(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104806
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】曲率半径測定システム、曲率半径測定方法、及び曲率半径測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 21/20 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
G01B21/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009168
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【弁理士】
【氏名又は名称】生富 成一
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(72)【発明者】
【氏名】猪爪 誠太
(72)【発明者】
【氏名】柏原 賢
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭亨
(72)【発明者】
【氏名】原 萌子
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA53
2F069DD19
2F069DD25
2F069NN18
(57)【要約】
【課題】自由曲線における曲率半径を測定する場合において、数式にもとづく適切な近似円の候補を挙げることができ、測定の個人差を無くすことを可能とする。
【解決手段】自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する点群データ入力部11と、点群から測定部分を検出して測定部分の部分点群を取得する部分点群取得部13と、部分点群取得部により取得される部分点群を少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得する部分点群剪定部14と、剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算する近似円計算部15と、近似円計算部によって計算される各近似円に対して指標値を計算する評価部16を備える曲率半径測定システム。点群データ入力部11により入力される点群に対し該点群における点の密度を一定にするために区分的多項式により関数近似を行い、部分点群取得部13に点群として渡す再サンプリング部12を備えることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する点群データ入力部と、
前記点群データ入力部により入力される点群から測定部分を検出して前記測定部分の部分点群を取得する部分点群取得部と、
前記部分点群を少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得する部分点群剪定部と、
前記剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算する近似円計算部と、
前記近似円計算部によって計算されるそれぞれの近似円に対して指標値を計算する評価部と、を備える
ことを特徴とする曲率半径測定システム。
【請求項2】
前記指標値にもとづいて、前記自由曲線における前記測定部分に適する近似円を1つ以上決定する近似円決定部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の曲率半径測定システム。
【請求項3】
前記部分点群取得部が、
第一の距離パラメータにもとづく近傍点を用いて前記各点の法線ベクトルを計算する法線ベクトル第一計算部と、
前記各点の法線ベクトルと該点の近傍にある法線ベクトルとの内積平均値を計算する近傍内積値第一計算部と、
前記近傍内積値第一計算部により計算された前記内積平均値にもとづき前記自由曲線における前記測定部分を検出する測定部分検出部と、を備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の曲率半径測定システム。
【請求項4】
前記部分点群取得部が、
前記第一の距離パラメータよりも小さい第二の距離パラメータにもとづく近傍点を用いて前記各点の法線ベクトルを計算する法線ベクトル第二計算部と、
前記各点の法線ベクトルと該点の近傍にある法線ベクトルとの内積平均値を計算する近傍内積値第二計算部と、
前記点群から前記測定部分検出部により検出された前記測定部分以外の点群をマスクするマスク部と、を備え、
前記部分点群剪定部が、前記マスク部によりマスクされなかった前記測定部分を、前記近傍内積値第二計算部により計算された前記内積平均値にもとづき少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得する
ことを特徴とする請求項3記載の曲率半径測定システム。
【請求項5】
前記評価部が、前記近似円を近似誤差と近似対象の点の数を用いた評価式によって評価する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の曲率半径測定システム。
【請求項6】
前記評価式が、前記近似円の平均二乗誤差平方根RMSEと、近似対象の点の数Nと、実数パラメータPをもちいて次の式で表現される
