(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104787
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1368 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
G02F1/1368
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009138
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森本 政輝
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲平
【テーマコード(参考)】
2H192
【Fターム(参考)】
2H192AA24
2H192BC42
2H192CB02
2H192CB08
2H192CB37
2H192CB83
2H192CC04
2H192CC55
2H192EA04
2H192EA13
2H192EA15
2H192EA22
2H192EA42
2H192EA43
2H192EA56
2H192EA67
2H192FB15
2H192GD23
2H192JA33
(57)【要約】
【課題】信頼性の高い、高精細映像信号線を実現する。
【解決手段】
第1の方向に延在する第1の遮光膜105と、映像信号線52がTFT基板に形成された液晶表示装置であって、前記映像信号線52は、前記第1の遮光膜105と重複しない領域において、延在方向が前記第1の方向に直交する第2の方向に対して第1の角度で延在する第1の部分と、前記第1の遮光膜と重複する領域において、延在方向が前記第2の方向に対して第2の角度で延在する第2の部分と、前記延在方向が前記第2の方向である第3の部分と、延在方向が前記第2の方向に対して第4の角度で延在する第4の部分とを有し、前記第2の角度及び前記第4の角度は、前記第1の角度よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在する第1の遮光膜と、映像信号線がTFT基板に形成された液晶表示装置であって、
前記映像信号線は、
前記第1の遮光膜と重複しない領域において、延在方向が前記第1の方向に直交する第2の方向に対して第1の角度で延在する第1の部分と、
前記第1の遮光膜と重複する領域において、延在方向が前記第2の方向に対して第2の角度で延在する第2の部分と、前記延在方向が前記第2の方向である第3の部分と、延在方向が前記第2の方向に対して第4の角度で延在する第4の部分とを有し、
前記第2の角度及び前記第4の角度は、前記第1の角度よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2の角度と前記第4の角度は同じであることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
第1の映像信号線は請求項1の映像信号線の構成を有し、
第2の映像信号線は請求項1の映像信号線の構成を有し、
第1の領域は、前記第1の映像信号線の前記第1の部分と前記第2の映像信号線の前記第1の部分の間に位置し、
第3の領域は、前記第1の映像信号線の前記第3の部分と前記第2の映像信号線の前記第3の部分との間に位置し、
前記第1の映像信号線と前記第2の映像信号線の距離は、前記第3の領域において、前記第1の領域よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1の領域において、画素電極が存在し、
前記第1の映像信号線と前記画素電極の間を接続するTFTが存在し、
前記第3の領域には、前記画素電極と前記TFTを接続するスルーホールが形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記画素電極は有機パッシベーション膜の上に形成され、前記TFTは前記有機パッシベーション膜の下に形成され、
前記スルーホールは、前記有機パッシベーション膜に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
コモン電極が、容量絶縁膜を介して、前記画素電極と重複して形成され、
前記コモン電極と重複して第2の遮光膜が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第2の遮光膜は、前記第1の遮光膜、前記第1の映像信号線、及び、前記第2の映像信号線と重複して形成されていることを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記TFT基板と対向して対向基板が配置し、
前記TFT基板と前記対向基板との間隔は、前記スルーホールに形成された柱状スペーサによって維持されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記TFT基板と対向して対向基板が配置し、
