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特開2024-104794ワインの醸造/保管工程データの記録管理システム、及びワインの所有権証明及び保管場所証明書の発行システム
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  • 特開-ワインの醸造/保管工程データの記録管理システム、及びワインの所有権証明及び保管場所証明書の発行システム 図1
  • 特開-ワインの醸造/保管工程データの記録管理システム、及びワインの所有権証明及び保管場所証明書の発行システム 図2
  • 特開-ワインの醸造/保管工程データの記録管理システム、及びワインの所有権証明及び保管場所証明書の発行システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104794
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ワインの醸造/保管工程データの記録管理システム、及びワインの所有権証明及び保管場所証明書の発行システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240730BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009150
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】521128786
【氏名又は名称】株式会社UniCask
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】田中克彦
(72)【発明者】
【氏名】戴有造
(72)【発明者】
【氏名】田中宏明
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ユーザーがワインの出来を評価する根拠となる各種データ・情報をブロックチェーン上で記録し、かつ、売買対象となるワインを保管庫に保管したまま、所有権の証明書と保管場所の証造/保管工程データ明書としてカード式ハードウェアウォレットを発行して売買の利便性を向上するワインの醸造の記録管理システム並びにワインの所有権証明書及び保管場所証明書の発行システムを提供する。
【解決手段】システムは、ワインを醸造する樽及び/又は充填したボトルを保管する保管庫の内部温度及び内部湿度を測定するIoTセンサーと、ワイナリー情報、ワインの原料情報、IoTセンサーから送信される測定データが記録されるデータベースと、データベースに記録されている原料情報、測定データを分析してワインの出来を評価するAIと、を含み、ワイナリー情報、原料情報、測定データ、AIによる評価結果情報をハッシュ化してブロックチェーン上に記録する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワインの醸造工程及び/又は保管工程に係るデータを記録管理する処理プログラムを有するコンピュータシステム1であって、
前記コンピュータシステム1は、
前記ワインを醸造するための樽及び/又は前記ワインが充填されたボトルが保管される保管庫の内部空間に設置され、前記保管庫の内部温度及び内部湿度を定期的に測定し、測定したデータを前記コンピュータシステム1に自動的に送信するIoTセンサーと、
ワイナリー情報、前記ワインの原料であるブドウに関する原料情報、及び前記IoTセンサーから送信される測定データが記録されるデータベースと、
前記データベースに記録されている少なくとも前記原料情報、前記測定データを分析して前記ワインの出来を評価するAIと、を含み、
前記コンピュータシステム1は、前記データベースに記録されている前記ワイナリー情報、前記原料情報、前記測定データ、及び前記AIによる評価結果情報をハッシュ化し、ブロックチェーン上に記録する、
ことを特徴とするワインの醸造/保管工程データの記録管理システム。
【請求項2】
前記保管庫は、物流倉庫を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のワインの醸造/保管工程データの記録管理システム。
【請求項3】
前記コンピュータシステム1は、前記データベースにワイン鑑定士による前記ワインのテイスティング情報を更に記録し、前記テイスティング情報も前記AIの分析対象データとして追加する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のワインの醸造/保管工程データの記録管理システム。
【請求項4】
