(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104792
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H01R13/64
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009147
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】長澤 正憲
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB09
5E021FB20
5E021FC38
5E021HB02
5E021HC09
5E021JA05
5E021KA01
(57)【要約】
【課題】仮係止状態での横荷重に対してCPA部材が十分な耐性を有するとともに、斜め操作が行われてもCPA部材がコネクタ本体と十分に本係止することができるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1におけるハウジング111が、CPA部材12におけるCPAランス123に沿って延在するロックアーム111bと、仮係止状態でCPA部材12における仮係止部が係止する仮係止受け部と、ロックアーム111bとの間にCPAランス123を挟んでリブ状に延在する壁であって、CPAランス123と対面する壁面に、仮係止状態でCPA部材12の移動を禁止する禁止部が当接するとともに本係止状態で本係止部が係止する本係止受け部が突出形成された保護壁111dと、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングのキャビティにコネクタ端子が収容されたコネクタ本体と、
前記ハウジングに仮係止状態で取り付けられ、相手方コネクタに対する前記コネクタ本体の嵌合前は嵌合方向に沿った移動方向の移動が禁止され、嵌合によって禁止が解除されると前記移動方向の移動によって本係止状態に移行することで前記嵌合を保証するCPA部材と、を備え、
前記CPA部材が、
前記移動方向の後端側で前記本係止状態への移行操作を受けるCPA本体と、
前記CPA本体における前記移動方向の前端側に設けられ、前記仮係止状態で前記ハウジングに係止する仮係止部と、
前記CPA本体における前記仮係止部に対する隣接位置を固定端として前記後端側へと延在するカンチレバーであって、前記嵌合前は自由端側の禁止部で前記ハウジングに当接して前記移動を禁止し、前記嵌合によって撓められて禁止が解除されるとともに嵌合完了時には、前記禁止部よりも更に自由端側の本係止部で前記ハウジングに係止するCPAランスと、を備え、
前記ハウジングが、
前記CPAランスに沿って延在し、その中途位置に、前記嵌合完了時に前記相手方コネクタが係止するコネクタ受け部が設けられたロックアームと、
前記仮係止状態で前記仮係止部が係止する仮係止受け部と、
前記ロックアームとの間に前記CPAランスを挟んでリブ状に延在する壁であって、前記CPAランスと対面する壁面に、前記仮係止状態で前記禁止部が当接するとともに前記本係止状態で前記本係止部が係止する本係止受け部が突出形成された保護壁と、を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記CPA本体が、前記後端側において、前記ハウジングの外面に沿うとともに前記移動方向と交差する幅方向に延在して前記移行操作を受ける操作受け部と、当該操作受け部における前記幅方向の両端それぞれから前記移動方向に延出した一対のアーム部と、を備え、前記ハウジングの外面に対する平面視でU字状の形状を有する部材であり、
前記仮係止部が、前記一対のアーム部それぞれの前記前端側から前記幅方向の外側に突出形成された一対の突部であり、
前記CPAランスが、前記一対のアーム部それぞれの前記前端側において前記仮係止部とは前記幅方向の内側で前記固定端が隣接するとともに、前記ロックアームを相互間に挟むように一対設けられた部位であり、
前記保護壁が、前記ロックアームにおける前記移動方向に沿った一対の側縁それぞれとの間に各前記CPAランスを挟むように設けられた一対の壁部位であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記仮係止受け部が、前記保護壁を挟んで前記CPAランスと反対側となる位置に設けられており、
前記仮係止部が、前記ハウジングの外面に沿うとともに前記移動方向と交差する幅方向について前記CPA本体の前記前端側に突出形成され、前記保護壁を貫通して前記仮係止受け部に係止する部位であり、
