囲繞するようにダイアフラム(ゴム膜)を配するような蓄圧機構と比べて、蓄圧機構を小型コンパクト化し得てメンテナンス性に優れる。
【発明の効果】
【0007】
上述のように、本発明によれば、効率を向上させつつ蓄圧機構を小型コンパクト化し得てメンテナンス性に優れた液圧式打撃装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一態様に係る液圧式打撃装置の第一実施形態の基本構造を説明する模式図であり、同図(a)は打撃ピストンの後退行程、(b)は打撃ピストンの前進行程を示している。
【
図2】本発明の一態様に係る液圧式打撃装置の第二実施形態の基本構造を説明する模式図であり、同図(a)は打撃ピストンの後退行程、(b)は打撃ピストンの前進行程を示している。
【
図3】本発明の一態様に係る液圧式打撃装置の一実施例である油圧ブレーカの説明図であり、同図は油圧ブレーカの要部について、打撃ピストンの軸線に沿った縦断面を示しており、軸線より下側は後退行程に至る状態、上側は前進行程に至る状態をそれぞれ示している。
【
図5】
図4の絞り付きチェック弁の部分の拡大図である。
【
図6】本発明の一態様に係る液圧式打撃装置の第三実施形態の基本構造を説明する模式図であり、同図(a)は打撃ピストンの後退行程、(b)は打撃ピストンの前進行程を示している。
【
図7】本発明の一態様に係る液圧式打撃装置の第四実施形態の基本構造を説明する模式図であり、同図(a)は打撃ピストンの後退行程、(b)は打撃ピストンの前進行程を示している。
【
図8】本発明の一態様に係る液圧式打撃装置の第五実施形態の基本構造を説明する模式図であり、同図(a)は打撃ピストンの後退行程、(b)は打撃ピストンの前進行程を示している。
【
図9】本発明の一態様に係る液圧式打撃装置の第六実施形態の基本構造を説明する模式図であり、同図(a)は打撃ピストンの後退行程、(b)は打撃ピストンの前進行程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0010】
図1に第一実施形態示すように、本実施形態の液圧式打撃装置1は、シリンダ10と、シリンダ10内に前後進可能に摺嵌された打撃ピストン20と、を備える。シリンダ10内には、シリンダ10と打撃ピストン20との間にピストン前室31およびピストン後室32が画成されている。
シリンダ10には、油圧回路30および油路切替機構40が設けられ、油圧回路30により、油圧ポンプ2から高圧回路4に圧油を供給するとともに低圧回路5から圧油をタンク3に排出可能に構成されている。
【0011】
油圧ポンプ2からシリンダ10に圧油を供給することにより、油路切替機構40は、打撃ピストン20の前後進移動に応じて油路を切り替えて打撃ピストン20をシリンダ10内で前後進させる。そして、打撃用のロッド90は、打撃ピストン20の打撃によって軸方向に所定距離の往復移動をして打撃対象を打撃可能になっている。
【0012】
ここで、第一実施形態の液圧式打撃装置1は、ピストン前室31とピストン後室32との間にピストン中室33が画成されるとともに、シリンダ10の後端にバックヘッド60が設けられており、バックヘッド60の内部に蓄圧機構70が構成されている。つまり、蓄圧シリンダとしてバックヘッド60がシリンダ10に付設されている。
蓄圧機構70は、バックヘッド60内に前後進可能に収嵌された蓄圧ピストン71と、蓄圧ピストン71とバックヘッド60との間に画成されてピストン中室33に接続された前側の蓄圧前室61およびガス(例えば窒素ガス)が封入された後側の蓄圧後室62と、を打撃ピストン20の同軸上に備える。
【0013】
第一実施形態の蓄圧機構70においては、打撃ピストン20の前進行程時には、蓄圧ピストン71が前進してピストン中室33に油圧エネルギとガスエネルギとを放出し、打撃ピストン20の後退行程時には、蓄圧ピストン71が後退してピストン中室33から油圧エネルギとガスエネルギとを回収可能になっている。
【0014】
