(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104819
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】結線作業支援システムおよび結線作業支援方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240730BHJP
H02G 1/06 20060101ALI20240730BHJP
G06F 3/0484 20220101ALI20240730BHJP
【FI】
G06F3/01 510
H02G1/06
G06F3/0484
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009191
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】示野 雅士
【テーマコード(参考)】
5E555
5G352
【Fターム(参考)】
5E555AA23
5E555AA24
5E555AA25
5E555AA26
5E555AA54
5E555BA02
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA42
5E555CB45
5E555DA08
5E555DA09
5E555DB53
5E555DC09
5E555DC11
5E555DC13
5E555DC35
5E555EA07
5E555FA00
5G352CH02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】配線を接続する結線作業時の作業者の負担を軽減し、作業効率を向上させる結線作業支援システム及び結線作業支援方法を提供する。
【解決手段】結線作業支援システム100は、作業者の頭部に装着されるARグラス10と、ARグラスに通信接続されるサーバ30と、を備える。ARグラスは、作業者の視線方向にある端子を被写体として撮像する少なくとも1つの撮像部11と、作業者の視界内に拡張現実映像を表示する表示部12と、情報処理部13と、を含む。サーバは、端子に接続すべき配線の色の情報を含む結線データを記憶する記憶装置34を含む。情報処理部は、少なくとも1つの撮像部の撮像画像から作業者の視野画像を取得し、結線データをサーバから受信し、結線データに基づいて、視野画像内の端子の画像に、端子に接続すべき配線の色の画像を重ね合わせて拡張現実映像を生成し、生成した拡張現実映像を表示部に表示させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結線作業を支援するためのシステムであって、
作業者の頭部に装着される眼鏡型情報端末と、
前記眼鏡型情報端末に通信接続されるサーバとを備え、
前記眼鏡型情報端末は、
前記作業者の視線方向にある端子を被写体として撮像する少なくとも1つの撮像部と、
前記作業者の視界内に拡張現実映像を表示する表示部と、
情報処理部と含み、
前記サーバは、前記端子に接続すべき配線の色の情報を含む結線データを記憶する記憶装置を含み、
前記情報処理部は、
前記少なくとも1つの撮像部の撮像画像から前記作業者の視野画像を取得し、
前記結線データを前記サーバから受信し、
前記結線データに基づいて、前記視野画像内の前記端子の画像に、前記端子に接続すべき配線の色の画像を重ね合わせて前記拡張現実映像を生成し、
生成した前記拡張現実映像を前記表示部に表示する、結線作業支援システム。
【請求項2】
前記情報処理部はさらに、
前記視野画像と前記結線データとに基づいて結線の正誤を判定し、
前記結線の正誤の判定結果を前記拡張現実映像に重ね合わせて表示する、請求項1に記載の結線作業支援システム。
【請求項3】
前記情報処理部は、前記結線の正誤の判定結果をサーバに送信し、
前記サーバは、前記結線の正誤の判定結果を前記結線データに追加して前記記憶装置に記憶する、請求項2に記載の結線作業支援システム。
【請求項4】
前記情報処理部は、前記拡張現実映像において、前記端子または前記端子の近傍を、前記端子に接続すべき配線の色で色付けて表示する、請求項1から3のいずれか1項に記載の結線作業支援システム。
【請求項5】
前記端子の近傍には、当該端子に関する情報が記載されたパターンが配置されており、
前記情報処理部は、前記拡張現実映像において、前記パターンを前記端子に接続すべき配線の色で色付けて表示する、請求項4に記載の結線作業支援システム。
【請求項6】
