(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104857
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】網状面材による型枠構造及び型枠連結具
(51)【国際特許分類】
E04G 17/00 20060101AFI20240730BHJP
E04G 9/06 20060101ALI20240730BHJP
E04B 2/86 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
E04G17/00 Z
E04G9/06
E04B2/86 601B
E04B2/86 601H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009250
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】武野 航大
(72)【発明者】
【氏名】松原 由幸
(72)【発明者】
【氏名】平野 成志
(72)【発明者】
【氏名】志水 洸介
【テーマコード(参考)】
2E150
【Fターム(参考)】
2E150BA07
2E150BA22
2E150BA23
2E150BA32
2E150BA43
2E150BA52
2E150BA53
2E150CA01
2E150DA03
2E150DA13
2E150HC03
2E150KC07
2E150MA02X
(57)【要約】
【課題】ラス金網等の網状面材を効率よく建て込んで寸法精度の高い型枠を形成することのできる型枠構造と、それを可能にする型枠連結具を提供する。
【解決手段】枠材51を正面視矩形に接合してなる枠体5がコンクリート型枠の成型面に沿って複数枚、建て込まれ、その枠材51の材軸直交方向に挿通される直棒状の連結軸部61と、連結軸部61と交差する向きに結合されて枠材51を挟持するJ字状のクリップ部と、を具備する型枠連結具6が枠材51に取り付けられるとともに、型枠連結具6の連結軸部61からクリップ部62と離反する向きに突設されたフック部63が、枠体5の背面に添わせて型枠の内側に配置された網状面材4の網目に掛止されることにより、網状面材4が枠体5に固定される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠材を正面視矩形に接合してなる枠体がコンクリート構造物の成型面に沿って複数枚、建て込まれ、
前記枠材または前記枠体の枠内に取り付けられた桟材に、前記枠材または前記桟材の材軸直交方向に挿通される直棒状の連結軸部と、前記連結軸部と交差する向きに結合されて前記枠材または前記桟材を挟持するJ字状のクリップ部と、を具備する型枠連結具が取り付けられ、
前記型枠連結具の前記クリップ部が前記枠材または前記桟材を挟持した状態で、前記連結軸部から前記クリップ部と離反する向きに突設されたフック部が、前記枠体の背面に添わせて型枠内に配置された網状面材に掛止されることにより、前記網状面材が前記枠体に固定された
ことを特徴とする網状面材による型枠構造。
【請求項2】
請求項1に記載された網状面材による型枠構造において、
前記枠体の隣接箇所に取り付けられた前記型枠連結具の前記クリップ部が、隣接する二本の枠材を挟持することにより、隣接する枠体同士が連結された
ことを特徴とする網状面材による型枠構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載された網状面材による型枠構造において、
前記フック部が、隣接する二枚の網状面材の継ぎ重ね箇所に掛止された
ことを特徴とする網状面材による型枠構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載された網状面材による型枠構造において、
前記クリップ部の自由端側に第2フック部が突設され、
前記第2フック部が、前記枠材または前記桟材を挟んだ前記フック部の反対側から前記網状面材に掛止された
ことを特徴とする網状面材による型枠構造。
【請求項5】
請求項4に記載された網状面材による型枠構造において、
隣接する二枚の網状面材が前記枠材または前記桟材を挟んで互いに重ならないように配置され、
前記フック部が、前記二枚の網状面材のうち一方の網状面材に掛止されるとともに、
前記第2フック部が他方の網状面材に掛止された
ことを特徴とする網状面材による型枠構造。
【請求項6】
枠材を正面視矩形に接合してなる枠体の背面に網状面材を固定するための型枠連結具であって、
前記枠材または前記枠体の枠内に取り付けられた桟材の材軸直交方向に挿通される直棒状の連結軸部と、
前記連結軸部と交差する向きに結合されて前記枠材または前記桟材を挟持するJ字状のクリップ部と、
