(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104788
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】美容器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/06 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61N1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009140
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 孝太
(72)【発明者】
【氏名】森 庸博
(72)【発明者】
【氏名】平山 匡
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053DD04
4C053DD09
(57)【要約】
【課題】肌の表層の過昇温を抑制できる美容器を提供する。
【解決手段】美容器1は、肌に高周波電流を供給する。美容器1は、肌に接触した状態において肌に高周波電流を供給する一対の電極11,12を備える。美容器1は、一対の電極11,12の間に配置され、一対の電極11,12が肌に接触した状態において肌に接触する電極間部材13を備え得る。美容器1は、一対の電極11,12の温度を調節する温度調節部14と、温度調節部14を制御して、一対の電極11,12の温度を所定の目標温度(第2温度H2)に調節する第1モード(HEATモード)を実行する制御部30と、を備え得る。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌に高周波電流を供給する美容器であって、
肌に接触した状態において前記肌に高周波電流を供給する一対の電極と、
前記一対の電極の間に配置され、前記一対の電極が前記肌に接触した状態において前記肌に接触する電極間部材と、
を備えている、美容器。
【請求項2】
前記一対の電極を冷却する温度調節部を備えている、請求項1に記載の美容器。
【請求項3】
前記一対の電極の並び方向において前記一対の電極を挟んで配置され、前記肌に接触していることを検知されることによって前記一対の電極の前記肌への接触を検知する肌検知電極を備えている、請求項1又は請求項2に記載の美容器。
【請求項4】
肌に高周波電流を供給する美容器であって、
肌に接触した状態において前記肌に高周波電流を供給する一対の電極と、
前記一対の電極の温度を調節する温度調節部と、
前記温度調節部を制御して、前記一対の電極の温度を所定の目標温度に調節する第1モードを実行する制御部と、
を備えている、美容器。
【請求項5】
前記温度調節部はペルチェ素子を有しており、
前記制御部は、前記第1モードにおける供給量よりも少ない供給量で前記高周波電流を供給しつつ前記ペルチェ素子を昇温させる制御によって、前記一対の電極の温度を所定の第2目標温度に調節する第2モードを実行する、請求項4に記載の美容器。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記一対の電極の温度が前記目標温度を超えた所定の温度になった場合には、前記高周波電流の供給を停止する制御を実行する、請求項4又は請求項5に記載の美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は美容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の美容器を開示している。この美容器は、肌に接触させた複数の電極から肌に高周波電流を供給し、肌に美容効果を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波電流により発生するジュール熱による温度は、電極に最も近い肌の表層において最も高くなる。この場合、肌の内部まで温めようとすると、肌の表層の温度が過度に上昇してしまうおそれがある。
また、この種の美容器を使用する際には、導電性を高めたり、電極と肌との摩擦を低減したりするための塗布剤を肌に塗布することが行われる場合がある。この場合、塗布剤が電極間の空間に溜まると、溜まった塗布剤において過度のジュール熱が発生しやすくなり、塗布剤に触れている肌の表層の温度が過度に上昇してしまう。
【0005】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、肌の表層の過昇温を抑制できる美容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る美容器は、
肌に高周波電流を供給する美容器であって、
肌に接触した状態において前記肌に高周波電流を供給する一対の電極と、
前記一対の電極の間に配置され、前記一対の電極が前記肌に接触した状態において前記肌に接触する電極間部材と、
を備えている。
【0007】
この美容器は、電極間部材を備えたことにより、塗布剤を使用する場合において塗布剤が滞留し得る一対の電極間の空間を狭くできる。このため、一対の電極の間に滞留する塗布剤の量を抑えることができる。その結果、高周波電流の供給によって塗布剤から発生するジュール熱の熱量が抑えられるので、塗布剤から肌の表層に伝わり得る熱量も抑えられる。
【0008】
また、本発明の他の一実施形態に係る美容器は、
肌に高周波電流を供給する美容器であって、
肌に接触した状態において前記肌に高周波電流を供給する一対の電極と、
前記一対の電極の温度を調節する温度調節部と、
前記温度調節部を制御して、前記一対の電極の温度を所定の目標温度に調節する第1モードを実行する制御部と、
を備えている。
【0009】
この美容器は、温度調節部によって一対の電極の温度が所定の目標温度に調節される。これにより、この美容器は、高周波電流の供給によって発生したジュール熱を、目標温度を維持する一対の電極を介して吸収することができる。このため、この美容器は、高周波電流の供給による美容効果を継続的に肌に付与しながらも、目標温度を維持した一対の電極によって、肌の表層のジュール熱を吸収できる。
【0010】
したがって、本発明の美容器は、肌の表層の過昇温を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】実施例1に係る美容器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】
図3のVI-VI線矢視相当図であり、要部を拡大して示す。
【
図7】
図2のVII-VII線断面相当図であり、要部を拡大して示す。
【
図8】実施例1に係る美容効果付与処理の時系列的な流れを簡略的に示すタイミングチャートである。