前記表示部は、前記拡張現実映像において、結線作業が行われない端子に対応する前記パターンをマスク表示する、請求項5に記載の結線作業支援システム。
【請求項7】
作業者の頭部に装着される眼鏡型情報端末を用いて結線作業を支援する方法であって、
前記眼鏡型情報端末は、少なくとも1つの撮像部と、前記作業者の視界内に拡張現実映像を表示する表示部とを含み、
前記少なくとも1つの撮像部が前記作業者の視線方向にある端子を被写体として撮像するステップと、
前記少なくとも1つの撮像部の撮像画像から前記作業者の視野画像を取得するステップと、
前記端子に接続すべき配線の色の情報を含む結線データを取得するステップと、
前記結線データに基づいて、前記視野画像内の前記端子の画像に、前記端子に接続すべき配線の色の画像を重ね合わせて前記拡張現実映像を生成するステップと、
生成した前記拡張現実映像を前記表示部に表示するステップとを含む、結線作業支援方法。
【請求項8】
前記視野画像と前記結線データとに基づいて結線の正誤を判定するステップと、
前記結線の正誤の判定結果を前記拡張現実映像に重ね合わせて表示するステップとをさらに含む、請求項7に記載の結線作業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、結線作業支援システムおよび結線作業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2020/250928号明細書(特許文献1)には、ケーブル接続作業を支援するシステムが開示されている。このシステムは、端末装置と、管理サーバとを備える。端末装置は、接続作業を行うケーブルの先端の画像を撮像する。管理サーバは、端末装置が撮像したケーブルの先端の表面紋様に基づいた個別識別を行い、個別識別の結果に基づいた作業支援情報を端末装置へ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/250928号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気機器に設けられた複数の端子に配線を接続する結線作業を行う場合、作業者は、各端子と当該端子に接続される配線の種類とが一対一に対応付けて記載された結線表を確認しながら、各端子に配線を接続する。このとき、作業者は結線表と端子とを見比べながら作業を行うため、端子の数が増えるに従って作業者の負担が増加し、作業効率を低下させることが懸念される。また、複数の小型の端子が緻密に配列されている電気機器においては、作業者が端子または結線表の確認を誤ることで、結線ミスが発生する可能性が高くなることが懸念される。
【0005】
特許文献1に記載のシステムでは、作業支援情報として、ケーブルの先端を接続すべき装置のポート名、およびケーブルにおける他の先端が接続される装置のポート名を示す文字列からなる仮想マーキングデータが生成されて作業者に提示される。しかしながら、作業者の視覚に訴える効果については懸念点が残る。
【0006】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、端子に配線を接続する結線作業時の作業者の負担を軽減し、作業効率を向上させることができる結線作業支援システムおよび結線作業支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面では、結線作業を支援するためのシステムが提供される。結線作業支援システムは、作業者の頭部に装着される眼鏡型情報端末と、眼鏡型情報端末に通信接続されるサーバとを備える。眼鏡型情報端末は、作業者の視線方向にある端子を被写体として撮像する少なくとも1つの撮像部と、作業者の視界内に拡張現実映像を表示する表示部と、情報処理部と含む。サーバは、端子に接続すべき配線の色の情報を含む結線データを記憶する記憶装置を含む。情報処理部は、少なくとも1つの撮像部の撮像画像から作業者の視野画像を取得し、結線データをサーバから受信する。情報処理部は、結線データに基づいて、視野画像内の端子の画像に、端子に接続すべき配線の色の画像を重ね合わせて拡張現実映像を生成する。情報処理部は、生成した拡張現実映像を表示部に表示する。
【0008】