前記連結軸部から前記クリップ部と離反する向きに突設されたフック部と、
を具備し、
縦方向の前記枠材または前記桟材に対して前記連結軸部を水平に挿通させ、前記クリップ部を手前斜め下向きに回動させて前記枠材または前記桟材を挟持したときに、前記フック部が、その先端を上向きにして前記枠材または前記桟材の背面側に突出し前記網状面材に掛止されるように形成されている
ことを特徴とする型枠連結具。
【請求項7】
請求項6に記載された型枠連結具において、
前記クリップ部の自由端側に第2フック部が突設され、
縦方向の前記枠材または前記桟材に対して前記連結軸部を水平に挿通させ、前記クリップ部を手前斜め下向きに回動させて前記枠材または前記桟材を挟持したときに、前記第2フック部が、その先端を上向きにして前記枠材または前記桟材の背面側に突出し前記網状面材に掛止されるように形成されている
ことを特徴とする型枠連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ラス金網等の網状面材を用いて組み立てられる捨て型枠工法のための型枠構造と、その型枠構造において網状面材を固定するのに適した型枠連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を構築するに際しては、型枠内に打設した生コンが硬化した後、型枠を解体する脱枠(脱型)が発生する。この脱枠作業を省力化する工法の一つとして、合板パネルや鋼製パネルの代わりにラス金網(型枠用メタルラス)を使用して型枠を組み立て、生コン打設後には脱枠せずに埋設する捨て型枠工法がある(例えば、特許文献1~4等)。ラス金網を使用することで脱枠作業が不要になるため、工期短縮、資材置場の効率的利用、脱枠時の騒音解消等の効果が得られる。また、網目を通して型枠内部の配筋状態を確認しやすく、生コン打設時にも網目から余剰水や気泡が排出されるので、密実なコンクリート構造物を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59-076373号公報
【特許文献2】特開平05-059733号公報
【特許文献3】特開平10-001952号公報
【特許文献4】特開平11-124934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような捨て型枠工法に使用されるラス金網は、それ単体では撓みやすく形状が安定しないので、ラス金網を精度よく建て込んで固定するために、枠材、縦桟、横桟、ワイヤーセパレータ、バタ材等の補助的な仮設資材が多数、必要になって、それらの組付け及び撤去には、やはり手間がかかってしまう。また、ラス金網を使用して組み立てた型枠は変形しやすいので、型枠の上部にアンカーボルトの位置決め定規等を設置する際も、その施工精度が落ちやすい、といった問題がある。
【0005】
本願が開示する発明は、前述のような問題を解決すべく、ラス金網あるいはこれに類する捨て型枠用の各種金網(以下、これらを「網状面材」と総称する。)を、効率よく建て込んで寸法精度の高い型枠を形成することのできる型枠構造と、それを可能にする型枠連結具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願が開示する発明の網状面材による型枠構造は、枠材を正面視矩形に接合してなる枠体がコンクリート構造物の成型面に沿って複数枚、建て込まれ、前記枠材または前記枠体の枠内に取り付けられた桟材に、前記枠材または前記桟材の材軸直交方向に挿通される直棒状の連結軸部と、前記連結軸部と交差する向きに結合されて前記枠材または前記桟材を挟持するJ字状のクリップ部と、を具備する型枠連結具が取り付けられ、前記型枠連結具の前記クリップ部が前記枠材または前記桟材を挟持した状態で、前記連結軸部から前記クリップ部と離反する向きに突設されたフック部が、前記枠体の背面に添わせて型枠内に配置された網状面材に掛止されることにより、前記網状面材が前記枠体に固定された、ものとして特徴付けられる。
【0007】
さらに、前記枠体の隣接箇所に取り付けられた前記型枠連結具の前記クリップ部が、隣接する二本の枠材を挟持することにより、隣接する枠体同士が連結された、ものとしても特徴付けられる。
【0008】
前記網状面材による型枠構造においては、前記フック部が、隣接する二枚の網状面材の継ぎ重ね箇所に掛止された、ものとすることができる。
【0009】
また、前記クリップ部の自由端側に第2フック部が突設され、前記第2フック部が、前記枠材または前記桟材を挟んだ前記フック部の反対側から前記網状面材に掛止された、ものとすることもできる。その場合は、隣接する二枚の網状面材が前記枠材または前記桟材を挟んで互いに重ならないように配置され、前記フック部が、前記二枚の網状面材のうち一方の網状面材に掛止されるとともに、前記第2フック部が他方の網状面材に掛止された、ものとすることができる。
