(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104818
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、樹脂硬化物、合成皮革
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240730BHJP
C08F 20/18 20060101ALI20240730BHJP
C08F 20/36 20060101ALI20240730BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240730BHJP
D06N 3/00 20060101ALI20240730BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240730BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F20/18
C08F20/36
C08F2/50
D06N3/00
B32B27/12
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009190
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106817
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 みふね
(72)【発明者】
【氏名】上杉 隆
(72)【発明者】
【氏名】林 寛之
(72)【発明者】
【氏名】平 健二郎
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
4J011
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055BA12
4F055CA11
4F055EA04
4F055EA23
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4J127BG271
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4J127CB151
4J127CC271
4J127DA26
4J127EA13
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】縫製作業の際に皺になり難いという特徴を有する合成皮革を作製しうる、伸張性と伸張回復性に優れた樹脂硬化物を与えることができる光硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】成分(A):2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、成分(B):第三級又は第四級の炭素原子を有する基及び炭素数5以上の環式飽和炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1の基を含み、かつ分子内にウレタン結合を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、成分(C):チオール化合物、及び成分(D):光重合開始剤を配合して光硬化性樹脂組成物とし、さらにこれを繊維質基材上で光照射により硬化させて樹脂硬化物層を形成し、合成皮革とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D)を含むことを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
成分(A):2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
成分(B):第三級又は第四級の炭素原子を有する基及び炭素数5以上の環式飽和炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1の基を含み、かつ分子内にウレタン結合を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー
成分(C):チオール化合物
成分(D):光重合開始剤
【請求項2】
前記成分(B)が、下記一般式(1)で示され、R1が第三級又は第四級の炭素原子を有する基及び炭素数5以上の環式飽和炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1の基を含む単官能アクリレートモノマーである、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【化1】
【請求項3】
前記成分(A)が、重量平均分子量(Mw)1,000~20,000のポリカーボネート系2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(C)が、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及び1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトブタノイルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンからなる群から選択される3官能または4官能の2級チオールである、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分(A)~(D)の含有質量比が、次の条件(1)~(3)を全て満たすことを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