【
図10】実施例1に係るHOTモードの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】実施例1に係るHOTモードにおける温調処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】実施例1に係る美容器の使用例を説明するための図(その1)である。
【
図13】実施例1に係るHEATモードの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】実施例1に係るHEATモードにおける温調処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】実施例1に係る美容器の使用例を説明するための図(その2)である。
【
図16】実施例1に係る美容器の使用例を説明するための図(その3)である。
【
図17】実施例1に係る美容器の使用例を説明するための図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
本発明の美容器は、前記一対の電極を冷却する温度調節部を備え得る。この場合、高周波電流の付与によって発生したジュール熱を一対の電極を介して吸収できる。
【0013】
本発明に係る美容器は、前記一対の電極の並び方向において前記一対の電極を挟んで配置され、前記肌に接触していることを検知されることによって前記一対の電極の前記肌への接触を検知する肌検知電極を備え得る。この場合、一対の電極が肌に適正に接触しているか否かを容易に検知できる。
【0014】
本発明に係る美容器において、前記温度調節部はペルチェ素子を有し得る。前記制御部は、前記第1モードにおける供給量よりも少ない供給量で前記高周波電流を供給しつつ前記ペルチェ素子を昇温させる制御によって、前記一対の電極の温度を所定の第2目標温度に調節する第2モードを実行し得る。この場合、高周波電流の出力を抑えながらも肌を昇温させることができる。
【0015】
本発明の美容器において、前記制御部は、前記第1モードにおいて、前記一対の電極の温度が前記目標温度を超えた所定の温度になった場合に、前記高周波電流の供給を停止する制御を実行し得る。この場合、不意の温度上昇に対する安全性の確保を簡易な構成により容易に実現できる。
【0016】
<実施例1>
次に、本発明を具体化した実施例1の美容器について、図面を参照しつつ説明する。実施例1に係る美容器1は、肌に高周波電流を供給して美容効果を付与する美容器である。
図1から
図5に示すように、美容器1は、ヘッド部10と、把持部20と、制御部30と、を備えている。ヘッド部10は、美容器1において肌に美容効果を付与する部分である。ヘッド部10には、一対の電極11,12が設けられている。ヘッド部10には、美容器1の非使用時等においてヘッド部10を覆うキャップ2(
図1参照)が着脱自在に取り付けられる。把持部20は、美容器1を用いた美容効果付与時等において、使用者に把持される部分である。把持部20は、ヘッド部10から一方の方向に長尺状に延びている。把持部20は、ヘッド部10との接続部において最も幅広であり、ヘッド部10から離れるに従って徐々に幅狭になる形態の柱状をなしている。把持部20には、操作部21、レベル表示部22、把持電極23、電源ジャック24等が設けられている。
【0017】
以下の説明では、便宜上、美容器1における方向を以下のとおり定義する。すなわち、美容器1における長手方向を上下方向とし、ヘッド部10が設けられている端部側を上方、その反対の端部側を下方とそれぞれ定義する。また、美容器1を上方から見た平面視において、上下方向に直交する方向であって操作部21及び把持電極23が設けられる方向を美容器1における前後方向とし、操作部21側を前方、把持電極23側を後方とそれぞれ定義する。更に、上下方向及び前後方向に直交する方向を美容器1における左右方向とし、美容器1の中心から前方を見た状態の方向をそのまま左方、右方と定義する。各図に示す座標系において、X軸の正方向は「前方」、X軸の負方向は「後方」、Y軸の正方向は「左方」、Y軸の負方向は「右方」、Z軸の正方向は「上方」、Z軸の負方向は「下方」である。なお、これらの方向は、美容器1の使用時における実際の方向を定めるものではない。
【0018】
図6及び
図7に示すように、ヘッド部10は、ベース面10Aと、一対の電極11,12と、電極間部材13と、温度調節部14と、温度センサ15と、肌検知電極16,17と、肌検知表示部18とを有している。また、ヘッド部10の内部には、図示しない加速度センサ19(
図5参照)が配置されている。
【0019】
ベース面10Aは、前方に向けて下り傾斜する平面をなしている。ベース面10Aは、水平面に対して、例えば32.5°程度傾斜する。一対の電極11,12、電極間部材13、及び肌検知電極16,17は、ヘッド部10におけるベース面10Aからそれぞれの一部が突出し、それぞれの他の一部はベース面10Aよりも内側に配置されている。一対の電極11,12、電極間部材13、及び肌検知電極16,17のベース面10Aからの突出量は略同等である。具体的には、本実施例の場合、一対の電極11,12、電極間部材13、及び肌検知電極16,17のベース面10Aからの突出量はそれぞれ1mm程度である。温度調節部14及び温度センサ15は、ヘッド部10におけるベース面10Aよりも内側にそれぞれの全体が配置されている。
【0020】
図6及び
図7に示すように、一対の電極11,12は、第1電極11と、第2電極12とを有している。本実施例の場合、第1電極11及び第2電極12は、それぞれアルミニウムにクロムメッキを施してなる。第1電極11及び第2電極12は、左右方向に直交する方向かつベース面10Aに平行な方向に、間隔を置いて並んで配置されている。本実施例の場合、第1電極11と第2電極12の間隔は、3mm程度としている。一対の電極11,12におけるベース面10Aからの突出端面は、それぞれ接触面11A,12Aである。各接触面11A,12Aは、美容器1の使用時において、使用者の肌に接触する。各接触面11A,12Aは、ベース面10Aに平行な平坦面をなすとともに、互いに略面一状をなしている。各接触面11A,12Aは、左右方向の長さが一対の電極11,12の並び方向における長さよりも長い。各接触面11A,12Aは、
図6に示すベース面10Aを法線方向から見た正面視において、対をなす他の接触面11A,12Aに最も近い一辺を長辺とする台形状をなしている。なお、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aの外縁部には、C面取り、R面取り等の面取りが施されている。
【0021】
図6及び
