(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104793
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20240730BHJP
H01R 13/631 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/631
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009148
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】長澤 正憲
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB09
5E021FB20
5E021FC38
5E021HB02
5E021HC09
5E021JA08
5E021KA08
(57)【要約】
【課題】ダイアグ端子と相手方コネクタ端子との十分な接触荷重の確保と、ロックアームにおける良好な操作性と、を両立させることができるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1におけるダイアグ端子収容室111fの内部に、ダイアグ端子14における相手方接触部142の分岐元部分142aを押し付けるように設けられて当該分岐元部分142aの動きを規制する規制部111cと、分岐元部分142aを頂部で支えるように突出形成され、相手方コネクタ端子との接触時に相手方接触部142が持ち上げられるときの支点、及び、ロックアーム111bの押込み時にダイアグ端子14が倒れ込むときの支点となる支点部111dを設けたことを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングのキャビティにコネクタ端子が収容されたコネクタ本体と、
前記コネクタ本体と相手方コネクタとの嵌合完了時に一対の相手方コネクタ端子を受入れ可能に嵌合側が開口して前記ハウジングに設けられたダイアグ端子収容室に収容され、前記嵌合完了時には前記一対の相手方コネクタ端子を短絡することにより嵌合を電気的に診断可能とするダイアグ端子と、を備え、
前記ダイアグ端子が、
前記嵌合側に向かって開口したU字状の金属板バネであって、一端側が前記ダイアグ端子収容室を区画する対向一対の区画壁における一方の区画壁に接し、他端側が他方の区画壁に接するように前記ダイアグ端子収容室に収容されたバネ部分と、
前記バネ部分の前記他端側から二股に分かれて前記嵌合側に延出し、前記嵌合完了時には前記一対の相手方コネクタ端子を前記他方の区画壁との間に挟むように当該一対の相手方コネクタ端子と接触する一対の相手方接触部と、を備え、
前記ハウジングが、
前記一方の区画壁の一部をなすとともに前記嵌合完了時に前記相手方コネクタが係止するように設けられ、前記相手方コネクタとの係止時及び嵌合解除のための係止解除時には、前記バネ部分を押し縮めながら前記他方の区画壁へと押し込まれるロックアームと、
前記ダイアグ端子収容室の内部に、前記一対の相手方接触部の分岐元部分を前記他方の区画壁へと押し付けるように設けられて当該分岐元部分の動きを規制する規制部と、
前記分岐元部分を頂部で支えるように前記他方の区画壁に突出形成され、前記一対の相手方コネクタ端子との接触時に前記一対の相手方接触部が持ち上げられるときの支点、及び、前記ロックアームの押込み時に前記ダイアグ端子が前記嵌合側とは反対側へと倒れ込むときの支点となる支点部と、を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記規制部は、前記ダイアグ端子収容室における前記支点部よりも前記嵌合側を、前記一対の相手方接触部それぞれが配される一対の小室に分割する内部壁であり、前記嵌合側とは反対側で一部が前記分岐元部分よりも前記バネ部分側へと張出しており、その張出し部分の根元側で前記分岐元部分を前記他方の区画壁へと押し付けることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記バネ部分の一端側には、前記ロックアームに接するとともに前記一方の区画壁における前記ロックアーム以外の部分と係止するバネ側係止部が設けられ、
