(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104856
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】プリントヘッド、及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20240730BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240730BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/14 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009249
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】河西 駿介
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB07
2C056EB30
2C056EC07
2C056EC42
2C056ED01
2C056FA04
2C056FA10
2C057AF23
2C057AL25
2C057AM16
2C057BA04
2C057BA14
2C057CA01
(57)【要約】
【課題】内部に温度検知部を設けた構成において、吐出されるインクの吐出精度を向上させることができるプリントヘッドを提供すること。
【解決手段】
補正された駆動信号を受けて液体を吐出する吐出モジュールは、
積層方向において、圧電体が第1電極と第2電極との間に位置し、駆動信号を受けて駆動する圧電素子と、圧電素子に対して積層方向の一方側に位置し、圧電素子の駆動により変形する振動板と、振動板に対して積層方向の一方側に位置し、振動板の変形により容積が変化する圧力室が設けられている圧力室基板と、圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出するノズルと、振動板に対して積層方向の他方側に位置し、圧力室の温度を検出する温度検出部と、を有し、駆動信号は、温度検出部が異なるタイミングで検出した圧力室の温度に応じたN個の温度情報(Nは2以上の自然数)に基づいて補正される、プリントヘッド。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補正された駆動信号を受けて液体を吐出する吐出モジュールを備え、
前記吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する圧電素子と、
前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、
前記振動板に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が設けられている圧力室基板と、
前記圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出するノズルと、
前記振動板に対して前記積層方向の他方側に位置し、前記圧力室の温度を検出する温度検出部と、
を有し、
前記駆動信号は、前記温度検出部が異なるタイミングで検出した前記圧力室の温度に応じたN個の温度情報(Nは2以上の自然数)に基づいて補正される、
ことを特徴とするプリントヘッド。
【請求項2】
前記吐出モジュールからの液体の吐出周期を規定する吐出周期規定信号が入力され、
前記異なるタイミングは、前記吐出周期規定信号が入力された後、次に前記吐出周期規定信号が入力されるまでの吐出期間に含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項3】
前記吐出モジュールの温度を示す温度情報信号を出力する温度情報出力回路を備え、
前記温度情報出力回路は、前記吐出期間に取得した前記N個の温度情報に応じた前記温度情報信号を出力し、
前記駆動信号は、前記温度情報信号に基づいて補正される、
ことを特徴とする請求項2に記載のプリントヘッド。
【請求項4】
前記温度情報出力回路は、前記N個の温度情報の相加平均を算出し、前記温度情報信号として出力する、
ことを特徴とする請求項3に記載のプリントヘッド。
【請求項5】
前記温度情報出力回路は、前記N個の温度情報の調整平均を算出し、前記温度情報信号として出力する、
ことを特徴とする請求項3に記載のプリントヘッド。
【請求項6】
前記温度情報出力回路は、
前記N個の温度情報の内、前記圧力室の温度が高い方からi番目(iは1からN/2までの内の自然数のいずれか)の第i温度情報と、前記圧力室の温度が高い方からN+1-i番目の第N+1-i温度情報と、の差分が所定の閾値よりも大きく、
且つ、前記N個の温度情報の内、前記圧力室の温度が高い方からi+1番目の第i+1温度情報と、前記圧力室の温度が高い方からN-i番目の第N-i温度情報と、の差分が前記所定の閾値以下の場合、
前記N個の温度情報の内、前記圧力室の温度が前記第i温度情報よりも低く、且つ、前記圧力室の温度が前記第N+1-i温度情報よりも高い、N-2×i個の温度情報の相加平均を算出し、前記温度情報信号として出力する、
ことを特徴とする請求項5に記載のプリントヘッド。
【請求項7】
前記異なるタイミングは、前記吐出モジュールが前記駆動信号を受けて液体を吐出する期間に含まれる、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプリントヘッド。
【請求項8】
補正された駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号を補正する補正部と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出するプリントヘッドと、
を備え、
前記プリントヘッドは、前記駆動信号を受けて液体を吐出する吐出モジュールを有し、
前記吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する圧電素子と、
前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、
前記振動板に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が設けられている圧力室基板と、
前記圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出するノズルと、
前記振動板に対して前記積層方向の他方側に位置し、前記圧力室の温度を検出する温度検出部と、
を含み、
前記補正部は、前記温度検出部が異なるタイミングで検出した前記圧力室の温度に応じたN個の温度情報(Nは2以上の自然数)に基づいて前記駆動信号を補正する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリントヘッド、及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置には、圧電素子と、圧力室と、圧力室と連通するノズルとを有するプリントヘッドを備えた構成が知られている。そして、プリントヘッドは、圧電素子の駆動により圧力室の容積を変化させることで、圧力室に供給された液体をノズルから吐出する。このようなプリントヘッドを備えた液体吐出装置では、プリントヘッドに貯留されるインクの温度に基づいて圧電素子を駆動制御することで、当該インクの温度に適した吐出制御を実現する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧電素子、圧力室、及びノズルを有するプリントヘッドの内部に、インクが貯留される圧力室の温度を検出する温度検知部が設けられていることで、温度検知部が検出する温度と圧力室内の温度との温度差を小さくすることができ、圧力室内に貯留されるインクの温度の検出精度を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の液体吐出装置のように、プリントヘッドの内部に温度検知部を設けた構成では、吐出されるインクの吐出精度を向上させるとの観点において十分でなく、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプリントヘッドの一態様は、
補正された駆動信号を受けて液体を吐出する吐出モジュールを備え、
前記吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する圧電素子と、
前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、
前記振動板に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が設けられている圧力室基板と、
前記圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出するノズルと、
前記振動板に対して前記積層方向の他方側に位置し、前記圧力室の温度を検出する温度検出部と、
を有し、
前記駆動信号は、前記温度検出部が異なるタイミングで検出した前記圧力室の温度に応じたN個の温度情報(Nは2以上の自然数)に基づいて補正される。
【0007】
本発明に係る液体吐出装置の一態様は、
補正された駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号を補正する補正部と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出するプリントヘッドと、
を備え、
前記プリントヘッドは、前記駆動信号を受けて液体を吐出する吐出モジュールを有し、
前記吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する圧電素子と、
前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、
前記振動板に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が設けられている圧力室基板と、
前記圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出するノズルと、
前記振動板に対して前記積層方向の他方側に位置し、前記圧力室の温度を検出する温度検出部と、
を含み、
前記補正部は、前記温度検出部が異なるタイミングで検出した前記圧力室の温度に応じたN個の温度情報(Nは2以上の自然数)に基づいて前記駆動信号を補正する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。
【
図5】デコーダーにおけるデコード内容の一例を示す図である。
【
図7】駆動信号選択回路の動作を説明するための図である。
【
図8】吐出モジュールの構造を示す分解斜視図である。
【
図10】
図9に示すA-a断面を示す断面図である。
【
図12】
図9に示すB-b断面を示す断面図である。
【
図13】温度情報出力回路の機能構成を示す図である。
【
図14】温度情報出力回路による温度情報tcの取得タイミングの一例を示す図である。
【
図15】温度情報出力回路による温度情報信号TIの生成方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.液体吐出装置の構造
図1は、液体吐出装置1の概略構成を示す図である。本実施形態における液体吐出装置1は、液体の一例としてのインクを吐出するプリントヘッド20が搭載されたキャリッジ21が走査軸に沿って往復動し、搬送方向に沿って搬送される媒体Pに対してインクを吐出することで、媒体Pに対して画像を形成するシリアル印刷方式のインクジェットプリンターを例示して説明を行う。このような液体吐出装置1に用いられる媒体Pとしては、印刷用紙、樹脂フィルム、布帛等の任意の印刷対象を用いることができる。
【0011】
図1に示すように液体吐出装置1は、インク容器2、制御機構10、キャリッジ21、移動機構30、及び搬送機構40を備える。
【0012】
インク容器2には、媒体Pに吐出される複数種類のインクが貯留されている。インク容器2に貯留されるインクの色彩としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グレー等が挙げられる。このようなインクが貯留されるインク容器2としては、インクカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及びインクの補充が可能なインクタンク等を用いることができる。
【0013】
制御機構10は、例えばCPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含み、プリントヘッド20を含む液体吐出装置1の各要素を制御する。
【0014】
キャリッジ21は、プリントヘッド20を搭載し、移動機構30に含まれる無端ベルト32に固定されている。なお、インク容器2は、キャリッジ21に搭載されていてもよい。
【0015】
キャリッジ21に搭載されたプリントヘッド20には、制御機構10が出力するプリントヘッド20を制御するための制御信号Ctrl-Hと、プリントヘッド20を駆動するための駆動信号COMと、が入力される。また、プリントヘッド20には、不図示のチューブを介して、インク容器2に貯留されるインクが供給される。そして、プリントヘッド20は、入力される制御信号Ctrl-Hと駆動信号COMとに基づいて、インク容器2から供給されるインクを吐出する。
【0016】
移動機構30は、キャリッジモーター31、及び無端ベルト32を含む。キャリッジモーター31は、制御機構10から入力される制御信号Ctrl-Cに基づいて動作する。無端ベルト32は、キャリッジモーター31の動作に従って回転する。これにより、無端ベルト32に固定されたキャリッジ21が走査軸に往復動する。すなわち、キャリッジ21は、媒体Pが搬送される搬送方向と交差する走査軸に沿って往復移動する。
【0017】
搬送機構40は、搬送モーター41、及び搬送ローラー42を含む。搬送モーター41は、制御機構10から入力される制御信号Ctrl-Tに基づいて動作する。搬送ローラー42は、搬送モーター41の動作に従って回転する。この搬送ローラー42の回転に伴って媒体Pが搬送方向に搬送される。
【0018】
以上のように液体吐出装置1は、搬送機構40による媒体Pの搬送と移動機構30によるキャリッジ21の往復動とに連動し、キャリッジ21に搭載されたプリントヘッド20が媒体Pにインクを吐出することで、媒体Pの表面の任意の位置にインクが着弾し、媒体Pに所望の画像を形成する。
【0019】
2.液体吐出装置の機能構成
次に、液体吐出装置1の機能構成について説明する。
図2は、液体吐出装置1の機能構成を示す図である。
図2に示すように液体吐出装置1は、制御機構10、プリントヘッド20、キャリッジモーター31、搬送モーター41、及びリニアエンコーダー90を備える。