図7に示すように、電極間部材13は、一対の電極11,12の間に配置されている。電極間部材13は、セラミックス、樹脂等の電気絶縁性に優れる材料製である。本実施例の場合、電極間部材13は、電気絶縁性に加え、熱伝導性においても比較的良好な窒化アルミニウムを採用している。電極間部材13は、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aを使用者の肌に接触させた状態において、各接触面11A,12Aとともに使用者の肌に接触する。電極間部材13において、ベース面10Aから突出する部分は、一対の電極11,12におけるベース面10Aからの突出量と略同等の突出量で突出している。電極間部材13において、ベース面10Aからの突出端面13Aは、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aと略面一状をなしている。すなわち、突出端面13Aは、一対の電極11,12における接触面11A,12Aと同一平面上に配置されている。突出端面13Aの左右方向の長さは、一対の電極11,12の左右方向の長さと略同等である。突出端面13Aにおける一対の電極11,12の並び方向の長さは、一対の電極11,12の間隔と略同等である。これによって、電極間部材13は、一対の電極11,12間の隙間の略全体を埋めている。なお、電極間部材13における突出端面13Aの外縁部には、R面取り等の面取り加工が施されている。
【0022】
温度調節部14は一対の電極11,12の温度を調節する。本実施例の場合、温度調節部14は、
図6及び
図7に示すように、ペルチェ素子14Aと、ヒートシンク14Bとを有している。ペルチェ素子14Aは、一対の電極11,12に隣接して配置されている。具体的には、ペルチェ素子14Aは、一対の電極11,12における接触面11A,12Aとは反対側の面に接触して配置されている。ペルチェ素子14Aは、一対の電極11,12を冷却する機能に加え、一対の電極11,12を加温する機能も有する。また、ペルチェ素子14Aは、電極間部材13における突出端面13Aとは反対側の面にも接触している。これによって、ペルチェ素子14Aは、電極間部材13を冷却する機能、及び電極間部材13を加温する機能も有する。ヒートシンク14Bは、ペルチェ素子14Aにおいて発生した熱を吸収する。ヒートシンク14Bは、ペルチェ素子14Aにおける一対の電極11,12との接触面とは反対側の面に接触している。ヒートシンク14Bは、ペルチェ素子14Aとの接触面とは反対側の面に多数の放熱フィンを立設している。なお、ヒートシンク14Bにおける放熱フィンには、ファン14C(
図5参照)が隣接して配置されている。ファン14Cは、制御部30によって駆動制御され、ヒートシンク14Bにおいて吸収された熱を外部に適宜排出させる。
【0023】
温度センサ15は、一対の電極11,12における温度を検知する。温度センサ15によって検知された温度は、後述するHOTモード(本発明に係る第2モードとして例示する)及びHEATモード(本発明に係る第1モードとして例示する)における温度制御に利用される。本実施例の場合、温度センサ15は、
図6及び
図7に示すように、一対の電極11,12のうちの第1電極11に埋設されている。具体的には、温度センサ15は、第1電極11における接触面11Aとは反対側の面に形成された溝内に埋め込まれている。本実施例の場合、温度センサ15はサーミスタを採用している。
【0024】
図6及び
図7に示すように、肌検知電極16,17は、一対の電極11,12の並び方向において、一対の電極11,12を挟んで一対配置されている。肌検知電極16,17は、一対の電極11,12における左右方向の中心に沿ってそれぞれ配置されている。本実施例の場合、各肌検知電極16,17はそれぞれ黄銅にクロムメッキを施してなり、良好な導電性を有する。各肌検知電極16,17はそれぞれ肌検知面16A,17Aを有している。各肌検知面16A,17Aは、
図6に示すベース面10Aを法線方向から見た正面視において、一対の電極11,12の並び方向における幅が左右幅と比較して僅かに小さい略長方形状の外形形状をなしている。各肌検知面16Aの左右幅は、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aの左右幅と比較して十分に小さく設定されている。各肌検知面16A,17Aは、電極間部材13における突出端面13Aと同様に、一対の電極11,12における接触面11A,12Aと同一平面上に配置されている。
【0025】
肌検知電極16,17は、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aが肌に適切に接触しているか否かを判定するのに利用される。例えば、各接触面11A,12Aの肌との接触面積が小さい状態で一対の電極11,12に電流を印加すると、肌の狭い範囲に電流が集中的に供給されてしまう。これを回避するため、美容器1は、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aが肌に適切に接触しているか否かを判定し、適切に接触していると判定した場合を条件の1つとして、一対の電極11,12に電流を印加するようにしている。美容器1は、上述の構成により、一対の肌検知電極16,17における各肌検知面16A,17Aの両方が肌に接触した状態において、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aの適切な肌への接触が担保できる。これに対し、美容器1は、一対の肌検知電極16,17のうちの一方でも肌に接触していない状態にあると、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aの肌への接触が確立されていない可能性が高い。美容器1は、一対の肌検知電極16,17の両方の肌への接触を検知している場合に、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aが肌に適切に接触していると判定し、この状態であることを条件の1つとして一対の電極11,12に電流を印加する。
【0026】
肌検知表示部18は赤色LEDを用いた表示である。肌検知表示部18は、各接触面11A,12Aが肌に接触していることが検知された状態において点灯し、検知されていない状態において消灯する。肌検知表示部18は、ベース面10Aにおける第2電極12の周囲の複数箇所(
図6の場合、4箇所)に配置されている。
【0027】