本開示の別の局面では、作業者の頭部に装着される眼鏡型情報端末を用いて結線作業を支援する方法が適用される。眼鏡型情報端末は、少なくとも1つの撮像部と、作業者の視界内に拡張現実映像を表示する表示部とを含む。結線作業支援方法は、少なくとも1つの撮像部が作業者の視線方向にある端子を被写体として撮像するステップと、少なくとも1つの撮像部の撮像画像から作業者の視野画像を取得するステップと、端子に接続すべき配線の色の情報を含む結線データを取得するステップと、結線データに基づいて、視野画像内の端子の画像に、端子に接続すべき配線の色の画像を重ね合わせて拡張現実映像を生成するステップと、生成した拡張現実映像を表示部に表示するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、端子に配線を接続する結線作業時の作業者の負担を軽減し、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態に係る結線作業支援システムの全体構成図である。
【
図2】ARグラスの撮像部により取得される視野画像の一例を示す図である。
【
図4】結線作業支援システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】ARグラスの機能構成の一例を示す図である。
【
図6】AR映像生成部によって生成されるAR映像の一例を示す図である。
【
図7】AR映像生成部によって生成されるAR映像の一例を示す図である。
【
図8】結線作業支援システムが実行する処理の一部を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
<結線作業支援システムの構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る結線作業支援システムの全体構成図である。本実施の形態に係る結線作業支援システム100は、拡張現実(AR:Augmented Reality)技術を用いて、作業者Mによる結線作業を支援するためのシステムである。本実施の形態では、作業者Mは、基板上に載置された端子台に設けられた複数の端子に対して、複数の配線をそれぞれ接続する作業を行うものとする。結線作業支援システム100は、この結線作業を支援するように構成される。
【0013】
図1に示すように、結線作業支援システム100は、ARグラス10と、サーバ30とを備える。ARグラス10およびサーバ30は、通信網NWを経由して双方向に情報を送受信可能に構成されている。
【0014】
ARグラス10は、作業者Mの頭部に装着される眼鏡型の情報端末である。ARグラス10は、ヘッドマウントディスプレイ方式のウェアラブル端末であるスマートグラスの一種である。ARグラス10は、現実空間を撮像部11で認識し、現実空間に合うように拡張現実映像(AR映像)を表示部12に表示するものである。これにより、作業者MはAR映像が現実にあるかのように見ることができる。
【0015】
ARグラス10は、少なくとも1つの撮像部11と、表示部12と、図示しない情報処理部とを含んで構成される。少なくとも1つの撮像部11は、作業者Mの視線方向の被写体を撮像するための部位である。
図1の例では、ARグラス10は、複数の撮像部11a~11dを有している。以下、複数の撮像部11a~11dを包括的に「撮像部11」と称する場合がある。複数の撮像部11a~11dは、表示部12の外縁部分に適当な距離をおいて設置されており、作業者Mの視線方向の被写体を撮像範囲に収めることができる。結線作業時、撮像部11は、作業者Mの視線方向にある端子を被写体として撮像する。ARグラス10は、複数の撮像部11a~11dの撮像画像から、作業者Mの視野を示す視野画像を取得する。
【0016】
表示部12は、作業者Mの両目に対応して設けられる。表示部12は、作業者Mの視野を遮ることなく、作業者Mの視界内にAR映像を表示する。
図1では、両目の視界に対してAR映像を投影する構成としたが、片目に対してAR映像を提供する構成としてもよい。
【0017】
図2は、ARグラス10の撮像部11により取得される視野画像の一例を示す図である。
図2に示すように、視野画像には、基板50の一部と、基板50上に載置された2つの端子台52とが含まれている。
【0018】
各端子台52には、複数の端子54が設けられている。各端子54に形成された端子孔に、対応する配線の先端部を挿し込むことにより、端子54と配線とを電気的に接続することができる。端子台52の形状はこれに限定されない。例えば、各端子54と配線の先端部分とを締結部材を用いて締結することにより、端子54と配線とを電気的に接続するように構成されてもよい。
【0019】
各端子54の近傍には、基板シルク56が配置されている。