ことを特徴とする請求項5記載の曲率半径測定システム。
【数3】
【請求項7】
前記点群データ入力部により入力される点群に対して、該点群における点の密度を一定にするために区分的多項式により関数近似を行い、前記部分点群取得部に前記点群として渡す再サンプリング部を備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の曲率半径測定システム。
【請求項8】
前記点群データ入力部により入力される点群が、3次元の形状データの断面から得られる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の曲率半径測定システム。
【請求項9】
自由曲線を表す点群の各点の座標を当該曲率半径測定システムへ出力する点群データ取得装置を備え、
前記点群データ入力部が、前記点群データ取得装置から得られる前記自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の曲率半径測定システム。
【請求項10】
点群データ入力部が、自由曲線を表す点群の各点の座標を入力し、
部分点群取得部が、前記点群データ入力部により入力される点群から測定部分を検出して前記測定部分の部分点群を取得し、
部分点群剪定工程が、前記部分点群を少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得し、
近似円計算部が、前記剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算し、
評価部が、前記近似円計算部によって計算されたそれぞれの近似円に対して指標値を計算する
ことを特徴とする曲率半径測定方法。
【請求項11】
コンピュータを、
自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する点群データ入力部、
前記点群データ入力部により入力される点群から測定部分を検出して前記測定部分の部分点群を取得する部分点群取得部、
前記部分点群を少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得する部分点群剪定部、
前記剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算する近似円計算部、及び、
前記近似円計算部によって計算されたそれぞれの近似円に対して指標値を計算する評価部として機能させる
ことを特徴とする曲率半径測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の形状における曲率半径の測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
容器などの物品の品質検査においては、物品の寸法形状を測定する場合がある。しかしながら、物品の寸法形状は、必ずしも金型通りになっているとは限らず、その寸法精度は、良好ではない場合があった。
このため、従来は、寸法精度の悪い物品の形状に対する曲率半径の測定において、個人差が生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
具体的には、例えば
図13において太線で示されるいびつな曲線の曲率半径を測定する場合、実線の近似円は曲線との誤差が小さく、破線の近似円はより曲線に全体的に当てはめられており、点線の曲線はこれらの中間に位置している。これらのどの近似円を用いて曲率半径を決定するかという点において、人によって差が生じていた。
すなわち、自由曲線を円で近似しようとするときに、曲率が一定でない場合には、円の候補がいくつか考えられ、どの近似円を採用すべきか判断できないという問題があった。
【0005】
そこで本発明者らは鋭意研究して、自由曲線における曲率半径を測定する場合において、数式にもとづく適切な近似円の候補を挙げることができ、測定の個人差を無くすことの可能な曲率半径測定システムを開発することに成功して本発明を完成させた。
【0006】
ここで、特許文献1には、測定対象物の点群データからその特徴を抽出し、三次元形状を自動的かつ短時間に生成することのできる点群データ処理装置が開示されている。
しかしながら、この装置によっては、自由曲線を円で近似しようとするときに、どの近似円を採用すべきか判断できないという問題を解決することはできなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、自由曲線における曲率半径を測定する場合において、数式にもとづく適切な近似円の候補を挙げることができ、測定の個人差を無くすことの可能な曲率半径測定システム、曲率半径測定方法、及び曲率半径測定プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の曲率半径測定システムは、自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する点群データ入力部と、前記点群データ入力部により入力される点群から測定部分を検出して前記測定部分の部分点群を取得する部分点群取得部と、前記部分点群を少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得する部分点群剪定部と、前記剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算する近似円計算部と、前記近似円計算部によって計算されるそれぞれの近似円に対して指標値を計算する評価部とを備える構成としてある。