前記コンピュータシステム1は、前記システム1に接続可能なアプリケーションプログラムがダウンロードされているユーザー端末に対し、前記保管庫の内部空間をメタバース情報として送信し、前記ユーザー端末の画面上に前記メタバース情報が表示される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のワインの醸造/保管工程データの記録管理システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のワインの醸造工程及び/又は保管工程に係るデータを記録管理する処理プログラムを有するコンピュータシステム1を用い、前記保管庫の内部空間に保管されている前記ワインの売買に係る所有権の証明書及び保管場所の証明書を発行する処理プログラムを有するコンピュータシステム2であって、
前記コンピュータシステム2は、
前記ワインの購入者に対する所有権の証明書と保管場所の証明書として、ブロックチェーン上のトークンに紐づいたNFTに関する情報が印刷されたカード式ハードウェアウォレットを発行し、
前記ワインの所有権が他者に移転されるごとに、当該移転情報をブロックチェーン上に記録し、
前記コンピュータシステム2に接続可能なアプリケーションプログラムがダウンロードされているユーザー端末から前記ワインの発送依頼情報を受信した際、前記保管庫の保管庫端末に対し、前記ワインをユーザー端末から受け取った所定住所に発送すべき発送指令情報を送信する、
ことを特徴とするワインの所有権証明書及び保管場所証明書の発行システム。
【請求項6】
前記コンピュータシステム2は、前記ワインが前記発送指令情報に基づいて輸送されるコンテナの内部空間に設置され、前記コンテナの内部温度、内部湿度、振動を定期的に測定し、測定したデータを前記コンピュータシステム2に自動的に送信するIoTセンサーを更に含み、測定データは前記データベースに記録される、
ことを特徴とする請求項5に記載のワインの所有権証明書及び保管場所証明書の発行システム。
【請求項7】
前記カード式ハードウェアウォレットは、公開鍵と秘密鍵が印刷されたスクラッチ式カードであり、スクラッチ膜の下に前記秘密鍵に係る情報が印刷されている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のワインの所有権証明書及び保管場所証明書の発行システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワインを醸造・熟成保管するワイナリー内の環境を自動的に測定・記録し、ブロックチェーン技術を用いてワインの所有権証明書、保管場所の証明書を発行するコンピュータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
品質の良いワインを作るには、原料となるブドウの品質とともに醸造、熟成・保管されるワイナリーの内部環境(温度、湿度等)を適切に管理する必要があり、基本的には生産者による長年の経験に基づいて管理されている。
【0003】
一方、生産者が醸造、熟成及び保管時に、いかに適切に管理していたかについての事実は証明のしようがなく、また悪質な生産者の場合には管理データを改竄し、品質を偽る可能性もある。こうした従来の方法では、消費者が購入しようとするワインの品質を評価(予測)しようとしても、判断の根拠となる真実のデータ・情報を知ることが出来ず、ワインボトルのラベルに記載されている内容や鑑定士等の専門家による評価を通じてしか、品質評価(品質予測)をすることができなかった。
【0004】
また、ワインの二次流通においては、現物のボトル(瓶)を実際に輸送しているため、輸送の段階における品質劣化も起こりうる。
【0005】
こうした生産者(人)による管理に代えて、各種センサー類とコンピュータシステムを活用して環境状態をデータ化し、ワインが適切な環境下で管理され、或いは適切な環境で輸送されているか否かを判別できるようにしたシステムも提案されている(下記、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、ぶどう果汁をワイン樽に充填して醸造する過程での温度、湿度のデータは取得・管理しておらず、かつ管理データについても、悪意に基づく改竄を不可能とする策が講じられておらず、ワインの本当の価値を真実の情報に基づいて評価(予測)する上で課題がある。
【0007】
さらに、ワインの所有者に係る情報についても真実かどうかを確認できる仕組みになっておらず、かつ所有者の移転情報も管理されていないため、詐欺行為を完全に防ぐことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-60838
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術が有する課題を解決するため、ワインの醸造工程、熟成保管工程、輸送工程において、品質を左右する温度、湿度、振動についてIoTセンサーを用いて自動的に測定するとともに、当該測定データとワインの原料であるブドウに関する情報をもとにしたAIによる分析結果を含め、ユーザーがワインの出来を評価する根拠となる各種データ・情報をブッロクチェーン上で記録することにより、改竄されることなく真実なデータ・情報として適切に管理することを目的とする。