加速度センサ19は、美容器1の移動の有無を検知する。美容器1は、肌の一部分に集中的に電流が供給されるのを回避するため、加速度センサ19によって美容器1の移動が検知されている場合を条件の1つとして、一対の電極11,12に電流を印加するようにしている。すなわち、美容器1では、加速度センサ19による美容器1の移動の検知、及び一対の肌検知電極16,17の肌への接触の検知、の条件のいずれか一方が満たされていない場合、一対の電極11,12に電流は印加されない。
【0028】
図1から
図4に示すように、把持部20の後面上部、及び左右側面には、外方に起伏する畝状の複数の筋が形成されている。これらの畝状の筋は、把持部20を把持した際の滑り止めとして機能する他、美容器1の意匠性の向上にも寄与している。また、把持部20における左右側面及び後面の各上部には、スリット状の複数の開口が形成されている。これらスリット状の複数の開口は、把持部20の内部と外部との間で空気の流れ出し入れを行うための吸気口20A及び排気口20Bとして機能する。具体的には、左右側面に形成された複数の開口は、把持部20の外部から内部に空気を吸入するための吸気口20Aとして機能する。後面に形成された複数の開口は、把持部20の内部から外部に空気を排出するための排気口20Bとして機能する。吸気口20Aから吸入された空気は、ヒートシンク14Bを通過したのち、排気口20Bから排出される。
【0029】
図1及び
図2に示すように、操作部21は、電源ボタン21A及びレベル切替ボタン21Bを有している。電源ボタン21A及びレベル切替ボタン21Bは、把持部20の前面において上下方向に並んで配置されている。美容器1は、電源ボタン21Aの長押し操作のたびに、電源オンと電源オフとが切り替えられる。レベル切替ボタン21Bは、美容器1が電源オンの状態において押下されるたびに、一対の電極11,12から肌に供給される電流の大きさ(出力レベル)を段階的に切り替える。本実施例の場合、出力レベルは、最も小さいレベル1から最も大きいレベル3まで、レベル切替ボタン21Bの押下のたびに順次切り替えられる。
【0030】
図1及び
図2に示すように、レベル表示部22は、把持部20における操作部21の上方に設けられている。レベル表示部22は、レベル切替ボタン21Bの操作に応じて切り替えられた出力レベルを表示する。本実施例の場合、レベル表示部22は、白色LED(light emitting diode)である。レベル表示部22は、上下方向を長手方向とする正面視略矩形状をなし、出力レベルが大きいほど点灯範囲が上方に長くなる。
【0031】
図4に示すように、把持電極23は、把持部20の後面に設けられている。把持電極23は、上下方向を長手方向とする偏平楕円状の外形形状をなしている。把持電極23は、把持部20の下部から上下方向の中心部を越える位置まで、直線状に延びている。これによって、把持電極23は、美容器1における把持部20を把持した使用者の手に容易に接触し得る。
【0032】
把持電極23は、上述の一対の肌検知電極16,17とともに、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aが肌に適切に接触しているか否かを判定するのに利用される。具体的には、美容器1は、把持電極23と、一対の肌検知電極16,17のそれぞれと、の間の電気的導通を交互に検知する。美容器1は、把持電極23と、一対の肌検知電極16,17のそれぞれと、の間の電気的導通が両方において検知された場合に、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aが肌に適切に接触していると判定する。
【0033】
制御部30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ、タイマ等を含み、美容器1における各部を制御する。制御部30は、
図5に示すように、電源ボタン21A及びレベル切替ボタン21Bが押下されると、各ボタン21A,21Bの操作に応じた信号が入力される。また、制御部30は、温度センサ15及び加速度センサ19の検知結果に応じた信号が入力される。制御部30は、入力された各種信号に応じて、一対の電極11,12への電流の印加のオンオフや、一対の電極11,12に印加する電流の出力レベル等を制御する。制御部30は、一対の電極11,12への電流印加に伴って、ペルチェ素子14A、肌検知表示部18等の制御も実行する。制御部30は、美容器1による美容効果付与を実行する際には、予め決められたプログラムに従って各部を制御する。
【0034】
次に、本実施例に係る美容器1による美容効果付与処理について、美容器1の作用と併せて説明する。美容器1は、一対の電極11,12間に高周波電流を印加することによって電極11,12に接触した状態の肌に高周波電流を流し、ジュール熱により肌を温める美容効果を付与する。一対の電極11,12から供給される高周波電流は、例えば、周波数1.0±0.2MHzの範囲の電流である。高周波電流としては、筋肉の収縮に寄与する100KHz未満の周波数よりも高い周波数であればよい。上述のように、本実施例に係る美容器1は、HOTモード及びHEATモードの2つの美容効果付与モードを有している。美容器1は、1回の美容効果付与処理において、予め決められたプログラムに従ってこれら2つの美容効果付与モードを順次切り替えて実行する。
【0035】
具体的には、本実施例の場合、
図8に示すように、美容器1は、美容効果付与処理において、最初に、HOTモードを所定の第1時間T1(例えば、40秒)の間実行し、次に、HEATモードを所定の第2時間T2(例えば、120秒)の間実行し、最後に、再びHOTモードを所定の第3時間T3(例えば、20秒)の間実行する。美容器1は、1回の美容効果付与処理において、この一連のモード切り替えの流れを1セットとして、顔の左右半分につきそれぞれ1セット、計2セット実行する。
【0036】
HOTモードとHEATモードの違いは、一対の電極11,12から肌に供給する高周波電流の出力の違いである。
図8に示すように、HOTモードは、HEATモードにおいて出力される高周波電流よりも弱い高周波電流を出力する。具体的には、HOTモードにおける高周波電流は、HEATモードにおける高周波電流の10分の1以下の出力である。また、HOTモードでは、HEATモードよりも弱い高周波電流を出力しながらペルチェ素子14Aを加温側で使用する。すなわち、HOTモードでは、比較的出力の弱い高周波電流を肌に供給して比較的少ないジュール熱を肌で発生させつつ、ペルチェ素子14Aによって加温された一対の電極11,12を肌に当てて外部から熱を供給する。このように、HOTモードにおいて、肌は表層側からも温められる。美容器1は、このようなHOTモードを美容効果付与処理の最初と最後に行うことによって、肌のウォームアップ、ウォームダウンを行うようにしている。HOTモードにおける肌の温度調節は、加温側で駆動しているペルチェ素子14Aのオンオフ制御によるもの、すなわちペルチェ素子14Aからの熱供給の停止である。