【0009】
また、本発明の曲率半径測定システムを、前記指標値にもとづいて、前記自由曲線における前記測定部分に適する近似円を1つ以上決定する近似円決定部を備える構成とすることが好ましい。
【0010】
また、本発明の曲率半径測定システムを、前記部分点群取得部が、第一の距離パラメータにもとづく近傍点を用いて前記各点の法線ベクトルを計算する法線ベクトル第一計算部と、前記各点の法線ベクトルと該点の近傍にある法線ベクトルとの内積平均値を計算する近傍内積値第一計算部と、前記近傍内積値第一計算部により計算された前記内積平均値にもとづき前記自由曲線における前記測定部分を検出する測定部分検出部とを備える構成とすることが好ましい。
【0011】
また、本発明の曲率半径測定システムを、前記部分点群取得部が、前記第一の距離パラメータよりも小さい第二の距離パラメータにもとづく近傍点を用いて前記各点の法線ベクトルを計算する法線ベクトル第二計算部と、前記各点の法線ベクトルと該点の近傍にある法線ベクトルとの内積平均値を計算する近傍内積値第二計算部と、前記点群から前記測定部分検出部により検出された前記測定部分以外の点群をマスクするマスク部とを備え、前記部分点群剪定部が、前記マスク部によりマスクされなかった前記測定部分を、前記近傍内積値第二計算部により計算された前記内積平均値にもとづき少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得する構成とすることが好ましい。
【0012】
また、本発明の曲率半径測定システムを、前記評価部が、前記近似円を近似誤差と近似対象の点の数を用いた評価式によって評価する構成とすることが好ましい。
また、本発明の曲率半径測定システムを、前記評価式が、前記近似円の平均二乗誤差平方根RMSEと、近似対象の点の数Nと、実数パラメータPをもちいて次の式で表現される構成とすることが好ましい。
【数1】
【0013】
また、本発明の曲率半径測定システムを、前記点群データ入力部により入力される点群に対して、該点群における点の密度を一定にするために区分的多項式により関数近似を行い、前記部分点群取得部に前記点群として渡す再サンプリング部を備える構成とすることが好ましい。
また、本発明の曲率半径測定システムを、前記点群データ入力部により入力される点群が、3次元の形状データの断面から得られる構成とすることが好ましい。
【0014】
また、本発明の曲率半径測定システムを、自由曲線を表す点群の各点の座標を当該曲率半径測定システムへ出力する点群データ取得装置を備え、前記点群データ入力部が、前記点群データ取得装置から得られる前記自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する構成とすることが好ましい。
さらに、本発明の曲率半径測定システムを、上記の曲率半径測定システムにおける各構成を様々に組み合わせたものとすることも好ましい。
【0015】
本発明の曲率半径測定方法は、点群データ入力部が、自由曲線を表す点群の各点の座標を入力し、部分点群取得部が、前記点群データ入力部により入力される点群から測定部分を検出して前記測定部分の部分点群を取得し、部分点群剪定工程が、前記部分点群を少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得し、近似円計算部が、前記剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算し、評価部が、前記近似円計算部によって計算されたそれぞれの近似円に対して指標値を計算する方法としてある。
【0016】
本発明の曲率半径測定プログラムは、コンピュータを、自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する点群データ入力部、前記点群データ入力部により入力される点群から測定部分を検出して前記測定部分の部分点群を取得する部分点群取得部、前記部分点群を少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得する部分点群剪定部、前記剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算する近似円計算部、及び、前記近似円計算部によって計算されたそれぞれの近似円に対して指標値を計算する評価部として機能させる構成としてある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、自由曲線における曲率半径を測定する場合において、数式にもとづく適切な近似円の候補を挙げることができ、測定の個人差を無くすことの可能な曲率半径測定システム、曲率半径測定方法、及び曲率半径測定プログラムの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムにおいて取得される自由曲線を表す点群の例を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムにおける3次元データとトレースする輪郭部分の例を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムにおける3次元データのトレースされた点群の例を示す説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムにおけるトレースされた点群に対してスプライン近似を行い、再サンプリング処理された点群の例を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムによって計算された