条件(1):成分(B)が、成分(A)100質量部に対して20~80質量部
条件(2):成分(C)が、成分(A)と(B)の合計100質量部に対して5~30質量部
条件(3):成分(D)が、成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して0.1~5.0質量部
【請求項6】
更に成分(E)として、難燃剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物。
【請求項8】
繊維質基材の表面に、請求項7に記載の樹脂硬化物からなる樹脂層が積層されていることを特徴とする合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物とこの光硬化性樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物に関する。更に本発明は、該樹脂硬化物を樹脂層として含む合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維質基材の表面に樹脂層を設けた合成皮革が広く利用されている。合成皮革は所望の形状に裁断され、縫製することによって車輌用の内装材やインテリア資材として用いられている。そこで、縫製の際や使用時において皺が発生し難い合成皮革が求められている。
【0003】
本出願人は特許文献1において繊維質基材、多孔質樹脂層、無孔質樹脂層からなり、該多孔質樹脂層の垂直断面における孔面積率が25%以上である合成皮革を提案している。特許文献1では合成皮革が有する樹脂層の微細構造によって縫製シワの発生が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、伸張性と伸張回復性に優れた樹脂硬化物を得ることができる光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて作製された合成皮革は、縫製作業の際に皺になり難いという特徴を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を行なった結果、特定の(メタ)アクリレートオリゴマーと(メタ)アクリレートモノマーに加え、チオ-ル成分が配合された光硬化性樹脂組成物において、硬化した際に優れた伸張性と伸張回復性とを有する樹脂硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明の光硬化性樹脂組成物は、次の成分(A)~(D)を含むことを特徴とする光硬化性樹脂組成物である。
成分(A):2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
成分(B):第三級又は第四級の炭素原子を有する基及び炭素数5以上の環式飽和炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1の基を含み、かつ分子内にウレタン結合を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー
成分(C):チオール化合物
成分(D):光重合開始剤
【0008】
前記成分(B)は、下記一般式(1)で示され、R1が第三級又は第四級の炭素原子を有する基及び炭素数5以上の環式飽和炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1の基を含む単官能アクリレートモノマーであることが好ましい。
【0009】
【0010】
前記成分(A)は、重量平均分子量(Mw)1,000~20,000のポリカーボネート系2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましい。
【0011】
前記成分(C)は、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及び1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトブタノイルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンからなる群から選択される3官能または4官能の2級チオールであることが好ましい。
【0012】
前記成分(A)~(D)の含有質量比が、次の条件(1)~(3)を全て満たすことが好ましい。
条件(1):成分(B)が、成分(A)100質量部に対して20~80質量部
条件(2):成分(C)が、成分(A)と(B)の合計100質量部に対して5~30質量部
条件(3):成分(D)が、成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して0.1~5.0質量部
【0013】
更に成分(E)として、難燃剤を含むことが好ましい。
【0014】
また本発明の樹脂硬化物は、前記成分(A)~(D)を含む光硬化性樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物である。
【0015】
更に本発明の合成皮革は、繊維質基材の表面に、前記成分(A)~(D)を含む光硬化性樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物からなる樹脂層が積層されていることを特徴とする合成皮革である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、伸張性と伸張回復性とに優れた樹脂硬化物を得ることが可能な光硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、縫製作業の際に皺になり難いという特徴を有する合成皮革を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、次の成分(A)~(D)を含むことを特徴とする光硬化性樹脂組成物である。
