(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104822
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】レジンコーテッドサンド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B22C 1/22 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B22C1/22 B
B22C1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009200
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】子安 由季
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA26
4E092AA27
4E092AA28
4E092AA45
4E092AA50
4E092AA55
4E092BA01
4E092CA01
4E092CA03
(57)【要約】
【課題】従来品より優れた耐ブロッキング性を発揮するレジンコーテッドサンドを提供すること。
【解決手段】耐火性骨材の表面に、樹脂粘結剤からなるコーティング層が被覆されてなるレジンコーテッドサンドにおいて、コーティング層の外表面に、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末を付着せしめて、目的とするレジンコーテッドサンドを構成する。脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末の平均粒子径は、各々、1~100μmであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性骨材の表面に、樹脂粘結剤からなるコーティング層が被覆されてなるレジンコーテッドサンドにおいて、
前記コーティング層の外表面に、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末が付着せしめられていることを特徴とするレジンコーテッドサンド。
【請求項2】
前記脂肪酸アミド類の粉末の平均粒子径が1~100μmである請求項1に記載のレジンコーテッドサンド。
【請求項3】
前記ステアリン酸カルシウムの粉末の平均粒子径が1~100μmである請求項1又は請求項2に記載のレジンコーテッドサンド。
【請求項4】
前記脂肪酸アミド類の融点が90℃以上である請求項1又は請求項2に記載のレジンコーテッドサンド。
【請求項5】
前記脂肪酸アミド類が、エチレンビスステアリン酸アミド、ニコチン酸アミド、アセトアニリド、ベンズアミド及びメチレンビスステアリン酸アミドからなる群より選ばれる一種以上のものである請求項1又は請求項2に記載のレジンコーテッドサンド。
【請求項6】
前記脂肪酸アミド類の粉末が、前記耐火性骨材の100質量部に対して0.05~1.0質量部の割合において付着せしめられている請求項1又は請求項2に記載のレジンコーテッドサンド。
【請求項7】
前記ステアリン酸カルシウムの粉末が、前記耐火性骨材の100質量部に対して0.05~1.0質量部の割合において付着せしめられている請求項1又は請求項2に記載のレジンコーテッドサンド。
【請求項8】
耐火性骨材の表面に、樹脂粘結剤からなるコーティング層を形成し、
かかるコーティング層が形成された耐火性骨材に対して、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末を添加し、混練乃至は混合せしめることにより、該コーティング層の外表面に、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末を付着せしめることを特徴とするレジンコーテッドサンドの製造方法。
【請求項9】
前記コーティング層が形成された耐火性骨材に対して、前記脂肪酸アミド類の粉末を添加し、混練乃至は混合せしめた後、更に前記ステアリン酸カルシウムの粉末を添加し、混練乃至は混合せしめる請求項8に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
【請求項10】
前記脂肪酸アミド類の粉末の平均粒子径が1~100μmである請求項8又は請求項9に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
【請求項11】
前記ステアリン酸カルシウムの粉末の平均粒子径が1~100μmである請求項8又は請求項9に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
【請求項12】
前記脂肪酸アミド類が、エチレンビスステアリン酸アミド、ニコチン酸アミド、アセトアニリド、ベンズアミド及びメチレンビスステアリン酸アミドからなる群より選ばれる一種以上のものである請求項8又は請求項9に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
【請求項13】
前記脂肪酸アミド類の粉末が、前記耐火性骨材の100質量部に対して0.05~1.0質量部の割合において添加される請求項8又は請求項9に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
