(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104842
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】被処理物の処理方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/14 20190101AFI20240730BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20240730BHJP
C02F 3/28 20230101ALI20240730BHJP
【FI】
C02F11/14 ZAB
C02F3/12 B
C02F3/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009231
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】矢出 乃大
(72)【発明者】
【氏名】松林 未理
【テーマコード(参考)】
4D028
4D040
4D059
【Fターム(参考)】
4D028BD17
4D028BE04
4D028BE08
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4D059BJ01
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4D059DA01
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4D059DA17
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4D059DA45
4D059DA46
4D059DB06
4D059DB11
4D059DB22
4D059DB23
4D059DB24
4D059DB25
4D059EA01
4D059EA05
4D059EA06
4D059EA20
4D059EB01
(57)【要約】
【課題】有機性排水などの被処理物を生物処理する際に発生する汚泥を簡易に低コストで確実に濃縮または脱水できる処理方法を提供する。
【解決手段】本処理方法は、被処理物を生物処理する生物処理工程と、前記生物処理工程で生物処理した汚泥に、汚泥改質剤を添加し、前記汚泥と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質工程と、前記改質汚泥に凝集剤を添加し、前記改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集工程と、前記凝集汚泥を固液分離する固液分離工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を生物処理する生物処理工程と、
前記生物処理工程で生物処理した汚泥に、汚泥改質剤を添加し、前記汚泥と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質工程と、
前記改質汚泥に凝集剤を添加し、前記改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集工程と、
前記凝集汚泥を固液分離する固液分離工程と、
を含むことを特徴とする被処理物の処理方法。
【請求項2】
前記汚泥改質工程は、前記生物処理した汚泥に加えて、前記被処理物が供給されることを特徴とする請求項1に記載の被処理物の処理方法。
【請求項3】
前記固液分離工程で分離された分離水を前記生物処理工程に返送する返送工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の被処理物の処理方法。
【請求項4】
前記汚泥改質剤は、酸化剤および酸の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載の被処理物の処理方法。
【請求項5】
前記汚泥改質工程は、前記汚泥改質剤とともに短繊維助剤を前記汚泥に添加することを特徴とする請求項1に記載の被処理物の処理方法。
【請求項6】
前記生物処理工程で生物処理した汚泥の性状を測定する汚泥性状測定工程と、
前記汚泥の性状の測定値に基づいて、前記汚泥改質剤の添加率を決定する添加率決定工程と、をさらに含み、
前記汚泥改質工程は、前記生物処理工程で生物処理した汚泥に、前記決定された添加率で汚泥改質剤を添加し、前記汚泥と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成することを特徴とする請求項1に記載の被処理物の処理方法。
【請求項7】
前記汚泥の性状は、pH計、ORP(酸化還元電位)計、温度計、MLSS計(汚泥濃度計)、呼吸速度計、DO(溶存酸素)計、残留塩素計の少なくとも1つを用いて測定されることを特徴とする請求項6に記載の被処理物の処理方法。
【請求項8】
前記生物処理工程は、好気性生物処理工程であり、
前記固液分離工程で分離された分離水を前記好気性生物処理工程に返送することを特徴とする請求項1に記載の被処理物の処理方法。
【請求項9】
被処理物を生物処理する生物処理手段と、
前記生物処理手段で生物処理した汚泥に汚泥改質剤を添加し、前記汚泥と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質手段と、
前記改質汚泥に凝集剤を添加し、前記改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集手段と、
前記凝集汚泥を濃縮し濃縮分離液及び濃縮汚泥を得る濃縮手段と、
前記濃縮汚泥を脱水し脱水ろ液を得る脱水手段と、
前記濃縮分離液及び前記脱水ろ液を前記生物処理手段へ返送する返送手段と、
を備えていることを特徴とする被処理物の処理装置。
【請求項10】
前記生物処理手段は、好気性生物処理手段であり、前記生物処理手段で生物処理した汚泥が余剰汚泥であることを特徴とする請求項9記載の被処理物の処理装置。
【請求項11】
前記生物処理手段は、嫌気性生物処理手段であり、前記生物処理手段で生物処理した汚泥が消化汚泥であって、前記返送手段は、濃縮分離液及び前記脱水ろ液を所定の好気性生物処理手段へ返送することを特徴とする請求項9記載の被処理物の処理装置。
【請求項12】
前記汚泥改質剤は、酸化剤および酸の少なくとも一方であることを特徴とする請求項9乃至11いずれか一項に記載の被処理物の処理装置。
【請求項13】
前記汚泥改質手段は、短繊維助剤を前記汚泥に添加する短繊維助剤添加手段をさらに備えていることを特徴とする請求項9乃至11いずれか一項に記載の被処理物の処理装置。
【請求項14】
前記汚泥改質手段は、
前記生物処理手段で生物処理した汚泥の性状を測定する汚泥測定センサと、
前記汚泥の性状の測定値に基づいて、前記汚泥改質剤の添加率を決定する添加率決定手段と、
前記決定された添加率で前記汚泥改質剤を前記汚泥に注入する注入手段を備えていることを特徴とする請求項9乃至11いずれか一項に記載の被処理物の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水等の被処理水や有機物を含む被処理物を生物処理したときに発生する汚泥に対する濃縮および脱水の効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
し尿、下水、ごみ浸出水、各種製造工程や飲料食品加工工程やレストラン等の厨房などから排出される有機性排水(以下、被処理水という)は生物処理で有機物等が処理される。被処理水は、SS(懸濁物質)やBOD(生物化学的酸素要求量)や、アンモニア性窒素、有機性窒素、全窒素等を含む。
【0003】
生物処理方法には好気性処理法と嫌気性処理法があり、生物処理で被処理水の有機物等が除去されて、その後の固液分離で生物処理水と汚泥に分離される。生物処理水は次工程で再度処理されたり、放流したり、回収したりされる。固形分離で発生した汚泥や、生物処理から引き抜かれる余剰汚泥や消化汚泥などの汚泥は濃縮および脱水されて、焼却または産廃処分される。
【0004】
好気性生物処理法として、活性汚泥を用いる活性汚泥法が広く普及しているが、そのほかにも微生物を生物担体に付着させたり、包括固定担体で包括固定したりする生物処理法があり、被処理水の有機物濃度等や水質などに基づいて適切な方法が採用される。好気性処理で除去対象の有機物はSSやBODである。