【0010】
また、本願が開示する発明の型枠連結具は、枠材を正面視矩形に接合してなる枠体の背面に網状面材を固定するための型枠連結具であって、前記枠材または前記枠体の枠内に取り付けられた桟材の材軸直交方向に挿通される直棒状の連結軸部と、前記連結軸部と交差する向きに結合されて前記枠材または前記桟材を挟持するJ字状のクリップ部と、前記連結軸部から前記クリップ部と離反する向きに突設されたフック部と、を具備し、縦方向の前記枠材または前記桟材に対して前記連結軸部を水平に挿通させ、前記クリップ部を手前斜め下向きに回動させて前記枠材または前記桟材を挟持したときに、前記フック部が、その先端を上向きにして前記枠材または前記桟材の背面側に突出し前記網状面材に掛止されるように形成されている、ものとして特徴付けられる。
【0011】
さらに、前記クリップ部の自由端側に第2フック部が突設され、前述の挟持状態において前記第2フック部も、前記フック部と同様に、その先端を上向きにして背面側に突出するように形成されている、ものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
前述のように構成される網状面材による型枠構造によれば、コンクリート構造物の成型面に沿って連設される枠体同士が強固に連結されるとともに、それら枠体の内側に配置される網状面材が、枠体または桟材に対して適切に固定されるので、組み立てられた型枠は高い剛性を備え、寸法精度も適切に確保されるものとなる。
【0013】
また、前述のように構成される型枠連結具を使用することにより、隣接する枠体同士の連結と、その枠体に対する網状面材の固定作業とを、同時一体的に効率よく行うことができる。コンクリート打設後の脱枠作業も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本願が開示する発明が適用される連続フーチング基礎の型枠の幅方向断面図である。
【
図2】前記型枠の片面側の主要な構成部材を示す分解斜視図である。
【
図3】前記型枠に使用される型枠連結具の第1実施形態と、その使用態様(網状面材の掛止前)を示す正面図及び側面図である。
【
図4】同じく、型枠連結具の第1実施形態と、その使用態様(網状面材の掛止後)を示す正面図及び側面図である。
【
図5】前記型枠に使用される型枠連結具の第2実施形態と、その使用態様(網状面材の掛止前)を示す正面図及び側面図である。
【
図6】同じく、型枠連結具の第2実施形態と、その使用態様(網状面材の掛止後)を示す正面図及び側面図である。
【
図7】前記型枠連結具の第1実施形態及び第2実施形態による網状面材の掛止状態を示す上面図である。
【
図8】前記型枠連結具の他の使用態様を示す型枠の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、連続フーチング基礎(布基礎)の型枠を例に挙げ、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本願が開示する発明が適用される連続フーチング基礎(以下、単に「基礎」という。)の型枠の、基礎の幅方向における断面図である。例示した基礎1は、地中に埋設される幅広のベース部2と、ベース部2の上に立設される一様幅の立ち上がり部3とによって構成されている。ベース部2は、例えば略円弧状に湾曲した埋戻し用樹脂パネル21を鉄筋ベース22の両側に対置させるなどして成型される。立ち上がり部3は、所定間隔をもって対置された網状面材4によって成型され、その網状面材4を直立状態で保持する部分に本願が開示する型枠構造が採用される。なお、本願が開示する型枠構造は、ベース部2の有無や構造を限定するものではなく、また、ベース部2及び立ち上がり部3の配筋形態も特に限定しない。
【0017】
図2は、
図1に示した基礎1の立ち上がり部3を成型する型枠の、片側の成型面の主要な構成部材を示す分解斜視図である。この型枠構造は、基礎1の延設方向に沿って複数枚、建て込まれる正面視矩形の枠体5と、それらの枠体5の内側(コンクリートが打設される型枠の内部側)に添わせて配置された網状面材4と、隣接する枠体5同士を連結しつつ網状面材4も固定する型枠連結具6と、を含んで構成される。
【0018】
枠体5は、鋼材からなる所定幅の枠材51を正面視矩形に接合したものであり、従来公知の鋼製型枠パネル(メタルフォーム)から面板を取り除いて外枠部分だけを残したものに相当する。例示形態の枠材51には角筒材が使用されているが、これに替えてリップ付き溝形鋼等も使用可能である。その枠材51には、隣接する枠材51同士を連結するための連結孔52が、互いの位置を揃えて複数箇所に貫通形成されている。なお、図示はしていないが、例えば枠体5の角部に補強用の三角プレートが接合されていたり、枠体5の枠内に補強のための桟材が、縦方向または横方向に取り付けられていたりしてもよい。この枠体5がベース部2の鉄筋ベース22上に建て込まれ、図示しないセパレータ等を介して所定間隔に保持される。