【請求項14】
前記ステアリン酸カルシウムの粉末が、前記耐火性骨材の100質量部に対して0.05~1.0質量部の割合において添加される請求項8又は請求項9に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジンコーテッドサンド及びその製造方法に係り、特に、従来品より優れた耐ブロッキング性を発揮するレジンコーテッドサンド、並びに、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シェルモールド鋳造に代表される砂型鋳造においては、レジンコーテッドサンド(以下、適宜「RCS」という)を用いて製造(造型)された砂型(鋳型)が、広く一般的に用いられている。そのような砂型(鋳型)製造の際に用いられるRCSとは、耐火性骨材の表面が、フェノール樹脂等の樹脂粘結剤(バインダー)からなるコーティング層にて被覆されてなるものであり、通常、耐火性骨材及びフェノール樹脂等の樹脂粘結剤と共に、必要に応じてヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤を混練乃至は混合することにより、製造されている。
【0003】
そのようにして製造されたRCSは、半永久的な貯蔵安定性を有するものの、高温多湿環境下において保管すると、表面のコーティング層を構成するフェノール樹脂等の樹脂粘結剤が吸湿し、その結果、RCSの粒子同士が固着する「ブロッキング」という現象が発生する恐れがある。このため、従来より、ブロッキングの発生を抑制し得る、換言すれば、耐ブロッキング性に優れたRCSの研究・開発が進められているのであり、例えば、特許文献1(特開2017-77571号公報)においては、人工砂及び/又は天然砂に由来する骨材と、粘結剤と、必要に応じて硬化剤と、ブロッキング防止剤とを含み、かかるブロッキング防止剤が脂肪酸アミドであることを特徴とする鋳型用粘結剤含有砂が、提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示のものを始めとする、これまでに提案等されている耐ブロッキング性に優れたRCSについて、本発明者が確認したところ、それらは何れも一定の耐ブロッキング性を発揮するものであることが認められたものの、近年では、RCSに対して従来以上に優れた(高い)耐ブロッキング性が求められており、従来品より優れた耐ブロッキング性を発揮するRCSの開発が求められているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、従来品より優れた耐ブロッキング性を発揮するレジンコーテッドサンドを提供することにある。また、本発明は、そのような優れた特性を有するレジンコーテッドサンドを有利に製造することが出来る方法を提供することも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は、かくの如き課題の解決のために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されるものではなく、明細書全体の記載に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0008】
(1) 耐火性骨材の表面に、樹脂粘結剤からなるコーティング層が被覆されてなるレジンコーテッドサンドにおいて、前記コーティング層の外表面に、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末が付着せしめられていることを特徴とするレジンコーテッドサンド。
(2) 前記脂肪酸アミド類の粉末の平均粒子径が1~100μmである前記態様(1)に記載のレジンコーテッドサンド。
(3) 前記ステアリン酸カルシウムの粉末の平均粒子径が1~100μmである前記態様(1)又は前記態様(2)に記載のレジンコーテッドサンド。
(4) 前記脂肪酸アミド類の融点が90℃以上である前記態様(1)又は前記態様(2)に記載のレジンコーテッドサンド。
(5) 前記脂肪酸アミド類が、エチレンビスステアリン酸アミド、ニコチン酸アミド、アセトアニリド、ベンズアミド及びメチレンビスステアリン酸アミドからなる群より選ばれる一種以上のものである前記態様(1)又は前記態様(2)に記載のレジンコーテッドサンド。
(6) 前記脂肪酸アミド類の粉末が、前記耐火性骨材の100質量部に対して0.05~1.0質量部の割合において付着せしめられている前記態様(1)又は前記態様(2)に記載のレジンコーテッドサンド。
(7) 前記ステアリン酸カルシウムの粉末が、前記耐火性骨材の100質量部に対して0.05~1.0質量部の割合において付着せしめられている前記態様(1)又は前記態様(2)に記載のレジンコーテッドサンド。
(8) 耐火性骨材の表面に、樹脂粘結剤からなるコーティング層を形成し、かかるコーティング層が形成された耐火性骨材に対して、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末を添加し、混練乃至は混合せしめることにより、該コーティング層の外表面に、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末を付着せしめることを特徴とするレジンコーテッドサンドの製造方法。