図1に示す自由曲線の曲率分布の例を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムによって計算された
図6に示す曲率分布からピーク幅を計算した結果を示す説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムにおける測定部分以外をマスクした詳細曲率分布を用いた剪定を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムによって
図1に示す自由曲線に対して、最も評価式の値が小さい剪定方法による近似円を適用した説明図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムによって
図1に示す自由曲線に対して、評価式の値が最も小さい3つの剪定方法による近似円を適用した説明図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムによる測定部位検出処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムによる近似円の決定処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】いびつな自由曲線に対して様々な近似円が適用されるという課題を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の曲率半径測定システム、曲率半径測定方法、及び曲率半径測定プログラムの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態の具体的な内容に限定されるものではない。
【0020】
本発明の実施形態に係る曲率半径測定システムは、自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する点群データ入力部と、点群データ入力部により入力される点群から測定部分を検出して測定部分の部分点群を取得する部分点群取得部と、部分点群を少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得する部分点群剪定部と、剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算する近似円計算部と、近似円計算部によって計算されるそれぞれの近似円に対して指標値を計算する評価部とを備えることを特徴とする。
【0021】
また、本実施形態の曲率半径測定システムは、指標値にもとづいて、自由曲線における測定部分に適する近似円を1つ以上決定する近似円決定部を備えることが好ましい。
さらに、本実施形態の曲率半径測定システムは、点群データ入力部により入力される点群に対して、該点群における点の密度を一定にするために区分的多項式により関数近似を行い、部分点群取得部に点群として渡す再サンプリング部を備えることがより好ましい。
【0022】
具体的には、
図1に示すように、本実施形態の曲率半径測定システムは、曲率半径測定装置1と点群データ取得装置2を備えたものとすることができる。
曲率半径測定装置1は、コンピュータ、タブレット、スマートフォン、ウェアラブル端末、又はクラウドなどの情報処理装置を用いて構成することができる。
曲率半径測定装置1は、点群データ入力部11と、再サンプリング部12と、部分点群取得部13と、部分点群剪定部14と、近似円計算部15と、評価部16と、近似円決定部17を備えたものとすることができる。
【0023】
点群データ入力部11は、自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する(読み込む)。そして、点群データ入力部11は、入力した点群の各点の座標を、再サンプリング部12又は部分点群取得部13に渡すことができる。なお、
図1における矢印は、再サンプリング部12による処理を行った後の点群の各点の座標を部分点群取得部13に渡す場合を示しているが、
図1において再サンプリング部12を省略して、入力した点群の各点の座標を、部分点群取得部13に直接渡すこともできる。
点群データ入力部11は、点群データ取得装置2から得られる自由曲線を表す点群の各点の座標を入力することができる。
また、点群データ入力部11は、3次元の形状データの断面から得られる点群の各点の座標を入力することもできる。
【0024】
再サンプリング部12は、点群データ入力部11により入力される点群に対して、該点群における点の密度を一定にするために区分的多項式により関数近似(スプライン近似)を行い、部分点群取得部13に点群(点群の各点の座標)として渡す。
【0025】