前記保護壁には、前記仮係止部が前記移動方向に移動可能に貫通可能な長孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングの外面において前記CPA部材が前記移動方向に移動するCPA移動面に沿うとともに前記嵌合方向と交差する軸を中心に回動可能に前記ハウジングに軸支され、前記相手方コネクタとの嵌合に際して当該相手方コネクタに係止した状態で前記軸回りの回動操作を受けることで当該相手方コネクタを前記コネクタ本体へと引き寄せて嵌合させる嵌合レバーを更に備え、
前記CPAランスが、回動中の前記嵌合レバーによって前記自由端側を押圧されることで前記禁止が解除される方向に撓められることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記CPAランスにおける前記自由端側には、前記ハウジングの外面から離れる方向に突出した突起部が形成されており、
前記禁止部が、前記突起部における前記移動方向の前方側の端面であって、
前記本係止部が、前記突起部における前記移動方向の後方側の端面であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ本体に相手方コネクタとの嵌合保証のためのCPA(Connector Position Assurance)部材が取り付けられたコネクタに関するものとなっている。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタ本体に相手方コネクタとの嵌合保証のためのCPA部材が取り付けられたコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1のCPA部材は、ハウジングに仮係止状態で取り付けられ、嵌合前は嵌合方向に沿った移動が禁止されている。そして、CPA部材は、コネクタ本体と相手方コネクタとの嵌合によって禁止が解除されて移動が可能となる。嵌合完了時には、作業者が、移動可能となったCPA部材を移動させることで本係止状態へと移行させる。このコネクタでは、CPA部材が本係止状態となっていること以て、相手方コネクタとの嵌合が保証されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のコネクタでは、嵌合前でコネクタ本体に仮係止状態で取り付けられているCPA部材に対し、例えば持ち運び時の他部材との接触等により、移動方向と交差する横方向からの荷重が加わることがある。また、嵌合完了時にCPA部材を本係止状態へと移行させる移行操作において、斜め方向に力が加えられて動かされる場合がある。仮係止状態で横荷重が加わった場合にはCPA部材が脱落する可能性がある。また、斜め操作が行われた場合には、コネクタ本体との本係止が不十分でCPA部材が意図せずに仮係止状態に戻ってしまう等といった事態が生じ、嵌合が十分に保証されなくなる可能性がある。
【0005】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、仮係止状態での横荷重に対してCPA部材が十分な耐性を有するとともに、斜め操作が行われてもCPA部材がコネクタ本体と十分に本係止することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、コネクタは、ハウジングのキャビティにコネクタ端子が収容されたコネクタ本体と、前記ハウジングに仮係止状態で取り付けられ、相手方コネクタに対する前記コネクタ本体の嵌合前は嵌合方向に沿った移動方向の移動が禁止され、嵌合によって禁止が解除されると前記移動方向の移動によって本係止状態に移行することで前記嵌合を保証するCPA部材と、を備え、前記CPA部材が、前記移動方向の後端側で前記本係止状態への移行操作を受けるCPA本体と、前記CPA本体における前記移動方向の前端側に設けられ、前記仮係止状態で前記ハウジングに係止する仮係止部と、前記CPA本体における前記仮係止部に対する隣接位置を固定端として前記後端側へと延在するカンチレバーであって、前記嵌合前は自由端側の禁止部で前記ハウジングに当接して前記移動を禁止し、前記嵌合によって撓められて禁止が解除されるとともに嵌合完了時には、前記禁止部よりも更に自由端側の本係止部で前記ハウジングに係止するCPAランスと、を備え、前記ハウジングが、前記CPAランスに沿って延在し、その中途位置に、前記嵌合完了時に前記相手方コネクタが係止するコネクタ受け部が設けられたロックアームと、前記仮係止状態で前記仮係止部が係止する仮係止受け部と、前記ロックアームとの間に前記CPAランスを挟んでリブ状に延在する壁であって、前記CPAランスと対面する壁面に、前記仮係止状態で前記禁止部が当接するとともに前記本係止状態で前記本