(9) 前記コーティング層が形成された耐火性骨材に対して、前記脂肪酸アミド類の粉末を添加し、混練乃至は混合せしめた後、更に前記ステアリン酸カルシウムの粉末を添加し、混練乃至は混合せしめる前記態様(8)に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
(10) 前記脂肪酸アミド類の粉末の平均粒子径が1~100μmである前記態様(8)又は前記態様(9)に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
(11) 前記ステアリン酸カルシウムの粉末の平均粒子径が1~100μmである前記態様(8)又は前記態様(9)に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
(12) 前記脂肪酸アミド類が、エチレンビスステアリン酸アミド、ニコチン酸アミド、アセトアニリド、ベンズアミド及びメチレンビスステアリン酸アミドからなる群より選ばれる一種以上のものである前記態様(8)又は前記態様(9)に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
(13) 前記脂肪酸アミド類の粉末が、前記耐火性骨材の100質量部に対して0.05~1.0質量部の割合において添加される前記態様(8)又は前記態様(9)に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
(14) 前記ステアリン酸カルシウムの粉末が、前記耐火性骨材の100質量部に対して0.05~1.0質量部の割合において付着せしめられている前記態様(8)又は前記態様(9)に記載のレジンコーテッドサンドの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明に従うレジンコーテッドサンド(RCS)にあっては、耐火性骨材の表面を被覆するコーティング層の外表面に、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末が付着せしめられて、構成されているところ、そのような二種類の粉末をコーティング層の外表面に付着せしめていることによって、それら粉末の一種のみを付着せしめたRCSや、それら成分をコーティング層に含有せしめてなるRCS等と比較して、より優れた疎水性乃至撥水性を発揮することとなり、以て、本発明に従うレジンコーテッドサンドにあっては、従来品と比較して、より優れた耐ブロッキング性を発揮するものとなっているのである。
【0010】
また、本発明に従うレジンコーテッドサンドの製造方法によれば、上述の如き優れた耐ブロッキング性を発揮するレジンコーテッドサンドを有利に製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ところで、本発明に従うレジンコーテッドサンド(RCS)を構成する耐火性骨材としては、従来から鋳型用として利用されている各種の耐火性の粒状乃至は粉状材料であれば、何れも用いることが可能である。具体的には、ケイ砂、再生ケイ砂をはじめ、アルミナサンド、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド等の特殊砂や、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子;アルミナ系粒子、ムライト系粒子等の人工粒子及びこれらの再生粒子;アルミナボール、マグネシアクリンカー等を、例示することが出来る。なお、これらの耐火性骨材は、鋳型造型に未使用のものは勿論のこと、鋳型の造型に一回或いは複数回、使用された後に回収されたもの(回収骨材)や再生されたもの(再生骨材)であっても、更には、そのような回収骨材や再生骨材に、鋳型造型に未使用の骨材を加えて分級、混合せしめてなるものであっても、何等差支えない。そして、そのような耐火性骨材は、一般に、AFS指数で40~130程度の粒度のものとして、好ましくは、60~110程度の粒度のものとして、用いられることとなる。
【0012】
また、本発明に従うRCSは、上述の如き耐火性骨材に、所定の樹脂粘結剤を混練せしめて、かかる耐火性骨材の表面を、樹脂粘結剤からなるコーティング層にて被覆することによって形成されるものであるが、その際に用いられる樹脂粘結剤としては、従来から公知の各種のものを挙げることが出来る。例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂、アミンポリオール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等の中から、適宜に選択して用いられることとなるが、本発明にあっては、フェノール樹脂が有利に用いられることとなる。
【0013】
ここで、本発明において樹脂粘結剤として好適に用いられるフェノール樹脂は、よく知られているように、フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒又は塩基性触媒の存在下において反応させることにより得られる、固体状乃至は液体状(ワニス形態のものやエマルジョン形態のものを含む)の縮合生成物であって、そこで用いられる触媒の種類によって、ノボラック型又はレゾール型と称されるものである。フェノール樹脂は、所定の硬化剤乃至は硬化触媒の存在下又は非存在下において加熱することにより、熱硬化性を発現する樹脂である。
