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特開2024-104796フラットヒーターおよびこれを用いた保持炉
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  • 特開-フラットヒーターおよびこれを用いた保持炉 図1
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  • 特開-フラットヒーターおよびこれを用いた保持炉 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104796
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】フラットヒーターおよびこれを用いた保持炉
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20240730BHJP
   H05B 3/22 20060101ALI20240730BHJP
   H05B 3/18 20060101ALI20240730BHJP
   F27B 14/14 20060101ALI20240730BHJP
   F27D 11/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H05B3/20 356
H05B3/22
H05B3/18
F27B14/14
F27D11/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009157
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】517062894
【氏名又は名称】電化物産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140006
【弁理士】
【氏名又は名称】渕上 宏二
(72)【発明者】
【氏名】津山 辰己
(72)【発明者】
【氏名】西川 直久
【テーマコード(参考)】
3K034
3K092
4K046
4K063
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA04
3K034AA12
3K034AA16
3K034BA06
3K034BB06
3K034BC05
3K034JA10
3K092PP10
3K092QB26
3K092QB62
3K092RF03
3K092RF11
3K092RF26
3K092VV04
4K046AA07
4K046BA02
4K046CD03
4K063AA04
4K063BA03
4K063CA04
4K063CA06
4K063FA05
(57)【要約】
【課題】従来の上部加熱方式や直接加熱方式のメリットは享受しながらデメリットを克服した加熱方式を提案する。
【解決手段】溶融炉の槽に設置するヒーターを第1の材料と第2の材料によってヒーターを両側から挟み込んだ平板状のフラットヒーターとして構成し、第2の材料は第1の材料に対して熱伝導性の低い素材により構成することにより、第1の材料側の面の発熱量が第2の材料側の面の発熱量より大きくなるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料と第2の材料によってヒーターを両側から挟み込んだ平板状のフラットヒーターであり、
前記第2の材料は前記第1の材料に対して熱伝導性の低い素材により構成され、
前記第1の材料側の面が前記第2の材料側の面より発熱量が大きいことを特徴とする、
フラットヒーター。
【請求項2】
前記第1の材料および前記第2の材料の少なくとも何れか一方に前記ヒーターを密閉するための凹部が形成されていることを特徴とする、
請求項1に記載のフラットヒーター。
【請求項3】
前記凹部にR加工もしくは面取り加工が施されていることを特徴とする、
請求項2に記載のフラットヒーター。
【請求項4】
前記第1の材料と前記第2の材料が無機接着剤によって固定されていることを特徴とする、
請求項1に記載のフラットヒーター。
【請求項5】
前記第1の材料と前記第2の材料がセラミックス製ボルトによって固定されていることを特徴とする、
請求項1に記載のフラットヒーター。
【請求項6】
前記ヒーターの端子が前記第2の材料側に設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載のフラットヒーター。
【請求項7】
前記ヒーターの近傍に熱電対が設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載のフラットヒーター。
【請求項8】
前記第1の材料は、炭化ケイ素もしくはマグネシアを含み、
前記第2の材料は、ケイ酸カルシウム板、ファイバーボード、またはマイクロポーラス断熱材のうち少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする、
請求項1乃至7の何れかに記載のフラットヒーター。
【請求項9】
前記第1の材料の表面に窒化ホウ素、アルミナ、マグネシア、またはシリカのうち何れか一つ、もしくは複数の混合物が塗布されていることを特徴とする、
請求項8に記載のフラットヒーター。
【請求項10】
前記ヒーターの周囲にセラミックス粉末が充填されていることを特徴とする、