成分(A):2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
成分(B):第三級又は第四級の炭素原子を有する基及び炭素数5以上の環式飽和炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1の基を含み、かつ分子内にウレタン結合を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー
成分(C):チオール化合物
成分(D):光重合開始剤
【0018】
本発明で使用する成分(A)は、ウレタン結合と(メタ)アクリル基を有する2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーである。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、通常イソシアネート化合物、ポリオール化合物、及び水酸基含有(メタ)アクリルモノマーの反応から得られ、使用するポリオール化合物によりポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエーテル系等の種類がある。
【0019】
本発明において好ましくは、ポリカーボネート系ポリオールを用いたポリカーボネート系2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが用いられる。ポリカーボネート系のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを選択することにより、得られる光硬化性樹脂組成物を硬化した樹脂硬化物を、より優れた強靭性、耐光性を備えたものとすることができる。
【0020】
成分(A)の平均分子量は特に制限されないが、重量平均分子量(Mw)が好ましくは1,000~20,000、より好ましくは3,000~10,000である2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが用いられる。重量平均分子量(Mw)が低すぎると、ウレタン構造に由来する伸張性が不足する場合があり、高すぎると粘度が高くなり、加工性が低下する場合がある。
【0021】
前記ポリカーボネート系2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリカーボネ-ト系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができる。
【0022】
前記ポリカーボネート系ポリオールは、多価アルコール類とカーボネート化合物とからの脱アルコール反応によって得られる。前記多価アルコールとしては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、これらから選択される1種又は複数種を任意の割合で混合して使用することができる。前記カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0023】
前記有機ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
前記ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、カプロラクトン変性-2-ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトン変性-2-ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0025】
前記ポリカーボネート系2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、これらのポリカーボネート系ポリオールと有機イソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応で合成することができる。合成法としては、ポリカーボネート系ポリオールと有機イソシアネートとを反応させて、両末端に-NCO基(イソシアネート基)を含有するポリウレタンプレポリマーを生成させた後に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させる方法を用いることができる。反応の条件などは常法に従えばよい。
【0026】
前記成分(A)として使用しうるポリカーボネート系2官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば根上工業株式会社製のアートレジン(登録商標)UNシリーズ、新中村化学工業株式会社製のNKオリゴUシリーズ、および三菱ケミカル株式会社製の紫光(登録商標)UVシリーズなどの市販品を用いることもできる。
【0027】
成分(B)は、第三級又は第四級の炭素原子を有する基、及び、炭素数5以上の環式飽和炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1の基を含み、かつ分子内にウレタン結合を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーである。単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、単官能アクリレートモノマー又は単官能メタクリレートモノマーが挙げられるが、好ましくは単官能アクリレートモノマーが用いられる。
【0028】
ここで、第三級炭素原子又は第四級炭素原子を有する基としては、好ましくは炭素数4~10の分岐脂肪族飽和炭化水素基、又は炭素数4~6の分岐脂肪族飽和炭化水素基を含む芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0029】