【0014】
なお、そのようなフェノール樹脂の原料として用いられるフェノール類は、フェノール及びフェノールの誘導体を意味するものであって、例えば、フェノールの他に、クレゾール、キシレノール、p-tert-ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール、レゾルシノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA等の多価フェノール、ナフトール類等、及びそれらの混合物等の公知のものを挙げることが出来、そして、それらのうちの一種が単独で、或いは、二種以上のものが組み合わされて、用いられることとなる。
【0015】
また、アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒドの水溶液の形態であるホルマリンの他、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド等を挙げることが出来、更にそれら以外の公知のアルデヒド化合物も適宜に用いることが出来る。そして、それらアルデヒド類は、単独で用いられても、二種以上を組み合わせて用いられても、何等差支えない。
【0016】
本発明において用いられるノボラック型フェノール樹脂は、上記したフェノール類とアルデヒド類とを用いて、よく知られているように、酸性触媒、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸等の有機酸、更には、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酸化マグネシウム、酢酸亜鉛等の酸性物質にて縮合反応させて、形成されるものである。なお、その際、アルデヒド類(F)とフェノール類(P)の配合モル比(F/P)としては、用いられる反応触媒の種類等に応じて、適宜に選定されるところであるが、好ましくは0.55~0.80の範囲内において選定されることとなる。
【0017】
一方、レゾール型フェノール樹脂は、上記のフェノール類とアルデヒド類とを用いて、従来と同様にして、公知の塩基性触媒にて縮合反応せしめることにより、形成されることとなる。なお、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や、アルカリ土類金属の酸化物を用いることが出来る他、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ナフタレンジアミン等のアミン類、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミンや、その他2価金属のナフテン酸塩や2価金属の水酸化物等を用いることが出来る。また、そのような縮合反応におけるアルデヒド類とフェノール類の配合モル比(F/P)は、そこで用いられる反応触媒の種類等に応じて、適宜に選定されるところであるが、一般に1.1~4.0の範囲内において選定されることとなる。
【0018】
なお、上記のノボラック型フェノール樹脂やレゾール型フェノール樹脂は、それぞれ、単独で用いられる他、適宜の割合で混合して用いられても、何等差支えなく、また、公知の如く、フェノールの一部をビスフェノールA、ナフトール等の成分に変更して得られる変性フェノール樹脂も使用可能であり、更には、ベンジリックエーテル型のフェノール樹脂として用いることも可能である。
【0019】
また、上記したフェノール樹脂の如き樹脂粘結剤を、耐火性骨材に混練せしめるに際して、かかる樹脂粘結剤の配合量としては、使用する樹脂の種類や要求される鋳型の強度等を考慮して、適宜に決定されるところであって、一義的に規定され得るものではないが、一般的には、耐火性骨材の100質量部に対して、0.2~10質量部程度の範囲内であり、好ましくは0.5~8質量部、更に好ましくは1~5質量部の範囲内とされることとなる。
【0020】
そして、本発明に従うレジンコーテッドサンド(RCS)にあっては、上述した樹脂粘結剤からなるコーティング層の外表面に、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末が付着せしめられて、構成されているところに、大きな技術的特徴が存しているのである。即ち、本発明に従うRCSは、従来よりRCSにおいて滑剤やブロッキング防止剤として用いられている脂肪酸アミド類及びステアリン酸カルシウムを、粉末の形態で、樹脂粘結剤からなるコーティング層の外表面に付着せしめて、構成されているところから、従来の、i)樹脂粘結剤からなるコーティング層に脂肪酸アミド類等を含有せしめたRCSや、ii)脂肪酸アミド類又はステアリン酸カルシウムを単独で、コーティング層の外表面に付着せしめてなるRCS等と比較して、格段に疎水性乃至撥水性が向上し、以て、従来品を超える非常に優れた耐ブロッキング性を発揮することとなるのである。
【0021】