本実施形態の曲率半径測定システムにより曲率半径の測定を行う対象である自由曲線を表す点群の例を
図2に示す。
図2に示す点群データは、物体をコントレーサ等の点群データ取得装置2により直接測定するなどによって得ることができる。この場合、点群データ入力部11が、点群データ取得装置2から得られる自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する。
また、点群データ入力部11が、
図3に示すCADデータのような3次元の形状データの任意の輪郭部分をトレースして、
図4のように取得することもできる。
【0026】
さらに、
図4に示すように、点群データにおける点の密度が不均一な場合には、再サンプリング部12によって区分的多項式による関数近似を行い、
図5に示すように点の密度が一定となるように再度サンプリングを行うことが好ましい。
もちろん、再サンプリング部12による関数近似と再度サンプリングは、コントレーサ測定による点密度のばらつきの影響を回避するために行うことも好ましい。
本実施形態の曲率半径測定システムにおいて、このように関数近似と再度サンプリングを行うことによって、次の部分点群取得部13及び部分点群剪定部14による処理をより精度高く行うことが可能となっている。
【0027】
部分点群取得部13は、点群データ入力部により入力される点群から測定部分を検出して、測定部分の部分点群を取得する。
部分点群取得部13は、法線ベクトル第一計算部131と、近傍内積値第一計算部132と、測定部分検出部133と、法線ベクトル第二計算部134と、近傍内積値第二計算部135と、マスク部136を備えている。
【0028】
法線ベクトル第一計算部131は、第一の距離パラメータにもとづく近傍点を用いて各点の法線ベクトルを計算する。このとき、法線ベクトル第一計算部131は、点群の各点に対してε近傍の点の座標に関する共分散行列の最小固有値の固有ベクトルを採用する方法によって法線ベクトルを計算することができる。
【0029】
近傍内積値第一計算部132は、各点の法線ベクトルと該点の近傍にある法線ベクトルとの内積平均値を計算する。
このとき、近傍内積値第一計算部132は、各点の法線ベクトルとその近傍の点の法線ベクトルの内積の絶対値の平均値を計算することができる。
これによって、
図6に示すような点群の曲率分布を得ることができる。なお、
図6では上方に凸のピークが得られるように、計算した値の符号を負にしたうえで1を加算している。
【0030】
ここで、法線ベクトルは形状に垂直な方向であり、形状における直線部分ではベクトルが揃い、曲線部分ではベクトルの角度が変化する。すなわち、曲率部において法線ベクトルどうしのなす角θがゼロより大きくなる性質を利用して、測定部分の検出を行っている。
また、近傍の大きさのパラメータを大きくとると全体の傾向をつかむようになり、測定部分の検出が行い易くなる一方、近傍の大きさのパラメータを小さくとると詳細な曲率情報を得ることできる。
【0031】
すなわち、法線ベクトル第一計算部131が、相対的に大きい第一の距離パラメータを用いることで、ガタツキやノイズに対する影響を受け難くして、測定部分の検出を適切に行うことができるようになっている。また、法線ベクトル第二計算部134が、第一の距離パラメータに比較して小さい第二の距離パラメータを用いることで、より詳細な曲率情報を得ることが可能になっている。
【0032】
そこで、測定部分の検出処理においては、法線ベクトル第一計算部131により、相対的に大きい第一の距離パラメータにもとづく近傍点を用いて検出を行っている。また、後述する近似円の決定処理においては、法線ベクトル第二計算部134により、第一の距離パラメータよりも相対的に小さい第二の距離パラメータにもとづく近傍点を用いて、部分点群剪定部14による処理をより精密に行うことを可能にしている。
【0033】
測定部分検出部133は、近傍内積値第一計算部132により計算された内積平均値にもとづき自由曲線における測定部分を検出して、この測定部分の部分点群を取得する。
ここで、曲率分布のピークが自由曲線のうち曲率を有する部分として解釈される。そこで、測定部分検出部133は、
図7の破線に示すようにそれぞれのピークの相対高さ50%の位置に該当するピーク幅を部分点群として取得している。なお、このピークの相対高さの割合は50%に限定されず、70%など他の値を用いてもよい。
【0034】
法線ベクトル第二計算部134は、第一の距離パラメータよりも小さい第二の距離パラメータにもとづく近傍点を用いて各点の法線ベクトルを、法線ベクトル第一計算部131と同様に計算する。
近傍内積値第二計算部135は、各点の法線ベクトルと該点の近傍にある法線ベクトルとの内積平均値を、近傍内積値第一計算部132と同様に計算する。
マスク部136は、点群から測定部分検出部により検出された測定部分以外の点群をマスクする。
【0035】
部分点群剪定部14は、部分点群取得部13により取得される部分点群を少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得する。
このとき、部分点群剪定部14は、近傍の範囲を近傍内積値第一計算部132により使用される範囲よりも小さく設定して近傍内積値第二計算部135によって計算された
図8に示す詳細曲率分布の情報を用いて剪定処理を実行する。
