(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010485
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】作業服
(51)【国際特許分類】
A41D 27/10 20060101AFI20240117BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20240117BHJP
A41D 29/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A41D27/10 A
A41D1/02 C
A41D29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111855
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村井 保雄
【テーマコード(参考)】
3B031
3B035
【Fターム(参考)】
3B031AA08
3B031AA20
3B031AB11
3B031AC03
3B031AC05
3B035AA03
3B035AA08
3B035AB05
3B035AC15
(57)【要約】
【課題】ツッパリ感が低減されて着用感が良好であり、生産性も良好な、作業服を提供する。
【解決手段】 本発明の作業では、前ヨーク部2a、3aと、前外袖部2b、3bと、後ろヨーク部2c、3cと、後ろ外袖部2d、3dとが、左半身および右半身の夫々について、縫い目の無い1枚の織物片2、3で形成されており、左半身と右半身の後ろヨーク部2c、3cが互いに縫い合わされることにより形成され、身丈方向に沿った、背縫い線8を含み、左半身と右半身の後ろヨーク部2c、3cおよび後ろ外袖部2d、3dの経糸16a、16bは、下から上に向かって背縫い線8から遠ざかるように傾斜している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前ヨーク部と、前記前ヨーク部から延出する前外袖部と、後ろヨーク部と、前記後ろヨーク部から延出する後ろ外袖部とが、左半身および右半身の夫々について、縫い目の無い1枚の織物片で形成されており、
左半身と右半身の前記後ろヨーク部が互いに縫い合わされることにより形成され、身丈方向に沿った、背縫い線を含み、
左半身と右半身の前記後ろヨーク部および前記後ろ外袖部の経糸は、下から上に向かって前記背縫い線から遠ざかるように傾斜している、作業服。
【請求項2】
各半身の前記前ヨーク部の経糸は、ともに、身丈方向に沿って配置されている、請求項1に記載の作業服。
【請求項3】
前記背縫い線を基準線とした、前記左半身の前記後ろヨーク部の経糸の傾斜角の絶対値と、前記右半身の前記後ろヨーク部の経糸の傾斜角の絶対値は等しい、請求項1または2に記載の作業服。
【請求項4】
前記織物片のうちの、前記前ヨーク部と前記前外袖部とからなる部分と、前記後ヨーク部と前記後ろ外袖部とからなる部分とが、肩線およびその延長線に関し対称とならないように、前記前外袖部と前記後ろ外袖部とが前記前外袖部側に偏位している、請求項1または2に記載の作業服。
【請求項5】
前記前外袖部の下に配置された前内袖部、前記後ろ外袖部の下に配置された後ろ内袖部、前記前ヨーク部より下に配置された前身頃下部、及び前記後ろヨーク部より下に配置された後ろ身頃下部の経糸は、いずれも、身丈方向に配置されている請求項1または2に記載の作業服。
【請求項6】
左半身の前記後ろ身頃下部と右半身の前記後ろ身頃下部とが、縫い目の無い1枚の織物片で形成されている、請求項5に記載の作業服。
【請求項7】
作業服上衣である、請求項1または2に記載の作業服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業動作性が良い作業服に関する。
【背景技術】
【0002】
作業服は各種作業において広く着用されている。本出願人は、作業服の着用者の動作を妨げることなく円滑にするため、ストレッチ織物を使用した作業服を提案している(特許文献1)。また本出願人は、後袖部分を、背中上部から肩までに該当する肩背面部、肩関節から肘関節までに該当する上腕背面部、肘関節から手首までに該当する前腕背面部の3つに分割した立体裁断および縫製をし、肩甲骨の内側縁、肩付け根部の背面側、肘の背面側が、各々、外方へ膨らむ丸みを帯びた形状とした作業服を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2791624号公報