カラーフィルタ及びブラックマトリクスは前記対向基板に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記TFT基板と対向して対向基板が配置し、
カラーフィルタは前記TFT基板の前記有機パッシベーション膜と重複して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記カラーフィルタは前記有機パッシベーション膜の下に形成されていることを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
第2の遮光膜が、前記第1の遮光膜、前記第1の映像信号線、及び、前記第2の映像信号線と重複して形成されていることを特徴とする請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記対向基板の表示領域にはブラックマトリクスは存在していないことを特徴とする請求項12に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして画素毎に、液晶分子によりバックライトからの光の透過率を制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置は、VR(Virtual Reality)表示装置(以後VRともいう)等の、高精細画面を必要とする表示装置にも使用される。高精細画面では、画素ピッチが小さくなるので、画素の透過率が問題となる。
【0004】
一方、液晶は偏光光のみ制御できるので、バックライトからの光のうち、下偏光板によって、特定の偏光方法の光のみ取り込み、液晶層でこれを変調し、上偏光板から特定の偏光方向を有する光が画像として出射する。偏光眼鏡等を使用している場合、光の偏向方向の関係で、液晶表示装置からの画像が見えにくくなる場合がある。特許文献1は、画素電極の形状を変えてこれを対策する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
VR等に使用される高精細画面では、画素ピッチが非常に小さくなる。例えば、単独の画素の大きさが7μm×21μmというように非常に小さい。なお、液晶画面は、赤画素、緑画素、青画素で構成され、各々の画素をサブ画素と呼ぶこともあるが、本明細書では、画素と呼ぶ。このような小さい画素においては、画素電極の形状の調整には限界がある。
【0007】
一方、画素ピッチが小さくなっても、画素電極とTFTを接続するための、有機パッシベーション膜に形成するスルーホールの大きさを小さくすることは難しい。有機パッシベーション膜は、所定の厚さが必要だからである。そうすると、大きなスルーホールを小さな画素内にどのように配置するかが問題になる。
【0008】
本発明の課題は、以上のような問題点を解決するものであり、必要な画質を有する高精細液晶表示装置を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0010】
(1)第1の方向に延在する第1の遮光膜と、映像信号線がTFT基板に形成された液晶表示装置であって、前記映像信号線は、前記第1の遮光膜と重複しない領域において、延在方向が前記第1の方向に直交する第2の方向に対して第1の角度で延在する第1の部分と、前記第1の遮光膜と重複する領域において、延在方向が前記第2の方向に対して第2の角度で延在する第2の部分と、前記延在方向が前記第2の方向である第3の部分と、延在方向が前記第2の方向に対して第4の角度で延在する第4の部分とを有し、前記第2の角度及び前記第4の角度は、前記第1の角度よりも大きいことを特徴とする液晶表示装置。
【0011】
(2)前記第2の角度と前記第4の角度は同じであることを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0012】
(3)第1の映像信号線は請求項1の映像信号線の構成を有し、第2の映像信号線は請求項1の映像信号線の構成を有し、第1の領域は、前記第1の映像信号線の前記第1の部分と前記第2の映像信号線の前記第1の部分の間に位置し、第3の領域は、前記第1の映像信号線の前記第3の部分と前記第2の映像信号線の前記第3の部分との間に位置し、前記第1の映像信号線と前記第2の映像信号線の距離は、前記第3の領域において、前記第1の領域よりも大きいことを特徴とする(1)に記載の液晶表示装置。
【0013】
(4)前記第1の領域において、画素電極が存在し、前記第1の映像信号線と前記画素電極の間を接続するTFTが存在し、前記第3の領域には、前記画素電極と前記TFTを接続するスルーホールが形成されていることを特徴とする(3)に記載の液晶表示装置。
【0014】