第一実施形態の液圧式打撃装置1の蓄圧機構70によれば、ピストン中室33が圧力補助室として機能し、打撃ピストン20の前進行程時には、ピストン中室33に油圧エネルギとガスエネルギとを放出し、打撃ピストン20の後退行程時には、ピストン中室33から油圧エネルギとガスエネルギとを回収できる。そのため、液圧式打撃装置1の効率を向上させることができる。
【0015】
そして、第一実施形態の液圧式打撃装置1によれば、バックヘッド60をシリンダ10の後端に設け、このバックヘッド60内に、蓄圧ピストン71を前後進可能に摺嵌する蓄圧機構70を構成しているので、ピストン中室33の外周を囲繞するように特許文献1でのダイアフラム(ゴム膜)を配するような蓄圧機構と比べて、蓄圧機構70を小型コンパクト化し得てメンテナンス性に優れている。
【0016】
次に、
図2に第二実施形態を示す。なお、上記第一実施形態と同一若しくは対応する構成には同一の符号を付すとともにその説明は適宜省略する。
同図に示すように、第二実施形態の液圧式打撃装置1では、絞り付きチェック弁80を更に有する点が第一実施形態と相違する。絞り付きチェック弁80は、シリンダ10に内蔵できる他、シリンダ10に付設したブロックに内蔵してもよい。
第二実施形態の絞り付きチェック弁80は、ピストン中室33と油路切替機構40とを繋ぐ油路に介装されて該油路を絞るとともに、ピストン中室33側の圧力が設定値を越えたときに油路切替機構40側に向けて該油路の絞りの部分をより開くように設けられている。
【0017】
このような構成であれば、後述する実施例でより詳しく説明するように、打撃ピストン20の前進行程で圧油の不足があれば、絞り付きチェック弁80を介してピストン中室33に不足する圧油を補給可能となる。
また、打撃行程から後退行程に移行する際、打撃点での反発によりピストン中室33側の圧力が設定圧よりも上昇したときには、絞り付きチェック弁80から圧力を開放できる。そのため、ピストン中室33自体を、ピストン後退時のブレーキおよびピストン前進時の加速に寄与する構成とする上で好適である。
【0018】
次に、本発明に係る液圧式打撃装置を実施例に基づき
図3~
図5を適宜参照しつつ説明する。
本実施例は油圧ブレーカへの適用例であり、特に、油路切替機構が打撃ピストン後部のピストン後室内に同軸に設けられている例である。なお、上述した実施形態と同様若しくは対応する構成には同一の符号を付すとともにその説明は適宜省略する。また、油圧回路30の構成は、上記
図1,
図2に示す実施形態同様なので図示およびその説明を省略する。
【0019】
図3に示すように、本実施例の油圧ブレーカ1は、自身先端側からチゼル90(打撃用のロッドに対応)が挿着され、自身内部に打撃ピストン20が摺嵌されるシリンダ10と、シリンダ10の後部に設けられたバックヘッド60と、を有するブレーカ本体1を備える。シリンダ10には、油路切替機構40を構成する切替バルブ50がピストン後室32の内部に、打撃ピストン20と同軸に配置されている。
【0020】
本実施例では、
図4に要部を拡大図示するように、打撃ピストン20の後部には、後方に伸びる小径部24が設けられ、シリンダ10内には、打撃ピストン20の小径部24を囲繞する位置に後室ライナ41が収嵌されており、後室ライナ41の内部であって小径部24の後端に対向するピストン後室32がピストン20との間に画成されている。なお、後室ライナ41は、軸方向前方の前側ライナ41aと、軸方向後方の後側ライナ41bとから構成される。
【0021】
そして、本実施例の油路切替機構40は、シリンダ10後部のピストン後室32内に、打撃ピストン20の前後進に応じて前後進する切替バルブ50が打撃ピストン20と同軸に摺嵌されている。
つまり、本実施例の油路切替機構40では、ピストン後室32が油路切替機構40のバルブ室を兼ねており、ピストン後室32の内周面に、切替バルブ50が軸方向にスライド移動可能に摺嵌されている。
【0022】
より詳しくは、切替バルブ50は、中空円筒状の弁体であり、軸方向前後の端面が同一径・同一面積の受圧面とされている。切替バルブ50の中空円筒部には、軸方向前方から順に、バルブ保持流路51、低圧接続流路52、および中室接続流路53が軸方向に離隔して軸直方向に貫通形成されている。