【特許文献2】特開2002-38322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の作業服は、作業者が、例えば、肩甲骨同士が互いに離れるように、体の背面を丸めたり、肘関節を体の前側に出したり、または腕を前又は上に伸ばす等の動作の際に、背肩部および腕背面にツッパリ感などがあり、さらなる改良が求められていた。また、縫製箇所が多いと作業服の生産性において不利であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するため、上記ツッパリ感が低減されて着用感が良好であり、生産性も良好な、作業服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業服は、一態様において、
前ヨーク部と、前記前ヨーク部から延出する前外袖部と、後ろヨーク部と、前記後ろヨーク部から延出する後ろ外袖部とが、左半身および右半身の夫々について、縫い目の無い1枚の織物片で形成されており、
左半身と右半身の前記後ろヨーク部が互いに縫い合わされることにより形成され、身丈方向に沿った、背縫い線を含み、
左半身と右半身の前記後ろヨーク部および前記後ろ外袖部の経糸は、下から上に向かって前記背縫い線から遠ざかるように傾斜している、作業服に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の作業服では、前ヨーク部と前外袖部と後ろヨーク部と後ろ外袖部とが、左半身および右半身の夫々について、縫い目の無い1枚の織物片で形成されており、左半身と右半身の前記後ろヨーク部および前記後ろ外袖部の経糸が、下から上に向かって背縫い線から遠ざかるように傾斜している。そのため、背肩部から両腕部背面にかけ生地の伸びが良く、着用者が、例えば、肩甲骨同士が互いに離れるように、体の背面を丸めたり、肘関節を体の前側に出したり、または腕を前や上に伸ばす等の動作の際の、背肩部や腕背面におけるツッパリ感が抑制され、着用感が良好な作業服を提供できる。
加えて、本発明では、前ヨーク部と前外袖部と後ろヨーク部と後ろ外袖部とが、縫い目の無い1枚の織物片で形成されているので、縫製の簡略化が可能となり、作業服の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図3は、
図1および
図2に示した作業服の袖および前後身頃等の片側(左半身)展開図である。
【
図4】
図4は、
図1の作業服の縫製に使用した織物の模式的説明図である。
【
図5】
図5は、従来の作業服の模式的背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の作業服は、織物生地を所定の形状に裁断し、得られた織物片が縫い合わされることにより作製された作業服である。織物は、寸法安定性が良く、強度、摩擦堅牢度が高く、耐洗濯性も高いことから、作業服には多く使用されている。
【0010】
本発明の作業服では、胸部の一部又は全部を覆う前ヨーク部と、前記前ヨーク部から延出する前外袖部と、背肩部の一部又は全部を覆う後ろヨーク部と、前記後ろヨーク部から延出する後ろ外袖部とが、左半身および右半身の夫々について、1枚の織物片で形成されている。これらの織物片には縫い目は無い。そのため、縫製の簡略化が可能となる。また、経糸は、後ろヨーク部から前ヨーク部まで連続しており、肩線において縫い目がない。そのため、肩に縫い目がある場合よりも、作業服のデザイン性が良い。また、肩線において縫い目がないので、肩に物を載せても違和感がなく、引っかけてほつれ、ほつれが原因で事故に遭うこともない。故に、本発明の作業服は、デザイン性が良く、耐久性、安全性も高い。
【0011】
尚、肩線とは、一般的には、前身頃と後ろ身頃とが肩上で縫い合わされてできた「縫い線」を言うが、本発明では、前ヨーク部と前外袖部と後ろヨーク部と後ろ外袖部とが、縫い目の無い1枚の織物片で形成されているので、本発明における「肩線」とは、上記「縫い線」に対応する仮想線を指し、前ヨーク部と後ろヨーク部の仮想の境界線である。
【0012】