(5)前記画素電極は有機パッシベーション膜の上に形成され、前記TFTは前記有機パッシベーション膜の下に形成され、前記スルーホールは、前記有機パッシベーション膜に形成されていることを特徴とする(4)に記載の液晶表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】実施例1による液晶表示装置の表示領域の断面図である。
【
図5】映像信号線の間隔の比較を示す平面図である。
【
図6】本発明の実施例1による画素部分の平面図である。
【
図7】本発明の実施例2による画素部分の断面図である。
【
図8】本発明の実施例2による画素部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に実施例によって本発明の内容を詳細に説明する。液晶表示装置には、画素電極とコモン電圧の上下関係によって、画素電極トップ、コモン電極トップの方式が存在する。また、従来は、カラーフィルタは対向基板に形成される場合が多かったが、高精細液晶表示装置では、TFT基板に形成される場合もある。これは、COA(Color Filter on Array)と呼ばれている。本発明は、このいずれの方式でも適用することが出来る。
【実施例0017】
図1は液晶表示装置の平面図であり、
図2は
図1のA-A断面図である。
図1及び
図2において、TFT基板100と対向基板200が周辺でシール材150を介して接着し、内部に液晶300が封止されている。TFT基板100と対向基板200が重なった領域に表示領域50が形成されている。表示領域50内のTFT基板100には、横方向(x方向)に走査線51が延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、映像信号線52が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線51と映像信号線52に囲まれた領域に画素53が形成されている。
【0018】
TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板100が対向基板200と重なっていない部分は端子領域60となっている。端子領域60には、液晶表示装置に電源や信号を供給するためのフレキシブル配線基板62が接続している。また、端子領域60には、映像信号等を形成するための、ドライバIC61が配置している。なお、端子領域60の面積が小さい場合は、ドライバIC62はフレキシブル配線基板側に搭載される場合もある。
【0019】
TFT基板100と対向基板200の間隔、すなわち、液晶層300の厚さは、表示領域全体にわたって一定に保たれている必要がある。このために、
図2においては、柱状スペーサ10、20を対向基板200側に配置し、TFT基板100と対向基板200の間隔を維持している。なお、柱状スペーサは、以下の実施例に示すように、TFT基板100側に形成される場合もある。
図2の説明は、柱状スペーサの作用を、柱状スペーサが対向基板200側に形成された場合を例にとって説明しているものであり、
図3及び
図7に示すように柱状スペーサをTFT100基板側に形成した場合にも同様な作用となる。また、詳述しないがTFT基板側に形成されたスペーサに対向基板200側に形成されたスペーサを当接させ、2つのスペーサによりTFT基板100と対向基板200の間隔を維持するものであってもよい。
【0020】
柱状スペーサにはメイン柱状スペーサ10とサブ柱状スペーサ20が存在している。メイン柱状スペーサ10は通常状態において、TFT基板100と対向基板200の間隔を規定している。サブ柱状スペーサ20は、メイン柱状スペーサ10より高さが低く形成されている。サブ柱状スペーサ20は通常状態ではTFT基板100に接触していないが、対向基板200あるいはTFT基板100に押し圧力が加わった場合にTFT基板100に接触することによって、TFT基板100と対向基板200のギャップが極端に小さくなることを防止している。サブ柱状スペーサ20の直径はメイン柱状スペーサ10の直径よりも大きく、また、サブ柱状スペーサ20の数はメイン柱状スペーサ10の数よりも多い。
【0021】
図1において、表示領域50の両側の額縁部分には、
図3及び
図7において後述するように、走査信号を形成する走査信号駆動回路が形成されている。本実施例では、表示領域50のTFTには酸化物半導体TFTが使用され、上述の走査信号駆動回路のような周辺駆動回路には、ポリシリコン半導体TFTが使用されている。ポリシリコン半導体は移動度が酸化物半導体よりも大きいので、周辺駆動回路の形成には好適である。一方、酸化物半導体を用いたTFTは、移動度はポリシリコン半導体よりも小さいが、リーク電流がポリシリコン半導体を用いたTFTよりも小さいので、画素におけるスイッチング素子として好適である。
【0022】
図3は、比較例による液晶表示装置における、酸化物半導体TFTを有する画素領域の断面図と額縁領域に形成されたポリシリコン半導体TFTを有する周辺駆動回路の断面図である。