また、後室ライナ41には、軸方向前方から順に、後室開閉ポート42、バルブ切替ポート43、バルブ低圧ポート44、バルブ付勢ポート45、中室接続ポート46、およびリリーフポート47が軸方向に離隔して軸直方向に貫通形成されている。
【0023】
後室開閉ポート42は、高圧回路4と常時連通している。バルブ切替ポート43は、打撃ピストン20の前後進に応じて切替パイロットポート13を介して高圧接続ポート12との連通状態と遮断状態とに切り替わる。また、バルブ低圧ポート44は、低圧回路5に常時連通する低圧接続ポートとなっている。バルブ付勢ポート45は、高圧回路4と常時連通している。中室接続ポート46は、ピストン中室33に接続されている。リリーフポート47は、低圧回路5と常時連通している。
【0024】
そして、本実施例のブレーカ本体1には、バックヘッド60の内部に蓄圧機構70が設けられている。本実施例の蓄圧機構70は、バックヘッド60の内部に蓄圧ピストン71が前後進可能に摺嵌されるとともに、蓄圧ピストン71の前後に、蓄圧前室61および蓄圧後室62が画成されて構成される。
蓄圧ピストン71は、上記各実施形態同様に、打撃ピストン20の前進行程時には、ピストン中室33に油圧エネルギとガスエネルギとを放出し、打撃ピストン20の後退行程時には、ピストン中室33から油圧エネルギとガスエネルギとを回収可能になっている。なお、蓄圧前室61は、ピストン中室33と同等以上の容積(ピストン中室33での打撃ピストン20の行程容積≦蓄圧前室61の行程容積)に設定されている。
【0025】
また、本実施例のブレーカ本体1には、シリンダ10の内部に、上記第二実施形態同様に、絞り付きチェック弁80が設けられている。本実施例の絞り付きチェック弁80は、
図5に拡大図示するように、中空円筒状の弁本体81を有する。弁本体81は、シリンダ10の内部に打撃ピストン20の軸線と並行して形成された装着穴に挿入される。
弁本体81には、装着穴の開口側に導油路81aが開口しており、装着穴の底側に導油路81aよりも大径の弁室81cが形成されている。導油路81aと弁室81cとが接続する部分がシート部になっている。そして、シート部の弁室81c側であって中室接続ポート46に対向する位置に、連通路81bが軸直方向に貫通形成されている。
【0026】
本実施例の絞り付きチェック弁80は、装着穴の底部側に弁座83が嵌め込まれる。そして、弁座83の弁本体81側の面に座繰りによりスプリング84の座面となる凹部が形成され、この凹部内にスプリング84が挿入されている。さらに、このスプリング84の押圧力に抗してチェックバルブ82が装着穴に挿入される。その状態で弁本体81が装着穴に装着され、弁本体81が弁座83に当接した位置で固定される。
【0027】
チェックバルブ82には、シート部に当接する部分に円錐台形状の斜面が形成されてチェック弁部が構成される。また、チェックバルブ82の円錐台形状の中心に、軸方向に貫通する小径の絞り孔82aが形成されるとともに、チェックバルブ82の円筒部にその軸直方向に、絞り孔82aに連通する連通孔82bが形成されている。
連通孔82bは、スプリング84の押圧力でチェックバルブ82がシート部に当接してチェック弁部を閉じているときには、導油路81aの圧油を絞り孔82aから連通孔82bを介して油路切替機構40の中室接続ポート46と連通させている。
【0028】
そして、上記スプリング84の押圧力は、ピストン中室33側の圧力に対応する所期の値に予め設定されており、ピストン中室33側の圧力が設定値を越えたときに、チェックバルブ82がスプリング84の押圧力に抗して弁座83側にスライド移動してシート部の油路を開くようになっている。
シート部の油路が開かれると、導油路81aの圧油が絞り孔82aよりも大径の連通路81bに直接流れ込み、ピストン後室(バルブ室)32側に向けて導油路81aの絞り孔82aの部分よりも開くようになっている。
【0029】
次に、本実施例の油圧ブレーカの動作および作用・効果について説明する。