図2では、基板シルク56は、対応する端子54に水平方向に隣接して配置されている。基板シルク56は、対応する端子54に関する情報を基板50上に表示するために形成された、文字および/または記号等からなるパターンである。基板シルク56は、スクリーン印刷法、インクジェット法、または写真法等を用いて、基板50に印刷することで形成することができる。
【0020】
図2の例では、各基板シルク56は、矩形形状を有しており、対応する端子54の識別情報である端子番号を示す文字を含んでいる。基板シルク56の位置および形状はこれに限定されるものではなく、端子54と一対一に対応が取れていればよい。
【0021】
図1に戻って、サーバ30は、作業者Mによる結線作業を管理するための機能を有する。サーバ30は、結線作業が行われる基板50上に設けられた端子台52について、各端子54に接続すべき配線の情報を含んだ結線データを記憶している。
図3は、結線データの一例を示す図である。
【0022】
図3に示すように、結線データは、端子台52を識別するための識別情報(端子台番号)と、端子54を識別するための識別情報(端子番号)と、各端子54に接続すべき配線の色を示す配線色情報とを含んでいる。
【0023】
例えば、端子台番号「TA1」の端子台52において、端子番号「1SDA」の端子54には「黄色」の配線が接続され、端子番号「1SDB」の端子54には「白(黄)色」の配線が接続される。端子番号「FG」の端子54には「緑色」の配線が接続され、端子番号「24VA」の端子54には「青色」の配線が接続される。端子番号「24G」の端子54には「白(青)色」の配線が接続される。なお、「白(黄)色」の配線は、白色および黄色の2本の電線からなる配線を示しており、「白(青)色」の配線は、白色および青色の2本の電線からなる配線を示している。
【0024】
このように結線データでは、端子54毎に、端子54を識別するための識別情報(端子番号)と、当該端子54に接続すべき配線の色を表す配線色情報とが対応付けられている。
【0025】
サーバ30は、視野画像データをARグラス10から受信すると、受信した視野画像を解析することにより、作業者Mが結線作業を行う端子台52を特定する。そして、サーバ30は、特定された端子台52の結線データをARグラス10へ送信する。結線データは、後述するように、ARグラス10においてAR映像を生成するために用いられる。
【0026】
<結線作業支援システムのハードウェア構成>
次に、本実施の形態に係る結線作業支援システム100のハードウェア構成について説明する。
図4は、結線作業支援システム100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0027】
(サーバ30のハードウェア構成)
図4に示すように、サーバ30は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)31と、RAM(Random Access Memory)32と、ROM(Read Only Memory)33と、記憶装置34と、通信I/F35とを含んで構成される。CPU31、RAM32、ROM33、記憶装置34、および通信I/F35は、通信バス36を通じて各種データを遣り取りする。
【0028】
CPU31は、ROM33に格納されているプログラムをRAM32に展開して実行する。ROM33に格納されているプログラムには、サーバ30によって実行される処理が記述されている。
【0029】
記憶装置34は、各種情報を記憶するストレージであって、基板50の情報、基板50上に載置される端子台52の情報、および各端子台52の結線データ等を記憶する。記憶装置34は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)やソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)等である。
【0030】
通信I/F35は、ARグラス10を含む外部機器と信号やデータを遣り取りするための入出力装置である。通信I/F35は、通信網NWを経由して、作業者Mが結線作業を行う端子台52の結線データをARグラス10へ送信する。また、通信I/F35は、視野画像のデータや、結線作業の正誤を判定した判定結果を示すデータ等をARグラス10から受信する。
【0031】
(ARグラス10のハードウェア構成)
ARグラス10は、少なくとも1つの撮像部11と、表示部12と、情報処理部13とを含んで構成される。
【0032】