ここで、コーティング層の外表面に付着せしめられる脂肪酸アミド類及びステアリン酸カルシウムは、粉末であれば、その大きさは特に限定されるものではないが、平均粒子径が小さ過ぎる脂肪酸アミド類等の粉末を用いると、コーティング層の外表面に付着せしめる際の手法等によっては、何れか一方の粉末がコーティング層上に偏在する恐れがあり、その一方、平均粒子径が大き過ぎる脂肪酸アミド類等の粉末を用いると、RCS製造から時間が経過した場合にRCS(コーティング層の外表面)より粉末が脱落する恐れがある。このため、本発明において用いられる脂肪酸アミド類及びステアリン酸カルシウムの各粉末の平均粒子径は、脂肪酸アミド類の粉末については1~100μmであることが好ましく、より好ましくは1~50μmであり、最も好ましくは3~30μmである。また、ステアリン酸カルシウムの粉末については、その平均粒子径は1~100μmであることが好ましく、好ましくは1~90μmであり、最も好ましくは2~50μmである。なお、本発明で用いられる脂肪酸アミド類等の粉末について、その平均粒子径の求め方としては、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分析装置(製品名:MT3200II)を用いて、試料(脂肪酸アミド類の粉末、ステアリン酸カルシウムの粉末)の粒度分布から積算値50%の粒子径を平均粒子径(D50)とする方法等を、挙げることが出来る。
【0022】
また、コーティング層の外表面に付着している、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末の合計量が少な過ぎると、本発明の効果を享受することが出来ない恐れがあり、一方でかかる合計量が多過ぎても、その量に見合った効果は発揮されず、また、微細な耐火性骨材粒子に形成されたコーティング層に付着可能な量も必然的に制限される。このため、本発明において、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末は、それらの各々が、耐火性骨材の100質量部に対して0.05~1.0質量部の割合となるように、コーティング層の外表面に付着せしめられることが好ましい。なお、RCSにおけるコーティング層の外表面に付着している脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末は、所定量のRCSを蒸留水中で撹拌することで、コーティング層から浮遊物として分離させ、その後、ろ過処理等を実施することにより、採取することが可能である。
【0023】
さらに、本発明において用いられる脂肪酸アミド類としては、粉末の形態にてコーティング層の外表面に付着せしめることにより、RCSに対して疎水性乃至撥水性を付与し得るものであれば、特に限定されることなく使用することが可能である。具体的には、疎水性を示す脂肪酸アミド類が有利に使用されるところ、本発明においては、疎水性を示す値としてのオクタノール/水分配係数のlog値であるLogPの値が、0以上である脂肪酸アミド類が有利に用いられ、より有利には0.5以上のものが、更に有利には1以上の値を示すものが用いられる。ここで、疎水性を示すLogPとは分配係数Pの常用対数を意味し、ある物質が油(一般的に1-オクタノール)と水の2相系の平衡でどのように分配されるかを定量的な数値として示す物性値であり、下記の(1)式にて表わされるものである。
LogP=Log([C oil ]/[C water]) ・・・(1)
上記(1)式において、[C oil]は油相中(1-オクタノール)における測定対象たる物質(脂肪酸アミド類)のモル濃度を表わし、[C water]は水相中の物質(脂肪酸アミド類)のモル濃度を表わす。LogP値が0よりプラス側に大きくなればなるほど疎水性(油溶性)が増し、0よりマイナス側で絶対値が大きくなればなるほど水溶性が増す。LogPは物質の水溶性と負の相関があり、親疎水性を見積もるパラメータとして広く利用されるものである。
【0024】
また、本発明においては、コーティング層への良好な付着状態が長期間に亘って維持され得るとの観点より、融点(明確な融点を示さないものについては、溶融範囲の下限温度)が90℃以上の脂肪酸アミド類が、特に有利に用いられる。本明細書及び特許請求の範囲において、脂肪酸アミド類の融点とは、JIS-K-0064:1992に規定される測定方法に従って測定される融点を意味するものである。融点が90℃以上である脂肪酸アミド類としては、エチレンビスステアリン酸アミド(溶融範囲:140~145℃、LogP値:約15)、ニコチン酸アミド(溶融範囲:128~131℃、LogP値:-0.38)、アセトアニリド(融点:114.3℃、LogP値:1.16)、ベンズアミド(溶融範囲:127~130℃、LogP値:0.64)、メチレンビスベヘン酸アミド(融点:141.9℃)、メチレンビスラウリン酸アミド(融点:155.1℃)、メチレンビスカプリン酸アミド(融点:160.2℃)やメチレンビスステアリン酸アミド(溶融範囲:140~145℃、LogP値:12.5)等を例示することが出来、これらの中でも、特に、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、アセトアニリド、ベンズアミドが有利に用いられ、更にこれらの中でも、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミドが特に有利に用いられる。本発明においては、上述した公知の脂肪酸アミド類の中から一種又は二種以上のものが適宜に選択されて、使用することが可能である。
【0025】