図3において、左側は周辺駆動回路の断面図であり、右側が画素部の断面図である。画素部も周辺駆動回路も同一のプロセスで形成されるので、周辺駆動回路部も画素部も同じ層は同じ番号となっている。周辺駆動回路において、回路の詳細は省略されており、回路に使用されるポリシリコン半導体102を用いたTFTのみ記載されている。
【0023】
図3において、例えば、ガラスで形成されたTFT基板100の上に下地膜101が形成されている。下地膜101の役割は、ガラス基板100等からの不純物がポリシリコン半導体102あるいは酸化物半導体107を汚染することを防止することである。下地膜101は一般には、窒化シリコン層(以後SiN層とも言う)と酸化シリコン層(以後SiOとも言う)の2層構造となっている。
【0024】
下地膜101の上には、周辺駆動回路において、ポリシリコン半導体膜102が形成されている。ポリシリコン半導体膜102は、当初はa-Si膜が形成され、これがエキシマレーザによってポリシリコンに変換されたものである。下地膜101とa-Si膜はCVD(Chemical Vapor Deposition)によって連続して形成される。
【0025】
ポリシリコン半導体膜102を覆って、第1ゲート絶縁膜103が形成される。第1ゲート絶縁膜103は、TEOS(Tetraethoxysilane)を原料としたSiO膜である。第1ゲート絶縁膜103の上に第1ゲート電極104が形成される。第1ゲート電極104は、MoW、Ti、又は、Ti-Al-Tiの積層膜等で形成される。一方、画素側では、第1ゲート電極104と同じ材料で、同じプロセスによって、第1遮光膜105が形成されている。第1遮光膜105は、
図1における走査線51と同じ方向に延在し、走査線51と同じ方向に配列している。第1遮光膜105は、酸化物半導体TFT、スルーホール130等を下側から覆って、バックライトからの光を遮光する。
【0026】
以後の説明は、画素の断面構造について行う。下地膜101を覆って、SiO膜による第1ゲート絶縁膜103が形成されている。第1ゲート絶縁膜103の上に形成される第1遮光層105を覆って第2ゲート絶縁膜106が形成されている。第2ゲート絶縁膜106の上に形成される酸化物半導体膜107は、第2ゲート電極109の下及び第1遮光膜105の上において、TFTのチャンネルを形成する。
【0027】
酸化物半導体膜107を覆って第3ゲート絶縁膜110が形成されている。第3ゲート絶縁膜110は2層のSiO層で形成されている。酸化物半導体膜107のチャンネル部に対応する部分は、酸素リッチな第1SiO層であり、その他の部分は緻密な膜を有する第2SiO膜である。第1SiO膜は酸化物半導体膜107に酸素を供給出来るようにするために、酸素リッチな膜としている。
【0028】
第3ゲート絶縁膜110の上に第2ゲート電極109が形成されている。第2ゲート電極109の材料は、第1ゲート電極103と同様な材料を使用することが出来る。ところで、
図3では、第2ゲート電極109の下にTFTのチャンネル部が形成されるトップゲートになっているが、第1遮光膜105にゲート電圧を印加すれば、デュアルゲート方式のTFTとすることが出来る。この場合、第1遮光膜105は第1ゲート電極104と同じ金属材料であり、表示領域50においては走査線51と同じ第2の走査線を兼ねるものである。
【0029】
第3ゲート絶縁膜110形成後、周辺駆動回路では、3層の絶縁膜、すなわち、第1ゲート絶縁膜103、第2ゲート絶縁膜106及び第3ゲート絶縁膜110にスルーホール1112を形成して第1ドレイン電極1111を形成し、スルーホール1122を形成して第2ソース電極1121を形成する。第1ドレイン電極1111及び第1ソース電極1121は、第2ゲート電極109と同じ材料であり、同じプロセルで形成され、ポリシリコン半導体膜102に接続される。
【0030】
第2ゲート電極109を覆って第1層間絶縁膜125が形成されている。第3ゲート絶縁膜110もSiN層及びSiO層の2層構造のものが多い。また、SiO層が下層の場合が多い。酸化物半導体膜107から酸素を抜かないようにするためである。
【0031】
第1層間絶縁膜125を形成後、周辺駆動回路では、第1層間絶縁膜125にスルーホールを形成して第1ドレイン配線111及び他のスルーホールを形成して第1ソース配線112を形成し、それぞれが第1ドレイン電極1111、第1ソース電極1121に接続される。同時に画素領域では、第2ゲート絶縁膜110及び第1層間絶縁膜125にスルーホール131を形成して映像信号線52及び第2ドレイン電極113を形成し、第2ドレイン電極113は酸化物半導体膜107に接続される。その後、SiN膜などの無機材料から成る第2層間絶縁膜126が映像信号線52、第1ドレイン配線111及び第1ソース配線112を覆うように形成され、第2層間絶縁膜126上には第2ソース電極114が形成される。第2ソース電極114はスルーホール132を通じて酸化物半導体膜107に接続される。第1ドレイン配線111、第1ソース配線112、第2ドレイン電極113は金属で形成されるが、第2ソース電極114は透明電極であるITO(Indium Tin Oxide)で形成され、画素電極116と接続する。スルーホール131において、映像信号線52がドレイン電極113の役割を有し、導電性を付与された酸化物半導体膜107と接続する。映像信号線52の材料は、第1ゲート電極104等と同様に、MoW、Ti、又は、Ti-Al-Tiの積層膜等で形成することが出来る。