【0020】
制御機構10は、駆動回路50、基準電圧信号出力回路52、及び制御回路100を有する。制御回路100は、例えば、CPUやFPGA等の処理回路と半導体メモリー等の記憶回路とを含む。制御回路100には、液体吐出装置1の外部と通信可能に接続されたホストコンピューター等の外部機器から画像データ等を含む画像情報信号が入力される。制御回路100は、入力される画像情報信号に基づいて、液体吐出装置1を制御するための各種信号を生成し、対応する構成に出力する。
【0021】
具体例には、制御回路100には、上述した画像情報信号に加えて、リニアエンコーダー90から、キャリッジ21の走査位置に基づく検出信号が入力される。制御回路100は、入力される検出信号に基づいてキャリッジ21に搭載されたプリントヘッド20の走査位置を把握する。そして、制御回路100は、プリントヘッド20の走査位置と画像情報信号とに応じた各種信号を生成し、出力する。
【0022】
詳細には、制御回路100は、プリントヘッド20の走査位置に応じて、プリントヘッド20の走査軸に沿った移動を制御するための制御信号Ctrl-Cを生成し、キャリッジモーター31に出力する。これにより、キャリッジモーター31が動作し、キャリッジ21に搭載されたプリントヘッド20の走査軸に沿った移動、及び走査位置が制御される。また、制御回路100は、媒体Pの搬送を制御するための制御信号Ctrl-Tを生成し、搬送モーター41に出力する。これにより、搬送モーター41が動作し、媒体Pの搬送方向に沿った移動が制御される。なお、制御信号Ctrl-Cは、不図示のドライバー回路を介して信号変換されたのち、キャリッジモーター31に入力されてもよく、制御信号Ctrl-Tは、不図示のドライバー回路を介して信号変換されたのち、搬送モーター41に入力されてもよい。
【0023】
また、制御回路100は、外部機器から入力される画像情報信号と、リニアエンコーダー90から入力されるプリントヘッド20の走査位置と、に基づいて、プリントヘッド20を制御するための制御信号Ctrl-Hとして、印刷データ信号SI1~SIn、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKを生成し、プリントヘッド20に出力する。
【0024】
また、制御回路100は、所定のタイミングにおいて、プリントヘッド20の温度を取得するための温度取得要求信号TDを生成し、プリントヘッド20に出力する。また、制御回路100には、温度取得要求信号TDに応じてプリントヘッド20が出力する温度情報信号TIが入力される。すなわち、制御回路100には、プリントヘッド20の温度の情報を含む温度情報信号TIが入力される。そして、制御回路100は、入力される温度情報信号TIに基づいて、制御信号Ctrl-H,Ctrl-C,Ctrl-Tを補正する。
【0025】
また、制御回路100は、制御信号Ctrl-Hとして駆動回路50にデジタル信号である基駆動信号dOを出力する。駆動回路50は、入力される基駆動信号dOをデジタル/アナログ信号変換したのち、変換されたアナログ信号をD級増幅することで駆動信号COMを生成し、プリントヘッド20に出力する。すなわち、制御回路100が出力する基駆動信号dOは、駆動信号COMの波形を規定するデジタル信号である。ここで、制御回路100は、入力される温度情報信号TIに基づいて、基駆動信号dOを補正する。すなわち、駆動回路50は、温度情報信号TIに基づいて補正された駆動信号COMを出力する。なお、基駆動信号dOは、駆動回路50が出力する駆動信号COMの波形を規定することができればよく、アナログ信号であってもよい。
【0026】
基準電圧信号出力回路52は、基準電圧信号VBSを生成し、プリントヘッド20に出力する。この基準電圧信号出力回路52が出力する基準電圧信号VBSは、後述する圧電素子60の駆動の基準となる電位の信号であって、例えば、グラウンド電位で一定の信号であってもよく、5.5Vや6V等の電位で一定の直流電圧信号であってもよい。
【0027】
プリントヘッド20は、吐出モジュール22-1~22-nと、温度情報出力回路26と、を有する。また、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれは、駆動信号選択回路200、温度検出回路24、及び複数の圧電素子60を含む。
【0028】
吐出モジュール22-1には、制御回路100が出力する印刷データ信号SI1、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKと、駆動回路50が出力する駆動信号COMと、基準電圧信号出力回路52が出力する基準電圧信号VBSと、が入力される。
【0029】
吐出モジュール22-1に入力されたクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、印刷データ信号SI1、及び駆動信号COMは、駆動信号選択回路200に入力される。駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SI1に基づいて、駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで、複数の圧電素子60のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成し、対応する圧電素子60の一端に個別に出力する。また、複数の圧電素子60の他端には、基準電圧信号VBSが共通に入力されている。複数の圧電素子60のそれぞれは、一端に個別に入力される駆動信号VOUTと、他端に共通に入力される基準電圧信号VBSとの電位差により駆動する。この圧電素子60の駆動に応じた量のインクが、吐出モジュール22-1から吐出される。
【0030】
吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24は、吐出モジュール22-1の温度を検出し、温度情報tc1として取得する。そして、吐出モジュール22-1が有する温度検出回路24は、取得した温度情報tc1を含む温度検出信号TC1を生成し、温度情報出力回路26に出力する。
【0031】
ここで、吐出モジュール22-2~22-nは、入力される信号、及び出力する信号が異なるのみで吐出モジュール22-1と同様の構成を有し、同様の動作を実行する。
【0032】
すなわち、吐出モジュール22-p(pは1~nのいずれか)には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、印刷データ信号SIp、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSが入力される。そして、吐出モジュール22-pが有する駆動信号選択回路200は、入力されるクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SIpに基づいて、駆動信号COMの信号波形を選択、又は非選択とすることで、複数の圧電素子60のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成する。この駆動信号選択回路200が生成した駆動信号VOUTが、対応する圧電素子60の一端に個別に入力される。また、吐出モジュール22-pが有する複数の圧電素子60の他端には、基準電圧信号VBSが共通に入力される。これにより、吐出モジュール22-pが有する複数の圧電素子60のそれぞれが駆動し、圧電素子60の駆動に応じた量のインクが、吐出モジュール22-pから吐出される。
【0033】
また、吐出モジュール22-pが有する温度検出回路24は、吐出モジュール22-pの温度を検出し、温度情報tcpとして取得する。そして、吐出モジュール22-pが有する温度検出回路24は、取得した温度情報tcpを含む温度検出信号TCpを生成し、温度情報出力回路26に出力する。
【0034】
ここで、以下の説明において、吐出モジュール22-1~22-nを区別する必要がない場合、単に吐出モジュール22と称する場合がある。この際、吐出モジュール22には、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、印刷データ信号SI、駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSが入力されるとともに、吐出モジュール22の温度に応じた温度情報tcを取得し、温度情報tcを含む温度検出信号TCを出力するとして説明を行う。
【0035】
温度情報出力回路26には、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれが出力する温度検出信号TC1~TCnと、制御回路100が出力する温度取得要求信号TD、及びラッチ信号LATと、が入力される。温度情報出力回路26は、温度取得要求信号TDに基づいて、ラッチ信号LATにより規定されるタイミングで、温度検出信号TC1~TCnのそれぞれに含まれる温度情報tc1~tcnを取得し、取得した温度情報tc1~tcnに応じた温度情報信号TIを出力する。
【0036】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1は、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SIを出力する制御回路100と、駆動信号COMを出力する駆動回路50と、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SIと、駆動信号COMと、を受けてインクを吐出するプリントヘッド20と、を含む。このような液体吐出装置1において、制御回路100が出力するクロック信号SCK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び印刷データ信号SIと、駆動回路50が出力する駆動信号COMとは、プリントヘッド20が出力する温度情報信号TIに応じて補正される。すなわち、本実施形態の液体吐出装置1は、温度情報信号TIに基づいて補正された駆動信号COMを出力する駆動回路50と、駆動信号COMを補正する制御回路100と、補正された駆動信号COMを受けてインクを吐出するプリントヘッド20と、を備え、プリントヘッド20は、補正された駆動信号COMを受けてインクを吐出する吐出モジュール22と、吐出モジュール22の温度を示す温度情報信号TIを出力する温度情報出力回路26と、を有する。
【0037】
3.駆動信号選択回路の機能構成
次に、吐出モジュール22が有する駆動信号選択回路200の構成、及び動作について説明する。前述の通り、吐出モジュール22が有する駆動信号選択回路200は、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成し、対応する圧電素子60に出力する。そこで、駆動信号選択回路200の構成、及び動作を説明するにあたり、まず、駆動信号選択回路200に入力される駆動信号COMの波形の一例について説明する。
【0038】
図3は、駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。
図3に示すように、駆動信号COMは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間td1に配置された台形波形Adpと、チェンジ信号CHが立ち上がってから次にチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間td2に配置された台形波形Bdpと、チェンジ信号CHが立ち上がってからラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間td3に配置された台形波形Cdpと、を含む。
【0039】
台形波形Adpは、所定量のインクが吐出するように圧電素子60を駆動する信号波形であり、台形波形Bdpは、所定量よりも少量のインクが吐出するように圧電素子60を駆動する信号波形である。また、台形波形Cdpは、インクが吐出されない程度に圧電素子60を駆動する信号波形であって、圧電素子60に対応するノズル開孔部付近のインクを振動させることで、ノズル開孔部付近のインク粘度が増大するおそれを低減するための信号波形である。また、台形波形Adp,Bdp,Cdpは、それぞれの開始タイミング及び終了タイミングでの電圧値がいずれも電圧Vcで共通の信号波形である。すなわち、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれは、電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する。
【0040】
ここで、以下の説明において、圧電素子60に台形波形Adpが供給された場合に、吐出される所定量のインクの量を中程度の量と称し、圧電素子60に台形波形Bdpが供給された場合に、吐出される所定量のよりも少ないインクの量を小程度の量と称する場合がある。また、圧電素子60に台形波形Cdpが供給された場合に、当該圧電素子60に対応するノズル開孔部付近のインクを振動させてインク粘度の増大を防止するための動作を微振動と称する場合がある。なお、
図3に示す駆動信号COMの信号波形は一例であってこれに限られるものではなく、吐出されるインクの性質や、インクが着弾する媒体Pの材質等に応じて、様々な波形の組み合わせが用いられてもよい。
【0041】
そして、駆動信号選択回路200が、上述した期間td1,td2,td3を含む周期tpにおいて、駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpを選択、又は非選択とすることで、周期tpにおけるインクの吐出量が制御される。換言すれば、周期tpにおいて媒体Pに形成されるドットサイズが制御される。この期間td1,td2,td3を含む周期tpが、媒体Pに所定サイズのドットを形成するドット形成周期であって、媒体Pにインクを吐出する吐出周期に相当する。すなわち、ラッチ信号LATは、吐出モジュール22からのインクの吐出周期に相当する周期tpを規定する。
【0042】
次に、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで駆動信号VOUTを生成する駆動信号選択回路200の構成、及び動作について説明する。
図4は、駆動信号選択回路200の構成を示す図である。
図4に示すように、駆動信号選択回路200は、選択制御回路210と、複数の圧電素子60と同数の複数の選択回路230を有する。なお、以下の説明では、吐出モジュール22は、m個の圧電素子60を有するとして説明を行う。
【0043】
選択制御回路210には、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHが入力される。また、選択制御回路210には、シフトレジスター(S/R)212とラッチ回路214とデコーダー216との組が、m個の圧電素子60の各々に対応して設けられている。すなわち、駆動信号選択回路200は、m個のシフトレジスター212と、m個のラッチ回路214と、m個のデコーダー216とを含む。