前記ハウジングが、前記一方の区画壁における前記ロックアーム以外の部分に設けられバネ側係止部と係止するハウジング側係止部を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記他方の区画壁における前記支点部よりも前記嵌合側から遠い部分は、前記支点部から遠ざかるにつれて高さが漸減するように傾斜しており、前記ロックアームの押込み時に前記支点部を支点として倒れ込む前記ダイアグ端子を、前記バネ部が接触するように支える傾斜面となっていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ダイアグ端子は、前記一対の相手方接触部の長手方向について、当該一対の相手方接触部それぞれにおける接点部から前記分岐元部分までの長さが、前記バネ部分における前記分岐元部分から湾曲頂部までの長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ダイアグ端子が、前記バネ部分の前記一端側における一対の側縁それぞれで前記他端側へと折り曲げられて延出するとともに、更に前記バネ部分における湾曲部側へと延出した一対の側片部を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ本体に相手方コネクタとの嵌合を電気的に診断するためのダイアグ端子が取り付けられたコネクタに関するものとなっている。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタ本体に相手方コネクタとの嵌合を電気的に診断するためのダイアグ端子が取り付けられたコネクタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1のダイアグ端子は、相手方コネクタとの嵌合完了時に一対の相手方コネクタ端子を短絡するようにハウジングに取り付けられる。相手方コネクタとの嵌合の診断(diagnosis)は、ダイアグ端子によって短絡された一対の相手方コネクタ端子の導通を、例えば相手方コネクタが設置された機器等で検知することで行われる。
【0003】
ここで、上記のダイアグ端子はU字状に曲げられた金属板バネとして形成されている。その一端側は、嵌合時に相手方コネクタと係止するロックアームに接し、他端側で嵌合完了時に一対の相手方コネクタ端子と接触するように構成されている。ロックアームは相手方コネクタとの係止時、及び嵌合解除のための係止解除時に押し込まれるが、ダイアグ端子はロックアームの押込み時に押し縮められることでロックアームにバネ性によるロック荷重を付与している。また、ダイアグ端子は、ハウジングにおけるダイアグ端子収容室の区画壁との間に挟み付けるようにして一対の相手方コネクタ端子と接触するが、ダイアグ端子のバネ性は、相手方コネクタ端子との接触荷重にもなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のコネクタでは、相手方コネクタ端子との接触荷重を大きくするためにダイアグ端子のバネ強度を上げるとロックアームのロック荷重も大きくなり、ロックアームにおける操作性が低下する恐れがある。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、ダイアグ端子と相手方コネクタ端子との十分な接触荷重の確保と、ロックアームにおける良好な操作性と、を両立させることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、コネクタは、ハウジングのキャビティにコネクタ端子が収容されたコネクタ本体と、前記コネクタ本体と相手方コネクタとの嵌合完了時に一対の相手方コネクタ端子を受入れ可能に嵌合側が開口して前記ハウジングに設けられたダイアグ端子収容室に収容され、前記嵌合完了時には前記一対の相手方コネクタ端子を短絡することにより嵌合を電気的に診断可能とするダイアグ端子と、を備え、前記ダイアグ端子が、前記嵌合側に向かって開口したU字状の金属板バネであって、一端側が前記ダイアグ端子収容室を区画する対向一対の区画壁における一方の区画壁に接し、他端側が他方の区画壁に接するように前記ダイアグ端子収容室に収容されたバネ部分と、前記バネ部分の前記他端側から二股に分かれて前記嵌合側に延出し、前記嵌合完了時には前記一対の相手方コネクタ端子を前記他方の区画壁との間に挟むように当該一対の相手方コネクタ端子と接触する一対の相手方接触部と、を備え、前記ハウジングが、前記一方の区画壁の一部をなすとともに前記嵌合完了時に前記相手方コネクタが係止するように設けられ、前記相手方コネクタとの係止時及び嵌合解除のための係止解除時には、前記バネ部分を押し縮めながら前記他方の区画壁へと押し込まれるロックアームと、前記ダイアグ端子収容室の内部に、前記一対の相手方接触部の分岐元部分を前記他方の区画壁へと押し付けるように設けられて当該分岐元部分の動きを規制する規制部と、前記分岐元部分を頂部で支えるように前記他方の区画壁に突出形成され、前記一対の相手方コネクタ端子との接触時に前記一対の相手方接触部が持ち上げられるときの支点、及び、前記ロックアームの押込み時に前記ダイアグ端子が前記嵌合側とは反対側へと倒れ込むときの支点となる支点部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述のコネクタによれば、ダイアグ端子と相手方コネクタ端子との十分な接触荷重の確保と、ロックアームにおける良好な操作性と、を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るコネクタを相手方コネクタとともに示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されているコネクタの分解斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2に示されているダイアグ端子を示す拡大斜視図である。