剪定方法としては、例えば、部分点群のうち詳細曲率分布の値が上位a%(5%、10%等)、最大値以下bまで、平均値以上等とすることができる。
そして、これらを満たす点を採用する剪定方法を選ぶことによって、曲率をもった点を積極的に選択することができる。なお、剪定の方法はランダムでもよい。
【0036】
近似円計算部15は、部分点群剪定部14によって取得された剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算する。
すなわち、近似円計算部15は、剪定方法ごとに近似円を計算して、選定方法の数だけ近似円を得る。
近似円の計算方法は単純な最小二乗法であっても良いが、点群全体に対して当てはめようとする点は局所的であるため、点の数が少ない場合には曲率半径が極端な値となる場合がある。
これを回避するために、円の内側のx%(100%、99%等)の領域に点が入らないような制約付き最適化問題の解を採用することが好ましい。
【0037】
評価部16は、近似円計算部15によって計算されるそれぞれの近似円に対して指標値を計算する。
すなわち、評価部16は、それぞれの近似円の指標値によって当てはまりを評価する。
具体的には、評価部16は、近似円を近似誤差と近似対象の点の数を用いた評価式によって評価することが好ましい。
また、評価式が、近似円の平均二乗誤差平方根RMSEと、近似対象の点(剪定された点)の数Nと、実数パラメータPをもちいて次の式で表現されることが好ましい。
【数2】
【0038】
ここで、ある近似円の曲率半径が製品の品質評価に用いられる場合、従来はどの近似円を採用するかによってその品質評価結果が変わってしまうという問題があった。
これに対して、本実施形態の曲率半径測定システムによれば、上記の評価式によって近似円を評価することにより、数式にもとづく適切な近似円の候補を挙げることができ、測定の個人差を無くすことが可能になっている。
【0039】
本実施形態の曲率半径測定システムにおける上記の評価式は、分子が示す当てはまりの悪さに対して、分母が示す選択された点の数で優遇することによって、より多くの点が従う円に当てはまりがよくフィッティングされたとき値が小さくなるようになっている。
そして、この評価式の値(指標値)の小さくなった剪定方法を採用することで、数式にもとづく適切な近似円の候補を挙げることができるようになっている。
【0040】
すなわち、通常、近似円を描くときに近似対象の点が少なければその近似誤差は小さくなる傾向があるが、その場合は当てはめようとする領域が局所となり測定対象とする部分を十分満たさない場合がある。この性質に対して、より多くの点に対して近似円を計算する場合に、近似誤差が大きくともその近似結果を優遇する評価方法が本評価式の解釈となっている。なお、分母のパラメータpはどの程度近似しようとした点の多さで優遇するかを決めるパラメータであり、任意の値とすることができる。後述する
図9,10の例では、p=3を用いている。
【0041】
また、パラメータpの決め方としては、自由曲線と円近似の結果が組となった学習データを用いて、学習データの曲率半径との誤差が最も小さい近似円が計算される剪定方法において、その剪定方法の評価式の値がすべての剪定方法の中で最も小さくなるように、ベイズ最適化および遺伝的アルゴリズム等のブラックボックス関数の最適化手法により決定することも可能である。
【0042】
近似円決定部17は、評価部16によって計算された指標値にもとづいて、自由曲線における測定部分に適する近似円を1つ以上決定する。
すなわち、近似円決定部17は、指標値のうち最も小さいものを採用して、1つの近似円を決定することができる。
この場合、
図9に示すように、自由曲線における測定部分ごとに1つの近似円を決定することができる。
【0043】
また、近似円決定部17は、例えば指標値の上位3つを採用して、3つの近似円を決定することができる。なお、採用する指標値の個数は上位3つに限定されず、その他の個数であってもよい。
この場合、
図10に示すように、自由曲線における測定部分ごとに3つの近似円を決定することができる。なお、
図10の上の近似円は、上位3つの剪定方法でほとんど同じ半径の円が選ばれているため円が重なって図示されている。
近似円決定部17によるこのような近似円の決定方法によれば、例えば上位3つの円のうちの最小円又は最大円を採用することによって、品質管理のために安全をみた曲率半径として測定することが可能となっている。
【0044】
点群データ取得装置2は、例えばコントレーサなどの物体を直接測定することによって自由曲線を表す点群データを取得し、点群の各点の座標を曲率半径測定装置1へ出力する装置である。
なお、点群データ取得装置2は、本実施形態の曲率半径測定システムにおいて省略することもできる。
【0045】
本実施形態の曲率半径測定方法は、点群データ入力部が、自由曲線を表す点群の各点の座標を入力し、部分点群取得部が、点群データ入力部により入力される点群から測定部分を検出して測定部分の部分点群を取得し、部分点群剪定工程が、部分点群を少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得し、近似円計算部が、剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算し、評価部が、近似円計算部によって計算されたそれぞれの近似円に対して指標値を計算することを特徴とする。