請求項8に記載のフラットヒーター。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載のフラットヒーターが、前記第1の材料側の面のみをアルミ溶湯に接触するように槽の壁面および底面の少なくとも何れか一方に設けられていることを特徴とする、
アルミ溶湯の保持炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属アルミニウムを溶解して保持する溶解保持炉、または溶けた金属アルミニウム(以下、アルミ溶湯という)を保持する保持炉(以下、溶解保持炉と保持炉を併せて保持炉という)の槽において、アルミ溶湯と接触する壁部や底面部に埋め込んで壁や底部からアルミ溶湯を加熱するフラットヒーターの構造およびこれを用いた保持炉の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム製品を製造する場合、インゴットを溶解し、金型や砂型に注入して成形する方法が一般的である。金属アルミニウムを溶解して型に注入するまでの間、保持炉においてアルミ溶湯の温度を一定に保つことは不可欠の工程である。また保持している間に成分調整、脱ガス処理および異物除去等の処理を施すことにより、アルミニウム製品の歩留の向上や品質の向上を図ることができる。
【0003】
アルミ溶湯を保温するための熱供給の方法は、保持炉内のアルミ溶湯の上部にある空気相をガスバーナーや電気ヒーターなどにより加熱する、いわゆる空気を介してアルミ溶湯に間接的に加熱する上部加熱方式と、一端が閉じた管状の保護管をアルミ溶湯中に浸漬し、保護管の内部をガスバーナーや電気ヒーターにより加熱し、保護管壁を介してアルミ溶湯に直接的に加熱する直接加熱方式が一般的に広く用いられている。また直接加熱方式の一類型として、保護管の代わりにフラットヒーターを用いる方法もある(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-176564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上部加熱方式は、構造が簡単であり保持炉の槽を小さくできるというメリットがある反面、高温となった空気相と接触するアルミ溶湯の表面に酸化物が発生するというデメリットがある。直接加熱方式は、保護管をアルミ溶湯中に浸漬させて加熱するため、エネルギー効率に優れ、酸化物の発生量も少ないというメリットのため、現在では標準の加熱方式になっているが、アルミ溶湯中に保護管を浸漬することから槽が大きくならざるを得ず、また保護管が破損した場合には交換するために稼働を停止する必要があった。
【0006】
本発明は、従来の上部加熱方式や直接加熱方式のメリットは享受しながらデメリットを克服した加熱方式を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、第1の材料と第2の材料によってヒーターを両側から挟み込んだ平板状のフラットヒーターであり、前記第2の材料は前記第1の材料に対して熱伝導性の低い素材により構成され、前記第1の材料側の面が前記第2の材料側の面より発熱量が大きいフラットヒーターである。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記第1の材料および前記第2の材料の少なくとも何れか一方に前記ヒーターを密閉するための凹部が形成されているフラットヒーターである。
【0009】
本発明の第3の態様は、前記凹部の周縁部がR加工もしくは面取り加工が施されているフラットヒーターである。
【0010】
本発明の第4の態様は、前記第1の材料と前記第2の材料が無機接着剤によって固定されているフラットヒーターである。
【0011】
本発明の第5の態様は、前記第1の材料と前記第2の材料がセラミックス製ボルトによって固定されているフラットヒーターである。
【0012】
本発明の第6の態様は、前記ヒーターの端子が前記第2の材料側に設けられているフラットヒーターである。
【0013】
本発明の第7の態様は、前記ヒーターの近傍に熱電対が設けられているフラットヒーターである。
【0014】
本発明の第8の態様は、前記第1の材料は、炭化ケイ素もしくはマグネシアを含み、前記第2の材料は、ケイ酸カルシウム板、ファイバーボード、またはマイクロポーラス断熱材のうち少なくとも何れか一つを含むフラットヒーターである。
【0015】
本発明の第9の態様は、前記第1の材料の表面に窒化ホウ素、アルミナ、マグネシア、またはシリカのうち何れか一つ、もしくは複数の混合物が塗布されているフラットヒーターである。
【0016】
本発明の第10の態様は、前記ヒーターの周囲にセラミックス粉末が充填されているフラットヒーターである。
【0017】
本発明の第11の態様は、前記フラットヒーターが、前記第1の材料側の面のみをアルミ溶湯に接触するように槽の壁面および底面の少なくとも何れか一方に設けられているアルミ溶湯の保持炉である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフラットヒーターは、一方の面のみを効率的に発熱させることが可能となるため、溶融炉の槽の側面や底面に設置することによりアルミ溶湯を直接加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態であるフラットヒーターの構造を示す概念図
図2】本発明の実施形態であるフラットヒーターを保持炉に設置した状態を示す概念図