【0019】
網状面材4には、従来公知の捨て型枠工法と同様に、ラス金網を好適に使用することができる。例示形態のラス金網は、網目のない補剛用リブ41が適宜間隔で平行に形成された型枠用ラス(リブラス)である。補剛用リブ41は、横向き、縦向きのどちらで配置されていてもよい。補剛用リブ41のない平ラスも使用可能である。また。本願が開示する型枠構造は、図示のようなラス金網以外にも、金属線を菱目に編んだワイヤラス、金属線を格子状に編んだ平織金網、金属線を波状にして格子状に編んだクリンプ金網、金属線を六角形に編んだ亀甲金網、金属線を編まずに交差させて接合した格子パネル、金属薄板に等間隔で多数の孔を打ち抜いたパンチングメタル等も使用可能である。さらに、金属製に限らず、合成樹脂や木材、竹材その他の天然材等によって形成された網体や格子状部材等にも対応する。本願が開示する発明では、これらを包括して「網状面材」と呼ぶ。網状面材4は、基礎1の延設方向に沿う長さが、枠体5の横幅よりも大きくなるように切断されているのが好ましい。また、網状面材4の高さが枠体5の高さと同寸程度であると、施工性がよい。
【0020】
型枠連結具6は、従来、鋼製型枠パネルの連結に広く使用されている公知のUピン(U字クリップ)を改良したもので、直棒状の連結軸部61と、連結軸部61の中間部に、連結軸部61と交差するように結合されたJ字状のクリップ部62と、を具備している。複数枚の枠体5が、縦方向の枠材51同士を互いに隣接させて面内方向(基礎1の延設方向)に連設され、枠材51同士の隣接箇所に形成された連結孔52に型枠連結具6の連結軸部61が枠材51の側方から水平に挿入される。その連結軸部61を軸周りに回動させて枠材51同士の隣接箇所にクリップ部62を重ね、ハンマーで叩くなどして嵌装させると、クリップ部62が隣接する二本の枠材51を挟持して、隣接する枠体5同士が連結される。クリップ部62は、連結軸部61に結合される基端側の中間部分が屈折して、枠材51に対する掛かり角度を大きくできるように形成されているので、クリップ部62の湾曲部分が枠材51に当接する最深位置まで回動させずとも、枠材51は好適に挟持される。このような連結形態は、従来公知のUピンと実質的に同じである。
【0021】
そして、この型枠連結具6には、網状面材4に掛止可能なフック部63が、連結軸部61の後端部(枠材51に挿入される先端部の反対側)またはその近傍から、クリップ部62と離反する向きに突設されている。そのフック部63の形状及び使用態様を、
図3、
図4に拡大して示す。
【0022】
フック部63は、連結軸部61の径外方向に延び出して、その先端を鈎状に屈曲させた形状をなしている。フック部63は、
図3に示すように、クリップ部62をやや上向きに持ち上げて連結軸部61を枠材51の連結孔52に挿し込むときには枠材51の背面側に突出せず、
図4に示すように、連結孔52に挿通した連結軸部61を支点にしてクリップ部62を枠材51の手前斜め下向きまで回動させると、略水平乃至やや上向きの角度で枠材51の背面側に突出し、鍵状の先端を上向きにして網状面材4の網目を貫通するように形成されている。枠材51同士の隣接箇所にクリップ部62を嵌装させるとき、枠体5の背面に添わせて型枠の内側に配置した網状面材4の網目に、このフック部63を掛止させる。すると、網状面材4が、その網目を若干変形させながら枠体5側に引き寄せられて、枠体5に固定される。なお、フック部は、補剛用リブ41の縁部に掛止されてもよい。また、枠材51に対するクリップ部62の嵌装角度を変えることで、網状面材4の厚みやフック部63の掛止位置、あるいは後述する網状面材の重なり状態(
図7)に合わせてフック部63の突出寸法を調整することができる。
【0023】
このような型枠連結具6を使用することにより、枠体5同士の連結と網状面材4の固定とを、一連の動作で効率よく行うことができる。剛性の高い枠体5を連結し、撓みやすく形状の不安定な網状面材4をその枠体5に添わせて固定する構造なので、型枠全体の強度は枠体5同士の連結形態に依存するが、Uピンを改良した型枠連結具6を採用することで、その連結強度も担保される。したがって、対置された枠体5の上部にアンカーボルトの位置決め定規7(
図1参照)等を設置する際も、その寸法精度を適正に確保することができる。
【0024】
図5、