【0032】
第2層間絶縁膜126を覆って有機パッシベーション膜115が形成される。有機パッシベーション膜115は、平坦化膜として作用させるためと、映像信号線52と、画素電極116あるいはコモン電極119との容量カップリングを抑制するために2乃至4μmと、厚く形成される。
【0033】
図3はコモン電極トップ構成であるから、有機パッシベーション膜115の上に画素電極116が透明導電膜であるITOによって形成される。画素電極116は画素の形に合わせて矩形となっている。有機パッシベーション膜115には、画素電極116と第2ソース電極114を接続するために、スルーホール130が形成されている。
【0034】
図3において、画素電極116の上に容量絶縁膜117が形成され、その上に金属によって第2遮光膜118が形成され、その上にITOによってコモン電極119が形成されている。容量絶縁膜117は、画素電極116とコモン電極119の間に形成される画素容量を構成するので、このように呼ばれている。容量絶縁膜117は、比誘電率の大きい、SiNで形成される。容量絶縁膜117の上に第2遮光膜118とコモン電極119が形成されている。
【0035】
第2遮光膜118は、金属で形成され、Molybdenum(Mo)、Titanium(Ti)、Aluminum(Al)等が使用される。第2遮光膜118はバックライトからの不要な光を遮光して画像のコントラストを向上させる。
図3の構成では、対向基板200にも遮光効果を有するブラックマトリクス202が形成されているが、第2遮光膜118を配置することによって、ブラックマトリクス202によって遮光しきれなかった光の遮光、内部からの光の混色防止、コモン電極119における電圧降下の防止等の効果を持たせることが出来る。
【0036】
但し、第2遮光膜118を形成することによって、光の透過率は減少するので、対向基板200にブラックマトリクス202が存在する場合は、画質の要求に応じて第2遮光膜118は省略してもよい。あるいは、遮光効果目的ではなく、コモン電極119における電圧降下を防止する作用をさせるために、形状を変えて使用してもよい。
【0037】
コモン電極119はITOで形成されている。ITOは比較的抵抗が高いので、金属で形成された第2遮光膜118を積層することによって抵抗を下げ、画像の均一性を維持することが出来る。コモン電極119は、複数の画素に共通で形成され、画素毎にスリット1191が形成されている。
【0038】
ところで、TFT基板100と対向基板200の間隔を保つために、柱状スペーサが必要である。しかし、画素ピッチが小さくなると、柱状スペーサの配置位置の確保が難しくなる。実施例1では、スルーホール130内に充填材30を形成し、この充填材30を用いて、柱状スペーサ10を形成している。充填材30は、アクリル樹脂などで形成される、感光性樹脂を用いる。感光性樹脂を用いることによって、別途フォトリソグラフィーのためのレジストを形成する必要が無くなる。また、充填材30の材料としては、有機パッシベーション膜と同じ材料を使用することも出来る。
【0039】
図3における柱状スペーサは、メイン柱状スペーサ10であり、対向基板200側に接触しているが、対向基板200側に接触しないサブ柱状スペーサを形成することも可能である。また、すべての画素に柱状スペーサを形成するわけではない。柱状スペーサが形成されない画素においては、充填材30によってスルーホール130内を充填し、スルーホール130の上面を平坦にする構成がとられる。充填材30による、メイン柱状スペーサ10、サブ柱状スペーサ20,平坦化構成のいずれも、同じプロセスで形成可能である。すなわち、感光性のアクリル樹脂を表示領域全面に所定の厚さ塗布し、各場所に必要な厚さのアクリル樹脂を残すように、マスクによって露光強度を場所毎に制御すればよい。
【0040】
コモン電極119を覆って第1配向膜120が形成されている。第1配向膜120は、対向基板200側に形成される第2配向膜204とともに、液晶分子の初期配向を規定する。配向膜120、204はポリイミドによって形成される。配向膜120,204の配向処理は、ラビング方法でもよいし、偏向紫外線による光配向処理でもよい。なお、