係止部が係止する本係止受け部が突出形成された保護壁と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述のコネクタによれば、仮係止状態での横荷重に対してCPA部材が十分な耐性を有するとともに、斜め操作が行われてもCPA部材がコネクタ本体と十分に本係止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るコネクタを相手方コネクタとともに示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されているコネクタの分解斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2に示されているCPA部材を示す拡大斜視図である。
【
図4】
図3に示されているCPA部材が仮係止状態にあるときのコネクタを、リア側端部から見て示す斜視図である。
【
図5】
図4に示されているコネクタを、図中の矢印V11方向から見た平面図ある。
【
図6】
図4及び
図5に示されている仮係止状態のCPA部材とその周辺構造を、
図5中のV12-V12線に沿った断面で示した断面図である。
【
図7】
図3に示されているCPA部材が本係止状態に移行したときのコネクタを、リア側端部から見て示す斜視図である。
【
図8】
図7に示されているコネクタを、図中の矢印V13方向から見た平面図ある。
【
図9】
図7及び
図8に示されている本係止状態のCPA部材とその周辺構造を、
図8中のV14-V14線に沿った断面で示した断面図である。
【
図10】
図1~
図9に示されているコネクタにおいて、仮係止状態での横荷重に対してCPA部材が十分な耐性を有することを説明するための説明図である。
【
図11】
図1~
図9に示されているコネクタにおいて、斜め操作が行われてもCPA部材がコネクタ本体11と十分に本係止することができることを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、コネクタの一実施形態について説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係るコネクタを相手方コネクタとともに示す斜視図であり、
図2は、
図1に示されているコネクタの分解斜視図である。
【0011】
本実施形態におけるコネクタ1は、一例として、車両等に搭載されるワイヤーハーネスの端部コネクタとして利用される。相手方コネクタ2は、基板搭載型のコネクタであり、ワイヤーハーネスが接続される機器の内部基板等に搭載される。また、本実施形態では、コネクタ1は、矩形ブロック状の外観を有するメス型コネクタであり、相手方コネクタ2は、このコネクタ1が2つ接続可能な矩形ブロック状のオス型コネクタとなっている。
【0012】
コネクタ1は、コネクタ本体11、CPA部材12、嵌合レバー13、及び電線カバー14、を備えている。また、コネクタ本体11は、ハウジング111、コネクタ端子112、及びスペーサ113を備えている。
【0013】
コネクタ本体11は、ハウジング111のキャビティ111aにコネクタ端子112が収容されたものである。ハウジング111は、矩形ブロック状の外観を有し、内部に角筒状のキャビティ111aが複数形成された絶縁樹脂製の部材である。コネクタ端子112は、電線W1の端部に圧着接続され、板金加工によって角筒状に形成された導電金属製のメス型端子である。コネクタ端子112はハウジング111のキャビティ111aに1つずつ収容される。
【0014】
スペーサ113は、矩形ブロック状のハウジング111の一面に開けられたスリットから差し入れられる絶縁樹脂製の部材である。このスペーサ113がハウジング111に差し入れられると、各キャビティ111a内のコネクタ端子112を差入れ方向に押圧することで、各コネクタ端子112が各キャビティ111aから抜け出さないように固定する。
【0015】
CPA部材12は、ハウジング111に仮係止状態で取り付けられ、相手方コネクタ2に対するコネクタ本体11の嵌合後に本係止状態に移行することで嵌合を保証する樹脂部材である。CPA部材12は、相手方コネクタ2に対するコネクタ本体11の嵌合前は嵌合方向D11に沿った移動方向D12の移動が禁止され、嵌合によってこの禁止が解除される。作業者は、相手方コネクタ2に対するコネクタ本体11の嵌合が完了すると、CPA部材12を移動方向D12に押し込むようにして本係止状態へと移行させることで、嵌合を確認する。
【0016】