具体的には、tert-ブチル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、3,3-ジメチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-2-ブチル基、2,2-ジメチル-3-ヘキシル基、2,4,4-トリメチル-2-ペンチル基、3,5,5-トリメチル-1-ヘキシル基、4-tert-ブチルフェニル基、3-tert-ブチルフェニル基、2-tert-ブチルフェニル基などが挙げられる。
【0030】
炭素数5以上の環式飽和炭化水素基を有する基としては、好ましくは基内に炭素数5~8、より好ましくは炭素数5~6の環式飽和炭化水素基を有する基が挙げられる。
【0031】
具体的には、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンタニル基、2-アダマンタニル基、1-アダマンタンメチル基、1-アダマンタンエチル基、シクロペンチル基、1-メチルシクロペンチル基、1-エチルシクロペンチル基、シクロヘキヘキシル基、シクロヘキサンメチル基、シクロヘキサンエチル基、4-ブチルシクロヘキシル基、2-シクロヘキシルシクロヘキシル基、4-シクロヘキシルシクロヘキシル基、4-イソプロピルシクロヘキシル基、4-プロピルシクロヘキシル基、1-エチルシクロヘキシル基、2-エチルシクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、2,5-ジメチルシクロヘキシル基、3,4-ジメチルシクロヘキシル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0032】
成分(B)としてより好ましくは、下記一般式(1)で示される、分子内にウレタン結合を有する単官能アクリレートモノマーである。一般式(1)中、R1は、上述した第三級炭素原子又は第四級炭素原子を有する基、及び、炭素数5以上の環式飽和炭化水素基を有する基からなる群から選択される少なくとも1の基を表す。
【0033】
【0034】
R1として選択された基は、いずれも3次元的な広がりを持つ比較的に嵩高い官能基であり、この構造的な特徴のために、得られた樹脂硬化物の優れた伸張性と伸張回復性とに寄与するものと考えられる。
【0035】
単純な嵩高さという観点によれば、フェニル基やイソプロピル基なども嵩高い官能基であると言えるが、これらの官能基は2次元的な広がりは有するが3次元的な広がりという点では不十分であり、本願の目的を果たすことができない。
【0036】
更に、成分(B)として選択される単官能(メタ)アクリレートモノマーは、その分子内にウレタン結合を有することにより、樹脂硬化物となった際に優れた難燃性を備えるという効果を奏する。
【0037】
前記成分(B)の単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、第三級又は第四級炭素原子を有する基及び炭素数5以上の環式飽和炭化水素基を有する基からなる群から選択されるいずれかの基を有するアルコールと、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物と反応(ウレタン化)させることによって得ることができるものが挙げられる。イソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物としては、2-アクロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。好ましくは2-アクロイルオキシエチルイソシアネートが用いられる。
【0038】
ここで、第三級炭素原子を有する官能基を有するアルコールとしては、tert-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-3-ヘキサノール、2,4,4-トリメチル-2-ペンタノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、4-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチルフェノールなどが挙げられる。
【0039】
炭素数5以上の環式飽和炭化水素基を有するアルコールとしては、4-tert-ブチルシクロヘキサノール、ボルネオール、イソボルネオール、1-アダマンタノール、2-アダマンタノール、1-アダマンタンメタノール、1-アダマンタンエタノール、シクロペンタノール、1-メチルシクロペンタノール、1-エチルシクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンエタノール、4-ブチルシクロヘキサノール、2-シクロヘキシルシクロヘキサノール、4-シクロヘキシルシクロヘキサノール、4-イソプロピルシクロヘキサノール、4-プロピルシクロヘキサノール、1-エチルシクロヘキサノール、2-エチルシクロヘキサノール、4-エチルシクロヘキサノール、2,5-ジメチルシクロヘキサノール、3,4-ジメチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノールなどが挙げられる。
【0040】
前記成分(B)の単官能(メタ)アクリレートモノマーは、これらのアルコールとイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物とを反応(ウレタン化)させることによって合成することができる。より好ましくは、上記アルコールと2-アクロイルオキシエチルイソシアネートとの反応で合成することができる。
【0041】
反応の条件などは常法に従えばよい。また、必要に応じてジブチルスズジラウレート等のウレタン化触媒を使用することもできる。