【
図4】
図3に示されているハウジングをアーム設置面から見て示す平面図である。
【
図5】
図4に示されているハウジングに設けられたダイアグ端子収容室を、図中のV11-V11線に沿った断面で示した断面図ある。
【
図6】
図5に示されているダイアグ端子収容室にダイアグ端子が収容された様子を
図5と同様の断面で示した断面図である。
【
図7】
図5及び
図6に示されている支点部が、相手方接触部が持ち上げられるときの支点、及び、ダイアグ端子が嵌合側とは反対側へと倒れ込むときの支点となる様子を示す図である。
【
図8】ダイアグ端子収容室に収容されたダイアグ端子において、相手方コネクタ端子との接触荷重と、ロックアームに対するロック荷重と、が発生する箇所を示した図である。
【
図9】
図1~
図8に示されているコネクタにおけるダイアグ端子の収容構造に対する比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、コネクタの一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るコネクタを相手方コネクタとともに示す斜視図であり、
図2は、
図1に示されているコネクタの分解斜視図である。
【0012】
本実施形態におけるコネクタ1は、一例として、車両等に搭載されるワイヤーハーネスの端部コネクタとして利用される。相手方コネクタ2は、基板搭載型のコネクタであり、ワイヤーハーネスが接続される機器の内部基板等に搭載される。また、本実施形態では、コネクタ1は、矩形ブロック状の外観を有するメス型コネクタであり、相手方コネクタ2は、このコネクタ1が2つ接続可能な矩形ブロック状のオス型コネクタとなっている。
【0013】
コネクタ1は、コネクタ本体11、嵌合レバー12、電線カバー13、及びダイアグ端子14、を備えている。また、コネクタ本体11は、ハウジング111、コネクタ端子112、及びスペーサ113を備えている。
【0014】
コネクタ本体11は、ハウジング111のキャビティ111aにコネクタ端子112が収容されたものである。ハウジング111は、矩形ブロック状の外観を有し、内部に角筒状のキャビティ111aが複数形成された絶縁樹脂製の部材である。コネクタ端子112は、電線W1の端部に圧着接続され、板金加工によって角筒状に形成された導電金属製のメス型端子である。コネクタ端子112はハウジング111のキャビティ111aに1つずつ収容される。
【0015】
スペーサ113は、ハウジング111におけるアーム設置面111eと反対側の一面に開けられたスリットから差し入れられる絶縁樹脂製の部材である。このスペーサ113がハウジング111に差し入れられると、各キャビティ111a内のコネクタ端子112を差入れ方向に押圧することで、各コネクタ端子112が各キャビティ111aから抜け出さないように固定する。
【0016】
嵌合レバー12は、ハウジング111の外面におけるアーム設置面111eに沿うとともに嵌合方向D11と交差する軸12aを中心に回動可能にハウジング111に軸支されている樹脂部材である。嵌合レバー13は、軸12aと交差するようにハウジング111を相互間に挟む一対のレバーアーム121と、これら一対のレバーアーム121の端部どうしをブリッジ状に繋ぐレバー操作部122と、を備えている。コネクタ本体11と相手方コネクタ2との嵌合の際には、嵌合レバー12は、一対のレバーアーム121が相手方コネクタ2に係止した状態で、レバー操作部122を介して軸12a回りの回動操作を受ける。嵌合レバー12は、この回動操作によって相手方コネクタ2をコネクタ本体11へと引き寄せて嵌合させる。
【0017】
電線カバー13は、ハウジング111における相手方コネクタ2との嵌合側と反対側のリア側端部に取り付けられる樹脂カバーである。コネクタ端子112が端部に圧着され、ハウジング111のリア側端部から外部に延出する複数の電線W1は、この電線カバー13によって覆われて保護されるとともに、リア側端部からの延出方向と交差する横方向へと案内される。
【0018】
ダイアグ端子14は、金属板バネであり、矩形ブロック状のハウジング111における四面の周面のうち後述のロックアーム111bが設けられるアーム設置面111eの近傍に設置される導電金属製の部材である。このアーム設置面111eの近傍には、コネクタ本体11と相手方コネクタ2との嵌合完了時に一対の相手方コネクタ端子22を受入れ可能に嵌合側が2つ開口したダイアグ端子収容室111fが設けられている。ダイアグ端子14は、このダイアグ端子収容室111fに収容されており、嵌合完了時には一対の相手方コネクタ端子22を短絡することにより嵌合を電気的に診断可能とする部材である。診断は、相手方コネクタ2を備える機器側で、上記の一対の相手方コネクタ端子22に対する導通確認によって自己診断的に行われる。