少なくとも1つの撮像部11は、作業者Mの視線方向の被写体を撮像する。各撮像部11は、主たる構成要素として、レンズや絞り等の光学系と、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の受光素子とを含む。各撮像部11は、情報処理部13からの指令に従って撮像するとともに、その撮像によって得られた画像データを情報処理部13へ出力する。
図1の例では、ARグラス10は、複数の撮像部11a~11dを有しており、複数の撮像部11a~11dの撮像によって得られた画像データを情報処理部13へ出力する。撮像画像は、現実空間での被写体のリアルタイム画像である。
【0033】
情報処理部13は、主たる構成要素として、CPU41と、RAM42と、ROM43と、入出力I/F44と、記憶装置45と、通信I/F46とを含んで構成される。CPU41、RAM42、ROM43、入出力I/F44、記憶装置45、および通信I/F46は、通信バス47を通じて各種データを遣り取りする。
【0034】
CPU41は、ROM43に格納されているプログラムをRAM42に展開して実行する。ROM43に格納されているプログラムには、情報処理部13によって実行される処理が記述されている。
【0035】
入出力I/F44は、情報処理部13と撮像部11および表示部12との間で各種データを遣り取りするための入出力装置である。
【0036】
記憶装置45は、各種情報を記憶するストレージであって、サーバ30から受信した結線データ、視野画像データ、および結線の正誤の判定結果を示すデータ等を記憶する。記憶装置45は、例えばHDD等である。
【0037】
通信I/F46は、サーバ30と信号やデータを遣り取りするための入出力装置である。通信I/F46は、通信網NWを経由して、視野画像のデータ、および結線の正誤の判定結果を示すデータ等をサーバ30へ送信する。また、通信I/F46は、作業者Mが結線作業を行う端子台52の結線データ等をサーバ30から受信する。
【0038】
情報処理部13は、少なくとも1つの撮像部11からの撮像画像に基づいて、作業者Mの視野画像を取得する。そして、情報処理部13は、取得した視野画像データ、およびサーバ30からの結線データに基づいて、AR映像を生成する。また、情報処理部13は、作業者Mが行った結線の正誤を判定し、その判定結果をAR映像に重ね合わせる。AR映像の生成方法については後述する。
【0039】
表示部12は、透過型ディスプレイであり、情報処理部13により生成されたAR映像を、作業者Mの視野を遮ることなく作業者Mの視野内に表示する。
【0040】
<ARグラス10の機能構成>
次に、ARグラス10の機能について説明する。
図5は、ARグラス10の機能構成の一例を示す図である。
【0041】
図5に示すように、ARグラス10は、視野画像取得部80と、通信部82と、AR映像生成部84と、判定部86とを含んで構成される。視野画像取得部80、通信部82、AR映像生成部84、および判定部86の機能は、情報処理部13内のCPU41がROM43に保存されたプログラムを実行するソフトウェア処理によって実現することができる。なお、視野画像取得部80、通信部82、AR映像生成部84、および判定部86の機能の少なくとも一部は、専用の電子回路等のハードウェア処理によって実現されてもよい。
【0042】
視野画像取得部80は、少なくとも1つの撮像部11の撮像画像から、作業者Mの視野を示す視野画像を取得する。ある局面では、視野画像取得部80は、複数の撮像部11a~11dの撮像画像と、作業者Mの視線に対する各撮像部11の位置情報とに基づいて、視野画像を取得する。
図2に示したように、視野画像には、作業者Mが結線作業を行う端子台52の画像が含まれている。視野画像取得部80は、取得した視野画像データを、通信部82、AR映像生成部84および判定部86へ出力する。
【0043】
通信部82は、通信網NWを介した通信機能を有する。通信部82は、視野画像取得部80、AR映像生成部84、および判定部86との間でデータの授受が可能である。通信部82は、視野画像取得部80からの視野画像データをサーバ30へ送信する。
【0044】
視野画像データは、サーバ30において、作業者Mが結線作業を行う端子台52を特定するために用いられる。サーバ30は、視野画像の解析により端子台52が特定されると、特定された端子台52における各端子54に接続すべき配線の情報を含んだ結線データを記憶装置34から読み出す。サーバ30は、読み出した結線データをARグラス10へ送信する。結線データでは、
図3に示したように、端子54毎に、端子54を識別するための識別情報(端子番号)と、当該端子54に接続すべき配線の色を表す配線色情報とが対応付けられている。