図6は、型枠連結具6の第2実施形態を示す。この形態は、クリップ部62の自由端側に、前述のフック部63と略平行に突出する第2フック部64が突設されたものである。第2フック部64は、前述のフック部63(以下、区別のために「第1フック部63)という。)よりも前方から背面側に長く延び出して、その先端を鈎状に屈曲させた形状をなしている。第2フック部64は、第1フック部63と同様に、クリップ部62をやや上向きに持ち上げて連結軸部61を枠材51の連結孔52に挿し込むときには枠材51に干渉せず、
図6に示すように、連結孔52に挿通した連結軸部61を支点にしてクリップ部62を枠材51の手前斜め下向きまで回動させると、略水平乃至やや上向きの角度で枠材51の背面側に突出し、鍵状の先端を上向きにして網状面材4を貫通するように形成されている。枠材51同士の隣接箇所にクリップ部62を嵌装させるとき、枠材51を挟んで第1フック部63の反対側からも第2フック部64を網状面材4の網目に掛止させることで、網状面材4が一層しっかりと枠体5に固定されることになる。
【0025】
図7は、第1実施形態及び第2実施形態の型枠連結具6による網状面材4の掛止状態を、型枠の上方から見て説明する図である。一箇所のフック部(第1フック部63)のみを有する第1実施形態の型枠連結具6によれば、(a)図に示すように、枠材51同士の隣接箇所の背面側に配置される一枚の網状面材4を固定することができるほか、(b)図に示すように、枠材51同士の隣接箇所の背面側で継ぎ重ねられる二枚の網状面材4をまとめて固定することができる。また、二箇所のフック部(第1フック部63及び第2フック部64)を有する第2実施形態の型枠連結具6によれば、(c)図に示すように、枠材51同士の隣接箇所の背面側で互いに重ならないように突き合わせ配置される二枚の網状面材4を、一方の網状面材4に第1フック部63が掛止され、他方の網状面材4に第2フック部64が掛止されるようにして、別々に固定することができる。この固定形態によれば、網状面材4の重なり部分を無くすことができるので、脱枠後のコンクリート成形面の平坦性が良好になる。また、(d)図に示すように、第2実施形態の型枠連結具6を用いて、枠材51同士の隣接箇所の背面側で継ぎ重ねられる二枚の網状面材4を二箇所でしっかりと固定することも、もちろん可能である。
【0026】
以上、連続フーチング基礎の型枠を例に挙げて、枠体5が横方向に連設される場合の網状面材4の固定形態を説明したが、この型枠構造は、基礎の立ち上がり部分に限定されるものではなく、例えば枠体5を上下方向にも連設して高さのあるコンクリート構造物を成型する場合でも適用可能である。すなわち、
図8に示すように、枠体5を上下に積み重ね、横方向の枠材53同士が隣接する箇所には、それらの枠材53に交差させて型枠連結具6の連結軸部61を縦向きに挿通させ、クリップ部62を横向きに回動させて横方向の枠材53同士を挟持するとともに、網状面材4を横向きに掛止するのである。
【0027】
また、枠材51の枠内に縦方向の桟材54や横方向の桟材55が取り付けられる場合には、それらの桟材54、55にも型枠連結具6を介して網状面材4を固定することができる。桟材54、55に取り付ける型枠連結具6は、そのクリップ部62の幅を桟材54、55の見付けに合わせて狭くしたもの(図中の符号6S)でもよいし、枠材51同士を連結する型枠連結具6のクリップ部62の幅に合致するように桟材54、55の見付けを大きくしてもよい。また、桟材54、55の側面に飼い物56等を添接するなどして、型枠連結具6のクリップ部62の幅に合わせてもよい。これらの形態を適宜、組み合わせることにより、網状面材4を一層しっかりと枠体5に固定することができる。
【0028】
前述のように組み立てられた型枠内にコンクリートが打設され、そのコンクリートが硬化すれば、型枠連結具6を枠体5から取り外して脱枠することができる。脱枠の際、型枠連結具6のフック部63の先端は網状面材4の網目を通してコンクリート内に埋まっているが、クリップ部62をハンマーで叩くか、梃子状の道具を用いて押し回すなどすれば、コンクリートから容易に抜き出すことができる。脱枠後のコンクリートの表面には網状面材4の網目の凹凸が残るので、フック部63の抜き跡が目立つこともない。枠体5の背面には、網状面材4の網目から滲出したコンクリートが薄く付着するが、枠内全面に面板が張設された合板パネルや鋼製パネルに比べれば付着面積が遥かに少ないので、コンクリートから簡単に剥がすことができる。枠体5の枠内が空いているので、軽量で運びやすく、清掃して再利用するのも容易である。かくして、捨て型枠工法の施工性が格段に向上する。