【0042】
光硬化性樹脂組成物中の成分(B)の含有割合は特に限定されないが、好ましくは成分(A)100質量部に対して20~80質量部、より好ましくは30~70質量部配合される。
【0043】
成分(C)のチオール化合物としては特に制限はなく従来公知の1級チオール又は2級チオールを使用できるが、光硬化性樹脂組成物としての反応性が高くなり過ぎないという点で2級チオールがより好ましく用いられる。
【0044】
2級チオールとしてさらに好ましくは、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトブタノイルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンからなる群から選択される3官能または4官能の2級チオールが用いられる。
【0045】
光硬化性樹脂組成物中の成分(C)の含有割合は特に限定されないが、好ましくは成分(C)が、成分(A)と(B)の合計100質量部に対して5~30質量部、より好ましくは10~25質量部配合される。
【0046】
本発明の光硬化性樹脂組成物に前記成分(C)を配合することにより、得られる樹脂硬化物は優れた伸張性と伸張回復性とを備えたものとなる。
【0047】
前記成分(C)として昭和電工株式会社製のカレンズ(登録商標)MTシリーズなどの市販品を用いることもできる。
【0048】
成分(D)は光重合開始剤である。光重合開始剤は、紫外線や電子線などを照射することでラジカルを発生し、このラジカルによって重合反応が始まるきっかけとなるものである。光重合開始剤としては特に限定されないが、例えばアルキルフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系などが挙げられ、樹脂組成や厚みなどの塗工形態において適宜選択すればよい。
【0049】
成分(D)の具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
光硬化性樹脂組成物中の成分(D)の含有割合は特に限定されないが、好ましくは成分(D)が、成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して0.1~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部配合される。
【0051】
本発明の光硬化性樹脂組成物においては、前記成分(A)~(D)の含有質量比が、次の条件(1)~(3)を全て満たすことがさらに好ましい。
【0052】
条件(1):成分(B)が、成分(A)100質量部に対して20~80質量部
条件(2):成分(C)が、成分(A)、(B)の合計100質量部に対して5~30質量部
条件(3):成分(D)が、成分(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して0.1~5.0質量部
【0053】
前記成分(A)~(D)の含有質量比が前記条件(1)~(3)を全て満たす光硬化性樹脂組成物であれば、これを硬化して得られる樹脂硬化物はより優れた伸張性と伸張回復性とを備えたものとすることができる。
【0054】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、更に成分(E)として難燃剤を含むことが好ましい。難燃剤としては特に限定されず、公知の難燃剤を例示することができる。例えば、臭素系、IFR系、ホスフィン酸金属塩系、水和金属化合物系などが挙げられる。
【0055】
臭素系難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有する化合物であれば特に限定はないが、例えば、芳香族臭素化化合物等を挙げることができる。芳香族臭素化化合物の具体例としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサプロモビフェニル、デカプロモビフェニル、ヘキサプロモシクロデカン、デカプロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサプロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフエノキシ)エタン、エチレンービス(テトラプロモフタルイミド)、テトラプロモビスフェノールA等のモノマー有機臭素化合物;臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、ポリカ-ポネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート;臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物;ポリ(臭素化ベンジルアクリレート);臭素化ポリフェニレンエーテル;臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌールおよび臭素化フェノールの縮合物;臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン;架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等のハロゲン化された臭素化合物ポリマーが挙げられる。
【0056】
IFR系難燃剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム塩、ペンタエリストール、メラミンやヒドラジド等の窒素化合物の混合物等があげられる。
【0057】
ホスフィン酸金属塩系難燃剤としては、例えば、ジエチルホスフィン酸アルミニウム等のホスフィン酸アルミニウム塩、ホスフィン酸カルシウム塩、ホスフィン酸亜鉛塩等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0058】