【0044】
印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期して選択制御回路210に入力される。また、印刷データ信号SIは、「大ドットLD」、「中ドットMD」、「小ドットSD」及び「非記録ND」のいずれかを選択するための2ビットの印刷データ[SIH,SIL]をm個の圧電素子60の各々に対応してシリアルに含む。印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]は、m個の圧電素子60に対応するm個のシフトレジスター212に保持される。具体的には、圧電素子60に対応したm個のシフトレジスター212が互いに縦続接続しているとともに、シリアルで入力された印刷データ信号SIが、クロック信号SCKに従って順次後段のシフトレジスター212に転送される。そして、印刷データ[SIH,SIL]が対応するシフトレジスター212に保持されることで、クロック信号SCKが停止する。これにより、印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]が対応するシフトレジスター212に保持される。なお、
図4には、m個のシフトレジスター212を区別するために、印刷データ信号SIが入力される上流側から順番に1段、2段、…、m段と表記している。
【0045】
m個のラッチ回路214の各々は、ラッチ信号LATの立ち上がりで対応するシフトレジスター212に保持された印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。そして、ラッチ回路214がラッチした印刷データ[SIH,SIL]は、対応するデコーダー216に入力される。
図5は、デコーダー216におけるデコード内容の一例を示す図である。デコーダー216は、期間td1,td2,td3のそれぞれにおいて、入力される印刷データ[SIH,SIL]で規定される論理レベルの選択信号Sを出力する。例えば、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを、期間td1,td2,td3においてH,L,Lレベルとして出力する。
【0046】
デコーダー216が出力する選択信号Sは、選択回路230に入力される。選択回路230は、m個の圧電素子60のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、駆動信号選択回路200は、m個の圧電素子60と同数のm個の選択回路230を有する。
図6は、選択回路230の構成を示す図である。
図6に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232とトランスファーゲート234とを含む。
【0047】
選択信号Sは、トランスファーゲート234において丸印が付されていない正制御端に入力されるとともに、インバーター232によって論理レベルが反転された後、トランスファーゲート234において丸印が付された負制御端にも入力される。また、トランスファーゲート234の入力端には、駆動信号COMが供給されている。そして、トランスファーゲート234は、ハイレベルの選択信号Sが入力された場合に入力端と出力端との間を導通とし、ローレベルの選択信号Sが入力された場合に入力端と出力端との間を非導通とする。すなわち、トランスファーゲート234は、選択信号Sの論理レベルがハイレベルの場合に駆動信号COMに含まれる信号波形を出力端から出力し、選択信号Sの論理レベルがローレベルの場合に駆動信号COMに含まれる信号波形を出力端から出力しない。そして、駆動信号選択回路200は、選択回路230が有するトランスファーゲート234の出力端に出力された信号を、駆動信号VOUTとして出力する。
【0048】
ここで、
図7を用いて駆動信号選択回路200の動作について説明する。
図7は、駆動信号選択回路200の動作を説明するための図である。印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期したシリアル信号として選択制御回路210に入力される。そして、印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期して、m個の圧電素子60に対応するm個のシフトレジスター212において順次転送される。その後、クロック信号SCKの入力が停止すると、シフトレジスター212には、m個の圧電素子60の各々に対応した印刷データ[SIH,SIL]が保持される。なお、印刷データ信号SIは、シフトレジスター212のm段、…、2段、1段の圧電素子60に対応した順に入力される。
【0049】
そして、ラッチ信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、シフトレジスター212に保持されている印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。なお、
図7に示すLT1、LT2、…、LTmは、1段、2段、…、m段のシフトレジスター212に対応するラッチ回路214によってラッチされた印刷データ[SIH,SIL]を示す。
【0050】
デコーダー216は、ラッチされた印刷データ[SIH,SIL]で規定されるドットのサイズに応じて、期間td1,td2,td3のそれぞれにおいて、選択信号Sの論理レベルを
図5に示す内容で出力する。そして、選択回路230が、デコーダー216が出力する選択信号Sの論理レベルに応じて駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成する。
【0051】
具体的には、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,1]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間td1,td2,td3においてH,H,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間td1において台形波形Adpを選択し、期間td2において台形波形Bdpを選択し、期間td3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「大ドットLD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0052】
「大ドットLD」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間td1において中程度の量のインクが吐出され、期間td2において小程度の量のインクが吐出され、期間td3においてインクが吐出されない。そして、吐出された中程度の量のインクと小程度の量のインクとが、媒体Pに着弾し結合することで、媒体Pに「大ドットLD」が形成される。
【0053】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間td1,td2,td3においてH,L,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間td1において台形波形Adpを選択し、期間td2において台形波形Bdpを選択せず、期間td3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「中ドットMD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0054】
「中ドットMD」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間td1において中程度の量のインクが吐出され、期間td2においてインクが吐出されず、期間td3においてインクが吐出されない。そして、吐出された中程度の量のインクが媒体Pに着弾することで、媒体Pに「中ドットMD」が形成される。
【0055】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[0,1]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間td1,td2,td3においてL,H,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間td1において台形波形Adpを選択せず、期間td2において台形波形Bdpを選択し、期間td3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、「小ドットSD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0056】
「小ドットSD」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間td1においてインクが吐出されず、期間td2において小程度の量のインクが吐出され、期間td3においてインクが吐出されない。そして、吐出された小程度の量のインクが媒体Pに着弾することで、媒体Pに「小ドットSD」が形成される。
【0057】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[0,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間td1,td2,td3においてL,L,Hレベルとする。これにより、選択回路230は、期間td1において台形波形Adpを選択せず、期間td2において台形波形Bdpを選択せず、期間td3において台形波形Cdpを選択する。その結果、駆動信号選択回路200は、「非記録ND」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0058】
「非記録ND」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60に供給された場合、期間td1においてインクが吐出されず、期間td2においてインクが吐出されず、期間td3においてインクが吐出されない。したがって、吐出部600からインクが吐出されず、媒体Pにドットが形成されない「非記録ND」となる。このとき、対応する圧電素子60には、台形波形Cdpを含む駆動信号VOUTが入力される。したがって、微振動が実行される。その結果、対応する吐出部600のノズル開孔部付近のインク粘度が増大するおそれが低減する。
【0059】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1において、吐出モジュール22は、駆動信号COMが供給されることで駆動する圧電素子60を有し、圧電素子60の駆動により液体の一例であるインクを吐出する。
【0060】
4.吐出モジュールの構造
次に、プリントヘッド20が有する吐出モジュール22の構造について説明する。
図8は、吐出モジュール22の構造を示す分解斜視図であり、
図9は、吐出モジュール22の平面図であり、
図10は、
図9に示すA-a断面を示す断面図であり、
図11は、
図10の要部詳細図であり、
図12は、
図9に示すB-b断面を示す断面図である。ここで、吐出モジュール22の構造を説明するにあたり、以下の説明では、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、及びZ軸を用いる。また、X軸、Y軸、及びZ軸のそれぞれの向きを特定する場合、図示するX軸沿った方向を示す矢印の起点側を-X側、先端側を+X側と称し、図示するY軸沿った方向を示す矢印の起点側を-Y側、先端側を+Y側と称し、図示するZ軸沿った方向を示す矢印の起点側を-Z側、先端側を+Z側と称する場合がある。
【0061】
図8に示すように、吐出モジュール22は、Z軸に沿って-Z側から+Z側に向かいインクを吐出する。吐出モジュール22は、圧力室基板310、連通板315、ノズルプレート320、コンプライアンス基板345、保護基板330、ケース部材340、配線基板420、後述する振動板350、及び後述する圧電素子60を有する。
【0062】
図9に示すように、圧力室基板310には、複数の圧力室312がY軸に沿って並ぶ圧力室列が、X軸に沿った方向に2列で配置されている。ここで、圧力室基板310に配置された2列の圧力室列のうち、+X側に配置された圧力室列を第1圧力室列と称し、第1圧力室列の-X側に配置された圧力室列を第2圧力室列と称する場合がある。なお、
図9は、吐出モジュール22の平面図であるが、圧力室基板310の周辺の構成を主に図示し、保護基板330、及びケース部材340の図示を省略している。
【0063】
各圧力室列を構成する複数の圧力室312は、X軸に沿った方向における位置が略同じ位置となるように、Y軸に沿った直線上に配置されている。そして、Y軸に沿って隣り合う圧力室312は、
図12に示す隔壁311によって区画されている。なお、圧力室312の配置は上述した配置に限定されるものではなく、例えば、各圧力室列を構成する複数の圧力室312は、X軸に沿った方向における位置がずれた位置となるいわゆる千鳥配置であってもよい。また、圧力室312の形状は、+Z側からの平面視においてX軸に沿った方向の長さがY軸方向の長さよりも長い長方形に形成されているとして説明を行うが、+Z側からの平面視における圧力室312の形状は、これ限定されるものではなく、例えば、平行四辺形状、多角形状、円形状、オーバル形状等であってもよい。ここで、オーバル形状とは長方形状を基本として長手方向の両端部を半円状とした形状であって、角丸長方形状、楕円形状、卵形状などが含まれる。
【0064】
図8、及び
図10に示すように、圧力室基板310の+Z側には、連通板315と、ノズルプレート320及びコンプライアンス基板345とが積層されている。
【0065】
連通板315には、圧力室312とノズル321とを連通するノズル連通路316が設けられている。また、連通板315には、複数の圧力室312が連通し、共通液室として機能するマニホールド400の一部を構成する第1マニホールド部317、及び第2マニホールド部318が設けられている。第1マニホールド部317は、連通板315をZ軸に沿って貫通して設けられている。第2マニホールド部318は、連通板315をZ軸に沿って貫通することなく、連通板315の+Z側の面に開口して設けられている。
【0066】
さらに、連通板315には、圧力室312のX軸に沿った方向の一方の端部と連通する供給連通路319が、圧力室312の各々に対応し、独立して設けられている。この供給連通路319が、第2マニホールド部318と各圧力室312とを連通することで、マニホールド400の内部に貯留されるインクが各圧力室312に供給される。ここで、連通板315は、圧力室基板310と略同一の熱膨張率の材料が用いられていることが好ましい。これにより、圧力室基板310及び連通板315の温度が変化した場合に、熱膨張率の違いに起因して圧力室基板310及び連通板315の少なくとも一方に反りが生じるおそれが低減される。