【0005】
被処理物には、処理すべき汚泥(以下、被処理汚泥という)が含まれることがある。被処理汚泥には、有機汚泥と無機汚泥の二種類がある。
有機汚泥の例としては、下水処理場や食品工場、紙・パルプ工場等からの有機性排水を処理する設備で発生する余剰汚泥、消化汚泥、および産業廃棄物として収集される有機性廃棄物が挙げられる。有機汚泥の主成分は鉱物油や動植物油を含む有機物である。
余剰汚泥は、活性汚泥法(標準活性汚泥法とか浮遊式活性汚泥法)や、膜分離活性汚泥法、生物担体を用いる生物膜法などの好気性生物処理の固液分離で系外に排出される汚泥である。余剰汚泥は、好気性生物処理工程で有機性排水の生物処理過程で生成する活性汚泥や有機性排水の未分解の有機物や有機性排水にもともと含まれるSSなど、生物分解できないSSで構成される。
消化汚泥は、メタン発酵装置や消化槽で嫌気性処理された汚泥である。
【0006】
無機汚泥の例としては、土木工事現場や浄水場の凝集沈殿汚泥である上水汚泥、金属めっき工場等の砂や金属成分等を多く含む排水を処理する設備で発生する汚泥が挙げられる。
【0007】
バイオマスや下水汚泥などを嫌気性条件下で有機物を分解する消化槽やメタン発酵槽から排出される汚泥は、消化汚泥である。下水処理で発生する下水汚泥や、好気性処理で発生する余剰汚泥等や、食品残渣などの固形有機物は、主にメタン発酵装置や嫌気性消化槽(以下、メタン発酵装置と嫌気性消化槽を合わせて消化槽)で嫌気性処理され、有機物が除去される。
【0008】
嫌気性処理で除去対象の有機物はCODCr(化学的酸素要求量)である。嫌気性処理で発生するメタンガスを含むバイオガスは燃料等に利用される。嫌気性処理で発生する汚泥(以下、消化汚泥)は嫌気性処理から引き抜かれて濃縮脱水される。その濃縮分離液や脱水ろ液は好気性処理で残留する有機物や窒素を除去し、濃縮汚泥は外部搬出や、脱水機で脱水される。脱水ケーキは産廃として外部搬出し、焼却や堆肥化される。
【0009】
この種の従来技術には、特許文献1、2が知られている。
特許文献1は、金属塩添加槽で有機性汚泥に金属塩を添加する金属塩添加工程、凝集処理槽で有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集処理する汚泥凝集工程と、汚泥槽で有機性汚泥に酸化剤の過硫酸塩を添加して有機性汚泥を改質する汚泥改質工程と、脱水機で改質された有機性汚泥を脱水する汚泥脱水工程とを行う汚泥処理方法を開示している。
特許文献2は、製紙汚泥に対し、下記酸化剤群より選択される一種以上の無機系酸化剤により消臭処理および改質処理を施した後、アクリルアミドを主体とした非イオン性水溶性高分子、ビニル重合系カチオン性水溶性および/またはビニル重合系両性水溶性高分子をこの順に逐次添加し凝集処理し、その後脱水機により脱水することを特徴とする製紙スラッジの脱水方法を開示している。なお、酸化剤群は、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、臭素酸塩、亜臭素酸塩、次亜臭素酸塩、過酸化水素である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-211200号公報
【特許文献2】特開2010-149033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記特許文献1では、凝集フロック生成後に、酸化剤で汚泥の改質を行っても、濃縮性や脱水性は向上しない。すなわち、脱水機導入直前の凝集された有機性汚泥は、凝集剤で粗大凝集フロックを形成しているので、その凝集フロックに酸化剤を添加しても、凝集フロック内部に十分に酸化剤が浸透せず、汚泥の有機性汚泥成分の細胞を酸化剤で破壊できず、結果的に汚泥や凝集フロックからの水分除去が不十分である。そのために濃縮や脱水性は改善されない。
【0012】
また、前記特許文献2においては、製紙汚泥に無機系酸化剤を添加することで、製紙汚泥の消臭処理と、改質処理を行うものであるが、還元性が強い硫化水素など有する製紙汚泥に無機系酸化剤を添加しても、無機系酸化剤は硫化水素などの臭気成分とすぐに反応して、無機系酸化剤が製紙汚泥の改質処理に利用されない。製紙汚泥の消臭処理と、改質処理を行うには過剰の無機系酸化剤が必要となる。
【0013】
そこで、本発明は、有機性排水などの被処理物を生物処理する際に発生する汚泥を簡易に低コストで確実に濃縮または脱水できる処理方法および処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様では、被処理物を生物処理する生物処理工程と、前記生物処理工程で生物処理した汚泥に、汚泥改質剤を添加し、前記汚泥と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質工程と、前記改質汚泥に凝集剤を添加し、前記改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集工程と、前記凝集汚泥を固液分離する固液分離工程と、を含むことを特徴とする被処理物の処理方法が提供される。
【0015】
一態様では、前記汚泥改質工程は、前記生物処理した汚泥に加えて、前記被処理物が供給されることを特徴とする。
一態様では、前記処理方法は、前記固液分離工程で分離された分離水を前記生物処理工程に返送する返送工程を含むことを特徴とする。
一態様では、前記汚泥改質剤は、酸化剤および酸の少なくとも一方であることを特徴とする。
一態様では、前記汚泥改質工程は、前記汚泥改質剤とともに短繊維助剤を前記汚泥に添加することを特徴とする。
【0016】
一態様では、前記処理方法は、前記生物処理工程で生物処理した汚泥の性状を測定する汚泥性状測定工程と、前記汚泥の性状の測定値に基づいて、前記汚泥改質剤の添加率を決定する添加率決定工程と、をさらに含み、前記汚泥改質工程は、前記生物処理工程で生物処理した汚泥に、前記決定された添加率で汚泥改質剤を添加し、前記汚泥と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成することを特徴とする。
一態様では、前記汚泥の性状は、pH計、ORP(酸化還元電位)計、温度計、MLSS計(汚泥濃度計)、呼吸速度計、DO(溶存酸素)計、残留塩素計の少なくとも1つを用いて測定されることを特徴とする。
一態様では、前記生物処理工程は、好気性生物処理工程であり、前記固液分離工程で分離された分離水を前記好気性生物処理工程に返送することを特徴とする。
【0017】
一態様では、被処理物を生物処理する生物処理手段と、前記生物処理手段で生物処理した汚泥に汚泥改質剤を添加し、前記汚泥と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質手段と、前記改質汚泥に凝集剤を添加し、前記改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集手段と、前記凝集汚泥を濃縮し濃縮分離液及び濃縮汚泥を得る濃縮手段と、前記濃縮汚泥を脱水し脱水ろ液を得る脱水手段と、前記濃縮分離液及び前記脱水ろ液を前記生物処理手段へ返送する返送手段と、備えていることを特徴とする被処理物の処理装置が提供される。
【0018】
一態様では、前記生物処理手段は、好気性生物処理手段であり、前記生物処理手段で生物処理した汚泥が余剰汚泥であることを特徴とする。
一態様では、前記生物処理手段は、嫌気性生物処理手段であり、前記生物処理手段で生物処理した汚泥が消化汚泥であって、前記返送手段は、濃縮分離液及び前記脱水ろ液を所定の好気性生物処理手段へ返送することを特徴とする。
一態様では、前記汚泥改質剤は、酸化剤および酸の少なくとも一方であることを特徴とする。
一態様では、前記汚泥改質手段は、短繊維助剤を前記汚泥に添加する短繊維助剤添加手段をさらに備えていることを特徴とする。
一態様では、前記汚泥改質手段は、前記生物処理手段で生物処理した汚泥の性状を測定する汚泥測定センサと、前記汚泥の性状の測定値に基づいて、前記汚泥改質剤の添加率を決定する添加率決定手段と、前記決定された添加率で前記汚泥改質剤を前記汚泥に注入する注入手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