嵌合レバー13は、ハウジング111の外面においてCPA部材12が移動方向D12に移動するCPA移動面111eに沿うとともに嵌合方向D11と交差する軸13aを中心に回動可能にハウジング111に軸支されている樹脂部材である。この嵌合レバー13は、軸13aと交差するようにハウジング111を相互間に挟む一対のレバーアーム131と、これら一対のレバーアーム131の端部どうしをブリッジ状に繋ぐレバー操作部132と、を備えている。コネクタ本体11と相手方コネクタ2との嵌合の際には、嵌合レバー13は、一対のレバーアーム131が相手方コネクタ2に係止した状態で、レバー操作部132を介して軸13a回りの回動操作を受ける。嵌合レバー13は、この回動操作によって相手方コネクタ2をコネクタ本体11へと引き寄せて嵌合させる。
【0017】
電線カバー14は、ハウジング111における相手方コネクタ2との嵌合側と反対側のリア側端部に取り付けられる樹脂カバーである。コネクタ端子112が端部に圧着され、ハウジング111のリア側端部から外部に延出する複数の電線W1は、この電線カバー14によって覆われて保護されるとともに、リア側端部からの延出方向と交差する横方向へと案内される。
【0018】
このような構成を有する本実施形態のコネクタ1が嵌合する相手方コネクタ2は、このコネクタ1が2つ並んで嵌合可能な横長矩形ブロック状のオス型コネクタである。この相手方コネクタ2は、横長矩形ブロック状の絶縁樹脂製の相手方ハウジング21と、基板搭載型の複数の相手方コネクタ端子22と、を備えている。各相手方コネクタ端子22は、相手方ハウジング21における嵌合側と反対側のリア側端部から外部へと延出し、途中で90°折れ曲って搭載基板へと至る折れ曲り形状を有している。また、相手方コネクタ端子22における嵌合側は、角筒状のメス型端子であるコネクタ端子112の内部へと進入可能なピン形状を有している。
【0019】
以上、相手方コネクタ2も含めて概要について説明したコネクタ1につき、以下では、嵌合保証のためのCPA部材12に注目して説明を行う。
【0020】
図3は、
図1及び
図2に示されているCPA部材を示す拡大斜視図である。
図4は、
図3に示されているCPA部材が仮係止状態にあるときのコネクタを、リア側端部から見て示す斜視図であり、
図5は、
図4に示されているコネクタを、図中の矢印V11方向から見た平面図ある。
図6は、
図4及び
図5に示されている仮係止状態のCPA部材とその周辺構造を、
図5中のV12-V12線に沿った断面で示した断面図である。また、
図7は、
図3に示されているCPA部材が本係止状態に移行したときのコネクタを、リア側端部から見て示す斜視図である。
図8は、
図7に示されているコネクタを、図中の矢印V13方向から見た平面図ある。
図9は、
図7及び
図8に示されている本係止状態のCPA部材とその周辺構造を、
図8中のV14-V14線に沿った断面で示した断面図である。
【0021】
これらの
図3~
図9に示されているように、本実施形態のコネクタ1では、CPA部材12が、CPA本体121、仮係止部122、及びCPAランス123を備えている。
【0022】
CPA本体121は、CPA部材12の移動方向D12の後端側で本係止状態への移行操作を受ける部位であり、操作受け部121a及び一対のアーム部121bを備えている。操作受け部121aは、CPA本体121における移動方向D12の後端側を構成する部位であり、ハウジング111の外面における上記のCPA移動面111eに沿うとともに移動方向D12と交差する幅方向D13に延在して作業者から移行操作を受ける。このときの移行操作は、CPA本体121、つまりはCPA部材12を、操作受け部121aに指を掛けて移動方向D12に押し込み、本係止状態へと移行させる操作である。一対のアーム部121bは、操作受け部121aにおける幅方向D13の両端それぞれから移動方向D12に延出した部位である。CPA本体121は、これらの部位を備え、ハウジング111のCPA移動面111eに対する平面視でU字状の形状を有する部材となっている。
【0023】
仮係止部122は、CPA本体121における移動方向D12の前端側に設けられ、嵌合前の仮係止状態でハウジング111に係止する。この仮係止部122は、CPA本体121における一対のアーム部121bそれぞれの前端側から幅方向S13の外側に突出形成された一対の突部となっている。
【0024】