【0037】
これに対し、HEATモードでは、HOTモードよりも強い高周波電流を出力しつつ、ペルチェ素子14Aを冷却側で使用する。HEATモードでは、比較的出力の強い高周波電流を肌に供給して比較的多いジュール熱を肌で発生させる。これと併せて、HEATモードでは、一対の電極11,12を、ペルチェ素子14Aを用いて冷却する。これによって、HEATモードでは、肌において発生するジュール熱を一対の電極11,12に吸収する。すなわち、HEATモードにおける肌の温度調節は、発生するジュール熱を積極的に吸収する、というものである。これにより、HEATモードでは、比較的強い高周波電流を継続的に出力することが可能となり、肌の表層の温度を過度に上昇させることなく、肌のより深部まで高周波電流を供給することができる。なお、美容器1は、一対の電極11,12に加えて電極間部材13も冷却するため、肌において発生するジュール熱をより有効に吸収できる。
【0038】
なお、以降の説明では、最初のHOTモードを第1HOTモード、最後のHOTモードを第2HOTモードともそれぞれ表記する。第1HOTモードと第2HOTモードとは、実行時間が異なる以外は同様の流れで実行される。
【0039】
美容器1を用いた美容効果付与処理を実行するにあたり、使用者は、最初に、ACアダプタ(図示せず)のコネクタ3(
図1参照)を電源ジャック24に差し込み、美容器1をコンセント等と接続する。これによって、美容器1は、電力供給され、電源ボタン21Aの下方の電源マーク(
図1、
図2等参照)が点灯する。
【0040】
次に、使用者は、電源ボタン21Aを長押し操作し、美容器1の電源をオンにする。すると、制御部30に対する通電が実行され、電源がオンされたことを示す報知音が鳴るとともに、ファン14Cが駆動し始める。また、美容器1の電源がオンになると、レベル表示部22が点灯する。使用者は、レベル切替ボタン21Bを押圧操作して、所望の出力レベルを選択する。選択された出力レベルはレベル表示部22に表示される。以上により、美容器1は、美容効果付与処理の実行を待機した状態になる。この待機状態は、美容器1の使用者が把持部20を適切に把持するとともに、ヘッド部10を肌に適切に接触させ、適切な速度で肌に沿って移動させていることが検知されるまで継続される。なお、この電源ボタン21Aの長押し操作は、美容効果付与処理において最初に実行される第1HOTモードの開始操作を兼ねている。
【0041】
使用者側の準備としては、使用者の顔の左右半分のいずれか一方に塗布剤Aを塗布する。塗布剤Aは、例えば、
図9の網掛けで示す範囲等、顔、首、デコルテ等の美容効果を付与する身体部位の左右いずれか一方に塗布する。この塗布剤Aは、使用者の身体を介した一対の電極11,12間の通電を補助する作用、肌とヘッド部10との摩擦を軽減する作用等を有する。使用者は、美容効果を付与する身体部位の左右いずれか一方に塗布剤Aを塗布したのち、指又は手のひらが把持電極23に接触するように把持部20を把持し、ヘッド部10を肌に接触させる。美容器1は、肌検知電極16,17の肌への接触を検知すると、美容効果の肌への付与を開始する。
【0042】
美容効果付与処理において、美容器1は、最初に、第1HOTモードを第1時間T1の間実行する。第1HOTモードにおいて、制御部30は、一対の電極11,12から高周波電流を供給しつつ、ペルチェ素子14Aを加温側で使用しながらペルチェ素子14Aのオンオフ制御を実行する。この時、制御部30は、第1温度H1(本発明に係る第2目標温度として例示する)を目標にペルチェ素子14Aのオンオフ制御を実行し、一対の電極11,12の温度を調節する。制御部30は、この制御を第1時間T1の間実行する。
【0043】
具体的には、本実施例の場合、第1HOTモードは、
図10に示すフローチャートに沿って実行される。美容器1に電源が投入され、第1HOTモードが開始されると、制御部30は、まず、タイマをリセットし(ステップS110)、一対の電極11,12の温度を第1温度H1に調節する温調処理を開始する(ステップS120)。なお、本実施例において、第1温度H1は、レベル切替ボタン21Bを操作して選択した出力レベルに応じて異なっている。具体的には、第1温度H1は、レベル1において38℃、レベル2において40℃、レベル3において42℃である。
【0044】
第1HOTモードにおける温調処理は、
図11に示すフローチャートに沿って実行される。温調処理において、制御部30は、最初に、温度センサ15において検知される温度Hを監視する(ステップS121)。検知温度Hが第1温度H1よりも低い場合には、ステップS122に移行し、ペルチェ素子14Aを加温側で駆動する。これによって、一対の電極11,12が加温される。検知温度Hが第1温度H1以上の温度である場合には、ステップS123に移行し、ペルチェ素子14Aの駆動を停止(駆動しない)する。これによって、一対の電極11,12へのペルチェ素子14Aからの熱供給が停止される。一対の電極11,12は、このようにして目標温度である第1温度H1を目標に温度調節される。なお、美容器1では、一対の電極11,12の温度調節に伴って、電極間部材13も同様に温度調節される。
【0045】
図10に戻り、ステップS130では、肌検知電極16,17が肌に接触しているか否か、すなわち肌検知の有無を監視する。また、ステップS140では、美容器1が移動しているか否かを加速度センサ19の検知結果に基づいて監視する。制御部30は、肌検知及び移動検知の両方が有りの場合には、ステップS150において高周波電流を出力し、ステップS160においてタイマのカウントを進める。なお、上述のように、HOTモードにおいて出力される高周波電流は、HEATモードにおいて出力される高周波電流よりも弱い出力である。
【0046】
ステップS130及びステップS140において、肌検知及び移動検知の少なくとも一方が検知されていない場合、制御部30は、ステップS160に移行してタイマのカウントを進める。すなわち、HOTモードでは、肌検知及び移動検知の両方が検知されていない場合には、高周波電流は出力されず、タイマのみが進行する。その後、ステップS170に移行して第1時間T1の経過の有無を監視する。第1時間T1が経過していない場合には、ステップS120に戻り、以降の処理を繰り返す。ステップS170において第1時間T1が経過したと判定された場合、制御部30は、第1HOTモードを終了し、次のHEATモードに移行する。なお、第1HOTモード終了の際、制御部30は、第1HOTモードが終了したことを知らせる報知音を鳴らす。
【0047】
本実施例の第1HOTモードにおいて、使用者は、美容器1を以下のように使用する。すなわち、第1HOTモードでは、使用者は、肌に接触させたヘッド部10を、鎖骨、首、鼻筋から眉上の順に、