汚泥改質することで、凝集前に汚泥の細胞から水が抜けるので、濃縮脱水性が向上し、汚泥性状変動に合わせて汚泥に適した高分子凝集剤の銘柄を選定する作業が低減できて、高分子凝集剤の管理や運転管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】被処理物の処理装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】汚泥改質装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図4】生物処理装置での生物処理が好気性生物処理である一実施形態を示す模式図である。
【
図5】生物処理装置での生物処理が嫌気性生物処理である一実施形態を示す模式図である。
【
図7】余剰汚泥の改質後の濃縮試験結果を示す表である。
【
図11】異なる性状の混合汚泥を対象とした脱水試験結果を示す表である。
【
図12】異なる性状の混合汚泥を対象とした脱水試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、被処理物を処理するための処理装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、処理装置は、被処理物を生物処理する生物処理装置1と、生物処理で生成され汚泥に、少なくとも1種類の汚泥改質剤を添加し、汚泥と汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質装置3と、改質汚泥に凝集剤を添加し、改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集装置5と、凝集汚泥を固液分離する固液分離装置7と、固液分離装置7で分離された分離水を生物処理装置1に返送する返送ライン10を備えている。
【0022】
図1に示す実施形態では、固液分離装置7は、凝集汚泥を濃縮させて濃縮汚泥と濃縮分離液を生成する濃縮工程を実行する濃縮装置8と、濃縮汚泥を脱水して脱水ケーキと脱水ろ液を生成する脱水工程を実行する脱水装置9を含む。一実施形態では、固液分離装置7は、脱水装置9を含まないこともある。すなわち、固液分離工程では、濃縮工程は行われるが、脱水工程は行われないこともある。
【0023】
被処理物は、被処理水、被処理汚泥、または被処理汚泥を含む被処理水でもよい。被処理水は、し尿、下水、ごみ浸出水、各種製造工程や飲料食品加工工程やレストラン等の厨房などから排出される有機性排水などである。被処理水は、SS(懸濁物質)やBOD(生物化学的酸素要求量)や、アンモニア性窒素、有機性窒素、全窒素等を含む。
【0024】
被処理汚泥は、汚泥濃度やVSS(volatile suspended solid)/SS(suspended solid)に制限はなく、被処理汚泥は、生物処理から排出される余剰汚泥、消化汚泥のほか、生ごみや食品残渣等の固形有機物や凝集沈殿処理汚泥などの無機汚泥である。
または、余剰汚泥または消化汚泥に生ごみ等の固形有機物や凝集沈殿処理汚泥などの無機汚泥が混合されていてもよい。一般には、VSS/SSが低い被処理物は有機物含有量が少ないので、濃縮性や脱水性が良い。
【0025】
有機物の多い下水汚泥や生物処理で排出される余剰汚泥や消化汚泥、生ごみ等の固形有機物などのVSS/SSは80%~99%の範囲であるので、これらの被処理物に本発明を適用すると、濃縮工程で濃縮汚泥濃度が向上し、脱水工程で脱水ケーキの含水率が低下して脱水性能が向上する。特に、難脱水性の被処理物では含水率(日本下水道協会 下水試験方法 上巻(2012年版)下水試験方法 第5編第1章第6節による)の低下が顕著で、脱水改善効果が大きくなる。
【0026】
VSS/SSは被処理物の有機物含有量を示す指標であり、以下のように計算して求める。
VSS/SS=(SS-強熱残留物)÷SS×100(%)
ここで、VSS(volatile suspended solid)は強熱減量であり、SS(suspended solid)は、浮遊物質(mg/L)である。SSに代えてTS(強熱残留物(mg/L))が使用されることもある。
【0027】
本発明は有機物の多い汚泥、VSS/SSの高い汚泥などの被処理物に適用できて、濃縮脱水性の改善効果が顕著である。VSS/SSが20wt/wt%以下の被処理物でも本発明を適用することで濃縮脱水性が改善される。
【0028】
凝集沈殿汚泥などのVSS/SSが低い被処理物でも、藻類などの生物を含む被処理物に本発明を適用することで、濃縮汚泥濃度が高まり、脱水ケーキの含水率が低下し、更に濃縮分離液や脱水ろ液のSSが低下する。濃縮分離液や脱水ろ液のSSが低下することで、それらの返送先である生物処理装置1での汚濁物負荷量が減少して水処理に好都合である。
【0029】
VSS/SSが20wt/wt%以下の被処理物とは、具体的には有機物や藻類発生の多い季節の水道原水を浄水する浄水場で排出される凝集沈殿汚泥や、民間事業所等で無機排水の凝集沈殿処理で発生する凝集沈殿汚泥である。これらに対しても、凝集沈殿汚泥の汚泥改質することで脱水ケーキの含水率を低減させることができる。
【0030】
図1に示す生物処理装置1は、好気性処理法、活性汚泥法、生物膜法、嫌気性処理法、生物学的硝化脱窒法、多段式活性汚泥法、流動担体法、膜分離活性汚泥法等を行うための反応槽であり、必要に応じて曝気装置等が設けられてもよい。生物処理装置1内では、微生物を用いた生物処理が行われる。一実施形態では、生物処理装置1には、活性汚泥を内部に収容した活性汚泥槽が用いられる。
【0031】
生物処理装置1は、有機物を含む被処理水または下水汚泥のような被処理物を生物処理し、固液分離して汚泥と生物処理水を生成する。生物処理は、嫌気性生物処理でも好気性生物処理でもよい。生物処理水は次工程で再度処理されたり、放流したり、回収したりされる。好気性処理で除去対象の有機物はSSやBODである。嫌気性処理で除去対象の有機物はCODCr(化学的酸素要求量)である。一実施形態では、汚泥を含む被処理物は、生物処理装置1を経由しないで汚泥改質装置3に送られてもよい。さらに、一実施形態では、汚泥を含む被処理物は、生物処理装置1と汚泥改質装置3の両方に送られてもよい。汚泥を含む被処理物を生物処理装置1と汚泥改質装置3の両方に送る場合に、それぞれの装置への汚泥を含む被処理物の供給量は任意に決めてよい。
【0032】
汚泥改質装置3は、好気性生物処理で発生する余剰汚泥、または嫌気性生物処理で発生する消化汚泥、またはそれら以外の汚泥を汚泥改質剤で改質し、濃縮および脱水しやすい改質汚泥を生成する。汚泥の改質により、濃縮汚泥や脱水ケーキの臭気対策もできる。汚泥改質剤は、酸化剤および酸の一方または両方であり、市販品が使用でき、液状でも粉末状でも、錠剤でもよい。また、汚泥改質剤の製品そのままを使用してもよく、製品を水道水や生物処理水などの水で任意に希釈して使用してもよい。
【0033】
酸化剤としては、過酸化物、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム(さらし粉)、二酸化塩素、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、3-ブロモ-1-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジクロロ-5-エチル-5-メチルヒダントイン等が挙げられる。過酸化物は、過酢酸、過炭酸塩、過酸化水素や過硫酸塩である。安価で取り扱いが容易な次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
汚泥改質剤としての酸は、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸であり、いずれも市販品が使用できる。また、市販でなくても処理施設で入手できる廃酸などが使用できる。
【0035】
汚泥の乾燥重量は、SS(浮遊物質)でも、TS(蒸発残留物)でもよい。乾燥単位重量は、汚泥の処理量(m3/時)と汚泥のSSまたはTSとの積である。汚泥の乾燥単位重量当たりの汚泥改質剤の添加率は、汚泥改質剤の添加重量を汚泥の乾燥重量で割った値である。
【0036】
汚泥改質剤としての酸化剤の添加率(モル/kg)は、汚泥の乾燥単位重量1kgあたり酸化剤0.2~20モル、好ましくは0.5~20モル、さらに好ましくは0.5~10モルである。汚泥改質剤としての酸の添加率(モル/kg)は、汚泥の乾燥単位重量1kgあたり酸0.1~15モル、好ましくは0.3~10モル、さらに好ましくは0.5~5.0モルである。酸は、汚泥のpHに基づいて制御してもよく、酸性の方が汚泥改質効果が高いが、汚泥に添加した酸の残留を抑えるために、汚泥のpHは2~5がよい。