【0045】
通信部82は、結線データをサーバ30から受信すると、受信した結線データをAR映像生成部84へ送信する。
【0046】
AR映像生成部84は、視野画像データおよび結線データを用いて、AR映像を生成する。具体的には、AR映像生成部84は、最初に、視野画像に含まれる端子台52の画像から、各端子54の識別情報(端子番号)を検出する。AR映像生成部84は、端子台52の画像から、各端子54の近傍に配置された基板シルク56に記述された端子番号を読み取ることで、端子番号を検出することができる。
【0047】
次いで、AR映像生成部84は、結線データ(
図3参照)を参照することにより、各端子54の識別情報(端子番号)から、各端子54に接続すべき配線の色を特定する。そして、AR映像生成部84は、特定された配線の色を示す画像を視野画像に重畳することにより、AR映像を生成する。
【0048】
図6は、AR映像生成部84によって生成されるAR映像の一例を示す図である。
図6に示されるAR映像は、
図5に示した視野画像に対して、配線色情報を示す画像を重ね合わせたものである。
図6の例では、各端子54に隣接して配置される基板シルク56が、対応する端子54に接続すべき配線の色で色付けて表示される。
【0049】
具体的には、端子台番号「TA1」の端子台52において、端子番号「1SDA」の端子54に対応する基板シルク56は、当該端子54に接続すべき配線の色である「黄色」で色付けられる。端子番号「1SDB」の端子54に対応する基板シルク56は、当該端子54に接続すべき配線の色である「白(黄)色」で色付けられる。端子番号「FG」の端子54に対応する基板シルク56は、当該端子54に接続すべき配線の色である「緑色」で色付けられる。端子番号「24VA」の端子54に対応する基板シルク56は、当該端子54に接続すべき配線の色である「青色」で色付けられる。端子番号「24G」の端子54に対応する基板シルク56は、当該端子54に接続すべき配線の色である「白(青)色」で色付けられる。「白(黄)色」の基板シルク56は、白色および黄色の2色で色付けられ、「白(青)色」の基板シルク56は、白色および青色の2色で色付けられる。
【0050】
なお、AR映像においては、配線が接続されない端子54に対応する基板シルク58がマスク表示される。
図6の例では、基板シルク58が黒塗りで表示される。基板シルク58に付される色は、黒色に限定されず、配線の色以外の色であってもよい。
【0051】
AR映像生成部84は、生成されたAR映像を表示部12に出力する。表示部12は、AR映像を表示する。作業者Mは、視野内に表示されたAR映像によって、結線作業を行う端子台52の各端子54に接続すべき配線の色を視覚的に認識することができる。また、作業者Mは、マスク表示された基板シルク58に対応する端子54については、配線を接続しないことを認識することができる。
【0052】
これによると、結線作業時において、作業者Mは、結線データと端子台52とを見比べながら作業を行う必要がなくなるため、作業者Mの負担を軽減することができる。その結果、結線作業の効率を向上させることが可能となる。
【0053】
なお、
図6では、AR映像として、視野画像の各端子54に隣接して配置される基板シルク56を、対応する配線の色で色付けて表示する構成を示したが、色付けする部分は基板シルク56に限定されない。例えば、各端子54そのものを対応する配線の色で色付けて表示してもよい。
【0054】
図5に戻って、判定部86は、結線作業時に視野画像取得部80から送られる視野画像データに基づいて、結線が正しいか否かを判定する。具体的には、判定部86は、視野画像を解析することにより、各端子54に接続されている配線の色を検出する。次いで、判定部86は、各端子54について、結線データに示されている配線の色と、当該端子54に接続されている配線の色とが一致しているか否かを判定する。結線データに示されている配線の色と、端子54に接続されている配線の色とが一致する場合には、判定部86は、当該端子54の結線が正しいと判定する。一方、結線データに示されている配線の色と、端子54に接続されている配線の色とが一致しない場合には、判定部86は、当該端子54の結線が誤っていると判定する。
【0055】
判定部86は、結線の正誤の判定結果を示すデータを通信部82およびAR映像生成部84へ送信する。通信部82は、判定結果を示すデータをサーバ30へ送信する。
【0056】