図3】本発明の実施形態であるフラットヒーターを溶解保持炉に設置した状態を示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の保護されるべき範囲は、この実施形態に限定されるものではない。
【0021】
最初に本発明の実施形態であるフラットヒーターの構造について説明する。図1に本発明の実施形態であるフラットヒーターの構造を示す。フラットヒーター10は、第1の材料12と第2の材料14、16の平板状の部材によってヒーター18を挟み込んだ構造である。第1の材料12にはアルミ溶湯に対して耐久性のある高熱伝導性材料、例えば炭化珪素などを使用し、第2の材料には低熱伝導性材料、例えばケイ酸カルシウムなどを使用して断熱材的な機能を持たせることにより、ヒーター18の発熱が第2の材料14、16側には伝達せず、第1の材料12側のみに伝導するように構成されている。
【0022】
第1の材料12と第2の材料14には、それぞれの対面する側にヒーター18を配置するための凹部20、22が形成されている。この凹部20、22にヒーター18を配置し、第1の材料12と第2の材料14、16をボルト24によって固定することにより、ヒーター18をフラットヒーター10の内部に密閉している。ボルト24は耐熱性のあるセラミックス製のものが好ましい。なお、ボルト24の代わりに接着剤を用いて固定してもよく、特にスミセラムやアロンセラミック等の無機接着剤を用いることが好ましい。なお、凹部20、22は応力集中によりヒビやワレが生じないようにR加工もしくは面取り加工が施されている。
【0023】
ヒーター18を配置する凹部20、22の空間には、耐火性のセラミック粒子からなる充填材26を充填し、絶縁性と熱伝導の効率を向上させている。
【0024】
ヒーター18に給電するための端子28は、第2の材料14、16側からフラットヒーター10の外部に引き出されている。外部に引き出された端子およびリード線はセラミック碍子管30によって絶縁されている。またヒーター18の近傍に熱電対を設け、ヒーター18の温度制御を行う。
【0025】
第1の材料12の表面側のアルミ溶湯と接触する面には、窒化ホウ素、アルミナ、マグネシア、シリカまたはそれらの混合物32が塗布されている。
【0026】
次に本発明の実施形態である保持炉の構造について説明する。図2および図3に本発明の実施形態であるフラットヒーターを保持炉および溶解保持炉に設置した状態を示す。保持炉40、50のアルミ溶湯を貯留する槽の壁面や底面にフラットヒーター10を配置する。フラットヒーター1は第1の材料側がアルミ溶湯に接触する向きに設置する。フラットヒーター10は設置できる箇所(フラットで障害物のない面)であればどこにでも何個でも設置することができる。その場合、1枚のフラットヒーター10の端子を複数に分岐して給電してもよい。
【実施例0027】
実施例1乃至8は、フラットヒーターの第1の材料に炭化珪素質の焼成物やキャスタブルなどの不定形耐火物を使用し、第2の材料にケイ酸カルシウム、ファイバーボードおよびマイクロポーラス断熱材を使用した。充填剤にはマグネシア、窒化ホウ素やアルミナ等のセラミックス粉末を使用した。比較例は、第1の材料にアルミナのキャスタブルを使用し、第2の材料にケイ酸カルシウムおよびファイバーボードを使用し、充填材にマグネシアおよび窒化ホウ素を使用した。
【0028】
表1に実施例および比較例を示す。実施例および比較例において、フラットヒーターは実炉に装填できる大きさである発熱面積0.09m2(30cm角)のサイズで製作した。実施例1乃至8、比較例1および2において、第1の材料側の加熱出力と第2の材料側の放熱量を測定し、それぞれの加熱性能と断熱性能を確認した。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例1乃至8において、フラットヒーターは材料の選択により最大で16kW、少なくとも8kWの出力があり、アルミ溶湯の加熱や保持に適用するための能力としては十分である。一方で放熱量は0.03乃至0.04kWに抑えられていることから、断熱性能にも優れていることが確認された。
【0031】
実施例の結果により、本発明のフラットヒーターは、材料の選択により必要な加熱能力とそれに見合うコストを調整することができるために、工業製品として適用可能な範囲が広く、溶融炉用のヒーターとして非常に有用であることが分かった。
【0032】
本発明のフラットヒーターは、保持炉の槽の側面や底面に設置することにより、直接加熱方式のメリットを享受しながら、そのデメリットであった槽を大きくする必要があったこと、また保護管破損時に設備の稼働停止が必要であったことなどの課題を解決することができる。
【0033】
特許文献1に開示されたフラットヒーターは、本発明のフラットヒーターと似た形態ではあるが、平板の両面から発熱する構造であり、片面のみを効率的に発熱させる本発明のフラットヒーターとは作用が異なる。この作用の違いにより特許文献1に開示されたフラットヒーターは保持炉の槽の壁面に埋め込んで使用することはできない。その理由は、アルミ溶湯と接触しない面からも発熱するため、保持炉の外側(外壁)が必要以上に高温になり、エネルギー効率が低いだけでなく、火傷など人体への危険性が懸念されるためである。
【符号の説明】
【0034】
10 フラットヒーター
12 第1の材料
14 第2の材料
16 第2の材料
18 ヒーター
20 凹部(第1の材料側)
22 凹部(第2の材料側)
24 ボルト
26 充填材
図1
図2
図3