図12に示す各矢印の方向に沿って動かす。美容器1の使用者は、第1HOTモードが継続される第1時間T1の間、これを繰り返し行う。なお、ヘッド部10を肌に当てた状態において肌検知電極16,17の両方が肌に接触しているか否かは、上述のステップS130において監視されている。肌検知電極16,17の両方が肌に接触している場合、制御部30は、ヘッド部10における一対の電極11,12が肌に適切に接触していると判定する。この状態において、制御部30は、肌検知表示部18の赤色LEDを点灯させる制御を実行する。美容器1の使用者は、一対の電極11,12が肌に適切に接触しているか否かを、肌検知表示部18の点灯の有無によって容易に把握できる。
【0048】
また、ヘッド部10におけるベース面10Aは、前方に向けて下り傾斜する平面をなしており、その角度は、水平面に対して32.5°程度とされている。このような傾斜は、把持部20を把持した使用者にとって、ベース面10Aを肌に当てて肌を持ち上げながら施術するのに好適である。
【0049】
第1HOTモードの終了後、美容器1はHEATモードに移行する。HEATモードにおいて、制御部30は、一対の電極11,12から高周波電流を供給しつつ、ペルチェ素子14Aを冷却側で使用しながらペルチェ素子14Aのオンオフ制御を実行する。この時、制御部30は、第2温度H2(本発明に係る目標温度として例示する)を目標にペルチェ素子14Aのオンオフ制御を実行し、一対の電極11,12の温度を調節する。制御部30は、この制御を第2時間T2の間実行する。
【0050】
具体的には、本実施例の場合、HEATモードは、
図13に示すフローチャートに沿って実行される。HOTモードからHEATモードに移行すると、制御部30は、まず、タイマをリセットし(ステップS210)、HEATモードにおける温調処理を開始する(ステップS220)。HEATモードにおける温調処理では、一対の電極11,12の温度を第2温度H2に調節する。本実施例の場合、第2温度H2は、第1温度H1よりも低い温度に設定されている。具体的には、本実施例の場合、第2温度H2は、31℃に設定されている。この第2温度H2は、出力レベルの違いに依らず一律の温度である。また、HEATモードでは、上限温度Hmaxが設定されている。上限温度Hmaxは、第1温度H1よりも低く、第2温度H2よりも高い温度に設定されている。具体的には、本実施例の場合、上限温度Hmaxは34℃に設定されており、出力レベルの違いに依らず一律である。
【0051】
HEATモードにおける温調処理は、
図14に示すフローチャートに沿って実行される。HEATモードの温調処理において、制御部30は、最初に、温度センサ15において検知される温度Hを監視し、上限温度Hmaxと比較する(ステップS221)。検知温度Hが上限温度Hmaxよりも低い場合には、ステップS222において高周波電流の出力を許可する信号を出力し、ステップS224に進む。これに対し、ステップS221において検知温度Hが上限温度Hmaxを超えていた場合には、ステップS223に進み、高周波電流の出力許可信号をオフ(信号を出力しない)にし、更にステップS225に移行してペルチェ素子14Aを冷却側で駆動する。このように、美容器1では、温度センサ15による検知温度Hが上限温度Hmaxよりも低い場合においてのみ、高周波電流の出力が許可される。
【0052】
ステップS221において検知温度Hが上限温度Hmax以下であると判定し、ステップS222において高周波電流の出力を許可する信号を出力すると、制御部30は、引き続き検知温度Hを監視する(ステップS224)。ステップS224では、検知温度Hが目標温度である第2温度H2よりも高いか否かを監視する。ステップS224において検知温度Hが第2温度H2よりも高いと判定されなかった場合、すなわち一対の電極11,12が目標温度以下まで下がった場合、制御部30は、ペルチェ素子14Aの駆動を停止する(ステップS226)。ステップS224において検知温度Hが第2温度H2よりも高いと判定された場合には、ステップS225に進み、ペルチェ素子14Aの冷却側で駆動する。このように、一対の電極11,12は、HEATモードにおける目標温度である第2温度H2を目標に温度調節される。また、この温度調節は、上限温度Hmaxを超えない範囲で実行される。なお、美容器1では、一対の電極11,12の温度調節に伴って、電極間部材13も同様に温度調節される。
【0053】
図13に戻り、ステップS230では、肌検知電極16,17が肌に接触しているか否か、すなわち肌検知の有無を監視する。ステップS230において肌検知が有りの場合には、ステップS240に進み、加速度センサ19による美容器1の移動の有無を監視する。ステップS240において移動検知が有りの場合は、ステップS250に移行し、タイマのカウントを進める。すなわち、HEATモードにおいては、肌検知及び移動検知の両方がある場合においてのみ、タイマのカウントが進行する。一方、肌検知又は移動検知の少なくとも一方がない場合には、ステップS220に戻り、以降の処理を繰り返す。なお、ステップS230において「肌検知有り」の場合、制御部30は、ヘッド部10における一対の電極11,12が肌に適切に接触していると判定し、肌検知表示部18の赤色LEDを点灯させる制御を実行する。美容器1の使用者は、肌検知表示部18の点灯の有無によって、一対の電極11,12が肌に適切に接触しているか否かを容易に把握できる。
【0054】
ステップS230及びステップS240において肌検知及び移動検知がそれぞれ有りと判定され、ステップS250においてタイマのカウントを進めたのち、ステップS260では、更に高周波電流の出力許可(
図14参照)の有無を監視する。ステップS260において高周波電流の出力許可が有りの場合は、ステップS270に移行し、高周波電流を出力する。すなわち、美容器1において、制御部30は、肌検知、移動検知、及び高周波電流の出力許可の全てが有りの場合においてのみ、高周波電流が出力される。
【0055】
例えば、一対の電極11,12における肌との接触面積が、適正に接触した状態よりも小さい場合、適正な接触面積の場合よりも狭い範囲に高周波電流が集中して流れるため、部分的に肌の温度が上昇しやすい。また、ヘッド部10が移動することなく肌の一箇所に接触し続けている場合も、肌における当該箇所の温度が上昇しやすい。美容器1は、このような肌の局所的な過昇温を回避するため、一対の電極11,12が肌に適正に接触した状態であること、及びヘッド部10が移動状態であることの両方を高周波電流の出力可能条件に含んでいる。
【0056】