AR映像生成部84は、判定部86から判定結果を示すデータを受信すると、受信した判定結果を示す情報をAR映像に含める。
図7は、AR映像生成部84によって生成されるAR映像の一例を示す図である。
図7に示されるAR映像は、
図6に示したAR映像に対して、判定結果の情報を重ね合わせたものである。
【0057】
図7に示すように、各端子54に隣接して配置される基板シルク56に並べて、判定結果を示す判定結果画像62が表示される。判定結果画像62は、結線が正しいことを示す「OK」の文字、または、結線が誤りであることを示す「NG」の文字を含んでいる。
図7の例では、端子番号「1SDA」,「1SDB」,「24VA」の端子54の各々は、端子54に接続されている配線60の色と、対応する基板シルク56に付された配線色とが一致しているため、「OK」を示す判定結果画像62が表示されている。一方、端子番号「FG」,「24G」の端子54の各々は、端子54に接続されている配線60の色と、対応する基板シルク56に付された配線色とが異なるため、「NG」を示す判定結果画像62が表示されている。
【0058】
上述したAR映像生成部84によるAR映像の生成は、視野画像の取得に応じて、速やかにリアルタイム処理で実行される。したがって、作業者Mが端子台52の1つの端子54に配線60を接続すると、この配線60の色と結線データに示されている配線の色とに基づいて当該端子54の結線の正誤が判定され、判定結果画像62がAR映像に表示される。これにより、作業者Mは、結線作業中にAR映像から結線の正誤をリアルタイムで確認することができるため、結線ミスの発生を減らすことが可能となる。
【0059】
なお、
図7では、各端子54に隣接して配置される基板シルク56に並べて判定結果画像62を表示する構成を示したが、判定結果画像62を表示する部分はこれに限定されるものではなく、端子54と一対一に対応が取れていればよい。
【0060】
<結線作業支援システムの制御構造>
次に、結線作業支援システム100の制御構造について説明する。
【0061】
図8は、結線作業支援システム100が実行する処理の一部を表すフローチャートである。
図8では、ARグラス10により実行される処理を左側に示し、サーバ30により実行される処理を右側に示している。各ステップは、ARグラス10またはサーバ30によるソフトウェア処理により実現されるが、ARグラス10またはサーバ30内に作製されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0062】
S01において、ARグラス10は、少なくとも1つの撮像部11により、作業者Mの視野方向の被写体を撮像する。
【0063】
S02において、ARグラス10は、少なくとも1つの撮像部11の撮像画像から、作業者Mの視野を示す視野画像(
図2参照)を取得する。
【0064】
S03において、ARグラス10は、S02にて取得された視野画像データをサーバ30へ送信する。
【0065】
サーバ30は、S11において、視野画像データをARグラス10から受信すると、S12において、視野画像を解析することにより、作業者Mが結線作業を行う端子台52を特定する。
【0066】
S13において、サーバ30は、特定された端子台52の結線データ(
図3参照)を記憶装置34から読み出す。S14において、サーバ30は、読み出した結線データをARグラス10へ送信する。
【0067】
ARグラス10は、S04において、端子台52の結線データをサーバ30から受信すると、S05において、S02で取得された視野画像データと、端子台52の結線データとを用いて、AR映像(
図6参照)を生成する。S05では、ARグラス10は、結線データを参照することにより、各端子54の識別情報(端子番号)から、各端子54に接続すべき配線の色を特定し、特定された配線の色を示す情報を視野画像に重畳することにより、AR映像を生成する。
【0068】
S06において、ARグラス10は、生成されたAR映像を表示部12に表示する。これにより、視野画像に含まれる各端子54について、当該端子54に接続すべき配線の色の情報が作業者Mに提供される。作業者Mは、提供された配線色情報を参照しながら、結線作業を行うことができる。
【0069】
S07において、ARグラス10は、結線作業時に取得される視野画像に基づいて、各端子54に接続されている配線の色を検出する。
【0070】