本実施例の油圧ブレーカを駆動するときは、まず、ブレーカ本体1の油圧回路30に圧油を供給する(
図1,
図2参照)。ピストン前室31に高圧が供給されて、打撃ピストン20は
図3右側に向かって後退を開始する。このとき、切替バルブ50はバルブ高圧保持により前端に位置している。
【0030】
これにより、
図3の中心線下側に示すように、切替バルブ50は軸方向前端に位置し、前室高圧・後室低圧状態となってピストン後退行程となり、打撃ピストン20が打撃点を越えて後退する。打撃ピストン20の後退によって、打撃ピストン20の前側大径部21前縁がシリンダ10側の切替パイロットポート13まで後退すると切替パイロットポート13が高圧接続ポート12に連通して高圧接続される。
【0031】
そのため、切替パイロットポート13に連通するピストン後室(バルブ室)32側のバルブ切替ポート43に高圧がパイロット圧として供給される。バルブ切替ポート43に高圧が供給されると、切替バルブ50はバルブ切替ポート43の部分でバルブ付勢ポート45に抗する。
これにより、切替バルブ50は後退を開始し軸方向後方に移動し後端に位置する。切替バルブ50がピストン後室(バルブ室)32の後端に位置する間に、切替バルブ50がピストン後室(バルブ室)32の後端に接する前に後室開閉ポート42を開きピストン後室(バルブ室)32に高圧を接続する。バルブ保持流路51から圧油が供給されてバルブ室32内が低圧から高圧になりピストン前進行程に移行する。
【0032】
図3の中心線上側に示す前進行程では、油圧ポンプ2からの圧油は後室開閉ポート42を通ってピストン後室32に流れ込む。これにより、打撃ピストン20は、自身前後の受圧面積差により打撃点の方向(矢印方向)に前進する。
切替パイロットポート13は、ピストン前室31の後端に連通して高圧となっている。また、その切替パイロットポート13に連通するバルブ切替ポート43にもバルブ保持流路51を通して高圧が供給されて切替バルブ50も高圧にさらされている。このとき、切替バルブ50は、バルブ付勢ポート45の部位での受圧面とバルブ切替ポート43の部位での受圧面との受圧面積差により、ピストン後室(バルブ室)32の最後部(
図3の右側)の位置に保持される。
【0033】
打撃ピストン20が前進するにつれて、前側大径部21が切替パイロットポート13とピストン前室31の後端との連通状態を遮断する。次いで、環状溝23が切替パイロットポート13と低圧接続ポート14とを連通させる。
これにより、バルブ室32のバルブ切替ポート43が低圧回路5に接続される。そのため、ピストン後室(バルブ室)32が高圧から低圧に切り替わる。環状溝23は、環状溝23の前後両側で切替バルブ50の切り替え圧を打撃点に至るよりも前に低圧接続する。
【0034】
その結果、
図3の中心線下側に示すように、切替バルブ50は、高圧回路4と常時連通するバルブ付勢ポート45の部位での切替バルブ50の受圧面が受ける前方への付勢力によって軸方向の位置を前方へと変える。
また、ピストン後室(バルブ室)32が低圧に切り替わると、ピストン前室31は、高圧接続ポート12が高圧回路4に常時接続されているので常時高圧とされているため、打撃ピストン20は再び後退を開始する。
【0035】
このように、打撃ピストン20の前後進に応じ、油圧回路30の圧油の流路が油路切替機構40で切り換えられて打撃ピストン20が軸線CL上で前後進を繰り返し行われる。そして、打撃ピストン20によるチゼル90後端への打撃によって所望の打撃動作を繰り返し行うことができる。
ここで、本実施例の油圧ブレーカにおいて、蓄圧ピストン71は、打撃ピストン20の前進行程時には、ピストン中室33に油圧エネルギおよびガスエネルギを放出し、打撃ピストン20の後退行程時には、ピストン中室33から油圧エネルギおよびガスエネルギを回収する。そのため、油圧ブレーカの打撃効率およびエネルギ効率を向上させることができる。
【0036】