【0029】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。特許請求の範囲および明細書において使用している構成要素の名称は、発明を具体的に理解し易くするための便宜的なものであって、その名称が当該構成要素の概念や性状を必要以上に限定するものではない。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の詳細な形状、寸法、構造、材質、数量、他要素との結合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で適宜、改変することができる。特に、本願が開示する発明の要部をなす型枠連結具6については、フック部63、64を設ける位置、背面側への突出角度、先端の鈎形状等を、枠材51、53、桟材54、55等の断面寸法や、掛止する網状面材4の網目の形状等に応じて、好ましい掛止状態が得られるように適切に設計されればよい。
【0030】
また、本明細書に開示した実施形態その他の事項は、以下の付記に示す技術的思想として把握することもできる。
(付記1)
枠材を正面視矩形に接合してなる枠体がコンクリート構造物の成型面に沿って複数枚、建て込まれ、
前記枠材または前記枠体の枠内に取り付けられた桟材に、前記枠材または前記桟材の材軸直交方向に挿通される直棒状の連結軸部と、前記連結軸部と交差する向きに結合されて前記枠材または前記桟材を挟持するJ字状のクリップ部と、を具備する型枠連結具が取り付けられ、
前記型枠連結具の前記クリップ部が前記枠材または前記桟材を挟持した状態で、前記連結軸部から前記クリップ部と離反する向きに突設されたフック部が、前記枠体の背面に添わせて型枠内に配置された網状面材に掛止されることにより、前記網状面材が前記枠体に固定された
ことを特徴とする網状面材による型枠構造。
(付記2)
付記1に記載された網状面材による型枠構造において、
前記枠体の隣接箇所に取り付けられた前記型枠連結具の前記クリップ部が、隣接する二本の枠材を挟持することにより、隣接する枠体同士が連結された
ことを特徴とする網状面材による型枠構造。
(付記3)
付記1または2に記載された網状面材による型枠構造において、
前記フック部が、隣接する二枚の網状面材の継ぎ重ね箇所に掛止された
ことを特徴とする網状面材による型枠構造。
(付記4)
付記1または2に記載された網状面材による型枠構造において、
前記クリップ部の自由端側に第2フック部が突設され、
前記第2フック部が、前記枠材または前記桟材を挟んだ前記フック部の反対側から前記網状面材に掛止された
ことを特徴とする網状面材による型枠構造。
(付記5)
付記4に記載された網状面材による型枠構造において、
隣接する二枚の網状面材が前記枠材または前記桟材を挟んで互いに重ならないように配置され、
前記フック部が、前記二枚の網状面材のうち一方の網状面材に掛止されるとともに、
前記第2フック部が他方の網状面材に掛止された
ことを特徴とする網状面材による型枠構造。
(付記6)
枠材を正面視矩形に接合してなる枠体の背面に網状面材を固定するための型枠連結具であって、
前記枠材または前記枠体の枠内に取り付けられた桟材の材軸直交方向に挿通される直棒状の連結軸部と、
前記連結軸部と交差する向きに結合されて前記枠材または前記桟材を挟持するJ字状のクリップ部と、
前記連結軸部から前記クリップ部と離反する向きに突設されたフック部と、
を具備し、
縦方向の前記枠材または前記桟材に対して前記連結軸部を水平に挿通させ、前記クリップ部を手前斜め下向きに回動させて前記枠材または前記桟材を挟持したときに、前記フック部が、その先端を上向きにして前記枠材または前記桟材の背面側に突出し前記網状面材に掛止されるように形成されている
ことを特徴とする型枠連結具。
(付記7)
付記6に記載された型枠連結具において、
前記クリップ部の自由端側に第2フック部が突設され、
縦方向の前記枠材または前記桟材に対して前記連結軸部を水平に挿通させ、前記クリップ部を手前斜め下向きに回動させて前記枠材または前記桟材を挟持したときに、前記第2フック部が、その先端を上向きにして前記枠材または前記桟材の背面側に突出し前記網状面材に掛止されるように形成されている
ことを特徴とする型枠連結具。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願が開示する発明は、網状面材を使用するコンクリート構造物の型枠工事において
幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 基礎(連続フーチング基礎)
2 ベース部
21 埋戻し用樹脂パネル
22 鉄筋ベース
3 立ち上がり部
4 網状面材
41 補剛用リブ
5 枠体
51 枠材
52 連結孔
53 横方向の枠材
54 縦方向の桟材
55 横方向の桟材
56 飼い物
6 型枠連結具
61 連結軸部
62 クリップ部
63 フック部(第1フック部)
64 第2フック部
7 位置決め定規