【0067】
ノズルプレート320は、連通板315の圧力室基板310とは反対側、すなわち、連通板315の+Z側の面に設けられている。ノズルプレート320には、ノズル連通路316を介して各圧力室312に連通するノズル321が形成されている。すなわち、ノズルプレート320には、複数の圧力室312に対応する複数のノズル321が形成されている。
【0068】
複数のノズル321は、Y軸に沿って並んで配置することでノズル列を形成している。ノズルプレート320には、これら複数のノズル321で形成されたノズル列がX軸に沿った方向に2列で形成されている。そして、2列のノズル列の内の一方が第1圧力室列に対応し、他方が第2圧力室列に対応する。各ノズル列の複数のノズル321は、X軸に沿った方向における位置が略同じ位置となるようにY軸に沿って形成されている。なお、ノズル321の配置は上述した配置に限定されるものではなく、例えば、各ノズル列を形成する複数のノズル321は、X軸に沿った方向における位置がずれた位置となるいわゆる千鳥配置であってもよい。ここで、ノズルプレート320は、連通板315と略同一の熱膨張率の材料が用いられることが好ましい。これにより、ノズルプレート320及び連通板315の温度が変化した場合に、熱膨張率の違いに起因してノズルプレート320及び連通板315の少なくとも一方に反りが生じるおそれが低減される。
【0069】
コンプライアンス基板345は、ノズルプレート320とともに、連通板315の圧力室基板310とは反対側、すなわち、連通板315の+Z側の面に設けられている。また、コンプライアンス基板345は、ノズルプレート320の周囲に設けられ、連通板315に設けられた第1マニホールド部317、及び第2マニホールド部318の開口を封止する。コンプライアンス基板345は、可撓性を有する封止膜346と、硬質の材料からなる固定基板347と、を含む。また、コンプライアンス基板345には、マニホールド400と対向する領域において、固定基板347が厚さ方向において完全に除去された開口部348が形成されている。すなわち、マニホールド400の一方側の面は、可撓性を有する封止膜346のみで封止されたコンプライアンス部349となっている。
【0070】
一方、圧力室基板310のノズルプレート320等とは反対側、すなわち、圧力室基板310の-Z側には、振動板350と、振動板350を撓み変形させることで圧力室312の内部に貯留されるインクに圧力を付加する複数の圧電素子60と、が位置している。複数の圧電素子60は、振動板350の-Z側の面において、Y軸に沿って並んで配置している。振動板350には、これら複数の圧電素子60で形成された列がX軸に沿った方向に2列で形成されている。なお、
図10では圧電素子60の構成を簡略化して図示している。
【0071】
また、圧力室基板310の-Z側には、圧力室基板310と略同じ大きさの保護基板330が接着剤等によって接合されている。保護基板330は、圧電素子60を保護する空間である保持部331を有する。保持部331は、Y軸に沿って並んで配置された圧電素子60の列毎に独立して設けられている。すなわち、保持部331は、X軸に沿った方向において2つ並んで形成されている。また、保護基板330には、X軸に沿った方向に並んで形成された2つの保持部331の間で、Z軸に沿った方向において保護基板330を貫通する貫通孔332が設けられている。
【0072】
また、保護基板330上には、ケース部材340が固定されている。ケース部材340は、複数の圧力室312に連通するマニホールド400を圧力室基板310とともに画成する。ケース部材340は、-Z側からの平面視において上述した連通板315と略同一の形状であって、保護基板330に接合されるとともに、上述した連通板315にも接合されている。
【0073】
ケース部材340の保護基板330側には、圧力室基板310及び保護基板330を収容可能な深さの空間である収容部341が形成されている。この収容部341は、保護基板330が圧力室基板310に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、収容部341に圧力室基板310、及び保護基板330が収容された状態で、収容部341のノズルプレート320側の開口面が、連通板315によって封止されている。
【0074】
また、ケース部材340には、X軸に沿った方向における収容部341の両外側のそれぞれに、第3マニホールド部342が画成されている。このケース部材340に画成された第3マニホールド部342は、連通板315に設けられた第1マニホールド部317、及び第2マニホールド部318とともにマニホールド400を構成する。マニホールド400は、Y軸に沿った方向に亘り連続して設けられ、マニホールド400と各圧力室312とを連通する供給連通路319が、Y軸に沿った方向において並んで配置されている。
【0075】
また、ケース部材340には、マニホールド400と連通し、マニホールド400にインクを供給するための供給口344が設けられている。さらにケース部材340には、保護基板330の貫通孔332と連通し、配線基板420が挿通される接続口343が形成されている。
【0076】
以上のように構成された吐出モジュール22には、インク容器2に貯留されたインクが供給口344から取り込まれる。そして、供給口344から供給されたインクによってマニホールド400からノズル321に至るまで内部が満たされた後、駆動信号選択回路200を含む集積回路421から、複数の圧力室312のそれぞれに対応する圧電素子60に、駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTが供給される。これにより圧電素子60が変形し、圧電素子60の変形と共に振動板350がたわみ変形する。その結果、各圧力室312の内部圧力が高まり、対応するノズル321からインクが吐出される。
【0077】
次に、吐出モジュール22において、圧力室基板310の-Z側に積層形成される構成について詳しく説明する。吐出モジュール22の圧力室基板310の-Z側には、上述した振動板350、圧電素子60に加えて、個別リード電極391、共通リード電極392、測定用リード電極393、及び抵抗配線401が積層されている。
【0078】
図9~
図12に示すように、振動板350は、圧力室基板310側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜351と、弾性膜351の-Z側に設けられた酸化ジルコニウム膜からなる絶縁体膜352と、を含んで構成されている。そして、圧力室基板310を+Z側から異方性エッチングすることにより形成された圧力室312等の液体流路の内、-Z側の面が振動板350に含まれる弾性膜351で構成されている。なお、振動板350の構成は上述した構成に限定されるものではなく、振動板350は、例えば、弾性膜351、又は絶縁体膜352で構成されていてもよく、弾性膜351、及び絶縁体膜352に加えて他の膜を含んで構成されてもよい。ここで、振動板350に含まれるその他の膜としては、例えば、シリコンや窒化ケイ素等を含む膜が挙げられる。
【0079】
圧電素子60は、振動板350の-Z側の面において、+Z側から-Z側に向かい積層された電極360、圧電体370、及び電極380を含む。すなわち、圧電素子60は、電極360,380、及び圧電体370を含み、Z軸に沿った方向において、電極360、圧電体370、電極380の順に積層されている。
【0080】
電極360,380は、いずれも配線基板420と電気的に接続されている。これにより、電極360,380は、配線基板420に実装される集積回路421に含まれる駆動信号選択回路200が出力する駆動信号VOUTと、配線基板420を伝搬する基準電圧信号VBSと、を圧電体370に供給する。すなわち、圧電素子60の電極360には、ノズル321から吐出されるインクの吐出量に応じて電圧値が変化する駆動信号VOUTが供給され、圧電素子60の電極380には、インクの吐出量に関わらず電圧値が一定の基準電圧信号VBSが供給される。これにより、電極360と電極380との間に電位差が生じ、その結果、圧電体370が変形する。すなわち、圧電素子60が駆動される。そして、圧電素子60の駆動に伴い振動板350が変形又は振動し、圧力室312の容積が変化する。この圧力室312の容積の変化によって、圧力室312に貯留されているインクに圧力が付与される。その結果、ノズル連通路316を介してノズル321からインクが吐出される。
【0081】
ここで、以下の説明において、圧電素子60の内、電極360と電極380とに電圧を印加した場合に、圧電体370に圧電歪みが生じる部分を活性部410と称し、圧電体370に圧電歪みが生じない部分を非活性部415と称する。すなわち、圧電素子60の内、圧電体370が電極360と電極380とで挟まれた部分が活性部410に相当し、圧電体370が電極360と電極380とで挟まれていない部分が非活性部415に相当する。また、圧電素子60を駆動させた場合に、Z軸に沿った方向に変位する部分を可撓部と称し、Z軸に沿った方向に変位しない部分を非可撓部と称する。すなわち、圧電素子60の内、Z軸に沿った方向において圧力室312と対向する部分が可撓部に相当し、圧力室312の外側部分が非可撓部に相当する。なお、以下の説明において活性部410を能動部と称し、非活性部415を非能動部と称する場合もある。
【0082】
そして、活性部410に位置する電極360,380のいずれか一方が活性部410毎に独立する個別電極として構成され、活性部410に位置する電極360,380の他方が複数の活性部410に共通する共通電極として構成される。なお、以下の説明では、電極360が個別電極として構成され、電極380が共通電極として構成されているとして説明を行う。
【0083】
具体的には、電極360は、Z軸に沿った方向において圧電体370の+Z側に設けられ、圧力室312に対応して切り分けられ、活性部410毎に独立する個別電極を構成する。すなわち、電極360は、複数の圧力室312のそれぞれに対応して個別に設けられている。この際、電極360のY軸に沿った方向の幅は、圧力室312のY軸に沿った方向の幅よりも狭い。すなわち、Y軸に沿った方向において、電極360の端部は、圧力室312に対向する領域の内側に位置している。
【0084】
また、電極360の+X側の端部360a、及び電極360の-X側の端部360bは、それぞれが圧力室312の外側に位置している。例えば、第1圧力室列では、
図11に示すように、電極360の端部360aは、圧力室312の+X側の端部312aよりも+X側に位置し、電極360の端部360bは、圧力室312の-X側の端部312bよりも-X側に位置している。
【0085】
圧電体370は、
図9に示すように、X軸に沿った方向の長さを所定長さとし、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。すなわち、圧電体370は、所定の厚さで圧力室312が並設される並設方向に沿って連続して設けられている。このような圧電体370の厚さは特に限定されないが、例えば、1000ナノメートルから4000ナノメートル程度の厚さで形成される。
【0086】
また、
図11に示すように、圧電体370のX軸に沿った方向の長さは、圧力室312の長手方向であるX軸に沿った方向の長さよりも長い。このため、圧電体370は、圧力室312のX軸に沿った方向の両側において、圧力室312の外側まで延在するように位置している。圧電体370が、X軸に沿った方向において圧力室312の外側まで延在していることで、振動板350の強度が向上し、活性部410を駆動させて圧電素子60を変位させた際、振動板350や圧電素子60にクラック等の異常が発生するおそれが低減する。
【0087】
また、
図11に示すように、例えば、第1圧力室列に対応する圧電体370の+X側の端部370aは、電極360の端部360aよりも外側となる+X側に位置している。すなわち、電極360の端部360aは圧電体370によって覆われている。一方、第1圧力室列に対応する圧電体370の-X側の端部370bは、電極360の端部360bよりも内側となる+X側に位置している。すなわち、電極360の端部360bは圧電体370では覆われていない。
【0088】
また、圧電体370には、
図9、及び
図12に示すように、各隔壁311に対応して他の領域よりも厚さが薄い部分である溝部371が形成されている。ここで、溝部371は、
図11に示すように、圧電体370をZ軸に沿った方向で完全に除去されていてもよい。すなわち、圧電体370が他の領域よりも厚さの薄い部分を有するとは、圧電体370がZ軸に沿った方向において完全に除去されたものも含まれる。もちろん、溝部371の底面の圧電体370が、他の部分の圧電体370よりも薄く形成されていてもよい。さらに、溝部371のY軸に沿った方向の長さ、すなわち、溝部371の幅は、隔壁311の幅と同一もしくは、それより広くなっている。このような溝部371は、-Z側から平面視において、矩形状となるように形成されている。なお、溝部371の-Z側から平面視した形状は、矩形状に限定されるものではなく、5角形以上の多角形状であってもよく、円形状や楕円形状等であってもよい。
【0089】
圧電体370に溝部371を設けることで、圧力室312のY軸に沿った方向の端部と対向する振動板350の部分であって、振動板350の腕部の剛性が抑えられる。これにより、圧電素子60をより良好に変位させることができる。
【0090】
電極380は、
図9、
図11、及び
図12に示すように、圧電体370に対して、電極360とは反対側であって、圧電体370の-Z側に設けられ、複数の活性部410に共通する共通電極を構成している。すなわち、電極380は、複数の圧力室312に対して共通に設けられている。電極380は、X軸に沿った方向の長さを所定長さとし、Y軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。この電極380は、溝部371の内面、すなわち圧電体370の溝部371の側面上に加え、溝部371の底面である絶縁体膜352上にも設けられている。なお、溝部371の内面に関しては、電極380は、溝部371の内面の一部のみに設けられていてもよく、溝部371の内面の全面に亘って設けられていなくてもよい。
【0091】
また、例えば、第1圧力室列では、
図11に示すように、電極380の+X側の端部380aは、圧電体370で覆われている電極360の端部360aよりも外側となるように+X側に配置されている。すなわち、電極380の端部380aは、圧力室312の端部312aよりも外側となる+X側で、電極360の端部360aよりも外側となる+X側に位置している。そして、電極380の端部380aは、X軸に沿った方向において、圧電体370の端部370aと実質的に一致している。このため、活性部410の+X側の端部、すなわち活性部410と非活性部415との境界は、電極360の端部360aによって規定されている。