S08において、ARグラス10は、端子54毎に、結線データに示されている配線の色と、当該端子54に接続されている配線の色とを比較することにより、結線が正しいか否かを判定する。S08では、結線データに示されている配線の色と、端子54に接続されている配線の色とが一致する場合、当該端子54の結線が正しいと判定される。一方、結線データに示されている配線の色と、端子54に接続されている配線の色とが一致しない場合には、当該端子54の結線が誤っていると判定される。
【0071】
S09において、ARグラス10は、S05にて生成されたAR映像に、判定結果の情報を重ね合わせて表示する。AR映像(
図7参照)には、端子54に配線60が接続されたことに応じて、当該端子54の結線の正誤を示す判定結果画像62が表示される。
【0072】
S10において、ARグラス10は、結線の正誤の判定結果を示すデータをサーバ30へ送信する。
【0073】
サーバ30は、S15において、判定結果を示すデータをARグラス10から受信すると、S16において、S13にて読み出した結線データに対して、判定結果のデータを追加する。
図9は、結線データの一例を示す図である。
図9の結線データは、
図3に示した結線データに、判定結果のデータを追加したものである。
【0074】
図9に示すように、結線データは、端子台52を識別するための識別情報(端子台番号)と、端子54を識別するための識別情報(端子番号)と、各端子54に接続すべき配線の色を示す配線色情報と、各端子54の結線の正誤の判定結果を示す情報とを含んでいる。すなわち、端子54毎に、端子54を識別するための識別情報(端子番号)と、当該端子54に接続すべき配線の色を表す配線色情報と、結線の正誤の判定結果とが対応付けられている。
【0075】
S17において、サーバ30は、判定結果が追加された結線データ(
図9参照)を記憶装置34に格納する。記憶装置34に記憶されている各端子台52の結線データは、端子台52に対する結線作業が行われたことに応じて、その結線の正誤の判定結果を含むように更新される。
【0076】
このようにしてサーバ30の記憶装置34には、結線の正誤の判定結果を含む結線データが格納される。作業者Mの結線作業を管理する管理者等は、記憶装置34に格納された結線データから、結線作業の進捗状況を遠隔で容易に管理することができる。また、管理者は、結線作業の進捗状況に応じた的確な指示を作業者Mに出すことが可能となる。
【0077】
なお、上述した実施の形態では、ARグラス10が視野画像とサーバ30からの結線データに基づいてAR映像を生成して表示部12に表示する構成について説明したが、サーバ30が結線データとARグラス10からの視野画像データとに基づいてAR映像を表示してARグラス10に送信し、ARグラス10が受信したAR映像を表示部12に表示する構成としてもよい。
【0078】
<実施の形態の効果>
以上説明したように、本実施の形態に係る結線作業支援システムによれば、ARグラス10は、作業者の視界内に、結線作業を行う端子に接続すべき配線の色を示す情報を重ね合わせたAR映像を表示するように構成される。これにより、作業者はAR映像から端子に接続すべき配線の色を視覚的に認識することができるため、作業者の負担を軽減することができる。その結果、結線作業の効率を向上させることが可能となる。
【0079】
さらに本実施の形態に係る結線作業支援システムにおいて、ARグラス10は、端子の結線の正誤の判定結果をAR映像に重ね合わせて表示するように構成される。したがって、作業者は、結線作業中にAR映像から結線の正誤をリアルタイムで確認することができるため、結線ミスの発生を減らすことが可能となる。
【0080】
また、本実施の形態に係る結線作業支援システムにおいて、サーバ30は、結線の正誤の判定結果を示すデータをARグラス10から受信し、当該データを結線データに含めて記憶装置に格納するように構成される。これによると、結線作業を管理する管理者等は、記憶装置に格納された結線データから、結線作業の進捗状況を遠隔で容易に管理することができる。また、管理者は、結線作業の進捗状況に応じた的確な指示を作業者Mに出すことが可能となる。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
10 ARグラス、11 撮像部、12 表示部、13 情報処理部、30 サーバ、31,41 CPU、32,42 RAM、33,43 ROM、34,45 記憶装置、35,46 通信I/F、44 入出力I/F、50 基板、52 端子台、54 端子、56,58 基板シルク、60 配線、62 判定結果、80 視野画像取得部、82 通信部、84 AR映像生成部、86 判定部、100 結線作業支援システム。