【0037】
2種類以上の汚泥改質剤を使用することもできる。2種類以上の汚泥改質剤を同時に添加してもよいし、時間をおいて添加してもよい。例えば、汚泥改質剤としての酸を添加した後に、ある時間(例えば5~30分)の間隔をあけて同じ種類の酸または異なる種類の酸を添加してもよい。他の例では、汚泥改質剤としての酸を添加した後に、ある時間(例えば5~30分)の間隔をあけて酸化剤を添加してもよい。酸化剤を最初に添加した場合も、そのあとで酸を添加してもよい。
【0038】
酸による汚泥改質の場合、アルカリ剤で汚泥のpHを3.5~5.5に調整する。使用されるアルカリ剤は、pH調整が容易で作業性が良い水酸化ナトリウム水溶液濃度(20~50重量%)が好ましい。
【0039】
図2に汚泥改質剤の作用を示す図を示す。微生物の代謝物の多糖類やタンパクなどの陰イオンに帯電する親水性の粘着性高分子量物質の内部には水が存在する。酸化剤、または酸、またはこれらの両方からなる汚泥改質剤は、汚泥を構成する微生物の細胞を部分的に損傷させて、細胞内部の内容物を細胞外に排出させることで、濃縮脱水性を向上させることができる。難濃縮性や難脱水性は、微生物の細胞内部の水の排出が十分にできないことに起因するので、凝集工程前で、汚泥の微生物の細胞内の水を排出することで、難濃縮性や難脱水性が改善される。
【0040】
汚泥改質剤を添加しなかった場合、凝集剤で汚泥を凝集させたときに水が十分に排出されず、更に濃縮や脱水で外部から加圧しても水が抜けきらないために濃縮性や脱水性が向上しない。このために凝集剤で汚泥を凝集しても、汚泥内部まで十分に荷電中和できないために濃縮性や脱水性が向上しない。
一方、従来の酸化剤による汚泥改質は汚泥粒子の細胞をバラバラにして、汚泥の微生物の細胞内の水を排出することで濃縮脱水性を向上させるものである。
汚泥粒子の細胞や細胞の内容物が微細化あるいは可溶化し、細胞内部の水が抜けているので、濃縮脱水性が向上するものの凝集剤使用量の増加や濃縮脱水の運転管理の難しさがある。
【0041】
図3は、汚泥改質装置3の一実施形態を示す概略図である。本実施形態の汚泥改質装置3は、汚泥槽15と、汚泥の性状を測定する汚泥測定センサ17と、汚泥の性状の測定値に基づいて汚泥改質剤の添加率を決定する添加率決定装置18と、決定された添加率で汚泥改質剤を汚泥に注入する注入装置20と、汚泥槽15内の汚泥と汚泥改質剤を攪拌する攪拌機22を備えている。攪拌機22は、汚泥槽15内に配置された攪拌羽根23と、攪拌羽根23を回転させる攪拌モータ24を有する。注入装置20は、注入ライン28を介して汚泥槽15に接続されている。一実施形態では、注入装置20は、注入ライン28を介して汚泥槽15の上流位置に接続され、汚泥改質剤は汚泥槽15の上流位置で汚泥に注入されてもよい。
【0042】
汚泥測定センサ17の使用方法には2通りある。
第1の使用方法は、汚泥槽15内に流入した汚泥の性状を測定し、その測定値に基づいて汚泥改質剤の添加率を決定する方法である。例えば、上述の「汚泥改質剤としての酸化剤の添加率(モル/kg)は、汚泥の乾燥単位重量1kgあたり酸化剤0.2~20モル」のように汚泥のSS濃度を測定して、汚泥改質剤の添加率を決定するような使い方である。この場合の汚泥測定センサ17の設置場所は汚泥槽15内でも汚泥槽15への汚泥流入管でも良い。
【0043】
第2の使用方法は、汚泥槽15内で汚泥改質剤添加後の汚泥の性状を測定し、その測定値で汚泥改質剤添加率を決定する方法である。汚泥の性状は、汚泥改質剤添加開始時と添加終了時とで変化するので、汚泥測定センサ17で汚泥性状の測定値をモニターして、その測定値と設定値との比較や、測定値の変化量で汚泥改質剤添加率を決定する。例えば、汚泥性状の測定値がある設定値に達するまで、汚泥改質剤を添加し、設定値に到達した時点で汚泥改質剤の添加を終了し、汚泥性状の設定値によって汚泥改質剤の注入制御を行うものである。他の例では、汚泥性状の測定値がある変化量を示した時点で汚泥改質剤の添加を終了し、汚泥性状の測定値の変化量によって汚泥改質剤の注入制御を行うものである。この使用方法の場合の汚泥測定センサ17の設置場所は汚泥槽15内である。
汚泥槽15内の汚泥測定センサ17で生物処理した汚泥または被処理部の汚泥の性状を測定する汚泥性状測定したり、汚泥測定センサ17で汚泥改質剤の添加率を決定したりする。また、複数の汚泥測定センサ17を用いて汚泥の性状を測定する汚泥性状測定と、汚泥改質剤の添加率の決定を同時行うことができる。
【0044】
汚泥測定センサ17として、pH計、ORP(酸化還元電位)計、温度計、MLSS計(汚泥濃度計)、呼吸速度計(酸素利用速度、酸素消費速度)、DO(溶存酸素)計、残留塩素計などが使用される。汚泥測定センサ17は複数設けられてもよい。汚泥の性状の測定値は、添加率決定装置18に送られる。
汚泥測定センサ17で得られた汚泥の性状の測定値の中で、MLSS計で得られる汚泥のSSと呼吸速度が関係するので、汚泥のSSが変化すると、呼吸速度も変わる。
添加率決定装置18は、汚泥測定センサ17で得られた汚泥の性状の測定値に基づいて汚泥改質剤の添加率を決定することができる。pH計、温度計は汚泥改質剤の注入制御以外に、汚泥槽15内の改質された汚泥を至適条件に制御するためにも使用する。
【0045】
添加率決定装置18は注入装置20に指令を与えて、決定された添加率で汚泥改質剤を汚泥に注入させる。注入装置20の一例は、ポンプである。汚泥改質剤が酸の場合には、汚泥測定センサ17は、pH計、温度計、呼吸速度計(酸素利用速度、酸素消費速度)、MLSS計(汚泥濃度計)である。汚泥改質剤が酸化剤の場合は、汚泥測定センサ17は、pH計、ORP計、温度計、呼吸速度計(酸素利用速度、酸素消費速度)、MLSS計(汚泥濃度計)、残留塩素計である。これら複数のセンサを組み合わせて使用してもよい。
【0046】
pH計は、汚泥改質剤としての酸化剤の添加時に、汚泥改質に至適なpH条件に制御するためにも使用する。汚泥改質剤としての酸化剤使用にあたっては、酸化剤の反応性や自己分解による無駄な消費を考慮して至適pH域を設定する。例えば、過酸化水素ではpH7以下の酸性域で、次亜塩素酸塩ではpH7以上のアルカリ域での使用が良い。酸化剤の反応性や無駄な消費以外に、過酸化水素のpH7以下の酸性域では酸による汚泥の汚泥改質効果がより一層得られ、また次亜塩素酸塩のpH7以上のアルカリ域でも汚泥のタンパク質のアルカリによる可溶化等は作用して汚泥の汚泥改質効果がより一層得られる。
また、pH計は、汚泥改質剤としての酸の添加時の改質汚泥のpH変化をモニターして、酸の適正な添加率を制御するためにも使用できる。汚泥槽15内の改質汚泥のpHが2~5になるように酸を添加する。
【0047】
ORP計は、汚泥改質剤としての酸化剤の添加時の汚泥槽15内の改質汚泥のORP(酸化還元電位)の変化量をモニターするのに使用され、ORPの変化量に基づいて酸化剤の添加率が制御される。例えば、一定時間でのORPの変化量が20~100mVの範囲内となるように酸化剤の添加率が制御される。20mV以上で汚泥改質が良好にでき、100mV未満では酸化剤の過剰添加が防止でき無駄にならない。
ORP計は酸化剤の添加時の汚泥槽15内の改質汚泥のORPの設定値になるまで酸化剤を添加することができる。改質汚泥のORPの設定値は-100~+300mVで、経験値や汚泥性状や酸化剤の種類などで任意に設定値が決定できる。
ORPは温度やpHに影響されるので、ORP計の使用時には温度計やpH計を併用する。
【0048】
温度計は、汚泥改質の至適温度条件である汚泥温度20~50℃に制御するための温度のモニターを用い、汚泥改質の至適温度条件である汚泥温度域になるように、汚泥槽15内を加温や図示していないが冷却を行う。汚泥改質の至適温度条件である汚泥温度域で汚泥改質することで、汚泥改質剤による汚泥改質効果と、無駄な汚泥改質剤の消費が抑えられる。
【0049】
汚泥改質剤としての酸または酸化剤の添加時には反応熱または中和熱が発生するので、汚泥改質剤が添加された改質汚泥の温度上昇の変化をモニターして、酸または酸化剤の適正な添加率を制御する。一実施形態では、汚泥改質剤が添加された改質汚泥の温度上昇分が10~30℃の範囲内となるように、酸または酸化剤の添加率が制御される。温度が10℃以上では汚泥改質が良好にでき、30℃未満では酸や酸化剤の過剰添加が防止でき無駄にならない。