【0092】
一方、電極380の-X側の端部380bは、圧力室312の端部312bよりも外側となる-X側に配置されているが、圧電体370の端部370bよりも内側となる+X側に配置されている。上述のように圧電体370の端部370bは、電極360の端部360bよりも+X側となる内側に位置している。したがって電極380の端部380bは、電極360の端部360bよりも+X側となる圧電体370上に位置している。このため、電極380の端部380bの-X側には、圧電体370の表面が露出された部分が存在する。
【0093】
このように電極380の端部380bは、圧電体370の端部370b、及び電極360の端部360bよりも+X側に配置されている。そのため、活性部410の-X側の端部、すなわち活性部410と非活性部415との境界は、電極380の端部380bによって規定される。
【0094】
また、電極380の端部380bの外側、すなわち電極380の端部380bのさらに-X側には、電極380と同一層となるが、電極380とは電気的に不連続となる配線部385が設けられている。また、配線部385は、電極380の端部380bと接触しないように間隔を空けた状態で、圧電体370上から圧電体370よりも-X側に延設された電極360上に亘って形成されている。この配線部385は、活性部410毎に独立して設けられている。すなわち、配線部385は、Y軸に沿った方向において所定の間隔で複数配置されている。なお、配線部385は、電極380とは別の層で形成されていてもよいが、電極380と同一層で形成することが好ましい。これにより、配線部385の製造工程を簡略化してコストの低減を図ることができる。
【0095】
また、圧電素子60の電極360には個別リード電極391が接続され、圧電素子60の電極380には駆動用共通電極である共通リード電極392がそれぞれ電気的に接続されている。また、個別リード電極391、及び共通リード電極392の圧電素子60に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有する配線基板420が電気的に接続されている。そして、配線基板420には、制御機構10、及び温度情報出力回路26を含む複数の回路と電気的に接続される不図示の配線が形成されている。このような配線基板420は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuit)により構成されている。なお、配線基板420は、可撓性を有する任意の基板によって構成されてもよく、例えば、FPCに代えて、FFC(Flexible Flat Cable)などで構成されてもよい。
【0096】
また、個別リード電極391及び共通リード電極392は、保護基板330に形成された貫通孔332から露出するように延設されている。そして、貫通孔332の内側で配線基板420と電気的に接続されている。また、配線基板420には、圧電素子60を駆動するための駆動信号VOUTを出力する駆動信号選択回路200が搭載された集積回路421が実装されている。
【0097】
個別リード電極391と共通リード電極392とは、同一層に形成されているが、電気的には不連続となるように形成されている。これにより、個別リード電極391と共通リード電極392とをそれぞれ個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。もちろん、個別リード電極391と共通リード電極392とが異なる層に形成されていてもよい。なお、個別リード電極391及び共通リード電極392は、電極360、及び電極380や振動板350との密着性を向上する密着層を有していてもよい。
【0098】
個別リード電極391は、活性部410毎、すなわち、電極360毎に設けられている。
図11に示すように、例えば、圧力室列では、個別リード電極391は、配線部385を介して、圧電体370の外側に設けられた電極360の端部360b付近に接続され、圧力室基板310上、実際には振動板350上まで-X側に引き出されている。
【0099】
一方、
図9に示すように、例えば、第1圧力室列では、共通リード電極392は、Y軸に沿った方向の両端部において、圧電体370上の共通電極を構成する電極380上から振動板350上にまで-X側に引き出されている。また、共通リード電極392は、延設部392aと延設部392bとを有する。
図9、及び
図11に示すように、例えば、第1圧力室列では、延設部392aは、圧力室312の端部312aに対応する領域においてY軸に沿った方向に沿って延設され、延設部392bは、圧力室312の端部312bに対応する領域においてY軸に沿った方向に沿って延設される。これら延設部392a、及び延設部392bは、複数の活性部410に対してY軸に沿った方向に亘って連続して設けられている。
【0100】
また、延設部392a、及び延設部392bは、X軸に沿った方向において、圧力室312の内側から圧力室312の外側まで延設されている。本実施形態では、圧電素子60の活性部410は、圧力室312のX軸に沿った方向の両端部において圧力室312の外側まで延設されており、延設部392a、及び延設部392bは、この活性部410上を圧力室312の外側まで延設されている。
【0101】
図11に示すように、振動板350の-Z側の面には、抵抗配線401が設けられている。抵抗配線401が、圧力室312の温度を検出するための構成であって、上述した温度検出回路24の少なくとも一部を構成する。本実施形態の温度検出回路24は、金属や半導体等の電気抵抗値が温度によって変化する特性を利用する。このような抵抗配線401の材料としては、電気抵抗値が温度依存性を有する材料であればよく、例えば、金(Au)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等を用いることができる。このうち、白金(Pt)は、温度による抵抗値変化が大きく、安定性と精度が高いという観点から抵抗配線401の材料として好適に採用できる。抵抗配線401は、電極360と同層において電極360と電気的に不連続となるように、振動板350の-Z側の面に積層されている。
【0102】
図9に示すように、抵抗配線401は振動板350に積層された連続した配線パターンであって、X軸に沿った方向において+X側に位置する抵抗配線401の一端は、測定用リード電極393aと接続され、X軸に沿った方向において-X側に位置する抵抗配線401の他端は、測定用リード電極393bと接続されている。そして、測定用リード電極393a,393bが、配線基板420と電気的に接続される。これにより、抵抗配線401は、配線基板420を介して温度情報出力回路26と電気的に接続される。そして、温度情報出力回路26は、圧力室312の温度に応じて変化する抵抗配線401の電気抵抗値であって、圧力室312の温度に応じて変化する抵抗配線401の両端電圧を、圧力室312の温度に応じた信号として取得する。
【0103】
このような抵抗配線401は、X軸に沿った方向において+X側となる第1圧力室列側蛇行パターンと、X軸に沿った方向において-X側となる第2圧力室列側蛇行パターンと、を含む。第1圧力室列側蛇行パターンは、吐出モジュール22を-Z側から見た場合に第1圧力室列を構成する各圧力室312と連通する供給連通路319と少なくとも一部が重なるように設けられ、Y軸に沿った方向に沿って蛇行している。第2圧力室列側蛇行パターンは、吐出モジュール22を-Z側から見た場合に第2圧力室列を構成する各圧力室312と連通する供給連通路319と少なくとも一部が重なるように設けられ、Y軸に沿った方向に沿って蛇行している。すなわち、温度検出回路24に含まれる抵抗配線401は、複数の圧力室312が形成する第1圧力室列に対応する第1圧力室列側蛇行パターンと、複数の圧力室312が形成する第2圧力室列に対応する第2圧力室列側蛇行パターンと、を含む。また、
図10、及び
図11に示すように、圧力室312の-Z側の端部と抵抗配線401とのZ軸に沿った方向における距離は、圧力室312のZ軸に沿った方向における寸法より短い。また、第1圧力室列では、圧力室312の端部312aと抵抗配線401とのX軸に沿った方向における最長距離は、圧力室312のX軸に沿った方向における寸法より短い。これにより、抵抗配線401の電気抵抗値は、圧力室312の温度変化に対応して変化しやすい。
【0104】
測定用リード電極393a、及び測定用リード電極393bを含む測定用リード電極393は、個別リード電極391、及び共通リード電極392と同一層において、電気的に不連続となるように形成されている。これにより、測定用リード電極393を、個別リード電極391及び共通リード電極392と個別に形成する場合に比べて、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
【0105】
測定用リード電極393は、保護基板330に形成された貫通孔332内に露出するように延設され、この貫通孔332内で配線基板420と電気的に接続されている。これにより、温度情報出力回路26は、配線基板420を介して、抵抗配線401の電気抵抗値であって、当該電気抵抗値に応じた電圧値を取得することができる。そして、温度情報出力回路26は、制御回路100からの温度取得要求信号TDに応じて、取得した抵抗配線401の電気抵抗値であって、当該抵抗値に応じた電圧値に基づく温度情報tcに応じた温度情報信号TIを出力する。
【0106】
以上のように構成された吐出モジュール22では、温度検出回路24に含まれる抵抗配線401が、吐出モジュール22の内部に位置する振動板350に積層して設けられていることで、温度検出回路24である抵抗配線401を圧力室312の近傍に配置することが可能となり、その結果、抵抗配線401の電気抵抗値に基づき検出される温度と圧力室312の温度との乖離を小さくすることができる。すなわち、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度の検出精度が向上する。その結果、温度情報出力回路26が出力する温度情報信号TIに含まれる圧力室312の温度の情報の信頼性が向上する。したがって、温度情報信号TIに基づいて補正される制御信号Ctrl-Hの精度が向上し、制御回路100による圧力室312に貯留されるインク温度に応じた吐出モジュール22の吐出制御の精度が向上する。
【0107】
すなわち、本実施形態のプリントヘッド20が有する吐出モジュール22は、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層される積層方向であるZ軸に沿った方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に位置し、駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTを受けて駆動する圧電素子60と、圧電素子60に対して積層方向であるZ軸に沿った方向の一方側である+Z側に位置し、圧電素子60の駆動により変形する振動板350と、振動板350に対して積層方向であるZ軸に沿った方向の一方側である+Z側に位置し、振動板350の変形により容積が変化する圧力室312が複数設けられている圧力室基板310と、圧力室312の容積の変化に応じてインクを吐出するノズル321と、振動板350に対して積層方向であるZ軸に沿った方向の他方側である-Z側に位置し、圧力室312の温度を検出する温度検出回路24の少なくとも一部を構成する抵抗配線401と、を有する。
【0108】
これにより、温度検出回路24である抵抗配線401の電気抵抗値に基づき検出される温度と圧力室312内の温度との差を小さくすることができ、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度の検出精度が向上する。その結果、制御回路100による圧力室312内のインクの温度に適した吐出モジュール22の吐出制御が可能となる。
【0109】
さらに、温度検出回路24である抵抗配線401の少なくとも一部が、振動板350に積層されていることで、温度検出回路24である抵抗配線401をより圧力室312の近傍に配置することができ、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度の検出精度がさらに向上する。その結果、制御回路100による圧力室312内のインクの温度により適した吐出モジュール22の吐出制御が可能となる。
【0110】
5.温度情報出力回路の構成、及び動作
以上のように、本実施形態における液体吐出装置1では、プリントヘッド20が有する吐出モジュール22の内部であって、振動板350に吐出モジュール22の温度を検出する温度検出回路24に含まれる抵抗配線401が設けられている。すなわち、温度検出回路24に含まれる抵抗配線401は、インクが貯留される圧力室312の近傍に設けられている。これにより、抵抗配線401の電気抵抗値の変化に基づいて検出される温度と、圧力室312の内部の温度であって圧力室312の内部に貯留されているインクの温度との温度差を小さくすることができ、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度であって圧力室312に貯留されるインクの温度の検出精度が向上する。
【0111】
一方で、温度検出回路24に含まれる抵抗配線401が、インクが貯留される圧力室312の近傍に設けられるが故に、抵抗配線401で検出された温度情報tcを含む温度検出信号TCが伝搬する配線が、吐出モジュール22を駆動する制御信号Ctrl-Hや駆動信号COMが伝搬する配線の近傍に位置し、その結果、抵抗配線401で検出された温度情報tcを含む温度検出信号TCに、制御信号Ctrl-Hや駆動信号COMに起因して生じたノイズが重畳するおそれが高まり、温度検出回路24で検出される圧力室312の温度の検出精度が低下するおそれがあるとの新たな問題が生じた。
【0112】
また、吐出モジュール22は、圧電素子60の駆動により生じる振動板350の変形又は振動により圧力室312の容積を変化させることで、圧力室312に収容されているインクに圧力を付与し、ノズル321からインクを吐出する。そのため、圧力室312の圧力変化に起因して、圧力室312に貯留されるインクの温度が瞬間的に変化する。このとき、温度検出回路24に含まれる抵抗配線401が圧力室312の近傍に位置するが故に、温度検出回路24は、圧力室312の圧力変化に起因して生じる温度変化をも検出する可能性がある。そして、仮に温度検出回路24に含まれる抵抗配線401が、圧力室312の圧力変化に起因して生じる温度変化をも検出した場合、温度検出回路24が出力する温度検出信号TCは、圧力室312の温度の取得タイミングの僅かな違いによって変動することとなり、その結果、温度検出回路24が出力する温度検出信号TC、及び温度検出信号TCに基づく温度情報信号TIの信頼性を低下させるおそれがある。