【0019】
このような構成を有する本実施形態のコネクタ1が嵌合する相手方コネクタ2は、このコネクタ1が2つ並んで嵌合可能な横長矩形ブロック状のオス型コネクタである。この相手方コネクタ2は、横長矩形ブロック状の絶縁樹脂製の相手方ハウジング21と、基板搭載型の複数の相手方コネクタ端子22と、を備えている。各相手方コネクタ端子22は、相手方ハウジング21における嵌合側と反対側のリア側端部から外部へと延出し、途中で90°折れ曲って搭載基板へと至る折れ曲り形状を有している。また、相手方コネクタ端子22における嵌合側は、角筒状のメス型端子であるコネクタ端子112の内部へと進入可能なピン形状を有している。そして、複数の相手方コネクタ端子22のうち、上記のダイアグ端子収容室111fの2つの開口に対応した位置の一対の相手方コネクタ端子22が嵌合時にダイアグ端子収容室111fに進入し、ダイアグ端子14によって短絡される。
【0020】
以上、相手方コネクタ2も含めて概要について説明したコネクタ1につき、以下では、嵌合を電気的に診断可能とするダイアグ端子14に注目して説明を行う。
【0021】
図3は、
図1及び
図2に示されているダイアグ端子を示す拡大斜視図である。
図4は、
図3に示されているハウジングをアーム設置面から見て示す平面図であり、
図5は、
図4に示されているハウジングに設けられたダイアグ端子収容室を、図中のV11-V11線に沿った断面で示した断面図ある。
図6は、
図5に示されているダイアグ端子収容室にダイアグ端子が収容された様子を
図5と同様の断面で示した断面図である。
【0022】
これらの
図3~
図6に示されているように、本実施形態では、ダイアグ端子14が、バネ部分141、一対の相手方接触部142、バネ側係止部143、及び一対の側片部144を備えている。他方、コネクタ本体11のハウジング111には、ダイアグ端子収容室111fの内部及び周辺に、ロックアーム111b、規制部111c、支点部111d、傾斜面111g、及びハウジング側係止部111hが設けられている。
【0023】
ダイアグ端子14におけるバネ部分141は、嵌合側に向かって開口したU字状の金属板バネである。バネ部分141は、一端側がダイアグ端子収容室111fを区画する対向一対の区画壁111f-1,111f-2における一方の区画壁111f-1に接し、他端側が他方の区画壁111f-2に接するようにダイアグ端子収容室111fに収容される。また、一対の相手方接触部142は、バネ部分141の他端側から二股に分かれて嵌合側に延出し、嵌合完了時には一対の相手方コネクタ端子22を他方の区画壁111f-2との間に挟むように当該一対の相手方コネクタ端子22と接触する接点部位である。
【0024】
ハウジング111におけるロックアーム111bは、ダイアグ端子収容室111fにおける一方の区画壁111f-1の一部をなしている。このロックアーム111bは、嵌合完了時には相手方コネクタ2における相手方ハウジング21が係止するように設けられている。相手方コネクタ2との係止時及び嵌合解除のための係止解除時には、このロックアーム111bが、ダイアグ端子14におけるバネ部分141を押し縮めながら他方の区画壁111f-2へと押し込まれて係止が解除される。ダイアグ端子14のバネ部分141は、そのバネ弾性によって、ロックアーム111bが押し込まれるときの荷重であるロック荷重をロックアーム111bに付与する。
【0025】
ハウジング111における規制部111cは、ダイアグ端子収容室111fの内部に、ダイアグ端子14における一対の相手方接触部142の分岐元部分142aを他方の区画壁111f-2へと押し付けるように設けられた部位である。この規制部111cは、ロックアーム111bの押込み時、及び、相手方コネクタ端子22が相手方接触部142の先端側を持ち上げながら進入するとき、の分岐元部分142aの動きを規制する。本実施形態では、この規制部111cは、ダイアグ端子収容室111fにおける支点部111dよりも嵌合側を、一対の相手方接触部142それぞれが配される一対の小室111f-3に分割する内部壁となっている。規制部111cであるこの内部壁は、嵌合側とは反対側で一部が分岐元部分142aよりもバネ部分141側へと張出している。規制部111cは、その張出し部分111c-1の根元側で分岐元部分142aを他方の区画壁111f-2へと押し付ける。
【0026】
また、ハウジング111における支点部111dは、分岐元部分142aを頂部で支えるように他方の区画壁111f-2に突出形成された部位である。この支点部111dは、相手方コネクタ端子22との接触時に相手方接触部142が持ち上げられるときの支点、及び、ロックアーム111bの押込み時にダイアグ端子14が嵌合側とは反対側へと倒れ込むときの支点となる。
【0027】