そして、本実施例の油圧ブレーカによれば、バックヘッド60をシリンダ10の後端に設けており、このバックヘッド60内に蓄圧ピストン71を前後進可能に摺嵌する蓄圧機構なので、ピストン中室33の外周を囲繞するようにダイアフラム(ゴム膜)を配するような蓄圧機構と比べて、蓄圧機構を小型コンパクト化し得てメンテナンス性に優れる(発明1)。
【0037】
また、本実施例の油圧ブレーカであれば、バックヘッド内蔵型の蓄圧ピストン71を採用することにより、蓄圧ピストン71の外径および圧縮比を大きく確保できる。これにより、短いストロークであっても、油圧エネルギおよびガスエネルギの効率良い回収および放出が可能となる。そのため、効率を向上させつつ小型コンパクト化し得てメンテナンス性に優れた蓄圧機構として好適である。
【0038】
特に、本実施例の油圧ブレーカであれば、蓄圧機構70を小型コンパクト化し得て、さらに、封入ガス圧を低く抑えられるので始動圧を低くできる。よって、打撃ピストン20が後退を開始する始動圧(ピストンが打撃できる最低打撃圧)をより低くしても始動が可能となる。そのため、ミニショベルの油圧-油量特性にベストマッチ可能となる。つまり、バックヘッド内蔵型の蓄圧ピストン71により、ブラダ型の油圧アキュムレータを外付けする場合と比較してよりコンパクトな構成が可能である。
【0039】
また、本実施例の油圧ブレーカの蓄圧機構70であれば、ピストン型アキュムレータと比較しても、バックヘッド内蔵型の蓄圧ピストン71であれば受圧面積をより大きくできる。そのため、低圧ガスの封入で蓄圧機構を実現できる。
また、本作動機構のように、ピストン中室33を、中室回路6を通して蓄圧前室61に接続しているため、トップ側の油圧シールやガスシールは不要となる。これによりピストンの打撃速度に影響するしゅう動抵抗を軽減でき機械効率向上にもつながる。
【0040】
また、本実施例の油圧ブレーカの蓄圧機構70では、蓄圧前室61がピストン中室33と同等以上の容積(ピストン中室33での打撃ピストン20の行程容積≦蓄圧前室61の行程容積)に設定されているため、ピストン中室33での圧力変動を軽減して打撃ピストン20の挙動が安定する。換言すれば、供給側の行程容積が少ないとピストン中室33の圧力が下がり打撃ピストン20の挙動が不安定になるおそれがありメタルタッチを引き起こしやすくなる。
【0041】
これに対し、本実施例の油圧ブレーカの蓄圧機構70であれば、蓄圧前室61の行程容積が最適化されているので、機械効率を向上させる上で好適である。特に、蓄圧前室61の行程容積の最適化により、打撃ピストン20の挙動を安定化させることで、打撃ピストン22の小径部24と後室ライナ41のしゅう動部との隙間を最小にでき、さらに、ピストン中室33とピストン後室32との間の圧油の漏れを最小にすることで一層の効率向上にもつながる。
【0042】
さらに、本実施例の油圧ブレーカでは、ピストン中室33とバルブ室32との間に、絞り付きチェック弁80をシリンダ10に内蔵、若しくは、絞り付きチェック弁80を内蔵したブロックをシリンダ10に付設している。
これにより、本実施例の油圧ブレーカによれば、打撃ピストン20の後退行程時にピストン中室33の圧力が上がり過ぎれば、絞り付きチェック弁80が開き、ピストン中室33の圧油を低圧回路5に接続して圧力を開放するとともに圧油を循環させることができる。また、打撃ピストン20の前進行程時には、絞り付きチェック弁80の(固定)絞りを介して接続しているので、ピストン中室33の圧油に不足があれば高圧油を補充できる(発明2)。
【0043】
すなわち、
図3に示すように、打撃ピストン20が打撃行程(
図3下側)から後退行程に移行し、ピストン中室33から蓄圧ピストン71に圧油が回収される。このとき、絞り付きチェック弁80がピストン中室33とバルブ室32とを繋ぐ油路に介装されている場合、ピストン中室33内の圧力が絞り付きチェック弁80に設定された規定値よりも上昇すると、ピストン中室33と低圧回路5とを接続する絞り付きチェック弁80が開く。
【0044】