本発明の作業服は、左半身の後ろヨーク部と右半身の後ろヨーク部が互いに縫い合わされることにより背縫い線を含む。当該背縫い線は、身丈方向に配向しており、作業服を左右対称に二分する背中心線上にある。左半身と右半身の、後ろヨーク部と後ろ外袖部の経糸は、各々、作業服の下から上に向かって背縫い線から遠ざかるように傾斜している。即ち、右半身の後ろヨーク部と後ろ外袖部の経糸と、左半身の後ろヨーク部と後ろ外袖部の経糸は、作業服の下から上へ向かうにつれて互いに遠ざかっている。尚、本発明において「上」「下」は、それぞれ作業服を着用した状態を基準として定義される。すなわち、「上」とは着丈方向における上側を指し、「下」とは着丈方向における下側を指す。
【0013】
経糸と緯糸で構成された織物生地は、経糸方向(経糸の配向方向)および緯糸方向(横糸の配向方向)には伸びにくい。緯糸方向は経糸方向に比べる若干伸びるが、伸びやすいとは言えず、これに対して、織物生地は、斜め方向(バイアス方向)には伸びやすい。特に、経糸および緯糸に対して45°又は-45°傾斜した正バイアス方向は伸びやすい。このため、上記の通り、後ろヨーク部と後ろ外袖部の経糸が、下から上に向かって背縫い線から遠ざかるように傾斜した本発明の作業服では、作業服を構成する織物がいわゆるストレッチ素材でない場合でも、後ろヨーク部と後ろ外袖部が、上下方向(身丈方向)と左右方向(肩幅方向)の両方向に伸びやすい。故に、本発明の作業服は、着用者の背肩及び腕の動きに追従し易く、着用者の動作を妨げることなく円滑にし、着用感が良好である。
【0014】
後ろヨーク部と後ろ外袖部の経糸の傾斜角度は、着用者の動作に追従した織物生地の伸縮性の向上の観点から、右半身については、背縫い線を基準線として、好ましくは30°~60°であり、より好ましくは40°~50°であり、特に好ましくは45°である。左半身については、背縫い線を基準線として、好ましくは-30°~-60°が好ましく、より好ましくは-40°~-50°であり、特に好ましくは-45°である。
また、前記傾斜角度を上記範囲内の値とし、且つ、前ヨーク部の経糸が、身丈方向と同方向に配置されるように裁断すれば、着心地が良い上に、前から見たときのデザイン性の良い作業服を作製できる。
【0015】
前記背縫い線を基準線とした、左半身の後ろヨーク部の経糸の傾斜角度の絶対値と、右半身の後ろヨーク部の経糸の傾斜角度の絶対値が等しいと好ましい。また、左半身の後ろヨーク部および後ろ外袖部の経糸と、右半身の後ろヨーク部および後ろ外袖部の経糸とが、前記背中心線を対称軸として対称となるように配置されていると好ましい。これらの態様により、上下方法および左右方向の両方向の伸縮性が左右対称となり、そのため、着用感が良好であり、後から見たときのデザイン性が良い作業服となる。
【0016】
前ヨーク部と前外袖部と後ろヨーク部と後ろ外袖部を形成する前記織物片のうちの、前ヨーク部と前外袖部とからなる部分と、後ヨーク部と後ろ外袖部とからなる部分とが、肩線およびその延長線に関し対称とならないように、前外袖部と後ろ外袖部とが前外袖部側に偏位するように、織物片が裁断されていると好ましい。こうすることで、前外袖部と後ろ外袖部とが、肩から袖口にかけての方向に伸縮し易い。同様の理由から、袖上線の他端は、前記織物片の袖口側の辺の中央に位置しているとより好ましい。
【0017】
前記作業服において、前外袖部の下に配置された前内袖部、後ろ外袖部の下に配置された後ろ内袖部、前ヨーク部より下に配置された前身頃下部、および前記後ろヨーク部より下に配置された後ろ身頃下部の経糸は、いずれも、身丈方向に沿って配置されていると好ましい。これにより、作業服のデザイン性が向上する。
【0018】
前記作業服において、左半身の後ろ身頃下部と右半身の後ろ身頃下部とが、縫い目の無い1枚の織物片で形成されていると好ましい。これにより、デザイン性の良い作業服となる。
【0019】
本発明の作業服は、作業服上衣を含む。本発明の作業服は、作業服上衣に限定されず、作業服上衣(上衣部)と作業服下衣(下衣部)とが上下一体に連結された作業つなぎ服であってもよい。この場合、下衣部は、通常のつなぎ服に使用するものが使用でき、特に限定されるものではない。
【0020】
本発明の作業服を構成する織物生地に使用される糸の原料としては、天然繊維、合成繊維、及びこれらの両方等が挙げられる。前記織物生地に使用される糸としては、いかなる素材の糸でも使用でき、例えば、天然繊維100%の紡績糸、合成繊維100%の紡績糸、天然繊維と合成繊維の混紡糸が挙げられ、例えば、綿糸100%の紡績糸、ポリエステル繊維100%の紡績糸、又は綿(コットン)とポリエステル繊維との混紡糸が好ましい。前記織物は、これらの糸を含む布帛である。綿(コットン)とポリエステル繊維との混紡糸における、綿(コットン)とポリエステル繊維の割合は、例えば、綿10~90質量%、ポリエステル繊維90~10質量%である。これらの糸の織物生地は洗濯が可能であり、繰り返し使用できる。