【0010】
また上記した各種データ・情報の管理を基礎として、売買対象となるワインをワイナリー等の保管庫に保管したままワインの所有権の証明書と保管場所の証明書として、NFTとそれを保管するカード式ハードウェアウォレットを発行することにより、ワインの物理的移動(輸送)を伴うことなく売買を行い、かつ売買するユーザーの操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決する為の手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本願の第一の発明は、
ワインの醸造工程及び/又は保管工程に係るデータを記録管理する処理プログラムを有するコンピュータシステム1であって、
前記コンピュータシステム1は、
前記ワインを醸造するための樽及び/又は前記ワインが充填されたボトルが保管される保管庫の内部空間に設置され、前記保管庫の内部温度及び内部湿度を定期的に測定し、測定したデータを前記システム1に自動的に送信するIoTセンサーと、
ワイナリー情報、前記ワインの原料であるブドウに関する原料情報、及び前記IoTセンサーから送信される測定データが記録されるデータベースと、
前記データベースに記録されている少なくとも前記原料情報、前記測定データを分析して前記ワインの出来を評価するAIと、を含み、
前記コンピュータシステム1は、前記データベースに記録されている前記ワイナリー情報、前記原料情報、前記測定データ、及び前記AIによる評価結果情報をハッシュ化し、ブロックチェーン上に記録する、
ことを特徴とする。
【0012】
また上記の目的を達成するため、本願の第二の発明は、
上記ワインの醸造工程及び/又は保管工程に係るデータを記録管理する処理プログラムを有するコンピュータシステム1を用い、前記保管庫の内部空間に保管されている前記ワインの売買に係る所有権の証明書及び保管場所の証明書を発行する処理プログラムを有するコンピュータシステム2であって、
前記コンピュータシステム2は、
前記ワインの購入者に対する所有権の証明書と保管場所の証明書として、ブロックチェーン上のトークンに紐づいたNFTに関する情報が印刷されたカード式ハードウェアウォレットを発行し、
前記ワインの所有権が他者に移転されるごとに、当該移転情報をブロックチェーン上に記録し、
前記コンピュータシステム2に接続可能なアプリケーションプログラムがダウンロードされているユーザー端末から前記ワインの発送依頼情報を受信した際、前記保管庫の保管庫端末に対し、前記ワインをユーザー端末から受け取った所定住所に発送すべき発送指令情報を送信する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記した本願の第一発明によれば、ワインを製造したワイナリーに係る情報、ブドウの原料情報、IoTセンサーで取得した醸造工程及び/又は熟成保管工程における保管庫の内部温度、内部湿度に係る測定データ、更には各情報・各データに基づいて分析したAIによる分析結果を、ブロックチェーン上に記録し、不特定多数の消費者は、改竄されていない真実のデータ・情報を知ることができ、これらを根拠として、購入しようとするワインの出来を予測し、評価して購入することができる。
【0014】
さらに、本願の第二発明によれば、ブロックチェーン上のトークンに紐づいたカード式ハードウェアウォレットを受け渡すだけで、ワインの所有権が移転譲渡され、売買する現物ワインをワイナリーの保管庫に保管している状態のまま、物理的な移動・輸送を伴うことなく自由に売買することができる。特に、世界的に著名なフランスボルドーのシャトーで醸造、熟成保管されている最高級ワインなどは、当該シャトー内で保管した状態のまま所有権の移転ができるため、ワインの価値を更に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ワインの熟成状態及び/又は保管状態に係るデータを記録管理する処理プログラムを有するシステム1の概念図。
図2】AIによる機械学習の概念図。
図3】保管庫の内部空間に保管されているワインの売買に係る所有権の証明書及び保管場所の証明書を発行する処理プログラムを有するシステム2の概念図。
図4】カード式ハードウェアウォレットの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下説明する実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を当該実施の形態のみに限定するものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0017】
図1は、本発明に係るワインの熟成状態及び/又は保管状態に係るデータを記録管理する処理プログラムを有するコンピュータシステム1(以下、システム1)の概念図である。当該コンピュータシステム1は、ハードウエアとしてサーバー、パソコン、IoTセンサーを含み、ソフトウェアとして各処理を実行する処理プログラム1を有する。