CPAランス123は、CPA本体121における仮係止部122に対する隣接位置を固定端として後端側へと延在するカンチレバーである。このCPAランス123は、一対のアーム部121bそれぞれの前端側において仮係止部122とは幅方向D13の内側で固定端が隣接して延在するように一対設けられた部位となっている。各CPAランス123における自由端側には、ハウジング111におけるCPA移動面111eから離れる方向に突出した突起部123aが形成されている。そして、この突起部123aにおける移動方向D12の前方側の端面が禁止部123b、後方側の端面が本係止部123cとなっている。禁止部123bは、CPAランス123の自由端側に位置し、嵌合前はハウジング111に当接してCPA部材12の移動を禁止する部位である。この禁止は、嵌合によってCPAランス123がCPA移動面111eに向かって撓められることで解除される。そして、この禁止解除を伴う嵌合完了時には、CPA部材12が移動方向D12に押し込まれて、禁止部123bよりも更に自由端側に位置する本係止部123cがハウジング111に係止する。
【0025】
ここで、本実施形態では、CPAランス123は、嵌合時に回動中の嵌合レバー13によって自由端側の突起部123aがCPA移動面111eに向かって押圧されることで、ハウジング111との当接による禁止が解除される方向に撓められる。尚、
図4は、仮係止状態で、嵌合レバー13は、
図1と同様に回動前の状態にあるが、仮係止状態のCPA部材12が隠れないように、嵌合レバー13については回動後の嵌合完了時の状態で図示されている。
【0026】
他方、コネクタ本体11では、CPA部材12に関わる部位として、ハウジング111に、ロックアーム111b、仮係止受け部111c、及び保護壁111dが設けられている。
【0027】
ロックアーム111bは、CPAランス123に沿い、CPA部材12の移動方向D12の前方側を固定端、後方側を自由端として延在したカンチレバーである。このロックアーム111bの中途位置に、嵌合完了時に相手方コネクタ2における相手方ハウジング21の係止爪が係止するコネクタ受け部111b-1が貫通孔として設けられている。また、ロックアーム111bの自由端には、相手方コネクタ2からコネクタ1を取り外すときのロック解除の際に作業者から押下げ操作を受ける操作受け部111b-2が設けられている。CPAランス123は、一対のアーム部121bそれぞれの前端側において仮係止部122とは幅方向D13の内側で固定端が隣接するとともに、ロックアーム111bを相互間に挟むように一対設けられた部位となっている。
【0028】
仮係止受け部111cは、嵌合前の仮係止状態でCPA部材12における一対の仮係止部122が係止する一対の部位である。各仮係止受け部111cが、保護壁111dを挟んでCPAランス123と反対側となる位置に次のように設けられている。本実施形態では、保護壁111dにおけるCPAランス123と反対側の壁面に沿って筒状の覆い壁111fが形成されており、その内壁面に保護壁111dに向かって突出する爪状の仮係止受け部111cが形成されている。
【0029】
保護壁111dは、ロックアーム111bにおける移動方向D12に沿った一対の側縁それぞれとの間に各CPAランス123を挟んでリブ状に延在する一対の壁部位である。各保護壁111dにおいてCPAランス123と対面する壁面には、嵌合前の仮係止状態で禁止部123bが当接するとともに本係止状態で本係止部123cが係止する本係止受け部111d-1が突出形成されている。また、各保護壁111dには、嵌合完了時に本係状態に向かってCPA部材12が移動方向D12に動かされるときに仮係止部122が移動方向D12に移動しながら貫通する長孔111d-2が形成されている。この長孔111d-2は、保護壁111dにおける移動方向D12の後方側の端縁から移動方向D12に延在するスリット状の切れ込みとして形成されている。長孔111d-2における保護壁111dの端縁側の開口部は、CPA部材12の取付け時における仮係止部122の受入れ口となる。嵌合前の仮係止時には、仮係止部122が、保護壁111dの長孔111d-2を貫通して覆い壁111fの内部の仮係止受け部111cに係止する。
【0030】
以上に説明した実施形態のコネクタ1によれば、以下に説明するように、仮係止状態での横荷重に対してCPA部材12が十分な耐性を有するとともに、斜め操作が行われてもCPA部材12がコネクタ本体11と十分に本係止することができる。
【0031】
図10は、
図1~
図9に示されているコネクタにおいて、仮係止状態での横荷重に対してCPA部材が十分な耐性を有することを説明するための説明図である。また、
図11は、
図1~
図9に示されているコネクタにおいて、斜め操作が行われてもCPA部材がコネクタ本体11と十分に本係止することができることを説明するための説明図である。
【0032】
まず、本実施形態のコネクタ1によれば、上述したように、CPA部材12におけるCPAランス123が仮係止部122に対する隣接位置から延出したカンチレバーとなっている。そして、