【0050】
MLSS計(汚泥濃度計)は、汚泥槽15に流入する汚泥のSS濃度をモニターするのに使用される。MLSS計(汚泥濃度計)を用いた汚泥改質剤の注入制御は、汚泥のSS濃度だけに依存し、汚泥のSS濃度以外の物性が考慮されないので、MLSS計(汚泥濃度計)とその他のタイプのセンサを併用してもよい。
【0051】
呼吸速度計は、汚泥改質剤としての酸または酸化剤の添加時の余剰汚泥中の活性汚泥の呼吸速度の変化をモニターするのに使用される。活性汚泥の呼吸速度の値やその変化量に基づいて適正な汚泥改質剤の添加率が制御される。したがって、呼吸速度計は、余剰汚泥を含む汚泥の場合に使用される。余剰汚泥を含む汚泥の呼吸速度が0.1~2.0mg/L・hの範囲内になるように、酸または酸化剤の添加率が制御される。呼吸速度が0.1mg/L・h以上で汚泥改質が良好にでき、2.0mg/L・h未満では酸または酸化剤の過剰添加が防止でき無駄にならない。
【0052】
余剰汚泥を含む汚泥に汚泥改質剤を添加することで、余剰汚泥を含む汚泥の呼吸速度が低下するので、余剰汚泥を含む汚泥の呼吸速度の変化をモニターして汚泥改質剤の注入制御を行う。汚泥改質剤を添加する前の余剰汚泥を含む汚泥の呼吸速度aと、汚泥改質剤を添加した後の余剰汚泥を含む汚泥の呼吸速度bの比、すなわちb/aが0.5~0.9の範囲内になるように、酸または酸化剤の添加率が制御される。b/aが0.5以上で酸または酸化剤の過剰添加が防止でき無駄にならず、b/aが0.9未満では汚泥改質が良好にできる。
呼吸速度は温度やpHに影響されるので、呼吸速度計の使用時には温度計やpH計を併用する。
【0053】
DO計は、過酸化水素のような酸素発生させる酸化剤を汚泥改質剤に使用する場合に使用される。酸化剤から発生する酸素をDO計で溶存酸素濃度をモニターして酸化剤の添加率を制御する。改質汚泥のDO濃度0.05~0.2mg/Lが好適である。0.05mg/L以上で汚泥改質が良好にでき、0.2mg/L未満で無駄な酸化剤量が低減できる。DO計は、ORP計と併用することもできる。
【0054】
残留塩素計は、次亜塩素酸塩のような酸化剤を汚泥改質剤に使用する場合に使用される。酸化剤から発生する塩素を残留塩素計でモニターして酸化剤の添加率を制御する。改質汚泥の塩素濃度0.05~0.2mg/Lが好適である。0.05mg/L以上で汚泥改質が良好にでき、0.2mg/L未満で無駄な酸化剤量が低減できる。残留塩素計は、ORP計と併用することもできる。
【0055】
図3に示すように、汚泥改質装置3は、汚泥槽15内の汚泥の偏流防止のための邪魔板31と、断熱材で構成された保温部を温水等などの加温媒体で加温できる加温ジャケット32をさらに備えている。邪魔板31は汚泥槽15内に配置されており、加温ジャケット32は汚泥槽15の外面を覆っている。一実施形態では、加温ジャケット32は、汚泥槽15を20~50℃に加温するように構成される。20℃以上では汚泥改質が短時間で完了し、50℃以下なら酸化剤の自己分解が防止でき酸化剤の節約になる。加温媒体には、廃温水や生物処理液(曝気槽混合液や消化汚泥)が使用できる。
【0056】
汚泥は、汚泥槽15に供給され、汚泥改質剤を汚泥に添加し、汚泥および汚泥改質剤を加熱しながら攪拌機22で攪拌することで、濃縮および脱水しやすいように汚泥粒子を改質する。図示していないが、汚泥改質時に炭酸ガス等が発生する場合にはガス抜き管を汚泥槽15の上部に設置してもよい。注入装置20は、注入ライン28に接続されており、注入ライン28を通じて汚泥改質剤を汚泥に注入する。注入ライン28は複数でもよいし、汚泥改質剤の注入場所は汚泥槽15内でも、汚泥槽15に接続された汚泥流入管でもよい。
【0057】
図3に示すように、本実施形態の汚泥改質装置3は、短繊維助剤を汚泥槽15内の汚泥に添加する短繊維助剤添加装置35をさらに備えている。汚泥槽15内の汚泥には、汚泥改質剤、または汚泥改質剤と短繊維助剤が添加される。短繊維助剤は、攪拌機22により、汚泥改質剤とともに汚泥と混合される。短繊維助剤は、予め水道水や処理水等で分散させてから汚泥槽15に添加してもよいし、汚泥槽15に流入する汚泥の一部に添加して短繊維助剤を分散させてから添加してもよい。
【0058】
MLSS計(汚泥濃度計)で汚泥槽15に流入する汚泥のSS濃度と、汚泥の流入量(処理量、m3/時)を測定し、ラボ試験結果および/または過去の運転実績から求めた短繊維助剤添加率(%対SS)から、短繊維助剤の注入制御を行ってもよい。あるいは、汚泥のSS濃度や汚泥の流入水量が大きく変動しない場合には、短繊維助剤添加率(%対SS)の初期設定値、または初期の添加量で短繊維助剤を添加してもよい。短繊維助剤の添加は、濃縮工程で濃縮性や、脱水工程での脱水性を向上させることができる。一実施形態では、短繊維助剤の添加率は汚泥のSS重量あたり、0.05~5wt%である。
【0059】
短繊維助剤の具体例としては、木綿などの天然の短繊維物、化学合成された短繊維物、再生短繊維物、またはこれらの組み合わせが挙げられる。プラスチック廃棄物から再生製糸した短繊維物やビスコースレーヨンからなる短繊維物が好適に使用される。ビスコースレーヨンからなる短繊維物である短繊維助剤(例えばエバグロースU-700シリーズ、水ing(株)製)はその繊維長さが5~10mmで含水率が30~80wt/wt%である。
【0060】
本実施形態では、汚泥改質工程において、汚泥改質剤と短繊維助剤を添加することができる。
図3に示す汚泥槽15に短繊維助剤を添加すると、凝集前に汚泥に短繊維助剤を十分に分散させることができ、次の凝集工程で凝集フロックの内部に短繊維助剤が均一に取り込まれて、濃縮や脱水時に水切れが促進される。加えて、汚泥改質剤は、汚泥粒子内の水を外部に排出させやすい状態にすることができ、短繊維助剤が加わることで濃縮脱水時に水切れが一層促進されて、濃縮や脱水性能が向上する。
【0061】
汚泥改質装置3は、直列または並列に配置された複数の汚泥槽15を有してもよく、各汚泥槽15は開放槽または密閉槽でもよい。1つの汚泥槽15の内部を複数の隔壁で仕切ってもよい。汚泥槽15の内部に撹拌機22に代わる攪拌用の散気装置があってもよい。あるいは汚泥と汚泥改質剤が混合されやすいように邪魔板31を設けてもよい。
【0062】
処理装置についてさらに説明する。
図1に示す凝集装置5は、汚泥改質装置3で得られた改質汚泥に凝集剤を添加し、改質汚泥を凝集させて凝集フロックを含む凝集汚泥を生成する凝集工程を実行する。凝集剤の例として、無機凝集剤、有機凝結剤、高分子凝集剤が挙げられる。
【0063】
無機凝集剤は、硫酸第二鉄、ポリ鉄、塩化第二鉄、硫酸バンドなどが使用できる。無機凝集剤は特に限定されず、浄水処理に通常使用される無機凝集剤を使用することができる。具体的には、鉄系凝集剤とアルミニウム系凝集剤のいずれか一方又は両方を使用可能であり、より具体的には、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、塩化第二鉄およびこれらの混合物からなる群より選択されるいずれか1種以上を用いることができる。これらの無機凝集剤を使用すると、凝集時の汚泥のpHが低下して、適正な凝集pHに調整するために、アルカリ剤として市販の苛性ソーダ等を使用する場合がある。
【0064】
有機凝結剤としては、ポリアルキルポリアミン、ポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、ジシアンジアミド・塩化アンモニウム・ホルムアルデヒド重縮合物、ポリエチレン・ポリアミン・ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物などから1種またはそれ以上を用いることができる。有機凝結剤は、無希釈で使用してもよく、または水などで希釈して使用してもよい。
【0065】
高分子凝集剤は、アニオン性高分子凝集剤、あるいはカチオン性高分子凝集剤、あるいは両性高分子凝集剤、あるいはこれらの組み合せである。また、高分子凝集剤は、粉末状、液状(ディスパージョン状、エマルジョン状)などが使用できる。高分子凝集剤は、水に溶解させて、高分子凝集剤濃度0.05~0.4%に調製した高分子凝集剤溶解液を汚泥に添加する。
【0066】