一方、ステップS260において、高周波電流の出力許可が「有り」でない場合には、ステップS220に戻り、温調処理から肌検知、移動検知、出力許可の有無の監視を継続する。この場合、高周波電流は出力されない。ステップS270において高周波電流を出力したのちは、ステップS280に移行して第2時間T2の経過の有無を監視する。第2時間T2が経過していない場合には、ステップS220に戻り、以降の処理を繰り返す。ステップS280において第2時間T2が経過したと判定された場合、制御部30は、HEATモードを終了し、最後のHOTモードである第2HOTモードに移行する。なお、HEATモード終了の際、制御部30は、HEATモードが終了したことを知らせる報知音を鳴らす。
【0057】
本実施例のHEATモードにおいて、使用者は、美容器1を以下のように使用する。すなわち、本実施例のHEATモードでは、使用者は、肌に接触させたヘッド部10を、目元、頬、上フェイスライン、下フェイスラインの順に、
図15及び
図16に示す各矢印に沿って動かす。美容器1の使用者は、HEATモードが継続される第2時間T2の間、これを繰り返し行う。上述のように、HEATモードでは、肌検知がある場合、すなわちヘッド部10が肌に適切に接触していると判定されている場合においてのみタイマのカウントが進行する。このため、使用者は、HEATモードにおいて正味の第2時間T2の間、肌にヘッド部10を当てて高周波電流を供給することができる。
【0058】
また、HEATモードにおいて肌に供給される高周波電流は、HOTモードと比較して強い出力である。HEATモードでは、このより強い出力の高周波電流を肌に供給する。このため、HEATモードでは、HOTモードと比較して肌のより深層まで高周波電流が供給され、肌のより深層においてジュール熱を発生させることができる。一方、肌の表層においては、HOTモードよりも強い出力の高周波電流によって過度のジュール熱が発生し得るため、肌の表層の過昇温が懸念される。しかし、美容器1は、温度調節部14を備え、この温度調節部14によって一対の電極11,12を冷却して温度を調節する。このため、HEATモードでは、一対の電極11,12に接触する肌は、冷却された一対の電極11,12によって表層の熱が吸収される。このため、美容器1は、より強い出力の高周波電流を肌に供給した場合でも、肌の表層における過昇温が抑制される。
【0059】
また、美容器1において、一対の電極11,12の間には電極間部材13が配置されている。電極間部材13は、一対の電極11,12が肌に接触した状態において肌に接触し得る構成である。具体的には、電極間部材13は、一対の電極11,12における各接触面11A,12Aと略面一の突出端面13Aを有している。これにより、美容器1は、一対の電極11,12の間において滞留し得る塗布剤Aの量を抑制している。塗布剤Aは、一対の電極11,12において通電されると、肌と同様にジュール熱を発生する。このため、一対の電極11,12の間に滞留する塗布剤Aの量が多ければ多いほど、発生するジュール熱も多くなってしまう。これに対し、美容器1は、電極間部材13を配置したことにより、電極11,12間に滞留し得る塗布剤Aの量が抑制され、滞留塗布剤から発生するジュール熱の発生量も抑制できる。また、美容器1において、電極間部材13は、一対の電極11,12とともに、温度調節部14によって冷却される。この電極間部材13が肌に接触することで、肌から熱を吸収することができる。また、美容器1は、電極間部材13の近傍に塗布剤Aが滞留している場合には、冷却された電極間部材13によって、この塗布剤Aも冷却できる。
【0060】
なお、第2HOTモードは、実行時間が第3時間T3であることを除いて、第1HOTモードと同様の流れである。このため、第2HOTモードについては、その詳説を省略し、第2HOTモードにおける美容器1の使用方法についてのみ説明する。第2HOTモードでは、使用者は、肌に接触させたヘッド部10を、鎖骨、首の順に、
図17に示す各矢印の方向に沿って動かす。美容器1の使用者は、第2HOTモードが継続される第3時間T3の間、これを繰り返し行う。この第2HOTモードが終了すると、顔の左右半分の一方の美容効果付与処理が終了する。
【0061】
その後、美容器1は、顔の左右半分の他方の美容効果付与処理を実行するため、再び第1HOTモードへと自動的に移行する。美容器1の使用者は、顔の左右半分の一方の美容効果付与と同様、顔の左右半分の他方について美容効果付与を行う。美容効果付与処理の終了後は、コネクタ3を電源ジャック24から取り外す。また、ヘッド部10に付着した塗布剤を拭き取り、キャップ2を取り付ける。
【0062】
以上、説明したように、実施例1に係る美容器1は、肌に高周波電流を供給して美容効果を付与する美容器であって、間隔を置いて並んで配置され、肌に接触した状態において肌に高周波電流を供給する一対の電極11,12と、これら一対の電極11,12の間に配置され、一対の電極11,12が肌に接触した状態において肌に接触する電極間部材13と、を備えている。
【0063】
この美容器1は、一対の電極11,12が肌に接触した状態において電極間部材13が肌に接触する。すなわち、美容器1は、一対の電極11,12が肌に接触した状態において、一対の電極11,12の間に形成され得る空間を電極間部材13によって埋めている構成である。このような構成により、美容器1は、電極間部材13を備えない場合と比較して、一対の電極11,12の間に形成され得る空間を狭くできる。このため、美容器1は、塗布剤Aを肌に塗布した場合であっても、一対の電極11,12の間の空間に滞留する塗布剤Aの量を抑えることができる。その結果、塗布剤Aから発生するジュール熱の熱量が抑えられ、塗布剤Aから肌に伝わり得る熱量も抑えられる。したがって、実施例1に係る美容器1は、肌の表層の過昇温を抑制できる。
【0064】
また、実施例1に係る美容器1は、肌に高周波電流を供給して美容効果を付与する美容器であって、間隔を置いて並んで配置され、肌に接触した状態において肌に高周波電流を供給する一対の電極11,12と、これら一対の電極11,12の温度を調節する温度調節部14と、高周波電流を供給しつつ温度調節部14を制御して一対の電極11,12を冷却し、一対の電極11,12の温度を所定の目標温度である第2温度H2に調節する第1モードとしてのHEATモードを実行する制御部30と、を備えている。
【0065】
この美容器1は、温度調節部14によって一対の電極11,12が冷却される。このため、美容器1は、高周波電流の供給によって発生したジュール熱を一対の電極11,12に吸収することができる。また、美容器1は、制御部30によって温度調節部14を制御して、高周波電流を供給しつつ目標温度である第2温度H2になるように一対の電極11,12の温度を調節する。このため、美容器1は、高周波電流の供給による美容効果を継続的に肌に付与しながらも、第2温度H2を維持した一対の電極11,12が肌に接触することによって肌の表層の温度も維持される。したがって、実施例1に係る美容器1は、肌の表層の過昇温を抑制できる。このように、美容器1は、高周波電流を継続して出力しつつ肌を冷却することによって、肌の内部への十分な美容効果の付与と、肌の表層の過昇温の抑制とを両立できる。