なお、本発明に従うレジンコーテッドサンド(RCS)においては、RCSや鋳型の物性改善等を目的として、従来より一般的に用いられている各種の添加剤を、必要に応じて使用することも可能である。例えば、鋳型の硬化速度の向上に寄与する添加剤として、安息香酸、サリチル酸、パラアミノ安息香酸、アントラニル酸、フタル酸やテレフタル酸等の芳香族カルボン酸類を、樹脂粘結剤としての樹脂の製造時に、若しくはRCSの製造時に、含有せしめることが可能である。また、耐火性骨材と樹脂粘結剤との結合を強化するためのカップリング剤を含有せしめることも可能であり、例えば、シランカップリング剤、ジルコンカップリング剤やチタンカップリング剤等を、樹脂、RCSの何れの製造時にも含有させることが出来る。更には、離型剤としてのパラフィン、ワックス、軽油、マシン油、スピンドル油、絶縁油、廃油、植物油、脂肪酸エステル、有機酸、黒鉛微粒子、雲母、蛭石、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤の他、鋳型の崩壊性を向上させる崩壊性向上剤や、鋳型製造時のRCSの流動性等を向上させる滑剤等を、使用することも可能である。
【0026】
ところで、上述せる如き成分を用いて、本発明に従うRCSを製造するに際しては、所定の耐火性骨材に対して、樹脂粘結剤たる樹脂(及び、必要に応じて他の成分)が、常法に従って混練せしめられることとなるのであるが、そこで採用される製造法としては、特に限定されるものではなく、ドライホットコート法やセミホットコート法、コールドコート法、粉末溶剤法等の、従来より公知の各種の方法が、何れも採用され得るところである。尤も、本発明にあっては、特に、ワールミキサーやスピードミキサー等の混練機内で、予熱された耐火性骨材と樹脂粘結剤とを混練した後、ヘキサメチレンテトラミン等の所定の硬化剤や硬化促進剤の水溶液、更には、必要に応じて使用される他の成分等を加えると共に、送風冷却によって塊状内容物を粒状に分離させて、樹脂粘結剤からなるコーティング層が耐火性骨材粒子の表面に形成されてなる粒状物とし、更に、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸の粉末をミキサー内に加える、所謂ドライホットコート法の採用が推奨される。
【0027】
また、本発明において、樹脂粘結剤からなるコーティング層が耐火性骨材粒子の表面に形成されてなる粒状物に、脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末を付着せしめる際の手法(手順)としては、特に限定されるものではなく、例えば、それらのうちの何れか一方の粉末をミキサー内に投入し、混練(混合)した後に他方の粉末を投入する手法や、それら粉末の混合物を一度にミキサー内に投入する手法等が採用可能であるが、好ましくは、先ずは脂肪酸アミド類の粉末を投入し、混練(混合)することにより上記粉末の表面に付着せしめた後、ステアリン酸カルシウムの粉末を投入し、混練(混合)することにより、樹脂粘結剤からなるコーティング層の外表面に脂肪酸アミド類の粉末及びステアリン酸カルシウムの粉末を付着せしめることが好ましい。
【0028】
そして、以上の如くして得られる、本発明に従うレジンコーテッドサンド(RCS)にあっては、その表面に脂肪酸アミド類及びステアリン酸カルシウムの各粉末が効果的に存在せしめられているところから、それら粉末の一種のみを付着せしめたRCSや、それら成分をコーティング層に含有せしめてなるRCS等と比較して、より優れた疎水性乃至撥水性を発揮することとなり、以て、本発明に従うレジンコーテッドサンドにあっては、従来品と比較して、より優れた耐ブロッキング性を発揮することとなり、また、それを用いて得られる鋳型にあっても、優れた特性を発揮することとなるのである。
【0029】
なお、本発明に従うレジンコーテッドサンド(RCS)を用いて、シェルモールド鋳型の如き、所定の鋳型を造型するに際しては、かかるRCSの加熱硬化を図るべく、加熱下において、目的とする鋳型の造型が行なわれることとなるが、そのような加熱造型方法としては、特に限定されるものではなく、従来から公知の手法が、何れも有利に用いられることとなる。例えば、上述せる如きRCSを、目的とする鋳型を与える所望の形状空間(成形キャビティ)を有する、150~300℃程度に予熱された成形型内に、重力落下方式や吹込み方式等によって充填せしめ、硬化させた後、かかる成形型から硬化した鋳型を抜型することにより、目的とする鋳造用鋳型を得ることが可能である。
【実施例0030】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、何れも質量基準にて示されている。
【0031】
先ず、以下の手順に従い、樹脂粘結成分としてのフェノール樹脂を含む二種類のフェノール樹脂組成物を準備した。
【0032】
-フェノール樹脂組成物aの準備-
フェノールの940部と47%ホルマリン水溶液の402部とを用い、これにシュウ酸の2.8部を添加して100℃で5時間、反応させ、引き続いて50トールの減圧下で180℃まで加熱した後、脱水及び脱フェノールを行なった。次いで、溶融状態の反応物にシランカップリング剤の9部を添加し、十分に撹拌混合することにより、重量平均分子量(Mw)が1500のノボラック型フェノール樹脂を得、かかるノボラック型フェノール樹脂のみを用いてフェノール樹脂組成物aとした。
【0033】
-フェノール樹脂組成物bの準備-