図7は、
図5及び
図6に示されている支点部が、相手方接触部が持ち上げられるときの支点、及び、ダイアグ端子が嵌合側とは反対側へと倒れ込むときの支点となる様子を示す図である。
【0028】
この
図7に示されているように、嵌合時に相手方コネクタ端子22がダイアグ端子収容室111fの嵌合側の小室111f-3に進入する際には、相手方接触部142は、その先端側が持上げ方向D13に持ち上げられて撓められる。相手方接触部142は、その反力を接触荷重として相手方コネクタ端子22をダイアグ端子収容室111fにおける他方の区画壁111f-2との間に挟み付けるように接触する。他方の区画壁111f-2に突出形成された支点部111dは、規制部111cによる分岐元部分142aの押し付けとも相まって、相手方接触部142が持上げられて撓むときの支点となる。
【0029】
また、相手方コネクタ2との係止解除のためにロックアーム111bが他方の区画壁111f-2へと向かうロック解除方向D14に押し込まれると、ダイアグ端子14は、ロックアーム111bによって押し縮められながら嵌合側とは反対側へと倒れ込む。ロックアーム111bによってダイアグ端子14のバネ部分141が押し縮められるときの反力がロック荷重となる。支点部111dは、相手方接触部142の持上げのときと同様に、規制部111cによる分岐元部分142aの押し付けとも相まって、倒れ込みの際の支点となる。
【0030】
ダイアグ端子収容室111fに設けられた傾斜面111gは、上記のようにロックアーム111bの押込み時に支点部111dを支点として倒れ込むダイアグ端子14を、バネ部分141が接触するように支える面となっている。この傾斜面111gは、他方の区画壁111fにおける支点部111dよりも嵌合側とは反対側の部分であって、支点部111dから遠ざかるにつれて高さが漸減するように傾斜して形成された部位である。
【0031】
また、ダイアグ端子14は、上述のように、バネ部分141及び相手方接触部142の他に、バネ側係止部143及び一対の側片部144を備えている。
【0032】
バネ側係止部143は、バネ部分141の一端側、つまりロックアーム111b側に設けられ、ロックアーム111bに接するとともに一方の区画壁111f-1におけるロックアーム111b以外の部分をなすハウジング側係止部111hと係止する。バネ側係止部143は、その一対の側縁それぞれに係止凹部143aが形成されている。ハウジング側係止部111hには、これら一対の係止凹部143aに係止する一対の係止凸部111h-1が設けられている。
【0033】
また、ダイアグ端子14における一対の側片部144は、バネ部分141の一端側における一対の側縁それぞれで他端側へと折り曲げられて延出するとともに、更にバネ部分141における湾曲部側へと延出した折り曲げ部位である。
【0034】
以上の構成を有するダイアグ端子14では、ダイアグ端子収容室111fに収容されたとき、相手方コネクタ端子22との接触荷重と、ロックアーム111bに対するロック荷重とが、次のような箇所で発生する。
【0035】
図8は、ダイアグ端子収容室に収容されたダイアグ端子において、相手方コネクタ端子との接触荷重と、ロックアームに対するロック荷重と、が発生する箇所を示した図である。
【0036】
まず、ダイアグ端子収容室111fに収容されたダイアグ端子14において、相手方コネクタ端子22との接触荷重は、相手方接触部142における接点部142bから分岐元部分142aまでの第1箇所145で発生する。これは、相手方接触部142が、規制部111cによる支点部111dに対する分岐元部分142aの押し付けで、この分岐元部分142aの移動が規制されていることによる。相手方コネクタ端子22との接触時には、相手方接触部142がこの分岐元部分142aを起点にして撓められるので、接点部142bから分岐元部分142aまでの第1箇所145において接触荷重が発生することになる。また、ロックアーム111bに対するロック荷重は、上記の分岐元部分142aの移動規制により、バネ部分141における分岐元部分142aから湾曲頂部141aまでの第2箇所146において発生することになる。そして、本実施形態のダイアグ端子14は、相手方接触部142の長手方向について、上記の第1箇所145の長さが第2箇所146の長さよりも長くなっている。
【0037】
図9は、
図1~
図8に示されているコネクタにおけるダイアグ端子の収容構造に対する比較例を示す図である。
【0038】
この
図9に示されている比較例のダイアグ端子54は、全体が長尺U字状の金属板バネとなっており、その一端側がロックアーム511bに接し、他端側の先端部が二股に分岐して一対の接点部542bとなっている。このダイアグ端子54が収容される比較例のダイアグ端子収容室511fには、上述の実施形態における規制部111cに相当する構成が設けられておらず、ロックアーム511bと対面する区画壁511f-2に支点部511dのみが突出形成されている。
【0039】