【0066】
高周波電流によって発生するジュール熱は、一対の電極11,12に近いほど多く発生する。このため、例えば、肌の内部を所望の温度に温めようとしても、肌表面には過昇温が生じてしまうおそれがある。しかし、美容器1は、温度調節部14によって冷却された一対の電極11,12を介して、肌の表層を冷却することができる。このため、美容器1は、肌内部の温度を所望の温度に温めながらも、肌の表層の温度は適正に保つことができる。また、美容器1は、例えば、継続して出力し続けると肌の過昇温が生じ得るような強さの高周波電流であっても、温度調節部14によって冷却しつつ肌に供給することで、過昇温を生じさせることなく、適正な肌温度を保つことも可能である。
【0067】
また、実施例1に係る美容器1において、温度調節部14は、一対の電極11,12のみならず、電極間部材13の温度も調節する。このため、美容器1は、HEATモードにおいて肌を冷却する効果、及びHOTモードにおいて肌を加温する効果をより有効に発揮できる。特に、HEATモードにおいては、肌等において発生するジュール熱をより積極的に吸収でき、肌表面の温度の過度の上昇を一層抑制することができる。その結果、比較的強い高周波電流を継続的に出力することができ、肌のより深部まで高周波電流を供給することができる。
【0068】
実施例1に係る美容器1は、一対の電極11,12の並び方向において一対の電極11,12を挟んで配置され、肌に接触していることを検知されることによって一対の電極11,12の肌への接触を検知する肌検知電極16,17を備えている。このため、美容器1は、一対の電極11,12が肌に適正に接触しているか否かを容易に検知できる。
【0069】
実施例1に係る美容器1において、温度調節部14はペルチェ素子14Aを有している。制御部30は、HEATモードにおける供給量よりも少ない供給量で高周波電流を供給しつつペルチェ素子14Aを昇温させる制御によって、一対の電極11,12の温度を所定の第2目標温度としての第1温度H1に調節する第2モードとしてのHOTモードを実行する。このため、美容器1は、HOTモードにおいて、高周波電流の出力を抑えながらも肌を昇温させることができる。
【0070】
例えば、この種の美容器では、1回の美容効果付与処理における高周波電流の供給量の総量が規定されている。この場合、1回の美容効果付与処理におけるジュール熱の発生量の総量も決まってしまう。美容器1では、1回の美容効果付与処理において、高周波電流によって発生するジュール熱の熱量に加え、ペルチェ素子14Aから発生する熱の熱量も肌に付与することができる。すなわち、美容器1は、高周波電流による熱量よりも多くの熱量を利用した美容効果を付与できる。
【0071】
実施例1の美容器1において、制御部30は、第1モードとしてのHEATモードにおいて、一対の電極11,12の温度が第2温度H2を超えた所定の温度である上限温度Hmaxになった場合に、高周波電流の供給を停止する制御を実行する。このため、美容器1は、不意の温度上昇に対する安全性の確保を、簡易な構成により容易に実現することができる。
【0072】
また、美容器1は、1回の美容効果付与処理において、高周波電流の出力が比較的弱いHOTモードと、このHOTモードと比較して高周波電流の出力が強いHEATモードと、の複数の美容効果付与モードを組み合わせている。このように、一回の美容効果付与処理を、高周波電流の出力の異なる複数の美容効果付与モードの組み合わせとすることによって、1回の美容効果付与処理における高周波電流の供給量の総量が規定されている場合であっても、例えば、身体の部位別に高周波電流によるジュール熱の発生量の違いを使い分けることで、各部位に相応な美容効果の付与を実現できる。そして、美容器1は、HOTモードでは、高周波電流の供給に加え、ペルチェ素子14Aの加温側での駆動を行っている。このため、身体の部位別に高周波電流によるジュール熱の発生量に差を設けた場合であっても、各部位に十分な熱量による美容効果の付与を実現できる。そしてこの場合、高周波電流の出力を比較的弱くされ、ジュール熱の発生量が比較的少なくなるように設定された美容効果付与モードであるHOTモードでは、ペルチェ素子14Aから発生する熱を当該部位に付与することによって、十分な熱量による美容効果付与を実現できる。
【0073】
本発明は上記記述及び図面によって説明した各実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本開示に係る一対の電極の構成、形状、配置等は、上記実施例に限定されない。一対の電極を構成する材料は上記実施例に限定されず、例えば、銅等の導電性及び熱伝導性に優れた材料を挙げることができる。
(2)本開示に係る美容器において、電極間部材は必須の構成ではない。美容器が電極間部材を備える場合、電極間部材の形状、大きさ等は特に限定されない。電極間部材は、電極間に配置されることから、電気絶縁性に優れる材料からなることが好ましい。また、温度調節部によって冷却、加温される構成の場合、電極間部材は、熱伝導性に優れた材料であることが好ましい。
(3)本開示に係る美容器において、温度調節部は必須の構成ではない。美容器が温度調節部を備える場合、その構成等は上記実施例に限定されない。温度調節部は、上記実施例において例示したペルチェ素子以外の冷却手段を有していてもよい。温度調節部は、例えば、冷却手段と加熱手段とを別々に備えて構成されていてもよい。
(4)実施例1では、温度調節部が一対の電極に加えて電極間部材も冷却する形態を例示したが、これは必須ではない。美容器が温度調節部を備える場合、温度調節部は、一対の電極の温度のみを調節してもよいし、電極間部材の温度のみを調節してもよい。また、温度調節部は、例えば、ヘッド部におけるベース面等、一対の電極及び電極間部材以外のヘッド部の構成の温度を調節してもよい。
(5)本開示に係る美容器において、肌検知電極は必須の構成ではない。美容器が肌検知電極を備える場合、肌検知電極の形状、大きさ、検知形態等は特に問わない。
【符号の説明】
【0074】
1…美容器
11,12…一対の電極(11…第1電極、12…第2電極)
13…電極間部材
14…温度調節部(14A…ペルチェ素子,14B…ヒートシンク)
16,17…肌検知電極
30…制御部
H1…第1温度(所定の第2目標温度)
H2…第2温度(所定の目標温度)
Hmax…上限温度(目標温度を超えた所定の温度)