【0113】
係る問題に対して、本実施形態の液体吐出装置1では、温度情報出力回路26が、温度検出回路24が異なるタイミングで検出した複数の温度情報tcを取得し、取得した複数の温度情報tcに基づく温度情報信号TIを出力する。そして、制御回路100が、入力される温度情報信号TIに基づいて、駆動信号COMを含む各種の信号を補正する。すなわち、温度情報出力回路26は、取得した複数の温度情報tcに応じた温度情報信号TIを出力し、駆動信号COMは、温度情報出力回路26が出力する温度情報信号TIに基づいて補正される。これにより、1つの温度情報tcに基づいて生成された温度情報信号TIと比較して、温度情報出力回路26が出力する温度情報信号TIの信頼性が向上する。すなわち、吐出モジュール22における温度の取得精度が向上する。したがって、制御回路100における温度情報信号TIに基づく制御信号Ctrl-Hの補正精度が向上し、制御信号Ctrl-Hに含まれる基駆動信号dOに基づいて駆動回路50が出力する駆動信号COMの精度が向上する。その結果、吐出モジュール22から吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0114】
換言すれば、本実施形態の液体吐出装置1、及びプリントヘッド20では、駆動信号COMが、温度検出回路24が異なるタイミングで検出した圧力室312の温度に応じた複数の温度情報tcに基づいて補正されることで、駆動回路50が出力する駆動信号COMの精度が向上し、その結果、吐出モジュール22から吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0115】
ここで、係る動作を実現する温度情報出力回路26の具体的な構成、及び動作について説明する。
図13は、温度情報出力回路26の機能構成を示す図である。温度情報出力回路26は、制御回路100から入力される温度取得要求信号TDに基づいて、吐出モジュール22-1~22-nのそれぞれから入力される温度検出信号TC1~TCnに含まれる温度情報tc1~tcnを取得し、取得した温度情報tc1~tcnに応じた温度情報信号TIを生成し、制御回路100に出力する。
【0116】
図13に示すように、温度情報出力回路26は、制御回路500、増幅回路510-1~510-n、マルチプレクサー530、AD変換回路540、及び記憶回路550を含む。
【0117】
増幅回路510-1~510-nのそれぞれには、対応する温度検出信号TC1~TCnのそれぞれが入力される。そして、増幅回路510-1~510-nのそれぞれは、入力される温度検出信号TC1~TCnを増幅することで増幅検出信号ATC1~ATCnとして出力する。
【0118】
具体的には、増幅回路510-1には、吐出モジュール22-1が出力する温度検出信号TC1が入力される。増幅回路510-1は、入力される温度検出信号TC1を増幅し、増幅検出信号ATC1として出力する。また、増幅回路510-p(pは1~nのいずれか)には、吐出モジュール22-pが出力する温度検出信号TCpが入力される。そして、増幅回路510-pは、入力される温度検出信号TCpを増幅し、増幅検出信号ATCpとして出力する。
【0119】
増幅回路510-1~510-nのそれぞれが出力する増幅検出信号ATC1~ATCnは、マルチプレクサー530に入力される。また、マルチプレクサー530には、制御回路500が出力するセレクト信号Selが入力されている。マルチプレクサー530は、入力されるセレクト信号Selに従って、増幅検出信号ATC1~ATCnのいずれかを選択し、選択温度信号STCとして出力する。
【0120】
AD変換回路540には、マルチプレクサー530が出力する選択温度信号STCが入力される。AD変換回路540は、入力される選択温度信号STCを所定のサンプリング周期で取得し、逐次デジタル信号に変換し、制御回路500に出力する。すなわち、AD変換回路540は、温度情報出力回路26に入力される温度検出信号TC1~TCnの内、マルチプレクサー530によって選択された温度検出信号TCに含まれる温度情報tcを所定のサンプリング周期毎に取得し、デジタル信号に変換する。そして、AD変換回路540は、取得した温度情報tcに応じた情報をデジタル信号に変換し、制御回路500に出力する。換言すれば、AD変換回路540は、マルチプレクサー530によって選択された温度検出信号TCに対応する吐出モジュール22の温度に応じた情報を逐次取得し、取得した温度に応じたデジタル信号を逐次、制御回路500に出力する。以下の説明では、AD変換回路540が出力するデジタル信号をデジタル温度情報dtcと称する。
【0121】
制御回路500には、温度情報出力回路26に入力された温度取得要求信号TDと、吐出モジュール22からのインクの吐出周期であって周期tpを規定するラッチ信号LATと、AD変換回路540が出力するデジタル温度情報dtcと、が入力される。そして、制御回路500は、入力される温度取得要求信号TDに応じて、温度情報出力回路26の各種回路の動作を制御する。これにより、温度情報出力回路26は、入力される温度取得要求信号TDに応じた温度情報信号TIを生成し、出力する。
【0122】
具体的には、制御回路500は、入力される温度取得要求信号TDを解析することで、温度を取得する吐出モジュール22を特定する。そして、制御回路500は、ラッチ信号LATによって規定されるタイミングで、温度取得要求信号TDの解析結果に応じた吐出モジュール22に対応する温度検出信号TCを選択する為のセレクト信号Selを出力する。これにより、制御回路500には、温度取得要求信号TDに基づいて特定した吐出モジュール22に対応する温度検出信号TCに含まれる温度情報tcに応じたデジタル温度情報dtcが、AD変換回路540のサンプリング周期に応じて逐次入力される。
【0123】
このとき制御回路500は、入力されるデジタル温度情報dtcを記憶回路550に保持するためのメモリー制御信号MAを出力する。これにより、AD変換回路540のサンプリング周期に応じて逐次入力されるデジタル温度情報dtcが、順に記憶回路550に保持される。このような記憶回路550としては、例えば、レジスターやメモリー等を含んで構成することができる。
【0124】
また、制御回路500は、デジタル温度情報dtcの取得が完了した後、記憶回路550に保持されるデジタル温度情報dtcを読み出す為のメモリー制御信号MAを出力する。これにより制御回路500には、所定の期間にAD変換回路540が出力した複数のデジタル温度情報dtcを含むメモリー読出信号MRが入力される。すなわち、制御回路500は、所定の期間にAD変換回路540が出力した複数のデジタル温度情報dtcを取得する。そして、制御回路500は、取得した複数のデジタル温度情報dtcから温度情報信号TIを生成し、出力する。すなわち、制御回路500は、温度取得要求信号TDの解析結果に応じて特定された吐出モジュール22の温度に応じた温度情報信号TIを出力する。
【0125】
以上のように構成された温度情報出力回路26による温度情報tcの取得方法、及び取得した温度情報tcに基づく温度情報信号TIの生成方法の具体例について説明する。
図14は、温度情報出力回路26による温度情報tcの取得タイミングの一例を示す図である。
【0126】
図14に示すように、吐出モジュール22からインクが吐出される吐出周期に含まれる複数の周期tpの内、任意のタイミングの周期tpである周期tp(q)において、温度情報出力回路26には、温度取得要求信号TDが入力される。温度情報出力回路26の制御回路500は、入力される温度取得要求信号TDを解析することで、温度取得要求信号TDによって要求される温度を取得すべき吐出モジュール22を特定する。
【0127】
その後、吐出モジュール22からインクが吐出される吐出周期に含まれる複数の周期tpの内、周期tp(q)に続く周期tp(q+1)において、制御回路500は、温度を取得すべき吐出モジュール22に対応するセレクト信号Selを出力する。これにより、マルチプレクサー530は、温度の取得を要求された吐出モジュール22に対応する温度検出信号TCを増幅した増幅検出信号ATCを選択する。その結果、温度の取得を要求された吐出モジュール22に対応する増幅検出信号ATCが、AD変換回路540に入力される。
【0128】
AD変換回路540は、周期tp(q+1)において入力される増幅検出信号ATCを、所定のサンプリング周期に基づいて逐次取得する。すなわち、AD変換回路540は、温度の取得を要求された吐出モジュール22の温度に応じた温度検出信号TCを増幅した増幅検出信号ATCであって、温度の取得を要求された吐出モジュール22の温度に応じた温度検出信号TCに含まれる複数の温度情報tcを増幅した複数の情報を、所定のサンプリング周期に応じた異なるタイミングで取得する。これにより、AD変換回路540は、複数の温度情報tcを増幅した複数の情報に対応する複数のデジタル温度情報dtcを、制御回路500に逐次出力する。
【0129】
すなわち、温度情報出力回路26が、温度検出回路24が検出した温度情報tcに基づくデジタル温度情報dtcを取得する異なるタイミングは、吐出モジュール22が駆動信号COMを受けてインクを吐出する期間であって、吐出モジュール22にラッチ信号LATが入力された後、次にラッチ信号LATが入力されるまでの期間である周期tp(q+1)に含まれる。
【0130】
そして、吐出モジュール22からのインクの吐出周期である周期tpの内、周期tp(q+1)に続く周期tp(q+2)において、制御回路500は、複数のデジタル温度情報dtcに基づく温度情報信号TIを生成し、制御回路100に出力する。すなわち、制御回路500は、温度取得要求信号TDに基づいて指定された吐出モジュール22の温度に対応する複数のデジタル温度情報dtcに基づいて、温度情報信号TIを生成し、制御回路100に出力する。
【0131】
その後、制御回路100は、入力される温度情報信号TIに基づいて制御信号Ctrl-Hの補正値を算出し、吐出モジュール22からのインクの吐出周期である周期tpの内、周期tp(q+2)に続く周期tp(q+3)において、算出した補正値に基づいて補正した制御信号Ctrl-Hを出力する。これにより、駆動回路50は、周期tp(q+3)において温度情報信号TIに基づいて補正された駆動信号COMを出力する。
【0132】
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1、及びプリントヘッド20において、プリントヘッド20に入力される補正された駆動信号COMは、温度検出回路24に含まれる抵抗配線401が異なるタイミングで検出した圧力室312の温度に応じた複数の温度情報tcに基づいて補正される。
【0133】
具体的には、プリントヘッド20には、吐出モジュール22からのインクの吐出周期であって周期tpを規定するラッチ信号LATが入力される。そして、吐出モジュール22が有する温度情報出力回路26は、吐出モジュール22が駆動信号COMを受けてインクを吐出する周期tp(q+1)であって、ラッチ信号LATが入力された後、次にラッチ信号LATが入力されるまでの複数の周期tpの内の周期tp(q+1)において、温度検出回路24に含まれる抵抗配線401が検出した温度情報tcに応じた情報をサンプリング周期に基づく異なるタイミングで逐次取得する。その後、温度情報出力回路26は、周期tp(q+1)において取得した複数の温度情報tcに応じた温度情報信号TIを制御回路100に出力する。これにより、吐出モジュール22に入力される駆動信号COMが、温度情報信号TIに基づいて補正される。
【0134】
次に、温度情報出力回路26による温度検出信号TCに含まれる温度情報tcに応じたデジタル温度情報dtcの取得と、取得したデジタル温度情報dtcに基づく温度情報信号TIの生成方法の一例について説明する。
【0135】
図15は、温度情報出力回路26による温度情報信号TIの生成方法の一例を説明する図である。
【0136】
図15に示すように、温度情報出力回路26が温度情報信号TIを生成するに際して、温度情報出力回路26は、温度取得カウントN、変数j、及び合算値Tsumの初期化を実行する。具体的には、温度情報出力回路26に含まれる制御回路500は、温度取得カウントNを“0”に初期化し、変数jを“1”に初期化し、合算値Tsumを“0”に初期化する(ステップS110)。その後、温度情報出力回路26に吐出モジュール22-pの温度の取得を要求する温度取得要求信号TDが入力される(ステップS120)。制御回路500は、入力される温度取得要求信号TDを解析することで、温度を取得する吐出モジュール22-pを特定する。
【0137】
その後、温度情報出力回路26にラッチ信号LATが入力されることで(ステップS130)、制御回路500は、温度取得要求信号TDの解析結果に応じて特定した吐出モジュール22-pに対応する温度検出信号TCpを選択するためセレクト信号Selを出力する(ステップS140)。これにより、温度情報出力回路26に含まれるマルチプレクサー530は、温度検出信号TCpが増幅回路510-pによって増幅された増幅検出信号ATCpを選択し、AD変換回路540に出力する。
【0138】
マルチプレクサー530が、選択した増幅検出信号ATCpをAD変換回路540に出力した後、温度情報出力回路26は、AD変換回路540が出力するデジタル温度情報dtcを所定のサンプリング周期毎に取得し、記憶回路550に保持する温度情報取得処理(ステップS150)を実行する。
【0139】
具体的には、温度情報取得処理(ステップS150)において、AD変換回路540は、マルチプレクサー530から入力される増幅検出信号ATCpをデジタル温度情報dtcに変換し、制御回路500に出力する。制御回路500は、AD変換回路540が出力するデジタル温度情報dtcを取得する(ステップS151)とともに、取得したデジタル温度情報dtcを記憶回路550に記憶し(ステップS152)、温度取得カウントNに“1”を加算する(ステップS153)。その後、制御回路500は、温度情報出力回路26にラッチ信号LATが入力されたか否かの判定を実行する(ステップS154)。制御回路500は、温度情報出力回路26にラッチ信号LATが入力されていない場合(ステップS154のN)、上述したステップS151~ステップS153の処理を繰り返し実行する。そして、制御回路500は、温度情報出力回路26にラッチ信号LATが入力されることで(ステップS154のY)、温度情報取得処理(ステップS150)を終了する。
【0140】
すなわち、温度情報出力回路26は、ラッチ信号LATが入力された後、次にラッチ信号LATが入力されるまでの周期tpにおいて、温度検出信号TCpに含まれるN個の温度情報tcpに応じたN個のデジタル温度情報dtcを取得し、記憶回路550に逐次記憶する。
【0141】
温度情報取得処理(ステップS150)が完了した後、制御回路500は、記憶回路550に含まれるデジタル温度情報dtcであって、具体的には、温度情報取得処理(ステップS150)において取得したN個のデジタル温度情報dtcを読み出す(ステップS160)。そして、制御回路500は、読み出したN個のデジタル温度情報dtcに基づいて温度情報信号TIを算出し出力する温度情報出力処理(ステップS170)を実行する。