水和金属化合物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等があげられる。
【0059】
その他に、有機系のリン化合物としては、リン酸エステルとその塩、亜リン酸エステルとその塩、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、ビホスフィン、ホスホニウム塩およびホスファゼンなどを挙げることができる。無機系のリン化合物としては、ポリリン酸アンモニウムに代表されるリン酸塩を挙げることができる。また、上述の化合物以外に、単体である赤リンを用いてもよい。また、メラミンシアヌレート、メラミン等のメラミン系化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物も挙げられる。
【0060】
上記のなかでも、少量の添加で高い難燃性が得られるという点からホスフィン酸金属塩系であることが好ましい。前記難燃剤の含有割合は、前記成分(A)~(C)の総重量に対して5~40質量%であることが好ましく、より好ましくは15~25質量%である。
【0061】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、分子内にウレタン結合を有する成分(B)を用いることにより、樹脂硬化物となった際に優れた難燃性を備えるという効果を奏する。そのため、添加する難燃剤の量を低く抑えることができる。
【0062】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、その他の成分として染料および顔料などを組み合わせて含有させて着色することが可能である。染料および顔料の種類や含有量は、硬化の際に照射する光の波長を十分に透過するように設定することが望ましい。
【0063】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、JIS K7117-2法による粘度が1~100Pa・sであることが好ましく、更に好ましくは5~50Pa・sである。前記光硬化性樹脂組成物の粘度がこの範囲内であれば、合成皮革を製造する際に繊維質基材に対して均一な厚さで塗布することが容易となる。
【0064】
本発明の樹脂硬化物は、前記成分(A)~(D)を含む前記光硬化性樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物である。前記光硬化性樹脂組成物を硬化させる方法としては、所望の形状に配置された前記光硬化性樹脂組成物に対して光を照射する方法が挙げられる。
【0065】
照射する光の波長としては200~400nmの紫外線であることが好ましい。また硬化時の紫外線の積算光量は特に限定されない。積算光量は、500~10,000mJ/cm2であることが好ましく、更に好ましくは1,000~5,000mJ/cm2である。なお、積算光量は、たとえば紫外線照度計・光量計(UIT-250、ウシオ電機株式会社製)を用い、測定波長域365nmの条件で測定することができる。
【0066】
本発明の樹脂硬化物は、JIS L 1096法に準拠して測定される伸張率が100%以上であることが好ましい。前記樹脂硬化物の伸張率が100%以上であれば、合成皮革の構成材料として利用した場合に縫製作業の際に皺になり難い合成皮革を得ることができる。
【0067】
更に前記樹脂硬化物は、JIS L 1096法に準拠して測定される、100%伸張後の伸張回復率が95%以上であることが好ましい。100%伸張後の伸張回復率が95%以上である前記樹脂硬化物を用いて作製された合成皮革は、皺になり難いという効果を奏することができる。
【0068】
本発明の合成皮革は、繊維質基材の表面に、前記成分(A)~(D)を含む前記光硬化性樹脂組成物を硬化させた前記樹脂硬化物から成る樹脂層が積層されていることを特徴とする合成皮革である。前記繊維質基材を構成する繊維の種類としては、公知公用の各種繊維を用いることができ、特に限定されない。
【0069】
綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維の他、レーヨン、キュプラなどの半合成繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリウレタン、ポリプロピレンなどの合成繊維を使用することができる。これらの繊維は単独であるいは複数種を組み合わせて使用することができる。なかでも、強度、加工性の観点から合成繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましい。
【0070】
前記繊維からなる繊維質基材の形態としては特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。特に、織物、編物、不織布などシート状の布帛であることが好ましい。前記繊維質基材の厚さは0.5~2.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.8~2.0mmである。前記繊維質基材の厚さがこの範囲内であれば、柔軟で縫製の際に皺になり難い合成皮革を得ることができる。前記繊維質基材は、必要に応じて染色され、各種の仕上げ加工が実施されていてもよい。
【0071】
前記繊維質基材の表面に、本発明の前記光硬化性樹脂組成物を硬化して得られる前記樹脂硬化物から成る樹脂層が積層されて本発明の合成皮革となる。前記樹脂層は、前記繊維質基材の一方の表面に積層されていてもよく、両方の表面に積層されていてもよい。
【0072】
前記樹脂層の厚さは50~350μmであることが好ましく、より好ましくは100~250μmである。前記樹脂層の厚さがこの範囲内であれば、縫製の際に皺になり難い合成皮革を得ることができる。