図10に示されているように、このCPAランス123がコネクタ本体11のハウジング111におけるロックアーム111bと保護壁111dとで挟まれた状態となっている。この構成により、仮係止状態で横荷重F11が加わった場合にCPAランス123が傾こうとしてもロックアーム111bや保護壁111dにCPAランス123が当接してそれ以上傾くことがない。従って、仮係止状態で横荷重F11が加わった場合でもコネクタ本体11からの脱落をもたらすようなCPA部材12の大きな傾きがCPAランス123を介して防がれる。つまり、本実施形態のコネクタ1によれば、仮係止状態での横荷重F11に対してCPA部材12が十分な耐性を有することができる。
【0033】
また、本実施形態では、CPA部材12における本係止状態への移行操作は、CPAランス123がロックアーム111bと保護壁111dとで挟まれた状態で行われる。このような挟持構造により、
図11に示されているように、CPA部材12が斜め方向D14に押し込まれる斜め操作が行われた場合でも、CPA部材の姿勢が移動方向D12に沿った姿勢に矯正されることとなる。そして、この移動姿勢の矯正により、CPA部材12はコネクタ本体11と十分に本係止されることとなる。
【0034】
このように、本実施形態のコネクタ1によれば、仮係止状態での横荷重F11に対してCPA部材12が十分な耐性を有するとともに、斜め操作が行われてもCPA部材12がコネクタ本体11と十分に本係止することができる。
【0035】
ここで、本実施形態のコネクタ1は、一対のCPAランス123でロックアーム111bを相互間に挟むとともに、その外側から一対の保護壁111dで挟んだ構造となっている。この構成によれば、横荷重F11に対して一対のCPAランス123の挟持構造で抗するとともに、これら一対の挟持構造によって斜め方向D14の操作に対する姿勢矯正が行われることとなる。その結果、横荷重F11に対する耐性や斜め操作に対する姿勢矯正効果を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、仮係止受け部111cが、保護壁111dを挟んでCPAランス123と反対側となる位置に設けられている。そして、仮係止部122は、長孔111d-2を介して保護壁111dを移動方向D12に移動可能に貫通して仮係止受け部111cに係止する。この構成によれば、ロックアーム111bと保護壁111dによるCPAランス123の挟持空間の外側に仮係止受け部111cが配置されることから、ロックアーム111bや保護壁111dをCPAランス123と密着させることが可能となる。そして、このような密着により、CPA部材12における横荷重F11に対する耐性や斜め操作に対する姿勢矯正効果を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、ハウジング111に嵌合レバー13が取り付けられており、CPAランス123は、回動中の嵌合レバー13によって自由端側を押圧されることで撓められ、ハウジング111との当接による移動禁止が解除される。この構成によれば、上記の嵌合レバー13を設けることで、例えば相手方コネクタ2のハウジング形状等を変更することなく、嵌合に伴うCPA部材12の移動禁止を効果的に解除することができる。
【0038】
また、本実施形態では、CPAランス123の自由端側に形成された突起部123aの移動方向D12の前方側の端面が禁止部123bとなり、後方側の端面が本係止部123cとなっている。この構成によれば、CPAランス123における突起部123aに移動の禁止部123bと本係止部123cが設けられることから、CPAランス123の形状の複雑化を抑えてCPA部材12を形成することができる。
【0039】
尚、以上に説明した実施形態はコネクタの代表的な形態を示したに過ぎない。コネクタは、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、コネクタの一例として、車両に搭載されるワイヤーハーネスの端部コネクタ等として利用されるコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、その具体的な適用対象を問うものではない。
【0041】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、矩形ブロック状の外観を有し、同じく矩形ブロック状の外観を有する基板搭載型の相手方コネクタ2に2つ並べて接続可能なコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、その具体的な外観形状や相手方コネクタのタイプについては、これを問うものではない。