【0142】
本実施形態の温度情報出力回路26は、温度情報出力処理(ステップS170)において、読み出したN個のデジタル温度情報dtcの内、ばらつきの大きな一部のデジタル温度情報dtcを除外し、残ったデジタル温度情報dtcの平均を算出することで、温度情報信号TIを生成する。すなわち、温度情報出力回路26は、N個のデジタル温度情報dtcの調整平均を算出し、温度情報信号TIとして出力する。
【0143】
具体的には、温度情報出力処理(ステップS170)において、制御回路500は、記憶回路550から読み出したN個のデジタル温度情報dtcの内、j番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、N+1-j番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、の差分ΔTを算出する(ステップS171)。このとき、制御回路500は、変数jが“1”であるが故に、記憶回路550から読み出したN個のデジタル温度情報dtcの内、1番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、N番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、の差分ΔTを算出する。換言すれば、制御回路500は、変数jが“1”の場合、記憶回路550から読み出したN個のデジタル温度情報dtcの内、最も高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、最も低い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、の差分ΔTを算出する。そして、制御回路500は、算出した差分ΔTが所定の閾値Tthよりも大きいか否かの判定を行う(ステップS172)。
【0144】
制御回路500は、算出した差分ΔTが所定の閾値Tthよりも大きい場合(ステップS172のY)、変数jに“1”を加算し(ステップS173)、上述したステップS171、及びステップS172を実行する。すなわち、制御回路500は、変数jが“2”であるが故に、記憶回路550から読み出したN個のデジタル温度情報dtcの内、2番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、N-1番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、の差分ΔTを再度算出する(ステップS171)。換言すれば、制御回路500は、変数jが“2”の場合、記憶回路550から読み出したN個のデジタル温度情報dtcの内、2番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、2番目に低い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、の差分ΔTを算出する。そして、制御回路500は、算出した差分ΔTが所定の閾値Tthよりも大きいか否かの判定を行う(ステップS172)。
【0145】
すなわち、制御回路500は、記憶回路550から読み出したN個のデジタル温度情報dtcの内、j番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、N+1-j番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、の差分ΔTが、所定の閾値Tth以下となるまで変数jを逐次加算する。換言すれば、制御回路500は、記憶回路550から読み出したN個のデジタル温度情報dtcの内、j番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、j番目に低い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、の差分ΔTが、所定の閾値Tthよりも小さくなる境界を探索する。そして、算出した差分ΔTが所定の閾値Tth以下になると(ステップS172のN)、制御回路500は、このときの変数jを境界値Bvとして保持する(ステップS174)。
【0146】
制御回路500は、変数jを境界値Bvとして保持した後、N個のデジタル温度情報dtcの内、j番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度を検出温度情報Rdtcとして保持する(ステップS175)とともに、合算値Tsumに検出温度情報Rdtcを加算し、新たな合算値Tsumとして保持する(ステップS176)。そして、制御回路500は、変数jが、温度取得カウントNに“1”を加算した値から境界値Bvを減算した値以下であるか否の判定を行う(ステップS177)。そして、制御回路500は、変数jが、温度取得カウントNに“1”を加算した値から境界値Bvを減算した値以下の場合(ステップS177のY)、変数jに“1”を加算し、加算後の変数jを用いて、N個のデジタル温度情報dtcの内、j番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度を検出温度情報Rdtcとして保持する(ステップS175)とともに、合算値Tsumに検出温度情報Rdtcを加算し、新たな合算値Tsumとして保持する(ステップS176)。
【0147】
すなわち、制御回路500は、Bv番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcからN+1-Bv番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcまでのそれぞれのデジタル温度情報dtcが示す温度を加算し、合算値Tsumとして保持する。換言すれば、制御回路500は、N個のデジタル温度情報dtcの内、Bv番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度よりも低く、Bv番目に低い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度よりも高い温度を示すN-2×(Bv-1)個のデジタル温度情報dtcの和を算出し、合算値Tsumとして保持する。
【0148】
そして、変数jが、温度取得カウントNに“1”を加算した値から境界値Bvを減算した値を超えると(ステップS177のN)、制御回路500は、合算値Tsumの算出の際に加算されたデジタル温度情報dtcの数である“N-2×(Bv-1)”で、算出した合算値Tsumを除した平均温度情報Taveを算出する(ステップS179)。すなわち、制御回路500は、N個のデジタル温度情報dtcの内、Bv番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcから、N+1-Bv番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcまでのN-2×(Bv-1)個のデジタル温度情報dtcが示す温度の平均値を算出し、平均温度情報Taveとして取得する。換言すれば、制御回路500は、N個のデジタル温度情報dtcの内、Bv番目に高い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、Bv番目に低い温度の情報を含むデジタル温度情報dtcが示す温度と、の間の温度を示すN-2×(Bv-1)個のデジタル温度情報dtcの相加平均を算出し、平均温度情報Taveとして取得する。
【0149】
そして、制御回路500は、取得した平均温度情報Taveを含む温度情報信号TIを生成する。そして、温度情報出力回路26は、算出した平均温度情報Taveに応じた温度情報信号TIを出力する(ステップS180)。換言すれば、制御回路500は、吐出モジュール22-pの温度を示す温度情報tcpに基づいて算出された平均温度情報Taveを含む温度情報信号TIを、制御回路100に出力する。これにより、温度情報出力回路26による温度情報信号出力処理(ステップS170)、及び、温度情報出力回路26による温度情報信号TIの生成が終了する。
【0150】
以上のように、本実施形態の温度情報出力回路26は、N個のデジタル温度情報dtcの内、デジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からj番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度と、デジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からN+1-j番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度と、の差分ΔTが所定の閾値Tthよりも大きく、且つ、N個のデジタル温度情報dtcの内、デジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からj+1番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度と、デジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からN-j番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度と、の差分ΔTが所定の閾値Tth以下の場合、N個のデジタル温度情報dtcの内、デジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からj番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度よりも低く、且つデジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からN+1-j番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度よりも高いN-2×j個のデジタル温度情報dtcの相加平均を算出し、温度情報信号TIとして出力する。
【0151】
ここで、駆動回路50が駆動信号出力回路の一例であり、駆動回路50が出力する駆動信号COMが駆動信号の一例である。また、圧電素子60に供給される駆動信号VOUTが駆動信号COMに含まれる信号波形に応じて生成されている点に鑑みると、駆動信号VOUTもまた駆動信号の一例である。また、駆動信号COMの基となる基駆動信号dOを温度情報信号TIに基づいて補正し出力する制御回路100が補正部の一例であり、制御回路100が出力し、吐出モジュール22及びプリントヘッド20からのインクの吐出周期を規定するラッチ信号LATが吐出周期規定信号の一例であり、ラッチ信号LATによって規定される複数の周期tpが吐出周期の一例であり、複数の周期tpの内、周期tp(q+1)が吐出期間、及び液体を吐出する期間の一例である。また、吐出モジュール22に含まれる電極360が第1電極の一例であり、吐出モジュール22に含まれる電極380が第2電極の一例であり、吐出モジュール22に含まれる抵抗配線401及び抵抗配線401を含む温度検出回路24の少なくとも一方が温度検出部の一例である。
【0152】
そして、温度検出回路24が出力する温度検出信号TCに含まれる温度情報tc、及び温度情報tcを増幅しデジタル信号に変換されたデジタル温度情報dtcの少なくとも一方が温度情報の一例であり、周期tp(q+1)において温度情報出力回路26が取得する複数の温度情報tc、及び複数のデジタル温度情報dtcの少なくとも一方がN個の温度情報の一例であり、周期tp(q+1)において温度情報出力回路26が取得する複数の温度情報tc、及び複数のデジタル温度情報dtcの内、温度情報tc、及びデジタル温度情報dtcが示す温度が高い方からBv-1番目の温度情報tc、及びデジタル温度情報dtcが第i温度情報の一例であり、温度情報tc、及びデジタル温度情報dtcが示す温度が高い方からBv番目の温度情報tc、及びデジタル温度情報dtcが第i+1温度情報の一例であり、温度情報tc、及びデジタル温度情報dtcが示す温度が低い方からBv-1番目の温度情報tc、及びデジタル温度情報dtcが第N+1-i温度情報の一例であり、温度情報tc、及びデジタル温度情報dtcが示す温度が低い方からBv番目の温度情報tc、及びデジタル温度情報dtcが第N-i温度情報の一例である。
【0153】
6.作用効果
以上のように、本実施形態の液体吐出装置1、及びプリントヘッド20では、吐出モジュール22が、電極360、電極380、及び圧電体370を含み、電極360、電極380、及び圧電体370が積層される積層方向であってZ軸に沿った方向において、圧電体370が電極360と電極380との間に位置し、駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTを受けて駆動する圧電素子60と、圧電素子60に対して積層方向の一方側に位置し、圧電素子60の駆動により変形する振動板350と、振動板350に対して積層方向の一方側に位置し、振動板350の変形により容積が変化する圧力室312が設けられている圧力室基板310と、圧力室312の容積の変化に応じてインクを吐出するノズル321と、振動板350に対して積層方向の他方側に位置し、圧力室312の温度を検出する抵抗配線401を含む温度検出回路24と、を有する。すなわち、本実施形態の吐出モジュール22において、圧力室312に貯留されるインクの温度を検出する温度検出回路24は、圧力室312の近傍に配置される。これにより、温度検出回路24による圧力室312に貯留されるインクの温度の検出精度が向上する。
【0154】
また、本実施形態の液体吐出装置1、及びプリントヘッド20において、吐出モジュール22がインクからインクを吐出させる駆動信号COM,VOUTは、温度検出回路24が異なるタイミングで検出した圧力室312の温度に応じたN個の温度情報tc及びN個のデジタル温度情報dtc(Nは2以上の自然数)に基づいて補正される。これにより、1つの温度情報tc及びデジタル温度情報dtcに基づいて圧力室312の温度を算出する場合と比較して、温度情報tc及びデジタル温度情報dtcに重畳したノイズの影響が低減される。その結果、温度情報tc及びデジタル温度情報dtcに基づいて補正される駆動信号COM,VOUTの補正精度が向上し、吐出モジュール22から吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0155】