【0018】
醸造工程にあるワイン樽、及びボトリングされたワインが熟成のため保管されているワイナリーの保管庫の内部空間には、当該保管庫の内部温度、内部湿度を定期的かつ自動的に測定するIoTセンサーが設置され、ぶどう果汁を樽詰して醸造する工程、及び完成したワインを瓶詰した後の熟成保管工程において、IoTセンサーによって定期的かつ自動的に測定した内部温度データ及び内部湿度データは、ネットワークを介して送信され、システム1のデータベースに自動的に記録される。
【0019】
また、データベースには、ワイナリーに関するワイナリー情報(名称、所在地等)、ワインの原料となるブドウに関する原料情報(品種、生産畑、収穫日、糖度、酸度、YAN濃度等)も、ワイナリー情報、原料情報として併せて記録されている。
【0020】
また、消費者がワインの出来栄えを評価するための補助的情報として、著名なワイン鑑定士によるテイスティング結果に係る情報も、併せてデータベースに記録するようになっている。鑑定士は、見た目の特徴、香りの特徴、味わいの特徴等の項目ごとに点数化し、各項目の得点を総計し総合点をつける(例えば、100点満点中90点などとして得点化する)。見た目の特徴としては、色の濃淡、粘性、清澄度などがあり、香りの特徴としては、香りの良し悪し、味わいの特徴としては、軽やかか厚みがあるか、なめらかか渋みがあるか、辛口か甘口か、酸味が弱いか強かなどがあるが、これらに限定されない。
【0021】
上記データベースに記録された保管庫の内部温度データ、内部湿度データ、ワイナリー情報、原料情報、鑑定士によるテイスティング結果の情報は、システム1の処理プログラムによってハッシュ化しブロックチェーン上に記録され、改竄不可能なデータとして記録される。このため、悪意のデータ改竄ができず、消費者は各種データ、各種情報を信憑性あるものとして安心して確認することができる。
【0022】
また本発明では、消費者が当該ワインの出来栄えを評価(予測)するための更なる補助的情報として、AIによる評価結果もシステム1の処理プログラムによってブロックチェーン上に記録され、改竄不可能なデータとして記録されようになっている。AIは、データベースに記録されている保管庫の内部温度データ、内部湿度データ、原料情報を説明変数とし、品質評価を目的変数として行うものである。AIによる分析評価は、教師データありの機械学習のうち、回帰分析などを適宜に用いることができ、消費者はAIが分析した結果を購入決断の判断基準とすることができる。なお、ワイン鑑定士によるテイスティング結果情報(上記点数)は、そのまま消費者に開示して購入判断の基礎データとして提供してもよく、或いはAIによる分析対象(説明変数)として加えても良い。さらにワイナリー情報についても、例えば国、地域、業界・専門家による評価などを予め点数化しておき、これらを説明変数の一つとして追加しても良い。
【0023】
図2は、AIによる機械学習の概念図である。説明変数xは複数あり、分析(学習)の前処理として、正規化を行う。説明変数xが複数存在すると、多重共線性も問題があるが、正則化を行うことで問題を解決する。また、回帰分析はscikit-learnなどの機械学習ライブラリなどを用いて行う。AIによる分析(学習)y=f(x1、x2、・・・、xn)を用いて評価予測を行い、AIが導き出した評価yを消費者の購入判断の材料とすることができる。
【0024】
また本実施形態では、消費者が自身のパソコン、スマホ等を用いて、ワイナリーの内部空間をメタバースにより確認できるようにしている。消費者は、システム1が提供するアプリケーションソフトウェアを自身のパソコン、スマホ等にダウンロードすることにより、実際に世界各国にあるワイナリーの保管庫に足を運ばなくても、メタバースを利用して保管庫内の様子をバーチャルで見ることができ、当該ワインを購入するか否かの判断材料として用いることもできる。
【0025】
なお、本実施形態では、ぶどう果汁を樽詰して醸造する工程、及び醸造後のワインを瓶詰した後の保管工程のいずれにおいても、IoTセンサーによって所定時間間隔で取得した内部温度データ及び内部湿度データを、システム1が有するデータベース内に自動的に記録するようにしているが、ぶどう果汁を樽詰して発酵させる工程、完成したワインを瓶詰した後の保管工程のいずれか一つの工程における内部温度データ及び内部湿度データを取得し、記録するようにしても良い。
【0026】
また、IoTセンサーによって温度、湿度を測定するタイミングは、1時間間隔、又は2~3時間間隔など、一日を通して必要なタイミングで必要な時刻に取得すれば良い。
【0027】
なお、上記実施形態では保管庫をワイナリーにある保管庫として説明したが、保管庫は、温度・湿度等が適切に管理される専用の物流倉庫等であっても良い。
【0028】