【0042】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、嵌合方向D11の後端側に電線カバー14が取り付けられたコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、如何なる電線カバーも備えず、電線がハウジングからそのまま延出するものであってもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、スペーサ113を備えたコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、コネクタ本体とCPA部材を備えるものであれば、他の構成は任意に設定し得るものである。
【0044】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、一対のCPAランス123でロックアーム111bを相互間に挟むとともに、その外側から一対の保護壁111dで挟んだ構造を有するコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、ロックアームと保護壁との間に挟まれて設けられるものであれば、CPAランスは1本のみであってもよい。ただし、上記のような一対のCPAランス123をロックアーム111bと一対の保護壁111dとの間に挟む構造によれば、横荷重F11に対する耐性や斜め操作に対する姿勢矯正効果を向上させることができる点は上述した通りである。
【0045】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、CPA部材12における仮係止部122が、コネクタ本体11における保護壁111dの長孔111d-2を貫通して外側の仮係止受け部111cに係止するコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、例えばCPA部材の仮係止部が、コネクタ本体における保護壁の内側に設置された仮係止受け部に係止するもの等であってもよい。ただし、仮係止受け部111cを保護壁111dの外側に設置することで、ロックアーム111bや保護壁111dをCPAランス123と密着させて横荷重F11に対する耐性や斜め操作に対する姿勢矯正効果を向上させることができる点は上述した通りである。
【0046】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、CPA部材12に対する移動禁止の解除を、嵌合レバー13がCPAランス123を撓ませることで行うコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、CPA部材に対する移動禁止の解除を、例えば相手方コネクタにおける相手方ハウジングがCPAランスを撓ませることで行うもの等であってもよい。ただし、移動禁止の解除を嵌合レバー13で行うことにより、相手方コネクタ2のハウジング形状等を変更することなく、嵌合に伴うCPA部材12の移動禁止を効果的に解除することができる点は上述した通りである。
【0047】
また、上述した実施形態では、CPA部材の一例として、CPAランス123の突起部123aの前方側の端面が禁止部123bで、後方側の端面が本係止部123cとなったCPA部材12が例示されている。しかしながら、CPA部材は、これに限るものではなく、CPAランスのどのような箇所に禁止部及び本係止部を設けるかは、任意の構造を採用し得るものである。ただし、CPAランス123の突起部123aに禁止部123b及び本係止部123cを設けることで、CPAランス123の形状の複雑化を抑えてCPA部材12を形成することができる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0048】
1 コネクタ
2 相手方コネクタ
11 コネクタ本体
12 CPA部材
13 嵌合レバー
13a 軸
14 電線カバー
21 相手方ハウジング
22 相手方コネクタ端子
111 ハウジング
111a キャビティ
111b ロックアーム
111b-1 コネクタ受け部
111b-2 操作受け部
111c 仮係止受け部
111d 保護壁
111d-1 本係止受け部
111d-2 長孔
111e CPA移動面
111f 覆い壁
112 コネクタ端子
113 スペーサ
131 レバーアーム
132 レバー操作部
121 CPA本体
121a 操作受け部
121b アーム部
122 仮係止部
123 CPAランス
123a 突起部
123b 禁止部
123c 本係止部
131 レバーアーム
132 レバー操作部
D11 嵌合方向
D12 移動方向
D13 幅方向
D14 斜め方向
F11 横荷重
W1 電線