アニオン性高分子凝集剤として、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸アンモニウムからなる群より選択されるいずれか1種以上を用いることが可能である。また、ポリアクリルアミド系高分子凝集剤も使用することができ、これは、アクリルアミドモノマーと(メタ)アクリル酸塩の共重合物である。
【0067】
カチオン性高分子凝集剤はカチオン性モノマーを必須成分として、カチオン性モノマーの単独重合体又は共重合体、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体との共重合体などから1種以上を選択して使用することができる。カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートもしくはこれらのアルカリ金属塩、4級アンモニウム塩などである。
【0068】
両性高分子凝集剤は、カチオン性モノマー、アニオン性モノマーおよびノニオン性モノマーを共重合し、分子内にカチオン単位、アニオン単位およびノニオン単位を有するものである。
アニオン性高分子凝集剤やカチオン性高分子凝集剤や両性高分子凝集剤は、水道水、工業用水、地下水、各種排水処理の処理水など溶解されて、それぞれの高分子凝集剤溶解液を調製して、凝集工程に使用する。
【0069】
短繊維助剤を、凝集工程で凝集剤とともに改質汚泥と混合してもよい。短繊維助剤を含む凝集フロックは濃縮時の重力による水切れや脱水時の加圧時の水切れがより一層促進されて、汚泥の濃縮性や脱水性が向上する。
【0070】
濃縮装置8は、凝集装置5で生成された凝集汚泥を濃縮して、濃縮汚泥と濃縮分離液を生成する。濃縮装置8の例としては、汚泥粒子を重力で沈降させて、濃縮させる重力濃縮装置、加圧水の微細な気泡を汚泥の粒子に付着させて、浮上分離する加圧浮上装置、1,000~2,000Gの遠心力で汚泥を濃縮する遠心濃縮装置、汚泥に凝集剤を添加した後、装置内部の特殊羽根による攪拌およびころがり効果によって固液分離を行う造粒濃縮装置、金属製(SUS製)ウェッジワイヤーのドラム型スクリーンで、凝集剤により凝集した汚泥を濃縮分離する回転ドラム型濃縮装置、逆三角形の断面形状をしたウェッジワイヤーを等間隔に並べて、ウェッジワイヤーで固液分離と濃縮を行うウェッジワイヤースクリーン、傾斜型スクリーン、汚泥に高分子凝集剤を添加した後、スクリーン上部から凝集汚泥を流してウェッジワイヤー等を用いたスクリーンで汚泥と分離液に分離するスクリーン濃縮機、高分子凝集剤により凝集した汚泥を、走行するベルト上に投入し、投入された汚泥は排出部へ移送される間にベルトでろ過され、排出部では高濃度の濃縮汚泥となるベルト濃縮機、バースクリーン、振動スクリーンなどがある。
【0071】
脱水装置9は、濃縮装置8で生成された濃縮汚泥に機械的な圧力をかけて、濃縮汚泥から水分を絞り出して、含水率の低い脱水ケーキと、脱水ろ液を生成する。脱水装置9には、例えば、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、加圧脱水機、真空脱水機、多重円盤型脱水機、スクリュープレス型脱水機などが使用される。脱水装置9は省略されることもある。この場合は、濃縮装置8で生成された濃縮汚泥は外部に搬出される。
【0072】
図示しないが、凝集装置5は、攪拌力が強い(攪拌装置の回転速度が速い)混合槽と、攪拌力が弱い(攪拌装置の回転速度が遅い)凝集槽の2つを直列に設けても良い。無機凝集剤と高分子凝集剤は別々の槽に添加される。具体的には、無機凝集剤は攪拌力が強い混合槽に、高分子凝集剤は凝集フロックの形成と凝集フロックが壊れない程度の攪拌力が弱い凝集槽に、別々に添加される。
【0073】
以下は、汚泥改質剤、短繊維助剤、凝集剤の添加の具体例である。
・汚泥改質剤は汚泥槽15に、高分子凝集剤は凝集槽に添加する。
・汚泥改質剤と短繊維助剤は汚泥槽15に、高分子凝集剤は凝集槽に添加する。
・汚泥改質剤は汚泥槽15に、短繊維助剤と無機凝集剤は混合槽に、高分子凝集剤は凝集槽に添加する。
【0074】
汚泥改質剤を、攪拌力が強い(攪拌装置の回転速度が速い)凝集装置5の混合槽に無機凝集剤と一緒に添加すると、無機凝集剤で汚泥のSSが凝集するので、汚泥改質剤による汚泥改質が阻害される可能性があるので、濃縮脱水性が低下する。したがって、汚泥改質剤は、凝集装置5の上流にある汚泥改質装置3で汚泥に添加するのが良い。
短繊維助剤は攪拌力が強い(攪拌装置の回転速度が速い)凝集装置5の混合槽に無機凝集剤と一緒に添加しても、無機凝集剤で汚泥のSSが凝集する凝集汚泥に取り込まれるので、濃縮脱水性の向上に好都合である。または短繊維助剤は凝集装置5の混合槽の前の汚泥槽15に添加してもよい。
【0075】
汚泥改質剤として酸を用いる場合、濃縮前の凝集時に水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液により、改質汚泥のpHを3.5~5.5に調整する。または、汚泥改質対象以外の汚泥のアルカリ(M-アルカリ度)で、改質汚泥のpHを調整してもよい。汚泥改質対象以外の汚泥のアルカリで不足する場合には、水酸化ナトリウム水溶液でpH調整してもよい。
【0076】
好気性生物処理で得られる余剰汚泥のM-アルカリ度は100mg/L以下、嫌気性生物処理で得られる消化汚泥のM-アルカリ度は1000~5000mg/Lである。したがって、酸によって汚泥改質された余剰汚泥や消化汚泥を濃縮や脱水する場合には濃縮や脱水前に、凝集剤添加時または添加後に汚泥の凝集pHをアルカリでpH調整する必要がある。
【0077】
アルカリの添加場所は凝集工程でも、図示していないが凝集工程前の混合工程でもよい。生物処理で発生する余剰汚泥や消化汚泥である汚泥は、汚泥改質剤で直接汚泥改質してもよいし、一旦、被処理水や被処理物と混合した後に全量を改質処理してもよい。
【0078】
本発明の汚泥改質とは、前述の
図2に示すように、汚泥粒子の細胞全体を汚泥改質剤で破壊するのでなく、汚泥粒子の細胞の一部分を壊して、細胞内部の液を排出させるものである。そのために汚泥粒子の細胞全体を破壊して汚泥を可溶化するような従来の方法に比べて、薬剤使用量やその反応時間が短かくて済む。
更には従来のように、汚泥粒子の細胞全体を汚泥改質剤で破壊すると、細胞から生物処理が難しい難分解性CODや色度成分、難分解性窒素が溶出し、濃縮分離液や脱水ろ液の好気性生物処理でもこれらの細胞からの溶出成分が除去できず、生物処理水や放流水に含まれるために放流基準値を超えることがある。
しかしながら本願発明は汚泥粒子の細胞の一部分を壊して、細胞内部の液を排出させるものであるので、難分解性CODや色度成分、難分解性窒素の溶出量が少なく、生物処理水や放流水の水質への影響がない。
また、従来のように、汚泥粒子の細胞全体を汚泥改質剤で破壊すると、汚泥粒子の細胞や細胞の内容物が微細化あるいは可溶化し、細胞内部の水が抜けているので、濃縮脱水性が向上するものの凝集剤使用量の増加や濃縮脱水の運転管理の難しさがある。
【0079】
汚泥改質剤による汚泥改質は、汚泥の濃縮脱水性を向上させることができることに加えて、汚泥の性状変化が頻繁にあっても今まで使用していたのと同じ銘柄の高分子凝集剤の使用が継続できる。
更には、汚泥に添加する高分子凝集剤添加率の低減による高分子凝集剤使用量を削減できる。更には、従来、消化汚泥等の難脱水性汚泥の濃縮脱水に高価な高分子凝集剤を使用している場合でも、本願発明の汚泥改質剤による汚泥改質によって、より安価で一般的で汎用性があり流通量の多い高分子凝集剤が使用できる。本発明はBCP(事業継続計画)に資するものである。
また、本願発明の汚泥改質剤による汚泥改質によって、人手作業と時間を要する最適な高分子凝集剤の銘柄選定作業が不要になる。
【0080】
凝集装置5の凝集槽に添加する高分子凝集剤の注入に関して、高分子凝集剤の添加率と、高分子凝集剤の銘柄が濃縮脱水において重要である。
高分子凝集剤の添加率は濃縮脱水の現場の運転経験や過去の知見や経験で決定することができ、その高分子凝集剤の添加率と汚泥のSS重量(汚泥流量とSS濃度の積)から求まる高分子凝集剤溶解液の注入量の増減は高分子凝集剤溶解液の注入ポンプの吐出量の増減によって容易に行える。
【0081】
しかしながら、高分子凝集剤の銘柄の変更または、使用中の銘柄が最適かどうかの判断は、幾種類もの高分子凝集剤の在庫がないことや、幾種類もの高分子凝集剤溶解液を調製して濃縮脱水の汚泥処理設備の現場で試験したりすることは設備的にも時間的にも難しい。実際の汚泥処理設備は試験設備(長期的試験に使えないし、脱水不良の脱水ケーキの処分が困難)ではないし、幾種類もの高分子凝集剤が在庫できないなどの理由で現場での試験や検討は難しい。