【0073】
本発明の合成皮革においては、本発明の前記光硬化性樹脂組成物を硬化して得られる前記樹脂硬化物から成る樹脂層の表面に、第二の樹脂層が積層されていてもよい。前記第二の樹脂層としては、例えばウレタン系樹脂や塩ビ系樹脂、シリコーン系樹脂、合成ゴムまたは天然ゴムなどから成る樹脂層が挙げられる。
【0074】
これら第二の樹脂層は、本発明の合成皮革の表面に意匠性を付与するために積層されていてもよい。あるいは、本発明の合成皮革の表面の肌触りを改善したり、耐候性や耐摩耗性を向上させたりする機能を有していてもよい。
【0075】
本発明の合成皮革においては、本発明の前記光硬化性樹脂組成物を硬化して得られる前記樹脂硬化物から成る樹脂層と前記繊維質基材との間に、更に第三の樹脂層が積層されていてもよい。
【0076】
前記第三の樹脂層としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。前記第三の樹脂層は、前記光硬化性樹脂組成物を硬化して得られる前記樹脂硬化物から成る樹脂層と前記繊維質基材とを接着する目的や、前記合成皮革にクッション性を付与する目的などのために積層されていてもよい。
【0077】
本発明の合成皮革を製造する方法としては、離型性を有する基材(離型基材)の表面に前記光硬化性樹脂組成物を塗工して光を照射し、粘着性を残す程度に半硬化した樹脂硬化物とした後に前記繊維質基材を重ね合わせて更に光を照射し、前記光硬化性樹脂組成物を完全に硬化させて樹脂層と成す方法など、複数回の光照射による方法などが挙げられる。
【0078】
離型基材としては、離型紙、離型処理布、撥水処理布、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂などから成るオレフィンシートまたはフィルム、フッ素樹脂シートまたはフィルム、離型紙付きプラスチックフィルムなどを挙げることができる。
【0079】
離型基材は、その表面に凹凸からなる模様を有していてもよい。これによれば、簡易な方法で本発明の合成皮革の表面に意匠性を付与することができる。
また離型基材が光透過性であると、前記複数回光照射する方法などにおいて繊維質基材を重ね合わせた後の光照射を、離型基材の側から実施することができるため、完全に硬化させることが容易となり好適である。離型基材越しに光照射を行う場合に使用する光透過性の離型基材としては、例えば紫外線透過率が50%以上、より好ましくは70%以上であることが望ましい。そうすれば、離型基材越しの光照射のみで効率的に樹脂の硬化が可能となり、紫外線を過剰に照射する必要がなく生産効率がよい。
【0080】
本発明の合成皮革を製造する別の方法としては、前記繊維質基材の表面に、前記光硬化性樹脂組成物を各種コーティング法によって直接塗工し、その後光を照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物から成る樹脂層を形成する方法が挙げられる。コーティング法としては、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられ、特に限定されない。
【0081】
前記第二の樹脂層および前記第三の樹脂層を設ける場合の製造方法としては、前記離型性を有する基材を用いる方法においては、前記離型性を有する基材の表面に所望の積層順に各樹脂層を形成した後、前記繊維質基材と積層一体化させる方法が挙げられる。同様に、前記繊維質基材の表面に、各樹脂層を形成するための樹脂組成物を所望の順序で直接塗工して硬化させる方法が挙げられる。その他、三層以上の樹脂層を有する合成皮革の製造方法についても、従来公知の合成皮革の製造方法を適用することが可能である。
【実施例0082】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。なお、本実施例における各種物性の評価方法は以下の通りである。
【0083】
<樹脂硬化物の伸張率測定>
実施例で作製した樹脂硬化物シートから、長さ8cm×幅10mm×厚み200μmの試験片を切り出した。得られた試験片を、JIS L 1096に準拠して、つかみ間隔50mm、引張速度50mm/minで破断するまで伸張させることにより、破断伸張率を測定した。なお、測定には株式会社島津製作所製引張試験機「EZtest(登録商標)CE」を使用した。
【0084】
<樹脂硬化物の100%伸張後の伸張回復率測定>
実施例で作製した樹脂硬化物シートから、長さ8cm×幅10mm×厚み200μmの試験片を切り出した。得られた試験片を、JIS L 1096に準拠して、つかみ間隔50mm、引張速度50mm/minで50mm伸張した後、直ちに下端のつかみを解放した。つかみ解放直後の残留伸びL1[mm]を測定した。また、つかみ解放から5分後の残留伸びL2[mm]も併せて測定した。測定には株式会社島津製作所製引張試験機「EZtestCE」を使用した。その結果より、次式(数1)を用いて100%伸張時の伸張回復率(%)を算出した。なお、次式(数1)中、“L”はL1又はL2である。また、残留伸びとは、伸張後の長さから伸張前の長さ(測定前の試験片の長さ;50mm)を引いた値である。
【0085】
(数1)
100%伸張時の伸張回復率[%]={(50-L)/50}×100
【0086】
<合成皮革の耐皺性(1分後)(5分後)>
実施例で作製した合成皮革から40mm×15mmの試験片を切り出し、樹脂層が内側になるように二つ折りにして500g荷重を5分間かけた後、荷重をとり除いて折りを開き、1分後の折り皺の発生状況を目視により確認した。
同様にして、二つ折りにしたものに500g荷重を5分間かけた後、荷重をとり除いて折りを開き、5分後の折り皺の発生状況を目視により確認した。