この比較例の構成では、ダイアグ端子54の長手方向について中途部分の移動規制がない。このため、相手方コネクタ端子との接触時には、ダイアグ端子54における接触側は、U字の湾曲頂部541aを起点に持上げられて撓むこととなる。その結果、相手方コネクタ端子との接触荷重は、接点部542bから湾曲頂部541aまでの第1箇所545で発生する。他方、ロックアーム511bの押込み時には、ロックアーム511bが支点部511dとの間にダイアグ端子54を挟んで押し縮めながら押し込まれることになる。その結果、ロックアーム511bに対するロック荷重は、支点部511dとの接触から湾曲頂部541aまでの第2箇所546で発生する。この構成では、第1箇所545が長くなるので、この第1箇所545で発生する接触荷重が弱くなりがちとなる。しかしながら、この接触荷重を大きくするためにダイアグ端子54の全体のバネ強度を上げるとロック荷重も大きくなり、ロックアームにおける操作性が低下する恐れがある。
【0040】
このような比較例に対し、上述の実施形態のコネクタ1によれば、以下に説明する効果を奏することができる。即ち、本実施形態のコネクタ1によれば、ロックアーム111bの押込み時のロック荷重は、ダイアグ端子14において支点部111dよりも嵌合側から遠くなるバネ部分141によって生じる。他方、相手方接触部142と相手方コネクタ端子22との接触時における接触荷重は、支点部111dよりも嵌合側となる相手方接触部142それぞれによって生じる。このように、ダイアグ端子14おいてロック荷重が生じる場所と接触荷重が生じる場所とが分かれているので、ロック荷重及び接触荷重を個別に適正な値に設定することが可能となっている。つまり、本実施形態のコネクタ1によれば、ダイアグ端子14と相手方コネクタ端子22との十分な接触荷重の確保と、ロックアーム111bにおける良好な操作性と、を両立させることができる。
【0041】
ここで、本実施形態では、規制部111cは、ダイアグ端子収容室111fの嵌合側を一対の小室111f-3に分割する内部壁となっている。そして、この規制部111cは、その一部である張出し部分111c-1の根元側で分岐元部分142aを他方の区画壁111f-2へと押し付ける。この構成によれば、各相手方接触部142を各相手方コネクタ端子22と個別の小室111f-3内で接触させるための内部壁が上記の規制部111cとなっていることから、ダイアグ端子収容室111fの内部構造を簡略化することができる。
【0042】
また、本実施形態では、バネ部分141の一端側にはバネ側係止部143が設けられ、ハウジング111がハウジング側係止部111hを備えている。この構成によれば、バネ側係止部143とハウジング側係止部111hとの係止により、ダイアグ端子収容室111fの内部におけるダイアグ端子14の姿勢を安定化することができる。
【0043】
また、本実施形態では、他方の区画壁111f-2における支点部111dよりも嵌合側から遠い部分が、支点部111dを支点として倒れ込むダイアグ端子14を、バネ部分141が接触するように支える傾斜面111gとなっている。この構成によれば、ロックアーム111bの押込み時に、ダイアグ端子14は、バネ部分141が傾斜面111gに接触した状態で押し縮められるので、安定したロック荷重を得ることができる。
【0044】
また、本実施形態では、ダイアグ端子14は、相手方接触部142の長手方向について、接点部142bから分岐元部分142aまでの長さが、分岐元部分142aから湾曲頂部141aまでの長さよりも長い。この構成によれば、上記長さの大小関係により、バネ部分141による適正なロック荷重と、相手方接触部142による適正な接触荷重を効果的に得ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、ダイアグ端子14が一対の側片部144を備えている。この構成によれば、ダイアグ端子14におけるバネ部分141が、その幅方向について一対の側片部144で両側から保持される。この側方保持により、バネ部分141の幅方向の変形を効果的に抑えることで、そのバネ性を良好に保つことができる。
【0046】
尚、以上に説明した実施形態はコネクタの代表的な形態を示したに過ぎない。コネクタは、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0047】
例えば、上述した実施形態では、コネクタの一例として、車両に搭載されるワイヤーハーネスの端部コネクタ等として利用されるコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、その具体的な適用対象を問うものではない。
【0048】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、矩形ブロック状の外観を有し、同じく矩形ブロック状の外観を有する基板搭載型の相手方コネクタ2に2つ並べて接続可能なコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、その具体的な外観形状や相手方コネクタのタイプについては、これを問うものではない。