また、本実施形態の液体吐出装置1、及びプリントヘッド20では、温度情報tc及びデジタル温度情報dtcに重畳したノイズの影響が低減されるが故に、プリントヘッド20が駆動信号COMを受けて、インクを吐出する期間であって、例えば、ラッチ信号LATが入力された後、次にラッチ信号LATが入力されるまでの周期tpに基づく期間に取得された温度情報tc及びデジタル温度情報dtcを用いて、駆動信号COM,VOUTを補正した場合であっても、補正された駆動信号COM,VOUTの補正精度が低下するおそれが低減し、その結果、吐出モジュール22から吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0156】
また、本実施形態の液体吐出装置1、及びプリントヘッド20では、温度情報出力回路26がN個の温度情報tc及びN個のデジタル温度情報dtcの調整平均を算出し、駆動回路50は、算出結果に応じた温度情報信号TIに基づいて補正された駆動信号COMを出力する。具体的には、温度情報出力回路26は、N個のデジタル温度情報dtcの内、デジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からj番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度と、デジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からN+1-j番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度と、の差分ΔTが所定の閾値Tthよりも大きく、且つ、N個のデジタル温度情報dtcの内、デジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からj+1番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度と、デジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からN-j番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度と、の差分ΔTが所定の閾値Tth以下の場合、N個のデジタル温度情報dtcの内、デジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からj番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度よりも低く、且つデジタル温度情報dtcで規定される圧力室312の温度が高い方からN+1-j番目のデジタル温度情報dtcで規定される温度よりも高いN-2×j個のデジタル温度情報dtcの相加平均を算出し、温度情報信号TIとして出力する。
【0157】
これにより、N個のデジタル温度情報dtcに含まれるノイズ等の影響による異常値を排除することができ、温度情報tc及びデジタル温度情報dtcに重畳したノイズの影響がさらに低減される。その結果、温度情報tc及びデジタル温度情報dtcに基づいて補正される駆動信号COM,VOUTの補正精度がさらに向上し、吐出モジュール22から吐出されるインクの吐出精度がさらに向上する。
【0158】
7.変形例
以上に説明した本実施形態の液体吐出装置1、及びプリントヘッド20では、温度情報出力回路26がN個の温度情報tc及びN個のデジタル温度情報dtcの調整平均を算出し、駆動回路50は、算出結果に応じた温度情報信号TIに基づいて補正された駆動信号COMを出力するとして説明を行ったが、温度情報出力回路26は、N個の温度情報tc及びN個のデジタル温度情報dtcを全て加算し、加算した値をNで除する相加平均を用いてもよい。すなわち、温度情報出力回路26は、N個の温度情報tc及びN個のデジタル温度情報dtcの相加平均を算出し、温度情報信号TIとして出力してもよい。これにより、単純な計算で温度情報tc及びデジタル温度情報dtcに重畳したノイズの影響を低減することができ、上述した作用効果に加えて、温度情報出力回路26による演算負荷を低減することができる。
【0159】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0160】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0161】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0162】
プリントヘッドの一態様は、
補正された駆動信号を受けて液体を吐出する吐出モジュールを備え、
前記吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する圧電素子と、
前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、
前記振動板に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が設けられている圧力室基板と、
前記圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出するノズルと、
前記振動板に対して前記積層方向の他方側に位置し、前記圧力室の温度を検出する温度検出部と、
を有し、
前記駆動信号は、前記温度検出部が異なるタイミングで検出した前記圧力室の温度に応じたN個の温度情報(Nは2以上の自然数)に基づいて補正される。
【0163】
このプリントヘッドによれば、圧力室の温度を検出する温度検出部が、吐出モジュールの内部であって、振動板に対して積層方向の他方側に位置することで、温度検出部を振動板に対して積層方向の一方側に位置する圧力室の近傍に配置することができる。これにより、温度検出部による圧力室の温度の検出精度が向上する。
【0164】
また、このプリントヘッドによれば、吐出モジュールから液体を吐出させる駆動信号は、温度検出部が異なるタイミングで検出した圧力室の温度に応じたN個の温度情報(Nは2以上の自然数)に基づいて補正される。これにより、温度検出部が検出した圧力室の温度に応じた温度情報にノイズが重畳した場合であっても、当該ノイズの影響が低減され、その結果、圧力室の温度に応じて補正された駆動信号の補正精度が向上する。したがって、補正された駆動信号に基づいて吐出モジュールから吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0165】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記吐出モジュールからの液体の吐出周期を規定する吐出周期規定信号が入力され、
前記異なるタイミングは、前記吐出周期規定信号が入力された後、次に前記吐出周期規定信号が入力されるまでの吐出期間に含まれてもよい。
【0166】
このプリントヘッドによれば、温度検出部が検出した圧力室の温度に応じた温度情報にノイズが重畳した場合であっても、当該ノイズの影響が低減される。したがって、駆動信号の補正に用いられる温度情報が吐出周期規定信号が入力された後、次に吐出周期規定信号が入力されるまでの吐出期間中に取得された場合であっても、圧力室の温度に応じて補正された駆動信号の補正精度が低下するおそれが低減し、その結果、補正された駆動信号に基づいて吐出モジュールから吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0167】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記吐出モジュールの温度を示す温度情報信号を出力する温度情報出力回路を備え、
前記温度情報出力回路は、前記吐出期間に取得した前記N個の温度情報に応じた前記温度情報信号を出力し、
前記駆動信号は、前記温度情報信号に基づいて補正されてもよい。
【0168】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記温度情報出力回路は、前記N個の温度情報の相加平均を算出し、前記温度情報信号として出力してもよい。
【0169】
このプリントヘッドによれば、N個の温度情報の相加平均を算出することで、温度検出部が検出した圧力室の温度に応じたN個の温度情報のいずれかにノイズが重畳した場合であっても、当該ノイズの影響が低減される。その結果、圧力室の温度に応じて補正された駆動信号の補正精度が向上する。したがって、補正された駆動信号に基づいて吐出モジュールから吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0170】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記温度情報出力回路は、前記N個の温度情報の調整平均を算出し、前記温度情報信号として出力してもよい。
【0171】
このプリントヘッドによれば、N個の温度情報の調整平均を算出することで、温度検出部が検出した圧力室の温度に応じたN個の温度情報のいずれかにノイズ等の影響による異常値が含まれている場合であっても、当該異常値の影響が低減される。その結果、圧力室の温度に応じて補正された駆動信号の補正精度が向上する。したがって、補正された駆動信号に基づいて吐出モジュールから吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0172】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記温度情報出力回路は、
前記N個の温度情報の内、前記圧力室の温度が高い方からi番目(iは1からN/2までの内の自然数のいずれか)の第i温度情報と、前記圧力室の温度が高い方からN+1-i番目の第N+1-i温度情報と、の差分が所定の閾値よりも大きく、
且つ、前記N個の温度情報の内、前記圧力室の温度が高い方からi+1番目の第i+1温度情報と、前記圧力室の温度が高い方からN-i番目の第N-i温度情報と、の差分が前記所定の閾値以下の場合、
前記N個の温度情報の内、前記圧力室の温度が前記第i温度情報よりも低く、且つ、前記圧力室の温度が前記第N+1-i温度情報よりも高い、N-2×i個の温度情報の相加平均を算出し、前記温度情報信号として出力してもよい。
【0173】
上記プリントヘッドの一態様において、
前記異なるタイミングは、前記吐出モジュールが前記駆動信号を受けて液体を吐出する期間に含まれてもよい。
【0174】
このプリントヘッドによれば、温度検出部が検出した圧力室の温度に応じた温度情報にノイズが重畳した場合であっても、当該ノイズの影響が低減される。したがって、駆動信号の補正に用いられる温度情報が吐出モジュールが液体を吐出する期間に入力された場合であっても、圧力室の温度に応じて補正された駆動信号の補正精度が低下するおそれが低減し、その結果、補正された駆動信号に基づいて吐出モジュールから吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【0175】
液体吐出装置の一態様は、
補正された駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号を補正する補正部と、
前記駆動信号を受けて液体を吐出するプリントヘッドと、
を備え、
前記プリントヘッドは、前記駆動信号を受けて液体を吐出する吐出モジュールを有し、
前記吐出モジュールは、
第1電極、第2電極、及び圧電体を含み、前記第1電極、前記第2電極、及び前記圧電体が積層される積層方向において、前記圧電体が前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記駆動信号を受けて駆動する圧電素子と、
前記圧電素子に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記圧電素子の駆動により変形する振動板と、
前記振動板に対して前記積層方向の一方側に位置し、前記振動板の変形により容積が変化する圧力室が設けられている圧力室基板と、
前記圧力室の容積の変化に応じて液体を吐出するノズルと、
前記振動板に対して前記積層方向の他方側に位置し、前記圧力室の温度を検出する温度検出部と、
を含み、
前記補正部は、前記温度検出部が異なるタイミングで検出した前記圧力室の温度に応じたN個の温度情報(Nは2以上の自然数)に基づいて前記駆動信号を補正する。
【0176】
この液体吐出装置によれば、プリントヘッドが有する圧力室の温度を検出する温度検出部が、吐出モジュールの内部であって、振動板に対して積層方向の他方側に位置することで、温度検出部を振動板に対して積層方向の一方側に位置する圧力室の近傍に配置することができる。これにより、温度検出部による圧力室の温度の検出精度が向上する。
【0177】
また、この液体吐出装置によれば、プリントヘッドが有する吐出モジュールから液体を吐出させる駆動信号は、温度検出部が異なるタイミングで検出した圧力室の温度に応じたN個の温度情報(Nは2以上の自然数)に基づいて補正部が補正する。これにより、温度検出部が検出した圧力室の温度に応じた温度情報にノイズが重畳した場合であっても、当該ノイズの影響が低減され、その結果、圧力室の温度に応じて補正された駆動信号の補正精度が向上する。したがって、補正された駆動信号に基づいて吐出モジュールから吐出されるインクの吐出精度が向上する。
【符号の説明】
【0178】
1…液体吐出装置、2…インク容器、10…制御機構、20…プリントヘッド、21…キャリッジ、22…吐出モジュール、24…温度検出回路、26…温度情報出力回路、30…移動機構、31…キャリッジモーター、32…無端ベルト、40…搬送機構、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、50…駆動回路、52…基準電圧信号出力回路、60…圧電素子、90…リニアエンコーダー、100…制御回路、200…駆動信号選択回路、210…選択制御回路、212…シフトレジスター、214…ラッチ回路、216…デコーダー、230…選択回路、232…インバーター、234…トランスファーゲート、310…圧力室基板、311…隔壁、312…圧力室、312a,312b…端部、315…連通板、316…ノズル連通路、317…第1マニホールド部、318…第2マニホールド部、319…供給連通路、320…ノズルプレート、321…ノズル、330…保護基板、331…保持部、332…貫通孔、340…ケース部材、341…収容部、342…第3マニホールド部、343…接続口、344…供給口、345…コンプライアンス基板、346…封止膜、347…固定基板、348…開口部、349…コンプライアンス部、350…振動板、351…弾性膜、352…絶縁体膜、360…電極、360a,360b…端部、370…圧電体、370a,370b…端部、371…溝部、380…電極、380a,380b…端部、385…配線部、391…個別リード電極、392…共通リード電極、392a,392b…延設部、393,393a,393b…測定用リード電極、400…マニホールド、401…抵抗配線、410…活性部、415…非活性部、420…配線基板、421…集積回路、500…制御回路、510-1~510-n…増幅回路、530…マルチプレクサー、540…AD変換回路、550…記憶回路、600…吐出部、P…媒体