【0021】
本発明の作業服を構成する織物の組織としては、平織、斜文織(綾織)、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織等が挙げられる。これらのなかでも平織、斜文織(綾織)が好ましい。織物の単位面積当たりの質量(目付)は、好ましくは50~500g/m2、より好ましくは100~450g/m2、更に好ましくは140~400g/m2である。
【0022】
以下、図面を用いて、本発明の作業服の具体例を説明する。各図面において、同一符号は同一部分を示す。
【0023】
図1Aは、本発明の一実施形態における作業服の模式的背面図であり、
図1Bは
図1Aの部分拡大図であり、
図2は、
図1Aに示した作業服の模式的正面図である。
【0024】
図1および2に示されるように、作業服1は、前ヨーク部2a、3a、前外袖部2b、3b、後ろヨーク部2c、3c、後ろ外袖部2d、3d、前内袖部4a、4b、後ろ内袖部5a、5b、前身頃下部6a、6b、後ろ身頃下部7a、7b、襟9、前立て10、裾ベルト11、カフス12を含む。
【0025】
図3は、
図1および
図2に示した作業服1の背中心線13を対称軸とした左半身の袖および前後身頃等の展開図である。
図3において、30bは肩線であり、40bは袖上線である。50bは、肩線30bと袖上線40bとからなる線である。45bは肩先であり、肩線30bの袖側の一端であり、袖上線40bの一端でもある。41bは袖上線40bの他端であり、織物片3の袖口側の辺3e上のほぼ中央にある。35bは肩線30bの延長線であり、36bは、延長線35bの先端であり、織物片3の袖口側の辺3e上にある。
【0026】
図3に示すように、前ヨーク部3aと後ヨーク部3cとが肩線30bにおいて縫い目がなく、前ヨーク部3aから延出する前外袖部3bと、後ろヨーク部3cから延出する後ろ外袖部3dとが、袖上線40bにおいて縫い目のない。また、前ヨーク部3aと前外袖部3b、後ろヨーク部3cと後ろ外袖部3dについても、各々、身頃と袖の付け根部分において縫い目がない。即ち、左半身の、前ヨーク部3aと前外袖部3bと後ろヨーク部3cと後ろ外袖部3dは、縫い目の無い1枚の織物片3で形成されている。右半身についても同様に、前ヨーク部2aと前外袖部2bと後ろヨーク部2cと後ろ外袖部2dは、縫い目の無い1枚の織物片2で形成されている。
また、右半身の後ろ身頃下部7aと左半身の後ろ身頃下部7bについても、縫い目の無い1枚の織物片7で形成されている。
【0027】
図3に示すように、織物片3において、上記線50bは、袖上線40bの他端41bが延長線35bの先端36bよりも前外袖部3b側に位置するように、例えば、肩先45bにおいて屈曲している。袖上線40bの他端41bは、袖口側の辺3eのほぼ中央に位置する。このように、織物片3のうちの、前ヨーク部3aと前外袖部2bとからなる部分と、後ヨーク部3cと後ろ外袖部2bとからなる部分とが、肩線30bおよびその延長線35bに関し対称とならないように、前外袖部2bと後ろ外袖部2bとが、前外袖部2b側に偏位するように、織物片3が裁断されていると、前外袖部3bと後ろ外袖部3dとが、肩から袖口にかけての方向に伸縮し易い。
【0028】
図3に示した例では、具体的には、肩線30bと背中心線13とのなす角をほぼ74°に設定し、肩先45bから前外袖部3bおよび後ろ外袖部3dを前外袖部3b側へ10°偏位させ、袖上線40bと背中心線13とのなす角をほぼ84°に設定している。
【0029】
図5および
図6に示した従来の作業服の一例では、特に
図5に示すように、後ろヨーク部20c,30cおよび後ろ外袖20d、30dの経糸160aが、身丈方向Xと同方向に配置されている。これに対し、
図1に示すように、本発明の一態様の作業服1では、後ろヨーク部2c,3cおよび後ろ外袖2d、3dの経糸16a、16bが、下から上に向かって背縫い線8から遠ざかるように傾斜している。故に、右半身の後ろヨーク部2cと後ろ外袖部2dの経糸16aと、左半身の後ろヨーク部3cと後ろ外袖部3dの経糸16bは、下から上へ向かうにつれて互いに遠ざかっている。また、例えば、
図1に示すように、肩線30bおよび肩先を一端とする袖上線40bを含む線50bから、背縫い線8を通る背中心線13へ向かう方向に傾斜している。尚、