荷重除去1分後及び5分後のそれぞれについて、折り皺の発生状況を以下の基準で評価した。
〇:目立った折り皺はみられない
×:目立った折り皺がみられた
【0087】
<合成皮革の難燃性>
実施例で得られた合成皮革から、長さ350mm×幅100mmに裁断した試験片を用い、米国自動車安全基準FMVSS No.302の試験方法に準拠して評価した。当該試験片の端部に、ガスバーナーで15秒間接炎させて着火操作を行い、着火した炎が端部から38mmの位置に設けた標線を越えてから消火するまでの距離と時間を測定した。この結果から燃焼速度を算出し、以下の基準に従って判定した。
A:試験片に着火しなかったもの、または、着火した炎が標線前に消火したもの
B:燃焼速度の最大値が80mm/分以下のもの
C:燃焼速度の最大値が80mm/分を超えるもの
【0088】
[製造例1]
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた4口フラスコに、乾燥空気下にて、イソボルネオール15.4部と、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート14.1部と、ジブチルスズジラウレート3.2部とを投入し、十分に撹拌した後、60℃に昇温し、約3時間撹拌加熱して反応させた。反応後、赤外線吸収スペクトル測定によりウレタン結合に由来するピークが確認されたことと、イソシアネート基に由来するピークが観測されなくなったことを確認した。このようにして、イソボルニル基を含み、分子内にウレタン結合を有する単官能アクリレートモノマーを得た。
【0089】
[製造例2~3、製造例4(比較製造例)]
4口フラスコに投入するアルコール成分の種類および量を表1に示すようにした以外は製造例1と同様にして分子内にウレタン結合を有する単官能アクリレートモノマーを得た。ここで、表1における数値は、質量部を示すものとする。
【0090】
【0091】
[実施例1~5、比較例1~3]
(1)光硬化性樹脂組成物の作製
表2に示す配合にて各成分を混合し、光硬化性樹脂組成物を得た。ここで、表2における数値は質量部を示すものとする。以下に、使用した原材料を示す。
紫光UV3310B(三菱ケミカル株式会社製、ポリカーボネート系2官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量:5,000)
カレンズMT PE1(昭和電工株式会社製、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート))
Omnirad184(IGM RESINS社製、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
ライトアクリレートIB-XA(共栄社化学株式会社製、イソボルニルアクリレート)
【0092】
【0093】
表2に示す実施例1~5及び比較例1~3にて得られた光硬化性樹脂組成物について、以下の要領で樹脂硬化物シートおよび合成皮革を作製し、物性評価をおこなった。この結果を表2に示す。なお、比較例1および2の光硬化性樹脂組成物を硬化して得られた樹脂硬化物シートに関しては、伸張率が100%に満たないため、100%伸張後の伸張回復率を測定することができず「測定不能」とした。
【0094】
(2)樹脂硬化物シートの作製
フラット離型紙(商品名:EV130TPD、リンテック株式会社製)上に、アプリケーターを用いて、厚みが約200μmとなるように得られた光硬化性樹脂組成物を塗布した。次いでこれに、高圧水銀ランプ(型番:H168-L4115、アイグラフィックス株式会社製)を用いて、積算光量1,800mJ/cm2にて紫外線照射(波長;365nm)して当該樹脂組成物を硬化させ、樹脂硬化物とした。そののち、離型紙を剥がして厚み200μmの樹脂硬化物シートを作製し、各種物性評価に用いた。
【0095】
(3)合成皮革の作製
上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物に、黒色顔料としてチタンブラック(商品名:12S、三菱マテリアル電子化成株式会社製)を成分(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して1質量部、ホスフィン酸金属塩系難燃剤(商品名:EXOLIT OP930、クラリアントスペシャリティケミカルズ社製)を成分(A)、(B)、(C)の合計100質量部に対して20質量部混合し、黒色の光硬化性樹脂組成物とした。
【0096】
次いで、この黒色の光硬化性樹脂組成物を、皮目調のエンボス加工が施された厚み100μmのL-LDPE樹脂製離型基材(商品名:ハイシボ、林一二株式会社製)上に、アプリケーターを用いて、厚みが約200μmとなるように塗布した後、UV-LEDランプ(型番:H-12LH4-V1-1S11-SM2、HOYA株式会社製)を用いて、積算光量20mJ/cm2にて紫外線照射(波長;365nm)し、粘着性を残す程度に半硬化させた。これに、繊維質基材としてポリエステルトリコット編地(厚み1mm)を貼付し、荷重400kPaで4秒間プレス圧着した。
【0097】
その後、離型基材の側から高圧水銀ランプ(型番:H168-L4115、アイグラフィックス株式会社製)を用いて、積算光量3,600mJ/cm2にて紫外線照射(波長;365nm)し、次いで離型紙を剥離することで合成皮革を作製した。なお、使用した離型基材の波長365nmにおける紫外線透過率は80%であった。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、伸張性と伸張回復性に優れた樹脂硬化物を与えることができる。本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて作製された合成皮革は、縫製作業の際に皺になり難い。