上記したノボラック型フェノール樹脂の製造工程における溶融状態の反応物に対して、シランカップリング剤の9部と共にエチレンビスステアリン酸アミドの27部を添加し、十分に撹拌混合することにより、エチレンビスステアリン酸アミドを内包する、重量平均分子量(Mw)が1500のノボラック型フェノール樹脂を得た。この、エチレンビスステアリン酸アミドを内包するノボラック型フェノール樹脂のみを用いて、フェノール樹脂組成物bとした。
【0034】
上記に従って準備したフェノール樹脂組成物a又はb、脂肪酸アミド類及びステアリン酸カルシウムを、下記表1~表3に示す割合において用いて、以下の示す手法に従って22種類のレジンコーテッドサンド(RCS)を製造した(実施例1~21、比較例1~5)。なお、RCS製造に際しては、エチレンビスステアリン酸アミド粉末として、平均粒子径が5μm、10μm、25μm、40μm、50μm又は100μmのものを用い、また、平均粒子径が50μmのニコチン酸アミド粉末、平均粒子径が50μmのアセトアニリド粉末、平均粒子径が50μmのベンズアミド粉末、平均粒子径が50μmのメチレンビスステアリン酸アミド、並びに、平均粒子径が10μm、50μm、80μm、120μmのステアリン酸カルシウム粉末を用いた。
【0035】
-実施例1-
150℃に加熱した新砂(オーストラリア産の天然ケイ砂、商品名:フラタリー)の100部に、フェノール樹脂組成物aの1.5部を加えて、スピードミキサーで50秒間、混練した後、ヘキサメチレンテトラミンの0.23部を1.5部の水に溶解してなる溶液を添加して、砂が個々の粒子に分離するようになるまで混練した。かかる混練後、エチレンビスステアリン酸アミド(平均粒子径:5μm)の0.1部を添加して20秒間、混合し、更にステアリン酸カルシウムの0.1部を添加して20秒間、混合した後、ミキサーから排出することにより、目的とするRCSを得た(実施例1)。
【0036】
-実施例2-
エチレンビスステアリン酸アミド(平均粒子径:5μm)の0.1部に代えて、エチレンビスステアリン酸アミド(平均粒子径:10μm)の0.05部を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(実施例2)。
【0037】
-実施例3-
エチレンビスステアリン酸アミド(平均粒子径:10μm)の使用量を0.1部とし、ステアリン酸カルシウムの使用量を0.03部としたこと以外は、実施例2と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(実施例3)。
【0038】
-実施例4~実施例7-
ステアリン酸カルシウムの使用量を0.05部(実施例4)、0.1部(実施例5)、0.15部(実施例6)、又は0.2部(実施例7)としたこと以外は、実施例3と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(実施例4~実施例7)。
【0039】
-実施例8-
エチレンビスステアリン酸アミド(平均粒子径:10μm)の使用量を0.125部としたこと以外は、実施例2と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(実施例8)。
【0040】
-実施例9-
フェノール樹脂組成物aに代えてフェノール樹脂組成物bを用いたこと以外は、実施例8と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(実施例9)。
【0041】
-実施例10-
エチレンビスステアリン酸アミド(平均粒子径:10μm)の使用量を0.2部としたこと以外は、実施例2と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(実施例10)。
【0042】
-実施例11~実施例14-
エチレンビスステアリン酸アミド(平均粒子径:5μm)に代えて、平均粒子径が異なるエチレンビスステアリン酸アミドを用いたこと以外は、実施例1と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(実施例11~実施例14)。
【0043】
-実施例15~実施例18-
エチレンビスステアリン酸アミド(平均粒子径:5μm)に代えて、ニコチン酸アミド(実施例15)、アセトアニリド(実施例16)、ベンズアミド(実施例17)、又はメチレンビスステアリン酸アミド(実施例18)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(実施例15~実施例18)。
【0044】
-実施例19~実施例21-
平均粒子径が10μmのステアリン酸カルシウムに代えて、平均粒子径が異なるステアリン酸カルシウムを用いたこと以外は、実施例5と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(実施例19~実施例21)。
【0045】
-比較例1-
150℃に加熱した新砂(オーストラリア産の天然ケイ砂、商品名:フラタリー)の100部に、フェノール樹脂組成物bの1.5部を加えて、スピードミキサーで50秒間、混練した後、ヘキサメチレンテトラミンの0.23部を1.5部の水に溶解してなる溶液を添加して、砂が個々の粒子に分離するようになるまで混練した。次いで、エチレンビスステアリン酸アミド(平均粒子径:10μm)の0.1部を添加して20秒間、混合した後、ミキサーから排出することにより、目的とするRCSを得た(比較例1)。