図2は、本発明に係るブロックチェーン技術を用い、ワインの所有権証明書及び保管場所の証明書を発行するコンピュータシステム2(以下、システム2)の概念図である。当該コンピュータシステム2は、ハードウエアとしてサーバー、パソコン、IoTセンサー、カード式ハードウェアウォレットを作成するプリンターを含み、ソフトウェアとして各処理を実行する処理プログラム2を有する。
【0029】
図示では、ワインの売買をワイナリーに代わって管理会社が行う例を示しており、まず一次販売代理店がワインを購入した際、管理会社が運用するシステム2によって保管庫の情報に紐づいたNFTに関する情報が印刷されたカード式ハードウェアウォレットを発行し、管理会社から一次販売代理店に送付される。
【0030】
その後、一次販売代理店から投資家A、投資家B、消費者Cへと移転される度に、カード式ハードウェアウォレットが受け渡しされ、最終的に消費者Cが現物ワインを受け取る。二次販売では、カード式ハードウェアウォレットの売買が基本となっており、カード式ハードウェアウォレットを売買することで、ブロックチェーンに紐づいた「所有権の証明書」と「保管場所の証明書」が売り手側から買い手側に移転される。カード式ハードウェアウォレットの発行は、管理会社による代行ではなく、ワイナリー自身が行っても良い。
【0031】
図3は、カード式ハードウェアウォレットの概念図であり、NFTのアドレスに紐づいたQRコード(登録商標)化された公開鍵と秘密鍵が印刷され、公開鍵はオーブンにされて見えており、秘密鍵はスクラッチ膜で覆われて見えないように秘匿されている。消費者Cがスクラッチ膜を剥ぎ取ることで、カードに印刷されている秘密鍵情報が現れ、秘密鍵で署名することによって消費者Cが真の最終所有権者であることが証明され、現物ワインを受け取ることができる。なお、本実施形態では、公開鍵をQRコード(登録商標)で表す例を示しているが、バーコード等の二次元コード、英文字・数字の羅列等であっても良い。
【0032】
消費者Cは、システム2にアクセス可能なアプリケーションソフトウェアがダウンロードされた自身のパソコン、スマホ等から、指定した住所に保管庫で保管されているワインを発送するよう発送指令情報を送信することができる。
【0033】
また、現物ワインを輸送するためのコンテナにも、コンテナの内部温度、内部湿度、振動に係る測定データを取得するIoTセンサーを設け、IoTセンサーによって取得した各データをデータベースに記録することで、購入した消費者Cは、コンテナ輸送中の温度、湿度、振動によって品質が劣化している恐れはないかどうかを判断することができる。またこれにより、現物ワインの到着後に品質が劣化していた場合、その原因と責任の所在を明らかとすることができる。
【0034】
上記した「所有権の証明書」と「保管場所の証明書」のトークンはパブリックなブロックチェーン上で発行され、このパブリックなブロックチェーンはイーサリアムを想定しているが個別のプロトコルに限定されない。トークンにはワインの銘柄、製造地、製造者、総数などの情報が記載され、データ量が多い場合にはハッシュ値が記載されている。
【0035】
本発明において、所有権の移転に図3に示すような秘密鍵情報が隠されたスクラッチ式のハードウェアウォレットを使用することで、ウォレットやマーケットプレイスの知識がなくても、従来通りの実物マーケットプレイスでの出品や取引の知識さえあれば、誰でも簡単に取引が可能となり、取引の難易度は高くならない。
【0036】
なお、ワインが保管されているワイナリー保管庫の内部空間をブロックチェーンに記録してNFT化し、NFT所有者に「所有権の証明書」と「保管空間の証明書」をカード式ハードウェアウォレットとして発行しても良い。この場合、上記メタバースを利用して保管庫の内部空間を可視化し、ユーザーは実際の保管庫に足を運ばなくても内部の様子を確認でき、かつシステム1のデータを活用することで、保管庫の実際の内部温度、内部湿度に係る情報も入手できるため、保管庫の内部空間をNFT化することで、ワインではなく特定の保管場所(空間)も自由に流通させることができる。これにより、世界的に著名なシャトーの保管庫の一部空間を売買対象とすることで、自身が有する他で生産されたワインを、著名なシャトー内で熟成保管させることも可能となる。
【0037】
以上のとおり、本願発明によれば、ワインの醸造工程、熟成保管工程において、保管庫の内部温度データ、内部湿度データを、IoTセンサーによって自動的に取得し、さらにこれらのデータをブロックチェーン上に記録することで改竄を防止できる。さらに、ワイナリー情報、原料情報、鑑定士による評価、これらのデータ/情報に基づいてAIが判定した評価結果もブロックチェーン上に記録されるため、誰でも容易にアクセスでき、ワイン購入のための真実かつ正確な基礎情報を得ることができる。
【0038】
さらに、ワインを購入した所有権の証明書は、カード式ハードウェアウォレットを流通させるだけでよく、現物のワインはワイナリーの保管庫に保管したままの状態で所有権だけを移転でき、著名なシャトー等で保管され続けていることを証明できるため、高級ワインに対し更なる付加価値を付けることもできる。


図1
図2
図3
図4