【0049】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、嵌合補助のための嵌合レバー12と、嵌合方向D11の後端側の電線カバー13と、が取り付けられたコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、如何なる嵌合レバーや電線カバーを備えないものであってもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、スペーサ113を備えたコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、コネクタ本体とダイアグ端子を備えるものであれば、他の構成は任意に設定し得るものである。
【0051】
また、上述した実施形態では、規制部の一例として、ダイアグ端子収容室111fの嵌合側を一対の小室111f-3に分割する内部壁となった規制部111cが例示されている。しかしながら、規制部は、これに限るものではなく、ダイアグ端子収容室の内部に上記のような内部壁を設けないこととしてもよく、規制部とは別に設けることとしてもよい。ただし、規制部111cに内部壁を兼ねさせることで、ダイアグ端子収容室111fの内部構造を簡略化することができる点は上述した通りである。
【0052】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、ダイアグ端子14のバネ側係止部143がハウジング111のハウジング側係止部111hに係止した状態でダイアグ端子収容室111fに収容されたコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、ダイアグ端子は、区画壁に接触したのみの状態でダイアグ端子収容室に収容されることとしてもよい。ただし、バネ側係止部143をハウジング側係止部111hに係止させることで、ダイアグ端子14の姿勢を安定化することができる点は上述した通りである。
【0053】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、ダイアグ端子収容室111fにおける他方の区画壁111f-2に、ダイアグ端子14を、バネ部分141が接触するように支える傾斜面111gが設けられたコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、ロックアーム111bの押込み時にダイアグ端子14を平面で支えるもの等であってもよい。ただし、ロックアーム111bの押込み時に、ダイアグ端子14を傾斜面111gで支えることで、安定したロック荷重を得ることができる点は上述した通りである。
【0054】
また、上述した実施形態では、ダイアグ端子の一例として、接点部142bから分岐元部分142aまでの長さが、分岐元部分142aから湾曲頂部141aまでの長さよりも長いダイアグ端子14が例示されている。しかしながら、ダイアグ端子は、これに限るものではなく、その各部の長さ等については任意に設定し得るものである。ただし、上記長さの大小関係により、バネ部分141による適正なロック荷重と、相手方接触部142による適正な接触荷重を効果的に得ることができる点は上述した通りである。
【0055】
また、上述した実施形態では、ダイアグ端子の一例として、一対の側片部144を備えたダイアグ端子14が例示されている。しかしながら、ダイアグ端子は、これに限るものではなく、単純なU字形状のみで形成されたもの等であってもよい。ただし、一対の側片部144を設けることで、バネ部分141の幅方向の変形を効果的に抑えてバネ性を良好に保つことができる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0056】
1 コネクタ
2 相手方コネクタ
11 コネクタ本体
12 嵌合レバー
12a 軸
13 電線カバー
14 ダイアグ端子
21 相手方ハウジング
22 相手方コネクタ端子
111 ハウジング
111a キャビティ
111b ロックアーム
111c 規制部
111c-1 張出し部分
111d 支点部
111e アーム設置面
111f ダイアグ端子収容室
111f-1 一方の区画壁
111f-2 他方の区画壁
111f-3 小室
111g 傾斜面
111h ハウジング側係止部
111h-1 係止凸部
112 コネクタ端子
113 スペーサ
121 レバーアーム
122 レバー操作部
141 バネ部分
141a 湾曲頂部
142 相手方接触部
142a 分岐元部分
142b 接点部
143 バネ側係止部
143a 係止凹部
144 側片部
145 第1箇所
146 第2箇所
D11 嵌合方向
D12 移動方向
D13 持上げ方向
D14 ロック解除方向
W1 電線