打撃ピストン20の後退行程では、ピストン中室33は蓄圧ピストン71に圧油を戻す。また、ピストン中室33は、バルブ低圧溝を介して低圧回路5に接続される。打撃ピストン20の後退行程中、ピストン中室33が絞り付きチェック弁80の設定圧よりも上昇すると、絞り付きチェック弁80が開き、ピストン中室33は低圧回路5に接続される。よって、ピストン中室33自体も、ピストン後退時のブレーキおよびピストン前進時の加速に寄与する。
【0045】
また、
図3に示すように、絞り付きチェック弁80が介装されている場合、打撃ピストン20の前進行程(
図3上側)において、蓄圧ピストン71の圧油がピストン中室33に回収される。圧油の不足分は、高圧油が絞り付きチェック弁80内の絞りを通ってピストン中室33に補給される。打撃ピストン20の前進行程では、ピストン中室33がバルブ外周孔を介して高圧回路4に接続され、ピストン中室33で不足する圧油がこの高圧油によって補われる。
【0046】
打撃点で反発を受けると、ピストン中室33の圧油は蓄圧ピストン71の蓄圧前室61に戻る。打撃ピストン20の後退行程中、ピストン中室33が絞り付きチェック弁80の設定圧よりも上昇すると、絞り付きチェック弁80が開き、ピストン中室33は低圧回路5に接続される。これにより、ピストン中室33自体も、打撃ピストン20の後退時のブレーキおよび打撃ピストン20の前進時の加速に寄与する。
【0047】
以上説明したように、上記実施形態の液圧式打撃装置および実施例の油圧ブレーカによれば、効率を向上させつつ蓄圧機構を小型コンパクト化し得てメンテナンス性に優れている。なお、本発明に係る液圧式打撃装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【0048】
例えば、上記実施例では油圧ブレーカを例示したが、本発明に係る液圧式打撃装置は、油圧ブレーカに限定されず、例えばさく岩機に適用できる。
また、例えば上記実施例では、蓄圧シリンダは、シリンダ10の後端に設けられるバックヘッド60であり、蓄圧ピストン71は、該バックヘッド60の内部に、打撃ピストン20と同軸に配置されている例を示したが、シリンダ10の後端に限定されず、蓄圧シリンダは、シリンダ10に付設されていれば例えば側面に配置してもよい。
【0049】
また、例えば上記実施形態ないし実施例では、ピストン前室が常時高圧でピストン後室を高低圧に切り替える後室切換型油路切替機構を例示したが、これに限定されるものではない。
つまり、蓄圧機構70とピストン中室が接続していれば本発明に係る蓄圧機構が成立することから、採用可能な油路切替機構としては、後室切換型油路切替機構の他、例えば
図6に示す第三実施形態および
図7に示す第四実施形態のように、ピストン後室が常時高圧でピストン前室を高低圧に切り替える前室切換型油路切替機構を採用できるし、また、例えば
図8に示す第五実施形態および
図9に示す第六実施形態のように、ピストン前室およびピストン後室を交互に高低圧に切り替える前後室交番型油路切替機構を採用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 ブレーカ本体(液圧式打撃装置)
2 油圧ポンプ
3 タンク
4 高圧回路
5 低圧回路
6 中室回路
7 連通回路
10 シリンダ
11 シリンダライナ
12 高圧接続ポート
13 切替パイロットポート
14 低圧接続ポート
20 打撃ピストン
21 前側大径部
22 後側大径部
23 環状溝
24 小径部
30 油圧回路
31 ピストン前室
32 ピストン後室(バルブ室)
33 ピストン中室
40 油路切替機構
41 後室ライナ
42 後室開閉ポート
43 バルブ切替ポート
44 バルブ低圧ポート
45 バルブ付勢ポート
46 中室接続ポート
47 リリーフポート
48 可変絞り
50 切替バルブ
51 バルブ保持流路
52 低圧接続流路
53 中室接続流路
60 バックヘッド(蓄圧シリンダ)
61 蓄圧前室
62 蓄圧後室
63 ガス供給口
70 蓄圧機構
71 蓄圧ピストン
72 油圧シール
73 ガスシール
80 絞り付きチェック弁
81 弁本体
81a 導油路
81b 連通路
81c 弁室
82 チェックバルブ
82a 絞り孔
82b 連通孔
83 弁座
84 スプリング
90 チゼル(ロッド)