図3では、第1配向膜120は、柱状スペーサ10の上には形成されていないように記載されているが、これは、塗布する際の配向膜材料の粘度、乾燥プロセスでのレベリング等によって変わるので、柱状スペーサ10にも第1配向膜120が形成される場合もある。
【0041】
画素電極116に電圧が印加されると、コモン電極119のスリット1191において、画素電極116からコモン電極119に向かって液晶層300を通過する電気力線が発生し、液晶分子を回転させ、液晶層300の透過率を変化させる。液晶層300の透過率を画素毎に変化させて画像を形成する。すなわち、IPS(In Plane Switching)動作を行う。
【0042】
実施例1における画素の面積は非常に小さい。一方、有機パッシベーション膜115の膜厚は小さくできないので、スルーホール130も小さくすることが難しい。そこで、スペースを節約するために、
図3では、TFTの直上に有機パッシベーション膜115のスルーホール130を形成している。
【0043】
図3において、液晶層300を挟んで対向基板200が配置している。対向基板200には、カラーフィルタ201、ブラックマトリクス202が形成されている。カラーフィルタ201はカラー画像を形成するためであり、ブラックマトリクス202は画像のコントラストを向上させるためである。カラーフィルタ201及びブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。オーバーコート膜203は、カラーフィルタ201内の色顔料が液晶層300の中に染み出すことを防止する。オーバーコート膜203を覆って第2配向膜204が形成されている。第2配向膜204の役割は第1配向膜120で説明したのと同じである。
【0044】
図4は、比較例における画素の平面図である。
図4において、第1遮光膜105と走査線51が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)配列している。また、映像信号線52が縦方向に延在し、横方向に配列している。しかし、映像信号線52は、第1遮光膜105と重複しない領域においては、縦方向(y方向)に対して第1の角度傾き、第1遮光膜105と重複した領域において、逆方向に第2の角度傾いている。この場合の第1配向膜の配向方向は、縦方向である、
図4におけるALである。
【0045】
図4において、点線で示す画素電極116、及び、コモン電極119のスリット1191の角度も、映像信号線52に合わせて、縦方向に対して第1の角度傾いている。このように、画素電極116やコモン電極119のスリット1191を縦方向に対して傾けるのは、第1配向膜120の配向方向と第1の角度を形成するためである。これによって、画素におけるドメインの発生を防止している。第1の角度は、例えば、8度乃至15度である。
【0046】
図4では、第1配向膜120の配向角度が縦方向なので、画素電極116等は縦方向に対して第1の角度傾いている。第1配向膜の角度が縦方向から所定の角度傾けば、画素電極116等の角度は、所定の角度に対して第1の角度傾くことになる。
【0047】
図4において、第1遮光膜105が横方向に延在しているが、映像信号線52は、第1遮光膜105と重複する領域において、第1の角度よりも大きい、第2の角度で逆方向に傾くことによって、映像信号線52の横方向へのずれをオフセットしている。以下に
図4の機能について説明する。
【0048】
図4において、第1遮光膜105の上方にTFTが形成されている。すなわち、TFT等は、バックライトから遮光されている。
図4において、映像信号線52上に形成されたスルーホール131からドレイン配線としての、酸化物半導体膜107が走査線51側に画素内を縦方向に延在している。酸化物半導体膜107は導電性を付与されており、かつ透明なので、光透過率を大きく低下させることは無い。走査線51と酸化物半導体107が交差している部分にTFTのチャネルが形成されている。また、第1遮光膜105が第2の走査線を兼ねる場合、第1遮光膜105と酸化物案導体膜107が交差している部分にTFTのチャネルが形成されることになる。
【0049】
図4において導電性を付与された酸化物半導体膜107はさらに下側に延在し、スルーホール132においてITOで形成された第2ソース電極114と接続する。第2ソース電極114は映像信号線52に平行に形成され、y方向上側に延在し、スルーホール130において、画素電極116と接続する。
図4において、スルーホール132からスルーホール130までは、平面で視て、酸化物半導体膜107と第2ソース電極114が重複して形成されている。
【0050】
ところで、TFT基板100と対向基板200の間隔を維持するための柱状スペーサ10は、
図3で説明した充填材30ように、スルーホール130の中に形成される。但し、全ての画素のスルーホール130にメイン柱状スペーサ10あるいはサブ柱状スペーサ20が形成されるわけではない。