【0046】
-比較例2、比較例3-
エチレンビスステアリン酸アミド(平均粒子径:10μm)の使用量を変更した(比較例2:0.125部、比較例3:0.2部)こと以外は、比較例1と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(比較例2、比較例3)。
【0047】
-比較例4-
150℃に加熱した新砂(オーストラリア産の天然ケイ砂、商品名:フラタリー)の100部に、フェノール樹脂組成物aの1.5部を加えて、スピードミキサーで50秒間、混練した後、ヘキサメチレンテトラミンの0.23部を1.5部の水に溶解してなる溶液を添加して、砂が個々の粒子に分離するようになるまで混練した。次いで、ステアリン酸カルシウムの0.1部を添加して20秒間、混合した後、ミキサーから排出することにより、目的とするRCSを得た(比較例4)。
【0048】
-比較例5-
ステアリン酸カルシウムの使用量を0.2部としたこと以外は、比較例4と同様の条件及び手法に従い、目的とするRCSを得た(比較例5)。
【0049】
以上の如くして得られたRCSの各特性を、下記に示す手法に従って測定乃至は評価した。測定結果、算出値及び評価結果を、下記表1乃至表5に示す。
【0050】
-IRピーク比の算出-
ビーカー内の100gのRCSに対して、50gの蒸留水を加え、撹拌後、静置する。ビーカー内の浮遊物を含む上澄み液をろ紙にてろ過し、ろ紙上の残渣を90℃に保たれた乾燥機内で乾燥させる。以後、かかる乾燥物をRCS抽出試料という。その一方、めのう製乳鉢にてKBrを粉砕し、この粉砕物に、別途準備したRCS抽出試料の0.5~1mgを加え、乳鉢内ですり混ぜる。その後、乳鉢内の混合物にて錠剤を作製し、IR測定用のサンプルとする。フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、先ず、KBrにてバックグラウンド測定を実施した後、サンプルの測定を実施する。得られた赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)におけるNHのピーク(3300cm-1付近におけるピーク):Aと、CH2CH3のピーク(2900cm-1付近におけるピーク):Bより、IRピーク比(A/B)を算出する。赤外吸収スペクトル上にNHのピーク(3300cm-1付近におけるピーク):Aが認められない場合は、IRピーク比(A/B)は0とする。各RCSについて算出したIRピーク比を、下記表1乃至表3に示す。このIRピーク比が大きいほど、RCSの表面に脂肪酸アミド類が良好に付着していることを、また、IRピーク比が0であることは、RCS表面に脂肪酸アミド類が存在していないことを、各々、意味するものである。
【0051】
-蛍光X線分析(Ca検出)-
RCS中のカルシウムの含有量を、蛍光X線分析法に従って測定し、測定されたカルシウム含有量が50ppm以上であるRCSについては○と、50ppm未満であるRCSについては×と、評価する。
【0052】
-JIS式冷間抗折力-
RCSを用いて、JIS-K-6910に準拠してJIS式テストピース(10mm×10mm×60mm、焼成条件:250℃×60秒間)を作製し、得られたJIS式テストピースについて、JACT試験法:SM-1に準じて曲げ強度(JIS式冷間抗折力)[kgf/cm2 ]を測定する。なお、表1乃至表3に示す「TP重量」とは、JACT試験法:SM-1に供した5本のテストピース(TP)の合計重量である。また、表1乃至表3に示す測定結果は、製造直後のRCSを用いて作製されたTPについて測定されたものである一方、表4に示す測定結果については、表4に示す各環境下において静置した実施例5、比較例3、比較例4及び比較例5に係る各RCSを用いてTPを作製し、かかるTPについての測定結果である。
【0053】
-RCS融着点-
製造直後のRCSを用いて、JACT試験法:C-1(融着点試験法)に準じてRCSの融着温度(RCS融着点)を測定する。
【0054】
-ブロック率-
製造直後のRCSの150gをディスカップに量り取る。このディスカップを、40℃(温度)×80%(湿度)に保たれた恒温恒湿機内に3時間若しくは5時間、静置する。かかる静置の後、ディスカップ内のRCSを静かに排出し、ブロック化している塊状のRCSを取り除く。ブロック化していないRCSの重量:α(g)を測定し、下記式よりブロック率(%)を算出する。
[ブロック率](%)=[(150-α)/150]×100 ・・・式
【0055】
また、実施例5、比較例3、比較例4及び比較例5に係るRCSについては、各々、40℃に保たれた乾燥機内に3時間若しくは5時間、静置し、その後に上記手順に従い、ブロック率(%)を算出する。その結果を、下記表5に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
表1乃至表5の結果からも明らかなように、本発明に従うレジンコーテッドサンド(RCS)にあっては、コーティング層の外表面に脂肪酸アミド類又はステアリン酸カルシウムのみを付着せしめたRCS(比較例1~比較例5)と比較して、非常に優れた耐ブロッキング性を発揮し、また、それらを用いて得られる鋳型にあっても、十分な強度を有するものであることが認められるのである。