【0082】
最適な高分子凝集剤の銘柄選定作業は汚泥処理設備の現場で行えず、薬品メーカーや濃縮設備や脱水設備等を納入したプラントメーカーによって現場で採取した汚泥に合う最適銘柄が選定されるので、最適銘柄が得られるまでに長期間の日数を要する。季節変動や、水処理設備の運転条件、濃縮脱水設備の運転休止等による濃縮脱水用汚泥の性状が変動、変化して、高分子凝集剤注入量の調整だけでは安定した濃縮脱水性能が確保できない場合が多い。
その場合は、高分子凝集剤の銘柄を変更する必要があるが、高分子凝集剤の銘柄を頻繁に変更すると、在庫の高分子凝集剤の処分費用や、高分子凝集剤貯槽に新たな銘柄を入れ替える作業や今まで使用していた高分子凝集剤溶解液貯槽から高分子凝集剤溶解液の排出作業などが発生する。更には取り出した高分子凝集剤が無駄になるばかりか、取り出した在庫の高分子凝集剤と高分子凝集剤溶解液貯槽から取り出した高分子凝集剤溶解液が産業廃棄物として処分する必要があり、処分費用とその手間がかかる。
更には、最適銘柄が決定されるまでと、最適銘柄が納入されるまでに長期間の日数を要するために緊急の濃縮脱水性能の低下には対応できない。
【0083】
上述した実施形態によれば、汚泥改質剤、または汚泥改質剤と短繊維助剤を使用することで、高分子凝集剤注入量の調整だけの簡単な現場作業で高い濃縮脱水性能が得られ、高分子凝集剤注入量の削減もできる。
【0084】
図1に示すように、固液分離装置7(濃縮装置8および脱水装置9)で分離された水、すなわち濃縮分離液と脱水ろ液は、返送ライン10を通じて生物処理装置1に戻して、濃縮分離液と脱水ろ液に残留するBODやSSなどが生物処理装置1で除去される。生物処理装置1で得られた生物処理水は下水道に放流されたり、凝集沈殿処理などで処理されて、公共水域に放流されたりする。生物処理装置1で実行される生物処理工程は、好気性生物処理であってもよく、あるいは嫌気性生物処理であってもよい。一実施形態では、返送ライン10(返送工程)は設けずに、濃縮分離液と脱水ろ液を下水道に放流してもよい。
【0085】
図4は、生物処理装置1での生物処理が好気性生物処理である一実施形態を示す模式図である。その他の構成は、
図1乃至
図3を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の生物処理装置1は、好気性生物処理を実行する好気性生物処理装置である。
【0086】
改質対象の汚泥は、生物処理装置1の好気性生物処理で発生する余剰汚泥、または、別系統から搬送された余剰汚泥、消化汚泥、生ごみなどである。一実施形態では、汚泥を含む被処理物は、生物処理装置1を経由しないで汚泥改質装置3に送られてもよい。汚泥を濃縮や脱水しやすいように汚泥改質剤で改質し、改質された汚泥に凝集剤を添加して、凝集汚泥を生成し、凝集汚泥を濃縮して、濃縮汚泥と濃縮分離液を得る。更に必要に応じて、濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液と脱水ケーキを得る。
【0087】
短繊維助剤を、凝集工程で凝集剤とともに改質汚泥と混合してもよい。短繊維助剤を含む凝集フロックは濃縮時の重力による水切れや脱水時の加圧時の水切れが促進されて、汚泥の濃縮性や脱水性が向上する。固液分離装置7(
図4では濃縮装置8および脱水装置9)で分離された水、すなわち濃縮分離液と脱水ろ液は、返送ライン10を通じて生物処理装置1に戻して、濃縮分離液と脱水ろ液に残留するBODやSSなどが好気性生物処理により除去される。生物処理装置1で得られた生物処理水は下水道に放流されたり、凝集沈殿処理などで処理されて、公共水域に放流されたりする。
【0088】
汚泥改質剤として酸を用いる場合、濃縮前の凝集時に水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液により、改質汚泥のpHを3.5~5.5に調整する。または、汚泥改質対象以外の汚泥のアルカリ(M-アルカリ度)で、改質汚泥のpHを調整してもよい。汚泥改質対象以外の汚泥のアルカリで不足する場合には、水酸化ナトリウム水溶液でpH調整してもよい。
【0089】
図5は、生物処理装置1での生物処理が嫌気性生物処理である一実施形態を示す模式図である。生物処理装置1は、消化槽を有する。その他の構成は、
図1乃至
図3を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。生物処理装置1は、被処理物に対して嫌気性生物処理を行い、消化汚泥と消化ガスを生成する嫌気性生物処理装置である。
【0090】
改質対象の汚泥は、生物処理装置1の嫌気性生物処理で発生する消化汚泥、または、別系統から搬送された汚泥である。一実施形態では、汚泥を含む被処理物は、生物処理装置1を経由しないで汚泥改質装置3に送られてもよい。嫌気性生物処理から定期的に排出される消化汚泥は、汚泥改質装置3にて汚泥改質剤で改質され、改質汚泥を得る。改質汚泥は、凝集装置5で凝集剤が添加され、凝集フロックを含む凝集汚泥が生成される。凝集汚泥は、濃縮装置8で濃縮汚泥と、濃縮分離液に分離される。濃縮汚泥は脱水装置9により脱水され、脱水ろ液と脱水ケーキになり、脱水ケーキは外部搬出されたり焼却処分されたりする。
【0091】
短繊維助剤を、凝集工程で凝集剤とともに改質汚泥と混合してもよい。短繊維助剤を含む凝集フロックは濃縮時の重力による水切れや脱水時の加圧時の水切れがより一層促進されて、汚泥の濃縮性や脱水性が向上する。
【0092】
濃縮分離液と脱水ろ液は、残留する有機物や窒素除去のために好気性生物処理設備へ移送されて好気性生物処理されたり、下水道に放流されたりする。汚泥改質装置3に送られる汚泥は、生物処理装置1の嫌気性生物処理で発生する消化汚泥を含んでも、含まなくてもよい。
【0093】
消化汚泥は硫化物イオンを含むので、消化汚泥に添加する汚泥改質剤は、硫化水素や硫化物イオン等の還元物質で酸化剤が消費されるので、酸がよい。酸による汚泥改質の場合、濃縮前の凝集時に水酸化ナトリウム水溶液でpH3.5~5.5に調整する。または、消化汚泥や消化汚泥以外の汚泥のアルカリで、改質汚泥のpHを調整してもよい。消化汚泥以外の汚泥のアルカリで不足する場合には、水酸化ナトリウム水溶液でpH調整する。
【0094】
酸の添加率は汚泥改質前の消化汚泥のM-アルカリ度に相当する硫酸と0.01モルの硫酸の合計で計算できる。M-アルカリ度計は市販の工業計器のM-アルカリ度計(またはアルカリ度計)が使用できる。
消化槽の滞留時間が7~14日間と長いので、消化汚泥のM-アルカリ度の濃度変動が少ないので手分析で測定したM-アルカリ度から鉱酸の添加量が制御できるが、工業計器のM-アルカリ度計での測定やモニタリングは鉱酸の添加量の制御には好都合である。
酸の最適な添加率(mg/L)は次式に示す汚泥改質前の消化汚泥のM-アルカリ度から求めた酸濃度(mg/L)と、汚泥改質の最適pHから求めた酸濃度(mg/L)の合計から計算できる。
鉱酸の最適な添加率(mg/L)
=汚泥改質前の消化汚泥のM-アルカリ度×酸の分子量÷100
+汚泥改質時の最適pHの水素イオンのモル濃度×酸の分子量×1000
【0095】
次に、実施例について説明する。
実施例1
汚泥再生処理センターで採取した余剰汚泥(SS12,000mg/L、VSS/SS 52%)を対象に、余剰汚泥の汚泥改質を行い、無機凝集剤と高分子凝集剤で余剰汚泥を凝集後に濃縮試験を行い、次に、濃縮試験で得られた濃縮汚泥に脱水試験を行った。
【0096】
図6に汚泥改質剤の試験条件を示す。
ジャーテスターにセットした有効容量0.5Lのビーカーに余剰汚泥0.5Lをとり、汚泥改質剤を添加してジャーテスターで回転速度150rpmで30分間攪拌し、20~25℃で汚泥改質試験を行い、改質汚泥を得た。
無機凝集剤として、ポリ鉄と、高分子凝集剤としてエバグロースB-184(両性高分子凝集剤、水ing(株)製)を使用した。ポリ鉄添加率は余剰汚泥のSSあたり、鉄として5重量%、高分子凝集剤添加率は余剰汚泥のSSあたり2.0重量%とした。ポリ鉄添加後のpHが4.5になるように25wt%の水酸化ナトリウム水溶液でpH調整した。
【0097】