【0051】
図4において、画素電極116は、画素の形に添って平行四辺形状に形成されている部分を有する。コモン電極119は、複数の画素に共通に形成され、画素電極116と重複する位置にスリット1191が形成されている。
【0052】
画素電極116はスルーホール130において、第2ソース電極114と接続する。画素電極116に電圧が印加されると、このスリット1191において、画素電極116とコモン電極119の間に、液晶を通過する電気力線が発生し、液晶分子を回転させて画素における光の透過率を制御する。
【0053】
ところで、画素ピッチが小さくなると、画素電極116とTFTの第2ソース電極114を接続するための、有機パッシベーション膜115に形成されたスルーホール130の配置が問題となる。この部分においては、映像信号線52が縦方向に対して大きく傾いているので、スペースの問題がより深刻になる。
【0054】
図5はこの様子を示す模式図である。
図5の左側は、映像信号線52が縦方向(y方向)に延在している場合である。この場合は、映像信号線52と映像信号線52の間隔はd1である。一方、
図5に右側は、映像信号線52が縦方向と所定の角度、例えば第2の角度傾いている場合である。この場合は、映像信号線52と映像信号線52の間隔はd2である。d2<d1である。すなわち、高精細になることによって画素ピッチが小さくなる問題に加えて、斜め配線とすることによって、映像信号線52と映像信号線52の間隔がさらに小さくなるという問題を生ずる。
【0055】
特に、画素電極116と第2ソース電極114を接続するスルーホール130付近では、配線が入り組んでいるので、この領域における隣接する画素との干渉が問題となる。また、隣り合う映像信号線52同士の間隔が狭いと、画素電極116と第2ソース電極114との接続のためのスペースを十分にとることも難しくなる。本発明は、このような問題点を対策するものである。
【0056】
図6は、以上の問題点を対策した本発明による実施例1の平面図である。
図6の構成において、映像信号線52は、第1遮光膜105と重複しない領域、すなわち、画素電極116と隣接する領域では、縦方向(y方向)と第1の角度で延在する第1の部分を有している。第1遮光膜105と重なる領域においては、縦方向に対し、前記第1の角度とは逆方向に第2の角度で延在する第2の部分、縦方向に延在する第3の部分、及び、縦方向に対して第4の角度で延在する第4の部分を有している。なお、第4の角度は第2の角と異ならせることは出来るが、多くの場合は、第2の角度と同じ角度で形成される。したがって、以後、本明細書で、第2の角度と言った場合は、第4の角度を含む。
【0057】
図6が
図4と異なる点は、画素電極116と第2ソース電極114を接続するスルーホール130付近の構成である。この領域は、第1遮光膜105と重複した領域である。すなわち、この領域では、映像信号線52は、縦方向に対して大きく傾斜した第2の部分、縦方向に延在した第3の部分、縦方向に対して大きく傾斜した第4の部分を有している。映像信号線52の幅は、第3の領域において、第1の領域、第2の領域及び第4の領域よりも大きい。
【0058】
図6のような構成とするのは、スルーホール130が形成される領域において、隣り合う映像信号線52同士の間隔を大きくするためである。スルーホール130が形成された領域では、映像信号線52は縦方向に延在しているので、隣り合う映像信号線52同士の間隔を広くとることが出来る。したがって、有機パッシベーション膜115に形成されたスルーホール130の大きさも大きくすることが出来る。また、スルーホール130と重複して、あるいは、スルーホール130付近に形成される配線の配置裕度を増すことができ、信頼性を向上させることが出来る。
【0059】
図6において、スルーホール130およびその付近の構成を除いては、
図4で説明した構成と同じである。
図6に示す構成は、映像信号線52の、縦方向に対する角度が大きくなるほど、効果が増大する。このように、
図6に示す実施例1の構成によって、配線の配置裕度を大きくすることが出来、信頼性の高い、高精細液晶表示装置を実現することが出来る。
実施例1では、カラーフィルタ201及びブラックマトリクス202が対向基板200側に形成された場合の構成について説明した。この場合、TFT基板100と対向基板200の合わせ精度が、液晶表示装置の透過率等に影響を及ぼす。画素ピッチが大きければ、TFT基板100と対向基板200の合わせ精度の誤差は吸収可能である。しかし、画面が高精細になるにしたがって、この誤差が無視できなくなる場合がある。
この問題は、カラーフィルタ201とブラックマトリクス202をTFT基板100側に作りこむことによって解決することが出来る。すなわち、TFT基板100側におけるフォトリソグラフィーによる誤差は、TFT基板100と対向基板200の合わせ精度で生ずる誤差に比べてはるかに小さいからである。