【0046】
また、本実施形態の曲率半径測定方法は、近似円決定部が、指標値にもとづいて、自由曲線における測定部分に適する近似円を1つ以上決定することが好ましい。
さらに、本実施形態の曲率半径測定方法は、再サンプリング部が、点群データ入力部により入力される点群に対して、該点群における点の密度を一定にするために区分的多項式により関数近似を行い、部分点群取得部に点群として渡すことがより好ましい。
【0047】
具体的には、
図11の本実施形態の曲率半径測定システムによる測定部位検出処理手順のフローチャートに示されるとおり、まず、点群データ入力部11が、自由曲線を表す点群の各点の座標を入力する(ステップ10)。
次に、再サンプリング部12が、点群データ入力部により入力される点群に対して、該点群における点の密度を一定にするために区分的多項式により関数近似を行い、部分点群取得部13に点群として渡すことが好ましい(ステップ11)。
【0048】
次に、法線ベクトル第一計算部131が、第一の距離パラメータにもとづく近傍点を用いて各点の法線ベクトルを計算する(ステップ12)。
さらに、近傍内積値第一計算部132が、各点の法線ベクトルと該点の近傍にある法線ベクトルとの内積平均値を計算する(ステップ13)。
そして、測定部分検出部133が、近傍内積値第一計算部132により計算された内積平均値にもとづき自由曲線における測定部分を検出して、この測定部分の部分点群を取得する(ステップ14)。
【0049】
次に、
図12の本実施形態の曲率半径測定システムによる近似円の決定処理手順のフローチャートに示されるとおり、法線ベクトル第二計算部134が、第一の距離パラメータよりも小さい第二の距離パラメータにもとづく近傍点を用いて各点の法線ベクトルを計算する(ステップ20)。
また、近傍内積値第二計算部135が、各点の法線ベクトルと該点の近傍にある法線ベクトルとの内積平均値を計算する(ステップ21)。
そして、マスク部136が、点群から測定部分検出部133により検出された測定部分以外の点群をマスクする(ステップ22)。
【0050】
次に、部分点群剪定部14が、部分点群取得部13により取得される部分点群(点群から測定部分検出部133により検出された測定部分の部分点群)を、近傍内積値第二計算部により計算された内積平均値にもとづき少なくとも1つ以上の方法で剪定し、1つ以上の剪定点群を取得する(ステップ23)。
また、近似円計算部15が、部分点群剪定部14によって取得された剪定点群におけるそれぞれの点群に対して近似円を計算する(ステップ24)。
【0051】
さらに、評価部16が、近似円計算部15によって計算されるそれぞれの近似円に対して指標値を計算する(ステップ25)。
そして、近似円決定部17が、評価部16によって計算された指標値にもとづいて、自由曲線における測定部分の曲率半径を有する1つ以上の近似円を決定する(ステップ26)。
【0052】
上記の実施形態の曲率半径測定装置は、本発明の曲率半径測定プログラムに制御されたコンピュータを用いて実現することができる。コンピュータのCPUは、曲率半径測定プログラムにもとづいてコンピュータの各構成要素に指令を送り、曲率半径測定装置の動作に必要となる所定の処理、例えば、測定部位検出処理、近似円決定処理等を行わせる。このように、本発明の曲率半径測定装置における各処理、動作は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段により実現できるものである。
【0053】
プログラムは予めROM,RAM等の記録媒体に格納され、コンピュータに実装された記録媒体から当該コンピュータにプログラムを読み込ませて実行されるが、例えば通信回線を介してコンピュータに読み込ませることもできる。
また、プログラムを格納する記録媒体は、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、その他任意のコンピュータで読取り可能な任意の記録手段により構成できる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の曲率半径測定システム、曲率半径測定方法、及び曲率半径測定プログラムによれば、自由曲線における曲率半径を測定する場合において、数式にもとづく適切な近似円の候補を挙げることができ、測定の個人差を無くすことが可能である。
【0055】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。例えば、曲率半径測定システムにおいて再サンプリング部を省略したり、剪定方法としてその他の方法を採用するなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、容器などの物品の品質検査において、物品の寸法形状を測定する場合などに、好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 曲率半径測定装置
11 点群データ入力部
12 再サンプリング部
13 部分点群取得部
131 法線ベクトル第一計算部
132 近傍内積値第一計算部
133 測定部分検出部
134 法線ベクトル第二計算部
135 近傍内積値第二計算部
136 マスク部
14 部分点群剪定部
15 近似円計算部
16 評価部
17 近似円決定部