図5および
図6に示した従来の作業服100における、20a、30aは各々前ヨーク部、20b、30bは各々前外袖部、40a、40bは各々前内袖部、50a、50bは各々後ろ内袖部、60a、60bは各々前身頃下部、70a、70bは各々後ろ身頃下部、90は襟、101は前立て、110は裾ベルト、120はカフス、130は背中心線である。
【0030】
図1に示すように、作業服1では、上記の通り、経糸16a、16bが下から上に向かって背縫い線8から遠ざかるように傾斜して配置されているので、
図5に示すように、経糸160a、160bが着丈方向と同方向に配向した従来の作業服よりも、上下方向および左右方向の両方向への良好なストレッチ性を有する。故に、着用者が、例えば、肩甲骨同士が互いに離れるように、体の背面を丸めたり、肘関節を体の前側に出したり、または腕を前や上に伸ばす動作の際に、背肩部および腕背面にツッパリ感が低減される。
【0031】
図1Bに示すように、作業服1においては、背縫い線8または背中心線13を基準線とした、右半身の後ろヨーク部2cと後ろ外袖部2dの経糸16aの傾斜角度θ1は45°であり、左半身の後ろヨーク部3cと後ろ外袖部3dの経糸16bの傾斜角度θ2は-45°であり、θ1とθ2の絶対値は等しい。そのため、上下方向および左右方向の両方向の伸びが左右対称となり、着用感が良好となる。また、θ1およびθ2の絶対値が45°であると、前ヨーク部2a、3aおよび前外袖部2b、3bにおいて、経糸の配向方向が身丈方向Xと同方向となり、前後のいずれから見ても、デザイン性の良い作業服1となる。
【0032】
図1及び
図2に示すように、作業服1では、前内袖部4a、4b、後ろ内袖部5a、5b、前身頃下部6a、6b、及び後ろ身頃下部7a、7bの経糸は、いずれも、身丈方向に配置されており、しかも、背縫い線8の下には、身丈方向に延びる縫い目はなく、後ろ身頃下部7aと後ろ身頃下部7bとが、縫い目の無い1枚の織物片7によって形成されている。よって、作業服1のデザイン性は非常に良いものとなっている。
【0033】
図4は、作業服1の縫製に使用した織物生地の模式的説明図である。
図4において、51は経糸であり、52は緯糸である。53,54は、各々、経糸および緯糸に対して45°傾斜した正バイアス方向を指す。作業服1の縫製に使用される織物生地の正バイアス方向の伸び率は、好ましくは、5~30%であり、より好ましくは7~20%であり、更に好ましくは7~12%である。例えば、いわゆる汎用TC混紡績糸(綿35%、ポリエステル65%)を用いた作業服1の縫製に使用される織物生地の正バイアス方向の伸び率は、好ましくは、5~30%であり、より好ましくは7~20%であり、更に好ましくは7~12%である。尚、前記伸び率(%)は、下記の実施例に記載の方法により測定できる。
【実施例0034】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。実施例1の作業服の縫製に使用した織物生地の伸び率は下記方法により素測定した値である。
【0035】
[織物生地の正バイアス方向の伸び率]
作業服の縫製に使用する織物生地の伸び率の算出は、「JIS L 1096織物および編物の生地試験方法」のB法(織物の定荷重法)に準拠して実施した。
具体的には、幅50mm長さ300mmの試験片を3枚用意し、全幅をつかむように引張試験機にセットした後、200mm間隔(L0)に印を付け14.7Nの荷重を加えた。1分間保持後の印間の長さ(L1)を測定し、下記式によって伸び率(%)を求めた。尚、試験片の調整に際しては、試験片の長さ方向と織物生地の正バイアス方向(45°)とを一致させた。
伸び率(%)={(L1-L0)/L0}×100
【0036】
(実施例1)
綿(コットン)30質量%、ポリエステル70質量%の混紡糸(メートル番手15番)を経糸に、ポリエステル100%糸(300デニール)を緯糸に使用し、綾織組織とした質量200g/m
2の織物生地を製造した。当該織物生地の正バイアス方向の伸び率は8%であった。この織物を使用して、
図1から
図3に示す作業服を縫製した。得られた作業服はLサイズで1着約610gであった。この作業服を着用し、様々な作業をしたところ、例えば、肩甲骨同士が互いに離れるように、体の背面を丸めたり、肘関節を体の前側に出したり、または腕を前又は上に伸ばす等の動作の際、ツッパリ感がなくて着用感が良好であり、着用者の動作を妨げることなく円滑な作業ができることが確認できた。