濃縮試験方法は以下の通りである。汚泥改質試験で得られた改質汚泥0.5Lを有効容量0.5Lのビーカーにとり、改質汚泥に無機凝集剤としてポリ鉄を添加し、ジャーテスターで回転速度150rpmで5分間急速攪拌し、その後、高分子凝集剤を添加してジャーテスターで回転速度50rpmで5分間緩速攪拌し、その後、目開き1mmの金網で5分間ろ過して、濃縮汚泥と濃縮分離液を得た。濃縮汚泥の一部を採取して、濃縮汚泥濃度を測定した。
【0098】
濃縮汚泥の凝集は行わず、濃縮汚泥を脱水試験した。脱水試験方法は以下の通りである。
上記の濃縮汚泥(SS 33,000mg/L、VSS/SS 89.0%)0.2Lを、一軸型脱水試験装置で、加圧面の圧力100kPa(1kg/m2)で3分間、加圧脱水試験を行った。脱水試験後に脱水ケーキを採取して、その含水率を測定した。
比較のために汚泥改質剤を添加しないで濃縮試験と脱水試験も行った。
【0099】
図7に余剰汚泥の改質後の濃縮試験結果を示す。
汚泥改質剤を添加しなかった場合の濃縮汚泥濃度は22,000mg/Lであった(試験番号No.1)。
酸化剤Aを余剰汚泥のSS1kgあたり1.0モル添加して、余剰汚泥を改質後に濃縮すると、濃縮汚泥濃度は33,000mg/Lであった(試験番号No.5)。
酸化剤Bを余剰汚泥のSS1kgあたり5.0モル添加して、余剰汚泥を改質後に濃縮すると、濃縮汚泥濃度は27,000mg/Lであった(試験番号No.11)。
酸化剤Cを余剰汚泥のSS1kgあたり2.0モル添加して、余剰汚泥を改質後に濃縮すると、濃縮汚泥濃度は35,000mg/Lであった(試験番号No.16)。
酸剤Aを余剰汚泥のSS1kgあたり10モル添加して、余剰汚泥を改質後に濃縮すると、濃縮汚泥濃度は34,000mg/Lであった(試験番号No.22)。
【0100】
汚泥改質剤で濃縮効果が見られたが、製品安定性が高い塩素系酸化剤の汚泥改質効果が高かった。酸化剤A~C、酸剤Aともに、その添加率を増加させると、濃縮分離液のSS濃度が低下傾向を示した。
【0101】
図8に濃縮汚泥の脱水試験結果を示す。
図8に示す汚泥改質剤添加率は、
図7の濃縮汚泥に対応する。脱水試験にあたって、濃縮汚泥への汚泥改質剤や凝集剤の添加を行わなかったので、
図8で得られた濃縮汚泥を脱水した。濃縮前に汚泥改質剤を添加しなかった場合の濃縮汚泥の脱水ケーキの含水率は83.5%であった(試験番号No.25)。
【0102】
酸化剤Aを余剰汚泥のSS1kgあたり1.0モル添加して、改質後の余剰汚泥を濃縮して得られた濃縮汚泥の脱水ケーキの含水率は81.8%であった(試験番号No.29)。
酸化剤Bを余剰汚泥のSS1kgあたり5.0モル添加して、改質後の余剰汚泥を濃縮して得られた濃縮汚泥の脱水ケーキの含水率は81.8%であった(試験番号No.35)。
酸化剤Cを余剰汚泥のSS1kgあたり2.0モル添加時の脱水ケーキ含水率は81.2%であった(試験番号No.39)。
酸剤Aを余剰汚泥のSS1kgあたり10モル添加時の脱水ケーキ含水率は82.8%であった(試験番号No.45)。
【0103】
汚泥改質剤で脱水ケーキ含水率の低減効果が見られた。特に、製品安定性が高い塩素系酸化剤の汚泥改質効果が高かった。
酸化剤A~C、酸剤Aともに、その添加率を増加させると、脱水ろ液のSS濃度が低下傾向を示した。
【0104】
実施例2
急速ろ過方式で河川水を水道原水とする浄水場の沈殿池で採取した上水汚泥(SS 11,400mg/L、VSS/SS 17.3%)を対象に実施例1の酸化剤Aで実施例1と同様に汚泥改質した後に、得られた改質汚泥に水道用高分子凝集剤(エバグロースWA-200、アニオン系、水ing(株)製)を上水汚泥のSS当たり1.0重量%を添加してジャーテスターで回転速度50rpmで5分間緩速攪拌し凝集後に、30分間静置させて(濃縮試験)、約0.2リットルの濃縮汚泥と約0.3リットルの濃縮分離液を得た。脱水試験は実施例1に同様に行った。
【0105】
図9に濃縮脱水試験結果を示す。
汚泥改質をしないで濃縮脱水すると、濃縮汚泥濃度が28,000mg/L、脱水ケーキ含水率が76.3%であった(試験番号No.48)。
酸化剤Aを上水汚泥のSS1kgあたり0.1モル添加して、上水汚泥を改質後に濃縮脱水すると、濃縮汚泥濃度は31,000mg/L、脱水ケーキ含水率が73.4%であった(試験番号No.50)。
酸化剤Aを添加すると、濃縮分離液や脱水ろ液のSS濃度が低下し、浄水工程に返送される返送水の水質が改善して、浄水工程での汚濁物負荷量が低下する。
【0106】
実施例3
図10に混合汚泥の性状を示す。合流式下水処理場で異なる季節に採取した濃縮脱水前の、初沈汚泥と余剰汚泥の混合汚泥A~Cを対象に、実施例1と同様に濃縮、脱水試験を行った。粗浮遊物下水試験法における粗浮遊物は、VSS/SSとともに汚泥性状による難脱水性の指標であるが、特に粗浮遊物は脱水性への影響が大きい。
【0107】
混合汚泥A~Cに酸化剤Aを添加率1.0モル/kg-SSで汚泥改質後、高分子凝集剤としてエバグロースC104G,CS291、CS402(ともにカチオン系高分子凝集剤、水ing(株)製)で凝集後に濃縮し、その濃縮汚泥(SS29,000~32,000mg/L)を脱水試験に供した。酸化剤Aで汚泥改質しない場合について、脱水ケーキの含水率を比較した。
【0108】
図11に異なる性状の混合汚泥を対象とした脱水試験結果を示す。
酸化剤Aは無添加、混合汚泥Aの最適高分子凝集剤銘柄はエバグロースC104G、高分子凝集剤添加率は1.5%での条件において、含水率は77.9%であった(試験番号No.54)。
酸化剤Aは無添加、混合汚泥Bの最適高分子凝集剤銘柄はエバグロースCS291、混合汚泥Cの最適高分子凝集剤銘柄はエバグロースCS402とした条件下では、各々の含水率は79.3%、77.2%であった(試験番号No.58,No.64)。
酸化剤Aの添加率1.0モル/kg-SSで混合汚泥A~Cを改質すると、高分子凝集剤添加率1.0%で、エバグロースC104G,CS291、CS402による含水率は77.0~80.0%であった。
【0109】
汚泥改質することで、最適高分子凝集剤銘柄として同一銘柄を継続使用することができ、更には汚泥改質しない場合に比べて高分子凝集剤添加率を0.5ポイント低くできた。汚泥性状が変化しても、汚泥改質剤で汚泥を改質することで、混合汚泥A~CをエバグロースC104G,CS291,CS402のいずれの高分子凝集剤で凝集しても、含水率80%以下の脱水ケーキが得られた。
この結果から実汚泥処理設備においても汚泥改質することで、高分子凝集剤銘柄の選定作業や実設備での在庫高分子凝集剤処分、残余高分子凝集剤溶解液の廃棄処分することなく、手間と時間がかかる高分子凝集剤の銘柄変更することなしに低含水率の脱水ケーキが得られるものと考える。
【0110】
季節変動や脱水設備の運転休止に伴う濃縮脱水用汚泥の性状が変動、変化して、特に脱水に支障をきたす場合、濃縮脱水前に汚泥改質することで同一銘柄の高分子凝集剤の使用が継続でき、高分子凝集剤注入量の調整だけの簡単な作業だけで高い濃縮脱水性能が得られ、高分子凝集剤注入量や使用量の削減もできる。
【0111】
実施例4
混合汚泥B(夏季)を対象に、実施例1の酸化剤Aの添加率1.0モル/kg-SSで汚泥改質後、短繊維助剤(エバグロースU-710、水ing(株)製、繊維長さ10mm、含水率50wt/wt%)を添加し、実施例3と同様に、高分子凝集剤エバグロースC104G(カチオン系高分子凝集剤、水ing(株)製)の添加率1.0%で凝集後に濃縮し、その濃縮汚泥を脱水試験に供した。
【0112】
図12に異なる性状の混合汚泥を対象とした脱水試験結果を示す。短繊維助剤添加率1.5%、濃縮汚泥濃度35,000mg/Lの条件下では脱水ケーキ含水率が78.0%であり、短繊維助剤無添加に比べて脱水ケーキ含水率が2ポイント改善し、濃縮分離液や脱水ろ液のSS濃度も低下した(試験番号No.74)。
【0113】
汚泥改質剤と短繊維助剤を併用することで濃縮汚泥濃度が高まり、脱水ケーキ含水率が低減できた。更に濃縮分離液や脱水ろ液のSS濃度の改善ができて、返送される好気性生物処理でのSS負荷量が低減でき、生物処理の安定化につながる。
【0114】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0115】
1 生物処理装置
3 汚泥改質装置
5 凝集装置
7 固液分離装置
8 濃縮装置
9 脱水装置
10 返送ライン
15 汚泥槽
17 汚泥測定センサ
18 添加率決定装置
20 注入装置
22 攪拌機
23 攪拌羽根
24 攪拌モータ
28 注入ライン
31 邪魔板
32 加温ジャケット
35 短繊維助剤添加装置